読切小説
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ウマレカワルトキ
……表現することもはばかるような酷い悪夢から目を覚ました私を待ち受けていたのは、運命の神とやらを心底憎らしく思う程の現実だった。いや、神は一人だから、恨むべきはその神に対する叛逆者、魔王だろう。
「……はぁ……はぁ……」
壁と地面にもたれ掛かった姿勢のまま、私は一歩も動くことが出来なかった。下手をしたら、指一本動かせるかすら怪しいところだ。目を覚ましたばかりだというのに、その体力すら存在が危ぶまれている。
今の私には生きている、というよりも死んでいない、という表現がピッタリだろう。だが、このままずっと死んでいないままで居られるわけがない。原因は分かっている。
「く……っ……!」
私は、鉄甲が剥かれた片手が置かれた腹の中で、不気味に蠢く異物がその感触を如実に伝えてくるのを感じていた。不快感のあまり胃の中身を戻してしまいそうになるが、戻す物が無いどころか体力を無駄に消費し、命を縮めるだけだと何とかこらえる。堪えたところで、この異物が動き出してしまえば同じ事だと理解して……それでも私は生きながらえたかった。
それに……いざという時に、つまり異物が動き出したときに、私は覚悟を決めなければならない。自らの命を、この怪物と共に断つ覚悟。その覚悟を実行するためにも、あるいは絶望に近い確率でしか来ないだろう救援を待つためにも、私は、体力を無駄に使うわけにはいかないのだ……。

――――――

ローパー、という魔物の生態を知っているだろうか。一本の触手から無数の触手が生えているという外見だけでも生理的嫌悪感を催す化け物だが、生態まで考慮するとまさに魔王が魔王らしい、下劣で穢らわしく、冷酷で恐ろしい、人類の敵とも言える魔物だ。
食性は肉食。無数の触手で人間に限らず動物を捕らえ、消化液で溶かしながら踊り食いするか、少しばかり知能を得た物は脳を貫いて殺してから消化液を注いで内側から啜る。
恐ろしいのはその繁殖法だ。触手で捕らえた獲物に繁殖時のみ分泌する神経毒を注ぎ、獲物の【穴】に卵を産みつけるのだ。その際穴はどこでもいいらしい。口だろうが、尻穴だろうが……秘所だろうが、初めに見つけた穴に触手を突っ込み、卵を産みつけるのだ。そして産みつけられた卵は孵化するのと同時に、宿主の体を裂いて誕生する。そして宿主となった体は……そのローパーの最初の餌となるのだ……。
助けを求める兵士の体を裂いてローパーの子供が産まれる光景を、私は何度も目にし、そのたびに涙を堪えて子ローパーの命を潰してきた。だが……油断した。その結果が今のこの様だ。
じくり……。無惨に散らされた処女の痛みが、私に悔しさを思い起こさせる。あの日、侵攻対象であった魔界と化した国家の隣にある、魔界化の難を逃れたという村に唯一ある宿に泊まった、それが絶望の始まりだった。難を逃れた村、その実態は小悪魔の化けた村人達に動物の皮を被せたローパー、そして村長は私達よりも遙かに年を食った魔女と、既に村は魔界の一部だったのだ。
長旅の疲れもあって眠りに着いた私達を魔女は一人一人引き離し、魔物達は容赦なく蹂躙し――そして今に至る。
「ぐっ……!」
自らの迂闊さに腹が立つが、ここで嘆いたとして、運命が変わることはまずない。かといって、只絶望の中で死ぬつもりはない。神経毒の効果が、私の中で徐々に引いていくのが分かる。救援が来ないのならば、せめて、せめて一太刀はくれてやるのだ。私に巣くう、化け物に。

