幼き夏の過ち
春が訪れ、新入生たちが続々と登校してきた。桜の蕾がかわいらしく膨らみ、そういえば、桜は英語でチェリーブロッサムと言うんだったな、と横目で見ていた私に、明らかに頭の悪そうな声が聞こえてきた。
「でさー」
「マジで!?」
「マジマジ」
「ジマジマ」
四文字だけで話が成立しているのはむしろ頭が良いのかもしれないが、私は彼らを放っておくわけにはいかない。風紀委員である私は、彼らの前に立ちはだかり声をかけた。
「ちょっと待った君たち」
「何? ……うぉ! すっげぇ美人」
「マジだ。金髪ポニーテールに赤目で抜群のプロポーション。こんな存在が本当にいたんだ……都会ってすげぇ! 聞いてた通りこの学園レベル高ぇー。期待しちまうなぁ、もう」
彼らは目を丸くしつつ私を不躾に見てきた。私の容姿の説明はご苦労なことだが、加えるならば、透き通るような白い肌、と言うことを忘れてはいけない。私がそんな美人であることは間違いなく、彼らの視線も問題ない。なぜなら、より問題なことがあるからだ。
「何? 俺らに何か用? 付き合いたいって言うんだったら、いいぜ」
「お突きあいを前提にお付き合いをお願いします」
ふざけ合いながら私に手を差し出す彼らだが、私は一人の両肩に手を置いて真剣な目をする。それでちょっと彼らは身を強張らせたようだった。
自分で言うのも何だが、私の目は鋭いらしい。男子であっても睨むだけで大半がひるむし、女子に流し目を送れば視線だけで妊娠すると言われている。
おちゃらけていながらも彼らはまだ新入生だった。高校になったばかりで、きっと高校デビューでそうした態度を取っている部分もあったのだろう。私に見つめられて若干頬を染め、目を逸らそうと揺らしていた。
私は微笑ましく思いつつも、彼らに向かって真剣な口調で告げる。
「君たち、腰パンは止めろ。パンツが見えているじゃないか」
一瞬ポカンとした彼らだったが、
「……………プッ、あははははは!」
と吹き出す。
「びっくりしたじゃないで……、ビックリしちまったじゃねぇか。驚かすなよ。何? 男のパンツ見慣れてないの? 先輩」
「僕らの見せたから先輩の見せてくださいよー」
「というか、それ。風紀の腕章。あ、先輩、風紀委員なんだ。カッケーヤベー。絵に描いたような風紀委員にカンドー」
「せんぱーい。パンツ見せたんだから見逃してくださいよー」
ゲラゲラと笑って調子を取り戻す彼らだが、私は真剣だ。確かに私は風紀委員で、私がこうしているのは風紀の乱れを心配してではあるのだが、私が心配しているのはむしろ……
「ダメだ。私は君たちの身を案じているんだ。この学園はな。君たちのような男子から真っ先に狙われるんだ。君たちの姿は、ユニコーンの前に亀甲縛りをされた童貞を放り出すようなものだ」
「ど、どどど童貞ちゃうわ……」
「ウン、僕も童貞じゃないよ…………」
明らかに挙動不審になる童貞たちに、いくつもの視線が投げかけられるのを私は感じた。ああ、手遅れだ。新入生の尊い童貞が散らされてしまう確信を抱き、私は諦めたように彼の肩から手を離す。
「もう、そのままで進んでも良いぞ」私はこれでもかという憐れみの視線を向ける。「だが、ズボンはちゃんと履いて置いた方が、襲われるまでの時間は稼げると思う」
私は彼らに向かって十字を切った。
訝しげな顔をしつつ、私の忠告通りにズボンをキチンと履き直して去っていく彼らの後ろ姿を見、その後を追いかける馬の蹄の音を聞きつつ、私は校門に向き直った。
私はまた一つ貞操を守ることができなかった己の体たらくにため息をつく。
彼らは知らないのだ。この学園、御伽学園に通う女生徒は、その大半が正体を隠した魔物娘であることを……。かく言う私も魔物娘である。
まるで手で押さえられたようなくぐもった悲鳴を、私のヴァンパイアの聴覚がとらえた。 一つのカップルの成立は喜ばしい。だが、成立イコール合身を意味しがちな肉食系女子に、おののく男子だっているはずだ。たとえ相手が魔物娘でどうせ丸く収まるのだとしても、無理やり犯されてしまう恐ろしさは男だって同じに違いない。
魔物娘だって手当たり次第ではない。だが、あんな風に襲ってくれと言わんばかりの姿では、本能を抑えきれない娘だって出てくる。あんなパンツの見える腰パンスタイルでは、鴨がネギを背負って火のついた鍋の上で踊っているのに等しい。
高校デビューで意気がっていようが御構い無し。いたいけな童貞に無用なトラウマを植えつけかねない。そして、それがーー私は風紀委員をしている理由でもある。
私がそう思うのも、私には苦い経験があるからだった。
私はヴァンパイアだが、処女ではない。そして、彼氏はいない。
あれは私がまだ小学校低学年で、おそらく彼は近い年下だったのだと思う。
ここまで言えば、勘のいい人なら何があったか分かるだろう(この時点で、友人のファラオは養豚場の豚を見るような目で私を見てきた。私はその時素直に口を噤んだのだが、次の日、彼女オススメのショタ同人誌を渡されたので、腹いせに彼女の机の上に大きく広げておいてやった。彼女とは今も、没収したショタ同人誌を流してあげるくらいにはいい友達でいる)。
まず弁明しておくと、当時の私はロリだった。だからショタコンではなく、今も…………、違う。しかし、許してもらえるなら、その先の私の弁明を聞いてもらいたい。
「待ってよ夕希ちゃん」
「軟弱だな、豊。女の私がこんなに元気なのにお前が先にへばってどうする」
夏休み、私は避暑地として訪れていた片田舎で出会った少年、豊を連れて森へ向かってずんずんと歩いていた(後日、例のファラオにここまで話すと、彼女は今にも血涙を流しそうな壮絶な顔で睨みつけてきた。が、なんども話の腰を折ってはまずいので、これくらいにしておく)。
蝉時雨を浴び、黄色いワンピース姿の私は汗をかいていなかったが、半袖半ズボンの彼の肌には玉のような汗がうっすらと浮かび、まるで血の雫のようだ、と私は何とはなしに思っていた。この時の私は金髪を左右のリボンで結んだツインテールで、麦わら帽子をかぶっていた。
夏の日差しに吸血鬼とはミスマッチだが、サバト謹製の日焼け止めを肌に塗っているので問題はない。私はむしろ、外で遊ぶことの方が好きな少女だった。
「だって、僕も女の子と遊んだことはあるけど、みんな夕希ちゃんくらい元気じゃなかったよ」
彼の口から他の女の子という単語が出て、私はちょっとだけ不機嫌になる。
「そいつらも軟弱なだけだ。フン」
「ど、どうしたの? どうして怒ってるの?」少し慌てた風の彼を置いて、私はそっぽを向いて先に行く。「ま、待ってよー」
後ろから追いかけてくる彼の気配を感じて、私はちょっと機嫌を直していた。
私はまだ彼を手に入れようと思ってはいなかったが、魔物娘の端くれとして、彼のことを気に入ってはいた。しかし、この夏だけの関係になってしまうのは間違いがないから、ヴァンパイアとしては、彼と一緒に遊ぶ以上の関係になろうとは思ってはいなかった。
私はもう、世のヴァンパイアの他聞にもれず、母親から貴族としての英才教育を受けていた。
「私たちは誇り高きヴァンパイア一族。インキュバスとなる前の男性に前の貞操を許してはなりません」
「はいお母さま。まずは後ろの穴でちょうきょうするのですね」
「ええ。その通りです。我慢をするのは大変でしょうが、あなたは私の娘です。それを乗り越えられないわけがありません」
「はい。ですがお母さま。私のお姉さまはダンピー……」
「違います」
「でも……」
「違います。うちにダンピールはいません。いるのはヴァンパイアだけです。いいですね」
「…………はい」
母の教えが行き渡っていた私は、彼に惹かれるものはありつつも、交わろうなんて思ってはいなかった。だってまだ、あの時は前の穴の使い方までしか教わっていない頃だったのだから。
「あいたッ!」
その言葉で私は現実に引き戻された。私を追いかけて藪道を進んでいた彼は、何かに引っかけたらしかった。私は彼の元に駆けよる。
「どうしたのだ」
「これ……」
「あ……」
彼が私に突き出した指を見て、私は固まってしまった。彼の日焼けした、幼い指の小さな切り傷から、宝石のような血の雫が浮いていた。私は思わず唾を飲み込む。彼に近づいたせいで、その汗の匂いと血の匂いが混ざり、私のヴァンパイアの嗅覚を刺激してきた。酸っぱさと鉄の匂いの中に、愛しく甘い香りを嗅ぎ取ってしまい、私は頭がクラクラとした。
