読切小説
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ワズライ
気が付くと、私は真っ暗な空間に立っていた

ただひたすらに真っ暗な空間に私だけが一人佇んでいた

感じるのは孤独 寂寥 悲壮 焦燥
負の感情だけが私を取り囲んでいた

そこへ一つの光が現れる
白く、優しい、包み込むような温かい光
私は安心して眠りについた


――――――――――


 
「ふむ、風邪かな」

「最近は調子が良かったから、少し油断してたかも...
 ごめんね、ユウくん」

「しかたないさ
 でも、悪化しないようゆっくりしているんだよ?」

私は、はーいと返事をすると部屋をユウくんの姿を見ながらベッドへと戻った

もともと、私は体があまり強くなかった
子供の頃はすぐに風邪をひいていたし、拗らせて長引くなんてこともザラだった
それでも、命に関わるような病気になったことはなかったし、最近は軽い風邪くらいしか病気にかかっていなかった

だから、これも風邪だろうと、明日になればまた変わらない日々が続くのだろうとおもっていた






事態が急変したのはその日の夜だった

身体が熱い、重い
思考が、はたらかない
ユウくんを呼ぼうにも、声が出ない
つらい、くるしい、たすけて

どうやらひどくうなされていたらしく、ユウくんはすぐに駆けつけてくれた

「サヤ!どうした!?」

ユウくん、熱いよ、苦しいよ
そう伝えようとするも身体は全く言うことを聞かずただ呻き声を上げるだけ

「待ってろ!すぐに医者を連れてくる!」

嫌だ、行かないで、ひとりにしないで

私の叫びは届かない
部屋を飛び出す背中を見ながら、私の意識は闇に落ちていった


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目を覚ますと、光溢れる空間にいた

そばにある光が私を照らしてくれていた

しかしあるとき、どこからか黒い光がやってきた

黒い光は白い光を包み込んでいった


やめて

私から光を奪わないで


私は縋るように手を伸ばすが叶わない

やがて、黒い光は白い光を完全に飲み込み、どこかへと飛び去ってしまった


私は、また一人ぼっちになった


――――――――――


「あ...」

目が覚める
私はベッドから体を起こしながら、胸のざわつきの原因を考えていた

「これも、病気のせいなのかな...」

色々と考えてみるが理由は思い当たらない

「ん...
 あ、サヤ、おはよう」

ふと、ベッドの横から声が聞こえた

「あ...ユウくん」

「その調子だと、少しはよくなったみたいだね」

「うん、今は平気」

「それじゃあ、軽くご飯を食べようか
 何がいいかな」

食事の準備をしようと立ち上がろうとするユウくん

「あ...」

ユウくんが離れちゃう...

そう思ったときには、私はユウくんのシャツを掴んでいた

「ん?どうしたの、サヤ?」

「あ、あのね、そばに居てほしいの
 なんだか怖い夢を見ちゃって...
 おねがい、手を握っててほしいの」

ぎゅ、と私の手が包まれる

「ごめんね、気づかなくて
 落ち着くまでこうしてよっか」

「ありがとう、ユウくん」

その後、30分ほど私はユウくんの温もりに包まれていた


その日一日は、とても調子が良かった


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真っ暗な空間に一人取り残された私は、光を探して歩いていた


あるいて、あるいて、あるいて


どれほど進んできたのだろうか

私の足はもう動かない

その場に座りこんであたりを見渡す

光の姿はどこにも見えなかった


いや、なにかがある

気付くと同時、私は走っていた

疲れも忘れ、痛みも忘れ


そうしてたどり着いたなにかは


私の形をしていた

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次の日、私は目を覚まさなかった

後から聞くと、一日中うなされていたらしい

ユウくんは私の異変に気付くと、すぐに医者を呼び、そのまま隣町の大病院まで私を診てもらえるよう頼み込みにいったそうだ


そのころから、症状がひどくなり、紫の斑紋が大きく出始めた

一日のほとんどをベッドの上で過ごすようになった



――――――――――


あなたはだれ?