――――――

昼夜の感覚がない、ということはない。この個室の一角、スライムならば通れるだろう程狭い四角形の穴から、日の光は漏れてくるのだ。つくづくよくできた村だとは思う。魔界に挑む血気盛んな勇者に同情心を抱かせつつ、油断させる。そのために気候や天候を全くいじらずに、あるいは完璧に擬態させているのだから。
きっとこの部屋の犠牲者達は、光によって過ぎゆく時に心をじらされながら、いつ孵化するのか分からないという恐怖を感じていたのだろう。下手をすれば、異物に突如発生する熱と、その後すぐに来るだろう痛みによって、命を代償に"救われた"と感じてしまうまで狂った者も居たのかもしれない。
私はそのどちらでもない。悔しさや憎悪こそあれ、神経毒が完全ではなくとも引けば、魔力でも感知できない、自決用の刃で、人に災いをもたらす魔を退治できるのだ。そのために、心は研ぎ澄ませなければならない。そう心に言い聞かせながら、私は神経毒の引きつつある体を、ゆっくりと動かしていった。

が、その動きは、他ならぬ私自身の意志で止められることになる。

「――え……?」

――何かがおかしい。何かが変わってきている?先程までと空間事態に変化はない。変化など私とこの場所に閉じ込めたであろう魔女以外に誰何人も影響など与えようが――。
『――な、何ジゃ……王様ニ……ガ起こ……』
老婆の嗄れた声が聞こえる。もしかしたらこの空間に私を閉じ込めた魔女の本来の声なのかもしれない……その魔女が動揺しているのはどういう……!?

もし体が自由に動かせたとしたら、まず最初に自分の目を擦っていたに違いない。
いや待て。先程まで間違いなく光は窓から私の眼前を貫き照らすように存在していたはずだ。今も確かに貫いてはいる。だが……それはこの様な弱々しい光では断じて……ましてや桃色がかった光などでは――ッ!?

「――ぐあぁっ!」

堅牢な筈のこの牢獄の外から、囲う壁を無視したように突風が吹きつけ、私の体を吹き飛ばした!鎖も何も無い私の体は、そのまま反対側の壁に叩きつけられ――そのままぶち抜いてしまった!常識から言っても到底ありえない事態ではあったが、私は体をしたたかぶつけられた事による激痛からその事まで頭が回らなかった。
『な……何ジャ!?ワシの体が……!?』
魔女の声がはっきりと響く。近くにいるのか、そう周りを見渡そうとした、まさにその瞬間だった。

「――ぃぁ?」

私の体の中で、何かが融け崩れていく様な感覚。それはそのまま、熱せられた蝋の球を体内に直に埋め込んだかのように熱を伴って腹部を基点に全身に広がっていく!孵化、間違いなくローパーの卵が孵化したのだ!
だがおかしい。孵化したローパーは触手を用いて体がはちきれんばかりに蠢いていくはずだ!私の目の前で部下の体を苗床にして産まれたローパーも、彼女の体にくっきりと触手の輪郭が浮かぶほどに隆起し、そして中から食い破っていた筈だ!あらん限りの悲鳴と苦痛の呻き声を漏らさせながら。なのに……なのに……!
「――ぁぁぁああああああああああああああああああああっっ♪」
何故だ!?何故私は感じているんだ!?私の中で猛り狂う熱が私の中をどろどろに溶かし、何か別の物に変性させているのかもしれないというのに、何故その熱が何処かもどかしくもはちきれそうな快楽を私に抱かせるのだ!?痛いという感覚が麻痺したのか、それともそもそも……。
思考が定まらない。定めようとしても体の中の熱がそれを許してくれない。気持ちいい、でももどかしい。何かが体の中で膨らんでいく、でもそれが何故か気持ちいい、痛みが無い、先程の鈍痛は残っているから痛覚は麻痺したわけではないのに。
変わっている。何かが変わっている、いや、何かがあの風を境に変わった……!?従来の知識では判断しようが無い事の連続に何とか原因を探ろうとした私を嘲笑うかのように。

