順調に右肩上がりだ。…赤字額が
ここはとある執務室、会議室も兼ねているためにかなり広く、そこに置かれ大きな机の両脇は書類が双璧となり、中央の空いたスペースに突っ伏している者が一人。
突っ伏している頭からは大きな二本の角が生え、全体的に見ると幼く平坦な体という風貌はバフォメットに相違無いものである。背後の壁には魔女がかぶっている三角帽とトレードマークともいえる大鎌がクロスしたデザインの旗が掲げられていた。
常時、開放している入り口からティーセットを魔女が机にところまで運んでくる。
『バフォ様、紅茶をお持ちしました…。』
「おお、すまぬな。」
むくりと気怠そうに顔を上げ、紅茶の香りを楽しみ一息つく。
このサバトでは、布教活動の手段として貿易に手を出した。様々な地域へ訪問し布教するだけでは不十分と判断して、商取引によって信頼を得て布教活動の基盤を作り上げようと画策したのだ。
実際に、商取引をしている商人達のつてで入信者が増えてきたのは予想外であった。以前に布教活動のためだけに施設を借りるのは家賃や交代要員の問題で部下に却下された。
商取引で定期的に訪れるということも、布教活動には有利に働き、入信希望やサバトについて興味を持った者が来ても対応できる者がいないと言うことがほとんどなくなり、天候の影響で遅れても商人達がいつ来るのかを教えてくれるという布教活動の手助けをしてくれる。
商取引についても、赤字さえ出なければいいという方針で行い、かつ商人達の不利になるようなことは極力しないように配慮した結果、貿易商としては5本指に入るぐらいにまで大きくなっていった。
そうなると、やっかいな問題も露見してくる。元々、商取引の利益は重要視していないからか、多くの商人達の御用達になったため得意先を奪われたかっこうになった他の勢力が牙をむいてきたのだ。
ほとんどの勢力は商業で平和的に対抗してきたのだが、一部は戦力による実力行使で対抗してきた。反魔物国家の勢力と海賊達だ。
これらにより多大な損害を受け、撤退寸前にまで追い込まれたが、その被害は他の貿易商まで広がり、商人達や同じ被害を受けていた勢力と協力し、戦列艦隊を編成して対抗した。その成果は顕著に表れ、何とか持ち直すことができこのまま順調にいけばという矢先のことだった。
『去年起工した新型戦列艦が進水しました。それと建造中の100門級戦列艦が10隻竣工しました。』
「そうか、戦列艦の損害が激しい支部へ回すように手配するのじゃ。」
『損傷した80門級戦列艦は修復不能という判断で処分しました。』
「はあ、いつもよい知らせと悪い知らせが同時じゃのう。」
『申し訳ありません。』
「よいよい、お主らはよくやってくれておる。しかし、これ以上軍艦に回す予算は厳しいのう。」
『特に新型戦列艦には多くの費用が掛かりましたので。』
「100門級戦列艦何隻分かは考えたくはないがのう。」
『よく、そのような新型戦列艦の建造を許可なされましたね。』
「まあ、あやつが自信たっぷりに、その姿を見ただけで海賊どもが泳いで逃げ出す船を作ってやる。などと言いおったからな。面白そうだからすべて任せたのじゃ。」
『そのおかげで、従来の造船所では建造できないと造船所を一から建設する羽目になるし、船の要員としてかなりの人数が取られてしまいましたけど。』
「そして、材料も木ではなく鉄を大量に使うと言っておったな。」
『装甲艦を作るのかと思ったんですけど、否定されました。』
「設計図面と実際に造船所に行ってみたが、さっぱり理解できんかったわい。これが失敗したらデビルバグの巣に永遠に閉じ込めると言ったがな。」
『うわぁ…。でも、私たちだけで建造しなくても前みたいに協力すれば負担もそんなに大きくならなかったと思います。』
二杯目の紅茶をカップに注がれ、それを優雅に口に含んだあと
「あやつが、これは単独でやらないと意味がないし、危険だ。この新型艦の情報や技術を外部に漏らしてはいけないんだ。などと言ってな。」
『まあ、協力を求めたところで、不可能だと誰もが思いますよね。』
「鉄が水に浮くじゃからな。」
『新型戦列艦の乗員に選ばれた魔女達の話ですと、毎日、公式だの定理だのといろいろと勉強しているそうです。戦闘をするときに重要になると言われてるとか。』
「あやつらに大砲を扱えるわけがないじゃろうが。」
『今回は、戦列艦が減ったために余剰となった人員も回しましたが、その者達からも教育ばかりだと聞いています。』
「それだけ本気なのじゃろうな、ほんとに楽しみじゃ。」
『それはどちらでしょうか?』
「もちろん、デビルバグの巣へ放り込むときの顔じゃ。」
『えええ〜』
「…冗談じゃよ。」
『もちろんそうですよね。』
(冗談なんかじゃ絶対ない。眼がマジだった。)
そんな不穏な会話がされているともつゆ知らず、港町の造船所前でやっと浮かんだ船体を見ながら作業内容をそれぞれの要員に指示し、次への段階へと思案している男がいた。
