魔物狩り その3
今日一日の仕事を終え、自身の収入となる捕獲した魔物娘達が入っている大きな袋を背負い、取引先である魔物屋の前まで来たアレン。
魔物屋の中へ入ると、カウンターの前で店の主であるフランクと、誰かがたわいもない雑談を交わしている姿が見える。
フランクはアレンの姿をちらりと見ると、ニヤニヤといつものようにセールスマン風の笑みを浮かべ、こっちへ手招きしている。手招きしながら顔を雑談相手の方へ向き、また再び雑談を再開している。そうすると今度は、雑談相手の方がアレンをちらりと横目で見てきた。
(…あいつは)
アレンはその相手を知っていた。フランクと話している相手はリザードマンのエリス、アレンと同じく『魔物狩り』の同業者である。ただ他の同業者からは、通称『同族狩り』と呼ばれ彼女のような存在は極めて珍しく、割と有名であったりもする。しかし有名だからと言って、同業者から評価や好感は高いとは言えない。
アレンはそのままカウンターに行くと、入れ替わりのようにエリスは、フランクに挨拶するとそのままカウンターの前から離れその場を去ろうとする。
彼女が歩くたびに、後ろの黄緑色のすべすべとしたトカゲのような尻尾が、彼女の後ろで髪をまとめているポニーテールと同様に、左右に強く揺れている。
口を硬く閉ざし、気の強くてとても凛々しい目つきでアレンをじっと見ている。アレンの前で少し立ち止まり、軽く会釈してそのまま魔物屋から出て行った。
(……)
「おう、おかえりぃ〜大将」
フランクはニヤニヤとアレンを眺めている。
「…あいつはなぜここに?」
「おっ、大将珍しいねぇ〜普段他人のことなんか関心なんて示さないのさぁ〜、どういう風の吹き回しかい?」
アレンは反射的にキッと、おもいっきりフランクを冷めた目で睨みつける。
「あぁんもう〜そんなことで怒るなってのいい男の顔が台無しだぞ、あぁ彼女は大将と同じで魔物を売りに来たんだよ、ところで収穫なんだろ?大将?」
フランクは、予想外にアレンが怒ったことに疑問と理不尽を抱きつつも、すぐさま切り替えてビジネス用の商売顔に戻る。
(フン…)
アレンは、カウンターの前に乱暴に大きな袋を置いた、そして縛っている紐を解いて中から捕まえた獲物を取り出す。その中から、厳重に縛られ体を折りたたまれたまま熟睡しているワーラビットと、大人しくすやすやと眠っているフェアリーが出てくる。
「ワーラビットとフェアリーね…ちょっと待ってくれ…」
フランクはそう言うと、店の裏へと消えて暫くすると小さな車輪がついたカートに、中サイズと小サイズの鉄格子の箱を乗せて、カートを引きながらやって来た。
そうして、ワーラビットとフェアリーを大事そうに抱えて、各サイズの鉄格子の箱の中にそっと入れ、箱の蓋を閉めた。
アレンの後ろにいる、他の鉄格子の箱の中に入れられた魔物娘達はジッとその様子を眺めており、ざわざわと小さく騒いでいる。
(あ…かわいそうに…、また犠牲者が一人…、うるうる……もう嫌だよ…誰か…)
「二匹か…大将にしてはあまり数が少ないね…」
最近の動向として、魔物娘達の凶暴性が増し、なかなか魔物娘を捕獲することが出来ないことが多くなっている。逆に『魔物狩り』の人間が彼女達に負け、命を落としたりそのまま彼女達に強姦され、彼女達に精を与えるための性奴隷になったり、彼女達の夫となったりと『魔物狩り』の数が激減しているのが今の世の中である。その影響を魔物屋は大いに受け、店が潰れていくことが後を絶たない、お互いに大打撃をこうむっている。原因は彼女達の王である、魔王の魔力が日に日に強まっていることが原因とされている。
それに加え、教団という魔物娘達を人間の存在を根絶させる恐れのある、悪の存在であるとし、魔物娘達を問答無用の殺戮行為を行ったりして、危険分子を減らそうとしている団体もいる。その結果、数が減ってなかなか狩ることが出来ずに、同じようにお互い大打撃をこうむるようになっている。
「本当にやりにくくなったよなぁ…」
フランクは、カウンターで領収書にサインしながら、心の底から辛そうに独り言をつぶやいている。フランクは長年この仕事をやっているため、年を少しとりすぎてなかなか他の職業で雇ってくれるような所はなかなかいない。
「よし、今日の報酬と領収書だ、ほれ」
アレンはフランクから報酬と領収書を受け取る。いつもと違い少ない報酬にアレンは心の中で舌打ちする。
報酬の額は魔物屋で売られる魔物娘達の額の十分の一と決まっている。なぜならば、これほどの量と種類を取り扱っており、彼女らが食べる物はそれぞれ違うため、食費や店の維持費にそれを管理する管理者を雇う金など、割とたくさんの支出である。魔物屋としての利益は約三割とさほど多くはない。
フランクは、座っている椅子の背もたれに体を預け、そのまま天井をじっと眺めている。手で目元を押さえなにやら考え事にふけっているよう。
(…そろそろ家へ…)
アレンは、一日中立ちっぱなしで鉛のように重くなってしまった足に鞭を入れ、店の主フランクに別れの挨拶を告げる。
「フランク…また明日も頼む…」
「……はいはい、いつでも来な」
いつの間にか空は漆黒の闇に染まり、街の家々の窓から明かりがちらほらとつき始めていた。
「……」
アレンは明日へ向けて黙々と帰宅の夜道を歩いて行ったのだった。
