読切小説
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ミルクマリアージュ
午後の喫茶店、休日の三時頃は私の憩いの空間だ。落ち着いた店内はランプを思わせる暖色系のライトが灯され、ファンがまるで時間を巻き戻すように回っている。
いつもお決まりの窓際の席に座り、ミルクティーを嗜めば、穏やかな時が流れる。

彼女も気に入ってくれればいいが……。

ふと、私の平穏に、湖面に小石を投げ込んだかのような波紋が起こった。懸念といえば懸念なのだがーー焦燥でもある。しかしそれは甘さを伴う。
私はかねてから気になっていた女性を、この喫茶店に誘うことに成功した。

算段というものなく、意を決して声をかければ、これまで気を揉んでいたことが馬鹿馬鹿しくなるほどのアッサリした風で、彼女は私の誘いを受けてくれた。
私ももう三十を越えた。
親からも、はやく孫の顔が見たいなどと言われていた。
だがどうにも……これまで私が心惹かれる女性というものには出会えなかった。

女性に興味がなかったわけではない。運命の人に出会いたい、そのようなロマンスを求めていたわけでもない。ただその必要性を感じず、女性に対し、合理を押しても求めたいと言う気持ちを持ち得なかったのだ。

いや、今となれば畢竟(ひっきょう)、私は運命を待ち望んでいたのかもしれない。彼女に出会ってしまったあの時は、間違いなくーー“運命”と言うものを感じたに違いないのだから。

今まで生きてきた中で、あれほどの衝撃に出会ったことはなかった。
顎先まで伸ばして切りそろえた黒髪は艶やかで、大きく濡れた黒瞳は、彼女を幼く、可愛らしく見せていた。所謂ーー童顔、と言うものだ。だがふとした拍子に見せる顔はいやに大人びてーーいや、大人である彼女に対して大人びてと言うのはおかしな表現だ、だが私は、その水底から上がって来るあぶくのように現れる、彼女の表情に魅せられた。
いつしか彼女を目で追っていた。すると見えて来たのだ。彼女が一人の女性として、如何に魅力的であるかと言うことが。

その所作の一つ一つに色気が滲み、嫋やかな指先がキーボードを打つ様など、思わず見惚れてしまった。呆(ボウ)として彼女と視線が絡み、微笑まれて慌てて視線を外したのも一度や二度ではない。
我ながら年甲斐もなく、思春期の少年のようで恥ずかしくもなってしまうが、恋などしたこともない男が、遅ればせにトキメけば、そうなるのかもしれない。

と、喫茶店のドアに取り付けられたベルが、小気味の良い音を立てた。
涼やかな風を感じたのは、そこに彼女が立っていたからだろうかーー。

彼女は黒を基調として、白の意匠を取り入れた、華やかかつ清廉なワンピースを身にまとっていた。あどけない顔の彼女にはよく似合う。しかし、やはり隠しきれない色気が薫るのだ。それにーー。

チラリと辺りを見回せば、何気ない様子でも、男性客は彼女を気にしていた。当然、女性たちも。彼女は人目をひくほどに麗しい。そして、彼らの視線の先と言うものは……。

「こんにちは、武田さん。お待たせしましたか?」
「いいえ、私はここが好きなもので。先に来て楽しんでいたのです」
「たしかにいいお店ですね、ここ」

朗らかな、春の薫風を思わせる微笑みで、彼女は私の目の前に座った。男性たちの、嫉妬と羨望を含んだ視線。そのいくつもの視線は、時折思い出したように、彼女の肉体の一部へと向かう。

斯(か)く言う私もーー男だ。

いくら紳士的に振る舞おうとも、男としての渇望が、ついついそこへと引き寄せられてはしまう。なんてことはない。彼女はーー豊満だった。

見るものの目を嫌が応にも奪う、大きく張り出した胸部。砂漠を彷徨い、カラカラに干からびる寸前に目にした瑞々しい果実のような、それほどまでの吸引力を宿していた。
童顔、と言うことも、彼女の魅惑を引き出す一つの要因だろう。

私は、彼女自身を好きになった筈だが、その乳房(ちぶさ)に惹かれていないと言えば嘘になる。それは人によってはコンプレックスとなり、ジロジロと見て来る男たちに忌避感を抱いてもおかしくはないものだが、実際のところ、彼女自身はどう感じているのだろうか?
だがさすがに聞くことは憚られる。

ワザととしか思えない体勢で、彼女はそれを机に乗せた。
辺りが、少々ザワめいた。

そのまま前に伏せれば、きっとおっぱい枕と言うものが出来あがる。
しかし、それは無意識の媚態なのかもしれない。それはたいそう重いのだとも聞く。
なにせ、微笑みをたたえた顔貌は、とても無邪気なものなのだから。
だがそれも計算づくであることも否めない。

彼女はもしかすると、経験豊富な女性と言うものなのかもしれない。
とするならば、私は彼女の手練手管に引っかかった、無様な蛾と言ったところか。

だがしかしーー、私には彼女がそうした悪辣な女性だとは、どうしても思えないのだ。惚れた弱みーーは遺憾ながら否定はできないが、彼女のーー雰囲気、とでも言おうかーー所感は、それをさらに否定するものだった。

「今日は誘ってくれてありがとうございます」

エヘヘ、と。

琴線を根こそぎひっ掴み、びぃんびぃんと乱暴にかき鳴らすような、心臓を鷲掴みにされて、握り潰されるような笑みだった。
私は平静を装い、手がふるえないようにしつつ、ミルクティーを口に運んだ。

落ち着く。

コクのあるアッサムティーに、これまたコクのあるミルク。
この二つは混ざり合うために生まれたとしか思えない極上のマリアージュだ。
私は瞑目して味わい、彼女の注文を聞こうとして、目を上げた。
そこで硬直した。

眸(め)だーー。

彼女がじっとりとした、咎めるような視線を向けていた。
静かな……、まるで泥の中で炎を煮えたぎらせるような眸(ひとみ)だった。
私は息を呑んでしまう。
まさか彼女がそのような眸(ひとみ)をするとは思ってもいなかった。
恐ろしくはあったが、それよりも彼女の新たな一面を見られた気がして、一部、喜んでいる自分もいるのだから、呆れたものだ。世の男とは、こうしたものなのだろうか。

「どうか、されましたか?」

声は、ふるえなかった。
甘さよりは、苦味の方に、十分な耐性がある。
しかしーー、

「浮気ですか?」
「え?」

私は予想だにしていなかった彼女の言葉に面食らってしまった。
何を言っているのだ。
私は浮気などしていないし、そもそも彼女とはまだ付き合ってもいない。彼女の方が、誘いに乗っただけで、思いを伝えたつもりでいるのだったら、嬉しいとは思うが……。

