連載小説
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告白とお仕置き
ーーこの矯正施設とやらに囚われて約一ヶ月が過ぎた。ここでの生活にもだいぶ慣れてきた…と思う。ここで毎日「される」事については永遠に慣れる気がしないが、それでもここでの「生き方」のようなモノ、或いはコツが分かってきたという事だ。
 魔物の言う事には絶対服従、少しでも歯向かおうものなら即懲罰房送り…かと思いきや必ずしもそうではなく、案外融通が効くこともあるのだ。
 嫌がりながらも最後は妥協して受け入れる…基本はこれだ。その中でギリギリの妥協点、譲れる所とあちらが絶対に譲れないポイントを見極め、出来る限り実害を少なくし、楽に生活する。
 この一ヶ月間で学んだ交渉術をフル動員し、その成果として今、自分は予定されていた尻穴の徹底開発を免除してもらう代わりに乳首の性感を開発される事になったのだ。




……どうしてこうなった。


「はい♪怖くないですからね〜、安心して力を抜いてくださいね♪」

 また何時ぞやのようにシルエラに背後から抱きすくめられた。ちなみに今日はルリエは来ておらず、部屋には二人きりだ。促されるまま、床に腰を下ろし、彼女の胸に背中を預けた。彼女に言われるまでもなく、勝手に身体が脱力してゆく…。この一ヶ月で確信したが、絶対何かの魔術を使っていると思う。
 
「はい、いい子ですね〜♪では…」

 シルエラの手が胸に這い、シャツのボタンを外す。同時に宙から小さな壺が現れ、コトリと床に置かれた。

「効率的に開発していきたいので、お薬使いますね。」
「…それ大丈夫なんでしょうね?」
「何がです?」
「…副作用とか?」
「魔界では一般的に使われているモノですから大丈夫ですよ。まあ強いて言えば、敏感になり過ぎて日常生活に支障が出る程度ですかね。」
「……。」

 さようなら日常…。

 こちらが黙ったのを見て了承としたのか、シルエラの手が動きを再開する。シャツをはだけ、壺に満たされた薬液を刷毛で撹拌し始めた。水面が泡立ち、湯気を上げ始める。

「…ちょっと熱いですよ〜。」

 粘度の高い薬液をたっぷりと付けた刷毛の先が肌けられた胸に触れた。
「ぅくッ…!?」

 薬液の熱と柔らかな毛先の感触に背筋に甘い痺れが走る。触れた箇所から成分が皮膚に浸透していくのが分かる。早くも肌の感覚が鋭敏になってきた気がした。

「このお薬は〜皮膚に触れるとその箇所の感覚神経を性感を感じるものに変え、成長させていきます。最終的には乳首が服に擦れるだけで絶頂するようないやらしい身体に仕上げるつもりなので〜、覚悟してくださいネ♪」
「本格的デスね…」

 最早やけくそである。いずれにしろ逃れられないのだから抵抗しても仕方が無いのだ。むしろここで抵抗すればもっとまずい事になる気がした。



「…ところでミハイルさんはお嬢様の事どうお思いですか?」

 胸の突起へ丹念に薬を塗り込みながら、シルエラが唐突に切り出した。

「どうっ…て…」

 正直苦手意識はある。毎日許容量を超えた責めを加え、それに相手がのたうち回る様を見て楽しむサディスト…それがルリエの印象だった。

「むぅ…露骨に嫌そうな顔をしないでくださいよ。単刀直入に言います、お嬢様と添い遂げてください!」


「………………は?」

 …今何と言ったか。

「だいぶ先の話になりますが…、ここでの刑期を終えた男性は基本的に精奴隷として魔界に出荷されます。…が、その前にこの施設の職員、特に自身の担当官と一緒になる事も多いんです。……というか女性を物理的に傷物にした責任は取っていただきたいなぁ。と♪」
「うぐっ!?それは…」
「それに、貴方にとっても悪い話では無いと思いますよ?施設内で魔物娘と結ばれた場合…相手方の判断によってはですが…早期に出所出来る場合があります。少なくとも毎日の搾精の内容は優しくなる…筈です。」

「…というか刑期が終わったら自由になれる訳じゃないんですね。」
「その子供のまま成長が止まった身体で自由になってどうするんですか?不可逆な肉体改造を施す以上、出所後の生活まで責任を持つのは私達の義務だと思っています。」

 言われてみれば確かにそうかもしれないが…。自分だってこの子供の身体でいきなり外に放り出されればそれが一番困る。しかしなんか釈然としない。


「…まぁそれは置いといて。」

 シルエラは続けた。

「ルリエお嬢様は物心付いた頃から、ご自分がリリムとして生まれてこなかったことを大層お気になされていて…その力の差を埋めるため、それはもう大変な努力をされたのです。それを貴方は一瞬で台無しにしてしまった。なので少しは罪悪感を持ってください。」

