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後日談 |
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それから3週間後くらいの事だ。
皆が寝静まるはずの夜中。 宮殿の一室でうめき声を挙げていた女性が一人。 就寝したはずのクロシエはシーツの裾を握りしめながら苦しんでいた。 見ると体から汗が噴き出していて彼女のパジャマを濡らしていた。 別に彼女が病気や大怪我で苦しんでいた訳ではない。 体がうずいて、熱い。 口を開け、だらしなく舌を出している。 心にぽっかりと空いた穴を埋めたくて仕方がない程飢えていた。 色欲とも違う、物欲とも違う。 もっと単純明快なものだ。 それを埋められる人間はただ一人だけ。 「クロハッ・・・! クロ、ハッ・・・!」 何度も何度も彼の名を呼んでいる。 全く眠れる気がしない。 いや、彼の名を呼ぶごとに欲望が膨れ上がってきている。 彼が近くにいる時は安心するのに。 彼がいなくなった時は不安が、欲情が込み上げてくる。 それでも我慢しなければという自制心があったがもう限界だった。 ―――あっ・・・・、あぐっ・・・・、ああっ・・・――― ジルドハントも同じうめき声を挙げていた。 カタッ、カタッと自身を揺らしながら。 傍から見ればポルターガイストの類かと恐れる光景だった。 されどクロシエには関係ない。 そんな声を聞いたらクロシエはもう横になっていられなかった。 ベッドから起き上がったクロシエはショーケースを乱暴に開ける。 「貴方も、同じなのねっ! ジルドハントっ!」 ―――は、恥ずかしながらっ! 私もっ、クロハ殿がっ――― 「それ以上っ! 言わなくてもっ! 分かるわっ! 私はっ!」 迷わずクロシエはジルドハントの柄を握った。 途端に黒い物体がその柄から噴き出してきる。 クロシエ自身も実感している。 これに包まれたら自分は人間ではなくなるのだろうと。 ♢♢♢♢♢♢♢♢ コーヒーの一杯を飲み終えたクロハはコップを台所へと持っていき洗っていた。 「夜更かしし過ぎたな」 されど明日は休暇だったのだからここまで夜更かし出来たのだ。 ゆったりとした時間を堪能したクロハがこれから寝ようと戸締りし始めた時だった。 『ダンッ! ダンッ!』 家の玄関ドアを叩く音が聞こえた。 クロハは玄関のドアノブに手をかけると少しだけ開けて覗く。 いたのは一人の人間。 マントで全体を隠していたが顔を見れば分かる。 「クロシエ様!?」 思わずバンッ、と音を立ててドアを開けてしまった。 「お、お願いっ! クロハッ! 私をっ!」 何か苦しんでいる様だった。 顔が歪んで呼吸も荒い。 「一先ず、中へお入りください」 すぐに中へと招き入れて鍵を閉めた。 こんな時間帯で、しかもクロシエ一人なのだから余程緊急の事態なのだろうとクロハは思っていた。 「どうしましたか?」 「抱きしめっ、てっ!」 「え!?」 「お願っ、い!! 抱きっ、しめって!!」 苦痛に満ちた表情で懇願してきたのだから言われるがまま即座にクロハはクロシエを抱きしめた。 「はあ、はあ、はあ・・・」 クロシエの乱れていた呼吸が徐々に落ち着きを取り戻してきた。 「・・・落ち着きましたか?」 「・・・うん。落ち着いたけどこのままの方がいい」 クロシエがマントを外すと出てきたのは。 「その姿は・・・また・・・」 あの日ハトラルコの駐屯所で見た異端の姿。 右半分が黒い装甲に包まれて、右目が真っ赤に染まっていた。 細剣だったジルドハントは黒い物体で大剣へと肥大化していた。 そしてジルドハントとクロシエの右手が黒い物体によって結合し一体化していた。 その姿を二度も見る事になろうとは思ってもみなかった。 「・・・苦しいですか?」 「もう苦しくないわ。クロハが抱きしめてくれているから」 何故自分が抱きしめれば落ち着けるのだろうか。 確かに自分がクロシエにとって信頼出来る人なのは間違いないが肉親である母レイヤでは駄目なのだろうか。 