と、彼女は豊かな胸部を持ち合えるようにして、口をへの字に曲げた。そのむっちりとした肉惑には、目を吸い寄せられてしまう。
が、目を奪われている場合ではない。
私は彼女の目を見返した。
黒々として濡れた光沢は、惚れ惚れするほどに美しい。しかし、その中で、なにやらヒッソリとした焔が燃えていた。

「どうか、されましたか? 何か、むねみさんのお気に触ることをしたのでしょうか?」

尋ねれば、一瞬その焔は、パッと火の粉が散るようにして、消えたようだった。

「武田さん、今、私の名前を……」
「いけませんか? 交際を申し込みたいと思っているあなたを、下の名前で呼んでは」
「ーーーー」…………。「いえ、かまいません……。私も、あなたを下の名前で呼ばせてください。明成さん」
「ーーーー。はい、喜んで」

疼(ジン)とした。

懸想する女性に名を呼ばれると言うのが、こうも心をゆり動かすとは。自身の名が、こうも甘美な響きを宿すとは、信じがたいことだった。
それに……。

「それでは、私とお付き合いしてくださると言うことで、よろしいのでしょうか?」
「はい……」

乙女のようにゆらめいた瞳は、まるでかけがえのない宝石のような煌めきだった。私は見入ってしまった。彼女は羽毛のような心のふるえを抑えるかのように、唇に指を当てていた。ふくよかな胸部が腕に押され、むにゅりと音が聞こえるようだった。

「よろしくお願いします」
「こちらこそ、よろしくお願いします」

まるで商談成立のようなやり取りなのは、職業病と言うことなのだろうか。しかし、この素敵な女性と私は交際できるようになったのだ。思わず口元がほころんでしまう。
私はソッとティーカップを手に取り、口に運ぼうとした。
と、

「あっ」

彼女が声を上げた。

どうしたのだろう。そこには困惑と、懇願が見て取れた。

「どうかされましたか?」
「い、いいえ……。だって、明成さんはなにも知らないから、これは浮気じゃないし……。でも、私は……」

最後の方はか細く小さな声で聞き取れなかったが、彼女は屹然として、なにやら意を決したようだった。

「明成さん、お願いがあります。そのミルクティー、飲むのをやめていただけないでしょうか?」





結論から言えば、私は彼女の要求を却下した。
気が引けないことはなかったが、それは私の流儀に反するし、せっかくのミルクティーを無碍に扱うのは、店側にも気が引けた。

聞けば彼女はミルクティーが問題なのではなく、そこに含まれているミルクが問題であるらしかった。どうにも彼女には、ミルクに対するのっぴきならないこだわりがあるらしく、私には、自分の指定するミルクを使って欲しい、飲んで欲しいと言うことだった。

不思議なこだわりだ。
だが私はそれを承諾した。なにせ彼女が持参していたそのミルクは、これまでに味わったことのないほどの美味であったのだから。
私は彼女の視線が気になりはしたが、最初のミルクティーを飲み干し、ティーポットから紅茶を注ぐと、彼女から受け取ったミルクを使ってみた。

ミルクを持参していたことも驚きだ。
しかも、

「搾りたてですし、これはあまり傷みません。……あなたのことを想って搾りましたし、魔力もこもってますから……」

後半の言葉はポショポショとして小さく、聞き取れなかったが、搾りたてとは、この辺りに牧場などあっただろうか?

しかし、そのミルクの味見をし、ミルクティーのマリアージュに驚愕した私を見つめていた彼女の瞳は、いやになまめかしく、艶めいていた。

「これは美味しいですね。どこのミルクなのでしょうか?」
「え、えっと……それは……」
「言えないのですか? もしかして、乙女の秘密、と言うものですか?」
「ーーーーッ」

柄にもなく、茶目っ気を出して言ってみれば、なぜか彼女はトマトのように顔を真っ赤にさせてしまった。可愛らしいが、それは、本当にどうしたと言うのだろうか?

なにはともあれ、彼女は、自分と付き合うからには、このミルク、乙女の秘密のミルクを、私に飲んでもらいたいらしかった。それならばと、私はこのミルクを褒めちぎってみた。女性は褒めるものなのだと言う情報を、チラリと耳にしたことがあったからだ。

しかしどうしたことか。彼女の顔は赤らむばかりで、次第に肩を竦め、豊満な胸をしきりに、モジモジと押さえるようになった。目の前で、まるで自分の胸のことを言われているかのような、恥じ入り、しかし嬉しさを隠しきれない彼女の様子に、このミルクは、もしや彼女がーー

いやいや、そんなバカな。

交際し始めたばかりの男に、自身の母乳を飲ませるような女性など、いるはずがない。いや、世の中は広く、万が一にいたとしても、この彼女がそうであるはずなどない。そもそも、出ないーーだろう?

しかしそれでも、その恥じ入った彼女の様子に、そしてーー私はそうしたつもりではなかったのだがーー、まるで私の視姦から逃れるようなその仕草に、内心、動悸が急搏(きゅうはく)してしまった。

男の一方的な話に、彼女が辟易しないかと心配になりはしたが、妙に恐縮しだした彼女から話を振ってくれることはなく、私は、ミルクと、紅茶の話に花を咲かせた。

扠(さて)、私の花は、彼女には届いたのだろうか?
しかし、後々このやり取りを鑑(かんが)みれば、私は随分と墓穴を掘り、彼女を煽っていたようだった。今時の言葉で言うのならば、フラグを立てた。英語で言うのならばーー

It is no use crying over spilt milk.





喫茶店から出ると、彼女の足取りは妙にフラフラとしていた。
瞳が潤み、頬が赤らみ、心なしか、呼吸が速かった。

「調子でも悪いのですか?」
「い、いいえ、そんなことは……」

おずおずと、しかし慌てた様子で彼女は言った。私は彼女の額に手を当てた。

「あ、明成さッ……」
「うーん、熱はなさそうですね。辛ければ、遠慮せずに言ってください。交際する女性に我慢をさせてしまうなど、私の本意ではありませんから」

ニコリと微笑んで見せれば、彼女は胸を抑えて私に瞳をゆらした。
我ながら気障(きざ)だったとは思う。しかし、間違ってはいなかった。ただし、それはいささかやり過ぎではあったらしい。

彼女はなんと、腕にしがみついて来た。豊満な胸が当たることも、なんら気にせず、その柔らかな感触に、私の身体は強張ってしまった。

「むねみさん……」
「明成さん、すいません、ですが、もう私、耐えられそうにないんです」
「耐えられそうにないって……」
「私の家に、来ていただけませんか? それか、明成さんのお家に……」

潤んだ瞳の上目遣いに、私はなんら抵抗することはできなかった。欲望に流される、浅慮で短絡的な男と揶揄されてしまっても仕方がない。だが、この誘惑に抗える男が、世の中にいくらいるだろうか。しかも彼女は、交際したての意中の女性なのだ。

