読切小説
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Blood bath queen
ーーーうふふふふ。
豪奢な浴室に女の上機嫌な声が反響している。女は自身の豊満な肢体を湯船に沈めて満足そうに口元を歪めていた。
女の体はこの世のものとは思えないほどに完成され、魔的であった。湯を掬ったしなやかな腕で彼女は自らの肉体を撫でていく。単に湯の中で体をほぐしているだけではあるのだが、その動きは優美であり淫靡に過ぎた。女王然とした表情を浮かべつつ、酒に溺れさせるかのように湯を肉体に染み込ませて陶酔させる。金糸のような髪が湯に流れ、彼女が身じろぐ度に蛇のように蠢いていた。
均整のとれた肉体の胸部についた双丘が湯に浮かび、彼女の存在が天上のものではなく、地上のーーいや、地獄のごとき淫欲によって形作られていることを示していた。紅く鮮やかな唇には薄い笑みが張り付いている。
丹念に肉体を撫でさすり下腹部の熱が粘度を増してきたことを認めると、
「ーーじゃあ、そろそろ」
女は蠱惑的な表情を浮かべながら口元まで頭を湯に沈めるーーそして、啜った。
「はぁぁぁ」
彼女は途端に体をビクビクと痙攣させると顔を淫らに蕩けさせて、自らをかき抱いた。
「ヒグッ、ぅウウウ」
湯の中に遠慮なく愛液を垂れ流している股の裂け目に右手を伸ばし、押し開いて指を滑り込ませた。
「ァ、あ。入っ、て。来る、ッ」
自らの指とともにナカに入ってきた湯の感触を彼女は歯を食いしばりながら甘受する。
彼女が震える度にバチャバチャと湯が跳ね、荒い呼吸が浴室に響いている。
「フッ、ふぅ」
彼女は夢中で膣肉に湯を刷り込み、内側の柔らかい肉をこねていく。
「ぅあっ、〜〜〜〜…〜〜っ」
すでにその女は女王の色を失って、媚びたように快楽を貪る牝に堕ちていた。
自らの指を咥え込んでキュウキュウ締め付けて吸い付いてくる、柔肉に絶えず刺激を刻みつける。
「キ’’、持ち、イイっ」
艶やかな口からは舌が、犬のように垂れ、涎を浴槽に、オチるに任せている。背を丸め、頬を真っ赤に染めながら夢中で肉壺をかき乱している。
そのうち、ピチャリ……、
舌先が湯に触れた途端、感電したかのごとき電流が彼女の全身をわなめかせた。声にならない悲鳴をあげて彼女は悶える。
バチャバチャ、バチャバチャ。湯の中で美女の肉体がのたうっている。右手の3本の指を股が咥え込んだままーー、肉惑の美が湯の中で喘いでいた。
「……ひ、ヒィ。はっはっ、はっ」
ようやく快楽の渦から這い出した彼女は虚ろな視線を宙に彷徨わせたいた。が、ソレ、を見つけるとニンマリと……壮絶に口端を吊り上げて笑った。肉食獣も震えて逃げ出すほどの嗜虐的な視線に晒されてソレは身を震わせたようだ。
ザバリ。彼女は浴槽の中で立ち上がり妖艶な肢体を、彼の、視線の前に惜しげもなく曝け出した。
彼女の肉体を舐め回すようにーー赤黒いーー湯が落ちていく。先ほどまで自らの指を咥え込んでいた肉壺はほぐされて半開きで、ヒクヒクと物欲しそうにしていた。
ゴクリ。水音の引いた室内に生唾を飲み込む音が大きく鳴った。
「イイ具合よ。あなた」
「それは光栄だな」
男はあくまでも涼しげな様子を装って彼女に答える。
それでも官能的に過ぎる彼女の、肢体からは目を離せず。彼女同様に一糸まとわぬ股間で屹立するイチモツが、彼に余裕がないことを明示していた。
クスッ。女王はオモチャ、よくて愛玩動物にやる視線を彼の股間に注ぎ続けている。先走り液でテラテラと湿りを帯びている亀頭がお預けに焦れてピクピクと動いた。
今すぐにでもこの女を押し倒してその挑発的なマンコに、自分の肉棒をネジ込み思うままにこの欲望をブチまけてやりたい。そんな衝動は、足をイスの前部の足に紐でくくりつけられ、手首を後ろ手に縛り付けられている男の身では叶えることは出来なかった。
「もう、トックに我慢の限界なんじゃないかしら?」
女王は彼のペニスから目を離さずに彼に尋ねた。
「限界なのは君の方じゃないのか? 魔物なら俺を体に迎え入れたくて堪らないはずだ」
「ええ、当たり前でしょう」
女王はさも当然と、肯定する。
「でも、私はヴァンパイアの女王。あなたは……まだ、人間。この私がインキュバスになっていないモノを受け入れられるわけないでしょう。……だから、早く堕ちなさい」
彼のペニスからガマン汁が溢れていることと同様に、女王の蜜壺からも同じモノが垂れていた。
「もうすでにお風呂にできるくらいあなたの血を啜って精を搾り取っているというのに、どうしてあなたはまだ人のままなのかしら」
「俺に聞かれてもそんなこと知るわけがないだろ。ーースカーレット」
「ええ、そうね。だからあなたが果てて、インキュバスに成り果てるまで、私は繰り返すだけよ」
彼女は……ヒタヒタと彼に向かって足を進める。
歩く度にクネる腰のくびれが、肉惑的な太ももが、揺れる乳肉が。彼の目を捕らえて離さない。
彼女が彼の目前で足を止めると、サラサラと追随していた美しい金色の髪も動きを止めた。部屋の中には男女の息遣いだけがやけにうるさく聞こえている。