 何という一方的な理屈だ…。しかし一応、罪悪感はある。彼女の言い分は人間の感覚としては受け容れがたいものもあるが、そもそも悪意の無い相手に殺す気で立ち向かっていたことを考えれば非はこちらにあるような気すらしてくる。たとえ教団の嘘に踊らされていたとしてもだ。

「それで具体的にはどうすれば…?」
「まぁ適当に愛の告白みたいな感じでひとつ。」
「………。」

 従者よ、それでいいのか…



〜翌日〜

「……ゑ?」

 ルリエの目が点になった。

「い、いい今何と……?」

 昨日シルエラに言われた通り、「婿にしてほしい」と言ってみたのだ。正直こんな打算や罪悪感で結婚を申し込むのもどうかと思う。財産目的で男に近付く女と同じではないか…と言ったところ気にするなと言われた。やはり価値観がやや異なるようだ。ここは魔界の価値観として納得するしかないだろう。

 ルリエはしばしわなわなと震えながらこちらを指さし目を白黒させていたが、やがて合点がいったかのように軽くため息をついた。

「……さてはシルエラに何か吹き込まれましたね?」

「うっ…」

 言葉に詰まる。そしてそれが答えとなっていた。ルリエのジト目が体に突き刺さる。

「まったく…どうせ私の婿になれば待遇が改善するとか早く出所できるとか何とか言われたのでしょう。」

「…君をそんな身体にした責任は感じている。」

 確かにシルエラにそんなことを言われはしたが、一応打算だけではないという事は強調しておきたい。

「プラス罪悪感と同情ですか…本当にちょろいですね。」
「ちょろ…!?」

 彼女はもう一度軽くため息をつき、続けた。

「いいですか?施設に収監中、囚人と担当官が恋仲になり婚姻を結ぶ。その結果所長やその他諸々の心証が良くなったりやなんやかんやで早期出所に繋がる…。確かにそういう事例はあります。ですが、それが囚人にとって楽な道とは限りません。ここのノルマよりも過酷な搾精を行う種族だって多く存在します。しかもここに居るのは、魔物の中でもとりわけ人間の男性を性的にいたぶるのが好きな者たちです。むしろ囚人のままでいた方が人間らしい生活が送れるといった場合すらあるのです。もし貴方がここでの生活に苦痛を感じるならば、安易に婚姻など結ぶべきではありません。」

 ルリエは淡々と続ける。

「…その中でも私はその最たる者でしょう。この一ヶ月間、私が一度も直接自らの身体を使って搾精を行わなかった事に気付いていましたか?」

 …言われてみれば確かにそうだった。此処に来た初日を除いて彼女が精を搾る時は必ず搾精器具や搾精生物、又は魔術を使い、それ以外はシルエラが行っていた。それどころか普段の日常生活に於いてすら、思い返してみれば肌を触れた事は殆ど無いのだ。

「私が貴方からの攻撃を受けた際、蓄えていた魔力の殆どを失った事は以前話しましたね。そしてそれは今に至っても回復していない…。故に、この身体は精を求め過ぎるのです。」

「…。」

「常に飢餓状態にあるこの身体と魔力は放っておけば見境無く精を搾取するでしょう。その片鱗は貴方も此処に来た初日に味わった筈…、あんなスキンシップ未満のお遊びではなくより、もっと濃厚な接触を毎日続ける覚悟はあります?はっきり言って懲罰房の最下層が天国に思える程の快楽地獄ですよ。」

 二日目に見た光景がフラッシュバックした。魔物達の苛烈な責め、男達の狂気に片足突っ込んだ顔…あれ以上の日々が永遠に続くとしたら…。想像しただけで気が狂いそうだ。

「一日と経たず正気を失い、その都度修復されまた壊される毎日です。貴方もそんな生活を永遠に送りたくはないでしょう。」

「それは……」

 答えに詰まる。それを見てルリエはクスリと笑った。

「まぁ私の気が済んだらその後は貴方には優しい娘を紹介してあげますから、今は安心して魔界の魔力増産に励んで下さい。あ、そうだ、ルルなんてどうでしょう?優しさ「だけ」は保証しますよ。」
「それだけは後生ですから…」
「赤ちゃんプレイも一度溺れてしまえばイイモノだと思うんですけどね……さて。」

「私がこんな事をわざわざ説明するのは…自分で言うのもなんですが…
私が非っ常ーーッにお人好しだからです。一般的な魔物ならその無知や善意につけ込むでしょう。ですから深く考えずに迂闊な事を口にすればどうなるか、貴方には一度身体で覚えて貰ったほうがいいと思うのです。」