私は脳髄がジィンと痺れたようになってしまって、彼女の部屋に案内されることになった。
その道中、彼女はずっと、私の腕にふくよかな柔らかさを押しつけていた。羨望の視線、不躾な視線、愉快なものもあれば、不愉快なものもあった。だがそのどれも、気にしてはいられなかった。ただ彼女の柔らかさと温かさ、そして甘く優しい、ミルクのような香りに陶酔させられ、地の巡った下半身を悟られやしないかと、気が気ではなかった。

だが自分の部屋に誘うと言うことは、そう言うことであるには違いない。
私の思い過ごしでなければ、彼女は間違いなく、発情していたのだ。

彼女の部屋は整理整頓が行き届き、可愛らしい小物類が、和やかな調子でも置かれていた。華美ではない。彼女のイメージに合った、まるで可愛らしい草花が散りばめてあるように思わせる部屋だった。
彼女の香りに満たされたこの部屋に案内され、彼女に包まれているような気になってしまった私は、あろうことか、股間の膨らみが止まなかった。

劣情を催していないと言えば嘘になる。だがこの部屋に、彼女と共にいると、男の本能とも言えるものが、無性に掻き立てられるような気がした。それに、なにも精のつく類のものを食べた覚えなどはないと言うのに、次から次へと下半身に血が巡った。

こんな状況で彼女の部屋を訪れたことを、今更ながらに後悔した。
彼女はそのつもりかもしれないが、そんな、襲いかかるなど……。

と、
私が思った時だった。

なんと、私は彼女に唇を奪われていた。
柔らかい唇が吸いつき、背に回された腕には滾った情欲の力が籠り、胸板では豊満すぎる乳房が潰された。目眩のするような甘美な官能が沁み込み、股間は言い訳が効かないほどに盛り上がった。

だがそんなことは些事だった。

「ふちゅ、んちゅ……」

甘い吐息を零(こぼ)す柔らかな唇が私を啄ばみ、私の方からも彼女の背に腕を回していた。世界に、これほどまでに官能を刺激するものがあるとは知らなかった。
唇に甘い痺れが奔り、私も彼女の唇を啄ばんだ。柔らかく潤い、まるで瑞々しい果実のようだった。すると、驚くことに、彼女の方から舌を伸ばして来た。

「ちゅ、んぅ……」

ぺろっ、ぺろっと唇を突つき、私に受け入れてもらえるかどうか、そう確かめているかのような舌の動きに、私の方からも口を開け、舌で触れた。
ビリッ、
と。
電流が走ったと思った。

はじめての粘膜の触れ合いに、感動しつつも戸惑う私に構わず、彼女はそのまま舌を絡ませ、くねらせた。くちゅくちゅと、自分の口から聞こえて来るとは思えないいやらしい水音が、私を昂らせた。

「ふぅっ、ンッ……」

艶めいた喘ぎに、心臓が跳ねた。
しかし平静を装いつつ、彼女に積極的に舌を絡ませた。粘度が、増していく気がした。
彼女は、甘かった。こう言うものを、甘露と言うのだろう。だがこの味ーー、なんとはなしに知っているような……。

くちゅり、くちゅり。

彼女の舌が踊り、私の口内でのたうった。はじめてのキスがこれほど濃厚なものになるとは、思ってもいなかった。正直陶酔してしまうが、求めて来る彼女には応えたかった。私も彼女の口内に舌を差し入れ、踊らせた。

時折唇を離しては舌だけを絡ませ合い、ふと覗いた瞳は、トロンとしていた。はじめて見る、興奮した女の貌(かお)だった。どうしてこんなにも色っぽく、男を誘うのだろうか。
私はたまらなくなって唇を押しつけ、彼女の口の中を舐め回した。

「ンッ、んぅ……」

艶混じりの声音は、明らかに喜悦を含んでいた。歯茎の裏を舐め、頬肉をくすぐり、舌の裏をなぞった。触れる粘膜の感触が、この上なく淫靡だった。ぐちゅぐちゅといやらしい水音は粘り気を増し、合わさった唇からは抑えきれない官能が零(こぼ)れた。
私はさらに激しく舌を動かした。
すると彼女も同じようにしてくれた。
口の中を、舐め回された。彼女の舌の情熱に、爛れてしまうように思えた。

「はぁ……」

銀の糸がスジを引いて、プツリと切れた。

「キス、してしまいました……。はじめての……」

ウットリとして漏らしたその言葉に、私は驚いてしまった。

「はじめてのキス、ですか……」

これが、この熱烈さといやらしさで……。
と、彼女は頬を染め、視線を逸らして俯いた。

「明成さんは……」
「はじめてです」
「よかったぁ……」

心底嬉しそうで、しかし情欲に滲んだ声音に、ドキリとした。昂ぶる心臓が、破れてしまわないかとまで、半ば心配になった。
だが彼女は、改めて私の当惑の理由に思い至ったらしい。
余計、可愛らしい顔が、トマトのように赤らんだ。

「はじめてのキスがこんな風で、ごめんなさい。いやらしい女で……」

恥じらいつつも憂いを含んだその顔に、私は後頭部を捕まえて、再び唇を合わせて舌をねじ込んだ。出来る限りの舌遣いで、彼女の舌を搦め捕り、舐(ねぶ)り回した。

「んぅッ、ン、ふ……」

はじめは強張った彼女だったが、すぐに力を抜き、自分からも舌を絡めて来た。私たちは再び淫靡な蛇になったように絡み合い、唾液を交換しあった。
唇を離せば、トロンとした女の貌(かお)があった。

「いやらしいと言えば、私の方です。あなたの熱烈なキスには愛を感じました。それに、淫らな女性と言うものはーー、あ、いえ、自分に対してだけであれば、少なくとも、私にとってはーー好ましい、です」

自分でもなにを言っているのだ、とも思うが、彼女に恥をかかせるくらいなら、私が恥をかいた方が、どれだけマシか。
羞恥で彼女の瞳を見ていられない心境ではあったが、私は嘘偽りではないことを知ってもらうため、凝(ジ)っと彼女の瞳を見つめていた。

彼女はほぅ、と。
なやましい吐息を零した。

「ありがとうございます。私、明成さんを好きになってよかったです……」

ここでそう返してくれるのは嬉しいやら、己の所業の気恥ずかしさを再燃するようでもあって、複雑な心境を抱いた。
と、懊悩する私の股間に、嫋やかな指が伸びた。

「むねみさん……。う……」股間を弄る女の指に、これまで感じたことのない快美感を覚え、呻いてしまった。

「明成さん、私、もう我慢が出来ません」

熱っぽく潤んだ女の瞳からは、情欲が紫の蒸気となって噴き出してくるようだった。凄絶とも言える女の熱望に、私と言えども、彼女に応えないわけにはいかない。
強く抱きしめれば、彼女の方からも、私を強く抱きしめた。