彼女の抱擁が自分の抱擁よりも数倍効果がありそうなのに。 兎に角もう夜遅くだ。 夜道を歩いて宮殿へと送るのは危ない。 暴漢とかに襲われるという意味ではない、その外見とクロシエ自身の心だ。 ならばここに泊めるしかないだろう。 クロシエにベッドを使わせ、自分はソファー辺りで寝ようかと思っていたが。 「・・・一緒に寝ても、構わないかしら?」 それを聞いた時、体が飛び上がってしまいそうな程驚いた。 「な、なぜ!?」 「・・・駄目?」 「駄目というよりも、クロシエ様は女王なのですよ。一般人に過ぎない俺と一緒に寝るのは釣り合わないですよ」 『クロハ殿、私からもお願い致します!!』 「ジルドハント!?」 ジルドハントが急に会話へ割り込んできた。 『も、もうクロハ殿の抱擁なしでは、傍に居てくれなければ私もクロシエ様も苦しいんです!! どうかお願いします!!』 押しに弱い訳ではなかった。 女性とは付き合ったことがないクロハにとってどう接せばいいのか分からなかった。 されど女性二人から潤んだ眼でお願いされれば断るという選択は酷いと誰もが思うだろう。 そう考えれば受け入れるしかなかった。 ♢♢♢♢♢♢♢♢ 仕方なくクロハはクロシエを二階へと招き入れる事にした。 始めて入る男の寝室というものにクロシエは期待していた。 それは勿論、いやらしい方面での意味だ。 何故かこの一体化している姿になっていると異性、特にクロハへの思いが止まらず理性とか注意力とかが二の次になってしまうのだ。 だから今のクロシエの体は、代わりにジルドハントが動かしていた。 「えっと、今はどちらなんですか?」 どうやらクロハはクロシエだと思っている様だ。 見分ける手段が声と口調でしか分からないクロハには無理もない話だった。 『私です。クロハ殿』 「ジルドハントか。クロシエ様は?」 『今は少々、半分眠りそうでして』 それは嘘だ。 当の本人は今。 (だ、男性とベッドって言えばあれよね❤ あれよね❤ きゃあ❤) こんな良からぬ妄想をしていたのだから。 「そうか。やっぱり疲れてるんだな、ここだ」 クロシエの妄想など梅雨知らず、クロハはドアを開けた。 実に質素な寝室だった。 広くはない部屋にベッド一つだけ。 男の一人暮らしというのは飾り気のないものばかりだとジルドハントは知っていたがそれでも何か珍しい物は一つぐらいあるだろう。 だからジルドハントは一通り、寝室に目をやっているとある物に気づいた。 クロハの部屋に飾られていた布に。 その布に描かれていた紋章に。 その紋章は忘れようがない、あの人が掲げていた紋章だった。 『ク、クロハ殿!! 何上貴方がこの布を持っているのですか!?』 ジルドハントがその布を指さした。 「なぜって、それはご先祖から代々伝わってきた家の家紋みたいなものだ。それがどうかしたのか?」 『これは私の前の主、カトルネル卿が掲げていた紋章なのです!!』 「カトルネル卿? それが俺のご先祖様の名なのか?」 ジルドハントは近くまで来て紋章を凝視した。 色あせているがこの独特の紋章の形は間違いない。 そもそも彼は出家し、お家は断絶されたのだから彼の家紋を受け継ぐ者など誰一人いないのだ。 ならば間違いない。 本人が残した紋章なのだ。 ジルドハントの教えて欲しいという熱い目を見てクロハはその口を開いた。 「・・・俺の父さんから聞いた話だと、何でもうちのご先祖様は大罪を犯し、その後は一人で誰にも接する事無く暮らしていたらしい。親密だった女性でさえも面会する事を拒んで・・・」 親密だった女性。 彼女しかいない。 彼と恋仲になり不義の罪で処刑されそうになったあの人だ。 「それでその女性が死んだ時、ご先祖様も後を追う為に食事を絶って死のうとしたんだ。けど家の前に手紙が置かれていたんだ」 『手紙?』 「親密だった女性が死ぬ直前に出した手紙で、そこにはただ一言『罪の償いは一つとは限りません』って。それを見たご先祖様は死ぬ事を止めて、生きようと思ったんだ。