「な、舐めておけばいいだろ。そのくらいの傷、舐めておけば治る」
私は彼を突き放すように言ったのだが、そんな私の気持ちに幼い彼が気がつくはずもなく、彼は「うんわかった」と言って、その指を口に含んでいた。
少年の薄い唇の向こうに赤い宝石が指ごと隠されるのを見て、私はどうしようもない下腹部の疼きを覚えた。いけない。私は湧き上がってきた劣情を振り払おうと首を振る。
彼は、それを勘違いしたらしかった。私の顔を覗き込むと、うふふと笑う。
「夕希ちゃん、血が怖いの?」
「違う」
「また嘘ついちゃって。だって、ぼくの血を見てから夕希ちゃん、顔が赤いよ」
「それは……」
「わーい。夕希ちゃん血が苦手なんだ。怖がりー、怖がりー」
彼はまるで鬼の首をとったかのようにはしゃぎだした。いつも偉そうにしている私の苦手なものを見つけたと思い、得意になっているようだった。
その時私はお姉さんとして、素直に怖いと言っておけばよかった。プライドなど捨て、そう言っておけば、あんなことにならずに済んだのだ。しかし私はヴァンパイアで、人間の彼に好きにさせておくわけにはいかなかった。
「違うと言っているだろう!」
「ひっ!」
怒鳴った私に彼は一瞬身をすくめたが、すぐに恨めしそうな顔をした。頬を膨らませて目に涙を溜めている顔は、私の胸をぎゅうぎゅうと締めつけてきた。
そして彼は先ほどまで自分が舐めていた指を私の鼻先に突きつけてきた。汗の匂い、血の香り、そこに、彼の唾液の匂いが混ざっていた。それを至近距離で嗅いでしまった私は、決壊しそうな理性を押しとどめることに必死だった。
だと言うのに彼はあろうことか、
「舐めてよ」
そう言った。
「怖くないって言うならしょうこを見せてよ」
私はゴクリと唾を飲み込む。壊れかけの理性の前に、そんなことを言ってはいけない。
「怖くないならぼくの血を舐めれるよね。だって、舐めておけば治るって言ったのは夕希ちゃんじゃないか」
もはや鼻先にくっつきそうなほどに近づけられた彼の指から、私の目は離せなかった。小さな切り傷からは、血が、彼の唾液に滲んでいる。
降りしきる蝉時雨に、私の鼓動がいやでも急かされていた。汗をかいていなかったはずの私の顎から、一つの雫が落ちようとした。
「わっ」
という驚きの声は、私が彼の指を口に含んだからだろうか。それとも、私に押し倒されたからだろうか。
彼の指を咥えたままその腰の上に跨った私の耳には、ジーワジーワという蝉の声以外聞こえなかった。藪は彼の形に倒れ、剥き出しの私の幼い腕と足に、葉がチクチクと触れている。私は汗を浮かべつつ、彼の指を吸っていた。子供の背丈には草薮は高く、座りこんでしまえば、私たちはスッポリと隠れてしまった。
彼の上に、私の麦わら帽子の影が降りている。
チュパ、ちゅる……
「く、くすぐったいよ夕希ちゃん」
ちゅっ、ちゅくちゅく
「も、もういいよ。なんかムズムズするから……夕希ちゃんが血が怖くないって言うのはわかったから……ぅう……」
私は腰の下で、小さいながらも硬くなった。何かシコリのようなものを感じて、それをお尻でグリグリと虐めてやった。
「ゆ、夕希ちゃん! ダメだよ。なんか、ぼく恥ずかしい。何か分からないけど恥ずかしい」
私は逃げていこうとする指を両手で捕まえ、身をよじる彼の腰を両足でしっかりと挟んでいた。私はこの本能を、衝動をもう押さえつけておくことができなくなっていた。
頭からは、お母さまの教育も抜け落ちていた。
「なぁ、私ともっと気持ちいことをしないか?」
彼の指を咥えたまま、情欲に頬を火照らせた私は、若干の怯えを含んだ彼の瞳を見下ろして言った。
「気持ちいいこと?」
幼い彼に、私の言っていることがわかるわけがない。私もまだお母さまからちゃんと最後まで習ったわけではないけれども、この本能に従っていけば、上手くやれないことはないと、もはやグズグズになった頭で感じていた。
「こういうことだ」
私は彼の唇を奪った。初めての粘膜を絡ませる感触に、彼は目を白黒とさせて驚いていた。私は彼の舌に舌を絡ませ、彼の唾液をいただき、おかえしも飲ませてやった。私はもう歯止めが効かなくなっていた。
「ゆ、夕希ちゃんの唾飲んじゃった……」
ビックリした顔をしている彼に構わず、私は彼のズボンを片手で降ろしていった。
「な、なんで脱がすの!?」
「こうしないと気持ちいいことができないからだ」
ずり下ろしたパンツの中から出てきた彼の幼いペニスは、小さいながらも硬く勃起していて、私はそれを捕まえた。
「夕希ちゃんダメ。それはおちんちんで、ぼくの大事な……ぅう!」
私は彼の抗議の声を聞き流して、それをやわやわと揉みしだいてやる。
「な、なにこれ。変な感じがする。夕希ちゃんにおちんちんを触られるたびに、なんか、ぼくのお尻のあたりがムズムズする」
「それが気持ちが良いってことだ」
私はそう言って左手で彼の竿と玉を弄びつつ、右手で自分のワンピースを、シャツと一緒にまくりあげていく。私が口で服を咥えると、まだ膨らんできてすらいない真っ白な胸が、彼の目にさらされた。乳首はすでに硬くなって、ピンと立っていたが、彼にその意味はわからない。
私はそんな彼を犯すのだと思い、昂った指で自らのパンツをずらしていく。私の未発達の陰部は、それでもシッカリと濡れていた。
私は彼の視線を股間に感じて気をよくする。が、
「夕希ちゃん、ぼくの上でお漏らししないでよ〜」
彼はそんなことを言う。だが、気恥ずかしそうな顔をしているということは、本当のお漏らしでないことをなんとなく感じてはいるのだと思う。
「お漏らしじゃない。お前のおちんちんを挿れるために、濡れてるんだ」
「どう違うのさ」
「えっと、それは……」
私には説明はできなかったから(まだお母さまから習ってはいなかった)、
「もう、気持ちよくなってしまえばいいんだ!」
「え、ちょっと、夕希ちゃん、何を……う、うわぁあああ!」
私は乱暴に彼のペニスを掴むと、自分の股の中に咥えこんだ。
彼のペニスはまだ奥に届くような大きさではなかったが、自らの中に入っていきた男性の熱から、幼いながらも猛々しいものを感じた。私は本能のままに彼のペニスを膣で締めつける。
「うわぁ! うわぁ! 夕希ちゃんのお股にぼくのおちんちんが食べられちゃったぁ!」
混乱のあまりに叫び続ける彼をよそに、私は彼を力づくでぎゅうぎゅうと締めつけ、腰を振る。
「や、やめて! 夕希ちゃんのツブツブで、ぼくのおちんちんを虐めないで。なんか、すごい、すごくムズムズしてる。怖い、怖いよぉ!」
初めて感じる圧倒的な快楽に、彼は泣き出してしまった。
私の頭は彼を征服する歓びに支配されていて、それは私を悦ばせるスパイスにしかならなかった。私は幼い腰をぐいんぐいんとくねらせて、彼から精を搾り取ろうとしていた。
「ごめんなさい。ぼくが夕希ちゃんを怒らせたから。謝るからもうやめてよぉ……」
しゃくりあげる彼に、私はもっと意地悪をしたくなってきた。だから一度腰を動かすのをやめて、両手で彼の頬をつかんでやった。涙に滲んでいる彼の瞳には、幼いながらも、金髪ツインテール赤目の、吸血鬼の情欲に歪んだ顔が映り込んでいる。私はその顔の頬をニィ、と吊り上げてやる。小さくとも凶悪な犬歯が覗く。
「ねぇ、どうして私が血を舐めないようにしていたかわかるか?」
「わ、わかんないよう」彼の声には嗚咽が混じっている。私は彼と胸を合わせ、その耳元に口を寄せる。
「私はな。お化けなんだ」
「お、化け……」
「そうだ。吸血鬼って聞いたことないか?」
私の下で彼の体が小さく震えるのを感じた。
「知ってるんだな。そうだ。私たちは血を吸う」カチカチと彼の歯が鳴っている。「だが安心しろ。殺したりもしないし、私が血を吸っても、お前が吸血鬼になったりはしない」
彼が身をよじって私の肩に手を当てた。だが、ビクともしない私の体に、やはり身を竦ませる。
「私たちが本当に欲しいご飯は、お前のおちんちんから出るんだ」
「おちんちんから……」
「そうだ。気持ちよくなると白い精液(ご飯)がびゅうびゅう出る。私たちはそれを上の口か、下の口から食べるんだ」
