読切小説
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騎士学生の受難
騎士学校に通う16歳の少年クレインには幼馴染がいた。
彼女は同じ村の出身で、腐れ縁と言うやつだった。男勝りな性格で、小さい頃には男子に混じって裸ん坊で川に飛び込んだりもした。成長するにつれてそんなことはさすがになくなったけれども、そいつは公衆の面前では、と言うやつで、クレインに対してはお構いないしだった。
あんたは女の子なんだからもう少し慎みなさい、と親に言われたらしい。しかし彼女には露出癖でもあったのか、それを解消するかのように、部屋に突然やって来てはベッドに乗って我が物顔で占領して、スカートから下着が見えるのもお構いなしだし、平然と真っ裸になって着替え出しもした。
「別に、クレインの目なんて気になんないし。見たいんだったら勝手に見れば?」
と言う有様であった。
俺だって男だよ、と主張しても、彼女はテンで応えなかった。成長するにつれてだんだんと丸みを帯びていく女の子の身体に、だんだんと女の子を意識するようになって来たクレインにはたまったものではなかった。
「ねぇ、私初潮が来たんだよ」
なんてことも報告され、女の子の不思議と怖さを知らなくってもいい時分から知ってしまった。血のついたパンツを見せられた時にはショックで倒れた。
「ね、ホラ、毛生えた、毛。あんたは?」
と、真っ裸の彼女に迫られて真っ裸にひん剥かれたこともあった。
「まだ生えてないんだ。可愛いおちんちん。じゃあ、生えた時は真っ先に私に教えなさいよ。だって、私が教えたんだもの」
クレインに彼女がいないのはーーと言うか、女の子が怖いのは絶対にあいつのせいだった。
ちなみにクレインは生えかけの毛を彼女に見つけられた。自分よりも彼女の方が俺の身体に詳しいってどんなことだよ、と憤慨した。
彼女との関係は、友人の一人に少しだけ話したことがあった。
すると彼は壁を殴った上にぺッと唾を吐いて学校の先生に連行されて行ったから、これは話さない方がいいことなのだと幼い時に彼は悟った。
たしかに、騎士学校の寮に入寮するようになった今となっては、彼女との間柄は、口にすれば男子寮生全員によって袋叩きにされて然るべきものだ。
なにせその彼女は、クレインと同じ騎士学校に入学し、今年度の首席なのだ。文武両道で美少女。男からも女からも人気が高い。
ちなみにクレインは次席。
今となっては彼女は昔のようなやり取りはさすがにして来ないが、後ろから羽交い締めにされて、小ぶりながらしっかりと膨らんだ胸を押し当てられることなどしょっちゅうだ。
そんな時にはよく壁を殴る音が聞こえてくる。
一糸乱れぬ唾吐きも。
違う。俺はあいつにーーエリスに弄ばれてるだけなんだ、休みの日には呼び出されて買い物や食事に引きずり回されるし、夜遅くまで鍛錬にも勉強にも付き合わされる、さすがに男女の同席が許されるのは談話室までだから、同衾はしていない、ーー寮は男女別である。
だが首席と次席の彼らである。寮の学年代表として個室が用意されている。あいつら絶対泊まったことあるよな、とはまことしやかに流されている噂である。
だが、二人は付き合ってはいないと言う。
それはどちらに聞いても十人が十人ーーではなく二人が二人ともそう答える。母数が少ないので統計学的には当てにならないことこのうえない。
二人以外に聞けばーー、あいつらあれで付き合ってないんだぜ、と、騎士学校七不思議の一つにまで数えられている。
ーーそんな彼ら。
クレインは思う。
俺はエリスのことを好きなのだろうか。
好きか嫌いかと言われれば、きっと好きなのだろう。なんせ、あんまりにも小さな頃からいっしょにいて、なんでもいっしょだったから、もはや空気のようなもので、いっしょにいることが、彼女に振り回されることが“当たり前”だった。いない方がおかしい。
そして、彼女がいないことを想像すれば、半身をもぎ取られたかのような気になる。いや、そもそも想像することすら出来ない。
彼女の方はどうか。
ーーきっとおんなじ。
エリスも、俺のことを空気だと思っている。
字面通りに受け取れば可哀想な目で見られるだろうが、彼らの関係性を思えば、俺もそんなエア(空気)彼女が欲しいと言って、通りすがりの女の子から汚物を見る目を向けられるだろう。
しかし彼も彼女もお互いの気持ちを口にはしなかった。
それでも、このままずっといっしょにいるのだろう、と漠然と思っていた。
否(いや)、或いはーー、その関係性が壊れることを、心底、お互いに恐れていたのかもしれない。