「お恥ずかしい話ですが、私ははじめてです。もしも痛いなど、不愉快なことがあれば言ってください。私は、あなたにしっかりと感じて欲しい」

私は彼女の耳元で告白した。隠しておいても、イザことがはじまれば、否応無しに露呈してしまうだろう。そうして幻滅されるよりは、先立って宣告しておく方がいい。それを、むしろ自分を守るための言葉だと取られてしまっても仕方はない。その感情がないとは言い切れない。

「私も、はじめてです。でも、大丈夫です。明成さんがしてくれるのであれば、どんなことも、私
、きっと気持ち良いと感じられます」

「ーーーー」





私は彼女をベッドへと伴った。
トサリとベッドに横たわった彼女は、広がったワンピースがまるで花のようだった。黒い花弁に包まれた白い雌しべが、顔だけを覗かせて、私に剥かれるのを待っていた。
情欲に濡れた黒眸(こくどう)が私を見上げ、薔薇を散らしたように頬が色づいていた。

私は張り裂けそうになる鼓動を感じながら、彼女の上に圧しかかった。二人ぶんの重さで軋むベッドの音が、いやにいやらしく聞こえた。

「むねみさん、触りますね……」
「はい……」

少しだけ胸を逸らし、豊満な胸を私に捧げるようにした。手が震えるのを堪えつつ、伸ばした。

「んッ……」
「あっ、すいません、強かったですか」
「い、いえ……」

慌てて離した私の手を、彼女は捕まえ、膨れ上がった乳房に触れさせた。

「むねみさん……」
「いやらしい子だって、思わないでください。私が触らせるのは、明成さんだけです。ンッ」

さすさすと布が擦れる音が、淫靡に響く。ブラの硬さの下に、魅惑を詰め込んだ柔らかさがわかった。微かに押し込みつつ、撫で回した。

「もっと、強くして良いですよ。ンっ、あぁ……。明成さんの手を、感じます……」

私はたまらなくなって、彼女の乳肉に指を食い込ませるようにしてしまった。花降るようなあえかな吐息が艶めいて、夢中になってしまう。

「んぁ、あぁ……」

桜色の唇が戦慄いて、その誘惑に誘われるがまま、私は唇を合わせた。

「んぅ、んちゅ……」

彼女は喜びを訴えながら私を受け入れ、背に手を回してまさぐって来た。私は舌を絡めながら、両手で左右の乳房を揉みしだいた。掌を痺れさせるような甘美な感触に、夢中になってしまう。

くちゅくちゅくと口が絡み合う淫らな水音に、むにゅむにゅと実った果実の瑞々しさを堪能する。持ち続けていれば次第に彼女の吐息が熱を持ち、腰がよじれ、太ももを擦りつけて来た。女の官能の疼きに誘われるがまま、私は唇を首筋に下ろした。

「んぁッ、んぅう……」

彼女の肌は甘かった。甘いままに、愉悦のうねりが唇に伝わった。
私も彼女も、たまらなく興奮していた。
私は右手で胸をまさぐりつつ、左手を徐々に下に下ろして行った。ピクピクとワンピースの下で肌がさざめき、窪みに到達すれば、ピクンと肢体が跳ねた。まるで花に止まっていた蝶が、驚いて飛び立ったかのような可憐さだった。

「んっ、あぁ……。明成、さん……」

私の名を呼ぶ彼女はいじらしかった。男の指に股間を擦られ、官能の呻きをあげて身をよじった。私は自分の中で鎖を引きちぎろうとする獣を感じながら、彼女の女の疼きを徐々に強く擦った。

「んぁっ、あっ、あ……」

声音は艶めき、指先がじっとりと火照って来た。
私の愛撫に、彼女の欲望が溢れ出て来ているようだった。

スカートをジリジリと引き上げて、その下に手を忍ばせた。可憐な身悶えで彼女は強張り、しかし太腿を這う私の掌を受け入れた。しっとりと艶がのり、手に吸いつくような、なまめかしい太腿だった。その付け根をなぞり、太腿の間に触れた。

湿っていた。

「あっ、ぅうう……」

羞恥と期待を宿す彼女の呻きが、トーンをあげた。柔らかく膨らんだ恥丘を、ふにふにと揉みほぐすようにして、触れた。擦り、なぞるたびに、奥から熱と、湿り気が溢れてくるようだった。

指先が粘ついているように思えた。
直接触れていないと言うのに、くちゅくちゅと淫靡な触感を覚え、この先に、この先に、と私の中で叫ぶものがいた。

私は下からスカートをめくり上げ、脱がしにかかった。意外にも扇情的な黒のショーツが露わになり、だがそれは、白く透き通るような彼女の肌に、よく似合っていた。滑らかな腹、くびれた腰、多すぎず少なすぎない絶妙の肉づきに、たっぷりと膨らんだ果肉が、これまた黒のブラジャーに詰め込まれていた。今にも弾けんばかりのボリュームと瑞々しさに、目を奪われそうになりながらも、バンザイをしてくれた彼女の手を通し、ワンピースを取り去った。

二の腕に胸を挟み、唇に指を当てる腕が、白い膨らみを押していた。
彼女は潤んだ瞳で私を見上げ、白い肌にポッと羞恥を浮かべていた。

「綺麗です、むねみさん……」
「ありがとう、ございます……」

それは忌憚のない私の感想だった。
これほどまでに白く艶やかな生き物がいたのだろうかと、新鮮な感動を抱いた。しかも私は今からその肢体を抱くのだ。まるで思春期の少年のように興奮し、眩暈がしそうだった。

「アンッ……」

上から溢れた白乳に鼻を埋めながら、彼女の背中に手を回してブラのホックを外した。途端、戒めを解かれた乳肉がほよんと膨れ上がった。谷間からは甘い、濃厚な彼女の香りがした。乳肌に吸いつき、舌を這わせながら、ブラを取り去った。
すでに乳首はぷっくりと膨れていた。淫欲を蓄えたそれは、繊細な乳輪から盛り上がり、卑猥な形をしていた。

「そんな、マジマジと見ないでください……」
「ですが、これは……、すいません。見ないでいることが出来ません」
「あッ、ん……」

形ばかりの謝罪の後、私は下から持ち上げるようにして果実を味わった。重力に引かれてわずかにたわむも、見事に丸い乳房。もっちりとした重みが掌にかかり、柔らかく、容易く指が沈み込む。だと言うのに膨れ上がる弾力を宿す。揉みごたえのある乳房だった。

もにょんもにょんと弾ませるように揉み回せば、たぷたぷと波打つ白乳の上で、薄桃色の花蕾が踊る。夢幻の絶景に、私は誘われるがまま乳首を口に含んだ。

「あぁッ!」

たっぷりと乳房が弾み、彼女はおとがいを仰け反らせた。ふるふると情欲の身悶えが乳肌から伝わり、甘みを含んだ左乳首を舐めしゃぶりながら、左手で右乳を揉み回しながら、乳首を捕まえて擦る。

