その1 『始業まで』
「あぁっ!来て!もっと私を...っ」
僕の耳に勢い良く求める声が響いてきた。
声はどこかか細く、しかし芯は強いように色っぽく誘ってくる。
これに乗らない男性はきっとそうそういないだろうと思う、僕だったらきっとすぐに求めに応じる。
だが、それはあくまで『僕が対象』だった場合だ。
その声は僕の教室から漏れ出ていて、僕は珍しく早めに登校してきていて教 室の前のドアに突っ立っていた。
別に何か用があったわけでもなかったが、つい朝早く目が覚めてしまっていた。
教室のドアを開けるとその声の主は早速僕とは違う別の男と犯っていた。
それに対して僕はこれといって驚くでもないし呆れる事も無かった。
これは見慣れた『日常風景』なのだ。
声の主は教室の隅に居るアルラウネの鈴木さんだった。
普段なら長く整った綺麗な金髪を流しているのに今朝方は酷く髪が荒れていた。
いや、荒れているのは全部だろう。
鈴木さんは『魔物』だそうで栄養補給に行為がどうしても必要だという話だった。
それについての管理は園芸関係の生徒会役員が、当番やら交代制で回っていたが、最近鈴木さん自身が園芸の委員長を気に入ったらしく、委員長と朝からよろしくやっていた。
「おはようございます」
どうせ行為に夢中で聞こえないだろうが、野暮臭い挨拶をして僕は自分の席に着く、ありがたいことに行為からはかけ離れた窓際の席だった。
普通ならそのままズカズカ入らずにさっさと教室から気不味く退室すれば良かったのだが、これが『日常風景』であると途端に慣れてしまっていた。
いっそのこと事僕も交じってしまいたかった。
だが栄養補給は委員長の佐々木君の特権であるし、己の恋人を他人と一緒にやられたら溜ったものじゃないだろう。
要は栄養補給と言う名の『愛の確認』って奴なのだ。
僕はできる限り気にしないようにしようと、傷んで少し汚れたカバンから参考書を取り出して読んでみるものの、こんな状態では無機質で温かみが全く無いような文章でもまるでエロ本を読んでいるかのような感覚に陥る。
そもそも横で荒々しい声が、響き渡る中で読書するって行為自体が難しい事なんだ。
あぁ幾ら慣れたといっても辛い時だってある、さっさと終わらせてくれ 朝からその嬌声を長く聞いていたら僕はどうにかなってしまいそうだ。
現に今だってこの光景と音に愚息を興奮させている自分がいた。
あんな優しさと愛に包まれた女性と楽しく時を刻んでいるというのに自分はそれに背を向けて無機質な参考書を読みふけっている。
いや、読みふけろうとしているんだな。
結局、栄養補給は教室に僕以外のクラスメイトが、もう少し登校してくるまで続いた。
流石に大人数に見られるのは恥ずかしいのか、それともただ単に疲れてしまったのか、まぁどちらにしろとても満足したようで今でも二人はキスを交わし続けている。
入室してくる生徒の横、もしくは肩などには異性のクラスメイトが必ずと言っていいほど付いていた。
「おはよう♪」
入ってきた女子生徒の一人であるゴブリンの北里が僕に挨拶をしてきた。
明るく元気な声でとても可愛いが、残念な事に既に先客がいる。
「おはよう」
こちらもそれなりに愛想良く返事をした。
笑うことが苦手だとかそんなことはないが、無理にしようと誰だって多少は強張る筈だ。勿論僕もだ
僕の挨拶を聞くと彼女は満足そうに小さな体を動かして、僕より大分離れた自分の席に戻っていった。
そしてこれ見よがしに自分の彼氏に思いっきり抱きついた。
お熱いね と一言言ってやりたいぐらいだが、そんな光景この学校じゃありふれている。
気がつくと大体の生徒が教室に集まっていた。
そして男子と同じ比率で女子がくっついている、まぁ中には『複数系』って言うややこしい連中もいるんだけど。
雰囲気的に多分わかると思うけど僕には『彼女』がいない。
クラスメイトは皆いい人ばかりだから『友達』はいる、だが『彼女』はいない。
別に僕が女子に対して興味がないとか、そんな病的な部分があるとか♂が好・・・おっと、とかそんなことは断じてない。
現に好きな女だっている、だがそれは皆先客がいるんだ。
例えば僕の席の2つ前の席で優雅に座っているサキュバスの・・・えーと・・・名前は何だったろうか?