だから急に彼女がクレインによそよそしくなった時、彼は世界が足元から崩壊していくような幻視を抱いた。それは数日のことでしかなかったが、彼らの周りの人間は、過敏に感じ取ったし、クレインの焦燥具合に、声もかけられないと言う有様であった。
そして、それはエリスの方も同じであった。
もしかして、彼女には別の好きな人が出来たのではないか。
いやいや、彼らはもともと付き合ってはいなかったのだ。いつから僕らは彼らが付き合っていると錯覚していたーー?
などと、本気か冗談かわからないような噂が、まことしやかに飛び交った。
もしも彼女が誰か別の男ーーこの場合女子だっていいーー相手が出来たのだとしても、その相手の影は全く見られなかった。
しかし一つ、彼女の様子で変わったことがあった。
それは誰ともいっしょにお風呂に入らなくなったこと。
まさか、彼女は誰かに襲われて、孕まされた? 彼女のお腹は膨らんでいる?
その相手はクレイン? いやいや、それならここ数日で急に腹が膨らむことなどないから、ここ数日で急によそよそしくなることはないだろう。しかし、男女の機微は複雑怪奇な要素が迷宮のように入り組むことがあるから、一概には言えないのだけれども、もしも相手がクレインではない何者かだったら……。と、信憑性があるのかないのかわからないような話しも飛び交った。
流言飛語。
それがクレインの耳に入った時、彼はいてもたってもいられなくなった。もちろん自分にそんな覚えはないし、外出の際に休憩所だと言って連れ込まれた宿屋で、彼女に勧められた奇妙な色の液体を飲んだら前後不覚にいつの間にか裸で眠っていて、起きたら隣で彼女が裸で寝ていたと言うのも一度や二度のことではないのだけれども(ちなみに三度、と言うオチもない、もっとだ)、彼には明確な心当たりはなかった。
それに、数日前、演習で訪れた森で、休憩すると言った彼女に腹筋を揉めと言われて、木陰で揉まされた時だって、お腹は膨らんではいなかった。だから、数日のうちに、隠せないほどに腹が膨らむことなどない。
そもそも、もしも彼女が男に襲われると言うような事態に陥っていたのなら、自分が気がつかないわけがない。クレインはそんな自負もあった。
なにせ、彼女は空気だ。
いて当たり前。毎日毎日彼女を感じている。そんな突然の重大な出来事(インシデント)があれば、自分が気がつかないわけがない。
しかし思い起こせば、あの演習から帰ったあの日、先生へ報告に先に彼女が帰ってからだ。
彼女がよそよそしくなったのは。
あの日の夜自分は彼女に会わなかった。

まさか、まさかまさかまさかーー。

クレインの脳裏には嫌な予感が嵐となって吹き荒れた。
彼女に問い正そう。そして、もしも先生が彼女に不貞を働いたのなら、俺はーー。

自室で彼は覚悟を決め、先生の殺害計画から彼女を連れての逃亡、街から街へと移り住み、なんなら邪悪と言われている魔物の手と結ぶ親魔物国家に流れてもいい。そこで自分は彼女の傷を慰め、やがて数年後、二人によく似た子供がぽこぽこと生まれーー。

と、そこまで考えた時だった。
ーー彼女がやって来たのは。



「エリス、どうしたんだ……」
クレインは部屋に突然やってきた彼女に驚いた。ここは男子寮だ。女子禁制である。これまで彼女がやって来なかったことの方が不思議なくらいではあるけれども、彼女がやって来るのは、きっと窓からだ、マスでもかいている時にふと窓を見れば、ニヤリと笑う彼女の顔がーー。
そんなシチューションではないかと思いながらマスをかいたこともあった。
ーー閑話休題。

「クレイン……」
どうにも彼女は普段の様子とは違っていた。
普段の勝気な様子はなりを潜め、代わりに憂鬱から醸し出されるえも言えない艶があった。
部屋に灯された蝋燭の灯りが彼女の凹凸(おうとつ)のクッキリとした顔に、翳(かげ)りを投げかけていた。
「ひとまず、入りなよ」クレインは彼女に入室を促した。
「うん……」なよげな様子に、クレインは不謹慎にも胸がざわめくのを禁じ得なかった(もちろん彼女が彼を避けていた理由はわからないが、最悪を想定して然るべきである)。

だから、彼は……自分の背中に頬を染め、ウットリとした艶顔(カオ)で頬に手を当て、彼女が自分に病みデレ顔を向けて来ていることには、気づきもしないのであった。




「どうしたんだ、エリス。その……」クレインはその先を言うことをためらった。彼は黒髪黒目の16歳の少年である。騎士学校の学年次席と言うこともあり、まだ少年の体格ながら、引き締まって逞しい体躯をしている。
彼の部屋を深夜に尋ねた彼女はエリス。
彼を差し置いて学年首席であり、次席を補佐に付けられると言う規約を逆手にとって、休日には彼を視察と言っては買い物や食事に連れ回し、休憩宿では睡眠薬を盛って、彼を裸に剥いては自分も裸になって同衾し日に日に逞しくなっていく男の肉体と、だがしかしまだあどけない寝顔を堪能するくらいの、ーーこの歳になると彼が起きている時にそれを面と向かってはやれないくらいのーー乙女な女の子である。
部屋に灯された蝋燭が、目鼻立ちのクッキリとした、ツリ目がちの美少女然とした彼女を揺らす。煌々とオレンジの光が、彼女の若々しく、しかしどうにも艶めいて見える肌を濡らし、際立たせていた。
彼女も彼も、シャツにズボンと言う簡素な部屋着である。彼女のおっぱいは小ぶりながらもふんわりと膨らんで、女を主張していた。
言い淀んでいる彼の言葉を彼女は引き継いだ。
「どうして自分を避けていたか、でしょう?」
強気の口調は普段通り。だが、妙に鼻にかかって、掠れているように思えた。
「そう、私はクレインを避けていた。だってーー」
と、彼女は突然クレインに抱きついた。女の子の体温が染み込み、甘い香りに包まれた。サラリ、と。肩口を越えるほどの彼女の赤髪が揺れた。
「私、クレインが好きだってことに気がついてしまったの」
クレインの心臓が跳ね上がった。密着した彼女にバレていやしないかと、ジンワリと額に汗が滲む。
「まともに顔なんて見られなかった……。それで今度は、避けてたらもう我慢が出来なくなって……」
抱きつきながらベッドの方に押していく彼女に、クレインはされるがままだった。一歩一歩後じさり、ベッドに倒れこんだ。彼女はそのまま跨ってきた。
なんどもしたことがあるような、否、どうして今までこうしなかったのだ、と言うほどの自然さであった。
クレインは潤んだ瞳を下ろして来る彼女にゴクリと唾を飲んだ。
「ねぇクレイン。私を、抱いて」
クレインはあまりの衝撃で動けなかった。
これまで彼女に押し倒されたこと、抱きつかれたことは数え切れない。もしかすると星の数よりも多いかもしれない。だがしかし、こんなのはじめてだった。
男勝りなはずの彼女。
そのエリスが、女として自分を押し倒してきた。正確には、女ではなく、漢女(おんな)かもしれないがーー肉食系に過ぎる。
だが彼女は潤った唇で言の葉を紡ぐ。それは甘えた声音であった。
「クレインは、私のこと、好きじゃないの?」
羞恥と不安、そして期待を込めた乙女の問い。
それに答えないわけにはいかない。
「俺はエリスのこと、好きだ」真っ直ぐに、彼女の顔を見て言った。
「良かったぁ……」
心底ホッとしたような顔に、クレインの心に堪らない愛おしさが溢れ出した。
彼は抱いてと言っている彼女を押し倒ーーそうとしたが、ガッチリと彼女の太ももに抑え込まれて、動くことが出来なかった。
え、と思う彼だったが、
「じゃあ抱くね」
と、彼女はそのまま身体を倒してきた。
どうやら「抱いて?」と言うのは、彼女にとって、「抱いてもいいか?」の省略形であったらしい。漢女(おんな)は言葉少なに語るーーまさに男勝りであった。