まあ世間では本当に死んだとされたみたいだが名前を変えてこっそりと生きて、そして俺の代までこの旗を大事にしろと家訓を作って・・」 クロハはまだ話を続けていたが彼女の頭には入ってこない。 何故なら今のジルドハントの心は喜びで溢れていたからだ。 『・・・カトルネル卿が・・・生きていて・・・・。・・・・その子孫が・・・・クロハ殿!・・・』 その事実を知った時のジルドハントはまさに天にも昇る心地だった。 魔剣と言ってもその本質は魔物のそれと変わらない。 ジルドハントの喜びは淫らな感情へと変わり、クロシエへの感情へと繋がる。 そして今のクロシエは良からぬ妄想に浸っていた。 つまり。 (だ、駄目。クロハを押し倒しちゃ・・・でも我慢出来ない❤ いや、我慢しなくてもいっか❤) ―――卿の子孫なら私の主であるのと同義。ここで恩を返さなきゃ❤――― (ああ、クロハ❤ 前から押し倒して、それからそれから❤) 一方が淫らな発言をすれば他方にも影響が出る。 ―――きっと溜まってますよね、よね。なら取ってあげないと❤――― (取る? ああ、男の子なんだから我慢してるのよね❤) ―――取ってあげればクロハ殿も、クロシエ様も私もすっきり❤――― (これは仕方ないもの。お仕えの騎士の管理を怠った私への❤) ―――これは仕方ないですよね。察せなかった私への❤――― そしてクロシエとジルドハントの目的が一つとなる。 ―――「「襲っちゃおうか❤ いただきます❤」」――― 「・・まあ、そんな古い仕来りを守っている俺は馬鹿みたいだがな」 話し終えたクロハは先程からクロシエ、今はジルドハントが黙っていたのに気づいた。 「ジルドハント?」 思わずクロシエの元へと近寄り顔を見ようとした。 クロシエの近くへと来たその瞬間、クロハの体が床へと倒れた。 気絶する寸前、クロハは気づいた。 クロシエが、ジルドハントが自分を切り付けたのだと。 クロシエの表情が淫らな笑みを浮かべていた事も。 ♢♢♢♢♢♢♢♢ 目が覚めた時、クロハは自身の下半身辺りが熱くなっている事に気づいた。 堪らず下半身へと目をやると。 『あむっ♪ ちゅくっ❤ れろっ♪ むぐっ❤』 クロシエがクロハの肉棒を嬉しそうにほうばって、舐めまわしていた。 しかもクロシエは服を脱いでいた。 侵食されていた右側の禍々しい装甲はそのままだったがその上を侵食していたパジャマとか下着類は一切取り外され素肌を晒していた。 女性特有の柔らかそうな肌。 贅肉が付いていない引き締まった肉体。 形良い乳房に可愛らしい桃色の乳首が目に入った。 そして自身も服を脱がされ、全裸にされていたのも今知った。 「な、何をしているんだ、ジルドハント!! クロシエ様の体でそんな事をするなんて!!」 クロハの声を聴いたクロシエは口を離した。 「ああ〜、クロハちゃんが何か言ってる!! ジルドハントちゃん、何なのかな❤」 クロシエはそう言い大剣と化したジルドハントを見つめた。 『き、きっとエッチしたいんですよ!! もっともっと、刺激が欲しいんですよ♪』 クロシエの口からジルドハントの声が出てくる。 傍からすれば一人芝居としか思えない光景だった。 「エッチ❤ 私とエッチ!! そっか♪ ならもっと頑張らないと❤」 そしてまたクロシエはクロハの肉棒を口に入れようとする。 慌ててクロハは起き上がって離れようとするが上半身がベッドから離れられない。 見ると自身の両手首がロープで縛られ、ベッドの飾りにロープの先端が括り付けられていた。 更に固く縛っているのか必死に手首を動かしても解ける気配すらない。 『侵食されてる手でどうやって!?』 それを考えている暇はない。 逃げられないとなればクロシエを蹴り飛ばす、のは論外だ。 ならば言葉でしかない。 「ジルドハント、今すぐクロシエ様を止めるんだ!!」 この時までクロハはてっきりジルドハントがクロシエを動かしているのだと思っていた。 『止める? クロシエ様がクロハ殿とやりたいのに何故止めるんですか❤』 「なっ!? ジルドハント、お前が指示している訳じゃないのか!?」 