連載小説
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【金魚すくい】
ここは境内にある大きな池。
池の周りには目をギラつかせながら何かを待っている魔物娘たち。
池の縁で水に入りながら待機しているのは、河童、マーメイド、メロウ、サハギンなどの水棲の魔物娘たち。
池のほとりに立って待機しているのは、水着を着用したオーガ、アカオニ、アオオニ、ミノタウロスなどの力自慢の魔物娘たち。
木に止まって待機しているのは、カラステング、サンダーバード、ハーピー、ブラックハーピーなどの翼を持つ魔物娘たち。

「お待たせしました。皆さま。次の迷える金魚を龍神様より賜りました」
巫女服を着たシー・ビショップの声に魔物娘たちの歓声が上がる。
彼女の隣には人が一人すっぽりと入れるほどの袋があり、口が縛られている。
もごもごと弱々しく動いてもいる。

「なんでもこの男、屋台での態度が悪く他の方々に絡んではご迷惑をかけていたようです」
「へえ」
それを聞いて、準備体操をしながら池のほとりで待機していた力自慢の魔物娘たちが舌舐めずりをする。
「それは調教のしがいがあるじゃねぇか」

それが聞こえたのか、袋がビクッと反応してガタガタと震えだす。

「でも、それだけではありません。この男に絡まれた人は、その後みんなカップルが成立しております」
魔物娘たちにどよめきが走る。
「まさか、そんなベタな」
絡まれた側がカップルとして成立していく。そのシチュエーションはよくあるものだ。失敗するものとして。
「そうです。そんなベタな理由でこの方はカップルを作りました。その成功率80%。またの名をフラグメイカー」
魔物娘たちから賞賛の声が上がる。その残りの20%は、今なお爆走中の魔女である。

「ですが、そろそろ目障、ゴホン。この男性キューピッドもカップルになっていただきたい、と龍神様がここに賜してくださったのです」
力自慢の魔物娘たちだけではなく、そこまで気の強そうではない他の魔物娘たちからも黄色い声が飛ぶ。

「それでは皆さま、今から池にブッ込みますよ。準備体操はすませましたか?、龍神様にお祈りは?、部屋のベッドをギシギシきしませてSEXをする心の準備はOK?、もう時間はありませんが。じゃあ、みんなで愛してあげて下さい。行きますよー!」
シー・ビショップが男を袋から出して池に放り込む。額には金魚の絵が描かれている。
「ぎゃあ、やめろてめぇぇぇ」
キューピッドというには柄の悪すぎる男性が池に落下していく。


着水の音がスタートの合図。
バネのように魚の下半身や足を岸に押し付けてスタートダッシュの力を貯める水中の魔物達。
飛び込みの姿勢で待つ力自慢の魔物達。
ギリギリと弓を引き絞るように飛び立つ力を貯める木の上の魔物娘達。
それぞれがそれぞれの体勢で着水の瞬間を待つ。


バッシャァァァァァァン。
激しい水音が耳に届くのとどちらが速いだろうか。
すべての魔物娘達が一斉に弾かれたように飛び出す。
池の水は激しく波打って、男に向かって流れ込む。
池中の空気も空飛ぶ魔物娘たちによって気流が男に向かって放射線状に走る。
水中から空中から、鬼気迫る彼女たちが男に向かう。

「ぐっ、ブフォアアァ」
もがく男に彼を取り合う彼女たち。
哀れな金魚を救うのは誰だ!


「あら、あなた。追加の男の方ですか。ありがとうございます。まったくお祭りだとやんちゃな方が増えて困りますねぇ」
追加の金魚はまだまだ沢山いる。
彼女たちの祭りはまだまだこれからだ。
16/06/17 13:03更新 / ルピナス
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■作者メッセージ
このシー・ビショップさんは浜でグレていたところを龍神様にボコら、ゲフン。
諭されて改宗しました。
今では立派な暴力巫女、ゴハッ。
楚々とした巫女さんとして就職いたしました。
夫がいるから正確には巫女さんじゃないのかな。


一旦休憩します。一気にいろいろ書きすぎて燃え尽きたような…。
ぶっちゃけ2、3日で復活できるとは思いますが。

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