妙に長ったらしく発音しにくい名前だったので、皆あだ名で読んでいたんだが、そのあだ名すら発音しにくいんだから僕は忘れてしまっていた。
まぁとにかく彼女は素晴らしいの一言に限った。
綺麗でそして優しく、あちらの方も優しいと聞く(僕は経験が無いから全くわからないが)学校屈指の美女だ。
そして彼女にはこれまた学校屈指の美男である生徒会長と付き合っていた。 僕に入る隙間なんて1mmもある訳がない。
ならばそれが拝めるだけでも、まだ幸せだと思っていたほうが良いのかもしれない。
もうしばらく経つと始業時間になろうとしていた。
さすがにこの学校でギリギリで登校してくる奴なんてそうそういない。
ざっと教室内を見回してみると、クラスメイトはほとんど教室の隅や真ん中で談笑をしたりあわよくば行為に耽っている。
よく見ると鈴木さん達が第2ラウンドに入ろうとしていた。
栄養の取りすぎで枯れやしないだろうかと少し心配にもなる。
どうやら全員いるようだ。
いや、待て。
一番最初に確認すべきところがあったと僕は自分の隣りの席を見た。
隣りの席には誰も居ない、窓から入る日光に当たってガランとした感じが増幅されていた。
その日光が当たっている席がまるで嵐の前の静けさの様だと僕は思った。
これからその席がどれほどの『喧騒』に巻き込まれるのかと思うと、無機質だとは分かっていても同情心が湧いた。
そして、その席の主たる『緑の人』はいなかった。
あの人はとても大柄だから、北里程の身の丈でもなければ居なければすぐわかるはずだ。
僕は少し心配になって黒板の上に掛けてある時計を見る。
後数分で始業のチャイムが鳴る。
あの人はどちらかというと遅刻をするタイプだろうが、ここ最近は一応チャイムが鳴る前までには隣にいた。
何故だか僕はそわそわしてきていた、気がつくとカタカタと貧乏ゆすりをしている。
別にあの人が遅刻をしてくることなんてこれまでいくらでもあったじゃないか、なのに何故僕はこんなに落ち着かないのか。
もしかしたらあの人は今日は遅刻ではなくて欠席するのかもしれない。
そう思うと貧乏ゆすりはより一層酷くなってきた。
僕の右隣の奴が、少々怖がっているような視線をあびせかけているのはきっと気のせいだ。
大きい貧乏ゆすりが癪に触って、クラスメイトの一人に注意されるまで僕の頭の中は全てあの人事で一杯だった。
あの神秘的な緑の綺麗な肌。
その綺麗な肌を流れる着物の刺繍のような刺青。
それを全て備えたあの人を早くこの目に入れたかった。
早くこの胸糞悪い不安をさっさと払拭してしまいたかった。
あの人がもし欠席するなら僕もさっさと早退してしまおうか、あの人が見れないならばここにいる価値はさほどあるとは僕には思えなかった。
そう思うと僕はまだ始業チャイムが鳴ってすらいないのに、机に置いていた参考書をカバンの中に詰め込み始めていた。
さて早退の口実はなにか適当な物を考えなくてはいけない。
何がいいだろうか?母が危篤?いや母さんは昨日三者面談で顔を見せたばかりじゃないか。
どうも嘘をつくことが僕は苦手だ。
そう悩んでいると僕の好きな音が廊下から聞こえてきた。
騒々しいその音に他のクラスメイトもこの音の主が誰か気づいたようで
「1週間だけだと思ったけど、アイツ今週も早いんだな」
と一人の生徒がぼやいた、それを聞いてもう片方の生徒が苦笑する
「何か良いことでもあったのかしらね?」
騒々しい音は教室の前に来ると一瞬止まって直ぐ様勢い良く教室のドアが開いた。勢いが良すぎて扉は音を立て凹んでしまった。
先に同情すべきはどうやらドアの方だったようだ
「あぶねぇっ!」
あの人は緑の肌が赤くなるぐらいに息を切らしていた。
そして、扉のことは見向きもせずにのそのそと席に歩いてくる。
「よぉ」
そう一言僕に言うとどかっと乱暴に椅子に腰を下ろした。
貧乏ゆすりはいつの間にか止まって落ち着いていた。
そしてカバンの中の参考書を取り出す作業に僕は取り掛かった。
僕の耳に勢い良く求める声が響いてきた。
声はどこかか細く、しかし芯は強いように色っぽく誘ってくる。
