読切小説
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口では言わないけど甘えん坊です



「えっと、あの。ちょっといいですかね我が妻よ?」





思わず敬語になってしまう程に夫は混乱していた。
彼は今自分の身に起こっている状況を把握しようとしている。
自分はいつも通り、仕事から帰って妻の手料理を食べて風呂に入って、もう寝ようとしていたはずだ。

なのに。


なのにどうして妻から伸び出た触手らに体を絡まれ、身動き一つ出来ない状態にされているのだろうか。

両手首に両足首、更に両肩や両膝に両ひじといった関節部までも触手らによってがっちりと拘束されている。
自分をそうするその理由を知りたいと愛する妻に声をかけたが。




「あれ? 貴方の声だけど何処かしら?」




わざとらしい口調と夫が背中にいるにも関わらず気づいていない、“ふり”をしていた。
彼の愛する妻は人間ではない。
その体表はしっとりと柔らかそうで、皮膚の色は水色に染められていた。
所々、粘着性がありそうな液体が体を伝って滴り落ちていて彼女の淫らさを醸し出す。
下半身は人間の様な二本足ではなくナメクジのような、あのヌルヌルとした足であった。
―――『トリトニア』、それが妻の種族である。
その特徴として更に背中からは触手らの大群が備わっており、この様に男を捕らえる事だって出来るのだ。
が、今はそんな事を振り返っている場合ではない。


(ちょ、ちょっと待てよ!? 俺、なんか悪い事でもしたのかっ!?)


妻に暴力など振るうはずがない。
なら言葉で妻を傷つけてしまったのか。
いや、それ以前に妻の恨みを買う様な事は一切していないはずだ。
自分はきちんと妻を大切にすると誓い、仕事を一生懸命勤めていつも妻への気遣いは怠らなかった。
それに『夜の営み』とてこちらは我慢して、妻の体を考えて手出しはしていない。
何しろ妻は『トリトニア』という魔物だ。
穏やかでおっとり、清楚な彼女にこちらから手を出すというの何だか罪悪感があった。
例えば、もしエッチの最中でこちらが配慮を忘れて貪る様にガンガンと彼女を突いてしまったらどうだろうか?
きっと彼女は痛がって下手をすれば涙を流してしまうだろう。
しかも見るからにおしとやかそうな彼女の外見なのだから泣かせてしまったら罪悪感は半端ないものになる。
だから初夜の日以来、こちらからは絶対に手を出さないと誓ったのだ。
自分は妻を大事にしている、それだけは胸を張って言える事だ。
にも関わらず妻は触手らを使って自分を拘束している。
そうした理由は彼には分からなかった。

「貴方、そこにいるのかしら?」

すると触手の一本が彼の衣服に潜り込む。

「なな、何っ!?」

湿っぽい触手が腹部辺りに触り、こそばゆい感触が走る。


『くちゅくちゅっ! くちゅくちゅっ!』


しかもその触手でかき回し始めたのだから、こそばゆさと気持ちよさが同時に伝わってくる。

「ぬ、ぬおっ!? あ、ああっ!? ちょ、ちょっと!?」
「あれ〜? 貴方の声が聞こえたけど、私目が悪いから何処なのかな? ね〜え、どこなの〜」

両手を口に当て、メガホンの様にして叫ぶ妻。
絶対に気付いているはずなのに気づかないふりをしているのは何故か検討がつかなかった。
そうこうしている内に触手らは、次に彼の衣服を脱がせ始めた。
触手の先端を使って器用に寝間着のボタンを外し、上半身を丸裸に。
腰辺りを掴み、そこからカバっと引き離し下半身も脱がせて。
更にパンツも脱がされ萎えていた己の肉棒がポロっと現れる。
そんな状態にされたのだから彼は慌てて妻に訴えた。

「なっ? ぬ、脱がされているんだがっ!? き、聞こえてるんだろお前!?」

「ワタシハ、ナニモ、キコエマセン〜♪」

片言の台詞で返す妻に彼は妙に腹が立った。
けれどすぐに怒りとかが収まるのは妻を愛していたからだ。
何とかして聞いてもらおうと考えていた時だ。
触手の一本が彼の、萎えていた肉棒に巻き付こうとうごめいた。
それがぐるぐると縄の様に萎えていた肉棒へと巻き付き、その状態のまま先端の、たるんでいた皮を引き剝いた。
赤く充血している亀頭がひょっこりと現れたのだから彼は必死に訴えた。

「お、落ち着くんだー!? 話せば分かるだろー!?」

「モンドウ、ムヨウナノデス〜」

大声で訴えても妻は聞こえないふりをして、しかも白々しい台詞で答えていた。
この時点、もとい最初から確信犯だったのは言うまでもないだろう。
だがここまで無視する理由は何なのか彼には見当が付かなかった。


(ええと、まさか大切にしてたプリンとかを俺が食べたから怒ってっ!? いや、でも俺あいつの好物勝手に食べたのか?)