「あひっ、あぁあああ……。明成さん、気持ち良いっ、気持ち良いですぅッ!」

ちゅ、ちゅ……。チロ、チロ……。

甘美な食感に陶酔し、私は乳輪舐め回し、乳首を転がし、啄ばんだ
艶めく彼女の喘ぎは甲高くなり、私の下でくねる腰つきが、凄烈に淫らだった。
舐めしゃぶり、ちゅうぅ、と吸い上げ、反対側も同じようにする。
すると、

「あっ、ンっ、くぅうッ。明成さんっ、出そう、出そうです。こうならないようにいっぱい搾ったのに、明成さんに興奮させられて、私……。んぅッ、ひ、引かないでくださいね? 私が淫らな女でも、こんな体質でも、引かないで、愛して……」

どう言うことなのだろうか?
彼女は何を言って……。
だがその意味は、すぐに知れた。

「あぁあああああッ!」

乳首を強めに吸い上げれば、

ぶしゅり。

「え?」

口の中に噴き出した甘みに、私は刮目した。
まさか……。反対の乳首をつまみあげた指先には滑りを感じた。視線だけを上向ければ、ソッと長いまつげで瞳を伏せ、逸らされた。頬の恥じらいの色に、私は我慢ができなくなった。

「あッ、あぁあああンッ! だ、駄目ッ、駄目です明成さんッ、おっぱいそんなに吸われてはッ、あぁあああンッ!」

甲高い嬌声が迸り、口の中に広がる芳醇な甘みが濃度を増した。
母乳だった。
しかもこの味はーー。
噴き出すように溢れる母乳を、私は夢中で吸い、飲んだ。
指先に滑りを感じながらも尚乳首を摘まみ、擦り、彼女の母乳を搾った。

喘ぎながらも彼女は私の後ろ頭を抱き、母乳を分泌する乳房に強く押しつけ、官能的に身悶え続けた。花散るような叫びだった。
私はしばらくやめられなかった。

唇を離す頃には、彼女は潤みきった瞳をトロンとさせ、豊満な乳房を大きく揺らしていた。両方の乳首が子供の指先くらいに膨れ上がり、トロトロとまだ溢れやまない白が、私の唾液に滲んでいた。

あまりの艶姿に、私はこれが現実なのかと、一種不思議な感覚に襲われた。
だがこの味は間違いない。

「むねみさん、喫茶店であなたがくれたミルクは、あなたのーー」

私は確信を以って尋ねようとした。咎めようとしたわけではない。ただ、確かめようとしたのだ。しかし彼女は私に飛びつくように圧し掛かり、唇を奪い、熱烈に口内を舐め回した。
私を貪り尽くすような舌遣いに衝撃を受けながら、私の雄は経験したことがないくらいに昂ぶった。
これは、彼女のミルクをもらってからだ。
母乳が出るとは体質なのだろうが、彼女の母乳成分には、なにか男を昂らせるような効果でもあるのだろうか?

しかしそんなことを考えている暇などなかった。私の口内を貪婪に舐め回した彼女は、胸板に剥き出しの乳を押しつけ、溢れ出す母乳で私のシャツを汚しながら、首筋に舌を這わせ出した。





「くぅっ、あ……。むねみさん……」
「明成さん。ごめんなさい。淫らな女で。でも、もう、我慢できないんです。ちゅ、れろぉ……」
「おぉ、あ……」

プチプチとシャツのボタンを外し、引っぺがすように私の上半身を裸に剥くと、彼女は乳首を擦り付けるようにしながら、私の乳首を舐め回してきた。

はじめて受ける女性の愛撫は苛烈で、発情した女と言うものの凄まじさをはじめて知った。
だが凄艶な彼女は淫らでも美しく、ウットリと媚びを含んだ視線に私は彼女の潰れる乳房に手を伸ばした。

「あんッ、んぅう……。明成さん、嬉しい。アっ、アっ、アっ、乳首まで……。おっぱい、止まらなくなっちゃいますぅ……」

甘えた声音に誘われるがまま、私は乳首を舐め回し、啄まれながら、彼女の乳肌を揉んだ。乳首を摘まみ、擦り、引っ張り上げ、母乳を搾った。
凄烈な喘ぎが肌を焼き、ジィンと痺れるような疼きを感じた。

と、なんと彼女は私のベルトをカチャカチャと外し出した。

「むねみさん……。あなた……」
「明成さん、私、本当に我慢ができないんです。はじめてなのに、明成さんが、私を誘います」
「おぉっ!」

彼女はあろうことか、私のボクサーブリーフの上から鼻を押しつけ、匂いを嗅いでいた。可愛らしい顔を擦りつけ、陶酔した表情を魅せた。
童顔の彼女にそのようなことをされれば、犯罪的な淫靡さがあるが、彼女の魅せる顔はまさしく情欲を滾らせた女の貌(かお)だった。

肉根の形をなぞるように舌を這わせ、頬をすり寄せる女に、私は呻くことしかできなかった。

「ああ、いい香りです。私、明成さんの、好きです。ちゅ、れろ……」
「くぉおおお、むねみさん、こんな淫らな……」
「失望されましたか? 他のミルクに嫉妬して、私のミルクを使ってもらいたがるような、こんな淫らな行為をしてしまういやらしい女に……。ですが、私をこんな風に滾らせるのは、こうなったのも、こうするのも、明成さんだけなんです。信じてください。私をあなたの女にしてください……。んぅ、ちゅ……」
「ぉおおっ!」

彼女はなんと、シミを浮かせる肉先に口付けると、吸い上げて来た。
鋭すぎる快感に、私は腰が引けてしまいそうになった。
だが彼女は許さず、私の尻を捕まえたまま、キスを続けた。

「んちゅ、ふちゅ……」
「くっ、あぁ……」

愛おしげになんども肉先にキスを降らせ、チロチロと舌でくすぐる。ワザと見せつけるようにして、時折私の反応を伺うために上目遣いを寄越す。
可愛らしい童顔とグロテスクな肉頭のコントラストはあまりにも背徳的だ。肉先を這い回る淫靡なぬめりで、私は身を硬くしてぶるぶるとふるえてしまった。

「明成さんが、ピクピクしています。可愛い……ちゅ、エッチな雫が膨らんで来ました……。ぇろ……ちゅ……」
「あ、あぁあ……」

はじめて受けるフェラチオの、快美過ぎる刺激には、もはや呻くことしかできない。
しかも彼女は左手の人差し指と親指で輪っかを作り、肉根を扱きはじめた。

「逞しいです……。それに、熱い……。ちゅ、ぇろぉ……」
「うぅううう……」

彼女は扱きながら肉棹に舌を這わせ、チロチロとくすぐりながら上下した。細指を絡ませて扱いたと思えば、ねろねろと舐め上げ、舐め下げ、鈴口にも舌を這わせた。

「はっ、あぁ……」
「明成さんも、そんな顔をするんですね。とっても、可愛いです。ちゅ、ちゅ……」

私はどんな顔をしていたのだろうか?
だが顔を覆いたくなるような貌をしていたには違いない。
彼女の唾液と先走り液でコーティングされたペニスは卑猥にそそり立ち、彼女は恍惚として舌と唇で愛撫した。雁を啄まれ、吸われ、舐め回された。
男性器は甘くジンジンと痺れ、蕩けて行くような気さえした。
だがそれはまだはじまりに過ぎなかったのだ。

