魔物狩り
とある大きな街の一角にて、朝日が昇りまもない頃、人の行き通りが激しい通りにて、とても真っ黒の黒い髪色の旅人のような身なりをした青年が、荒れ狂う大波のような人ごみの中をひっそりと歩いていた。少し時間がたつと大波のような人ごみは、やがて渦を巻くように激しくなり気がつくと青年はどこかへ消えてしまっていた。
「・・・・・・」
いつの間にか青年は街の裏通りを歩いており、日のささないジメジメとしたとても涼しげな道を歩いていた。青年の後ろからガヤガヤと人々の行きかう足音や声が微かに聞こえている。
「・・・ついたか・・・」
錆び付いてところどころひびが入っている家々の壁に、一つだけ扉がついた壁がある。その扉の上に『魔物屋』と字はかすれて読みにくいがそう書かれた看板がある。壁に窓はなくそこから中の様子を見ることは出来ない。
店へ入るとまず耳に小さなサイズの鉄格子の檻に無理やり入れられ、何をされるか分からずパニックを起こす魔物娘達の声が、耳に痛いほど入ってくる。
(あっ、人間め!!)←ワーウルフ
(助けてよ、ここから出してよ!!)←ハーピー
(うるうるしくしく・・・)←つぼまじん
「やぁいらっしゃい、おや大将さんじゃないですか?」
ニヤニヤとカウンターから出迎えてきたのは、この魔物屋の主人フランクである。本人は爽やかな営業スマイルと言っているが、ニヤニヤ顔であきらかに怪しいセールスマン風の笑みを浮かべており、とても気味が悪い。
「今日も売りかい?はて、いつもなら大将は午後に商品(魔物娘)を売りにうちへ寄るのになぜこんな朝早く?」
「いや・・・別にただなんとなく・・・」
青年は言葉少なめに、なにかお面を被ったような表情を浮かべ淡々とした口調でそう返した。
「なんとなくねぇ・・・」
青年の反応を見ていると、とてもじゃないがすぐ返すような言葉も見つからずフランクは困った。ちなみにこれは今に限ったことではない。
「あ〜、まぁ、いつものパターンじゃ面白くないから時間を変えたのかな?」
フランクがやっと考えた言葉を返すと、青年はそのまま黙ってうなずき肯定した。
(全くいつもながら本当にくたびれるな、長い付き合いなのになんでのか?)
青年とフランクは『魔物狩り』と『魔物屋』という職で、いちおうビジネスの仕事関係にある。『魔物狩り』というのは野生に生息する魔物娘達を捕獲し、魔物娘を取り扱う店に売ってその金で生活をする人間達のことを指す。その売ってきた魔物娘達を、成金野郎の金持ちやら富裕層に高額で売りつけ商売をする人間のことを『魔物屋』と指す。
長い付き合いといっても所詮はビジネスの関係で、人間の情とかでそれでも少しプライベートの話は多少はするが、しかしフランクと青年の関係はまさにビジネス関係の鏡そのもので、フランクは全く青年の素性を知らない。
(そろそろ、『狩り』の時間か・・・)
青年はフランクと少し言葉を交わして、そのまま店を出て行った。
青年が魔物屋から出て一時間後、青年は街の外から数キロ離れた草原地帯にいた。邪魔で鬱陶しい草達を掻き分けながら青年は目標を見つけようとぶらぶらとさまよっていた。
「ん・・・!?」
青年は気配を感じ、その場で素早くしゃがんで息を殺し気配を消した。
青年の目の前数メートル先に、うさぎの耳のようなものが落ち着きなくあっちこっちへ移動して、とても鬱陶しかった。
(草原にうさぎの耳・・・これは)
青年に正体は分かった。その正体はワーラビットという草原地帯に多数生息する半人半獣の魔物娘だ。とても大人しく人間を見つけてもそう攻撃することもなく、逆に友好的で危険なことは少ない。
なるべく音をたてずに目標へ近づき、様子を探る。
「ちょうちょ、ちょうちょ、この指止まれぇ〜」
どうやらワーラビットは自分の近くを飛び回る蝶と戯れているようだ。その姿はとても無邪気で敵意がなく、思わず和んでしまうような光景だ。だが、青年にとってはいいかもだった。
(全く気づいていない愚かなやつめ・・・今だ)
青年はさっそく行動を開始する。
「うわぁ!!一体何ぃ?」
なにがなんだか分からず混乱するワーラビットを尻目に、青年はまずワーラビットの足の部分を素早く縛っていく。ワーラビットの下半身はうさぎそのそもので、足腰は強靭で下手をすると素早く飛び回りながら逃げてしまうため、先に縛っておく。
(次・・・手)
次は体と一緒に手を縛ろうとするが、ワーラビットの抵抗は激しく全くおとなしく捕まるようにはなってくれない。
「いや、いやぁ〜・・・」
(くそ・・・仕方ない)
青年は最終手段に、着ている上着の懐から香水のようなものを取り出すと、ワーラビットに素早くそれをふきつけた。
「うっ・・・」
ワーラビットの抵抗は突然止まり、ワーラビットから微かに寝息が聞こえるようになった。
(すぅーすぅー・・・)
「悪く思うなよ」
青年はワーラビットを用意してある大きな袋の中に入れる。何も罪のない魔物娘を捕獲しても、なんら罪の意識を感じないのは、『魔物狩り』にとってはほぼ当たり前の反応である。
