お兄ちゃんと私と百円玉とラムネ
暑いですぅ・・・、まだ夏じゃないのにどうしてこんなに暑いのですかぁ〜。やっぱり向こうの世界でお留守番してたほうが良かったのかなぁ〜。うぅ〜〜っ・・・今頃バフォ様はクーラーの効いた書斎で好物のジャンボトルネードパフェ食べてるんだろうな〜・・・。私は暑い中、いつもの魔女服と魔女スタイルに欠かせないとんがり帽子を被ってお散歩・・・悔しくなんかないもん!でも・・・。
「お使いのお駄賃が100円って・・・あんまりですよぉ・・」
あぅぅ・・・、100円だとジュースも飲めないですう・・。こんなに暑いのにどうしろって言うんですか。
「ああーーーーーーっ!!もうっ!バフォ様のバカァーーーー!!・・・・あっ!?」
思いっきり手を振り上げちゃった弾みで100円玉が手からすっぽ抜けて道路を転がっていっちゃってる。
「やぁぁ〜〜〜〜ん!!私の100円が〜〜〜!!待ってぇ〜〜!!」
やぁぁぁん!いつも箒に乗ってばかりで運動してなかったから走るのすっごく辛いよぉ。はぁ・・はぁ・・、お、お願いだから・・・止まって・・。あっ・・。
「・・・ん?何か足に・・・、百円玉・・??」
「はぁ・・・はぁ・・・、や、やっと・・止まってくれましたぁ〜・・・」
なんだか古いお店の前でエプロンを着て立ってたお兄ちゃんの足に偶然当って止まってくれましたぁ・・。はぁ、ふぅ・・、ひゃ・・100円は・・大事・・・なのですぅ。
「ん、・・はい、御嬢ちゃん。もう落とさないようにね」
「はぁ・・・はぁ・・あ、・・ありがとうですぅ!!」
はふぅ〜、このお兄ちゃんからなんだかすっごく良い匂いがするですぅ。もしかして・・。
「あ、あのぅ〜、お兄ちゃんはもしかして独身ですか?」
あ、いけない。バフォ様から言われてたんだ。『相手が誰であろうと失礼のないようにな』って。ううっ・・、やっぱりお兄ちゃん・・変な目でこっち見てる。
「・・・・・・・」
「・・・・うう・・」
「・・・・・・・」
「・・・・あぅぅぅ・・」
「・・・・・・プッ!」
「!?」
帽子の鍔で顔を隠した私を見て一瞬だけ笑ったお兄ちゃん。なんで急に笑ったんだろう。
「君は魔女だよね。大丈夫、失礼な事だとは思ってないよ」
そういって私の帽子の鍔を指先でチョンと押してくる。はぅ、・・・すっごく恥ずかしいです・・。でもでも、安心したらすっごく喉が渇いてきちゃった。久しぶりに走ったからかな?・・・でも、100円しか持ってないから何も買えないし。
「はぅぅ〜〜・・・、走ったから喉渇いちゃったぁ〜・・」
お兄ちゃんの手前、ぐっと我慢したかったけどポロリと本音が出ちゃう。でもやっぱり現実は非情な訳で・・・。そしたらお兄ちゃんが外に置いてあった箱から何か取り出して持ってきてくれたの。
「ははっ、それじゃこれを飲みなよ・・・。はいっ」
そう言って手渡してきたのは水色のガラス瓶。すっごく冷たくて気持ちいいの。でも・・、これどうやって飲むのかな?
「・・・・?あ、もしかして開け方わからないのかな。ちょっと貸してみて」
私がお兄ちゃんに水色のガラス瓶を手渡すとなんだか小さな蓋を瓶の先端に乗せてポンと軽く叩いたのが見えたの。そしてちょっと遅れてシュワシュワと鳴り出すガラス瓶。
「はい、どうぞ。冷たくて美味しいよ」
「ありがとう、お兄ちゃん♪・・・んくっ・・・んく・・・ぷはっ♪何これ!すっごく美味しいの!」
「そっか、そりゃ良かった」
「・・・・あ、・・・・でも・・。私・・」
100円しか持ってなかったのを思いだしてどうしようかと悩んでたらお兄ちゃんが私の頭に手を置いてくしゃくしゃと雑に撫でてくれた。
「大方、お金の事を考えてたんだろ?別に気にするなよ」
優しい言葉を掛けてくれるけど・・だけどやっぱり私は。
「あああ、あのっ!・・・い、今・・これだけしか・・・持ってなくて・・」
持ってた100円玉をお兄ちゃんに差し出す。そしてお兄ちゃんはというと・・。
「う〜ん・・、まぁ・・別に良かったんだけど・・。はい、それじゃ御釣り50円ね」
手渡された50円を握り締めて呆然とする私。
「・・・・・・ぇ?」
こんなに冷たくて・・美味しくて・・それに、お兄ちゃんが優しくて・・。
「ぇ?ぇ?どうして50円なのですか!?」
「・・・?いや、だって・・ほら・・」
お兄ちゃんが指差す場所に張られた紙。
『ラムネ1本 50円』
す、すごく安いですぅ。こんなに甘くて冷たくて、・・・・それに、お兄ちゃんの優しさも美味しくて。
「あぅぅぅ・・・、お・・美味しいですぅ・・。このラムネも・・お兄ちゃんの優しさも・・・」
「そ、そっかぁ〜・・・ハハ・・。こりゃまいったな」
軽く頬を掻きながら照れるお兄ちゃんすごくカッコイイです!
「あ、そうだ。ここで会ったのも何かの縁だし、ちょっと店覗いていくかい?」
「お店・・?ここって何のお店なのですか?」
「ちょっとばかり古い・・駄菓子屋だよ」
お兄ちゃんが木造のドアを横に動かした途端、私の目の前には夢のような世界が広がってたの。
「す・・・・」
「酢?」
「すごいですぅぅーーー!!見た事の無い御菓子がイッパイイッパイ並んでるのですぅ!!」
あれもこれも見た事が無い御菓子ばかりなのですぅ!お釣りで貰った50円玉そっくりの大きなチョコ、よくわかんないけどぷにぷにした丸い風船。大きなプラスチックの箱にたっぷり詰め込まれた飴玉。小さな棒の先に付いてる透き通ったキャンディ。あ、これなんだろう?小さな玉から変な匂いがしてくるの。
「これ興味あるの?」
「お兄ちゃんお兄ちゃん!これなんですか!?」
「これか?これはこうやって・・・ふんっ!!」
-パァンッ!!-
「ひゃぅ!!・・・今のなんですか!爆発しちゃいましたよ!?」
「これはかんしゃく玉だよ。壁とかに向かって投げるとぶつかった衝撃で引火して破裂するおもちゃだよ」
「ほ、・・・ほぇぇ〜〜〜・・・ちょっとだけびっくりしちゃいました・・」
本当はちょっとどころじゃなかったんだけど・・。だって、ちょっとだけちびっちゃったし・・・。うぅ・・オマタの感触が。
「ははは・・、驚かせて悪かったな。それじゃあ・・・こういうのはどうだ?」
お兄ちゃんが紐が付いた手のひらサイズの丸い何かを持ってきてくれたの。
「これをこうして・・・ふんふふ〜〜〜ん♪」
「わぁ〜〜〜♪すごいですぅ♪くるくる回ってますぅ♪」
「そして・・こうやって・・・っと」
お兄ちゃんが丸い何かから伸びてる紐を両手で引っ張りながら糸の橋を作ると、その上を丸い円盤が滑るように走っていっちゃうの。
「ほぇぇ〜〜〜〜〜・・・、どうやってるのですか〜??」
「それは秘密♪」
「ぶぅぅ〜〜〜、お兄ちゃんイジワルですぅ・・」
でもでも、お兄ちゃんすっごく上手なのです!振り回したりぶらぶらさせてもきっちり手に戻るように操ってるのです!