自問自答していた彼だったが時は待ってくれなかった。
なすすべなく、触手の一本が。
萎えていた彼の肉棒を、上下へとしごき始めた。




『シュッ♥ シュッ♥ シュッ♥ シュッ♥』




たるんでいた皮を触手が掴むようにしごいていく触手の動き。
亀頭に伝わってくるぬるりとした触手の感触。
しかもこの1ヶ月間、自慰とかやっていないのだから玉袋には精子が溜まりきっている。
これでは我慢など出来るはずがない。
性的興奮が高まっていく。
思わず漏れてしまう快感の喘ぎ声。

「あぐっ...♥ ああっ...♥ ぬうっ...♥」

しかも彼の口元辺りにもう一本の触手が、ぐりぐりと攻めてきた。
口の中に突っ込まれ、それをしゃぶらさせる羽目になるのだと考えたならば是が非でも口を開けたくなかった。
だがもう肉棒は硬く勃起し、静まる気配はない。
それでも触手は刺激を与え続ける。
口元にはぐりぐりと触手と押し付けられる。




『シュッ♥ シュッ♥ シュッ♥ シュッ♥』




その快感に耐えきれなくなった彼は止む無く、開きたくはなかったその口で妻に訴えた。

「あっ、ちょっ、き、気持ちっじゃなくてっ!? 俺、お前に何か悪い事でもっ!?」

すると肉棒に巻き付いていた触手の動きが止まった。
そして口元をぐりぐりと攻めていた触手もその動きを止める。
「えっ? あれっ?」
一瞬呆気にとられた夫。
すると妻はくるっと彼の方へと振り向き、彼の方へぐっと顔を近づける。











「・・・・したもんっ」


見ると彼女は両頬を膨らませ、髪で隠れていた目元は少しだけ涙目になっていた。
ふくれっ面だったその表情は彼女の欲求不満を表していた。

「だって・・・貴方、私に1ヶ月も手を出してくれなかったもん・・・。私いつでもオッケーなのに・・・」

妻の不満を聞いた彼は半分呆気にとられ、半分申し訳ない気持ちになった。
そうか構ってほしくてこんな事をやったのか、と彼は痛感した。
だが次には妻の気遣いの為だと思い出して首を横に振った。
「いやっ!? だって俺はお前が大事だったから。こちらからお願いするのは気が引けるし・・・」
「もちろん、貴方が気遣ってくれているのは分かるよ。本当に優しくていつも心配してくれて、本当に嬉しいの。でも魔物はエッチが大好きなのに、もう1ヶ月もしてくれなくて・・・。それで私のラブラブ充電率は10パーセント以下まで低下しているんだよっ・・・・」
「ラ、ラブラブ充電率ッ!? そんなのあるのかっ!?」
思わずすっとんきょうな声を挙げてしまった彼。
まだまだ魔物娘の心を、妻の気持ちを理解していない証でもある。
「魔物娘だったら誰にでもあるのっ!! そんな状態じゃ私達欲求不満にもなるし、旦那様を襲っちゃうんだから。大人しくても私、甘えん坊さんなんだから・・・」
両目を潤ませ、訴える妻に彼は後悔した。
自身の気遣いが裏目に出てしまったという事だった。
ならばきちんと慰めなければならない。
それが夫という立場と勤めだろう。
「それで、何をすれば・・・100パーセントになれるのか?」
言うまでもなかったが、聞いてみた。
夫のその言葉を聞いた彼女は。
そのふくれっ面だった顔がみるみると笑顔になり、甘ったるい声で告げた。
「もちろん、貴方と気持ちいい事♥」
そう言いながら妻は着ていたドレス調の服を脱ぎ始めた。
突けばぷるっと震えそうな乳房にしなやかな両腕と。
柔らかそうで心地よさそうな体つき。
また彼女の手を伝って垂れ落ちた粘り気のある液が扇状的で欲情をそそる。
布を一切身にまとっていないその裸体が露になれば。