私が尋ねると

わたし?わたしは私よ

なにかは答えた


なぜだか、納得してしまった

なにかは嘘を言っていない、紛れもなく私自身であると


わたしは続けた

ごめんなさい、今私の体を蝕んでいるのはわたしなの

わたしの魔力が暴走して、私にまで影響を与えてしまっているの

死ぬことはないけれど、きっと私とわたしは混ざってしまうの

私は私でいられなくなってしまうかもしれないの



私は

大丈夫だよ

とだけ告げて、わたしを抱きしめた


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私は朝から、検査のために病院に来ていた

体調はそれほど優れなかったが、様々な検査を行うとのことで出向かなければならなかった


結果は、不明だった


似たような症状群の病気はいくつかあるが、それらにあてはまる菌やその他の不調が現状全く見られない、とのことだ


明日全ての検査結果が出るそうだが、病気が分かる見込みは低いらしい


今日は一日入院することになった


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気が付くと、私は真っ暗な空間に立っていた

ただひたすらに真っ暗な空間に私だけが一人佇んでいた

いや、一人ではなかった
私は、わたしと共にいた

そこへ一つの光が現れる
白く、優しい、包み込むような温かい光




私はその光を包み込んだ





――――――――――


やはり、原因は見つからなかった

私もユウくんも消沈した様子で帰途についた

「ねぇ、ユウくん」

「サヤ」

私の言葉を遮るようにユウくんがしゃべりだす

「絶対大丈夫だから
 絶対にサヤは治るよ」

「...うん、そうだね、そうだよね」


きっと大丈夫、ユウくんといられるならきっと元気になれる


――――――――――






ああ






この光は







なんて温かいんだろう








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家に呪い士とかいうのが来た

どうやらユウくんが呼んだらしい

とても怪しい雰囲気の女の人



女の人?



なんで



ユウくんと一緒にいるんだろう



――――――――――



また光が

ユウくんが

奪われてしまう



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なにか、とても嫌な夢を見ていた気がする

大切な何かを奪われるような

しかし、思い出せない



「ユウくん...」

夜の間、ずっと握ってくれていたであろう手を両手で握り返す


「あ...サヤ、よかった」

「ねぇ、ユウくん」

私は問いかける



「ユウくん、私このまま死んじゃうのかな……」

「バカなこと言うなよ!絶対に良くなるさ!」

弱気になってしまった私を励ましてくれる

「それに僕もついてる」

「……うん、ありがとう」

しかし、私の胸には不安と諦めが浮かんでいた


――――――――――


「やっとちゃんとお話できるね、私」


「私はどうなっちゃうの?」


「大丈夫だよ
 私はわたしと一緒になって人間じゃなくなっちゃうけれど
 お兄ちゃんとはずっと一緒」


「そう、それならよかった

 でも、わたしは怖くないの?」

「うん、平気
 わたしも消えるわけじゃないから
 でも、たまにお兄ちゃんに会いに出てきちゃうかも」

「ふふっ、そうだよね
 わたしもユウくんに会いたいよね
 でもそっか、安心した」

「もう行くの?」

「うん、もう時間がなさそうだしね」


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頭が痛い

夢の中で大事なことを言われた気がする

でも思い出そうとすると頭が割れそうに痛い


ふと、身体が軽くなっていることに気付く


「ユウくん...ユウくんは...?」

身体がユウくんを求めている


ユウくんはどこ...?