――でゅるん

……それは私の中、詳しく言うなら下腹部から腰のあたりから発生した。
「ひぃうっ♪!?」
私の皮膚と肉体の隙間を這い撫でるように、ぬめり気を帯びた何かが蠢き始める!皮膚と神経を直接刺激するという、言葉に表せないような激痛が走る筈の行為は、しかし私に雷撃でも落とされたかのような刺激的な快感しか与えてはくれなかった。さらにもう一つ。今度は背中の方だった。ぎちゅぐちゅと私の皮膚の中でくぐもった音を立てながら、それらは私の体に絡みつつ、体の中を蹂躙していった。
「ひくぁ、あくぅ♪くへぁ、あひぃぃぃっ♪」
体の中でそれらが蠢く度に、神経が焼き切れそうな程の快楽が走り、情けない声をあげてしまう!膝にも足にも腕にも力が入らず、痙攣したようにがくがく震えながら地面にうずくまる私の股間からは、とろり、どろりとした愛液に似た何かが地面に向けて垂れ落ちてきていた。明らかに、人の持つ愛液とは別の物質が私の中から溢れてきている。
うじゅりうじゅりと背中から腰から、明らかに自分ではないものが皮膚を隆起させて思うままに蠢く状態というものは何らかの嫌悪感を抱いてもいいものであるはずだし、そもそも命の危機にある状態といっても過言ではないのに、今の私の中には雷撃のような激しさと疼痛のようなじわじわ響く快感、そして得体の知れないもどかしさが螺旋を作って私の全感情を埋め尽くしている。命の危機とか、考える余裕すらない。体の中の熱は熱で私の肉体をぐじゅぐじゅと融かす様に染み渡っていって、快楽によって緩んだ思考をさらに鈍らせていく。最早目の前に魔女がいるとか、既に神経毒が抜けきっているとか、そもそも孵化したローパーはどこへ行ってしまったとか、認識しなければいけないことが全て熱によって溶かされていく……。
「ひぢぁうっ♪づゅあぁぁっ♪」
うじゅん、ぐじゅん。皮膚はぼこぼこと膨れ上がり、私の体を執拗なまでに愛撫する謎の物体はその数を増していく。しかしその何れも、私の脂肪や内臓を引き裂いた様子がなかった。それだけでない。それらがうじゅるうじゅると蠢いて私の体を何処か優しく愛撫する度、私の中に愛撫される感覚とは別に、何か柔らかいものに触れている感覚が発生しているのだ。その感触もまた快感として私を昂らせていく。最早前方に何があるかすら、徐々に視界に霧が掛かり始めて認識できなくなりつつあった。
ひくひくと、子宮の奥底から広がる漣が、下腹部を、首から下を、そして頭を少しずつ震わせていく。皮膚の下で蠢く無数の物体もまた、その動きを強め、まるで私の皮膚をそのまま突き破るかのごとく激しくのた打ち回っていく。いつしか私の思考は、それらが私の皮膚を突き破る事を臨むようになっていた。今の私の中にある思考は――ただ解放を求めるもどかしさだけ……!!
仰向けになった私の体が、与えられる快楽の刺激にあわせてびくんびくんと跳ね、臍の辺りを基点としたえび反りを披露している。傍から見たら、さながら吊り上げられた魚のようにも思われるかもしれない。その魚は表皮が得体の知れないものによってめこもこ蠢いており到底食えた代物ではない事は確かだが……!

「――あ」

びりゅい。
まるで、濡れた厚紙を引き裂いたような、観想と湿潤がいり混じる音。それが私の体の、丁度腰の辺りから発生した。体の感覚が、時間の感覚も含め一瞬吹き飛んだ私が無造作に向けた視線の先、そこには――私の皮膚を突き破り、ひょっこりと顔を出した、肉肉しいピンク色の触手……紛れもなく、ローパーの触手があった。
「……ぁあ、ああー、ああ……あ?」
びりゅい、ぶぢゅっ、ぢゅっ……。腰周り、背中、尾骶骨……様々な場所から、桃色の侵食者達は飛び出していく。土から芽を出したかのように私の皮膚を破り顔を出したそれは、何処か戸惑ったように少し震えると――!

――びしゅるるるるるるるるるるるるるっっっっ!!!!!!!!!

