読切小説
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この素晴らしい氷精に祝福を!
見渡す限りの平原に、少年と少女が立っていた
暖かな春の日差しが降り注いでいるにも関わらず、その周辺はまるで凍土のような気温になっていた

ふと吹いていた風が止み、その瞬間を待っていたかのように少女は言葉を紡ぎ出す

「白より明く、藍より青き深淵に我が心の静寂を望みたもう
其の色は全てを呑み込み其の姿には全てが動きを止める
我が魔力を以て顕現し我が望みのままに暴虐を振るえ!」

それは一瞬の出来事であった
少女が詠唱を終えると同時、幾重もの魔法陣が少女を中心に展開を完了する

「エクスッ!ブリザーーードッ!!」

それは圧倒的な力の顕現であった

生きとし生けるものを全て停止させ、その時間を永遠に止め続ける魔法

凄まじい

その一言であった

この魔法ならばどのような大軍であっても一瞬で殲滅させられるだろう

「まぁ、そんな事態にはならないんだけどな」

俺はグラキエスの少女が起こした大惨事に現実逃避しながらそんなことを考える
そうなのだ、この平和な日本でこんな危なっかしいものをぶっ放すことなどありえないのだ
まずそもそも氷の魔物なのになんで爆裂魔法に感動を覚えるのだとか、いつの間に詠唱や魔法の練習をしていたとか、キャラ的にはむしろライバル視しているぼっちなほうだろとか色々と言いたいことはあったが、全てを通り越して呆れ果てていた

「これがあのアニメにインスパイアされてできた爆裂魔法ならぬ氷停魔法……」

いつもは無表情な彼女が凄まじいドヤ顔でこちらを見てくる
見てくるのはいいが、魔力切れでぶっ倒れてんじゃねーか

「そんなとこまでリスペクトしなくてもいいっての」

「ふふふ、やるからには全力」

見た目の可憐さや儚さに反して彼女は割りとオタク気質なのだ
まぁその趣味のおかげで彼女と付き合うことができたのだが

「ったくほら、おぶってやるから」

そんな彼女は中々に熱しやすく冷めやすい
もともとが天才肌なので何をやらせてもそつなくこなすのだ
一通りの楽器は引けるようになってるし、スポーツだってバスケ、バレー、テニスなどできないものを数える方が早い

そんな彼女が最近ハマっているのはファンタジーな技の練習
魔物娘がファンタジーな存在なので魔法を使うことはできたのだが、そこで彼女が考えたのがなんとか魔力と氷の魔法を使ってアニメや漫画の技を使えないか、というものだった
龍の玉を集めるアドベンチャーの技だったり、九尾の力を宿した忍者の里の技だったり、鬼の手を宿した先生の技だったり

本人曰く、似せるだけなら結構簡単らしい
体が魔力の塊で出来ているので、その操作はそれほど難しいものではないようだ
しかし、本物に近付けるとなると話は別のようで、溜めの長さやそのエフェクト、物にぶつかった時の魔力の散り具合など、その全てをコントロールしなければいけないらしい

まるで格闘ゲームでも作ってるみたいだ、となんとなく言ってみると結構近いよ?との返事が返ってきた
作ったことあるのかよ

閑話休題

そんな彼女が集大成に選んだのがこの爆裂魔法だったわけだ
魔法の範囲、美しさ、威力、そして余韻
魅せ方にとことんこだわったその魔法は大成功を納めたのだった





彼女をおぶったその帰り道
練習をしたその日の夜は必ずやることがあった

「今日はどっちの家で?」
「君の家がいいな」

たくさん運動するとお腹が空く

「できるだけお手柔らかに頼むぞ」
「それは出来ない相談だ」

この練習で使うのは魔力で

「それじゃあ今日も」

魔力の補給には男の精が必要だ

「たくさんシようね♥」

……果たして今日は何回搾られるだろうか
17/04/13 22:27更新 / まりおん

■作者メッセージ
というわけでパロというほどでもないパロディでした

クールな女の子が好きなことに夢中になってるのってすごくいいと思います

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