「え〜♪ ジルドハントちゃんが私を指示〜❤ そんな事ないよね♪」 『指示なんて一切してませんよお♪ クロシエ様の希望に私が付き合っているだけですよお♪』 「もう、ジルドハントちゃんもクロハとやりたいんでしょう❤」 『だけど私には体がないからクロシエ様の快感を分けてもらうしかないんですよ❤ だから思いっきり楽しんでくださいね♪』 「そっか、私が気持ち良ければ貴方も気持ちいいもんね❤」 (ど、どうするどうする?) クロハが迷っている間にもクロシエは肉棒を刺激するのを止めない。 口の中に肉棒を入れて舌で舐めている。 じっくりねっとりと、クロシエの唾液を交えて。 時に裏筋を舐めて刺激を与えて。 それらがクロハに未知の感覚を与える。 『んむっ❤ じゅるっ❤ ちゅるる♪ ず、ずずずっ❤』 「あ、止めっ!! 止めてっ、下さいっ!!」 クロハは訴えるがクロシエは聞く気配すら無い。 それどころかクロシエは更に刺激を与えようと、華奢な手でクロハの玉袋を揉み始めた。 『もみっ❤ もみっ❤ もみっ❤』 優しく、揉みほぐされる自身の玉袋に体が貫かれる様な快楽を感じた。 しかもクロシエは肉棒を根元までしゃぶってきた。 『んんっ❤ うんんっ❤ ちゅるる❤ うぐううっ❤』 喜んで味わっているクロシエの表情がまた淫らでクロハの性欲を刺激する。 このままでは『射精(で)てしまう』。 必死に歯を食いしばるが初めての快楽というものに理性を保つのがやっとだった。 なおもクロシエはしゃぶるのを止めない。 手で揉むのを止めない。 刺激を与え続ける。 『ちゅるるっ❤ じゅるっ❤ くちゅるっ❤ ずずずずっ❤』 『もみっ❤ もみっ❤ もみっ❤ もみっ❤』 「も、もう駄目だっ!!」 クロハがそう叫んだ瞬間。 突如クロシエが刺激を与えるのを止めた。 クロシエが口を離せば、自身のイチモツは肥大化して天へと向かって硬く勃起していた。 しかも中途半端で止めてしまったのだからはち切れんばかりに充血し今にでも抜かなければ頭がおかしくなりそうだった。 そしてクロハはクロシエの顔を伺うと彼女の表情は、その目は。 女王としての誇りすら感じられない、ただ淫らで欲情に満ちた一匹の発情したメスそのものだった。 それが今のクロハにとって恐怖以外の何物でもなかった。 「えへへへっ❤ クロハ、次はいよいよ本番だよー♪」 そう言いクロシエはクロハに跨る。 見るとクロシエの下半身、女性器を見せつけた。 そこからは愛液が溢れ出て止まらない。 ムラッとした匂いが鼻を刺激して男の本能が揺さぶる。 これからやろうとしている事は誰にでも分かる。 「お、お止めをクロシエ様!! ジルドハント、お前も正気に戻れ!?」 だが当の二人は聞いてはいなかった。 「もう、もうしちゃってもいいんだよねえ❤! もう十分硬くなって出させてあげないと苦しくて仕方ないよね♪!」 『そうですよ❤ そしてクロハ殿と❤! パコパコも、ハメハメも、ズボズボっも!! しちゃっていいんですよお❤』 「きゃははは❤ パコパコっ! ハメハメっ! ジュボ、ジュボっーーー❤」 『そして、そしてえ❤ ズッコン❤ バッコンしてえ❤ 赤ちゃんをボンボン作るのがああ❤ 私達のおお、使命なんですよおお❤』 「し、しょんなに、したらあ❤ 私正気じゃなくなっちゃうよおお❤」 クロシエはだらしなく涎をたらし歓喜に打ち震えている。 性欲で頭を満たし、その結果冷静さや知的さ等を全て捨ててしまったクロシエとジルドハント。 こんな状態ではどんな正論を言っても無駄だ。 『こ、このままじゃ俺は!?』 即座に浮かんだのはギロチンに自分の頭がかけられる場面だ。 是が非でも抜け出さなければ。 クロハは必死にロープをほどこうと暴れてみるが。 「ああん❤ 逃げちゃヤダ!!」 即座にクロシエがジルドハントを振りかざし、クロハに切り付ける。 「うぐっ!!」 思わずクロハはうめき声を挙げた。 血は流れないが痛みが出てくるのだからたまったものではない。 大人しくなったクロハをクロシエはいやらしい目で見つめている。 