「じゃあ、いただくわね」
彼女は彼の股間に美貌の顔を近づけると、フ、と肉棒の先に息を吹きかけた。
それを合図として彼にかけられていた魔法が解ける。ーーー彼には射精を妨げるための魔法がかけられていた。彼女が自身の痴態を見せつけている間ーー勝手に暴発するのは許さない、と我慢の魔法がかけられていた。
鍵が開けられた途端、
「うぐっ」
と男は情けない声をあげて果てた。
ベチャリ。粘土の高い白濁の塊が彼女の美しい顔目掛けて吐き出された。彼女はその美貌を穢されるがままに、ウットリと陶然とした表情を浮かべて彼に対して微笑みかけている。
「ふふふ。はっや〜い」
彼女は嘲りの声を彼に投げかける。しかし、極上の女体が快楽を貪って踊りくねる痴態を見せつけられ続ければ、ましてやそれが自分を求めてのことであり、その本人に股間に息を吹き付けられて耐えられる男がいるだろうか。
しかも、彼女は己を汚した白濁を掬い取っては口に運び、指をチウチウ吸いながら、蕩けた上目遣いを寄越してくるのだ。
自らの扇情的な有様を知って行う分、淫らにタチが悪い。
彼女は髪についた白濁も髪ごと口に含んでこそぎとって行く。子供のような姿を晒す女王を見て、彼は再び股間が熱くなるのを止めることは出来なかった。

