連載小説
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ハーピーの揺り篭
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不思議な世界に迷い込んでから1日目。

太陽の陽射しを浴びながら、広い草原を歩いていた。

色鮮やかな草花や見たことのない植物を眺めながら

ピクニック気分で歩を進めていた。

幼子化したことにより、ダボダボになってしまった服を

羽織るようにして、暑い日差しを避けて歩き続ける。



「ぅー…んっ…。不思議なところだなぁ…。こんな草原を歩くのも何年振りだろぅ…」


僕の住んでいた街は、元々は小さな集落だった。

春には田んぼの田植えを手伝い、稲を植えて

夏には蝉の鳴き声を聞きながら、西瓜をかじり

秋には栗の実や、山葡萄をたくさん拾ってきたり

冬には小さな子供達と一緒に雪ダルマや、かまくらを作ったり

そんな、のどかな田舎だった…。

そんな田舎さえ、もうどこにも存在しない世界になってしまってから

僕は他人の言いなりに行動している…。



「本当に…。ここはどこなんだろ…でも、僕にとって清清しい世界………ん?」


*バサッバサッバサッ*


昔の事を思い出す中、ふと鳥が羽ばたくような

羽の音に気づき、周囲を見渡す。

でも、鳥のような生き物は見当たらない。



*バサッバサッバサッ*


なんだか…。近づいてきてる?

でも、周囲には何も居ない…

というより、上から聞こえるような…


*バサッ…バサッ…*


間違いないっ…。

真上で停滞しているような羽音が聞こえる…

視線を地面に向けると、小さくなってしまった僕の体を

多い尽くせるほどの大きな影が見える…ぅ…。


*バサッ……。ガシッ*


上に居る何かに視線を向けようとしても、金縛りにかかったように体が動かせない…。

太陽の陽射しを受け続け体が暑いはずなのに、背筋がゾーッとするような気分に…ぃっ!?

か…かたに何かぁ…。硬い物がぁ……ぁ…。


「こーんにちわっ!」


………え?女の子の声…?

視線を上に向けると、想像していた生き物とは違う

無邪気そうにこちらを見つめる女の子の顔が…。



「ぁっ…こ、こんにち………は…」



陽気な挨拶と笑顔に思わず、返事をしてしまったけど

その女の子の腕には、肩から先が大きな翼に包まれていて

大きな鍵爪が見える…ぅ…。

肩に当たっているのも、大きな鳥のような鍵爪とその上には

モチモチとしていそうな女の子の太股…ぉ…

鳥と女の子が混じった姿をしているハーピー…さん…が

僕の肩に鍵爪をまわしていてしっかりと固定されてる…ぅ…。



「こんな所で、なーにしてるのっ? この辺りには
こわーぃ鳥さんが男の子をさらっちゃうんだよー?」



ぇ…。そ、それって………。どう考えても

このハーピーさん…が、そのさらっちゃう鳥さん…ぅ…。



「そ…そうなんですか…ぁ…。じゃ、じゃぁ…早めにお家に帰りますぅ…」



なるべく、流そうと返事を返すけど、声が震えているのを見て

ハーピーさんの、口の端に涎のような物が見えたよぅ…な…。



「でもね? この話を聞いた子は…。お家に帰れなかったんだよ?」


*バサッ…バサッ…*



妙な浮遊感を覚えたと思ったら、急に地面が遠くなって…ぇ……っ!?



「わわっっ!? は、離してぇ………ぁぁぁ…………」




思いっきり暴れて、振りほどこうとしたけど

草原が小さな広場に見えるほど、高い所にさらわれちゃったぁ……。

周囲の地平線が見えるようなほど、高い高い所にさらわれ……

さ、さむ……ぃ…からだ…ぁ…こごえ…るぅ…




「こ、こらっ! そんなに暴れたら…ぁっ…」



……ぁ…え?

きゅうに僕のかたをつかんでた、硬いかんしょくが……

ぁ…………なんだ…ろ……ぉ…

くうきが、とっても………ぃた…ぃ…

さっきの……そうげん…かなぁ…

このまま…ぁ…。しんじゃ…ぅの……?

だんだん、からだ…ぁ…いしきも…。とおく…ぅ…。




…サッ…バ…バサッ……ガシッ…ッ…バサッ…バサッ…バサッ…

―――――――――――――――――――――――――――――――――――

………ぅ…ここ…は…どこ…?………

てんご…く? じごく……?

お…ちて…く…ぅ…

じ、じめん…ぅ…

ぅわ…っっああっ!!!


「はっぁっ……はぁ…はぁ…ぁ…ぇ…ここ…どこ?」

「ぁ…よかった…。もぅっ! 危なかったよ! もう少しで君…」


悪夢から目を覚まして、最初に見たのは

心配そうに涙目で見つめるハーピーさん…。

僕の体を優しく、その翼でだきしめ…て…。ぅぷっ…!?



「もう、暴れちゃだめっ! もぅ………」


ぅぅ…ぁ…。ぼくを抱きしめ…るのは、いいけど…

そのぉ…む、むねぇで窒息する…ぅ…。

そ…ぅいえば、なんだか息がしづらぃような…。



「ん? どーしたの?」


首を傾げて、僕を覗き込むハーピーさんを横目に

視線を下に向け…ぅぇぇっっ!?