「――!!!!!!!!!!!!!!!!!」

……体が快感を認識する、そのほんの少し前に、触手達は一気に成長し、私の体からずるずると溢れその全貌を明らかにしていった。ぬらぬらとした粘液を纏い、どこかぷにぷにしたような質感と瑞々しさすら感じられるような桃色の表皮に覆われた、男性の二の腕ほどの太さを持った触手。それらは私の皮膚から開放されたことを喜ぶように歓喜のダンスをうねうねと踊っている……のだけれど。

――ぷしゃぁぁぁぁぁぁぁ……。

――言葉にすら、ならない。体の肉、皮膚を突き破って触手たちが伸びていくたび、表皮が体と擦れる感覚、体が触手と擦れる感覚、そして飛び出した触手に空気が触れる感覚。それら全ての緩急様々な刺激が、全て快楽神経を通って頭の中に叩きつけられた結果、受け入れられる快感の上限を超えた私の体は、容易に絶頂を迎えたのだった。意識が吹き飛んでしまいそうなほどに強烈なそれに、私の全身はガクガクと震え、卵が埋め込まれていただろう子宮は何処か物欲しげにキュンキュンと疼き、股間からは潮を吹いたばかりだというのにとろとろ、どろどろとした愛液やら何やらが混ざった液体とも粘体ともつかない物体が溢れ出して地面に液だまりを作っていく。
強烈な絶頂によりなけなしの体力を奪われ、掠れたような呼吸を繰り返す私。既に思考はぼんやりとしており、何も考える事など出来ない。考える余裕すらない私に――しかし触手達は容赦の一つすらなかった。空気の感触に感動するかのようにただうねうねしているだけの触手達、その先端が、私の方に向き始める。恐怖を感じる心の余裕すらない私に、それらは一気に行動を開始した!
「――ひきゃぁぁぁぁぁぁぁっ!?」
触手の一つは、前儀も無しに私の秘所へと身を潜らせつつ、その身を濡れきった膣肉に擦り付けていく。抉るわけでもなく、変化を続けているその箇所をなぞるようにその柔肉を押し付けていく、ただそれだけの行為。だが未だ嘗て一度として受け入れたことのない箇所への無慈悲な刺激は、絶頂を迎えたばかりで張り詰めた私の快楽神経を、まるでトレモロを演奏するかのように弾いていく!
さらに一つ、触手は私の中へと潜ろうとする。けれどその潜る先は、間違っても物を受け入れる場所ではない、どちらかというと排泄する穴――肛門であった。
「ひぎうっ……♪♪」
括約筋を強引に押し広げて侵入した触手は、まるで畑を耕すように腸に至るまでの内壁を圧迫し、分泌する粘液を塗りつけながら解していく。おぞましさと明確な圧迫感、人が感じて然るべきそれらの感覚はすぐにじんじんとした快楽へと置き換わり、私に腰を振らせるようせかし始める。もっと、もっと受け入れろと、私が私でなくなっていくような命令を、本能が下していく……。
「ひぅぁ!んひゃぁぁ♪♪♪」
別の触手が、先端を窄めながら私の胸周りに吸い付くと装備品を溶かし、両胸の乳首をすっぽり覆い、そのまま咥え込んでしまった!触手の中には無数の舌のような器官と、軟骨のような確固とした器官があるのか、全方位から舐められ続けると同時に、時折甘噛みでもされているかのようなコリコリとした刺激が私に断続的に与えられてくる!
「ひきゃう!ふぁぁっ♪♪ふゃぁぁっ!!?!?♪♪」
ぐむり、ぐじゅり。まだ私の皮膚の中で蠢いている触手が何本かある。それらはわたしの体をぼごっ、ぼごっと奇怪な形に歪めながら、皮膚の下で私の全身愛撫を繰り返している!見えない場所から、予測のつかないタイミングで来る暴力的なまでの快感。体の隅から隅までを征服され、開発され続ける私の口からは、助けを呼ぶどころか最早喘ぎ声しか出す事が出来なかった。出す意思すら、触手達によって奪われていく……。
「いや、は、んぁぁ、んひゃう♪あぐ、んかぅ♪ひぃん、ひゅぁぁ……」
最早、周りで何が起こっているかなど、私には理解できなかった。頭が焼ききれそうな快感が、与える側と与えられる側の二方向から叩きつけられて、心の持ちようすら変化させて、記憶すら、矜持すら焼き切れてしまいそうで……。