彼女はウットリとした貌で肉先に柔らかな唇を着けると、

「それじゃあ、いただきます」

ちゅぷり、

と、肉膚を順に滑りながら怒張を呑みはじめた。
唇を感じれば暖かな唾液が私を包み、可愛らしい童顔の唇に醜悪な男根が埋まって行くのは衝撃の光景だった。

「はむぅう……。おいひい……」
「おっ、ぁああああ……。むねみさん、そんな……」

私の背筋を伝って快美な電流が流れた。彼女の咥内でぶるぶるとふるえてしまう。
彼女はやんわりと雁の結びを挟み込むと、ぬるりぬるりと亀頭を舐め転がした。

「あっ、おぉお……」

くちゅくちゅといやらしい音を立てて、隙間から彼女の唾液が竿を伝った。
んふ、と三日月に歪んだ眸で、彼女はずぶずぶと、

「あっ、あぁあああっ……」
「んぅ、じゅっ、じゅっ、じゅっ……」

リズミカルな律動で、彼女の顔が私の股間に上下した。
ぬらつく口内に煽られて、私の欲望はますます逞しくなった。

「んぶっ、んぶっ、じゅっ、じゅっ……」

ワザととしか思えないいやらしい水音。頬を染めた可愛らしい顔だが、その赤は情欲の赤だった。瞳はトロリと濡れて、陶酔した上目遣いに、私はただ喘ぐしかできなかった。

「ちゅっ、ちゅっ、レロレロレロ……」

「うぁあ、むねみさん、うますぎませんか……。うっ……」

「それは、好きな人ができた時のために、練習しましたから……。じゅっ」彼女は口を離し、チロチロと鈴口をほじった。
彼女の唾液に濡れた肉膚は外気にさらされ、ヒンヤリとした。だが彼女の舌先から官能の炎が尿道へと染み込んでくるようで、そそり立った肉棒は、まるで燃えているかのようだった。

私は彼女が練習するさまと言うのを想像してしまい、腹の底で劣情がぐつぐつと沸騰しはじめているのがわかった。
これは私を駄目にする快楽だ。
だが、ああ……、抗えない……。

彼女は鈴口を吸い、肉根を扱きながら唇と舌で愛撫する。睾丸を転がされ、私はされるがままでしかない。

「男の人にするのは明成さんがはじめてです。でもその顔、気持ちがいいんですね。どんどん熱く逞しくなって……。ちゅっ、素敵です。もっと、もっと気持ちよくなってください。んぅううう……」

「はっ、あぁあああ……」

再び可憐な唇に呑み込まれ、なおいっそう激しく貌を振りたくられた。
じゅばじゅばといやらしい音を立て、可愛らしい童顔が振り乱れた。上下動だけではなく、円を描くように、三次元的軌道で彼女は怒張を舐めしゃぶった。

私の中で白い欲望がぐつぐつとマグマのように沸き立ち、出口を求めて殺到しようとしていた。彼女の唾液が呼び水となり、女の情欲が迎え火となった。
いや増して行く快楽の渦は私を呑み込み、絶頂の時を誘う。

「むねみさん、出そうです。ですからそろそろ口を離して……」

そう言った私は、それが悪手だったと言うことを悟る。
なにせ彼女はんふ、と蠱惑的な眸を魅せると、深く深く肉根を呑みはじめたのだからーー。

「む、むねみさん、なにをッ。いえ、そんなに奥まで入れてだいじょ、くぅうッ!」

形の良い鼻を陰毛に埋め、ふぅふぅと荒い息が縮毛をそよがせた。そのすべてを呑み込まれてしまった私は、口内でぐりぐりと締め上げられ、喉奥で雁を搾られた。
激烈な快感。そのうえ彼女は頬をベッコリと凹ませて、尿道を吸い上げたーー。

「あぁあああああッ!」

尿道に欲望の閃光が迸った。どくどくと脈打つペニスは容赦なく彼女の口内を汚し、暴れた。あまりの凄絶な快楽に、私の意識は明滅し、ただ彼女に吸われて行く男性器の感触だけしか残らなかった。

びゅくびゅくと汚濁を噴出する男根を、彼女は可憐な唇でシッカと押さえ、まるで一滴もこぼすまいとしているようだった。瞑目し、喉を打つ男の灼熱に、頬が湯上がりのように赤らんでいた。
私が見ているのに気がついたらしい彼女は、うっすらと濡れた瞳を開け、ウットリと私に微笑んできた。
男の欲望を吐き出させ、受けているとは思えないくらいの清純な笑顔だった。だと言うのに口内では射精したばかりの敏感な肉膚を舐め回し、掃除しながら引き抜いて行く。
清純と淫靡。相反する要素を可愛らしい童顔に湛えたまま、彼女は亀頭だけを残して肉棒を解放すると、キュッとカリ首を締め付けた。

「くぅうううッ!」

ビュッと残っていた液が噴き出し、彼女はネットリと亀頭の丸みを舐め回して、尿道をちゅるちゅると啜ってから、ようやく解放してくれた。

そこまでされてしまえば、出したばかりだとは言え、男根は元のまま、いや、より猛々しく怒張していた。
と、

「ん、んぅ……」

私は彼女のしていることに瞠目してしまった。
なんと彼女は、私が吐き出したものを、ウットリとした顔で咀嚼しているではないか。舌先が頬を押し、塗りつけてもいるようだった。

凄絶な女の欲望に、私は唖然としてしまった。
彼女はこれほどまでに淫らな女性だったのか。
だが彼女の献身を受けた私は、なんとはなしに、彼女が言っていたことは本当だとも確信していた。自身の淫らな面を見せるのは、私にだけ……。
だからこそ、淫らでも彼女のイメージは清純なままなのだ。

ゴクリと私の欲望を嚥下して、熱っぽい息を吐いた彼女は、トロンと情欲に熟れた視線を上げてきた。

淫らな女性を好んでいたわけではなかったのだが、溢れ出す官能を曝け出しぶつけてくるその有様に、私の雄はこのうえなく滾っていた。
感じたことのない凶暴な感情が渦を巻き、この女性を犯したくてたまらなくなっていた。





私の淫欲を感じたのか、彼女は陶然として仰向けになり、膝を立てて股を開いた。
淡い茂みに赤いうねりが覗いた。あたりはしとどに濡れそぼり、彼女の官能も爆発しそうになっていたことを知った。