チュパッ。ワザとらしい音を立てつつ吸っていた指を唇から抜き出すと、再び雄々しく立ち上がった男性器にウットリとした視線を投げかけた。
「そうよね。この程度で終わるわけないわよね」
彼女は嬉しそうに、彼のイチモツを跨いで上に乗った。もちろん挿入はせず、彼女のムッチリとした尻肉の割れ目を押し付けて挟み込んでいる。彼にしなだれかかり、彼女の豊かな乳房は彼のたくましい胸板に押し付けられて形を変えている。
彼の視界が彼女の顔で埋め尽くされる。震える睫毛の一本一本も数えられそうだ。切れ長の目が彼をまっすぐに見つめている。口元には酷薄に見える笑みが浮かび鋭い犬歯が覗いている。それでも瞳は肉欲に歪んで媚びの光が見え隠れしている。
甘い吐息を吐く彼女の唇が彼の耳たぶに吸い付く。耳元から聞こえる淫らな水音に彼の背筋がぞわぞわと粟立たせられた。
その快楽をの波を掘り起こそうと、彼女の艶やかな指が、カリカリーーカリカリーー彼の背中を両側から引っ掻いてくる。
引きつったような息を吐く男の反応に彼女は気をよくすると、そのまま首筋に舌を這わせた。ミミズが這うような粘膜の感触に彼はマトモに頭を働かせなくなってきている。
本能のままに動こうとしても、縛られた手足では獣は鎖に繋がれたままだ。
そうやって、ミミズは這い回り彼の唇にたどり着くと、一気に貪った。
チュクチュク、クチュクチュ。彼の口内を彼女の舌が這い回り、いやらしい水音が浴場を埋め尽くしていく。
……彼女の下の口からも同じ音がしている。尻で挟み込んだ彼のペニスを彼女の陰唇はピタリと咥え込み、止められないヨダレでベトベトに湿らせ尽くしていた。上でも下でもキスの雨が降っている。飲みきれなかった唾液は混じり合って彼らの顎に滴った。
男も負けじと彼女の口内に舌を滑り込ませるが、熱烈な歓待に、されるがままになってしまう。鋭く尖った犬歯で甘噛まれ、吸われ、嬲られ、弄ばれーートドメには遂に舌を噛まれて、プツリと流れ出した血潮を彼女に飲み取られてしまう。
ヴァンパイアの吸血は痛みを与えるのではなく、快楽を刻み込む。まるで毒のように彼女の魔力が唾液に混ざって、彼の血管に入り込み神経を犯す。口の中から脳に向かって襲いかかってくる快楽の毒薬、ーー彼女の蜜。逃れたくても彼女は唇を離してはくれない。目を白黒させる彼を彼女はサディスティックな視線で愉しんでいる。
脳に近い場所から送られる快楽信号は下降して射精を促したがったが、いつの間にか再びかけられた我慢の鍵は彼が解放されることを許しはしない。
彼だけではなく彼女自身にも押し寄せている快楽の波に乗って、彼女は彼のペニスを陰唇で挟み込んだまま腰だけをクネらせて擦り上げる。
「「〜、〜、〜、〜〜、〜」」
お互いの口をお互いに塞いだままでは声はもれず、くぐもった呻き声が相手の喉を震わせる。浴室に淫らなキスの水音が、椅子が軋む音よりも大きく響いていた。

ーー唇を離して惚けたように見つめ合う男女。
解放された男の口からは懇願の声が上がる。
「おね、がいだ。出させてくれないか。もう……耐えられそうにない」
彼の許しを請うような視線を受けると彼女はニィィ、と嫌らしく顔を歪めさせた。
「ふふ、ふふふ」
嗜虐心に体を震わせながら、彼の懇願を味わう。
「なぁ……お願いだ」
「イイわよ。じゃあ、コッチの穴で出させてあげるわ」
彼女は一度彼の上から退くと、彼に向かってお尻を向けて後ろの可愛らしく窄まった穴を指し示した。彼女が退いた拍子に彼のハチ切れんばかりの怒張は天井を向き、彼の視線がアナルに固定されるとビクリビクリと震えた。
彼は今まで送り込まれた快楽によって思考能力が麻痺させられていた。だから、いつもならばしないような質問を彼女にしてしまうのだった。
「ま、前の穴は…」
彼の言葉を聞いた途端、
「え”?」
彼女から強烈な怒気が迸った。瞳の動向は縦に細く狭まり、彼を睨みつけている。
その様子を受けて、急激に覚醒させられた意識で彼は謝ろうとするが、彼女の動きの方が早かった。
「ゴ、っ、〜〜、ぁあッ」
彼女は足の指を器用に使って彼の逞しいペニスを握りしめていた。足でーー握りしめていた。そして、親指の爪でカリの付け根を弾いた。
痛みとともに与えられる快楽に男は呻くことしか出来ない。貰えるはずだったモノとは別のご褒美をもらってヨダレを垂らしてよがる。
「そんな顔をしてみっともない。このマゾ」
男の様子には御構い無しで女王は詰る。
「おまんこに挿れたいのは私も同じよ。でも、あなたがいつまで経ってもインキュバスにならないから、使えないんじゃない。あまり巫山戯たことを言うのなら、今日なれなかったら今度はココから取るわよ?」
ペニスをつかんだ指に力を込めてグニグニと動かす。
彼女の言葉にイタ気持ち良さを感じながらも彼は青ざめて首を振る。
「悪……かった。それだけは止めてくれ……」
彼女はそのままペニスを踏みつけつつ、
「私の気持ちも考えてよ。私の夫がいつまでも人間のままでは格好がつかないでしょう」
幾ばくかの憂いを含んだ表情に彼には罪悪感が募った。
「でも、いいわ。今日は枯れ果てるまで搾り取って、今日こそはインキュバスにしてみせるから」
彼女は彼の股間から足を下ろし、金紗の髪を打ち払い、傲然と胸を張った。
「あ……、ああ。よろしく」
鬼気迫る表情で見下ろさせれて、彼は金玉がキュッとするのを感じた。
彼らは夫婦であり、何度も後ろの穴で交わってはいるのだが、彼は一向にインキュバスになることが出来なかった。その証拠に数回の射精で彼は打ち止めになってしまうのだ。