彼は顔を動かして、自分のペニスが入っているだろう、私の股を見ようとしたらしい。
「ぼくのおちんちん、夕希ちゃんの下の口に入ってるの!? やめて、食べないで。……わぁあ!」
私が彼のペニスを締め上げると、彼は暴れつつも、嬌声を上げた。官能の響きを含んだ喘ぎに
私は彼をギュッと抱きしめる。
「大丈夫だ。私が食べるのは出てきた白いものだけだ」私は幼い体同士を擦り付ける。「だが、もしもお前が私にこうされたことを誰かに言ったり、こうしたことを別の女にしたら、どうなるかはわからないがな」
「しないしない! しないよう! 誰にも言わないし、誰ともしない。だからぼくのおちんちんを食べないで!」
彼の懇願に、
「わかった約束だぞ」
そう言って私は彼の首筋に牙を立てた。
「うわぁああああ!」
彼は叫び声をあげて私にしがみついてきて、彼のから抱きしめられたことで、私の体は一気に絶頂に向かって押し上げられていった。私はいっそう腰を彼に擦りつけ、彼の血を吸い、彼の体を抱きしめる。口の中に広がる彼の血液の味は熱く甘く、私は脳みそに直接電流を流したような快感を覚え、それは膣内を擦り上げられる快楽と絡み合い、螺旋を描いて私を絶頂に導いた。
「あっ……あ、イクぅうううう〜!」
私はだらしない叫び声をあげ、体全体をビクビクと震わせた。そうして彼の精液を子宮で受け止め……、られなかった。
ドン、と私は彼に突き飛ばされた。
初めての絶頂の余韻に浸っていた私から、ポロンと彼のペニスが抜け、彼は彼はおちんちんを出したまま、そのまま逃げていってしまった。精液を受け取ることもできず、腰に力が入らない私は、彼の後ろ姿を阿呆のように眺めているだけだった。
ジーワジーワと、蝉の声が、私の耳に再び聞こえてきたが、それは虚しいものだった……。
その時の私は、まだ彼が入っているような股の後味を撫でさすりつつ、自分の別荘に戻ることにした。その帰り道で、だんだんと、私は彼に対してとんでもないことをしてしまったのだという気持ちが湧いてきた。肌を刺すような日差しが、私を責めているように思えた。
サンダルの裏から返ってくる大小様々な砂利の感触が、いやに過敏に伝わってきて、いつしか甘かったはずの性交の余韻が、とても苦いものに変わってきた。館の門を抜け、玄関の大きな扉を開ける。
「あら、今日は早かったわね……。あれ、あなた……」
鼻をヒクつかせるお母さまから逃げるように私は階段を駆け上がると、自分の部屋の鍵をかけ、布団にくるまってガタガタと震えた。私は彼にひどいことをしたのだ。私は彼を傷つけてしまった。
私の目からは次から次へと大きな涙がボロボロと溢れてきて……、その日以降、私が彼と会うことはなかった。そうして夏が終わって、私はその別荘を後にした。
今考えると、彼はまだ精通をしていなかったのだろう。
射精という終わりもなく、ただ感じたことのない感覚を味あわせられる。それは幼い彼にとって、どうしようもない恐怖だったに違いない。私が成長するにつれ、その背負った十字架も一緒に成長していくようだった。
私は彼に会って謝りたい。謝って、彼が望むのなら、ヴァンパイアのプライドなんて捨て去って、彼の奴隷になったっていい。肉便器として使い捨てられてもいい。私はそれほどまでに後悔していた。でも、その後にその田舎の別荘を訪れても、私が彼に会えたことは、もう二度となかった。
現在に至るまで、家の力を尽くして探させているのだが、彼の行方は依然としてしれない……。
それが、私が風紀委員として(主に男子の)服装チェックをしている理由だった。新入生が即魔物娘の先輩、もしくは同級生に食われないように、刺激の少ない服装にするように注意する。私は今日も罪滅ぼしにせいを出す。
そうして、次に校門をくぐってきた新入生らしい男子生徒を見る。
うむ。キチンとした刺激の少ない服装でけっこうだ、と私が頷いた時、風が吹いた。一足先に咲いていた一つの桜の花びらが宙を舞い、彼の方から私の方へと飛んできた。それは、一緒に彼の香りを運んできた。
それは、忘れもしない、ずっと、私が探していたものだった。
彼の黒い瞳が私の顔に向けられた。
「夕希ちゃん……?」
声変わりしてすっかり大人びた彼の声が、私の鼓膜を震わせた。彼の姿を見た私は……真っ赤になってそこから逃げ出した。
「ちょっ……! 待ってくれ!」
後ろから彼が追いかけてくる音が聞こえる。
彼は随分と鍛えているようで、ヴァンパイアの私の足を持っても引き離すことができない。
私は確かに彼を探していたが、こんな風に急に会えるとは思っていなかった。心の準備などできているはずがない。私はどんな顔をして彼に再開すれば良いのかもわからず、ただ必死で足を動かす。
階段を二段飛ばしで駆け上がり(その間、私のスカートは大きくはためくが、淑女の嗜みとして、私は決して意中の男性以外には下着が見えないような歩法をマスターしている)、風紀委員の私が血相を変えて走る姿に驚く生徒たちの視線を感じつつ、とうとう屋上にたどり着いた。
そこで声をかけてくるものがいた。
「どうしたのよ。偽りの処女組合員」
屋上には先客がいた。コブラを象った椅子に座って日光浴をしているファラオ(親友)だった。
朝は施錠されているはずの屋上の鍵がなぜ空いているのか、お前ホームルームサボるつもりだっただろう、というか、間違ってはいないが風紀委員をそんな風に呼ぶな、さらに、私を偽りのとか言うな、誰かに聞かれていたらどうしてくれるんだ、という言葉を荒い息とともに私は飲み込んで、彼女に匿ってもらおうと口を開く。
「だから待てって言っただろ。相変わらず足速いな夕希ちゃん。でも、やっと追いついた」
すでに彼が後ろにいた。
私はビクリと体を竦ませた。私の後ろから彼の荒い息遣いが聞こえてくる。幼い夏の日、私が押し倒して無理やり過ちを犯してしまった彼。会いたくて、謝りたくて、たまらなかった彼。そして、私を好きにして欲しかった彼。
私はもう破裂しそうな鼓動の上に手を当てて、ただジッとしていた。春の日差しが、私の白い肌の上に降りかかってくる。それはとても穏やかなもので、だと言うのに私の鼓動だけが焼けつくように速い。
そんな私を、ファラオは彼と見比べると、訳知り顔で頷いて立ち上がり、私に軽くファラオパンチをしてきた。彼女は私に何かを手渡してきていた。それは、ボ●ギノールだった。
「武士の情けよ」美しい笑顔と、卑猥な拳の形だった。
「余計なお世話だぁあああ!」
私は思わずボラ●ノールを屋上の床に叩きつけていた。確かに彼はまだインキュバスじゃないからヴァンパイアとしてはそうだろうけど! しかもお前武士じゃないだろう! ファラオ(王)でしょ! と、思わず口を尖らせてツッコもう、と彼女を追いかけて振り向けば、彼女は彼の胸にドンとファラオパンチをすると、
「頑張りなさい」
と、サムズアップをしながら去っていった。
なぜ、そんないいポジションに彼女がいるのかわからない。
私が愕然としていると、彼が口を開いた。
「えっと……夕希ちゃん……だよな?」
「…………そうだ。お前は豊だ」
彼の名の響きは、とても苦いものだった。
「ああ。よかった。ちゃんと覚えていてくれたんだ」
彼はホッとしたような、気恥ずかしいような笑顔を浮かべた。幼い自分を襲った相手に向かって、よくもそんな顔をできたものだ。私は頬を染めつつ目を背ける。
「……忘れるわけがない。あんなことをしたのだから……」
彼が身じろぎをするのを感じた。あの時、私の下でも、彼は身じろぎをしていた。
「そうだな……あんなことをされた……」
その声の遠い響きに、私は責められているように感じた。しかし、次に彼の口から出てきた言葉は、信じられないものだった。
「でも、それは仕方のなかったことなんだろ? 夕希ちゃんはヴァンパイアで、魔物娘だった」
私は思わず彼の目を見ていた。
「なぜ知ってる……?」
「君のお母さんから聞いた」
「お母さまから?」
「ああ。今まで僕は君のお母さんから魔物娘についていろんなことを教えられて……それでようやく許しをもらって君の前に現れた。僕は今まで別の県にある君の家の一つに、家族で暮らしていた。お義母さんは、僕が君に襲われたことを知っていた」
あのババァあああ!