だが、
「はむ、んちゅ、んぅ……」
重ねられた唇はまさしく女の子のものであった。クレインはちゅむちゅむと上唇を啄まれ、自分からも彼女の唇に合わせた。
「舌を出して」
言われた通りにすれば、彼女に吸いつかれた。くちゅくちゅと舌が絡みつき、そのまま合わさった唇から唾液とともに彼女の舌が侵入してきた。
甘やかな唾液を嚥下して、舌を擦り合わせた。
この味は覚えていた。クレインのファーストキスは、幼い頃に彼女に奪われていた。騎士学校に来るまではことあるごとに唇を奪われていた。だが騎士学校に来てからは、これが初めてのキスだったーーと、彼は思っている。
くちゅくちゅと淫靡な赤い蛞蝓が、時折唇の隙間から覗いてはそのぬらつきが蝋燭に光る。
「はぁん」
と、昂ぶるままに彼女は彼の手を己の乳房に導いた。手のひらに収まるちょうどいい大きさのおっぱい。彼はもにゅもにゅと、どうにも手にしっくり来る感触を味わう。こうして自分から指を蠢かして触るのははじめてであるはずなのに、もうなんどもしているような気がした。
「ふぅ、ン……」
興が乗った彼女は太ももで彼の腰を抑え込み重心をがっしりと掴まえながら、腰をくねらせていた。クレインはブラをしていない彼女のシャツ越しに、硬く膨らんで来るものを感じた。
これ、乳首……。
と言おうと思えば彼女は身体を起こし、自分でシャツを脱いでクレインに乳首を摘ませた。
「あぁあッ、イイ……」
クレインは何か思うところはあるのだろうが、彼女にさせられるがままにぷっくりと膨れた乳首をクリクリと捏ね回し、それから唇に含ませ“られ”た。
レロリレロリと炎で炙るように乳先を尖らせた舌先で転がして、ちゅむちゅむと唇で啄ばむようにしながら彼は愛撫した。
と、すりん。
「うくッ」
股間に奔った鋭敏な刺激に、彼は呻き腰が跳ねた。
だが彼女の身体は不動であった。
彼女は、彼の股間を撫でていた。
「とっても硬くなってるわ。もう、私の中に入りたいんでしょう」
それはその通りだった。
だがーー皆までは言うまい。
「イイわ。私も出来上がっているから」
彼女は得意そうにそう言うと、腰を浮かしてズボンも下着も全て下ろして抜き取った。彼の前だと言うのに、手慣れてあっぱれな脱ぎっぷりであった。
シャツも全て脱ぎ去り、一糸まとわぬ幼馴染の肢体が、蝋燭の灯りに淫靡に濡らされていた。小ぶりな乳房でも、乳先がぷっくりと膨れ上がり、影で描かれた濃淡が、少女の乳房に妖しげな魅力を与えていた。
鍛えられて滑らかな腹筋。脂肪がうっすらと乗り、キュッと締まったくびれに、ムッチリとした曲線を描きつつもスラリと引き締まって伸びた足。その中心では、情欲に開きかけた割れ目が、淡い茂みを濡らし、トロトロと涎を垂らしていた。
発達途中の少女の身体ながら、少年のズボンもパンツもシャツも、恐ろしく慣れた手つきで脱がして、目線をそそり立つ肉柱に落とす彼女のさまは、妖婦もかくやと言った体(てい)であった。
「じゃあ、挿(い)れるね」
彼女はなんら臆することなく、自然にーーそう、あくまでも自然に、である、肉棒に手を添えると、そのまま女陰へと引き込んだ。少女の汚れなき陰唇を、少年の肉頭が押し開き、ずっぷりと彼らは繋がった。
そして滲み出る純潔の証ーー。
「は、あぁあッ」
だがそんなもの、喘ぐクレインが気にできるわけなどなかった。
肉膚(はだ)を舐めしゃぶるように蠢く膣襞、わざわざとさざめき、彼の官能は容赦なく煽り立てられた。
そして今しがた破瓜を済ませたばかりであるはずのエリスは、すでに膝で彼の腰を挟み、ねろねろと淫らな腰つきを魅せた。
それは少女の腰つきではない。ましてや、今しがた処女を失った乙女のものでもーー。もしかすれば、彼女はもうすでに、人ではない何かになっていたのかもしれない。
だが、彼女からもたらされる極上の快楽は、クレインの理性をガリガリと削り、彼には女の子のように喘ぐことしか許しはしなかった。
「あぁッ、あ、ダメだ、エリス、そんな風に動かれたら、すぐに出てしまうッ、あッ、あぐぅううッ」
クレインはあられもなく喘ぎ、そんな彼を彼女は嗜虐的な笑みを浮かべながら見ていた。蝋燭の火が、彼女の陰影を揺らす。だがその表情には、やはり翳りがあった。
しかし彼女は言い放つ。
「イイわ、クレイン、そのまま、射精(ダ)しなさい。私の中で、思いっきり射精しなさいッ」
ぐぃんぐぃんと腰を回し、やがて彼女は膝を立てて跳ね出した。ぽいんぽいんと小ぶりな乳房が弾み、膨れ上がった乳先が、直線的な軌道を描いた。
「はぁッ、あぐぅッ」
彼の肉茎が膨らんだ。射精の兆候を感じ取った膣が、ギュンっと締まった。散りばめられた膣襞が蠕動し、精を啜りあげて来る。
「あぁあッ、ダメ、ダメだッ、あぁあああッ」
ひときわ高く嘶けば、彼は彼女の膣奥(オク)で射精していた。
凄まじい快楽であった。彼女の膣内(ナカ)で彼はのたうち、白濁を噴きながら暴れ回った。
「んふ、んふふふふぅッ、クレインのザーメン、おいし……」
その蠱惑的な笑みは少女のものではあり得なかった。熟れた女、百戦錬磨の娼婦でも難しいかもしれない。
なにせそれは“魔”の笑み。艶やかに愛しい男に快楽を叩き込み、精を啜って快楽を貪る、愛を注ぐ魔物の笑みであった。