「んじゃ、これは置いといて・・・」
あぅ、・・・もっと見たかったのです。
「さて、魔女ちゃんは初めての御客様だし。・・・御嬢ちゃんにはこれをあげよう」
おっきなおもちゃの指輪をくれるお兄ちゃん。
「・・・・??」
「ん?・・・・、もしかして君は移住組の子かな?」
私は首をぶんぶんと縦に振るの。
「そっか、だから知らないのか。これは指輪型のキャンディだよ、さ・・手を出して」
お兄ちゃんが私の左手の薬指にキャンディで出来た指輪を嵌めてくれたの。すっごく綺麗でいい匂いがして、・・・それに、嵌めてくれた指の意味は・・。
「お、・・お・・お兄・・・ちゃん」
「どうした?」
「お兄ちゃん大好き♥」
甘えるようにお兄ちゃんの胸に飛び込んじゃうの。ほっぺたをお兄ちゃんの胸にすりすり擦りながら何度も甘えちゃう♥
「やれやれ・・・、ま・・しょうがないか」
何度も私の頭を優しく撫でてくれるお兄ちゃん大好き♪このままずっと時間が止まったらいいのにな。
どれぐらい甘えていたのかな?気が付いたら、お外はもう薄暗くなりかけていたの。
「そろそろ暗くなるから早く家に帰るんだぞ?」
お兄ちゃんが別れの言葉を口に出す。でも私は・・・帰りたくないの。お兄ちゃんといつまでも一緒に居たいの・・・。つい、お兄ちゃんのシャツの裾をギュッと握り締める。
「魔女ちゃんは・・・えと・・?ああ、サバトだ。合ってるのかな・・?あんまり遅くなると皆が心配するから。・・・まいったな、・・それなら・・・」
お兄ちゃんが私の耳元に口を近づけてこっそり囁くの。
「また、・・・時間が出来たら遊びにおいで待ってるから」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
優しい言葉で攻めてくるなんてお兄ちゃんテクニシャンなのですぅ!オマタがジンジン痺れてきちゃいますぅ!ぁぅ、・・・またちょっとだけ漏らしちゃいました・・・。
「ぅん♪また遊びに来るね!お兄ちゃん♥」
私は勢いよく店を飛び出し、皆と一緒に住んでるサバトの寮へと走り出すの。100円玉を追いかけてた時は暑くて辛くてしんどかったのに、今はいくらでも走れそうなの。・・・だって今は、・・・お兄ちゃんから貰った綺麗な指輪が薬指に・・♥
「たっだいまぁーーーーー!!」
「ぅむ、レナよ。ちっとばかし遅いのでは・・な・・・い・・」
「ご、ごめんなさぁ〜〜〜ぃ・・・・」
「にょ・・・・」
「にょ?」
「にょわわわわぁぁぁーーーー!レナがいつのまにか結婚しておるぅぅぅーーーー!?いつじゃ!?いつお兄ちゃんを見つけたのじゃ!?こんなに大きな指輪まで貰いおってからに!!」
バフォ様がじろじろと何度も私の手を眺めてくるの。でも、これって・・。
「バフォ様〜、これは指輪型のキャンディなのですよ〜。でもでも!すっごく綺麗でしょ♪お兄ちゃんに貰ったんだ〜♪」
「キャンディじゃと!?・・・・うぬぬぬぬ・・・、キャンディとはいえ・・・薬指に嵌めていくとは・・・。よし!そのお兄ちゃんをワシにも紹介するのじゃ!」
「いやですぅ〜〜〜!お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなのですぅ!すっごく優しくてかっこよくて・・・いい匂いがして・・、何度も甘えさせてくれて・・、はぅぅ♪思いだしただけでオマタが痺れてきちゃうの♪」
見えない火花を散らしながら睨み合う私とバフォ様。例え相手がバフォ様でもこれだけは譲れないの!だって、お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなんだから。
「・・・むぅ、・・しょうがないのじゃ・・」
あれ?バフォ様すんなり引き下がってくれたの。なんでだろ?
「さ、食事の時間じゃ」
・・・怪しいの。バフォ様がこんなにあっさり引き下がる訳ないの。これは気を付けないとダメなの。
皆揃ってイタダキマスをしてからご飯を食べるの。あのキャンディの指輪は部屋に置いてある小箱に入れてきたの。お兄ちゃんがくれた綺麗なエンゲージリング。・・・・ぃゃん♪お兄ちゃんったら、そんなとこ舐めちゃダメだよぉ。あっ・・・ぁん♥ダメだってばぁ〜♪
「・・・レナ。食事中に何をしておるんじゃ」
「・・・!?」
危なかったの。もうちょっとでお食事中にイッちゃうとこだったの。あぅ、皆が変な目で見てくるの…。我慢我慢・・。これいじょう妄想しちゃうと皆にばれちゃうから今日は早く寝ちゃおう!
「ごちそうさまでした!」
急いで部屋に戻ってお兄ちゃんに貰った指輪を見つめながらベッドに入るの。
「・・・明日もお兄ちゃんとイッパイイッパイ遊びたいな♪」
今日のお目覚めは最高の気分なの!だって今日も晴れなんだもん!朝ご飯食べたらすぐにお兄ちゃんのお店に遊びに行くもん。
はぁ〜・・・、お腹いっぱいになったのー。それじゃ、いってきまーす。
「待つのじゃ」
「なぁ〜に〜?」
バフォ様が手をにぎにぎしながら近寄ってくるの。これはなんだか危険な予感がするの。
「レナよ、出掛けるのなら御小遣いを持っていくといいぞ」
バフォ様の肉球お手手に握られてたのは500円玉。怪しい・・・、すっごく怪しいですの。500円玉は欲しいの・・・、でも。
「大丈夫なの、バフォ様!レナ、100円持ってるから♪」
「ひゃ、100円・・・じゃと!?」
「それじゃ、行ってきまーす♪」
サバトの寮から飛び出し、あの店まで全速力で走っちゃうの。早く行かないとお兄ちゃんが誰かに取られちゃうの。
「・・・100円で一体何をするつもりなのじゃ、あやつは?・・・ふぅむ、興味が湧いてきたぞい」
ふんふふん♪今日は何して遊ぼうかなー♪昨日の続きが見たいな〜。あ、お店の前にお兄ちゃんが!・・・お・・兄ちゃん・・・・?