「はぁ…」

 なんだか話の雲行きが怪しくなってきた…。

「という事で、私と一緒になるという事がどういうことか、一度思い知らせてあげましょう。」

 ルリエがそう言って腕を広げた瞬間、室内の空気が変質した。それまで重さを感じなかった大気が突然粘性を伴い、体に纏わり付く。全身の皮膚が一瞬熱を持ったかと思うと感度が狂った。

「うああっ…!?」

 まるで全身の表皮が亀頭粘膜になったかのようだ。その上で変質した空気が体中を這い回る。…おそらくルリエが普段は抑えているという魔力を解放したのだろう。以前魔力による搾精を受けた時は羽毛で執拗に擽られているような感触だったが今回は違った。見えない無数の舌が全身を舐めしゃぶってくるのだ。しかも強制的に感度を上昇させられた状態でである。

「な、なにを…!?」

「命令です。此処まで歩いて私を抱きしめなさい、ただ抱くだけでいいです。」

「う……ヒェアッ!?」

 とりあえず言われた通りにしようと足を一歩踏み出した所で足裏から激感が走った。
 床に直接接している足は舌どころではない。微細な触手で出来た絨毯を踏みしめているかの様だった。足裏から踝、指の間から爪の隙間に至るまで蹂躙される。余りの刺激にバランスを崩し、その衝撃で下着が擦れた。その刺激だけで一度目の射精を迎える。

「…ッ!!」
「さあ、頑張りなさい。出来なければ永久にその感度のまま固定しますよ?」

あ、悪魔だ…。

 膝が笑う。残り数メートルの距離がかつてなく遠く感じた。腰が砕けそうになりながらも牛の歩みで進む。遂にたどり着き、倒れ込むように、両手を広げて迎えるルリエへと正面から抱き付いた。

「あっ……」

「よくできました♪ではお仕置きを始めましょう、とりあえず気絶するまでですよ?」

 彼女の両腕が閉じられ、腰と背中に回る。それはまるで獲物を捕食するかのようで…。
 失念していたのだ。彼女というゴールを目指し歩みを進める事に必死で、リリムに相当するという彼女の肉体に触れることの意味を考えなかった。

「ほ…ッおッ!?」

 後悔する暇も与えず、彼女の肉が牙を剝いた。彼女のお腹に押しつけられたペニスが唐突に暴発する。腰は完全に砕けたが、腰に回された腕がへたり込む事を許さなかった。その腰や背中に回された腕からすら、直接快楽が流し込まれた。股ぐらに差し込まれた膝や胸の間で潰れる乳房は言わずもがなである。接触面の神経が強制的に発達させられ、新たな性感帯へと改造されているかのようだ。

「これが本来の私です。一切の制御を放棄した自然体の私…。さぁ、ちょっと凄いの、いきますよ。」

 耳元で囁かれるその言葉すらも質量を持ち、耳朶を愛撫する。

「な、何を…ヒぎィッ!?」

 そして一瞬の生暖かい感触ののち、それまでとは比較にならない刺激が襲って来た。直接舌が這い始めたのだ。感触が耳を、響く水音が脳を犯す。頭から背骨を通して雷に打たれたかのような痺れが走り、股間にじわっとした温かさが広がった。

「あらあら、またお漏らしですか。これは本格的に癖が付いてしまうかもしれませんね…。」

「ぁ…ぁ……」

 気づいたら下半身は失禁していた。ルリエがなにやら恐ろしい事を言っているが今はそれすらどうでもよい。もっと恐ろしい事に気がついてしまったのだ。

「み…耳が……ッ!!」

 今はルリエは喋った。…つまり耳から口を離したという事だ。だがしかし、しゃぶられている耳の感触が全く消えないのだ。耳朶を食む唇、咥内の熱、動き回る舌はまだ確かにそこにあった。
 
「私の魔力は勝手に精を求めると、さっき言いましたね?それはこういう事です。私が搾精の意志を持って相手に触れれば、同時に付着した魔力が更に精を搾ろうと勝手に動き続ける…。因みに、そこに簡単な術式を組み込むだけで魔力は呪いに変わり、一生その感触が取れないようにする事も可能です。」

「ひッ…」

「…まぁ今回はそこまでしませんが。そうでなくとも張り付いた魔力が尽きるか私が回収するまでは続くので、精々気がふれないように頑張ってください。あ、そういえば貴方シルエラに乳首調教受けてましたね…。」

「あ゛…」

…嫌な予感がした。

「ついでですから、手伝ってあげましょう。」
「なっ…」

 ルリエが身体を離し、こちらのシャツに手を掛ける。慌てて後退ろうとするもふやけた下半身に既に力は入らず、尻もちをつくように倒れ込んでしまった。構わず彼女はシャツを捲り上げ、のし掛かってくる。服越しの巨大な胸が腹の上で潰れ、それだけで絶頂に達した。

