【サバト御一行食い倒れツアー】
「者ども、こずかいの貯蔵は十分か!」
「おーーっ!」
「ちょぞー、って、なぁに?」
バフォメットの声に応える魔女やファミリアのちびっこ集団。
意味もわからずノリに合わせた子たちもいる。
「いざ行かん、遥か万里の彼方まで。数多の食べ物がワシを待っておる!」
「ばんりってなーに?」
「難しいこといってなくて、早く食べに行こーよ」
「私、りんご飴ー」
「僕は大人にフランクフルトだな」
「何でフランクフルトだと、大人なのー?」
「僕もわからないけど、母さまが言ってたんだ」
「ふーん、わからないけど、それじゃ私もフランクフルトにするー」
バフォメットをほって置いて思い思いの言葉を口にする少女たち。
このサバト一行に男はいなかった。
「むう。ノリの悪い奴らじゃな」
「違ますよ。ノリすぎたバフォさまが悪いんです」
バフォメットの隣にジト目の魔女がいた。
「バフォさま。何で私たちこんなことをしてるのでしょう。ほら、あそこにだって」
「言うな。言うでないわ。せっかく人がワザとテンションを上げて目に入らぬようにしておったと言うのに」
周りには楽しそうなカップルたち。
「私まで巻き込んで。この子たちの面倒を見るように言われたのはバフォさまだけでしょ」
「いいではないか。お主だって予定はなかったのじゃろう。こここは親切なワシに連れてきてもらえて感謝感激するところじゃ」
「これも、本当はこの前学校でバフォさまが喧嘩した罰なんでしょ。なんで私も来なきゃいけないのよ」
ブツブツ言いながら歩く魔女とバフォメットにちびっこたちが無邪気な声をかける。
「ねーねー。どおしてお姉ちゃんたちはお姉ちゃんなのに男の人と一緒にいないの?」
「「ぐぶぅっ」」
バフォメットと魔女が同時に吐血した、ように見えた。
「今日はサバトの集まりだから、私たちは一緒に来なかったんだけど。明日はお兄ちゃんに一緒に連れてってもらうんだ。ねー」
「ねー」
二人以外のちびっこたちが口々に言い合う。
「「がっはぁぁぁぁっ」」
魔女とバフォメットが吐血した。
「ワ、ワシはもうダメじゃ、じゃからこの子たちを頼む」
「待ってください。私だってもう耐えられませんよ。私に押し付けて逃げる気でしょう」
「ちっ」
「今舌打ちしましたね!?。もういいです。もう知りません。もともと私は頼まれていませんし。これで帰っても問題はありませんね!」
「すまんかったのじゃー。後生じゃから居ってくれ。わし一人じゃ、もっと耐えられそうにないんじゃー」
喚くバフォメットに呆れる魔女。
二人はこれから、ちびっこを引き連れて食べ歩くのだった。
◆
「かき氷で頭がキーンとするー」
「雪女さんとスライムさんたちのかき氷おいしいねー」
「その赤いのはレッドスライム味で、そっちの青いのはスライム味、黒いのはダークスライム味だね」
「赤、辛いっ。でも、おいしい〜」
「緑のバブルスライム味はパチパチしてソーダみたい。シー・スライム味はしょっぱ〜い」
ちびっこたちがお互いにかき氷を交換しながら食べ比べている。
「何とは無しに、この秘密味、というのを買ってみたのじゃが。これは何味なのじゃろう」
「よく買いますね。そんな得体の知れないもの」
「なんせ食うのはお主じゃからな」
「絶対に食べませんよ私は!」
「へー、秘密味か。私挑戦してみよ」
「お前好きだよな、そういうの」
カップルがかき氷の秘密味を買って、女の方がそれを食べようとしていた。
「ぱくっ。うーん、なんだか甘ったるくて混沌とした味。あれ、なんだか私」
「お、おい。大丈夫か?」