「お・・おはよう・・ございます・・」
店の前に居たのはお兄ちゃんじゃなくて知らない女性・・。もしかしてお兄ちゃんの・・・。
「へ?おはよー・・・って!わぁ〜〜〜♪初めて魔女ッ子見たわ〜♪あぁん!もう・・妹にしたいぐらい可愛いわー♥」
「ひにゅぅ〜〜〜・・・!ぐるじぃ・・・でずぅ〜〜・・」
なんなんですかぁーー!いきなり抱き付いてきて!それにすっごい苦しいですよぉ!おっぱいに顔が挟まれてぐるじぃですぅ!
「あ、もしかして昨日アキが言ってた魔女ッ子って貴女の事かな?」
「アキ・・?」
「あら?昨日うちの弟に会ったでしょ?店番してたはずよ?」
お兄ちゃん、アキさんって言うんだ。
「でも、ごめんねー。アキはちょっと出掛けてるのよ。御菓子の仕入れに行ってるから帰ってくるのはお昼前かな?」
残念ですぅ。でもでも、お昼には帰ってくるです!お昼からいっぱい遊んでもらうのです!そうなのです、レナは出来る妻なのですぅ!お兄ちゃんが戻ってくるまで我慢出来る良い子なのです!
「それじゃ〜、明弘が戻ってくるまで・・。お姉さんと遊ぶ?」
「はい!お姉ちゃん♪」
「いい返事ね♪それじゃ、アキが帰ってくるまでお姉さんがたっぷりとおもしろい遊びを教えてあげるわ♪」
す、すごいですぅ・・・。お兄ちゃんもすごいけどお姉ちゃんもすごく上手なのですぅ。
「まだまだこれからよ!」
はわわわ・・・・、色が変わる水飴ってすごいです!それにすっごく甘いです♪
「もっと練ったらすごい色になっちゃうわよ♪」
・・・!?ほぇぇ〜〜〜、バネが勝手に下りていくのですぅ・・。これ、どうなってるのですぅ?
「科学も楽しいもんでしょ♪」
この紐は何かなー?
「引っ張ったらわかるわよ」
-パァンッ!-
「にゃわっ!?また破裂なのですかぁ!?」
またちょっとだけ漏らしちゃったかも・・・。
-キキーッ-
「あ、帰ってきたみたいね。それじゃ遊びはここまでにして搬入作業しないと・・」
「私もお手伝いするのです!」
「ぷっ!・・・いいからいいから。御客様にそんな事させられないの」
むぅ〜〜〜、なんだか頼りにされてないみたいですぅ。こうなったら・・・えいっ!
「な、何だ!?荷物が飛んでるぞ!?嘘だろ、勝手に店の奥に・・」
「ふふ〜〜ん♪私はやれば出来る子なのですよ!」
「へぇ〜〜、これが魔法ってやつなのねー。便利いいわね」
ふふん♪お兄ちゃんもお姉ちゃんもびっくりしてるのです!この調子で次々運ぶのです。えーぃ!・・・これで最後なのです。せーのっ!
「このバカモン!魔法をそんな風に使うでないわ!!」
「ひっ!?」
どうしてバフォ様が此処に居るの。それにどうして魔法使っちゃいけないの。
「レナよ、…お主は良い事をしてるつもりじゃろうが、それは時として悪い事でもあるのじゃ。人は一度でも便利な事を覚えてしまうとそれに頼りきってしまって怠惰になる事もあるのじゃぞ?」
「・・・あぅぅ、ごめんなさぁい・・・」
あぅ、バフォ様の言う通りなのですぅ。一度でも楽しちゃうとそればっかりやっちゃうのですぅ。悪い事しちゃったのですぅ。
「ま・・まぁまぁ・・、えと、レナちゃんも手伝おうとして頑張ってくれたんですからそんなに責めないでやってくれませんか」
「ふむぅ、お主がお兄ちゃんかの。ふむふむ・・・なるほどのぉ。なかなか良い気質の持ち主じゃ。レナが懐くのも無理はないの。ところで・・・」
「何でしょうか?」
「その、・・なんじゃ・・。昨日レナにあげたという・・・///」
こんな時に何を言うんですか。まさかバフォ様、自分も指輪を貰うつもりなんじゃ!?
「・・・・?あー、あれね。ちょっと待ってて」
お兄ちゃんが店の奥からあのキャンディを持ってきたですぅ。やっぱりバフォ様も欲しがってたんだ。
「はい、どうぞ」
「・・・・・にゅふ♪キャンディとはいえ・・指輪とは良いものじゃ♪」
むむぅ〜〜〜〜、まさかバフォ様・・・お兄ちゃんを私から取るつもりじゃ・・。
「ふむ、そこな女子よ」
「へ?あたし?」
「うむ、サバトに興味は無いかの?」
お姉ちゃん必死に首を横に振ってるです。ちょっと残念です。でもでも、やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだからムリに魔女にしちゃいけないのです。
「ふーむ、これがあの駄菓子屋というやつかの・・・。ちょっと入ってみるかの・・・。・・・・・・にょわぁぁぁーーーーーーーー!見た事の無い御菓子がイッパイなのじゃああああああああ!?」
あ、バフォ様も同じ反応しちゃってる。バフォ様でも知らない事があったんだ。さぁて、お兄ちゃんも帰ってきたし・・昨日の続きをしてもらおう♪
今日もお兄ちゃんスゴイです!お姉ちゃんも隣でスゴイですぅ!お兄ちゃんルーなんとかキューブをすごい早さで揃えてるのです!お姉ちゃんも隣で三角の塊が繋がったのを動物さんの形に組んでるのです!不思議ですぅ!おもしろいです!楽しいのですぅ!
「ふぉぉぉぉっ!?兄上も姉上も凄いのじゃ!・・・むむむぅ・・・!こんな玩具があったとは驚きじゃ・・」
「まぁ、・・・・もう古い・・・玩具、だから・・ね!っと・・こうして・・よしっ!出来上がり!」
全面綺麗に揃ったキューブを誇らしげに渡してくるお兄ちゃんかっこいいのですよぉ!
「はぃ!私も出来上がり♪」
ふわわぁ〜〜、お姉ちゃんもスゴイのです!あの小さな三角の塊でバフォ様のお手手を作っちゃいました!