凄まじい射精感が去った彼は、はじめはそれを気のせいだと思った。
なにせ、子宮口に押し当てた肉先が押され、ナカからナニカが出て来ようとしていたからである。
だがそれは気のせいではなく、まごうことなき現実(ぜつぼう)であった。
彼の肉先を推して、ナニカが子宮から溢れ出してきた。
“そいつ”は肉膚と膣壁の間を滑り、水溜りのように広がったと思えば、瞬く間に彼の下半身を飲み込み、上半身も固定した。
彼女の子宮(ナカ)から溢れ出してきた“そいつ”は、どうやらスライムのようだった。桃色をしたスライム。そいつがまだクレインが繋がったままのエリスの女陰から溢れ出ているのである。
クレインの顔貌(カオ)に、絶望の形相(イロ)が浮かぶ。

「やっぱりそう言う顔、するよね……」

まるで降り始めた雨のような彼女の声が、クレインの頬を打った。



「先生への報告は良し、と」
群青色の空が橙に滲み、美しくも妖しいグラデーションが広がる黄昏時、曖昧な時間の曖昧な風が、彼女の赤毛をするりと撫でた。
森での演習。獲物のノルマの達成を先生に報告し、彼女は部隊に戻る途中であった。
騎士学校の演習。
相手は魔物ーーではない。この辺りは教会の意向が届いていると言うことで、魔物の影はない。それに、まだ学生である彼らに魔物の相手は早い。狡猾な奴らに絡め取られ、前途多望な少年少女を奪われるわけにはいかない。
彼らの演習とは、鹿や猪相手の狩りであった。魔物との実戦には及ぶべくもないが、これでも実戦練習には違いない。もっとも、真実魔物との実戦を想定するのであれば、床実習の方が何よりも効果的だとは思われるのだが、現場を見ないお偉方にはその重要性がわからんのです。
だがそれは教えられる学生である彼女たちとて同様である。なにせ魔物については、戦うべき敵であると言うのに、詳しいことはあまり教えられてはいない。魔物は邪悪、人類の敵。まずはそれを教えるのが先なのである。
教育とは洗脳である、とは誰が言った言葉だったか。
しかし、
「ふふ、今日はクレインにお腹を揉んでもらえたわ。本当はもっとしたのふにっとしたところ、うぅん、もっともっと下の割れ目とかそのナカとかを揉んでもらいたかったのだけども……」
そう言うエリスーー彼女は今は軽鎧を身につけているーーはそう独りごちた。
さすがは首席、魔物対策はバッチリであった。先生に言われたことだけをやっていたら、首席になんてなれないのである。
ことわっておくが彼女は魔物、魔物娘ではない。クレイン大好きで、素で痴女なだけである。
騎士学校の今年度の首席。
次席を補佐として使えると聞いてーー頑張った。クレインを次席に出来るように彼を鍛錬や座学に付き合わせて、自分はそれ以上に頑張って首席をもぎ取った。
恋する痴女ーーもとい、恋する乙女は強いのである。
そう、彼女はクレインへの想いを恋だとわかっている。それは子供の頃から。だから彼にことあるたびにアプローチしていたのだが……、彼がまだ女の子への興味を正常に抱き始めるよりも前にヤり過ぎたせいでーーぶっちゃけこじれた。しかも彼女自身もこじれ、どうにも真っ当に想いを伝えられる状況にはない今日この頃であった。
しかし今の関係性は心地良い。
だから、それが壊れることを恐れているのも事実ではあるのだ。
いつか想いを伝えられたらいい。
うぅん、彼の方から想いを伝えてくれたらもっといい。
もういっそ、彼を眠らせた間にセックスして、子供が出来て責任を取れって言った方が良いのかしら。間違えて酒を飲んで酔ったあなたが私に襲いかかってーー、とか。追い込んで向こうから気持ちを伝えさせるか。
などと不穏なことを考えている分彼女のこじれ具合は筋金入りである。
だから天が罰を与えた。
否、魔王さまがお節介を焼いた?
それは定かではないが、運命の妙技は触手となって彼女の足を掬った。
「はぁッ?」
突然なにもないところですっ転びかけた彼女であったが、さすがは騎士学校首席、見事な受け身を取った。だが起き上がろうとする彼女の足首にはピンク色の触手が巻きつき、剣を取ろうとする彼女の腕に、反対の足に、胴体に、触手が巻きつき、ご丁寧にもピンク色の触手は彼女の口内に捻じ込まれて口を塞いでいた。
彼女はもがくが、ピンクの触手は彼女を森の茂みの中に引きずり込んだ。
それはスライムの触手。
しかも、寄生スライムの触手であったーー。
生徒たちは、彼女が部隊に合流しようとしていたことなど知りもせず、彼女が引きずりこまれた森の茂みの横を、和気藹々と騒ぎながら通り過ぎて行く。そこには、軽鎧に身を包み、隊を引率するクレインの姿もあった。