ぶじゅっ、ぐじゅるるるるるるるるる……

「んぁぁぁ、ぁぁ、ぁぁぁぁ、ぁぁぁぁああああああああああああぁっ♪♪♪」
あ……また……触手が……増え……た……。
あぁ……だめ……きもちい……。
もう……何も……考えられ……。

『……くっ、屈辱じゃ……!まさかバフォメット様直属の魔女が一人、シスがこ、このようなちんちくりんな幼女と化してしまうとは……!』
……あ……。なにか小さな子がぶつぶつ言いながらぐるぐる回ってる……かわいい……おいしそう……おいしそう……?
『……ん?待てよ?魔力は子宮に溜まり、それが元々どれだけ綺麗であり、それをどれだけバフォメット様に穢させたかによって魔女としてのランクが上がるならば……これは、ワシに更なる高みを目指せという新魔王の心意気か!』
……まりょく……しきゅう……いっぱい……?……あ……、しきゅう、くきゅうって……いった……?
『よし、ならば善は急げじゃ!我が崇拝のバフォメット様のところへ赴き、再び我が純潔と共に魂を捧げ、魔女として更なる高みを目指そうぞ!ククク……行く行く末は大魔女シス様と呼ばれるのじゃ!』
……おなか……すいた……ほしい……ほしいの……ほしいの……おなかが……くぅくぅ……なってるの……。
『そして何れは素敵なお兄様と……ん?何かおかしいのう……まぁそんな瑣末な疑問より、今はバフォメット様の元に向かうのじゃ!移送方陣!』
……あ……いっちゃう……いっちゃう……いっちゃった……んんっ♪

おなか……おなかすいた……くぅくぅなってる……んんっ♪……おなか……おなかすいた……。
だれか……だれかぁ……んぁぁっ♪

「……すけに来たぞ!……おかしい……これだけの規模の施設がもぬけの殻だと?捕虜にしている者も含めて、相当数いると踏んだが、一体どういうことだ……?」

……ぁ……♪
「この施設で魔物を量産していた事は想像に難くない。実際、そこかしこに痕跡はある。だが、それらが死体すら含めて全て一挙に消失するなんて事はないはずだ。必ず何処かに、生き残りはいるはずだ……。
誰か!誰かいないのか!!」
……ぁぁ……♪♪きた……♪♪♪たすけに……きた……♪♪♪♪
しゅるしゅると、しょくしゅたちがわたしのからだをぬるぬるとはって……おむねをちゅくちゅくして……おまたをくちゅくちゅして……おしりをぬぷぬぷして……♪♪

「――んぁぁぁぁぁぁぁぁああああああああああっ♪♪」

はやくっ♪はやくこっちにきてっ♪
「――ッ!生存者か!今すぐ助けに行くっ!!」
あぁ……あしおとが……においが……もっと、もっとぉぉ……♪
しゅるりしゅるりと、しょくしゅがあしにもうでにもからみはじめて……ぬとぬとしたあったかいえきをぬりつけはじめて……きゅ、きゅってぇ……♪♪
「や、やぁっ、やぁぁぁぁぁあああああ♪♪」
「こっちか!今すぐ行く!気を確かに持ってくれ!」
いますぐいく……いく……イク……♪きて……きて……♪いますぐきて……いますぐイク……♪♪
がたがたって、かべがくずれていくおとがする……♪もうすぐ……もうすぐ……こわれたぁぁ♪
「……っとぉ!大丈夫――なっ!?これは!?」
みてるぅ♪わたしのことをみてるぅ♪しょくしゅでぬちゅぬちゅぐっちょぐっちょになったわたしのことみてるぅぅぅぅ♪
「やぁぁ♪やぁぁ♪やめてぇぇぇぇぇぇっ♪」
「くっ!くそっ!」
からみついたしょくしゅをきろうとしてくれる……わたしのために……わたしをたすけるために……♪
あはぁ……♪いいにおい……もっと……もっとぉぉ……♪
「――でぇぇぇぇぇぇいっ!」
かれのけんが、わたしの、しょくしゅ、に……♪