「よし・・・まだ物足りない、次へ」
青年はことを済ませるとまたどこかへ歩き始めた。
ちなみに青年の名はアレン、どこにでもいる『魔物狩り』だ。
「・・・・・・」
いつの間にか青年は街の裏通りを歩いており、日のささないジメジメとしたとても涼しげな道を歩いていた。青年の後ろからガヤガヤと人々の行きかう足音や声が微かに聞こえている。
「・・・ついたか・・・」
錆び付いてところどころひびが入っている家々の壁に、一つだけ扉がついた壁がある。その扉の上に『魔物屋』と字はかすれて読みにくいがそう書かれた看板がある。壁に窓はなくそこから中の様子を見ることは出来ない。
店へ入るとまず耳に小さなサイズの鉄格子の檻に無理やり入れられ、何をされるか分からずパニックを起こす魔物娘達の声が、耳に痛いほど入ってくる。
(あっ、人間め!!)←ワーウルフ
(助けてよ、ここから出してよ!!)←ハーピー
(うるうるしくしく・・・)←つぼまじん
「やぁいらっしゃい、おや大将さんじゃないですか?」
ニヤニヤとカウンターから出迎えてきたのは、この魔物屋の主人フランクである。本人は爽やかな営業スマイルと言っているが、ニヤニヤ顔であきらかに怪しいセールスマン風の笑みを浮かべており、とても気味が悪い。
「今日も売りかい?はて、いつもなら大将は午後に商品(魔物娘)を売りにうちへ寄るのになぜこんな朝早く?」
「いや・・・別にただなんとなく・・・」
青年は言葉少なめに、なにかお面を被ったような表情を浮かべ淡々とした口調でそう返した。
「なんとなくねぇ・・・」
青年の反応を見ていると、とてもじゃないがすぐ返すような言葉も見つからずフランクは困った。ちなみにこれは今に限ったことではない。
「あ〜、まぁ、いつものパターンじゃ面白くないから時間を変えたのかな?」
フランクがやっと考えた言葉を返すと、青年はそのまま黙ってうなずき肯定した。
(全くいつもながら本当にくたびれるな、長い付き合いなのになんでのか?)
青年とフランクは『魔物狩り』と『魔物屋』という職で、いちおうビジネスの仕事関係にある。『魔物狩り』というのは野生に生息する魔物娘達を捕獲し、魔物娘を取り扱う店に売ってその金で生活をする人間達のことを指す。その売ってきた魔物娘達を、成金野郎の金持ちやら富裕層に高額で売りつけ商売をする人間のことを『魔物屋』と指す。
長い付き合いといっても所詮はビジネスの関係で、人間の情とかでそれでも少しプライベートの話は多少はするが、しかしフランクと青年の関係はまさにビジネス関係の鏡そのもので、フランクは全く青年の素性を知らない。
(そろそろ、『狩り』の時間か・・・)
青年はフランクと少し言葉を交わして、そのまま店を出て行った。
青年が魔物屋から出て一時間後、青年は街の外から数キロ離れた草原地帯にいた。邪魔で鬱陶しい草達を掻き分けながら青年は目標を見つけようとぶらぶらとさまよっていた。
「ん・・・!?」
青年は気配を感じ、その場で素早くしゃがんで息を殺し気配を消した。
青年の目の前数メートル先に、うさぎの耳のようなものが落ち着きなくあっちこっちへ移動して、とても鬱陶しかった。
(草原にうさぎの耳・・・これは)
青年に正体は分かった。その正体はワーラビットという草原地帯に多数生息する半人半獣の魔物娘だ。とても大人しく人間を見つけてもそう攻撃することもなく、逆に友好的で危険なことは少ない。
なるべく音をたてずに目標へ近づき、様子を探る。
「ちょうちょ、ちょうちょ、この指止まれぇ〜」
どうやらワーラビットは自分の近くを飛び回る蝶と戯れているようだ。その姿はとても無邪気で敵意がなく、思わず和んでしまうような光景だ。だが、青年にとってはいいかもだった。
(全く気づいていない愚かなやつめ・・・今だ)
青年はさっそく行動を開始する。
「うわぁ!!一体何ぃ?」
なにがなんだか分からず混乱するワーラビットを尻目に、青年はまずワーラビットの足の部分を素早く縛っていく。ワーラビットの下半身はうさぎそのそもので、足腰は強靭で下手をすると素早く飛び回りながら逃げてしまうため、先に縛っておく。
(次・・・手)
次は体と一緒に手を縛ろうとするが、ワーラビットの抵抗は激しく全くおとなしく捕まるようにはなってくれない。
「いや、いやぁ〜・・・」
(くそ・・・仕方ない)
青年は最終手段に、着ている上着の懐から香水のようなものを取り出すと、ワーラビットに素早くそれをふきつけた。
「うっ・・・」
ワーラビットの抵抗は突然止まり、ワーラビットから微かに寝息が聞こえるようになった。
(すぅーすぅー・・・)
「悪く思うなよ」
青年はワーラビットを用意してある大きな袋の中に入れる。何も罪のない魔物娘を捕獲しても、なんら罪の意識を感じないのは、『魔物狩り』にとってはほぼ当たり前の反応である。
「よし・・・まだ物足りない、次へ」
青年はことを済ませるとまたどこかへ歩き始めた。
ちなみに青年の名はアレン、どこにでもいる『魔物狩り』だ。
10/08/24 19:07更新 / 墓守の末裔