これに乗らない男性はきっとそうそういないだろうと思う、僕だったらきっとすぐに求めに応じる。
だが、それはあくまで『僕が対象』だった場合だ。
その声は僕の教室から漏れ出ていて、僕は珍しく早めに登校してきていて教 室の前のドアに突っ立っていた。
別に何か用があったわけでもなかったが、つい朝早く目が覚めてしまっていた。
教室のドアを開けるとその声の主は早速僕とは違う別の男と犯っていた。
それに対して僕はこれといって驚くでもないし呆れる事も無かった。
これは見慣れた『日常風景』なのだ。
声の主は教室の隅に居るアルラウネの鈴木さんだった。
普段なら長く整った綺麗な金髪を流しているのに今朝方は酷く髪が荒れていた。
いや、荒れているのは全部だろう。
鈴木さんは『魔物』だそうで栄養補給に行為がどうしても必要だという話だった。
それについての管理は園芸関係の生徒会役員が、当番やら交代制で回っていたが、最近鈴木さん自身が園芸の委員長を気に入ったらしく、委員長と朝からよろしくやっていた。
「おはようございます」
どうせ行為に夢中で聞こえないだろうが、野暮臭い挨拶をして僕は自分の席に着く、ありがたいことに行為からはかけ離れた窓際の席だった。
普通ならそのままズカズカ入らずにさっさと教室から気不味く退室すれば良かったのだが、これが『日常風景』であると途端に慣れてしまっていた。
いっそのこと事僕も交じってしまいたかった。
だが栄養補給は委員長の佐々木君の特権であるし、己の恋人を他人と一緒にやられたら溜ったものじゃないだろう。
要は栄養補給と言う名の『愛の確認』って奴なのだ。
僕はできる限り気にしないようにしようと、傷んで少し汚れたカバンから参考書を取り出して読んでみるものの、こんな状態では無機質で温かみが全く無いような文章でもまるでエロ本を読んでいるかのような感覚に陥る。
そもそも横で荒々しい声が、響き渡る中で読書するって行為自体が難しい事なんだ。
あぁ幾ら慣れたといっても辛い時だってある、さっさと終わらせてくれ 朝からその嬌声を長く聞いていたら僕はどうにかなってしまいそうだ。
現に今だってこの光景と音に愚息を興奮させている自分がいた。
あんな優しさと愛に包まれた女性と楽しく時を刻んでいるというのに自分はそれに背を向けて無機質な参考書を読みふけっている。
いや、読みふけろうとしているんだな。
結局、栄養補給は教室に僕以外のクラスメイトが、もう少し登校してくるまで続いた。
流石に大人数に見られるのは恥ずかしいのか、それともただ単に疲れてしまったのか、まぁどちらにしろとても満足したようで今でも二人はキスを交わし続けている。
入室してくる生徒の横、もしくは肩などには異性のクラスメイトが必ずと言っていいほど付いていた。
「おはよう♪」
入ってきた女子生徒の一人であるゴブリンの北里が僕に挨拶をしてきた。
明るく元気な声でとても可愛いが、残念な事に既に先客がいる。
「おはよう」
こちらもそれなりに愛想良く返事をした。
笑うことが苦手だとかそんなことはないが、無理にしようと誰だって多少は強張る筈だ。勿論僕もだ
僕の挨拶を聞くと彼女は満足そうに小さな体を動かして、僕より大分離れた自分の席に戻っていった。
そしてこれ見よがしに自分の彼氏に思いっきり抱きついた。
お熱いね と一言言ってやりたいぐらいだが、そんな光景この学校じゃありふれている。
気がつくと大体の生徒が教室に集まっていた。
そして男子と同じ比率で女子がくっついている、まぁ中には『複数系』って言うややこしい連中もいるんだけど。
雰囲気的に多分わかると思うけど僕には『彼女』がいない。
クラスメイトは皆いい人ばかりだから『友達』はいる、だが『彼女』はいない。
別に僕が女子に対して興味がないとか、そんな病的な部分があるとか♂が好・・・おっと、とかそんなことは断じてない。
現に好きな女だっている、だがそれは皆先客がいるんだ。
例えば僕の席の2つ前の席で優雅に座っているサキュバスの・・・えーと・・・名前は何だったろうか?