「どうして逃げちゃうのかな❤ ジルドハントちゃん分かる❤」 『きっと上手くエッチが出来ないから不安なんですよ❤ だから私達がリードしてあげないと❤』 「そっか❤ リードしてあげないとクロハが苦しいよね♪」 『それともお❤ クロシエ様と、今すぐ一つになりたいとかああ❤』 「ひとおつ!? 辛抱出来ない子なのねえ❤ 今すぐ合体いいしよおお❤」 どんな事を言っても無駄だと分かっている。 二人は聞く耳を持たない。 けれどここで止めなければ自分は大罪を犯してしまう。 クロハは必死に叫んだ。 「お願いします!! お止めください、クロシエ様!!」 その際、柄でもない涙目になりながら訴えてしまった。 がここでクロシエを止めなければ後戻りできない所まで来てしまうのだと思ったらクロハはなりふり構わなかった。 「俺はクロシエ様とやってはいけないんです!! どうかお止めをっ!! 俺は貴方の守る騎士なんです!!」 クロハは決死の思い出その叫びを訴える。 瞼を閉じて訴えていた。 だからクロシエが今どんな表情をしていたのか分からなかった。 てっきり叫びなどお構いなしにやろうとしていたのだと思っていた。 だが静かだ。 卑猥な声や音など聞こえない。 クロハはゆっくりと瞼を開き、クロシエの顔を覗くと。 「・・・ねえ、クロハ?」 クロシエは悲しそうな表情を見せていた。 その顔をクロハの顔へと近づけさせた。 「私の事・・・嫌いなの?」 声色もまるで小動物が鳴いている様なか細い声になっている。 「き、嫌いじゃないですよ!!」 「ならなんで・・・涙目になっているの?」 「クロシエ様は一国の女王だから俺とこんな事をするのは大罪みたいなものじゃないですか!? 一騎士である俺がクロシエ様と関係を持つなど!?」 「じゃ、もし・・・私が一国の女王じゃなかったら?」 「え!?」 「もし私が一般の、そこいらにいる女性だったらクロハはどうしたいの?」 堪らずクロハは叫ぶ。 「そしたら俺は一人の恋人としてクロシエ様を見ますよ!! 俺は好きなんですよ!! クロシエ様の事が!! でも立場があるんです!! 騎士として守らなければならない立場が!!」 ぶちまけてしまった自身の本音。 クロシエの事が大好きだ。 されど彼女は一国の女王。 そんな彼女に告白出来る訳がない。 苦しい胸の内を明かしたクロハ。 そんな彼にクロシエは優しく語りかける。 「・・・ねえクロハ、知ってる。魔物達は立場とか地位とか関係なしに好きな人が出来たら迷わず恋人になるの。今の私は、魔物。アルトンを治める一国の女王とかではないの」 確かにその外見では人間とは言い張れないだろう。 間違いなく魔物だと言える。 だがまだクロハは己の中にある地位や守るべき道徳観とやらに抗っていた。 『クロハ殿、取り乱して申し訳ございません・・・。カトルネル卿の子孫だと知ったら、もういても立ってもいられなくて、つい・・・』 続いてジルドハントが口を開き、クロシエの侵食されていない左手でクロハの頬を撫でる。 『ですけれどクロハ殿、アルトンは今や新魔物国家です。場をわきまえるのは大事ですが、魔物達の考えも受け入れても問題はないと思いますよ』 「そうよ、ジルドハントちゃんの言う通り、魔物にとって恋愛は第一。自分の欲望を優先させなきゃ、自分じゃなくなる。だから私は言うわ」 天使の囁(ささや)きか、悪魔の誘惑か。 今のクロハには分からなかった。 一つだけ確かだったのはクロシエも、そしてジルドハントも自分と同じ気持ちだったという事だ。 「「・・・私もクロハの事が大好き。一人の女性として」」 クロシエの声に重なる様にジルドハントの声が響く。 その声がクロハの理性を崩していく。 「「だ・か・ら、私とエッチしちゃおう❤」」 ここまで言われたらもう止まらなかった。 大罪だと分かっていても胸の内から溢れ出てくるこの気持ちは止まらないのだ。 ―――自分はクロシエの事が大好きである、と。 「・・・あの、でしたらキスとかは? いきなりセックスとかするのは?」 