心配する男の手を取って彼女は森に向かって走り出す。
「行きましょう。異界の扉が私たちを待っているわ!」
「ショゴス味かよぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜」
小さくなっていく男の悲鳴。南無。
「ほれ」
バフォメットが改めて魔女に秘密味を差し出す。
「ぜっっっっったいに、食べませんからね」
◆
「スキュラさんのたこ焼きだー」
「クラーケンさんのイカ焼きもあるよ。どっちにしようか迷うな〜」
「お嬢さんたち、そんな悪女の焼くイカ焼きなんかじゃなくて、こっちのたこ焼きの方が美味しいわよ」
「いいえ、その女のたこ焼きなんて食べたらタコスミみたいに中身の無い大人になってしまうわよ」
「いくらイカスミが栄養あるって言ったって、それで性格に回さなくちゃいけない栄養を捨てちゃったからそんなに陰険なのね」
「なによ」
「なんなのよ」
隣り合った店でスキュラとクラーケンが喧嘩する。
「おいおい。お前らまた喧嘩してんのかよ。今度はなんだよ」
「「あなた!」」
「「この女が」」
「相変わらず息ぴったりじゃないか。絡み合うのはベッドの中だけにしてくれ。俺の手足と絡むよりも二人の手足を絡ませてる方が多いだろ」
スキュラとクラーケン、二人を合わせて娶った男が笑う。
「「それは、単に足の数が多いから」」
「ははは」
「「よし。こうなったら、今日はあなたと絡むわ。全部の足を使ってぇ」」
「お、おい。屋台はどうするんだよ」
「「そんなの知りません!」」
二人の手足で両手両足を絡め取られながら、男は連れて行かれてしまった。
「イカ焼きもたこ焼きも買えなかったね」
「うん、残念」
◆
「次は何食べよっか?」
「ラーヴァゴーレムさんの飴細工、すごいきれー。食べるのもったいないよ」
「ひっ。カエルの丸焼きなんてものをミューカストードさんが売ってる。見ちゃった〜。うええ〜」
「ジャブジャブの卵せんべいはいかがですか〜」
「うわっ、ハンプティエッグが入ってたぞ」
「あ、それは当たりで〜す。もう一枚差し上げるのでその子と一緒に召し上がれ♡」
「めしあがれ〜♡」
「いただかせていただきます(真顔)」
「あ、あれなんていいんじゃない?」
「ホルスタウロスミルクのソフトクリームだ。一緒にアプサラスミルクのジェラートもある」
「交換して食べようよ〜」
「いいよ〜」
「のう。ワシがハンプティエッグを当ててしまってもどうすれはいいんじゃろうか」
「お店の人に交換してもらってきましょうか」
「そう、じゃな」
◆
「チョコバナナ、フランクフルト、マンゴースティック。これらを合わせれば」
「やめておきましょうバフォさま」
「ふ、ふふふ」
ちびっこたちの声とは逆にどんどんとバフォメットと魔女の声が沈んでいく。
「マッドハッターのおいしい、おいしいきのこ焼きだよ。君のきのこを僕に食べさせてくれるのなら、もれなく僕も付いてくるよ」
「リッチのフリーマーケットですわ。助けると思って購入していただけないでしょうか。今なら私も格安ですよ。家付き、ゴーストとウィル・オー・ザ・ウィスプの使用人も付いてまいります〜」
「ねこまたが販売するかわいいケット・シーはいらないかにゃー。今購入すればあなた好みに育ちますにゃ。もちろんあちしもあなた好みに染まりますにゃ。お代は朝昼晩の猫缶と朝起きた時と眠る前を合わせた1日5回の喉こちょこちょで、どこまでもついていきますにゃー」
「トロールの秘密のハーブはいかがですか。気持ちよくなれますよ〜」
「この辺りは入らない方がよさそうじゃな」
「はい。通報しておきましょう」