「そっかー…。君には、この高さは苦しいのー?」



た…かぃ…なんてレベルじゃなぃ…。

く…くもが下に見えるぅ…。というか

高いやま…の崖の上…ぇ……。

い、今更けどぉ…服ぅ…はさっきのそうげんで……こご…ぇ…


*フワサッ*

「ほらっ! 寒いなら、私の翼で暖まって!」

「ふぁ…ぁぅ…ぅ…」



ハーピーさんの翼で僕の体を優しく抱きしめてくれてぇ…

毛布とは違う、擦るように撫でられる感覚と

羽の一枚一枚に、人肌と同じか、それ以上の体温がこもってて…

まどろんじゃいそうな…あたたかさ…ぁ…


「でも、ここから私のお家まで遠いなー…。君を連れて行くにも、その格好じゃ寒さで凍えちゃうし…」



ハーピーさんの羽毛で包まれている間はとっても暖かいけど

空を飛ぶには翼を広げないと、飛べないからぁ……どうしよぅ…。



「そうだっ! ねねっ少しの間、目を閉じててもらえるっ?」

「あぅ…?ぁっ、はい…」



突然、目を閉じてと言われ、言われるがままに目を閉じて…。



「じゃ…目を開けないでね? はくっ…ん…」

「ひゃっ!ひゃぅぅ…な、なにぃ…?」


髪の毛に、ぬめった何かが包み込んでるようなぁ…


「目を開けちゃ、だめだよっ? んんくぅっ…」

「ふぁ…ぁぁ……。な、何これぇ…」


今度は、おでこや鼻先にまでそのぬめった感触ぅ…ぁぅ…


「んぐ…っ…ごくっ…こくっ…んっ」

「ひゃぁ…ぁぁ…ぬめぬめぇ…」


顔中が、柔らかくて暖かくて柔軟に包み込むような壁に

包まれてるよぅな…ぁ…。


「んぎゅっ…ごくっ…んんっ…ごきゅぅ…」


ね、ねばねばが一杯の狭くて

あったかぃ管みたぃな所に肩まで、押し込まれてるぅ…

流石に怪しくなって、うすーく目を開けると、

柔らかそうなお肉の壁が目の前で蠢いてるぅ…



「んぐぐっ…んくっんくっ…ごくんっ…」



腰辺りまで、あたたかくて、やわらかい所におしこまれりゅぅ…

この時点で分かるのは、ハーピーさんに食べられちゃってることぉ…。

でも、この高さから降りられる訳もないし

寒さで凍え死にしちゃぅくらいなら

あったかぃハーピーさんのお腹の中がぃぃかな…。



「んくっ……ごくぅ…ン…んくっ…ごきゅ……」



指先で触れるだけで、沈むような肉の壁に

僕の上半身を優しく揉んでくれてぇ…

腰まで包まれると、ゆっくりゆっくり僕の両足を包んでくるぅ…

柔らかいお肉に包まれた所は、ねばねばの粘液に浸されて

少し息苦しいけど、それをカバーするように

柔らかい肉の壁の抱擁に眠気さえ感じちゃう…

上半身はもうハーピーさんのお腹の中…。

グニグニと蠢くお肉の壁に、頭から腰にかけて

指と指の間から腋の裏まで隙間なく埋まって

とってもぉ…あったかくてぇ…きもちぃぃ…



「んぐっ……ん…ごっくん……♪」



とうとう、両足の足先までハーピーさんの口内に収まり

生々しい嚥下音と一緒に、満足感に浸っていた…。

全身の肌から、腋の裏、首の裏、両足の付け根、

膝裏など、普通のハグでは絶対に包まれない部分を

ぜんぶ、包まれてるぅ…。

グニュグニュと蠢くお肉の壁は、例えるならお肉のねぶくろ…

きを抜いたらねむっちゃいそうなほど

とってもきもちぃ…ぅ…


「んぐ…ぷはぁ…。じゃ、少しの間我慢しててね!」


*バサッバサッ*

ハーピーさんのおなかの中で、すぐに眠ってしまいそうなほど

両目をとじかけてると

羽ばたく音と一緒に、まわりのおにくが僕を

いっぱぃいっぱぃ抱きしめてくれるぅ…

いきがしづらぃけど、それもきにならなぃくらい、きもちぃ…



「すこーし、急いじゃうけどしっかり掴まっててね!」

「ぁ……ぅ…ふぁっっ…ぁぁっっ…」



つばさの音…おっきくなって…

ぼくのからだ…ゆらゆらと揺すられてるぅ…

なんだか…ゆりかごみたぃ…

グニグニ…グチャグチャ…って

いっぱぃ、きこえるけど…それにまじって

トクントクンッって…ハーピーさんのいきてる音…

それにあわせて…ぼくの生きてる音も…

いっしょになってて…

はーぴーさんといっしょになっちゃってるような……ぁ…



「…………ぁ……のぉ……ぁぐ…んんっ…」


もぅ…ねむ…ぃ…生きてるおと…ぉ…子守唄みたぃ…




ぁ……もぅ……ぁ………





………ぁ…ぅ……





……………







………









……












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11/07/14 17:27更新 / 旧式マサキ
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■作者メッセージ
お腹が膨らんだハーピーさんが飛んでると、お腹の中もゆらゆら揺れると

思って、こんな風にしちゃいました。





でも、本当は某サイトで見た、ボテ腹ハーピーさんだったり。

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