私は心の中で声の限りに叫んだ。
「僕は魔力のこもった食事を食べ続けて、インキュバスになった」
よし、●っ殺してやる!
私は心の中で固く決意をした。
いや、しかし。
インキュバスになったと言うことは……。
私は彼の顔を恐る恐る、期待のこもった目で見た。しかし、と私は思う。
「まだお前は人間だ」
私の言葉に彼はポリポリと頬をかく。
「ああ。まだ最後の一押しが残っているらしい」
「最後の一押し……」
「ああ。夕希ちゃんを抱け、ってさ」
その言葉に、私は雷に打たれたような衝撃を受け、内臓の全てがドロドロのマグマになってしまったようなとてつもない疼きを覚えた。
彼が、私を抱く?
ショタでなく、こんな風に成長した彼が……。
私はきゅうきゅうと疼く子宮を感じながら、彼の瞳を見つめていた。
日に焼けた肌に、まだ幼さの残る少年の顔立ちは、あの時の面影を残していて、お母さまがやらせたのだろう、彼の体は適度に引き締まっていて、それは動くための筋肉だった。もしかすると、お父さまと戦えるくらいには鍛えられているかもしれない。
あの体が、私を抱く……。
そう考えただけで、私はすぐにイってしまいそうだった。
「で、でも……いいのか? 私はお前を無理やり……」
私の言葉に、彼は静かに首を振る。
「いいよ。確かに怖かったけれども、今ではもっと楽しまないともったいなかったかな、と思ってる」
「そ、そうか……」私はそんな彼の言葉に、空恐ろしさと、期待を覚えた。
「でも、夕希ちゃんが言うなら、そうだな。ちゃんと責任とってもらわないとね」
「セキ……ニン」
私はその甘美な響きにゴクリと唾を飲みこむ。
「ああ。お義母さんからも、好きにしていいと言われている」
グッジョブ。お母さま。悠久に長生きしてください。
私は心の中でそう呟いた。
そうして彼は私の手を取る。
彼の力強い手が触れている肌が、焼け落ちてしまいそうなほどに熱かった。
彼の瞳の中には私の顔が写っていた。
ポニーテールにした金髪で、透き通るような白い肌をバラ色に染め、艶やかな唇を歪めた、その鋭く赤い瞳を情欲の期待に蕩けさせている女の顔。手を掴む牡に、ここで組み伏せられたいと懇願する牝の顔だった。
「まさか、ここで……?」
「嫌? 大丈夫。魔術で鍵はかけた」
「…………」
お母さま、どこまで私を尊敬させるのですか。
「もし嫌と言われても、これは君にされたことへのお仕置きだから、僕はやめないよ」
そう言って彼は私の口をふさいだ。あの時とは違って彼の方から求めてきた。私の弱いところを執拗に攻めてきて、私はもう、このキスだけで、溶けてしまいそうだった。
口を離した彼に私は言う。
「はい、私をお仕置きしてください、ご主人さま……」
ヴァンパイアの私だが、もはやプライドなどなかった。
彼の手が私のシャツのボタンを外していく。
紫のレース付きブラが、彼の前にさらされる。マジマジとした彼の視線を痛いほど感じた。今日はまだ悪くない下着をつけていてよかった。と、私は思う。
「大きいな……」感動するような彼の声。
「アッ……」
彼の手が私の乳房に伸びてきて、左右を包み込むようにしてもみしだてきた。
「ウッ……ン……ぁあっ」
私は自らの指を噛んで、吐息をこらえていた。彼の指が引っ掻くようにブラをずらし、白い双丘の上には、すでに硬くなった桜色の蕾があった。
「すごいな。ぷっくりと膨らんでいる」
「言わないでくれ……ンアぁッ!」
そう言った私の乳首を、彼の指がつまみあげた。その鋭すぎる快楽に上がった声を、私は両手で口をふさいで止める。私はか細く首を振って、刺激を弱めてくれるように彼に目で懇願するが、彼は私の乳首を容赦なく弄んでいた。
「……ン、ふ」
根元を摘み、「やぁッ」上下にしごいて「ン、ぐ、……ふ、ン」先っぽをグリグリと押しつぶしてくる「ン”ン”〜〜〜〜〜〜!」
私は抑えた手にヨダレがつくのを感じながら、肩で荒く息をしていた。
「すごいな、感じやすいんだ」
「だって、お前に触られているから……ンッ……」
彼は私のおっぱいを揉むことをやめない。丹念に指を沈み込ませつつ、揉みしだく。彼はおっぱいが好きなのだろうか。あの時とは比べ物にならないほど大きくなった胸を私は自慢に思う。
しかし、ふと彼は私のおっぱいから手を離した。「あ……」私は離れてしまった彼の指の感触を寂しく思ってしまう。
彼は私の目を見て言う。そこには蕩けかけた女の顔が写っていた。
「ご主人さまに向かってお前呼ばわりはよくないな」
「す、すまない……」
殊勝な私の態度に、彼はクスリと笑う。そう言えば、そういうことになっていた。彼は私のご主人さま……。そう、心の中で言葉にした途端、私はそれだけで背中に細かな電流が走ったように感じた。私は彼に気づかれないように、薄く震える。
彼は続ける。
「でも、僕は優しいご主人さまになろうと思うから、君のしてほしいことを言ってくれれば、その通りにしてあげるよ。何も望みがなければホームルームに行こうか。風紀委員が遅れたらマズイだろ」
彼は、私の腕章を指差し、腕時計を見せてきた。もう、始業のチャイムがなる時間だった。
そうだ。私は風紀委員で、他の生徒の模範とならないといけない。私がここで風紀を乱していてはいけない。
「どうする? 夕希ちゃんは風紀委員なんだろ。……それとも、夕希は僕の奴隷だとでもいうのかな?」
呼び捨てにされて私は心臓に杭を打たれたように感じた。それは、ご主人さまである彼に打ち込まれてしまったもので、私にはどうしようもできないものだった。彼は、意地悪で、最高のご主人さまだった。
私はスカートの下に手を差し入れ、自分でパンツを下ろす。紫のレースは、すでにぐっしょりと濡れていた。私は抑えようのない劣情とともに、スカートを捲り上げる。彼の前に、私の女の子の部分が丸見えになった。
「私はご主人さまの奴隷だ。ご主人さまに、奴隷の証を刻みつけてほしい……です」
彼はゴクリと唾を飲んだようだった。でも、私はまだお預けされたままだった。
「具体的にどうして欲しいか言ってみてよ」
「う……ぅう……鬼畜ぅ……」
私は彼に陰部をさらしたままそう言うが、心はもうトキメキっぱなしだった。やっと私は彼と結ばれる。私が傷つけてしまった彼が、こうして私を好きにしてくれる。私に、罰を与えてくれる。
だから、私は一言一句を噛みしめるようにして言う。
「ご主人さまのおチンポを私のおまんこに突き刺してください。自分の欲望のままにご主人さまを傷つけた悪いヴァンパイアを、ご主人さまのたくましい肉杭で、退治してください」
もはや我慢のできなくなっていた私は、片手でスカートを持ち上げつつ、もう片方の手で、女陰を押し開いていた。あふれ続ける私の蜜が、すでに屋上の床にシミを作っていた。
「よくできました」
そう言ってご主人さまは嗜虐的な笑みを浮かべた。いいや、嗜虐的な笑みを浮かべようとして、それはぎこちなかった。彼は私の痴態に頬を染め、その目は私の股に釘付けだった。
ズボンの中で、彼の肉棒はすでにその形がわかるほどにパンパンに膨らんで、これ以上焦らされると私の方が耐えきれなくなりそうだった。
彼がズボンを下ろすと、成長した彼の肉棒があらわになった。
あの時とは違って大きくたくまし過ぎるほどに成長したそれは、ビクビクと血管が浮き、とてもグロテスクだった。ああ、あのカリでこすられたら気持ちがいいだろうな、と思っていた私の入り口に彼が触れる。