助けの来ない茂みの中で、彼女の陵辱が開始されるーー。

「ふぐぅッ、んぅうッ」
エリスは四肢に力を込め、もがき、スライム触手から逃れようとする。だが彼奴(きゃつ)の力は強靭で、千切ることも、ビクとも動かすことすら出来ない。彼女は空中で、肘を曲げた腕を上向けるように固定され、膝を曲げ、四十五度ほどに足を広げられた体勢で固定されていた。口にはピンクの触手がハマり込み、噛み千切ろうにも強靭な弾力があって、それは叶わない。
しかも分泌された粘液がトロトロとひっきりなしに喉に落ち、彼女は嫌悪感に苛まれていた。
なんだってのよ、コイツ……ッ。
彼女は目の前の“そいつ”をキッと睨みつけた。身を竦ませて涙を滲ませてもおかしくない状況であると言うのに、彼女は強気の姿勢を崩さなかった。
彼女の前に存在するのは、ぬらぬらと、いやらしく粘液に滑るピンク色のスライムであった。
小さくともそいつは密度を高め、強大な質量を保有している。いくらエリスが首席であろうとも、そいつに抗うことなど出来なしない。きっと祝福された女勇者でも、そいつには触手で絡め取られ、粘液でぬたぬたにされつつ陵辱されたことであろう。

そいつはピンク色の触手を増やすと、まるで鎌首をもたげた蛇のように持ち上げると、彼女の目前で挑発的にぷらぷらと振った。
ギリ、と歯を噛み締めたかったが、咥内につき込まれた触手で出来なかった。
と、ジワリ。
肢体に汗が滲んだ。
何、これ……。突如自らに起こった身体変化に顔をしかめる。だが訝しがっても変調は止まず、身体はただ火照って行く。
と、胎に疼きを感じた。
そこでようやく彼女は気がついた。
まさか、媚毒……。ふぅううッ……。
気がついてはならなかった。意識したことで、身体の火照り、胎の疼きは強くなった。
「ン、んぅうううッ」
身をよじってこの熱を逃したかった。だが、スライム触手は身体を固定し、許してはくれない。
ふ、ぅうう……。
動けない身体をモジモジと動かす。可愛らしくも勝気な顔立ちは朱に染まり、情欲の火照りに眉を八の字にして耐えていた。額に露のような雫が浮く。
と、ぬらぬらと揺らめいていた触手が行動を開始した。他にも、一本、二本、三本、と立ち上がり、彼女のシャツの裾から、袖から、若肌を粘液に塗(まみ)れた触手が張って行く。
くぅうううッ……。気持ち悪い……。
媚毒の回った少女の肌は、まるで舌が這いずり回るようなその感触を、鋭敏に知覚した。袖から入った触手は腋の窪みをなぞり、裾から入った触手はしなやかな腹筋を宿した腹を撫で、ヘソを弄り、粘液でヌトヌトに濡らして行く。
粘液が這い回った箇所が、より熱を持って官能を刺激した。
いや、私、こんなの、感じてるわけじゃ……。
だが彼女の身体は正直に反応し、シャツの下で愛らしい桜色の胸のポッチが、ぷくぷくと膨らみ始めていた。
と、
「ふぅうううンッ」
くぐもった喘ぎにビクンと肢体が跳ねた。乳首が、シャツに擦れた。それだけで、彼女は電流のような快感を味わった。
ダメ、これ、まずい……。
彼女は焦り始めた。だが触手を突き入れられた口では声を出せないし、もがこうとしても、拘束されている手足は動かせない。
そしてスライム触手が己の乳房に到達し、ゆっくりと、優しく、蕩かすような愛撫をはじめた時、エリスはようやくそいつの意図を知った。
「んぅうううッ」
それは抵抗の叫びであり、望まぬ快楽のへのもがきであった。だが彼女の官能は媚毒によってこじ開けられ、さらなる快楽を求めていた。
乳肌を這うスライム触手は蜷局(とぐろ)を巻くように乳に巻きつき、むにゅりむにゅりと本格的な愛撫開始した。
「んぅ、んぅうッ」
エリスは呻き、もがくが、乳からもたらされる魔物の官能を感受するしかなかった。しかも相変わらず咥内に突き入れている触手がかすかに蠢き出し、トロトロと粘液を飲ませてくる。粘液の通った箇所から熱を持ち、咽喉も、胃の腑も、ナカからカツカツと火照って来た。
「んぅ、んぅう……」
エリスは屈辱だった。こんなにも好きにされて……、そして感じてしまっている。
むにゅりむにゅりと乳を揉む触手は、波打ち、芯まで乳肉を震わせ、抗いがたい快感を伝えて来る。それに、送り込まれる媚毒に女の身体が反応している。
少女であろうとも、彼女は女だ。牝だ。
子宮がジンジンと疼き出し、股倉に熱い蜜液が降りて来た。
「んぅううう……」
少女は秘部に熱を感じた。湿り気も。
服を着たまま、しかも軽鎧までまとった、学生と言えども騎士の出で立ちである。魔物に対する自身の無力さ、そして騎士としてではなく女としていいようにされているという恥辱、ーー恍惚。
情気で真っ赤に染まった。少女の勝ち気な瞳は眦が垂れ下がり、潤んだ瞳は媚びを孕まされていた。
少女だとは思えない、女の顔。
乳をまさぐる触手は、その頂点へと登頂を開始する。
「んぅううう……」
抗いがわなくてはならない。邪悪な魔物に自身の身体を好きにされてはならない。
クレイン……。たしゅけて……。
彼女は心の中で愛しい少年の姿を思い描き、だが同時に、感じたことのない快楽への期待も覚えていた。
ここまでの官能でも、休憩宿で眠らせた彼の裸をオカズにする、堪らない自慰以上の快楽であったのだ。これ以上があるのなら……でも……。
だが彼女の逡巡、葛藤、彼への想い……。
そのすべてはすぐにスライム快楽によって塗りつぶされることになる。
細く引き伸ばされたスライム触手が、乳首に巻きつき、扱きはじめた。
もって計ったかのように、咥内から触手が引き抜かれる。
近くにはもう人はいない。日はとっぷりと暮れ、リリリリ、と虫の音が、BGMのように添えられる。嬌声が、迸る。