私のモノを舐めていたからか……。
女性器自体直接見るのははじめてだと言うのに、それが発情しきったものであるとは。私は目眩のするくらいの恐ろしい昂奮を感じた。

怒張は天を衝(つ)くように雄々しくそそり立ち、彼女を貫きたくて仕方がなかった。
ギシギシとどこかで鎖を引きちぎろうと、ケダモノが身悶えている気がした。
それは私の皮膚の下だ。

「むねみさん……」

私は必死で手綱を握ろうと、彼女に覆いかぶさりながらも、まずは唇を重ねた。彼女の方から舌が這い出し、絡ませ合った。くちゅりくちゅりとくねりつく、淫靡な感触はむしろ逆効果らしかった。唇を離しても絡み合い、至近にある情欲に濡れた瞳、熱い官能の吐息を感じた。

「明成さん、来て、ください……」

甘い声音には、もう何をしてもこの欲望は、解き放つしかないことを識(し)った。

「アンッ……」
「すごい濡れ具合だ。触れただけで、むねみさんの熱さがわかる」
「はい、もう私は明成さんのものが欲しくて欲しくて……」

くちゅり。

かすかな動きでも、絡みつくような陰唇のくねりが、電流となって肉芯を焦がした。

「行きます」
「はい……あぁっ」

押し入ってくる男に、彼女は眉を八の字にして耐えた。潤んだ瞳が切なげに眦を下げ、閉じられない唇からは熱い喘ぎが溢れた。

斯(か)く言う私もまだ陰唇を押し広げただけだと言うのに、女の苛烈な欲望が伝わり、凄絶な快楽の予感に苛まれていた。
だがもう彼女を待たせるわけにはいかない。
それに、私も……。

ぐぷぐぷと愛蜜を溢れさせ、私が彼女を埋めて行った。

「あぁッ!」

彼女はシーツを握り締めて嘶いた。おとがいが上がり、白い果肉がたっぷりと弾んだ。絡みつく女肉に呻きながら、私は肉の隘路を押し広げた。細やかに散りばめられた肉襞がネットリと絡みつき、まるで甘えるような蠢きを伝えた。

「はっ、あぁ……」

こんなもの、一度出したと言うのにすぐに果ててしまいそうだ。
こうしたものを名器と言うのだろうか。
私は額に汗すら滲ませて、腰をゆっくりと進めた。
荒い吐息を吐く彼女は、私の両手首をキツく握り締めて、あぁ、あぁ、とうなされるようにあえいでいた。

肉壺から与えられる快楽に耐え、私は引っ掛かりを覚えた。肉先で突ついてみる。

「んッ、んぅ……。明成さんぅ……」
「むねみさん……」

彼女の瞳には、哀切な懇願の色があった。
私は頷いて、一気にーー

ぷちり。

何かを破った感触に、彼女は歯を食いしばった。ぎゅぅう、と握り締めた手には力が籠り、その身体が感じているのは苦痛か快楽か。
だが蠕動する襞肉には、悦んでいるとしか思えない甘えがあった。
私は彼女の髪を撫でた。求めるように頬で擦り寄られ、伸ばされて来た腕に、唇を重ねた。彼女の腕が私の背を這い回り、舌で甘えながらなでさすられた。

「むねみさん、大丈夫ですか?」
「はい、大丈夫です。明成さんがたくさん気持ちよくしてくれていたからだと思います」

気持ちよくとは言え、私は乳房を愛撫していたくらいだ。とすると、彼女は乳房で感じると言うことか。私は手を伸ばした。

「あんッ。明成さん……」

媚びた艶音に乳を揉み回す。むっちりと押し返しながらも柔らかく沈み込み、きめ細やかな肌が滑らかだ。極上の手応えを感じて乳首を探せば、ぬるりとした。ぷっくりと淫猥に膨らんだ乳首からは、母乳が溢れていた。
トロトロと白肌に流れていくそれは、まるで天の泉のようだった。

「むねみさん、おっぱい、溢れてますよ」
「あぁッ。言わないでください。私、昂奮して……。明成さんと一つになれて、嬉しいからぁ……。あぁん……」

貫かれたままくねる彼女に、愛おしさが膨らんだ。うねうねと絡みつく媚肉は、彼女がたまらなく感じていると言うことを教えてくれた。
少々ホッとしつつ、私は母乳を垂れ流す左乳首に吸いついた。あえかな呻きに急かされるようにして、左手で右乳首を捕まえる。頬と掌に柔肉の温かさを感じながら、乳輪を舐め回し、乳首を転がして吸い、左手の親指と人差し指で乳を搾った。

「あぁっ、あぁあああっ!」
「むねみさん、美味しいです。美味しいし、もっと味が上がっているような……」
「それは明成さんに吸われているからです。んぅッ、あ……。好きな方に感じさせられて、もっと美味しく呑んでもらおうと思ったら、こんな風に……」

優しく後頭部を抱えられ、私は彼女に授乳された。
ちゅくちゅくと吸い出せば口いっぱいに広がる濃厚な甘み。
しかし、吸っていればドンドンと淫欲が昂ぶり、腰を動かしたい衝動に駆られて来た。
だが、もう動いて大丈夫なのだろうか? 彼女はもう苦痛は感じていないようではあるが……。

と、なんと彼女の方から腰をくねつかせてきた。

「むねみさん……ッ」
「んぅッ、あッ……。あぁん……」甘い声音が耳朶を蕩かして来た。「動いて、ください……。私、もう、我慢出来ないんです」

くねり出した淫らな腰つきに、凄絶な快楽が奔った。
私ももう、我慢はできない。

「あぁんッ!」

彼女のおとがいが仰け反った。喜悦の雫が弾け、たっぷりと揺れた乳房に、私の獣慾はとうとう手綱を振り切った。

「んッ、んぁあッ! 明成さんッ、私を、おかしくしてくだいッ! あぁああああッ!」

はっ、はっ、と犬のような息を吐いて、私はカクカクと腰を振った。ザワつく媚肉の官能に、理性など役には立たなかった。甘乳を垂らす乳首にむしゃぶりつき、左右を舐め回しながら乱暴に吸い上げる。濃厚に、ますます美味になって行く母乳に、膣内の私がビクビクとふるえた。

「あぁッ、膨らんで、逞しいッ。もっと、もっと気持ちよくしてください、明成さん……。熱い、熱いぃ……」

喘ぐ彼女は腰をくねらせ、私の背に腕を回して纏綿(てんめん)として媚態を魅せた。
汗ばんだ肌がこすれ合い、まるで彼女に溶けて行くようだった。
ぐちゅぐちゅと潤った肉壺を掻き乱し、女の官能を味わい、欲望を貪った。