『ごくりっ!』

彼は思わず生唾を飲み込んでしまうのは当然だった。
髪をかき上げ、夫を一瞥してから彼女は口を開く。
「もう、わかるでしょ♪ 私が一夜を過ごしたいって」
「じゃあ・・・一緒に寝るか?」
「うん、もちろん♥ ただし裸で♥」
「・・・・ああ」
服を脱がされていた状態だったのだから、妻がそれを求めているのは予想出来ていたがやはり恥ずかしかった。





♢♢♢♢♢♢♢





一つのベッドに二人で寝る。
いつもは妻への気遣いと思いやりして別々のベッドで寝かせ、自分自身が狼藉を働かないようにしていたのだが。
1ヶ月ぶりだったから狭く感じたが、それが返って居心地が良かったのかも知れない。
夫婦だって言うのに別々で寝るのは性に合わなかったから。
自分は下となり、その自身に覆いかぶさるように妻はのしかかり横になった。
妻の体を体全体で感じ、妻の鼓動と息を直で感じ取れる。
夫は力の限り彼女を抱きしめ、妻もまた彼の体を抱きしめていた。
体全体に妻のしっとりとしていて、ひんやりとした感触が伝わってくる。
まるでウォーターベッドならぬ、ウォーター抱き枕みたいな抱き心地だった。

「ふふふっ♪ 貴方の体、暖かい〜♥」

そう言い妻は体全体ですりすりと彼の体を擦る。
暖かさと、しっとりさが混合して夢心地になってしまいそうだった。

「ふんふん、ふ〜ん♪」

次に彼女は頬をすりすりと擦り、更に甘えてくる。
確かな人肌の温度が体だけでなく心までも温もりを与え、彼を暖かくさせる。
次に妻は毛布を頭まで被り、その毛布の両端を手で持って彼を抱きしめた。
彼の背中まで持っていき、彼を毛布で包み込んだ。
そして離さないぞと言わんばかりに強く夫を抱きしめ、隙間を作らまいと体を強く押し付け密着する。
そこで妻は一言。
「これで貴方は逃げられないよ♪」
「元から俺が逃げる奴だと思うのか?」
苦笑しながら告げる彼に妻も苦笑しながら答える。
「分かっていても私はしたいんだもん♪ 独り占め独り占め♪」
誰にでもあるその独占欲、彼女の場合は非常に可愛げのあるものだった。
毛布と彼女の体に包まれて生じる人肌の温もり。
加えて彼女の体からは粘液が溢れ出てきて、ローション代わりとなって彼の体に絡みついてくる。
彼女が動けばぬるりとした感触が伝わり、性的興奮へと繋がるのは必然だ。
自然と熱い吐息が溢れ出て、体が火照ってくる。
それは彼女とて同じだった。
頬を赤らめ、情熱的な視線で彼を見つめていた。
「こんな状態だったらもう、我慢出来ない♥」
妻の唇が彼に迫る。
その唇を受け止める為、彼は口を少しだけ尖らさせる―――


「あむっ♥」


1ヶ月ぶりのキスだったのを思い出した。
その唇の感触はしっとりとしていて、その味は甘酸っぱかった。
次に妻の舌が口の中に入り込んできて口内をかき回す。
自然と体も、そして己のイチモツも高まる。
不意に妻の口が彼の口から離れた。
その目は非常に熱く、今か今かと待ちかねていた雌の目だった。
「ふふっ♥ こんなに硬くなってる♥」
顔はずっと彼の方を見ていたが感触とかで気づいたようだった。
「お前の体が魅力的だからだよ♥」
「嬉しいな〜♪ あなた♥」

―――もっとも先程肉棒を刺激させられ、それが収まらないまま布団に潜ったのもの原因だけどな。
だが彼はその事をあえて言わなかった。
「さっきはごめんね♪ 辛くて辛くて、たまんなかったよね♥」
「まあ、な・・・」
気恥ずかしく答える彼に、彼女は微笑んだ。
まるでそれは聖母の様な微笑みで、自然とこちらまでもにっこりと微笑んでしまいそうになるくらいだ。
「今度はちゃんと、射精(だ)させてあげる♥」
そう言うと妻は背中に回していた両手を解き、毛布の中でもぞもぞと動き始めた。

「んっ?」

己のイチモツにしっとりとした感触が走る。
彼の硬く勃起したイチモツを、彼女はその手で掴んだのだ。
そのまま彼女は膝立ち―――なめくじの様な足だから膝という概念は存在しないが―――をして淫らだが目で夫を見つめる。