「あぁあああああッ!」

M字開脚で宙空に固定されたまま、彼女はビクビクと若々しい肢体を跳ねさせた。おとがいが仰け反り、眦も眉根も垂れた真っ赤な、真っ赤な牝の顔でのぞけぞって吠えた。木の葉には星が撒かれていた。差し入る星の光は、少女の陵辱ショーを覗き込む瞳のようだった。
ビリビリと焼かれるような官能に苛まれる彼女の膨れた乳首を、スライム色が容赦なく扱く。
「あぁあッ、ダメぇッ、乳首、取れちゃうぅッ、取れたら、クレインに触ってもらえなくなっちゃう、吸ってもらえなくなっちゃう、はぁアッ、クレインとの赤ちゃんに、おっぱいあげられなくなっちゃうのぉオッ、あッ、あぁあッ!」
嬌声を迸らせ、彼女は喘ぎ、スライム触手は乳肌を、乳肉を、乳首を蹂躙した。
と、彼女はやがてカクカクと腰を震わせる。
「くひゅぅッ、あッ、うぅうッ、き、来た。ダメ、だめぇッ、魔物なんかで、魔物なんかでイったらダメなのに、私たちの敵の魔物に好き勝手されて、私、気持ちよくなって、あぁあッ、ダメェッ、助けて、クレイン、助けてェッ、はぁあああッ」
好きに叫べるようになったせいで、彼女は思いのままに吠えたけった。
それは悪手だった。彼女は自身で自身を煽った。
媚毒に火照り、愛撫を感じ、自身の声音で自身を貶めた。
アクメの波に押し流されたのは必然。
ガクガクガクッと若々しい肢体が痙攣し、ショーツはぐしょぐしょになった。
「あ、あああ……。私、イっちゃった……。魔物なんかにおっぱい触られて、無様にイっておまんこ濡らしちゃった。ショーツ、ぐっしょりしてるぅ……」
呆然と、しかし情欲の色相(イロ)を滲ませた少女の顔。いくら痴女であろうとも、その情欲が向かうのは愛しいあの少年にだけである。他の男になんて、ましては雄雌もわからぬような魔物になど……。
彼女の頬を一筋の涙が伝った。
「ごめんね。ごめんなさい。クレイン……、私、穢されちゃった……」
打ちひしがれるエリス。だが彼女がされたのはまだ胸だけである。真に穢されるのはこれからである。
「ひぃッ、ダメ、ダメダメダメ」
彼女の目は見開かれ、頬は引きつり良い歯並びが見えた。首を振る少女の懇願にも関わらず、触手はズボンの裾に入り込み、蛇のようにしゅるりと上昇する。
その向かうところは、もちろん蜜を垂れ流す秘口である。
「ダメェッ、本当にそこは、そこはクレインだけのところなのぉッ! んぐぅッ!」
そろそろ疎ましくなったのか、スライムは再び咥内に触手を突き入れられトロトロと媚毒を注ぎ込む。
「ふむぅッ、ンゥうッ」
呻いても粘液は止まらない。しかも今回の触手は、大きい。口を大きく開けられ、彼女は顎が外れるかと思った。しかもその触手はにゅるにゅると無遠慮に前後し、エリスで口姦した。
「ふ、ぅうううう……」
荒い息を吐く少女に、触手は陵辱を追加して行く。
胸に巻きついていた触手が、形態変化を起こした。触手ではなく粘体となり、小ぶりな乳房を覆い尽くし、より激しく、強く、乳肉を震わせ捏ね回す。グニュグニュとランダムな刺激が与えられ、乳だけが別の器官となったような、凄まじい快楽の波が彼女を襲う。しかも乳首には、密度を高めた粘体がキャップのように被せられ、コリコリと、爪弾くような刺激を与えて時折、ーー折った。
「ぐぅうううッ」
蜜壺からはプシュプシュと蜜が噴き出し、裾から入り込んだ触手は、若々しく引き締まりつつも、女としての肉づきを持ち始めた少女の太ももを撫で回し、やがては蜜を噴き出す本命へと近づく。
鼠蹊部をなぞるぬらつく触手に、彼女はもう抵抗するではなく、ただ官能に身を震わせていた。
「ふぅんうぅうぅ……」
それはダメだ、ダメだとわかっている。そこは最後の砦だ。
だが、胸だけでこれほど気持ちが良かったのならば、“そこ”はどんなに気持ちがいいのだろう。どうせ自分はこいつには抗えないのだ、この、快楽にも。どうせ助けは来ない。クレインだって、ここに来ることは出来ないだろう。
心の折れかけた彼女は、触手を咥え、媚毒を含む粘液をコクコクと飲み、モジモジと腰をくねらせる。そう、彼女はもう、すでに自ら粘液を飲んでいた。チロチロと炎で炙るように舌をくねらせ、触手に媚びていた。
せめて、せめてそこを穢すのならば、優しく、痛みがないといい。
そう思ってしまった。
精神(こころ)が屈服し、その肉体を明け渡す抵抗が、彼女からは失われはじめた。
そしてとうとう、スライムは彼女の“女”を支配しにかかる。
くちゅり、と秘裂に触手が触れた。ぬるぬると粘液と愛液を絡めながら弄る。
「んぅ……」
ぐぽぐぽと触手が卑猥に出入りする咥内に、少女の呻きが溢れた。
ショーツの中で、細い触手が器用に肉マメの皮を剥いた。ぷっくりと膨れて可愛らしいそれをくにゅくにゅと触手が押した。
「んぅうぅうッ、んぐぅうううッ」
快楽器官への侵攻が開始された。
目も眩むような圧倒的快楽、神経は危険を知らせるようにパルスを迸らせ、意識が白と明滅する。
やっぱり、ダメェッ、だめ、壊れる、いやぁああッ!
圧倒的刺激にむしろ正気を取り戻しかけた彼女が力いっぱいに暴れる。だが、そんなものは大海に落ちた水。スライムへはなんら効果はないし、すぐに快楽に押し流されてしまう。
溜まっていた恥垢をこそぎ取るようにスライム触手は蠢き、陰核を擦り、巻きつき、扱きあげた。