「まあ今回は片方だけにしておきましょうか。」

 露わになった右胸に顔を寄せ、彼女が囁く。その吐息が異様にくすぐったい。そしてそのまま、たっぷりの唾液で濡れた舌が右の乳首に伸びてゆく。

「や…やめ……て…ぴギッ…」

 その舌が乳首に触れた瞬間、その部分がカッと熱を持ち、電撃のような快感が身体の芯に走り背筋が仰け反った。一方ルリエは振り落とされないよう、浮いた背中に腕を回してしがみつくと唾液を擦り込むように執拗に胸の突起を舐め回し始めた。

「ひッ、ひぐッ!!ひっでるがらッ、やべでえええええ!!」

 乳首は射精しない。それはつまり絶頂に終わりが無いということである。絶頂が何度も繰り返されるのではなく、一回の絶頂がそのエネルギーを膨らませながら延々と続いていく。
 そもそもこれを絶頂というべきかも不明だ。快感が青天井の様に高まり続けるのだからその頂など無いのかも知れない。更に最初皮膚の表面だけで感じていた快楽が胸の奥に向けてズゥンと沈んでいく感覚…快楽が深く、重くなってゆく。これまで感じたことの無い種類の感覚に肉体が恐怖する。
 反射的に、腰が勝手に跳ね回り、しがみつくルリエをふり飛ばそうとするが、彼女はビクともしない。余裕の笑みでこちらを見返すと、更に念入りに舌を押し付けた。


……、

…。


「ひっ、ひひひっ、ひっひっひっ…」

 横隔膜が痙攣し、奇妙な笑い声しか出てこなくなったところでようやく彼女は舌を離した。

「…こんなものですかね。」

 身体を起こし、こちらを見下ろしながら品定めするように呟いた。捲り上げたシャツを戻し、布地の上から先ほどまで舐め回していたそこを指でスッ…となぜる。

「ひぐッ!?」

 その瞬間、腰が勝手に跳ね上がり深い絶頂を極めた。もはや精液は一滴すら出てこなかった。

「完成です♪」

 その様を見てルリエは満足そうに微笑んだ。

「これに懲りたら、以後あまり軽率な事は言わない事です。でも…」

 彼女の身体が離れていく。そして完全に弛緩しきったこの身体を両腕で抱き上げた。シャツが乳首に擦れ、その刺激に背筋が仰け反るが意に介さず、そのままベッドへと下ろす。

「これを体験して、もう一度私に同じことが言えたなら、その時は私も本気にしてあげましょう。ただし…そうなったら今度は絶対に逃がしませんので、覚悟する事ですね。」

 動けないこちらを見下ろし、彼女は微笑んだ。それはこれまで彼女が見せたことの無い優しい表情であり、同時にぞっとするほどの情欲に満ちた笑みだった。単に先程までの記憶がそう思わせただけかも知れないが、背筋冷たいものが走った。

「もう精液も空でしょうから、今日の搾精はこれまでとします。このまま寝てもいいですし食事等取るのも自由です。…ではまた明日の朝に。」

 そう言い残し、ルリエは部屋を後にした。残された自分はといえば既に満身創痍である。最早食事に向かう気力すら無く、疲労感から来る睡魔にこのまま身を任せ…

「ひぅ!?」

 突然滑った感触が右胸と耳を襲った。

 失念していた。彼女の唾液とともに塗布された魔力は対象から更に精を搾り取るため、その箇所を責め続ける。さっき彼女が言っていたとおりだ。搾るべき精が空ならば動かないかと思いきやそんなことは無く…、それでも精が無いためか先程よりはマイルドだが、延々とくすぐったい刺激を与えてくる。加えてその刺激に反応して身を捩ろうものなら、今度はその度にシャツに擦れる乳首が更に強烈な快感を叩き込んでくるのだ。
 結局、極力身体を動かさない様に全身に力を入れて固くなりながら、やがて蓄積した疲労感から気絶するように眠りに落ちるまでひたすら耐え続けるより他に無かった。



…勿論その後数日間に渡ってー残留魔力が消失するまでー毎晩淫夢に悩まされたのは言うまでも無い。

……………………

…………

…。

ー別室にてー

「あ…あのですね…、私は一応お嬢様のためを思ってですね……」

「……。」

「もしかして…お、…怒ってます?」
「ふんッ!!」
「ぎにゃあああああああーーーッ!?」

 

 翌朝通路の隅にて、あらゆる体液で水溜まりを作りながらアヘ顔を晒して絶頂し続けるシルエラが発見され、施設の者たちを震え上がらせたのだった。
17/02/20 23:36更新 / ラッペル
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■作者メッセージ
あと一話で完結ですたぶん・・

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