◆
「なんじゃなんじゃ。あの焼きそば屋、ワシが並んでおったというのに、彼氏ができたからと言って店をたたんで遊びに出て行きおった」
「まぁ、仕方がありませんね」
「ワシばっかりなんでこんな目にあうのじゃ」
「イテッ」
バフォメットが憤慨して振り回した手がガラの悪い男に当った。
「おう、嬢ちゃん。人ゴミで手を振り回したら危ないってことわかってるよな。こりゃ、折れてんな。慰謝料と治療費出せよ。保護者は何処だ?」
人ゴミに本物のゴミが混じっていた。毛娼妓の店の前で絡んでいた男だ。この男、全く懲りていない。
「今ので折れたわけがないじゃろう」
「あぁん。俺のこと、疑ってんのか嬢ちゃん。大人しく保護者を読んだ方が痛い目見なくて済むぜ」
男が下卑た笑い声をあげる。それを聞いて魔女が慌てる。
「あわわわわ。早く謝ったほうがいいですよ。この前もそれやって今回の罰を受けることになったじゃないですか。我慢してください。バフォさま」
「お主、ワシがこんなカス虫に負けると思うとるのか」
「思ってませんよ。せめて腕くらいで許してあげてください!」
「お前ら何をごちゃごちゃ言ってるんだよ」
「「五月蝿いっ!」」
「ぐほぉっ!」
バフォメットと魔女の裏拳がそれぞれ左右の脇腹から突き刺さる。
カス虫は堪らずお腹を抱えてうずくまってしまう。
「て、てメェらあ。俺は刑部狸さんのこと知ってんだぞ」
男は子鹿のようにプルプル震えながらなんとか立ち上がる。内股になって情けない。
「誰ですか、それ?」
「知らんの 」
「そうなの。だったら、ちょっと一緒に来て話を聞かせてもらいたいわね」
そこにいたのは妖狐だった。
「あぁん。何言ってやがんだ、てめぇ」
「問答無用よ」
妖狐は男の股間を蹴り上げる。
「ぎゃあああああ」
男は今度は立ち上がることが出来ずに倒れたまま白目を向いている。
「ふっ、またつまらぬものを蹴ってしまった。峰打よ、ちゃんと使えるから安心しなさい」
妖狐は男を抱えて去っていった。
「ふん。他愛もない」
「何やってるんだよお前は」
「おおう?」
バフォメットを後ろから抱き上げる少年の声。
「ケイスケ?、なっ、何をするんじゃ、放せ、放すのじゃ!」
じたばたともがくバフォメットをケイスケは放さない。
このバフォメットの力ならば振りほどくことは簡単なのにジタバタともがくだけだ。
「お前、またこんな騒ぎを起こして」
「違うのじゃ。あやつが勝手に」
「言ってろ言ってろ。この前だって俺をバカにした奴らに喧嘩売ったんだろ」
「あ、あやつらが五月蝿かっただけじゃ」
「ああ、いいよ。それならそれで。だからな。俺がこうやって見張っててやる。お前が暴れないように見張っててやる」
抱き上げられながら、真っ赤になるバフォメット。
「そ、それは。一緒に回ってくれるということかの」
「そうだよ。聞けば今回のサバトのお守りだって。あの時の罰だって話じゃないか。だったら、俺も一緒に罰を受けるのは当たり前だろ。それとも、お前。俺と一緒に回るの嫌か」
「い、嫌じゃ、ない、のじゃ。ぜひ、お願いしたい、のじゃ。お兄ちゃん」
「よしっ、じゃあ行こうぜ。この体勢嫌だったら放すけど」
「放してはダメなのじゃ!。このままがいいのじゃ」
ケイスケの腕を抱き寄せるバフォメット。
「ひゅー、ひゅー」
「おめでとうバフォさまー」
サバトの子供達の囃し立てる声。
しかし、その中に面白くないものが一名。涙目でプルプルと震えている。
「ば、くはつしろ。花火に打たれて爆発してしまえー」
魔女が涙を流しながら走り出した。
彼女の夏はいつ始まるのか。