ひゃああッ、あふッ、へぇええッ……。
嬌声を上げることも許されない彼女は、目を剥いて声にならない呻きを漏らした。勝ち気な表情はもはや跡形もなく、口端からよだれを垂れ流してスライムに弄ばれる牝がそこにはいた。
やがてクリトリスにも、キャップが被せられ耐えずにクリクリと刺激される。
彼女の腰は勝手にカクカクと蠢き、許容量を超えた快楽を逃がそうとしているのか、はやく突き入れて欲しいのか、わからない有様。ショーツは下着の体をなさないまでに濡れ、ズボンにまでシミが浮いていた。
そして、ようやくーー。

あへぇ、はいってきりゃぁ……。

トロリと粘体となったスライムが、膣口を押し広げ、侵入した。
痛みはなかった。トロトロに解れて出来上がった女体は、むしろ快楽を感じながら“そいつ”を受け入れた。むちりと広げられた二枚の陰唇。押し広げられたそこに、ピンクのスライムがトロトロと入って来る。トロトロのスライムは、彼女の処女膜をけっして傷つけはしなかった。
うひッ、ふふふぅ……。
彼女はむしろ恍惚(ウットリ)とした笑みを浮かべ、異物の侵入を甘受していた。
トロトロ、トロトロ……。
スライムは膣内を満たし、さらには子宮にも侵入していた。子宮口を通り抜ける際にも痛みはなかった。液体にまでなったスライムが、優しく入り込み、胎に宿って来たのだ。
やがて彼女の胸をまさぐっていたスライムも、口に突き入れられていた触手も、手足を拘束していた触手も、トロトロになり、すべてがすべて、彼女の胎に収まった。
服を着たまま陵辱され、涙も鼻水もよだれも垂らし、彼女は虚ろな瞳で夜の森に横たわった。だが、しばらくすると、立ち上がり、寮へと向かって歩みをはじめる。
足取りは重い。だが、体調はむしろよかった。
人ではない、溢れ出す力に満ちていた。だが子宮は疼いていた。自分が本当に欲しい快楽は、こんなものではないのだ。肉体はたしかに気持ちが良かった。だが、精神(こころ)が満たされるには……彼でないと……。
「でも、汚れちゃった私を、彼は……。それに、あいつはまだ、ここにいる……」
彼女は滲み涙を堪え、自身の胎を撫でた。本当は彼の子を宿すはずだった子袋に居座った、魔物……。
どうしよう、と彼女は思うが、すでに寄生スライムに宿主として定められた彼女には、死を選ぶ選択肢はなかった。彼女の思考は魔物のそれに侵食されていた。そして、徐々に彼女は気がつきはじめるのだ。魔物は悪いものではない。人類の敵などではなく、人類を快楽に蕩けさせて幸福に導く……。
彼へのこの想い、それ以外のしがらみをすべて取り払ってくれる……。
それからの数日間、彼女は溢れ出す性欲を散らすために自慰を繰り返した。だがそれは女体の疼きを溜めさせ、寄生スライムをより彼女に馴染ませ、彼女の思考を人間ではなく、魔物娘に傾(かたぶ)けさせた。
彼の部屋を訪れた時、彼女を止めるものは何もなかった。理性も、矜持も。ただ、彼が欲しかった。もしもこうなったーースライムキャリアとなった自分を彼が受け入れてくれないのであれば、快楽の檻で閉じ込めてやろう。
そう思っていた。
そして人間としての想いは繋がった。
それなら、彼に、今の魔物娘(わたし)としての想いをーー。



「私、スライムに寄生されたの、それで、スライムキャリアになったの。魔物は人類の敵だって言われてるけれども、今の魔王になってから、そんなことはなくなったの。魔物はーーうぅん、魔物娘は、伴侶として人類を求めている。ねぇ、クレイン。こうなっても、私は私よ。あなたが好きで、でも、もうこの想い、エッチな欲望を抑えられなくなった女の子。私のこと、嫌いになる?」
クレインは彼女の話に混乱した。
魔物娘は自らの伴侶にするために男を襲う。性的に食べても物理的には食べない。それに、女は魔物娘にして、けっして人間を殺しはしない。
人類のーー伴侶。