「あぁ、あぁあああ〜〜〜〜ッ!」

よがり啼く彼女に容赦なく腰を振り続けた。
ぱんっ、ぱんっ。
喘ぎ声と腰音。淫らな水音が私たちの荒い息遣いに絡みつき、肉欲の坩堝と化したこの部屋を、触れるだけで爛れそうな淫気が満たした。ーー染め上げた。

「むねみさん、むねみさん」
「あぁああッ! 明成さんッ」

私たちは互いに名を呼び合い。私たち以外にはなにも存在しなかった。
彼女はいつしか私の腰に足を絡め、下からしゃくり上げて来ていた。膣道が絞り上げるように肉根を締め上げ、肉襞がうねうねと擦り上げる。

こんな快楽があるとは知らなかった。

胸板で潰れながら弾む淫肉の先では、コリコリとした花蕾が、母乳を垂らして滑る。怒張はますます雄々しく、彼女の最深を叩く。

「あッ、あぁああああッ!」

嬌声を迸らせる唇を塞ぎ、舌を絡ませた。前後不覚になるほどまでに感じ入りながらも、彼女は私に応え、淫靡なぬめりが口中を蕩かせて来た。
膨張しきった肉塊では、迫り上がって来るものがあった。

「はッ、うぅ……。むねみさん、出そうです。抜かないと……。えッ!」

私は驚愕した。なぜなら、腰に巻きついた彼女の足が、まるで万力のような力で締め付けて来たからだ。より深く挿入され、肌が密着して、もう二度と離れられないように思った。しかも彼女は腰をくねらせ、うねりを上げる膣は、私の精を搾り出しにかかった。

「あッ、あぁッ。絞まるッ。むねみさんッ、ダメです。このままなんて……」

今更ながら、私は生でしていることをありありと思った。彼女の昂ぶりに誘われて、いや、私は欲望に流され、ゴムをつけることを失念していた。
もがこうとするが、ビクともしない。背中に回された腕も力強い。なによりも甘美すぎる快楽から、私は逃れたくはなかった。

「むねみさん……」私は喘いだ。もう、噴き出そうとしていた。

耳元に寄せられた唇から、甘い吐息が吹き込まれて来た。

「明成さん、中で射精してください。んぅ……私、はじめては中がイイんです。はッ、いいえ、これからも、ずっと……ンッ。もしもできたら、責任、とってくれますよねーー」

ぞくぞくぞくと背中がふるえた。
もう、中で出すこと以外考えられなかった。
そもそも、私は彼女に声をかけた時からずっと……。

「むねみさんは、いいんですか?」
「はい……。明成さんこそ、いいんですか? 私はこんな、淫乱な女です」

その声音には、少々自嘲の響きがあった。
それだけで、私には十分だった。

「いいです。私はあなたがいいです。子供ができてもできなくとも、結婚してください、むねみさん」

そう言った途端、ぶるぶるぶると彼女の豊満な肢体がふるえた。縋りつくように抱かれる。

「はい、喜んで」
「むねみさん」
「明成さん……」
「出しますよ」
「はい。私に、明成さんの子供をください。あぁあッ!」

私は彼女の中に射精する気満々で、肉壺にめちゃめちゃに男根を擦りつけた。甲高く感極まった嬌声を上げる彼女の膣奥で、欲望の限りを解き放ったーー。

「あッ、あぁああああ〜〜〜〜ッ!」

耳元の絶叫に、彼女の体が痙攣し、ビックビックと跳ねた。それはその実精を吸い上げる動きで、私も自分のものとは思えない、女を征服した雄の雄叫びを上げて、なんどもなんども彼女の膣内へと放った。
脈打つ肉棒からは灼熱の快感が奔り、彼女はなんども熱い熱いと言ってよがった。ようやく射精が終わっても、私たちは抱き合ったまま、絶頂の余韻に浸っていた。

と、

気がつけば、彼女の頭には牛の角が生えていた。



「え……?」

しかもお尻からは牛の尾。
乳、牛……?
いや、さすがにそれは失礼すぎる。

「むねみさん……」
「ごめんなさい、明成さん」

彼女は少し、泣き出しそうになっていた。

「あんまりにも気持ちが良くって、あんまりにも嬉しくって、正体が出てしまいました」
「正体って……。むねみさんは……」

「はい、私は人間ではありません。ホルスタウロスです」
「ホルスタウロス……」
「はい、魔物娘と言う……人外の存在です、私のこと、嫌いになりましたよね?」

今にも消え入りそうな声には、恐怖よりも、切なさを私に抱かせた。そしてそれは、そのまま彼女への愛おしさとなった。
私は彼女を強く抱きしめた。

「明成さん……?」
「むねみさん、あなたがなんだって構いません。私は、あなたが好きになったんです」
「明成さん……」

ポロリと、まるで宝石のような雫が溢れた。
それはポロポロと、琴に降るような響きを持って、次から次へと止まらなかった。

「嬉しい……。ありがとうございます」

泣きじゃくる彼女を、私はしばらくの間、抱きしめ続けていた。

ようやく泣きやんだ彼女に聞けば、魔物娘とは女性の姿をした魔物であり、男との交わりを至上とする、淫らな存在だと言う。

だから、こんな……はじめてでも淫らな……。
それならば安心である。いや、安心ではないかもしれない。

「明成さん、まだ、出来ますよね?」

と、彼女は私の上に跨る。

たっぷりと膨らんだ乳房が、勃起した桜色の乳首からトロトロと母乳を垂らしている。
その母乳には滋養強壮作用があるらしく、男を、絶倫にできるらしい。私が精を注げばその効果は高まり、さらにその母乳を飲めば、私は枯れることなく彼女と交われるのだと言う。

生理機構を越えたその効果、言い分は、彼女が人外の、物理とはまた違った場所で生きる生物だと言うことを示していた。
だが私には恐れることなど何もなかった。なにせ彼女は私を愛している。
当然、私も。
燃え上がるままに二人の愛を確かめあえることに、なんの恐怖があるだろうか。

なやましい太腿を掴めば、妖しい月のような笑顔が昇った。私を咥えこんだまま離してはくれない魔壺はトロトロと淫らな汁を零し、そこには私の欲望も溢れていた。
くねくねとエロティックに腰をくねらせる彼女。牛の尾が、愉しげにくゆる。
肉芯が蕩けるような快楽を浴びせられつつ、私は彼女を突き上げるーー。
18/08/26 12:45更新 / ルピナス

■作者メッセージ
こちらではホルスタウロスさんですが、ノクターンノベルスさんの方には、サキュバスさんで掲載しております。

ほう、つまりはどっちの種族でもいい話だと。それは種族の特性を捉えてないと言われないかね?

……ごめんなさい。だがメインはおっぱいなんだ。
これこそがすべて許される絶対無敵のまほ……(などと供述しており……)

いえ、正直なところはむねみさんのイメージはホルスタウロスで、普遍化の世界軸のエントロピーがウンヌンカンヌン……。

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