突っ伏している頭からは大きな二本の角が生え、全体的に見ると幼く平坦な体という風貌はバフォメットに相違無いものである。背後の壁には魔女がかぶっている三角帽とトレードマークともいえる大鎌がクロスしたデザインの旗が掲げられていた。
常時、開放している入り口からティーセットを魔女が机にところまで運んでくる。
『バフォ様、紅茶をお持ちしました…。』
「おお、すまぬな。」
むくりと気怠そうに顔を上げ、紅茶の香りを楽しみ一息つく。
このサバトでは、布教活動の手段として貿易に手を出した。様々な地域へ訪問し布教するだけでは不十分と判断して、商取引によって信頼を得て布教活動の基盤を作り上げようと画策したのだ。
実際に、商取引をしている商人達のつてで入信者が増えてきたのは予想外であった。以前に布教活動のためだけに施設を借りるのは家賃や交代要員の問題で部下に却下された。
商取引で定期的に訪れるということも、布教活動には有利に働き、入信希望やサバトについて興味を持った者が来ても対応できる者がいないと言うことがほとんどなくなり、天候の影響で遅れても商人達がいつ来るのかを教えてくれるという布教活動の手助けをしてくれる。
商取引についても、赤字さえ出なければいいという方針で行い、かつ商人達の不利になるようなことは極力しないように配慮した結果、貿易商としては5本指に入るぐらいにまで大きくなっていった。
そうなると、やっかいな問題も露見してくる。元々、商取引の利益は重要視していないからか、多くの商人達の御用達になったため得意先を奪われたかっこうになった他の勢力が牙をむいてきたのだ。
ほとんどの勢力は商業で平和的に対抗してきたのだが、一部は戦力による実力行使で対抗してきた。反魔物国家の勢力と海賊達だ。
これらにより多大な損害を受け、撤退寸前にまで追い込まれたが、その被害は他の貿易商まで広がり、商人達や同じ被害を受けていた勢力と協力し、戦列艦隊を編成して対抗した。その成果は顕著に表れ、何とか持ち直すことができこのまま順調にいけばという矢先のことだった。
『去年起工した新型戦列艦が進水しました。それと建造中の100門級戦列艦が10隻竣工しました。』
「そうか、戦列艦の損害が激しい支部へ回すように手配するのじゃ。」
『損傷した80門級戦列艦は修復不能という判断で処分しました。』
「はあ、いつもよい知らせと悪い知らせが同時じゃのう。」
『申し訳ありません。』
「よいよい、お主らはよくやってくれておる。しかし、これ以上軍艦に回す予算は厳しいのう。」
『特に新型戦列艦には多くの費用が掛かりましたので。』
「100門級戦列艦何隻分かは考えたくはないがのう。」
『よく、そのような新型戦列艦の建造を許可なされましたね。』
「まあ、あやつが自信たっぷりに、その姿を見ただけで海賊どもが泳いで逃げ出す船を作ってやる。などと言いおったからな。面白そうだからすべて任せたのじゃ。」
『そのおかげで、従来の造船所では建造できないと造船所を一から建設する羽目になるし、船の要員としてかなりの人数が取られてしまいましたけど。』
「そして、材料も木ではなく鉄を大量に使うと言っておったな。」
『装甲艦を作るのかと思ったんですけど、否定されました。』
「設計図面と実際に造船所に行ってみたが、さっぱり理解できんかったわい。これが失敗したらデビルバグの巣に永遠に閉じ込めると言ったがな。」
『うわぁ…。でも、私たちだけで建造しなくても前みたいに協力すれば負担もそんなに大きくならなかったと思います。』
二杯目の紅茶をカップに注がれ、それを優雅に口に含んだあと
「あやつが、これは単独でやらないと意味がないし、危険だ。この新型艦の情報や技術を外部に漏らしてはいけないんだ。などと言ってな。」
『まあ、協力を求めたところで、不可能だと誰もが思いますよね。』
「鉄が水に浮くじゃからな。」
『新型戦列艦の乗員に選ばれた魔女達の話ですと、毎日、公式だの定理だのといろいろと勉強しているそうです。戦闘をするときに重要になると言われてるとか。』
「あやつらに大砲を扱えるわけがないじゃろうが。」
『今回は、戦列艦が減ったために余剰となった人員も回しましたが、その者達からも教育ばかりだと聞いています。』
「それだけ本気なのじゃろうな、ほんとに楽しみじゃ。」
『それはどちらでしょうか?』
「もちろん、デビルバグの巣へ放り込むときの顔じゃ。」
『えええ〜』
「…冗談じゃよ。」
『もちろんそうですよね。』
(冗談なんかじゃ絶対ない。眼がマジだった。)
そんな不穏な会話がされているともつゆ知らず、港町の造船所前でやっと浮かんだ船体を見ながら作業内容をそれぞれの要員に指示し、次への段階へと思案している男がいた。
12/01/08 05:52更新 / うみつばめ
戻る
次へ