――触手が一本、彼の剣によって斬られたその瞬間、私の視界は白とピンクに染まり、見えるものが彼だけになった。
心臓が高鳴る。時が止まったように感じる。現実から自分の意識だけ遊離したように感じる。何が起こったか、考えようとするが、思考が上手く働かない。
何をすべきか、その問いかけを脳に与えた私の意識は、その脳から流される膨大なまでの情報に押し流されていく。
言語化することが出来たなら、恐らくこうなっているのだろう。その分析すら行なえないほどにその情報を前に私の存在は――。

『彼が欲しい彼を侵してあげたい彼のおちんちんを私の中に招いてあげたい無数の襞襞で包んであげたい膣でキュって締め付けてあげたい亀頭をちろちろとしてあげたい彼の陰嚢をもみあげてあげたい彼のアナルに入れてあげたい彼の精子が精液がザーメンがスペルマが白濁液が子種が生命の源が赤ちゃんの素がケフィアが欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい私の中に欲しい子宮に一杯欲しい種付けして欲しいびゅっくびゅっく出して欲しいこってりとっぷり欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい欲しい……』

「――な……なぁぁぁっ!おい、やめろ!やめてくれ!」
ぶじゅり、ぶぢゅり。私の体を突き破って、いや、私の体から新たに二本の触手が生えてきて、瞬く間に彼の剣を吹き飛ばし、両腕にぬるぬると絡み付いてきた。皮膚越しでも分かるほどしなやかでしっかりとした筋肉の感触に、私の股間は再び愛液に似た粘液を吐き出す。
ぶぢゅり、しゅるる、しゅるるる……。触手が次々と、彼の鎧の内側へと侵入して、紐や繋ぎ目を溶かして脱がしていく。筋肉がしっかりついた両脚も触手がしゅるしゅる絡みついて、もう抜け出すことは出来なくなった。
「あはぁ……♪」
私は触手に誘われるように彼の身体へと倒れこみ、そのまま唇に触れた。
「な、おい!気をしっかりんぶっ!」
何か言おうとした彼の口を塞ぎ、私はそのままぬるぬるした舌を彼の中に突き入れた。貪るように、という比喩が的確なくらいに私の舌は彼の口内のありとあらゆるところに蠢いていた。歯も、その隙間も、粘膜も、舌の裏にある血管も、神経系も全て私の舌が分泌する粘液によって塗りつぶしていった。
「んぶぶ、んむ、んむんんんっ!」
抵抗しようと、彼は私の舌に噛み付いてきた。よほど必死だったのだろう。その力はとても強くて、私の舌が切れてしまいそうなほどで……ぷちん、と切れてしまった。
「んんんんんんんっっ<♥><♥><♥>」
不思議な事に、血の一滴も出ることは無かった。それどころか……痛みがない。痛くない。痛く……気持ちいい!!