「な、なんじゃ!?ワシの手が出来あがっておるではないか!?す、素晴らしいのじゃ!これは次回のサバトで紹介せねば!」
やっぱりお兄ちゃんもお姉ちゃんもスゴイですぅ。はふぅ・・興奮したら喉が渇いたのです。そうだ、今日もあれを飲むのですよ。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「「ん、何?」」
「ラムネ2本欲しいですぅ♪」
「はいはい♪」
お兄ちゃんが昨日と同じように栓を抜いてくれたのです♪はい、バフォ様の分ですよ〜♪
「はい、お兄ちゃん。100円なのです♪」
「はい、毎度あり♪」
「んくっ・・・んく・・・ぷはっ♪今日もラムネが美味しいのですぅ♥」
「んく・・・んんぅ・・・ぷはぁ〜♪美味しいのじゃ〜♪レナはずるいのじゃ!こんな美味しい水を一人で飲んで楽しんでるなんてずるいのじゃ!」
「ありがとう、二人共・・。楽しいと言って貰えて嬉しいよ。これで心置きなく・・・近い内に店を畳める」
「「えっ・・・?」」
なんでですぅ!?どうしてなのですぅ!?どうしてお店辞めちゃうのですか!こんなに楽しいお店なのにどうして辞めちゃうのですぅ!?
「お主達・・何故店を畳むのじゃ?」
「そうだな・・・、どこから話したらいいかな・・。まず一つ目は・・時代の流れ・・かな。駄菓子屋は古い時代の置き土産ってとこだし。便利な物が増えた今では僕等のような店は必要とされなくなったからね。後は・・やっぱり生活するにはそれなりの売り上げが必要な訳で・・祖母から受け継いだ店もこれまでかと思うと少し悲しいけど」
はぅぅぅ〜〜〜〜〜、悲しいのですぅ。辛いのですぅ・・。お兄ちゃんとお姉ちゃんに出会えたのに。お兄ちゃんが居なくなるのはイヤなのですぅ。でもでも、・・・お兄ちゃんもお姉ちゃんも真剣な目なのです・・。どうしたらいいのですか・・。
「こんな店でも時々、近所の子・・と言っても君達のような魔物娘の子が遊びに来るので嬉しかったよ・・」
・・・むっ!今なんだかピピッと来たのです!
「お兄ちゃん!もしかして他の子と仲良くなってるなんて事は!」
「ん?ああ、こないだリッチという子だったかな?『文献に載っていない、これは調べないと』とか言って閉店までずっと飴を舐めて居座ってた子が・・。後は・・えーと、そうそう。ダンピールとか言ってた子が『御菓子はやっぱり下町で買うのがいいのよね♥』とか言って凄い量を買い占めていったなー・・」
こ、これは危険なのです!このままだとお兄ちゃんが取られちゃうのです!それだけは阻止しないとダメなのですぅ。あれれ?そういえばバフォ様が静かなのですょ。
「・・・・・・・・・・」
バフォ様・・?どうしちゃったのですか、ずっと黙ってるのですけど。
「よし、わかったのじゃ。この店、我がサバトが買うのじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってくれないか。いくらなんでもそれは無理があるんじゃ・・」
「そ、そうよ?物事には順序があってね」
お兄ちゃんもお姉ちゃんも驚いてるの。私も驚いてるのですよ。
「大丈夫じゃ、この店を丸ごと買い取ってサバトの寮に入れるのじゃ」
「「・・・・・は??」」
「バフォ様、何をするの?」
「なぁーに、簡単な事じゃ。このまま転移させればいいだけなのじゃ」
「い、いや、気持ちはありがたいけど・・・」
「生活費も大丈夫なのじゃ。我がサバトで商売すればいいのじゃ。これで全部丸く収まるのじゃ!それに買い取るといっても実権はお主達の物じゃ。祖母の大事な形見みたいじゃからのぉ。どうじゃ、完璧じゃろう!」
「ど、どうする・・、姉さん・・」
「う〜〜ん、私は別に気にしないわ。アキの判断に任せるから」
お兄ちゃんウンウン唸ってるです・・。どうしたらいいのですか・・。はっ!?そうなのです!
「お兄ちゃんお兄ちゃん!」
「んーー・・、ん?何?」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんのお店、もっともっと楽しくしたいのですぅ!皆にも教えてあげたいのですよ!お願いですぅ、・・・サバトに・・来て欲しいですぅ・・」
皆に教えちゃうとお兄ちゃん一人占め出来ないけど・・・このままお兄ちゃんとお姉ちゃんが居なくなっちゃうのはもっとイヤなの・・。
「・・・・わかった!こんな店でも良ければ皆の為に・・・(ブォンッ!!)・・・えっ???」
「ふぅぅ〜〜、サバトに送っておいたわい・・」
「あの・・まだ了承って言ってないよね・・・」
「ククッ・・・、お主の口が語る前に目が語っておったわい♪まだまだ店を続けたいとな。それに・・たまにはワシも遊ばせてもらうのじゃ♪」
やったですぅ〜〜!!バフォ様さすがなのです!これから毎日お兄ちゃんとお姉ちゃんと遊べるのですぅ♪
「・・・レナ、お主これから毎日遊べるなどと思ってるのではないだろうな?」
「ギクッ!!・・・なんのことですか〜〜?」
「遊ぶのは仕事が終わってからじゃ!それまでは兄上殿と会う事は許さんのじゃ」
ひどいですぅ〜。あんまりですぅ。明日から毎日遊べると思ったのに〜。
「あの・・その事なんだけどね・・」
「どうしたのじゃ姉上殿?」
「私達・・そのサバトがどこにあるかわからないんだけど・・」
「あっ」
その後、お兄ちゃんの車に皆で乗ってサバトに戻ったの。帰ったら寮の横にお兄ちゃんとお姉ちゃんのお店がくっついていたの。やったなの!これでお兄ちゃんとラブラブ出来ちゃうの♥
「アキお兄ちゃ〜〜ん、マイおねーちゃーん!遊びに来たよー♪」
「いらっしゃ〜い♪ん〜〜〜、いつ見てもお肌ぷにぷにで可愛いわね〜♥」
「んぅ〜〜♪マイお姉ちゃんくすぐったいですょ〜♪」
「いらっしゃいレナちゃん。っと・・・ととっと・・、はいはい80円ね」
むーーっ、・・・またあの子が来てるのですぅ!お兄ちゃんはレナだけのお兄ちゃんなのに。うぅ、バフォ様が頑張ってお店の宣伝したからお客様増えてお兄ちゃん喜んでるけど・・・なんだか複雑な気分なのです!悔しいのです!ラムネ一本貰うのですょ!