「ねえ? 感じてる? 貴方のモノが私のアソコに触れているのを♥」

亀頭に湿った感触が走る。
アソコが何処なのか言わずとも分かる、彼女の神聖な赤ん坊を作るための場所である事を。
「ああ、感じるよ♥」
「今から一つになるんだよ♥ 私と貴方が一つに♥」
「俺はいつもで良いよ。さあ、来るんだっ♥」
そして妻は掛け声と共に腰を降ろす―――


「よいっしょ♥」





『く、くちゅっ!!』


挿入された、という感触を忘れていた夫にとってこの快感はたまらなかった。
ヌルヌルでひんやりとしていたが何故か膣の中は暖かった。
何よりも妻と一つになった。
その快感がどれだけ幸福なものなのか、筆舌に尽くしがたいのだ。

「き、気持ちいいなっ♥ お前の膣(なか)」

このまま自らが動いて妻を絶頂にいかせればいいのだろうと思っていたが。
先走る夫に彼女は人差し指を彼の口元に当てる。
「今回は私が動くからじっとしてて♥」
「ああ、その方が良いな。お前にお預けしてしまったからな。・・・けど」
それでお前も、そして自分も絶頂にいくのかと問いかけようとしていたが。
彼の不安を察したのか彼女はまた微笑む。
「激しいだけがエッチじゃないの♥ ゆっくりと刺激していけば♪」
そう言い妻は体を上下にゆっくりと、動かし始めた。



『くっちゅっ♥ くっちゅっ♥ くっちゅっ♥』



最初は軽く、そして徐々に激しくなってきて絶頂というのがお決まりのパターンだが彼女は一定の刺激を彼に与え続けている。
これでは絶頂に届かないのではと思ったがそんな事はなかった。

「よいっしょ♥ よいっしょ♥ よいっしょ♥」

甘ったるい声と熱い吐息が彼の耳元で囁かればもうそれで十分すぎる刺激だ。
加えて彼女からの粘液がローション代わりとなって体全体に性的興奮を伝わらせる。
追い打ちで人肌の温度と彼女を抱きしめれば心地よい柔らかさ。
激しいピストン運動をしなくても気持ちが、体が高揚してくる。
そして彼の肉棒が膨張し絶頂寸前まで高まってきた。

「はあっ・・・はあっ・・・はあっ・・・」

自然と彼も、その火照った体で動き始める。
ゆっくりと妻の膣の感触を味わう様に。


「もう♥ 私が動くって言ったのに♥」
「辛抱出来ないんだっ。俺も気持ちよくっ・・・」
「良いよ♥ なら一緒にイこうっ♥」





『くっちゅ、くっちゅっ♥ くっちゅ、くっちゅっ♥』




互いに刺激を与えあい、快楽を味わう。
それは至高の幸福であり夫婦となれば尚更の事だ。
何度も刺激を味わい続け、遂には悦楽が。
おのずと限界が。

「ごめん俺っ!? もうっ!!」
「いいんだよっ♥ ほらあっ、イって♥」

妻の熱い声が引き金となったのか。
それとも次の刺激でなのか。
どちらとも言えず、どちらとも正解だったのだろう。
静かに絶頂の声を挙げる―――


「あぐっ!!」




『どぴゅ、ぴゅるるるるるっーー!!!』



確かな絶頂が来た。
声と共に彼は溜まっていた精を、愛する妻に注いでいく。
それらを全て受け止め、喜んで飲み干していく妻の女性器。

「あぐっ・・・。暖かい♥ 貴方の子種っ♥ 潤っちゃうな♪」

その口元はだらしなくたるんで、目元を見ればうっとりとしている。
誰の目から分かるほど妻の顔は幸せに満ちていた。
もちろん愛する夫も幸せそうな顔だった。
絶頂を迎え、その快感に震えていた妻の体が横たわる。
彼女を受け止めた夫は、その耳元で囁いた。
「なあ、今充電率は何パーセントだ?」
「まだまだ充電率は20パーセントだよ♥ もっと充電したいな♪」
「・・・なんなら120パーセントにしてあげるさ」
「嬉しいな♥ 愛してるよ、あなたっ♥」


『ちゅっ♥』


そう言い妻はもう一度夫に口づけした。
また甘酸っぱい味が口に広がり、二人を幸せな気持ちにさせる。
夜はまだ長い。
ならば十分楽しもうと夫は、その両腕を愛する妻の体に回し抱きしめたのであった。

17/10/31 00:08更新 / リュウカ

■作者メッセージ
ここまでお読み頂きありがとうございます。
今回は6000字以上といつもより短く、ボリューム不足だと思いますがお楽しみ頂けましたでしょうか?

…甘口ってのが未だによく分かりませんがこの様な味付けでよろしかったでしょうか?

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