「ン、くゥ」
彼のペニスを彼女は尻穴でズプリと飲み込んでいく。
「あ、ア」
本来排泄するはずの場所に押し入ってくる異物の感触を彼女は大きく口を開けて味わっている。
根元まで入りきると、彼女は彼に背中を預けた。彼女の背中と彼の腹に挟まれた髪がシャリショリ、滑らかでむず痒い。
しかし、二人とも本来は甘酸っぱいハズの感触を味わうどころではなかった。
彼の男性自身には腸肉がネットリと絡みつき、肛門括約筋がギチギチと締め付けてくる。すでに射精してもよいほどの快楽が蓄積されているにも関わらず、スカーレットが魔法を解除しない限り彼の欲望が果たされることはない。腸肉の蠕動運動によって肉竿が舐め上げられる度に、満たされない思いで肉棒は彼女の肉ヒダの中でブルブルと耐えていた。
スカーレットもスカーレットで肛門の締め付けに抗って体内に押し入ってきた男性器が震える度に、ブル、ブ、ブルン、彼女も息を荒げヴァギナもヒクヒクと蠢いていた。しかし、彼女がそれだけでイかされてしまうわけがない。
彼女は大股開きのまま、彼の上で腰をくねらせ始めた。愛液が重力のままに、彼の肉竿目掛けて垂れていく。
様々な方向と力で押し寄せ始めた快楽の波に彼は歯を食いしばって耐える。彼の上では蕩けた顔を浮かべた美貌の女王が、淫らに腰をグネらせていた。豊かな乳肉が彼女のアバラの上で揺れている。その先っポには可愛らしくプックリと膨らんだ薄桃色の蕾。
「イイっ」
どんどん、ドンドン、興が乗り高まっていく劣情に、ぐちょり、粘ついた水音が、ネチャリ、声高になっていく。
彼女は手を後ろに伸ばして男の頭を左手で抱え口づけをせがんだ。男に余裕は無かったが、彼女の求めに応じることはすでに体に刷り込まれていて。跳ねる肢体をキスで無理矢理抑えつけるように深く吸い合う男女。浴室には二人の汗が混じって散っていた。
「ん、ふふふ」
彼女は思いついた顔で、自身の豊満な左の乳を持ち上げると肩越しの彼に、摘まれたくて震えていた薄桃色の乳首を咥えさせた。
「んッ、フゥ、〜〜」
彼に強く吸い付かれて彼女は顔を真っ赤に染める。そして、右の可愛らしい蕾は自分で吸、
「あ、ァあぁ〜〜〜〜」
彼女がイくと同時に腸内は大きく波打って咥え込んだ異物をねぶり上げた。あまりにも激しい愛撫、それでも、彼はイくことができず、苦悶の表情を浮かべ……。彼女はそれを横目で見て、ニィと笑い、「よし」と言った。
「ああぁああ」
解放された獣は雄叫びをあげて、彼女の体内深くに熱く滾った白濁を解き放った。それに合わせて腸肉が待っていましたとばかりに欲望の僕となって蠢めく。金玉から根こそぎ吸い上げられるように、彼は彼女の中に注ぎ込んだ。