ぷっくりと膨らんだ亀頭に私の下の唇が触れて、今度は私が食べられるのだと思って、私はどうしようもなくゾクゾクとする。
彼は一気に、私を貫いた。
「うぁ、あああああ!」
あられもない嬌声を上げ、思わず彼にしがみつき首を反らした私の首筋に、彼の歯が立った。
「うう、ギ……。うぁ、……あ……は、ぁあッ!」
私は全身をガクガクと震わせ、そうして、彼のマグマのような白濁が注ぎ込まれるのを感じた。
「ごめん、我慢できなかった。でも、大丈夫?」
あまりの私の感じ方に、彼は私の身を案じてくれた。
「だ、大丈夫だ。でも、この、痛みは……」
「痛かった?」
「いや、もう痛くはない。もう今は気持ちいいだけで……」
と、私は自分の股にぬるりとした感触を覚えた。まさか、と思って触れてみると、それは血だった。
「え……?」
それに私は呆然となる。まさか私はまだ処女だった……? あ、もしかして……あの時の彼のペニスはまだ小さすぎて、届いていなかった……?
私がそれに小さくない感動を覚えていると、私の中の大きな彼の肉杭を強く感じた。私はそれを締めつけているようだった。さざ波のように体に広がってくる快感に、私は彼の耳元でささやく。
「ご主人さま、私は大丈夫だから。もっと、もっと私に罰を。私にお仕置きをしてくれ」
「わかったよ」
「ヒャンッ!」
そう言って彼は私の足を抱え、さらに深く肉杭を突き刺してきた。彼の精液と私の愛液で滑りの良くなった膣肉は、そのツブツブでかれの肉を愛おしそうに締めつけた。
「これ……感じ覚えてる……」
彼は私の唇を奪い、さらに注挿を速めていく。私のむき出しの白い胸が、彼の学生服の上で潰れる。ザラザラと乳首をこすられる感触が刺激的だ。
「あっ、あっあっあっあっ……、ン、ぅう……」
パンパンと、肉のぶつかる音に、クチュクチュと、淫らな水音が響き、学び舎の屋上に、風紀を乱すシミができていく。私は彼から与えられるお仕置き(ご褒美)を劣情のままに貪り、やがて吐き出された白濁に、獣のような声を上げていた。
「舐めてよ」
私は言われるままに、ご主人さまにお掃除フェラをさせていただく。
私の純潔と、彼の欲望の味が混ざり合った、一度しか味わえない贅沢なカクテルだった。
彼の手が私の髪を撫でる。その優しい撫で方に、私はまだご主人さまから罰をいただききっていない、と思う。彼が私のご主人さまになるには、私が彼を育てなくてはいけない。
そんなことを思いつつ、私は彼の肉棒の弱いところを見つけては責め立てていく。
ふと、頭上から声が降りてきた。
「順番が逆になってしまったけど……」
バツの悪そうな彼の声。私は彼を口に頬張ったまま上目遣いで彼を見る。彼の肉棒が膨らんだ気がした。
「久しぶり。また会えて嬉しい。僕と結婚を前提に付き合ってくれないか?」
彼はそう言った。私は目を見開き、嬉しさのあまりその返答として、私は彼の肉棒を思いっきり吸い上げてやる。
彼は押し殺した悲鳴を上げて、私の口内に熱いものを容赦なく吐き出してきた。それを舌で転がし飲み干してから私は言う。
「そうじゃないだろ。……これからよろしく。私のご主人さま」
「ああ」
彼は微笑みながらそう答えた。その顔は、春の日差しよりも暖かだった。
「でさー」
「マジで!?」
「マジマジ」
「ジマジマ」
四文字だけで話が成立しているのはむしろ頭が良いのかもしれないが、私は彼らを放っておくわけにはいかない。風紀委員である私は、彼らの前に立ちはだかり声をかけた。
「ちょっと待った君たち」
「何? ……うぉ! すっげぇ美人」
「マジだ。金髪ポニーテールに赤目で抜群のプロポーション。こんな存在が本当にいたんだ……都会ってすげぇ! 聞いてた通りこの学園レベル高ぇー。期待しちまうなぁ、もう」
彼らは目を丸くしつつ私を不躾に見てきた。私の容姿の説明はご苦労なことだが、加えるならば、透き通るような白い肌、と言うことを忘れてはいけない。私がそんな美人であることは間違いなく、彼らの視線も問題ない。なぜなら、より問題なことがあるからだ。
「何? 俺らに何か用? 付き合いたいって言うんだったら、いいぜ」
「お突きあいを前提にお付き合いをお願いします」
ふざけ合いながら私に手を差し出す彼らだが、私は一人の両肩に手を置いて真剣な目をする。それでちょっと彼らは身を強張らせたようだった。
自分で言うのも何だが、私の目は鋭いらしい。男子であっても睨むだけで大半がひるむし、女子に流し目を送れば視線だけで妊娠すると言われている。
おちゃらけていながらも彼らはまだ新入生だった。高校になったばかりで、きっと高校デビューでそうした態度を取っている部分もあったのだろう。私に見つめられて若干頬を染め、目を逸らそうと揺らしていた。
私は微笑ましく思いつつも、彼らに向かって真剣な口調で告げる。
「君たち、腰パンは止めろ。パンツが見えているじゃないか」
一瞬ポカンとした彼らだったが、
「……………プッ、あははははは!」
と吹き出す。
「びっくりしたじゃないで……、ビックリしちまったじゃねぇか。驚かすなよ。何? 男のパンツ見慣れてないの? 先輩」
「僕らの見せたから先輩の見せてくださいよー」
「というか、それ。風紀の腕章。あ、先輩、風紀委員なんだ。カッケーヤベー。絵に描いたような風紀委員にカンドー」
「せんぱーい。パンツ見せたんだから見逃してくださいよー」
ゲラゲラと笑って調子を取り戻す彼らだが、私は真剣だ。確かに私は風紀委員で、私がこうしているのは風紀の乱れを心配してではあるのだが、私が心配しているのはむしろ……
「ダメだ。私は君たちの身を案じているんだ。この学園はな。君たちのような男子から真っ先に狙われるんだ。君たちの姿は、ユニコーンの前に亀甲縛りをされた童貞を放り出すようなものだ」
「ど、どどど童貞ちゃうわ……」
「ウン、僕も童貞じゃないよ…………」
明らかに挙動不審になる童貞たちに、いくつもの視線が投げかけられるのを私は感じた。ああ、手遅れだ。新入生の尊い童貞が散らされてしまう確信を抱き、私は諦めたように彼の肩から手を離す。
「もう、そのままで進んでも良いぞ」私はこれでもかという憐れみの視線を向ける。「だが、ズボンはちゃんと履いて置いた方が、襲われるまでの時間は稼げると思う」
私は彼らに向かって十字を切った。
訝しげな顔をしつつ、私の忠告通りにズボンをキチンと履き直して去っていく彼らの後ろ姿を見、その後を追いかける馬の蹄の音を聞きつつ、私は校門に向き直った。
私はまた一つ貞操を守ることができなかった己の体たらくにため息をつく。
彼らは知らないのだ。この学園、御伽学園に通う女生徒は、その大半が正体を隠した魔物娘であることを……。かく言う私も魔物娘である。
まるで手で押さえられたようなくぐもった悲鳴を、私のヴァンパイアの聴覚がとらえた。 一つのカップルの成立は喜ばしい。だが、成立イコール合身を意味しがちな肉食系女子に、おののく男子だっているはずだ。たとえ相手が魔物娘でどうせ丸く収まるのだとしても、無理やり犯されてしまう恐ろしさは男だって同じに違いない。
魔物娘だって手当たり次第ではない。だが、あんな風に襲ってくれと言わんばかりの姿では、本能を抑えきれない娘だって出てくる。あんなパンツの見える腰パンスタイルでは、鴨がネギを背負って火のついた鍋の上で踊っているのに等しい。