「おーーっ!」
「ちょぞー、って、なぁに?」
バフォメットの声に応える魔女やファミリアのちびっこ集団。
意味もわからずノリに合わせた子たちもいる。
「いざ行かん、遥か万里の彼方まで。数多の食べ物がワシを待っておる!」
「ばんりってなーに?」
「難しいこといってなくて、早く食べに行こーよ」
「私、りんご飴ー」
「僕は大人にフランクフルトだな」
「何でフランクフルトだと、大人なのー?」
「僕もわからないけど、母さまが言ってたんだ」
「ふーん、わからないけど、それじゃ私もフランクフルトにするー」
バフォメットをほって置いて思い思いの言葉を口にする少女たち。
このサバト一行に男はいなかった。
「むう。ノリの悪い奴らじゃな」
「違ますよ。ノリすぎたバフォさまが悪いんです」
バフォメットの隣にジト目の魔女がいた。
「バフォさま。何で私たちこんなことをしてるのでしょう。ほら、あそこにだって」
「言うな。言うでないわ。せっかく人がワザとテンションを上げて目に入らぬようにしておったと言うのに」
周りには楽しそうなカップルたち。
「私まで巻き込んで。この子たちの面倒を見るように言われたのはバフォさまだけでしょ」
「いいではないか。お主だって予定はなかったのじゃろう。こここは親切なワシに連れてきてもらえて感謝感激するところじゃ」
「これも、本当はこの前学校でバフォさまが喧嘩した罰なんでしょ。なんで私も来なきゃいけないのよ」
ブツブツ言いながら歩く魔女とバフォメットにちびっこたちが無邪気な声をかける。
「ねーねー。どおしてお姉ちゃんたちはお姉ちゃんなのに男の人と一緒にいないの?」
「「ぐぶぅっ」」
バフォメットと魔女が同時に吐血した、ように見えた。
「今日はサバトの集まりだから、私たちは一緒に来なかったんだけど。明日はお兄ちゃんに一緒に連れてってもらうんだ。ねー」
「ねー」
二人以外のちびっこたちが口々に言い合う。
「「がっはぁぁぁぁっ」」
魔女とバフォメットが吐血した。
「ワ、ワシはもうダメじゃ、じゃからこの子たちを頼む」
「待ってください。私だってもう耐えられませんよ。私に押し付けて逃げる気でしょう」
「ちっ」
「今舌打ちしましたね!?。もういいです。もう知りません。もともと私は頼まれていませんし。これで帰っても問題はありませんね!」
「すまんかったのじゃー。後生じゃから居ってくれ。わし一人じゃ、もっと耐えられそうにないんじゃー」
喚くバフォメットに呆れる魔女。
二人はこれから、ちびっこを引き連れて食べ歩くのだった。
◆
「かき氷で頭がキーンとするー」
「雪女さんとスライムさんたちのかき氷おいしいねー」
「その赤いのはレッドスライム味で、そっちの青いのはスライム味、黒いのはダークスライム味だね」
「赤、辛いっ。でも、おいしい〜」
「緑のバブルスライム味はパチパチしてソーダみたい。シー・スライム味はしょっぱ〜い」
ちびっこたちがお互いにかき氷を交換しながら食べ比べている。
「何とは無しに、この秘密味、というのを買ってみたのじゃが。これは何味なのじゃろう」
「よく買いますね。そんな得体の知れないもの」
「なんせ食うのはお主じゃからな」
「絶対に食べませんよ私は!」
「へー、秘密味か。私挑戦してみよ」
「お前好きだよな、そういうの」
カップルがかき氷の秘密味を買って、女の方がそれを食べようとしていた。
「ぱくっ。うーん、なんだか甘ったるくて混沌とした味。あれ、なんだか私」
「お、おい。大丈夫か?」
心配する男の手を取って彼女は森に向かって走り出す。
「行きましょう。異界の扉が私たちを待っているわ!」