は、……ッはぁ。
情事の虚脱の中で二人の息だけが荒い。
そうして彼萎んだペニスが彼女の穴からスルリと力なく抜けた。その後に続いて出てくる白濁の性交の証。
「「………………」」
二人の間には沈黙が流れた。
「ふぅん」
「…………」
「もう打ち止め?」
「……………………………………」
フニフニ。スカーレットは彼の萎んだペニスを触るが、ピクリとも反応を返さない。
「…………………………Guilty」
彼女は静かに、裁判官のように告げた。

「どうしてあなたはまだインキュバスになれないのかしら」
「俺に聞かれてもわからないよ」
「いくらアレができるとは言っても、早くインキュバスになってもらわないとこの体の疼きが抑えられないわ」
そう言って剥き出しの陰部に手をやりつつも、彼女の口は醜く歪み、中では舌でが慢の犬歯を舐めていた。口の中では醜悪な嗜好の炎が舌をまるで蛇の舌のように、焔のようにチロチロ、チロチロと蠢かせていた。
彼女は彼との性交と同じくらい好きなことに好きなことがある。それを叶えるために、彼女は彼の手を引いて浴槽に向かう。浴槽のお湯は先ほどナカで彼女が愉しんだことによって、最初よりも減っていた。真っ白な浴槽の白さは白骨を思わせるようで、息をのむほどに艶めかしい。浴槽のお湯からは鉄のような匂いがしている。
「私はね。浸かることも好きだけど、浴びることも好きなの」
浴槽に足を浸しながら告げる彼女の顔は……淫靡でも官能的でもなく、ただただ人外で魔性の凶楽的な吸血鬼の相貌であった。

彼女は彼の首に口づけをすると、そのままーーー頚動脈ヲ噛ミ裂イタ。
彼の首から噴き出す真っ赤な鮮血。彼に痛みはなく、彼の瞳は彼女の金に輝く瞳からそらすことは出来ない。
盛大に血の香が濃密な霧のように立ち込めた。彼女の目を見ていると血液が沸騰しているかのように熱い。
男から噴き出す血をシャワーのように浴びて恍惚の表情を浮かべる赤色の彼女。彼はその姿がタマラなかった。
噴き出たばかりでまだ暖かい血液を、口を開けて舌まで出して求める彼女。醜悪な嗜好を媚びた顔で貪って、その美貌の顔を、金糸の髪を、豊満な肉体を、真っ赤に染めていく。………狂気の中で忘我に踊る。男にとってそれは狂態ではなく、嬌態として映った。
男はいつまでもその真っ赤な水浴びを見ていたかったが、シャワーの供給元である体からは心臓の鼓動に合わせて急速に……血液が失われていく。
男のペニスは生命の危機に瀕して子種を残そうとギンギンにいきり立っていた。しかし、目の前に曝け出されているチンポには目もくれずスカーレットは血流のシャワーに夢中だ。
ああ……。男は四肢から力が抜けていくのを感じる。意識も朦朧として、ザ、ザ、……酸素が届かず、ザ、視…界にノイ…ズが走…、ザ、って、イ……。
バチャリ。
男はついに身体を支えられずに血溜まりの中に仰向けに倒れ込んだ。その拍子に血液は持ち手を失ったホースのように、弱々しくなったスプリンクラーのように、グルリ、と一つ大きく回転してーーー。

クスクス。
男の視界の中には瞳を三日月型に歪めて笑う女の姿。
全身に血を浴びて艶かしさを増した女の身体。
固まって煮こごりのようになってきた赤黒い血液の中で、男は思った。