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「やはり、原因はわかりませんな
 これ以上私に出来ることはありません
 一日目より病状も悪化しているし、このまま、という  ことも考えておいてください」

「……そうですか、ありがとうございます」

「私の方でも引き続き調査を行います
 なにか解れば連絡をさしあげますので

 心配なのはわかりますがお兄さんがそのような顔をされると妹さんも不安になります
 病は気からとも言いますしあまり思い詰めないように」

と言い家を出ていった

「ユウくん、やっぱり私は……」

聞こえてしまった言葉に私は動揺してしまう

「サヤ、聞いてたのか?」

「ごめんなさい、でも私……」

続く言葉が出てこない
そんな私の様子に気付いたのかユウくんは私を抱きしめてくれた

「あったかい……」

「サヤ、大丈夫だからな、サヤ……」

ユウくんに抱きしめられた私は言いようのない多幸感に包まれていた


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あついあついあついあついあついあついあつい

身体が熱い


お兄ちゃん


お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん♥♥♥♥♥

お兄ちゃんが欲しい♥♥♥♥♥♥




その夜、私は身体を焦がす熱に犯されていた

「お兄ちゃん、お兄ちゃんお兄ちゃんお兄ちゃん……♥♥♥♥♥」

口からは勝手にお兄ちゃんを求める声が出てしまう


そんな私の異変に気が付いたのか、お兄ちゃんはすぐに私の部屋に来てくれる

やっぱりお兄ちゃんは、私の王子さまだ...♥♥


「お、兄ちゃ、ん……?」

と、声をかけると

「!あ、っああ!ここに、そばにいるぞ!」

お兄ちゃんは手を握ってくれる

「お兄ちゃん、私ね、わかっちゃったんだ
 このからだはもう長くないって、だからね……」

「サヤ、諦めちゃだめだ!」

「お願い、聞いてほしいの
 もし、明日になって私が変わってしまっても……



 おにいちゃんのいもうとで、そしてかのじょでいさせてください」

そのまま私の身体は糸が切れたように眠りについた


――――――――――


やっと繋がった

そうだったんだ
これは病気なんかじゃなくて、私自身の欲望が生み出していたんだ

お兄ちゃんともっと一緒にいたい
お兄ちゃんともっと一つになりたい
お兄ちゃんを独占したい

そんな欲望が生み出したもう一人の私

お兄ちゃんを受け入れるためのわたし

でもいつしかその欲望は大きくなって、でもお兄ちゃんとの関係は進まなくて

わたしも不安だったのだろう
焦っていたのだろう

本来ならもっとゆっくりとこの魔力になれさせていく予定だったのだ

もう待ちきれない
一つになりたい

だから、急いで体を作り替えたんだ


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「さ、サヤ!もう朝だぞ!」

ユウくんの声が聞こえる

ああ、もう大丈夫
なにも恐れることはない

「おはよー、ユウくん
 たくさん心配かけちゃってごめんね」

私は、私へと姿を変えながら返事をした



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おかしい

わたしの予定では魔物の体になればお兄ちゃんも我慢できずに襲ってくれると思ってたのに

お兄ちゃんの理性は鋼鉄なのだろうか


もう一か月近く経つのにまだキスしかしてない!

手を繋ぐだけで恥ずかしがってた頃よりは進展してるけど!


仕方ない、ここはわたしが一肌脱ぎますか♥♥


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朝目が覚めた瞬間、いつもとは違うことに気が付いた

「これっ♥♥まえの♥♥ときのとおにゃじぃ♥♥」

いや、明らかに前の時よりも感度が上がっている

「はぁっ♥♥♥はぁっ♥♥♥はぁっ♥♥♥」

身体が勝手に震える

「イっちゃ♥♥♥♥♥♥イっちゃうぅっ♥♥♥♥♥♥」

ビクン、ビクンッと体を大きく反らせながら跳ねる


「んんーーーッッ♥♥♥♥♥♥」

熱が収まらない

そのまま私はコアに手を伸ば



ビクンッ!!



「あ...♥♥え...♥♥♥?」


ユウくんがいた

私の手を握ってる


もしかして、触られただけでイっちゃった...?