その刺激に反応するかのように、触手達は彼の身体をまさぐり始めた。既に服は全て脱がし、或いは溶かして彼の雄雄しいそれは露わになっている。触手達はそんな彼の逸物に一気に群がっていった。ある触手は陰嚢に巻き付いて、掌で揉み解す要領で優しく締め付けては緩めてを繰り返している。その陰嚢に浮き出た皺の隙間や血管に、別の触手は舐め擽るように身体を這わせ、粘液を塗りたくっている。別の触手は彼の逸物の根元に巻きつきつつ、皮の裏や返しの部分をぺろぺろと舐め擽っている。返しの部分に巻き付いた別の触手は、纏う粘液を潤滑剤にして、にゅっぽにゅっぽと上下動を繰り返して、彼の逸物を刺激している。そして他のに比べて先端の細い触手は、先端の口を広げて、鈴口の辺りに吸い付いて、溢れ始めるカウパー液を綺麗に舐め取っていた。そして、触手の一本は……アナルを解すように、菊門に粘液を優しく塗りこんでいた。
どろどろと、私の股間から粘液が溢れている。舌が噛み切られた快感によって、既に麻痺を起こしつつある脳の快楽受容体が絶頂の許可を出したらしい。びくびくと震えながら、私の股間は彼と床をどんどん汚していく。彼のにおいが私に染まっていくのが、私はたまらなく嬉しかった。
びくんっ、びくんっ。彼の逸物は絶頂前の戦慄きを始める。溢れる我慢汁の量も心なしか増えてきているらしく、触手を通じてきゅぽきゅぽ私の中に贈られてきている。オードブルの後に出されるスープのように、上質な味を残しつつ後に来るメインディッシュの期待を押し上げる味わいのそれに、私の心は打ち震え、どぼどぼと粘液が股間からあふれ出していった。
「――んぐんんんっ!?」
精を放とうとする彼の触手の動きを押し留めたのは、根元に巻き付いた触手。彼の絶頂のタイミングに合わせて、それは締め付けを強めたのだ。生殺しの状態に苦痛と動揺の表情を見せる彼に、口付けを終えた私は……ぢゅるり、と舌の先端を生やしながら、何処かぬるぬるし始める両指を股間に添えて――くちゅり、と開いた。
揉まれ、舐められ、締められ、吸われ……既に血管が隆起するほどにいきり立った彼の肉棒に向けて、私の股間はだらだらと粘液を垂らしている。それはまるで、メインディッシュを我慢できない口が涎を垂らしているようだった。でも、仕方ないんだ。我慢汁の味が、あんなに美味しかったんだもの。
「はぁ……はぁ……はぁぁ……♪」
一寸、また一寸ずつ、私の股間が彼のそり立つ肉棒へと近付いていく。その度に私の全身は熱を感じ、理性すらも容易に焼き尽くしていく。欲しいという心の、頭の、本能の叫びに私は抗うことなく、そのまま……一気に腰を落とし、彼の逸物を自分の中に招き入れた
「――んやぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっっっ♪」
……満たされるとは何か、私は本能的に理解したように感じた。まるでこうしている状態こそが当然で、完全な状態であるかのように、私の本能は捉えていた。既にドロドロに蕩けきっているであろう私の膣肉が、彼の逸物を四方八方から包み込み、甘噛み擦るかのようにやわやわと圧迫しながら絡み付いていく。
襞の一つ一つが、外で彼を絡め取っている触手のようにうねうねと蠢いて、数十本の舌でカリ首を嘗め回しながら皮の裏や裏筋を舐め擽り、十本以上の指で竿を扱きあげて、小指大のそれが鈴口やその周辺をつんつんと刺激している。
あまりの刺激に彼は苦悶の表情を浮かべるが、相変わらず先端から出るのはカウパーだけであった。苦痛に歪む彼は、せめて今与えられている快楽だけでも逃れなければと、腰を引いて逸物を外に出そうとするけれど――。