高校デビューで意気がっていようが御構い無し。いたいけな童貞に無用なトラウマを植えつけかねない。そして、それがーー私は風紀委員をしている理由でもある。
私がそう思うのも、私には苦い経験があるからだった。
私はヴァンパイアだが、処女ではない。そして、彼氏はいない。
あれは私がまだ小学校低学年で、おそらく彼は近い年下だったのだと思う。
ここまで言えば、勘のいい人なら何があったか分かるだろう(この時点で、友人のファラオは養豚場の豚を見るような目で私を見てきた。私はその時素直に口を噤んだのだが、次の日、彼女オススメのショタ同人誌を渡されたので、腹いせに彼女の机の上に大きく広げておいてやった。彼女とは今も、没収したショタ同人誌を流してあげるくらいにはいい友達でいる)。
まず弁明しておくと、当時の私はロリだった。だからショタコンではなく、今も…………、違う。しかし、許してもらえるなら、その先の私の弁明を聞いてもらいたい。
「待ってよ夕希ちゃん」
「軟弱だな、豊。女の私がこんなに元気なのにお前が先にへばってどうする」
夏休み、私は避暑地として訪れていた片田舎で出会った少年、豊を連れて森へ向かってずんずんと歩いていた(後日、例のファラオにここまで話すと、彼女は今にも血涙を流しそうな壮絶な顔で睨みつけてきた。が、なんども話の腰を折ってはまずいので、これくらいにしておく)。
蝉時雨を浴び、黄色いワンピース姿の私は汗をかいていなかったが、半袖半ズボンの彼の肌には玉のような汗がうっすらと浮かび、まるで血の雫のようだ、と私は何とはなしに思っていた。この時の私は金髪を左右のリボンで結んだツインテールで、麦わら帽子をかぶっていた。
夏の日差しに吸血鬼とはミスマッチだが、サバト謹製の日焼け止めを肌に塗っているので問題はない。私はむしろ、外で遊ぶことの方が好きな少女だった。
「だって、僕も女の子と遊んだことはあるけど、みんな夕希ちゃんくらい元気じゃなかったよ」
彼の口から他の女の子という単語が出て、私はちょっとだけ不機嫌になる。
「そいつらも軟弱なだけだ。フン」
「ど、どうしたの? どうして怒ってるの?」少し慌てた風の彼を置いて、私はそっぽを向いて先に行く。「ま、待ってよー」
後ろから追いかけてくる彼の気配を感じて、私はちょっと機嫌を直していた。
私はまだ彼を手に入れようと思ってはいなかったが、魔物娘の端くれとして、彼のことを気に入ってはいた。しかし、この夏だけの関係になってしまうのは間違いがないから、ヴァンパイアとしては、彼と一緒に遊ぶ以上の関係になろうとは思ってはいなかった。
私はもう、世のヴァンパイアの他聞にもれず、母親から貴族としての英才教育を受けていた。
「私たちは誇り高きヴァンパイア一族。インキュバスとなる前の男性に前の貞操を許してはなりません」
「はいお母さま。まずは後ろの穴でちょうきょうするのですね」
「ええ。その通りです。我慢をするのは大変でしょうが、あなたは私の娘です。それを乗り越えられないわけがありません」
「はい。ですがお母さま。私のお姉さまはダンピー……」
「違います」
「でも……」
「違います。うちにダンピールはいません。いるのはヴァンパイアだけです。いいですね」
「…………はい」
母の教えが行き渡っていた私は、彼に惹かれるものはありつつも、交わろうなんて思ってはいなかった。だってまだ、あの時は前の穴の使い方までしか教わっていない頃だったのだから。
「あいたッ!」
その言葉で私は現実に引き戻された。私を追いかけて藪道を進んでいた彼は、何かに引っかけたらしかった。私は彼の元に駆けよる。
「どうしたのだ」
「これ……」
「あ……」
彼が私に突き出した指を見て、私は固まってしまった。彼の日焼けした、幼い指の小さな切り傷から、宝石のような血の雫が浮いていた。私は思わず唾を飲み込む。彼に近づいたせいで、その汗の匂いと血の匂いが混ざり、私のヴァンパイアの嗅覚を刺激してきた。酸っぱさと鉄の匂いの中に、愛しく甘い香りを嗅ぎ取ってしまい、私は頭がクラクラとした。
「な、舐めておけばいいだろ。そのくらいの傷、舐めておけば治る」
私は彼を突き放すように言ったのだが、そんな私の気持ちに幼い彼が気がつくはずもなく、彼は「うんわかった」と言って、その指を口に含んでいた。
少年の薄い唇の向こうに赤い宝石が指ごと隠されるのを見て、私はどうしようもない下腹部の疼きを覚えた。いけない。私は湧き上がってきた劣情を振り払おうと首を振る。
彼は、それを勘違いしたらしかった。私の顔を覗き込むと、うふふと笑う。
「夕希ちゃん、血が怖いの?」
「違う」
「また嘘ついちゃって。だって、ぼくの血を見てから夕希ちゃん、顔が赤いよ」
「それは……」
「わーい。夕希ちゃん血が苦手なんだ。怖がりー、怖がりー」
彼はまるで鬼の首をとったかのようにはしゃぎだした。いつも偉そうにしている私の苦手なものを見つけたと思い、得意になっているようだった。
その時私はお姉さんとして、素直に怖いと言っておけばよかった。プライドなど捨て、そう言っておけば、あんなことにならずに済んだのだ。しかし私はヴァンパイアで、人間の彼に好きにさせておくわけにはいかなかった。
「違うと言っているだろう!」
「ひっ!」
怒鳴った私に彼は一瞬身をすくめたが、すぐに恨めしそうな顔をした。頬を膨らませて目に涙を溜めている顔は、私の胸をぎゅうぎゅうと締めつけてきた。
そして彼は先ほどまで自分が舐めていた指を私の鼻先に突きつけてきた。汗の匂い、血の香り、そこに、彼の唾液の匂いが混ざっていた。それを至近距離で嗅いでしまった私は、決壊しそうな理性を押しとどめることに必死だった。
だと言うのに彼はあろうことか、
「舐めてよ」
そう言った。
「怖くないって言うならしょうこを見せてよ」
私はゴクリと唾を飲み込む。壊れかけの理性の前に、そんなことを言ってはいけない。
「怖くないならぼくの血を舐めれるよね。だって、舐めておけば治るって言ったのは夕希ちゃんじゃないか」
もはや鼻先にくっつきそうなほどに近づけられた彼の指から、私の目は離せなかった。小さな切り傷からは、血が、彼の唾液に滲んでいる。
降りしきる蝉時雨に、私の鼓動がいやでも急かされていた。汗をかいていなかったはずの私の顎から、一つの雫が落ちようとした。
「わっ」
という驚きの声は、私が彼の指を口に含んだからだろうか。それとも、私に押し倒されたからだろうか。
彼の指を咥えたままその腰の上に跨った私の耳には、ジーワジーワという蝉の声以外聞こえなかった。藪は彼の形に倒れ、剥き出しの私の幼い腕と足に、葉がチクチクと触れている。私は汗を浮かべつつ、彼の指を吸っていた。子供の背丈には草薮は高く、座りこんでしまえば、私たちはスッポリと隠れてしまった。
彼の上に、私の麦わら帽子の影が降りている。
チュパ、ちゅる……
「く、くすぐったいよ夕希ちゃん」
ちゅっ、ちゅくちゅく
「も、もういいよ。なんかムズムズするから……夕希ちゃんが血が怖くないって言うのはわかったから……ぅう……」
私は腰の下で、小さいながらも硬くなった。何かシコリのようなものを感じて、それをお尻でグリグリと虐めてやった。