魔物屋の中へ入ると、カウンターの前で店の主であるフランクと、誰かがたわいもない雑談を交わしている姿が見える。
フランクはアレンの姿をちらりと見ると、ニヤニヤといつものようにセールスマン風の笑みを浮かべ、こっちへ手招きしている。手招きしながら顔を雑談相手の方へ向き、また再び雑談を再開している。そうすると今度は、雑談相手の方がアレンをちらりと横目で見てきた。
(…あいつは)
アレンはその相手を知っていた。フランクと話している相手はリザードマンのエリス、アレンと同じく『魔物狩り』の同業者である。ただ他の同業者からは、通称『同族狩り』と呼ばれ彼女のような存在は極めて珍しく、割と有名であったりもする。しかし有名だからと言って、同業者から評価や好感は高いとは言えない。
アレンはそのままカウンターに行くと、入れ替わりのようにエリスは、フランクに挨拶するとそのままカウンターの前から離れその場を去ろうとする。
彼女が歩くたびに、後ろの黄緑色のすべすべとしたトカゲのような尻尾が、彼女の後ろで髪をまとめているポニーテールと同様に、左右に強く揺れている。
口を硬く閉ざし、気の強くてとても凛々しい目つきでアレンをじっと見ている。アレンの前で少し立ち止まり、軽く会釈してそのまま魔物屋から出て行った。
(……)
「おう、おかえりぃ〜大将」
フランクはニヤニヤとアレンを眺めている。
「…あいつはなぜここに?」
「おっ、大将珍しいねぇ〜普段他人のことなんか関心なんて示さないのさぁ〜、どういう風の吹き回しかい?」
アレンは反射的にキッと、おもいっきりフランクを冷めた目で睨みつける。
「あぁんもう〜そんなことで怒るなってのいい男の顔が台無しだぞ、あぁ彼女は大将と同じで魔物を売りに来たんだよ、ところで収穫なんだろ?大将?」
フランクは、予想外にアレンが怒ったことに疑問と理不尽を抱きつつも、すぐさま切り替えてビジネス用の商売顔に戻る。
(フン…)
アレンは、カウンターの前に乱暴に大きな袋を置いた、そして縛っている紐を解いて中から捕まえた獲物を取り出す。その中から、厳重に縛られ体を折りたたまれたまま熟睡しているワーラビットと、大人しくすやすやと眠っているフェアリーが出てくる。
「ワーラビットとフェアリーね…ちょっと待ってくれ…」
フランクはそう言うと、店の裏へと消えて暫くすると小さな車輪がついたカートに、中サイズと小サイズの鉄格子の箱を乗せて、カートを引きながらやって来た。
そうして、ワーラビットとフェアリーを大事そうに抱えて、各サイズの鉄格子の箱の中にそっと入れ、箱の蓋を閉めた。
アレンの後ろにいる、他の鉄格子の箱の中に入れられた魔物娘達はジッとその様子を眺めており、ざわざわと小さく騒いでいる。
(あ…かわいそうに…、また犠牲者が一人…、うるうる……もう嫌だよ…誰か…)
「二匹か…大将にしてはあまり数が少ないね…」
最近の動向として、魔物娘達の凶暴性が増し、なかなか魔物娘を捕獲することが出来ないことが多くなっている。逆に『魔物狩り』の人間が彼女達に負け、命を落としたりそのまま彼女達に強姦され、彼女達に精を与えるための性奴隷になったり、彼女達の夫となったりと『魔物狩り』の数が激減しているのが今の世の中である。その影響を魔物屋は大いに受け、店が潰れていくことが後を絶たない、お互いに大打撃をこうむっている。原因は彼女達の王である、魔王の魔力が日に日に強まっていることが原因とされている。
それに加え、教団という魔物娘達を人間の存在を根絶させる恐れのある、悪の存在であるとし、魔物娘達を問答無用の殺戮行為を行ったりして、危険分子を減らそうとしている団体もいる。その結果、数が減ってなかなか狩ることが出来ずに、同じようにお互い大打撃をこうむるようになっている。
「本当にやりにくくなったよなぁ…」
フランクは、カウンターで領収書にサインしながら、心の底から辛そうに独り言をつぶやいている。フランクは長年この仕事をやっているため、年を少しとりすぎてなかなか他の職業で雇ってくれるような所はなかなかいない。
「よし、今日の報酬と領収書だ、ほれ」
アレンはフランクから報酬と領収書を受け取る。いつもと違い少ない報酬にアレンは心の中で舌打ちする。
報酬の額は魔物屋で売られる魔物娘達の額の十分の一と決まっている。なぜならば、これほどの量と種類を取り扱っており、彼女らが食べる物はそれぞれ違うため、食費や店の維持費にそれを管理する管理者を雇う金など、割とたくさんの支出である。魔物屋としての利益は約三割とさほど多くはない。
フランクは、座っている椅子の背もたれに体を預け、そのまま天井をじっと眺めている。手で目元を押さえなにやら考え事にふけっているよう。
(…そろそろ家へ…)
アレンは、一日中立ちっぱなしで鉛のように重くなってしまった足に鞭を入れ、店の主フランクに別れの挨拶を告げる。
「フランク…また明日も頼む…」
「……はいはい、いつでも来な」
いつの間にか空は漆黒の闇に染まり、街の家々の窓から明かりがちらほらとつき始めていた。
「……」
アレンは明日へ向けて黙々と帰宅の夜道を歩いて行ったのだった。
10/08/27 18:24更新 / 墓守の末裔
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