連載小説
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『S.Sword』
鉄を打つ音
無骨な音から
延びのいい音色になる

鉄の焼き色
赤と黒を行き来する中で
銀の光沢を抱かせる

叩き斬る剣を見切り
『斬る』剣を
ただ『斬る』剣を

優れた物が残るのは
同種の中での話だ
剣の種類に優越はない

故に私は剣を打つ
遠き地平――ジパングにて

輝ける刀身に
零れは一つもない
波打つ模様は炎の如く

一つ振るえば音を斬り
二つ振るえば風を斬る
痛みを知らせぬ剣を

誰かは私を残酷と謗るだろう
だが思うのだ
美しい物を
美しいと評し
美しく作ることの
何が悪いのだろう、と
10/08/29 21:53更新 / 初ヶ瀬マキナ
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■作者メッセージ
「ジパングの山奥で、一人刀匠をやっているサイクロプスがいるのよ」
「ほう。さぞ良い刀を作るのか?」
「ええ。無骨ながら、無駄を削ぎ落とした洗練された刀を作るわ。噂では大陸に何本か渡ってるって話よ?名前に『比翼の鳥』をイメージした特徴があるらしいわ」
「……俺の師匠が集めた骨董品の中に、『白暁』と『現人神』って刀があったが……まさかな」

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