「ゆ、夕希ちゃん! ダメだよ。なんか、ぼく恥ずかしい。何か分からないけど恥ずかしい」
私は逃げていこうとする指を両手で捕まえ、身をよじる彼の腰を両足でしっかりと挟んでいた。私はこの本能を、衝動をもう押さえつけておくことができなくなっていた。
頭からは、お母さまの教育も抜け落ちていた。
「なぁ、私ともっと気持ちいことをしないか?」
彼の指を咥えたまま、情欲に頬を火照らせた私は、若干の怯えを含んだ彼の瞳を見下ろして言った。
「気持ちいいこと?」
幼い彼に、私の言っていることがわかるわけがない。私もまだお母さまからちゃんと最後まで習ったわけではないけれども、この本能に従っていけば、上手くやれないことはないと、もはやグズグズになった頭で感じていた。
「こういうことだ」
私は彼の唇を奪った。初めての粘膜を絡ませる感触に、彼は目を白黒とさせて驚いていた。私は彼の舌に舌を絡ませ、彼の唾液をいただき、おかえしも飲ませてやった。私はもう歯止めが効かなくなっていた。
「ゆ、夕希ちゃんの唾飲んじゃった……」
ビックリした顔をしている彼に構わず、私は彼のズボンを片手で降ろしていった。
「な、なんで脱がすの!?」
「こうしないと気持ちいいことができないからだ」
ずり下ろしたパンツの中から出てきた彼の幼いペニスは、小さいながらも硬く勃起していて、私はそれを捕まえた。
「夕希ちゃんダメ。それはおちんちんで、ぼくの大事な……ぅう!」
私は彼の抗議の声を聞き流して、それをやわやわと揉みしだいてやる。
「な、なにこれ。変な感じがする。夕希ちゃんにおちんちんを触られるたびに、なんか、ぼくのお尻のあたりがムズムズする」
「それが気持ちが良いってことだ」
私はそう言って左手で彼の竿と玉を弄びつつ、右手で自分のワンピースを、シャツと一緒にまくりあげていく。私が口で服を咥えると、まだ膨らんできてすらいない真っ白な胸が、彼の目にさらされた。乳首はすでに硬くなって、ピンと立っていたが、彼にその意味はわからない。
私はそんな彼を犯すのだと思い、昂った指で自らのパンツをずらしていく。私の未発達の陰部は、それでもシッカリと濡れていた。
私は彼の視線を股間に感じて気をよくする。が、
「夕希ちゃん、ぼくの上でお漏らししないでよ〜」
彼はそんなことを言う。だが、気恥ずかしそうな顔をしているということは、本当のお漏らしでないことをなんとなく感じてはいるのだと思う。
「お漏らしじゃない。お前のおちんちんを挿れるために、濡れてるんだ」
「どう違うのさ」
「えっと、それは……」
私には説明はできなかったから(まだお母さまから習ってはいなかった)、
「もう、気持ちよくなってしまえばいいんだ!」
「え、ちょっと、夕希ちゃん、何を……う、うわぁあああ!」
私は乱暴に彼のペニスを掴むと、自分の股の中に咥えこんだ。
彼のペニスはまだ奥に届くような大きさではなかったが、自らの中に入っていきた男性の熱から、幼いながらも猛々しいものを感じた。私は本能のままに彼のペニスを膣で締めつける。
「うわぁ! うわぁ! 夕希ちゃんのお股にぼくのおちんちんが食べられちゃったぁ!」
混乱のあまりに叫び続ける彼をよそに、私は彼を力づくでぎゅうぎゅうと締めつけ、腰を振る。
「や、やめて! 夕希ちゃんのツブツブで、ぼくのおちんちんを虐めないで。なんか、すごい、すごくムズムズしてる。怖い、怖いよぉ!」
初めて感じる圧倒的な快楽に、彼は泣き出してしまった。
私の頭は彼を征服する歓びに支配されていて、それは私を悦ばせるスパイスにしかならなかった。私は幼い腰をぐいんぐいんとくねらせて、彼から精を搾り取ろうとしていた。
「ごめんなさい。ぼくが夕希ちゃんを怒らせたから。謝るからもうやめてよぉ……」
しゃくりあげる彼に、私はもっと意地悪をしたくなってきた。だから一度腰を動かすのをやめて、両手で彼の頬をつかんでやった。涙に滲んでいる彼の瞳には、幼いながらも、金髪ツインテール赤目の、吸血鬼の情欲に歪んだ顔が映り込んでいる。私はその顔の頬をニィ、と吊り上げてやる。小さくとも凶悪な犬歯が覗く。
「ねぇ、どうして私が血を舐めないようにしていたかわかるか?」
「わ、わかんないよう」彼の声には嗚咽が混じっている。私は彼と胸を合わせ、その耳元に口を寄せる。
「私はな。お化けなんだ」
「お、化け……」
「そうだ。吸血鬼って聞いたことないか?」
私の下で彼の体が小さく震えるのを感じた。
「知ってるんだな。そうだ。私たちは血を吸う」カチカチと彼の歯が鳴っている。「だが安心しろ。殺したりもしないし、私が血を吸っても、お前が吸血鬼になったりはしない」
彼が身をよじって私の肩に手を当てた。だが、ビクともしない私の体に、やはり身を竦ませる。
「私たちが本当に欲しいご飯は、お前のおちんちんから出るんだ」
「おちんちんから……」
「そうだ。気持ちよくなると白い精液(ご飯)がびゅうびゅう出る。私たちはそれを上の口か、下の口から食べるんだ」
彼は顔を動かして、自分のペニスが入っているだろう、私の股を見ようとしたらしい。
「ぼくのおちんちん、夕希ちゃんの下の口に入ってるの!? やめて、食べないで。……わぁあ!」
私が彼のペニスを締め上げると、彼は暴れつつも、嬌声を上げた。官能の響きを含んだ喘ぎに
私は彼をギュッと抱きしめる。
「大丈夫だ。私が食べるのは出てきた白いものだけだ」私は幼い体同士を擦り付ける。「だが、もしもお前が私にこうされたことを誰かに言ったり、こうしたことを別の女にしたら、どうなるかはわからないがな」
「しないしない! しないよう! 誰にも言わないし、誰ともしない。だからぼくのおちんちんを食べないで!」
彼の懇願に、
「わかった約束だぞ」
そう言って私は彼の首筋に牙を立てた。
「うわぁああああ!」
彼は叫び声をあげて私にしがみついてきて、彼のから抱きしめられたことで、私の体は一気に絶頂に向かって押し上げられていった。私はいっそう腰を彼に擦りつけ、彼の血を吸い、彼の体を抱きしめる。口の中に広がる彼の血液の味は熱く甘く、私は脳みそに直接電流を流したような快感を覚え、それは膣内を擦り上げられる快楽と絡み合い、螺旋を描いて私を絶頂に導いた。
「あっ……あ、イクぅうううう〜!」
私はだらしない叫び声をあげ、体全体をビクビクと震わせた。そうして彼の精液を子宮で受け止め……、られなかった。
ドン、と私は彼に突き飛ばされた。
初めての絶頂の余韻に浸っていた私から、ポロンと彼のペニスが抜け、彼は彼はおちんちんを出したまま、そのまま逃げていってしまった。精液を受け取ることもできず、腰に力が入らない私は、彼の後ろ姿を阿呆のように眺めているだけだった。
ジーワジーワと、蝉の声が、私の耳に再び聞こえてきたが、それは虚しいものだった……。
その時の私は、まだ彼が入っているような股の後味を撫でさすりつつ、自分の別荘に戻ることにした。その帰り道で、だんだんと、私は彼に対してとんでもないことをしてしまったのだという気持ちが湧いてきた。肌を刺すような日差しが、私を責めているように思えた。
サンダルの裏から返ってくる大小様々な砂利の感触が、いやに過敏に伝わってきて、いつしか甘かったはずの性交の余韻が、とても苦いものに変わってきた。館の門を抜け、玄関の大きな扉を開ける。