「ショゴス味かよぉぉぉぉぉぉぉ〜〜〜〜」
小さくなっていく男の悲鳴。南無。
「ほれ」
バフォメットが改めて魔女に秘密味を差し出す。
「ぜっっっっったいに、食べませんからね」
◆
「スキュラさんのたこ焼きだー」
「クラーケンさんのイカ焼きもあるよ。どっちにしようか迷うな〜」
「お嬢さんたち、そんな悪女の焼くイカ焼きなんかじゃなくて、こっちのたこ焼きの方が美味しいわよ」
「いいえ、その女のたこ焼きなんて食べたらタコスミみたいに中身の無い大人になってしまうわよ」
「いくらイカスミが栄養あるって言ったって、それで性格に回さなくちゃいけない栄養を捨てちゃったからそんなに陰険なのね」
「なによ」
「なんなのよ」
隣り合った店でスキュラとクラーケンが喧嘩する。
「おいおい。お前らまた喧嘩してんのかよ。今度はなんだよ」
「「あなた!」」
「「この女が」」
「相変わらず息ぴったりじゃないか。絡み合うのはベッドの中だけにしてくれ。俺の手足と絡むよりも二人の手足を絡ませてる方が多いだろ」
スキュラとクラーケン、二人を合わせて娶った男が笑う。
「「それは、単に足の数が多いから」」
「ははは」
「「よし。こうなったら、今日はあなたと絡むわ。全部の足を使ってぇ」」
「お、おい。屋台はどうするんだよ」
「「そんなの知りません!」」
二人の手足で両手両足を絡め取られながら、男は連れて行かれてしまった。
「イカ焼きもたこ焼きも買えなかったね」
「うん、残念」
◆
「次は何食べよっか?」
「ラーヴァゴーレムさんの飴細工、すごいきれー。食べるのもったいないよ」
「ひっ。カエルの丸焼きなんてものをミューカストードさんが売ってる。見ちゃった〜。うええ〜」
「ジャブジャブの卵せんべいはいかがですか〜」
「うわっ、ハンプティエッグが入ってたぞ」
「あ、それは当たりで〜す。もう一枚差し上げるのでその子と一緒に召し上がれ♡」
「めしあがれ〜♡」
「いただかせていただきます(真顔)」
「あ、あれなんていいんじゃない?」
「ホルスタウロスミルクのソフトクリームだ。一緒にアプサラスミルクのジェラートもある」
「交換して食べようよ〜」
「いいよ〜」
「のう。ワシがハンプティエッグを当ててしまってもどうすれはいいんじゃろうか」
「お店の人に交換してもらってきましょうか」
「そう、じゃな」
◆
「チョコバナナ、フランクフルト、マンゴースティック。これらを合わせれば」
「やめておきましょうバフォさま」
「ふ、ふふふ」
ちびっこたちの声とは逆にどんどんとバフォメットと魔女の声が沈んでいく。
「マッドハッターのおいしい、おいしいきのこ焼きだよ。君のきのこを僕に食べさせてくれるのなら、もれなく僕も付いてくるよ」
「リッチのフリーマーケットですわ。助けると思って購入していただけないでしょうか。今なら私も格安ですよ。家付き、ゴーストとウィル・オー・ザ・ウィスプの使用人も付いてまいります〜」
「ねこまたが販売するかわいいケット・シーはいらないかにゃー。今購入すればあなた好みに育ちますにゃ。もちろんあちしもあなた好みに染まりますにゃ。お代は朝昼晩の猫缶と朝起きた時と眠る前を合わせた1日5回の喉こちょこちょで、どこまでもついていきますにゃー」
「トロールの秘密のハーブはいかがですか。気持ちよくなれますよ〜」
「この辺りは入らない方がよさそうじゃな」
「はい。通報しておきましょう」
◆
「なんじゃなんじゃ。あの焼きそば屋、ワシが並んでおったというのに、彼氏ができたからと言って店をたたんで遊びに出て行きおった」