「アキ兄ちゃん、ラムネくださいなー♪」
うにゅぅ!!この子は誰なのですか!アキお兄ちゃんと呼んでいいのはレナだけなのですよ!お兄ちゃんも爽やかな笑顔を見せちゃダメなのですぅ。油断するとパクッて食べられちゃいますよ!お兄ちゃんを食べていいのはレナだけです!違うのですぅ、レナがお兄ちゃんに食べられちゃうのですょ♥
「さてと、・・・レナちゃん。昨日の続きするかい?」
「・・・!!するのですぅ!今度こそアキお兄ちゃんに勝ってみせるのですぅ!」
今日こそ勝ってお兄ちゃんとデートするのですょ!それじゃぁ〜〜〜・・・。
「それじゃ、二人共・・用意はいいかしら?せーのっ・・レディ〜〜〜」
『GO!!』
「お使いのお駄賃が100円って・・・あんまりですよぉ・・」
あぅぅ・・・、100円だとジュースも飲めないですう・・。こんなに暑いのにどうしろって言うんですか。
「ああーーーーーーっ!!もうっ!バフォ様のバカァーーーー!!・・・・あっ!?」
思いっきり手を振り上げちゃった弾みで100円玉が手からすっぽ抜けて道路を転がっていっちゃってる。
「やぁぁ〜〜〜〜ん!!私の100円が〜〜〜!!待ってぇ〜〜!!」
やぁぁぁん!いつも箒に乗ってばかりで運動してなかったから走るのすっごく辛いよぉ。はぁ・・はぁ・・、お、お願いだから・・・止まって・・。あっ・・。
「・・・ん?何か足に・・・、百円玉・・??」
「はぁ・・・はぁ・・・、や、やっと・・止まってくれましたぁ〜・・・」
なんだか古いお店の前でエプロンを着て立ってたお兄ちゃんの足に偶然当って止まってくれましたぁ・・。はぁ、ふぅ・・、ひゃ・・100円は・・大事・・・なのですぅ。
「ん、・・はい、御嬢ちゃん。もう落とさないようにね」
「はぁ・・・はぁ・・あ、・・ありがとうですぅ!!」
はふぅ〜、このお兄ちゃんからなんだかすっごく良い匂いがするですぅ。もしかして・・。
「あ、あのぅ〜、お兄ちゃんはもしかして独身ですか?」
あ、いけない。バフォ様から言われてたんだ。『相手が誰であろうと失礼のないようにな』って。ううっ・・、やっぱりお兄ちゃん・・変な目でこっち見てる。
「・・・・・・・」
「・・・・うう・・」
「・・・・・・・」
「・・・・あぅぅぅ・・」
「・・・・・・プッ!」
「!?」
帽子の鍔で顔を隠した私を見て一瞬だけ笑ったお兄ちゃん。なんで急に笑ったんだろう。
「君は魔女だよね。大丈夫、失礼な事だとは思ってないよ」
そういって私の帽子の鍔を指先でチョンと押してくる。はぅ、・・・すっごく恥ずかしいです・・。でもでも、安心したらすっごく喉が渇いてきちゃった。久しぶりに走ったからかな?・・・でも、100円しか持ってないから何も買えないし。
「はぅぅ〜〜・・・、走ったから喉渇いちゃったぁ〜・・」
お兄ちゃんの手前、ぐっと我慢したかったけどポロリと本音が出ちゃう。でもやっぱり現実は非情な訳で・・・。そしたらお兄ちゃんが外に置いてあった箱から何か取り出して持ってきてくれたの。
「ははっ、それじゃこれを飲みなよ・・・。はいっ」
そう言って手渡してきたのは水色のガラス瓶。すっごく冷たくて気持ちいいの。でも・・、これどうやって飲むのかな?
「・・・・?あ、もしかして開け方わからないのかな。ちょっと貸してみて」
私がお兄ちゃんに水色のガラス瓶を手渡すとなんだか小さな蓋を瓶の先端に乗せてポンと軽く叩いたのが見えたの。そしてちょっと遅れてシュワシュワと鳴り出すガラス瓶。
「はい、どうぞ。冷たくて美味しいよ」
「ありがとう、お兄ちゃん♪・・・んくっ・・・んく・・・ぷはっ♪何これ!すっごく美味しいの!」
「そっか、そりゃ良かった」
「・・・・あ、・・・・でも・・。私・・」
100円しか持ってなかったのを思いだしてどうしようかと悩んでたらお兄ちゃんが私の頭に手を置いてくしゃくしゃと雑に撫でてくれた。
「大方、お金の事を考えてたんだろ?別に気にするなよ」
優しい言葉を掛けてくれるけど・・だけどやっぱり私は。
「あああ、あのっ!・・・い、今・・これだけしか・・・持ってなくて・・」
持ってた100円玉をお兄ちゃんに差し出す。そしてお兄ちゃんはというと・・。
「う〜ん・・、まぁ・・別に良かったんだけど・・。はい、それじゃ御釣り50円ね」
手渡された50円を握り締めて呆然とする私。
「・・・・・・ぇ?」
こんなに冷たくて・・美味しくて・・それに、お兄ちゃんが優しくて・・。
「ぇ?ぇ?どうして50円なのですか!?」
「・・・?いや、だって・・ほら・・」
お兄ちゃんが指差す場所に張られた紙。
『ラムネ1本 50円』
す、すごく安いですぅ。こんなに甘くて冷たくて、・・・・それに、お兄ちゃんの優しさも美味しくて。
「あぅぅぅ・・・、お・・美味しいですぅ・・。このラムネも・・お兄ちゃんの優しさも・・・」
「そ、そっかぁ〜・・・ハハ・・。こりゃまいったな」
軽く頬を掻きながら照れるお兄ちゃんすごくカッコイイです!
「あ、そうだ。ここで会ったのも何かの縁だし、ちょっと店覗いていくかい?」
「お店・・?ここって何のお店なのですか?」
「ちょっとばかり古い・・駄菓子屋だよ」
お兄ちゃんが木造のドアを横に動かした途端、私の目の前には夢のような世界が広がってたの。
「す・・・・」
「酢?」
「すごいですぅぅーーー!!見た事の無い御菓子がイッパイイッパイ並んでるのですぅ!!」
あれもこれも見た事が無い御菓子ばかりなのですぅ!お釣りで貰った50円玉そっくりの大きなチョコ、よくわかんないけどぷにぷにした丸い風船。大きなプラスチックの箱にたっぷり詰め込まれた飴玉。小さな棒の先に付いてる透き通ったキャンディ。あ、これなんだろう?小さな玉から変な匂いがしてくるの。
「これ興味あるの?」
「お兄ちゃんお兄ちゃん!これなんですか!?」
「これか?これはこうやって・・・ふんっ!!」
-パァンッ!!-
「ひゃぅ!!・・・今のなんですか!爆発しちゃいましたよ!?」
「これはかんしゃく玉だよ。壁とかに向かって投げるとぶつかった衝撃で引火して破裂するおもちゃだよ」
「ほ、・・・ほぇぇ〜〜〜・・・ちょっとだけびっくりしちゃいました・・」
本当はちょっとどころじゃなかったんだけど・・。だって、ちょっとだけちびっちゃったし・・・。うぅ・・オマタの感触が。
「ははは・・、驚かせて悪かったな。それじゃあ・・・こういうのはどうだ?」
お兄ちゃんが紐が付いた手のひらサイズの丸い何かを持ってきてくれたの。
「これをこうして・・・ふんふふ〜〜〜ん♪」
「わぁ〜〜〜♪すごいですぅ♪くるくる回ってますぅ♪」
「そして・・こうやって・・・っと」
お兄ちゃんが丸い何かから伸びてる紐を両手で引っ張りながら糸の橋を作ると、その上を丸い円盤が滑るように走っていっちゃうの。
「ほぇぇ〜〜〜〜〜・・・、どうやってるのですか〜??」
「それは秘密♪」
「ぶぅぅ〜〜〜、お兄ちゃんイジワルですぅ・・」
でもでも、お兄ちゃんすっごく上手なのです!振り回したりぶらぶらさせてもきっちり手に戻るように操ってるのです!