にわかには信じられない。なにせ、生まれてからこの方、魔物は敵だと、悪だと教えられてきた。しかし、それはエリスも同じだ。同じに教えられてきた彼女がそう言っている。
魔物娘となって。
スライムに寄生されていても、彼女は彼女だと言う。
それはその通りだと思う。彼女が彼女であること。それはたしかだとクレインは思う。なにせ彼女は自分にとっては“空気”だ。なくてはならないものの異常はわかる。そう、なくてはならない。それは彼女が魔物になっても同じだった。
クレインは嘆息し、口を開く。
「いや、俺はエリスが好きだ。どんな姿になったって、俺はエリスのことを嫌いにはなれない。好きだ。君がそんな姿になっても、俺は君を好きでい続ける」
真っ直ぐに彼女の瞳を見ていた。
「よかったぁ……」
彼女は心底ホッとしていた。
「そらなら、私のスライムでずっと監禁して快楽で洗脳とかしなくてすむ」
「…………」
クレインの方がホッとした。心底。そして彼女を好きでいてもいいのだろうかと、改めて不安が湧いた。だが、やはり彼女を嫌いになどはなれなかった。
が、
「じゃあ、今度はスライムキャリアとしての私とシようか」
「へ?」
目を見開く彼に、彼女はニィと口端を吊り上げた。
ロウソクの灯りに照らされた少女は、少女の姿をした妖女であった。橙色の灯りに濡れる凹凸のクッキリした顔立ち、小ぶりながらピンと乳首のたった丸い胸、引き締まった上に脂肪をまぶした腹に、括れた腰、むっちりとした太ももが己を挟み込んでいる。
クレインが唾を飲めば、彼を捕らえたスライムが波打ち、まるでイソギンチャクのような触手が立ち上がる。
頬をヒクつらせ、うねうねと淫猥に蠢く触手が彼の瞳に映った。
「待て、待つんだエリス……」彼は止めようとするが、締められ、膣を満たしたスライムが肉膚とともに肉棒を扱いて来た。そいつはもはや彼女の一部である。コンドームのように、彼女との間にスライム膜があるようには感じられなかった。むしろ、すべてが彼女で、どこからが自分かがわからなくなるような、圧倒的一体感、蕩け合う快楽のみが存在していた。
彼女は腰を突き出し、少女らしからぬ淫らな腰つきを魅せた。
「は、あぁああッ」
彼はもはや呻くことしか出来ず、まるで咀嚼されるかのような、溶けて混ざってしまうかのような官能に支配された。そしてスライムの触手が彼にさっとうし、干し葡萄のような乳首、腋、胸板、首、下腹部、肛門にだって、ところかまわず愛撫を繰り広げた。
それは、彼女がスライムにされたよりも巧みな触手さばきであった。
きっと彼女に宿った寄生スライムも、勉強になります、と言ってるはずである。
「う、うわぁああッ。んぐぅッ」
彼女は彼の口にスライム触手を差し込んだ。
それは自分がされた手管、もとい触手管である。
「ダメ、大きな声を出したら誰かにばれちゃう。……はぁンンッ。アッ、おちんぽ、イイぃ……」
彼の口を塞ぎながら、彼女は自らのくねくねと腰を動かし、官能の吐息を迸らせる。若々しい腹が淫らに波を打ち、自身の乳房にもスライムを這わせ、弄り出す。ピンと立った桜色の乳首も捏ね回す。
「アッ、アッ、アッ、アッ」
迸る彼女の嬌声に、大きな声を出すなと言ったのは誰だ。
そうは言いたいが、クレインの口はスライムで塞がれている。くぐもった呻きしか漏れない。くねくねと蠢く腰つきに、ザワつく膣襞、そしてスライムのうねり。彼はもはや抗いようのない官能に苛まれ、フツフツと煮立った精液がこみ上げる。
「んぅ、んぅうううッ」
「アハんッ、クレインのおちんぽ、大きくなった。射精するのね? イイわ。いっぱい、私の膣奥でブチまけて。ザーメンミルクびゅるびゅる。私にクレインの赤ちゃん、孕ませてぇえッ。あぁあああッ」
「ふぅッ、んぐぅううう〜〜〜〜ッ」
クレインは下半身が爆発したかと思った。圧倒的射精感に苛まれ、根こそぎ精を奪われていくよう。絶頂の荒波に放り出され、しかしてそれはスライムで出来た海である。その海を滑るのは女王然とした彼女。
どうして、どうしてこの女に寄生スライムなどと言うものを天は授けたのか。
クレインは、真っ白になった意識で、そう思った。

彼女はさすがであった。
自身がスライムキャリアであると言うことを隠し通し、コッソリと彼と秘め事を行なった。ある時には分裂させたスライムで彼の肉茎を覆い、授業中の射精管理も行なった。前かがみになって自身の愛撫に耐える彼をオカズに、自身でもコッソリと自慰を行なった。深夜誰もが寝静まったあと、窓からスライムだけを忍び込ませては彼を陵辱した。彼の喘ぎに、胸を押さえて目をつぶり、聞き惚れた。
しかしやはり一番好きなのは膣で子宮に精を受けることであり、彼を優位に立たせ、後ろから腰を振ってもらうことも好きである。しかしその際でも、彼の肛門にスライムを差し込んで前立腺を刺激することは忘れない。
今日も朝昼晩関係なく、くぐもった彼と彼女の喘ぎが校内に響く。

あは(わ)れ……、騎士学生クレインの受難は、一生続く。
18/06/30 13:21更新 / ルピナス

■作者メッセージ
なんか、やっとスライム姦が書けるようになった……気がする?

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