「まぁ、仕方がありませんね」
「ワシばっかりなんでこんな目にあうのじゃ」
「イテッ」
バフォメットが憤慨して振り回した手がガラの悪い男に当った。
「おう、嬢ちゃん。人ゴミで手を振り回したら危ないってことわかってるよな。こりゃ、折れてんな。慰謝料と治療費出せよ。保護者は何処だ?」
人ゴミに本物のゴミが混じっていた。毛娼妓の店の前で絡んでいた男だ。この男、全く懲りていない。
「今ので折れたわけがないじゃろう」
「あぁん。俺のこと、疑ってんのか嬢ちゃん。大人しく保護者を読んだ方が痛い目見なくて済むぜ」
男が下卑た笑い声をあげる。それを聞いて魔女が慌てる。
「あわわわわ。早く謝ったほうがいいですよ。この前もそれやって今回の罰を受けることになったじゃないですか。我慢してください。バフォさま」
「お主、ワシがこんなカス虫に負けると思うとるのか」
「思ってませんよ。せめて腕くらいで許してあげてください!」
「お前ら何をごちゃごちゃ言ってるんだよ」
「「五月蝿いっ!」」
「ぐほぉっ!」
バフォメットと魔女の裏拳がそれぞれ左右の脇腹から突き刺さる。
カス虫は堪らずお腹を抱えてうずくまってしまう。
「て、てメェらあ。俺は刑部狸さんのこと知ってんだぞ」
男は子鹿のようにプルプル震えながらなんとか立ち上がる。内股になって情けない。
「誰ですか、それ?」
「知らんの 」
「そうなの。だったら、ちょっと一緒に来て話を聞かせてもらいたいわね」
そこにいたのは妖狐だった。
「あぁん。何言ってやがんだ、てめぇ」
「問答無用よ」
妖狐は男の股間を蹴り上げる。
「ぎゃあああああ」
男は今度は立ち上がることが出来ずに倒れたまま白目を向いている。
「ふっ、またつまらぬものを蹴ってしまった。峰打よ、ちゃんと使えるから安心しなさい」
妖狐は男を抱えて去っていった。
「ふん。他愛もない」
「何やってるんだよお前は」
「おおう?」
バフォメットを後ろから抱き上げる少年の声。
「ケイスケ?、なっ、何をするんじゃ、放せ、放すのじゃ!」
じたばたともがくバフォメットをケイスケは放さない。
このバフォメットの力ならば振りほどくことは簡単なのにジタバタともがくだけだ。
「お前、またこんな騒ぎを起こして」
「違うのじゃ。あやつが勝手に」
「言ってろ言ってろ。この前だって俺をバカにした奴らに喧嘩売ったんだろ」
「あ、あやつらが五月蝿かっただけじゃ」
「ああ、いいよ。それならそれで。だからな。俺がこうやって見張っててやる。お前が暴れないように見張っててやる」
抱き上げられながら、真っ赤になるバフォメット。
「そ、それは。一緒に回ってくれるということかの」
「そうだよ。聞けば今回のサバトのお守りだって。あの時の罰だって話じゃないか。だったら、俺も一緒に罰を受けるのは当たり前だろ。それとも、お前。俺と一緒に回るの嫌か」
「い、嫌じゃ、ない、のじゃ。ぜひ、お願いしたい、のじゃ。お兄ちゃん」
「よしっ、じゃあ行こうぜ。この体勢嫌だったら放すけど」
「放してはダメなのじゃ!。このままがいいのじゃ」
ケイスケの腕を抱き寄せるバフォメット。
「ひゅー、ひゅー」
「おめでとうバフォさまー」
サバトの子供達の囃し立てる声。
しかし、その中に面白くないものが一名。涙目でプルプルと震えている。
「ば、くはつしろ。花火に打たれて爆発してしまえー」
魔女が涙を流しながら走り出した。
彼女の夏はいつ始まるのか。
16/06/17 13:03更新 / ルピナス
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