「ああ❤ クロハが気絶している間にキスしちゃった♪」 「・・・・なら改めてお願いします」 そう聞くとクロシエは嬉しそうにクロハの顔へと近づく。 そして自身の唇をクロハの唇へと添えた。 初めて触れた異性の唇。 イチゴの様な甘酸っぱさが感じられた。 それでいて優しいキスだった。 『くちゅ❤ ちゅぱ❤ くちゅ❤』 5分ぐらいは堪能しただろう。 クロシエは唇を離す。 互いの涎によって作られた銀色に反射する淫らなアーチが目に映る。 まるで新しいカップルの誕生を歓迎するかの様に。 クロシエのその目は期待に満ち溢れている。 「じゃあ、いいよね❤」 無論だ。 クロハは生唾を飲む。 一歩踏み出せば二度と戻れない。 だがもう抑えられない。 「い、いきます!!」 クロハはクロシエの女性器にそそり立つ男根を入れる。 『クチュ、ズボッ!!』 入れた瞬間、二人共―――ジルドハントも―――稲妻が体を貫いたの様な快感が走った。 「おっ! おひょー♪ にゃ、にゃにこれえぇーー❤ きもちいいいーー!!」 『わ、わたしも!! きにょちいいです❤ これが、これが殿方とのおお❤』 クロシエはガクガクと体を振るえさせ快楽に酔いしれている。 「こ、これがっ!! これがクロシエ様のっ!!」 見るとクロシエの膣から血が流れ出ていた。 処女膜が破れた証だ。 もう、元には戻れない。 だがクロハは構わなかった。 彼女が、クロシエがいればそれで。 そこからはオスとメスとの間にある本能で動けるはずだ。 『パンッ! パンッ! パンッ!』 腰を上下に動かし、淫らに金髪を振り回すクロシエの姿にクロハは心を奪われていた。 クロハは両手でクロシエの腰辺りを掴んでいる。 「クロ、シエ様!! クロシエ様!!」 ただひたすら名前だけを呼んでいるクロハ。 その声は勿論本人にも聞こえている。 「き、きこえ❤ 聞こえてるよお❤ クロハあああぁぁ❤」 腰を降ろす度に自分の膣が突っつかれる様な感覚。 体に稲妻が走るかの様な刺激。 それがクロシエとクロハ、引いてはジルドハントにとってたまらない快楽だった。 「しゅ、しゅごい❤ 馬鹿になるうー♪ 何も考えられにゃいーー❤」 『はあっ❤ はあっ❤ はあっ❤ こ、こんにゃにもきもちいいものなんてええ❤ わたしい、しらなきゃったーー❤』 快楽に酔いしれ呂律が回らなくなったクロシエ、そして彼女の体を共有しているジルドハントも酔いしれていた。 更に腰を振り、快楽を得ようとする。 『パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!』 止まらないピストン運動。 溢れ出てくる欲望。 大好きという感情が暴走する。 お互いに唇を付けて啜る。 『ちゅるうる!! んぐぐっ!! ずるううう❤』 『パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!パンッ!』 それを繰り返せば限界が来る。 「だ、駄目です!! 俺は、もう!?」 「来てえええぇー❤ 一緒に気持ちよくう、気持ちよくなっちゃおうううーー❤」 「クロシエ様!! クロ、シエ様!!」 「クロハー❤ クロハーー❤ クロハーーーー❤」 最後の一押しとしてクロシエは膣を締めれば。 クロハがそそり立つ肉棒を押し込めれば。 クロシエが感情を爆発すれば クロハが欲望を爆発すれば。 ―――絶頂が来た。 『びゅるるるるるるるっーーーー!!』 勢いよく跳び出した精液はクロシエの子宮を白く染める。 我慢していた影響だからか精液は膣から溢れ出て外にまで漏れてきた。 「あ、ひゃあああーー❤ 白いのが! 真っ白いのが溢れ出てくるうううーー❤」 『これにゃ、これが精液というものですよおお♪ もっとパンパンッすればクロハ殿も、しゅっきりしますからねえ❤』 「パンパンッ♪ 私パンパン頑張るううぅぅーー❤」 射精中にも関わらずクロシエはまた腰を振り始めた。 「ク、クロシエ様!? 俺は、まだ!?」 「だあめええーーー❤ いいいっぱい出させてあげなきゃクロハが苦しいんだものおお❤」 『いっぱいいっぱい、いいいっぱい出させてあげますきゃらねえぇ❤ クロハ殿おお❤』 ここまで来たクロシエは、ジルドハントは止まらない。 