妙に長ったらしく発音しにくい名前だったので、皆あだ名で読んでいたんだが、そのあだ名すら発音しにくいんだから僕は忘れてしまっていた。
まぁとにかく彼女は素晴らしいの一言に限った。
綺麗でそして優しく、あちらの方も優しいと聞く(僕は経験が無いから全くわからないが)学校屈指の美女だ。
そして彼女にはこれまた学校屈指の美男である生徒会長と付き合っていた。 僕に入る隙間なんて1mmもある訳がない。
ならばそれが拝めるだけでも、まだ幸せだと思っていたほうが良いのかもしれない。
もうしばらく経つと始業時間になろうとしていた。
さすがにこの学校でギリギリで登校してくる奴なんてそうそういない。
ざっと教室内を見回してみると、クラスメイトはほとんど教室の隅や真ん中で談笑をしたりあわよくば行為に耽っている。
よく見ると鈴木さん達が第2ラウンドに入ろうとしていた。
栄養の取りすぎで枯れやしないだろうかと少し心配にもなる。
どうやら全員いるようだ。
いや、待て。
一番最初に確認すべきところがあったと僕は自分の隣りの席を見た。
隣りの席には誰も居ない、窓から入る日光に当たってガランとした感じが増幅されていた。
その日光が当たっている席がまるで嵐の前の静けさの様だと僕は思った。
これからその席がどれほどの『喧騒』に巻き込まれるのかと思うと、無機質だとは分かっていても同情心が湧いた。
そして、その席の主たる『緑の人』はいなかった。
あの人はとても大柄だから、北里程の身の丈でもなければ居なければすぐわかるはずだ。
僕は少し心配になって黒板の上に掛けてある時計を見る。
後数分で始業のチャイムが鳴る。
あの人はどちらかというと遅刻をするタイプだろうが、ここ最近は一応チャイムが鳴る前までには隣にいた。
何故だか僕はそわそわしてきていた、気がつくとカタカタと貧乏ゆすりをしている。
別にあの人が遅刻をしてくることなんてこれまでいくらでもあったじゃないか、なのに何故僕はこんなに落ち着かないのか。
もしかしたらあの人は今日は遅刻ではなくて欠席するのかもしれない。
そう思うと貧乏ゆすりはより一層酷くなってきた。
僕の右隣の奴が、少々怖がっているような視線をあびせかけているのはきっと気のせいだ。
大きい貧乏ゆすりが癪に触って、クラスメイトの一人に注意されるまで僕の頭の中は全てあの人事で一杯だった。
あの神秘的な緑の綺麗な肌。
その綺麗な肌を流れる着物の刺繍のような刺青。
それを全て備えたあの人を早くこの目に入れたかった。
早くこの胸糞悪い不安をさっさと払拭してしまいたかった。
あの人がもし欠席するなら僕もさっさと早退してしまおうか、あの人が見れないならばここにいる価値はさほどあるとは僕には思えなかった。
そう思うと僕はまだ始業チャイムが鳴ってすらいないのに、机に置いていた参考書をカバンの中に詰め込み始めていた。
さて早退の口実はなにか適当な物を考えなくてはいけない。
何がいいだろうか?母が危篤?いや母さんは昨日三者面談で顔を見せたばかりじゃないか。
どうも嘘をつくことが僕は苦手だ。
そう悩んでいると僕の好きな音が廊下から聞こえてきた。
騒々しいその音に他のクラスメイトもこの音の主が誰か気づいたようで
「1週間だけだと思ったけど、アイツ今週も早いんだな」
と一人の生徒がぼやいた、それを聞いてもう片方の生徒が苦笑する
「何か良いことでもあったのかしらね?」
騒々しい音は教室の前に来ると一瞬止まって直ぐ様勢い良く教室のドアが開いた。勢いが良すぎて扉は音を立て凹んでしまった。
先に同情すべきはどうやらドアの方だったようだ
「あぶねぇっ!」
あの人は緑の肌が赤くなるぐらいに息を切らしていた。
そして、扉のことは見向きもせずにのそのそと席に歩いてくる。
「よぉ」
そう一言僕に言うとどかっと乱暴に椅子に腰を下ろした。
貧乏ゆすりはいつの間にか止まって落ち着いていた。
そしてカバンの中の参考書を取り出す作業に僕は取り掛かった。
14/03/26 11:52更新 / mo56
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