「んじゃ、これは置いといて・・・」
あぅ、・・・もっと見たかったのです。
「さて、魔女ちゃんは初めての御客様だし。・・・御嬢ちゃんにはこれをあげよう」
おっきなおもちゃの指輪をくれるお兄ちゃん。
「・・・・??」
「ん?・・・・、もしかして君は移住組の子かな?」
私は首をぶんぶんと縦に振るの。
「そっか、だから知らないのか。これは指輪型のキャンディだよ、さ・・手を出して」
お兄ちゃんが私の左手の薬指にキャンディで出来た指輪を嵌めてくれたの。すっごく綺麗でいい匂いがして、・・・それに、嵌めてくれた指の意味は・・。
「お、・・お・・お兄・・・ちゃん」
「どうした?」
「お兄ちゃん大好き♥」
甘えるようにお兄ちゃんの胸に飛び込んじゃうの。ほっぺたをお兄ちゃんの胸にすりすり擦りながら何度も甘えちゃう♥
「やれやれ・・・、ま・・しょうがないか」
何度も私の頭を優しく撫でてくれるお兄ちゃん大好き♪このままずっと時間が止まったらいいのにな。
どれぐらい甘えていたのかな?気が付いたら、お外はもう薄暗くなりかけていたの。
「そろそろ暗くなるから早く家に帰るんだぞ?」
お兄ちゃんが別れの言葉を口に出す。でも私は・・・帰りたくないの。お兄ちゃんといつまでも一緒に居たいの・・・。つい、お兄ちゃんのシャツの裾をギュッと握り締める。
「魔女ちゃんは・・・えと・・?ああ、サバトだ。合ってるのかな・・?あんまり遅くなると皆が心配するから。・・・まいったな、・・それなら・・・」
お兄ちゃんが私の耳元に口を近づけてこっそり囁くの。
「また、・・・時間が出来たら遊びにおいで待ってるから」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜っ!!!」
優しい言葉で攻めてくるなんてお兄ちゃんテクニシャンなのですぅ!オマタがジンジン痺れてきちゃいますぅ!ぁぅ、・・・またちょっとだけ漏らしちゃいました・・・。
「ぅん♪また遊びに来るね!お兄ちゃん♥」
私は勢いよく店を飛び出し、皆と一緒に住んでるサバトの寮へと走り出すの。100円玉を追いかけてた時は暑くて辛くてしんどかったのに、今はいくらでも走れそうなの。・・・だって今は、・・・お兄ちゃんから貰った綺麗な指輪が薬指に・・♥
「たっだいまぁーーーーー!!」
「ぅむ、レナよ。ちっとばかし遅いのでは・・な・・・い・・」
「ご、ごめんなさぁ〜〜〜ぃ・・・・」
「にょ・・・・」
「にょ?」
「にょわわわわぁぁぁーーーー!レナがいつのまにか結婚しておるぅぅぅーーーー!?いつじゃ!?いつお兄ちゃんを見つけたのじゃ!?こんなに大きな指輪まで貰いおってからに!!」
バフォ様がじろじろと何度も私の手を眺めてくるの。でも、これって・・。
「バフォ様〜、これは指輪型のキャンディなのですよ〜。でもでも!すっごく綺麗でしょ♪お兄ちゃんに貰ったんだ〜♪」
「キャンディじゃと!?・・・・うぬぬぬぬ・・・、キャンディとはいえ・・・薬指に嵌めていくとは・・・。よし!そのお兄ちゃんをワシにも紹介するのじゃ!」
「いやですぅ〜〜〜!お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなのですぅ!すっごく優しくてかっこよくて・・・いい匂いがして・・、何度も甘えさせてくれて・・、はぅぅ♪思いだしただけでオマタが痺れてきちゃうの♪」
見えない火花を散らしながら睨み合う私とバフォ様。例え相手がバフォ様でもこれだけは譲れないの!だって、お兄ちゃんは私だけのお兄ちゃんなんだから。
「・・・むぅ、・・しょうがないのじゃ・・」
あれ?バフォ様すんなり引き下がってくれたの。なんでだろ?
「さ、食事の時間じゃ」
・・・怪しいの。バフォ様がこんなにあっさり引き下がる訳ないの。これは気を付けないとダメなの。
皆揃ってイタダキマスをしてからご飯を食べるの。あのキャンディの指輪は部屋に置いてある小箱に入れてきたの。お兄ちゃんがくれた綺麗なエンゲージリング。・・・・ぃゃん♪お兄ちゃんったら、そんなとこ舐めちゃダメだよぉ。あっ・・・ぁん♥ダメだってばぁ〜♪
「・・・レナ。食事中に何をしておるんじゃ」
「・・・!?」
危なかったの。もうちょっとでお食事中にイッちゃうとこだったの。あぅ、皆が変な目で見てくるの…。我慢我慢・・。これいじょう妄想しちゃうと皆にばれちゃうから今日は早く寝ちゃおう!
「ごちそうさまでした!」
急いで部屋に戻ってお兄ちゃんに貰った指輪を見つめながらベッドに入るの。
「・・・明日もお兄ちゃんとイッパイイッパイ遊びたいな♪」
今日のお目覚めは最高の気分なの!だって今日も晴れなんだもん!朝ご飯食べたらすぐにお兄ちゃんのお店に遊びに行くもん。
はぁ〜・・・、お腹いっぱいになったのー。それじゃ、いってきまーす。
「待つのじゃ」
「なぁ〜に〜?」
バフォ様が手をにぎにぎしながら近寄ってくるの。これはなんだか危険な予感がするの。
「レナよ、出掛けるのなら御小遣いを持っていくといいぞ」
バフォ様の肉球お手手に握られてたのは500円玉。怪しい・・・、すっごく怪しいですの。500円玉は欲しいの・・・、でも。
「大丈夫なの、バフォ様!レナ、100円持ってるから♪」
「ひゃ、100円・・・じゃと!?」
「それじゃ、行ってきまーす♪」
サバトの寮から飛び出し、あの店まで全速力で走っちゃうの。早く行かないとお兄ちゃんが誰かに取られちゃうの。
「・・・100円で一体何をするつもりなのじゃ、あやつは?・・・ふぅむ、興味が湧いてきたぞい」
ふんふふん♪今日は何して遊ぼうかなー♪昨日の続きが見たいな〜。あ、お店の前にお兄ちゃんが!・・・お・・兄ちゃん・・・・?