彼を逃さないように、彼の菊門を解し終えた触手は――するりと彼の中に侵入していった。

「ひ、ん、ぷぁぁぁぁぁぁぁぐっ!!」
体の中に異物が入ってくる嫌悪感だが、既に魔界となったこの空間を満たす魔力によって彼の身体もまた変化しつつある。その変化によって、彼の股間は刺激に順応し、快楽信号を放ち始めていた。
彼の脳は相変わらず精を放て、と命令しているようだけど、それは私の触手が許してはいない。私にも、彼にも、触手はその調教の手を緩めなかった。
「んやぁぁ♪んやぁぅ♪んっはぁぁ♪」
ばつんっ!ばつんっ!ばつんっ!尻を触手に貫かれ合った二人は、その触手の動きに合わせるように腰を打ち合わせている。私や彼が腰を引くと、それに合わせて触手が中へと深く貫いていき、それを裂けるように腰を押し付けると、触手は完全に抜けてしまいそうなほどに腸壁を擦りながら引いていく。最早彼も私も、触手からは逃れられなくなっていた。
彼を貫く感触、私自身を貫き、貫かれる感触。私を押し広げる彼の肉棒の感触、彼の肉棒に巻き付いてせき止めている感触。私の両胸に吸い付き、吸いつかれている感触。彼の身体の感触、私の体の感触……ありとあらゆる感触が、私の心を押し上げて、絶頂の限界に近付けようとしていく……!
そしてその最後の一押しを――触手は彼のアナルに打ち込むと同時に、触手の“拘束”から解放した!
「――!!!!!!!!!!!!!!!!」
声にならない絶叫と共に――私の中に一気に雪崩れ込む!!!

「――んんあ、あああああ、ああああああああああああああああああああああああ、ああああああああああああああああああああああああああああああああああっ<♥><♥>」

まるでダムが決壊したかのように、彼の中に溜まったスペルマが私の中に流れ込んでいく。下手をしたら逆流する程の量に思えたそれを、私の子宮は一滴も逃さないかのようにきゅぼっきゅぼっと取り込み、その大きさを巨大化させていく。端から見たら、もしかしたら妊娠しているのではないかと思えるくらいに膨らんできているのかもしれない……。
きゅん、きゅんと、子宮の奥深くが、喜びの声を挙げている。まるで子宮が味覚を持ったように、私の頭はその精液を美味しいもの、たとえ王家御用達のレストランの最高級フルコースを食べたとしてこれほどの満足感は味わえないものと捉えている。もっともっとと蠢いたそれに応えるかのように、彼は絶叫しながらもさらに精液を放出し続けている。
どろり、と絶頂の瞬間に私の体が、主に下半身が融けた気がしたけれど、遥か高みに達してしまった私にとって、そんなことはどうでもよかった。
ただ、子宮が、お腹が、体が、存在全てが満たされるような感覚に、私は一度死んで、新たな命を得たような、素晴らしい開放感を覚え……それに精神を全て委ねてしまった。
視界も、思考も、体の中も、全て真っ白に染まっていく……。

――そして意識を取り戻した後で聞いた話と、そこからの推測。
あの時私の体に叩きつけられたのは、魔王の代替わりを告げる大量の魔力を含んだ風だった。ただでさえ魔力が芳醇な魔界で、それも魔王城に程近い場所でありったけの魔力を受けた私の体は、体内に植えつけられていたローパーの卵が魔力改変されて孵化した瞬間、一気にローパーへと変化してしまったらしい。
自分の身体が魔物と化してしまったことに、私はそこまで悲しみを抱く事は無かった。もしかしたら新魔王の魔力が私の精神に及ぼした作用なのかもしれないけれど、正直もうどうでもいい。
私は魔物と化しても、幸せにやっていけているのだ。私を助けてくれたダーリンと一緒に。

……唯一つ、変化して発生した悩みがある。新しい生態となったローパーは、寄生した相手をローパーに変える際に、身に纏っていた服をそのまま取り込んで新しい皮膚としてしまう性質がある。服っぽく見えるだけで普通に粘液とかを分泌している所為で、他の服を着ることができないのだ。
で、私の場合、胸や股間が丸見えになるまでボロボロとなってしまった鎧がそのまま皮膚となってしまったため、ろくにお洒落が出来ない現状では、外で歩く事自体が一種の羞恥プレイみたいな事になってしまっているのだけれど……。

……まぁいいか♪

Fin.
12/11/11 15:54更新 / 初ヶ瀬マキナ

■作者メッセージ
前魔物時代のローパーガ孕ませ寄生生物だとすると、多分魔王の代替わりの瞬間にこんな事が起こったのではないでしょうか。

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