本当に大好きなのだ、クロハの事が。 ♢♢♢♢♢♢♢♢ 五回目の絶頂が襲い、体力が限界だったので流石にもう出来なかった。 体をビクビクと痙攣させたクロシエはクロハの萎えた肉棒から自身の性器を引き抜いた。 「はあ、はあ、はあ・・・」 乱れた呼吸を整えたクロハはクロシエを見つめる。 「・・・という訳でクロハ。貴方は一生私のお付きとなってもらう事になっちゃったからね」 『クロハ殿はクロシエ様と私にとって鞘になりましたからね』 にっこりと笑顔で告げてきたクロシエ。 その笑顔で現実へと戻されたクロハは途端に得体のしれない恐怖を感じた。 勿論、ご先祖が犯した罪よりも大罪を仕出かした事もだ。 「そ、そんな!? でも仕掛けたのはそちらでは!?」 「う〜ん、細かい事は気にしないの。当分の間は秘密にしておくし」 『また溜まってしまったのなら私達が出させてあげますからご心配なく❤』 「大丈夫よ、ちゃんと地位を与えて国民を納得させて挙げるし」 「「という訳でよろしく。クロハ(殿)」」 そう言いながらクロシエはにっこりの笑みから、淫らな笑みへと変わっていく。 恐らくジルドハントも同じ淫らな気持ちなのだろう。 クロシエらの相手として選ばれた事に感謝するべきなのか、それともクロシエらの物にされてしまった事に嘆くべきなのか。 クロハは呆然と二人を見ていた。 その後クロハはクロシエの命により名誉お付き騎士とされた。 つまり死ぬまでクロシエのお付きとして仕えよ、という事だ。 反対する人間はいなかった。 女王を守った功績あるクロハなら相応しいと誰もが思っていたからだ。 されどクロハは素直に喜べなかった。 事ある事にクロシエはクロハの位を挙げて自分に相応しい位まで持っていくのだろうと思えば。 そして持っていき自分と結婚する為に、と思えば。 クロハの心情は察するに余りであった。 「・・・恨んでもいいですか、ご先祖様・・・」 17/06/07 09:18 リュウカ
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という訳で『贖罪の魔剣』、一応の完結となります!
ここまでお付き合いいただき本当にありがとうございます!! さて感想の欄でも告げていましたが、こちらカトルネル及びジルドハントには元ネタが存在します。 カトルネルは『アーサー王伝説』に登場する円卓の騎士『ランスロット』が元ネタで、作中でジルドハントが言ってた通りアーサー王の王妃グィネヴィアと恋仲になり、その結果円卓の騎士達を巻き込む内乱を引き起こしてしまった人です。そしてランスロットが持っていたとされるのが『アロンダイト』という剣、ジルドハントの元ネタです。 決して刃こぼれしない剣で一説によるとアーサー王が持っていた剣の姉妹剣という話もありますが『アーサー王伝説』及びそれに準ずる文献にはアロンダイトの記述はなく別媒体の作品にビーヴェス卿の息子、ガイ卿という人間が持っていて元々この剣はランスロットが持っていたと語っております。あらすじでの彼はこのガイ卿で、もし彼がアロンダイトを売りに出していたら、もしこのアロンダイトに自我とかあったら罪を犯した主をどう見ていたのかという話を膨らませて執筆してみました。 もし自我とかあったら・・・多分主の仕出かした事に罪悪感を持っているんじゃないかなと。 だからせめてこっちの世界では幸せになってもらいたいと個人的に願っています。 後、実はこの話続けようと思えば続けられます。その為にネタは置いていますから。(ジルドハントと同じ魔剣、ハトラルコ王の親善試合、メフィススのその後etc.) いつか続編書いてみようかなと思っていますのでその時はよろしくお願いします。 では長々と語ってきましたが本当にここまで付き合っていただきありがとうございます。 |
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