「お・・おはよう・・ございます・・」
店の前に居たのはお兄ちゃんじゃなくて知らない女性・・。もしかしてお兄ちゃんの・・・。
「へ?おはよー・・・って!わぁ〜〜〜♪初めて魔女ッ子見たわ〜♪あぁん!もう・・妹にしたいぐらい可愛いわー♥」
「ひにゅぅ〜〜〜・・・!ぐるじぃ・・・でずぅ〜〜・・」
なんなんですかぁーー!いきなり抱き付いてきて!それにすっごい苦しいですよぉ!おっぱいに顔が挟まれてぐるじぃですぅ!
「あ、もしかして昨日アキが言ってた魔女ッ子って貴女の事かな?」
「アキ・・?」
「あら?昨日うちの弟に会ったでしょ?店番してたはずよ?」
お兄ちゃん、アキさんって言うんだ。
「でも、ごめんねー。アキはちょっと出掛けてるのよ。御菓子の仕入れに行ってるから帰ってくるのはお昼前かな?」
残念ですぅ。でもでも、お昼には帰ってくるです!お昼からいっぱい遊んでもらうのです!そうなのです、レナは出来る妻なのですぅ!お兄ちゃんが戻ってくるまで我慢出来る良い子なのです!
「それじゃ〜、明弘が戻ってくるまで・・。お姉さんと遊ぶ?」
「はい!お姉ちゃん♪」
「いい返事ね♪それじゃ、アキが帰ってくるまでお姉さんがたっぷりとおもしろい遊びを教えてあげるわ♪」
す、すごいですぅ・・・。お兄ちゃんもすごいけどお姉ちゃんもすごく上手なのですぅ。
「まだまだこれからよ!」
はわわわ・・・・、色が変わる水飴ってすごいです!それにすっごく甘いです♪
「もっと練ったらすごい色になっちゃうわよ♪」
・・・!?ほぇぇ〜〜〜、バネが勝手に下りていくのですぅ・・。これ、どうなってるのですぅ?
「科学も楽しいもんでしょ♪」
この紐は何かなー?
「引っ張ったらわかるわよ」
-パァンッ!-
「にゃわっ!?また破裂なのですかぁ!?」
またちょっとだけ漏らしちゃったかも・・・。
-キキーッ-
「あ、帰ってきたみたいね。それじゃ遊びはここまでにして搬入作業しないと・・」
「私もお手伝いするのです!」
「ぷっ!・・・いいからいいから。御客様にそんな事させられないの」
むぅ〜〜〜、なんだか頼りにされてないみたいですぅ。こうなったら・・・えいっ!
「な、何だ!?荷物が飛んでるぞ!?嘘だろ、勝手に店の奥に・・」
「ふふ〜〜ん♪私はやれば出来る子なのですよ!」
「へぇ〜〜、これが魔法ってやつなのねー。便利いいわね」
ふふん♪お兄ちゃんもお姉ちゃんもびっくりしてるのです!この調子で次々運ぶのです。えーぃ!・・・これで最後なのです。せーのっ!
「このバカモン!魔法をそんな風に使うでないわ!!」
「ひっ!?」
どうしてバフォ様が此処に居るの。それにどうして魔法使っちゃいけないの。
「レナよ、…お主は良い事をしてるつもりじゃろうが、それは時として悪い事でもあるのじゃ。人は一度でも便利な事を覚えてしまうとそれに頼りきってしまって怠惰になる事もあるのじゃぞ?」
「・・・あぅぅ、ごめんなさぁい・・・」
あぅ、バフォ様の言う通りなのですぅ。一度でも楽しちゃうとそればっかりやっちゃうのですぅ。悪い事しちゃったのですぅ。
「ま・・まぁまぁ・・、えと、レナちゃんも手伝おうとして頑張ってくれたんですからそんなに責めないでやってくれませんか」
「ふむぅ、お主がお兄ちゃんかの。ふむふむ・・・なるほどのぉ。なかなか良い気質の持ち主じゃ。レナが懐くのも無理はないの。ところで・・・」
「何でしょうか?」
「その、・・なんじゃ・・。昨日レナにあげたという・・・///」
こんな時に何を言うんですか。まさかバフォ様、自分も指輪を貰うつもりなんじゃ!?
「・・・・?あー、あれね。ちょっと待ってて」
お兄ちゃんが店の奥からあのキャンディを持ってきたですぅ。やっぱりバフォ様も欲しがってたんだ。
「はい、どうぞ」
「・・・・・にゅふ♪キャンディとはいえ・・指輪とは良いものじゃ♪」
むむぅ〜〜〜〜、まさかバフォ様・・・お兄ちゃんを私から取るつもりじゃ・・。
「ふむ、そこな女子よ」
「へ?あたし?」
「うむ、サバトに興味は無いかの?」
お姉ちゃん必死に首を横に振ってるです。ちょっと残念です。でもでも、やっぱりお姉ちゃんはお姉ちゃんだからムリに魔女にしちゃいけないのです。
「ふーむ、これがあの駄菓子屋というやつかの・・・。ちょっと入ってみるかの・・・。・・・・・・にょわぁぁぁーーーーーーーー!見た事の無い御菓子がイッパイなのじゃああああああああ!?」
あ、バフォ様も同じ反応しちゃってる。バフォ様でも知らない事があったんだ。さぁて、お兄ちゃんも帰ってきたし・・昨日の続きをしてもらおう♪
今日もお兄ちゃんスゴイです!お姉ちゃんも隣でスゴイですぅ!お兄ちゃんルーなんとかキューブをすごい早さで揃えてるのです!お姉ちゃんも隣で三角の塊が繋がったのを動物さんの形に組んでるのです!不思議ですぅ!おもしろいです!楽しいのですぅ!
「ふぉぉぉぉっ!?兄上も姉上も凄いのじゃ!・・・むむむぅ・・・!こんな玩具があったとは驚きじゃ・・」
「まぁ、・・・・もう古い・・・玩具、だから・・ね!っと・・こうして・・よしっ!出来上がり!」
全面綺麗に揃ったキューブを誇らしげに渡してくるお兄ちゃんかっこいいのですよぉ!
「はぃ!私も出来上がり♪」
ふわわぁ〜〜、お姉ちゃんもスゴイのです!あの小さな三角の塊でバフォ様のお手手を作っちゃいました!
「な、なんじゃ!?ワシの手が出来あがっておるではないか!?す、素晴らしいのじゃ!これは次回のサバトで紹介せねば!」
やっぱりお兄ちゃんもお姉ちゃんもスゴイですぅ。はふぅ・・興奮したら喉が渇いたのです。そうだ、今日もあれを飲むのですよ。
「お兄ちゃん、お姉ちゃん」
「「ん、何?」」
「ラムネ2本欲しいですぅ♪」
「はいはい♪」
お兄ちゃんが昨日と同じように栓を抜いてくれたのです♪はい、バフォ様の分ですよ〜♪
「はい、お兄ちゃん。100円なのです♪」
「はい、毎度あり♪」
「んくっ・・・んく・・・ぷはっ♪今日もラムネが美味しいのですぅ♥」
「んく・・・んんぅ・・・ぷはぁ〜♪美味しいのじゃ〜♪レナはずるいのじゃ!こんな美味しい水を一人で飲んで楽しんでるなんてずるいのじゃ!」
「ありがとう、二人共・・。楽しいと言って貰えて嬉しいよ。これで心置きなく・・・近い内に店を畳める」
「「えっ・・・?」」
なんでですぅ!?どうしてなのですぅ!?どうしてお店辞めちゃうのですか!こんなに楽しいお店なのにどうして辞めちゃうのですぅ!?