そうだ。吸血鬼の君は、ーーー血飛沫の中でこそ最も美しい。





ーーー事後処理。

「お二人の嗜好についてはとやかく言いませんよ。ハイ。それでも、掃除をすることになる私のことも考えていただけないでしょうかネェ」
固まって剥がれにくくなった血痕をブラシで必死に擦りながら愚痴るのは女給姿のヴァンプモスキートの女性。
「君も血が好きなんじゃなかったっけ?」
「いえ、まぁ。好きな人のナラいいですよ。でも、誰っ、が好き好んで夫婦の情事の臭いが染み付いた、相っ、手のいる男性の血液を掃除しますかっ、テンです」
落ちにくいところはことさら力を込めてブラシで擦る。イライラしながら男に答える彼女。
「………ふぅ」
ようやくひと通り掃除し終わって彼女は一息ついた。
「それにしても、ダンナさま。毎回毎回よくやりますネェ。この出血量は普通死んでまセン? いい加減にしとかナイといつかホントに死にますヨ?」
呆れ顔の半眼でヴァンプモスキートは男を見やる。
「そうだね。我ながら驚くべき出血量だ。出血大サービス、と言ったところかな」
「チョット黙………。ゲフッ」
「どうかしたのかい?」
「イイエ、なんでもアリマセン」
ヴァンプモスキートはカタコトで男に答えてウンザリする。そろそろココ辞めよっかなー、とまで思う。
「それにね。ギリギリを責めるって気持ちいいじゃないか」
ウットリとした顔で宣う男。
……この変態、いつか見誤って死ねッ。と彼女は雇い主に対して心の中で吐き棄てる。
「ハァ」
ヴァンプモスキートはここに勤めだしてから最早何度目になるかもわからない溜息をついた。
男も男だが、女王も女王だ。彼女の視線の先にあるのは、白骨のように真っ白な浴槽。その中には男の血液がーー固まることもなくーー湛えられていた。………仄かに性臭もする。浴槽には保存の魔法がかけられていた。
ゥエエエエ。見る度に気持ちが悪くなる。本当はこんな仕事したくは無いのだが、やりたがるものがいるハズもなく、そのため給金が良かった。
「ハァ」
「おいおい、溜息をついた分だけ幸せが逃げるって知ってるかい」
ドヤ顔で男が言う。
「なら、逃げて行った分ダケ、おカネで補充してくだサイ。雇用主サマ」
「おやおや、うまいことを言うね。ハハハ」
「ハァ。で、ダンナさまは何故ここに? 冗談でも私をモノにするとか言ったら、あの浴槽ブチ壊しますよ」
「それは絶対やめて、俺、殺されてしまう」
「ソレ、プレイになるだけでしょう。ハァ。で、ナンデですか?」
「君が嫌な顔をしながら僕たちの後始末をするのを見るのが好きだから」
「ハァ。我は願う、我は訴える、我は告げる。三界の扉は開け放たれ終末の笛は高らかにーー」
「待って、待って。ソレ、見るからにヤバイやつだよね。謝るからストップ、ストーップ!」
城内に響く轟音と共に現れた青空。男は汚い弧を描いて飛んでいった。

「ハァ」
溜息が虚しい。
お金が溜まったら、いつかアタシはこの城を出て行くんダ。
でも、当分無理かな。また壊しチャッたや。
彼女はまた溜息を吐いた。




イエ、旦那さんはもうインキュバスになってマスよ。
女王の性癖のおかげで精を作る方じゃなくて血を作る方に魔力を回していて、イツまで経っても性的な方でインキュバスっぽくならないだけデス。だって、アレだけ毎回血を流していて普通の人間だったら死んでますヨ(笑)
たぶんそれ、二人とも気づいているんジャ無いでしょうカ?
ン、ナンで縄で縛っていたのカって?。それは察してあげてくだサイ(遠い目)

とはヴァンプモスキートの談。
16/10/27 23:28更新 / ルピナス

■作者メッセージ
ネタが無いと言った後に限って、湧いてきて、書きたくなる。
アマノジャクなのだろうか。

P.S Twitter始めました。http://twitter.com/lupinus_mon

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