「サヤ!?」

ユウくんはそのまま慌てて肩を抱いて揺する

そんなにされたら壊れちゃうよぉ......♥

「ゆ、く、だめ、らよぉ♥♥」

息を絶え絶えにさせながら制止する

「もう、朝から激しいんだから……♥♥♥♥」

多分もう止められない

でも、しょうがないよね♥♥

ユウくんが激しくするのがわるいんだからね...♥♥♥♥


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そのあとのことはほとんど覚えていない

覚えているのは、気持ちよかったこと
お腹のなかに幸せをたくさん注がれたこと
一つになれたことだけだ


そして今は、暴走してしまったことに対してお叱りを受けている最中だ


「そりゃあ、サヤの調子がおかしいことには気づけなかったけどさ……」

「ごめんなさい……これ以上心配はかけられないと思って」

それに、あまりにも急だったし

「今度からは、少しでもおかしなことがあったらちゃんと言うんだよ」

「はい……」

しょんぼりとしてしまう私
でも、それは次の言葉で簡単に吹きとばされた

「これからは、さ

 ふ、夫婦になるんだから」

「!!
 うん、うん!」

始まりは歪だったかもしれない
終わりは滑稽だったかもしれない

でも、ユウくんは私を受け入れてくれた
          受け止めてくれた

ならばきっと大丈夫

これから、何があっても乗り越えていける

二人なら、どこへだってすすんで行ける

私たちは、これから始まる


「ユウくん、大好き!!」




16/12/06 11:56更新 / まりおん

■作者メッセージ
ここまで読んでいただきありがとうございます、まりおんです

各日の描写と心理描写を詰め込んだら読みにくいしわかりにくいし...
しかも深夜のノリで書き切ってしまったので設定の破たんとかも見落としてるだろうし...

と、うだうだ書いてても仕方ないですね
次からはしっかり下書きしてから作りたいです



前作、前々作と多くの方に見ていただき、しかも感想までいただけて、嬉しい限りです 改めてありがとうございます
これだけで次の作品を作りたくなってしまう...
読みやすくて楽しめる作品を作っていけたらなとおもいます
改めて閲覧いただきありがとうございました






これより下は脳内設定の垂れ流しとなります
呼んだだけじゃ情報少なすぎてわかんねーよ!って方や裏設定ってなんかいいよね...って方はどうぞ




サヤ
15歳 ユウの義妹
4歳の時に両親と死別、両親の友人であったユウの父親の下に養子として迎えいれられる
引っ込み思案ではあるが明るくて優しい性格
ユウの家族とはもともと交流があり養子として迎えられる前からよく遊びにきていた
10歳頃まで体が弱く、あまり外には出られなかった
しかしあるとき魔物の魔力を取り込み、人並みに出歩けるようになる
今回の魔物化はこれが原因
14歳になる少し前、ユウに異性として好きだと告白、半年ほど保留された末に受け入れられる
また交際開始を機にそれまでのお兄ちゃん呼びからユウくん呼びに変えている
性的な知識はほとんどなかった
胸があまり大きくないことをちょっと気にしている


ユウ
19歳 サヤの義兄
一度熱中するとまわりが見えなくなるタイプ
8歳の頃にサヤの義兄となり、サヤの幸せを第一に考えて行動するようになる
サヤのことは妹としても好き
しかし、告白されたときには自分と付き合うことがサヤの為にならないのではないかと悩むが、これまでつらい思いをしてきたサヤの願いを少しでも叶えたいと交際を決意する
ユウくん呼びはまだちょっとなれない
サヤ第一主義


わたし
サヤの欲望(性欲)がダークスライムの魔力と混ざり合って意思を持った存在
サヤを元にしているので基本は明るく優しい性格をしているが、サヤよりお茶目で我慢弱い
また、もともとサヤの性欲はあまり大きくないが5年近く魔力で増幅されており、エロい
サヤの願望のためかナイスバディ
サヤと混ざりあったとき、性格などの多くはサヤに取り込まれたが性欲などはほぼそのまま残っている
人格が消えたわけではないので、性欲魔人と化している
ユウとのエッチの時たまに出てくることがある
エロい

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