「お主達・・何故店を畳むのじゃ?」
「そうだな・・・、どこから話したらいいかな・・。まず一つ目は・・時代の流れ・・かな。駄菓子屋は古い時代の置き土産ってとこだし。便利な物が増えた今では僕等のような店は必要とされなくなったからね。後は・・やっぱり生活するにはそれなりの売り上げが必要な訳で・・祖母から受け継いだ店もこれまでかと思うと少し悲しいけど」
はぅぅぅ〜〜〜〜〜、悲しいのですぅ。辛いのですぅ・・。お兄ちゃんとお姉ちゃんに出会えたのに。お兄ちゃんが居なくなるのはイヤなのですぅ。でもでも、・・・お兄ちゃんもお姉ちゃんも真剣な目なのです・・。どうしたらいいのですか・・。
「こんな店でも時々、近所の子・・と言っても君達のような魔物娘の子が遊びに来るので嬉しかったよ・・」
・・・むっ!今なんだかピピッと来たのです!
「お兄ちゃん!もしかして他の子と仲良くなってるなんて事は!」
「ん?ああ、こないだリッチという子だったかな?『文献に載っていない、これは調べないと』とか言って閉店までずっと飴を舐めて居座ってた子が・・。後は・・えーと、そうそう。ダンピールとか言ってた子が『御菓子はやっぱり下町で買うのがいいのよね♥』とか言って凄い量を買い占めていったなー・・」
こ、これは危険なのです!このままだとお兄ちゃんが取られちゃうのです!それだけは阻止しないとダメなのですぅ。あれれ?そういえばバフォ様が静かなのですょ。
「・・・・・・・・・・」
バフォ様・・?どうしちゃったのですか、ずっと黙ってるのですけど。
「よし、わかったのじゃ。この店、我がサバトが買うのじゃ」
「ちょ、ちょっと待ってくれないか。いくらなんでもそれは無理があるんじゃ・・」
「そ、そうよ?物事には順序があってね」
お兄ちゃんもお姉ちゃんも驚いてるの。私も驚いてるのですよ。
「大丈夫じゃ、この店を丸ごと買い取ってサバトの寮に入れるのじゃ」
「「・・・・・は??」」
「バフォ様、何をするの?」
「なぁーに、簡単な事じゃ。このまま転移させればいいだけなのじゃ」
「い、いや、気持ちはありがたいけど・・・」
「生活費も大丈夫なのじゃ。我がサバトで商売すればいいのじゃ。これで全部丸く収まるのじゃ!それに買い取るといっても実権はお主達の物じゃ。祖母の大事な形見みたいじゃからのぉ。どうじゃ、完璧じゃろう!」
「ど、どうする・・、姉さん・・」
「う〜〜ん、私は別に気にしないわ。アキの判断に任せるから」
お兄ちゃんウンウン唸ってるです・・。どうしたらいいのですか・・。はっ!?そうなのです!
「お兄ちゃんお兄ちゃん!」
「んーー・・、ん?何?」
「お兄ちゃんとお姉ちゃんのお店、もっともっと楽しくしたいのですぅ!皆にも教えてあげたいのですよ!お願いですぅ、・・・サバトに・・来て欲しいですぅ・・」
皆に教えちゃうとお兄ちゃん一人占め出来ないけど・・・このままお兄ちゃんとお姉ちゃんが居なくなっちゃうのはもっとイヤなの・・。
「・・・・わかった!こんな店でも良ければ皆の為に・・・(ブォンッ!!)・・・えっ???」
「ふぅぅ〜〜、サバトに送っておいたわい・・」
「あの・・まだ了承って言ってないよね・・・」
「ククッ・・・、お主の口が語る前に目が語っておったわい♪まだまだ店を続けたいとな。それに・・たまにはワシも遊ばせてもらうのじゃ♪」
やったですぅ〜〜!!バフォ様さすがなのです!これから毎日お兄ちゃんとお姉ちゃんと遊べるのですぅ♪
「・・・レナ、お主これから毎日遊べるなどと思ってるのではないだろうな?」
「ギクッ!!・・・なんのことですか〜〜?」
「遊ぶのは仕事が終わってからじゃ!それまでは兄上殿と会う事は許さんのじゃ」
ひどいですぅ〜。あんまりですぅ。明日から毎日遊べると思ったのに〜。
「あの・・その事なんだけどね・・」
「どうしたのじゃ姉上殿?」
「私達・・そのサバトがどこにあるかわからないんだけど・・」
「あっ」
その後、お兄ちゃんの車に皆で乗ってサバトに戻ったの。帰ったら寮の横にお兄ちゃんとお姉ちゃんのお店がくっついていたの。やったなの!これでお兄ちゃんとラブラブ出来ちゃうの♥
「アキお兄ちゃ〜〜ん、マイおねーちゃーん!遊びに来たよー♪」
「いらっしゃ〜い♪ん〜〜〜、いつ見てもお肌ぷにぷにで可愛いわね〜♥」
「んぅ〜〜♪マイお姉ちゃんくすぐったいですょ〜♪」
「いらっしゃいレナちゃん。っと・・・ととっと・・、はいはい80円ね」
むーーっ、・・・またあの子が来てるのですぅ!お兄ちゃんはレナだけのお兄ちゃんなのに。うぅ、バフォ様が頑張ってお店の宣伝したからお客様増えてお兄ちゃん喜んでるけど・・・なんだか複雑な気分なのです!悔しいのです!ラムネ一本貰うのですょ!
「アキ兄ちゃん、ラムネくださいなー♪」
うにゅぅ!!この子は誰なのですか!アキお兄ちゃんと呼んでいいのはレナだけなのですよ!お兄ちゃんも爽やかな笑顔を見せちゃダメなのですぅ。油断するとパクッて食べられちゃいますよ!お兄ちゃんを食べていいのはレナだけです!違うのですぅ、レナがお兄ちゃんに食べられちゃうのですょ♥
「さてと、・・・レナちゃん。昨日の続きするかい?」
「・・・!!するのですぅ!今度こそアキお兄ちゃんに勝ってみせるのですぅ!」
今日こそ勝ってお兄ちゃんとデートするのですょ!それじゃぁ〜〜〜・・・。
「それじゃ、二人共・・用意はいいかしら?せーのっ・・レディ〜〜〜」
『GO!!』
14/06/08 19:50更新 / ぷいぷい