「あら、今日は早かったわね……。あれ、あなた……」
鼻をヒクつかせるお母さまから逃げるように私は階段を駆け上がると、自分の部屋の鍵をかけ、布団にくるまってガタガタと震えた。私は彼にひどいことをしたのだ。私は彼を傷つけてしまった。
私の目からは次から次へと大きな涙がボロボロと溢れてきて……、その日以降、私が彼と会うことはなかった。そうして夏が終わって、私はその別荘を後にした。
今考えると、彼はまだ精通をしていなかったのだろう。
射精という終わりもなく、ただ感じたことのない感覚を味あわせられる。それは幼い彼にとって、どうしようもない恐怖だったに違いない。私が成長するにつれ、その背負った十字架も一緒に成長していくようだった。
私は彼に会って謝りたい。謝って、彼が望むのなら、ヴァンパイアのプライドなんて捨て去って、彼の奴隷になったっていい。肉便器として使い捨てられてもいい。私はそれほどまでに後悔していた。でも、その後にその田舎の別荘を訪れても、私が彼に会えたことは、もう二度となかった。
現在に至るまで、家の力を尽くして探させているのだが、彼の行方は依然としてしれない……。
それが、私が風紀委員として(主に男子の)服装チェックをしている理由だった。新入生が即魔物娘の先輩、もしくは同級生に食われないように、刺激の少ない服装にするように注意する。私は今日も罪滅ぼしにせいを出す。
そうして、次に校門をくぐってきた新入生らしい男子生徒を見る。
うむ。キチンとした刺激の少ない服装でけっこうだ、と私が頷いた時、風が吹いた。一足先に咲いていた一つの桜の花びらが宙を舞い、彼の方から私の方へと飛んできた。それは、一緒に彼の香りを運んできた。
それは、忘れもしない、ずっと、私が探していたものだった。
彼の黒い瞳が私の顔に向けられた。
「夕希ちゃん……?」
声変わりしてすっかり大人びた彼の声が、私の鼓膜を震わせた。彼の姿を見た私は……真っ赤になってそこから逃げ出した。
「ちょっ……! 待ってくれ!」
後ろから彼が追いかけてくる音が聞こえる。
彼は随分と鍛えているようで、ヴァンパイアの私の足を持っても引き離すことができない。
私は確かに彼を探していたが、こんな風に急に会えるとは思っていなかった。心の準備などできているはずがない。私はどんな顔をして彼に再開すれば良いのかもわからず、ただ必死で足を動かす。
階段を二段飛ばしで駆け上がり(その間、私のスカートは大きくはためくが、淑女の嗜みとして、私は決して意中の男性以外には下着が見えないような歩法をマスターしている)、風紀委員の私が血相を変えて走る姿に驚く生徒たちの視線を感じつつ、とうとう屋上にたどり着いた。
そこで声をかけてくるものがいた。
「どうしたのよ。偽りの処女組合員」
屋上には先客がいた。コブラを象った椅子に座って日光浴をしているファラオ(親友)だった。
朝は施錠されているはずの屋上の鍵がなぜ空いているのか、お前ホームルームサボるつもりだっただろう、というか、間違ってはいないが風紀委員をそんな風に呼ぶな、さらに、私を偽りのとか言うな、誰かに聞かれていたらどうしてくれるんだ、という言葉を荒い息とともに私は飲み込んで、彼女に匿ってもらおうと口を開く。
「だから待てって言っただろ。相変わらず足速いな夕希ちゃん。でも、やっと追いついた」
すでに彼が後ろにいた。
私はビクリと体を竦ませた。私の後ろから彼の荒い息遣いが聞こえてくる。幼い夏の日、私が押し倒して無理やり過ちを犯してしまった彼。会いたくて、謝りたくて、たまらなかった彼。そして、私を好きにして欲しかった彼。
私はもう破裂しそうな鼓動の上に手を当てて、ただジッとしていた。春の日差しが、私の白い肌の上に降りかかってくる。それはとても穏やかなもので、だと言うのに私の鼓動だけが焼けつくように速い。
そんな私を、ファラオは彼と見比べると、訳知り顔で頷いて立ち上がり、私に軽くファラオパンチをしてきた。彼女は私に何かを手渡してきていた。それは、ボ●ギノールだった。
「武士の情けよ」美しい笑顔と、卑猥な拳の形だった。
「余計なお世話だぁあああ!」
私は思わずボラ●ノールを屋上の床に叩きつけていた。確かに彼はまだインキュバスじゃないからヴァンパイアとしてはそうだろうけど! しかもお前武士じゃないだろう! ファラオ(王)でしょ! と、思わず口を尖らせてツッコもう、と彼女を追いかけて振り向けば、彼女は彼の胸にドンとファラオパンチをすると、
「頑張りなさい」
と、サムズアップをしながら去っていった。
なぜ、そんないいポジションに彼女がいるのかわからない。
私が愕然としていると、彼が口を開いた。
「えっと……夕希ちゃん……だよな?」
「…………そうだ。お前は豊だ」
彼の名の響きは、とても苦いものだった。
「ああ。よかった。ちゃんと覚えていてくれたんだ」
彼はホッとしたような、気恥ずかしいような笑顔を浮かべた。幼い自分を襲った相手に向かって、よくもそんな顔をできたものだ。私は頬を染めつつ目を背ける。
「……忘れるわけがない。あんなことをしたのだから……」
彼が身じろぎをするのを感じた。あの時、私の下でも、彼は身じろぎをしていた。
「そうだな……あんなことをされた……」
その声の遠い響きに、私は責められているように感じた。しかし、次に彼の口から出てきた言葉は、信じられないものだった。
「でも、それは仕方のなかったことなんだろ? 夕希ちゃんはヴァンパイアで、魔物娘だった」
私は思わず彼の目を見ていた。
「なぜ知ってる……?」
「君のお母さんから聞いた」
「お母さまから?」
「ああ。今まで僕は君のお母さんから魔物娘についていろんなことを教えられて……それでようやく許しをもらって君の前に現れた。僕は今まで別の県にある君の家の一つに、家族で暮らしていた。お義母さんは、僕が君に襲われたことを知っていた」
あのババァあああ!
私は心の中で声の限りに叫んだ。
「僕は魔力のこもった食事を食べ続けて、インキュバスになった」
よし、●っ殺してやる!
私は心の中で固く決意をした。
いや、しかし。
インキュバスになったと言うことは……。
私は彼の顔を恐る恐る、期待のこもった目で見た。しかし、と私は思う。
「まだお前は人間だ」
私の言葉に彼はポリポリと頬をかく。
「ああ。まだ最後の一押しが残っているらしい」
「最後の一押し……」
「ああ。夕希ちゃんを抱け、ってさ」
その言葉に、私は雷に打たれたような衝撃を受け、内臓の全てがドロドロのマグマになってしまったようなとてつもない疼きを覚えた。
彼が、私を抱く?
ショタでなく、こんな風に成長した彼が……。
私はきゅうきゅうと疼く子宮を感じながら、彼の瞳を見つめていた。
日に焼けた肌に、まだ幼さの残る少年の顔立ちは、あの時の面影を残していて、お母さまがやらせたのだろう、彼の体は適度に引き締まっていて、それは動くための筋肉だった。もしかすると、お父さまと戦えるくらいには鍛えられているかもしれない。
あの体が、私を抱く……。
そう考えただけで、私はすぐにイってしまいそうだった。
「で、でも……いいのか? 私はお前を無理やり……」
私の言葉に、彼は静かに首を振る。
「いいよ。確かに怖かったけれども、今ではもっと楽しまないともったいなかったかな、と思ってる」
「そ、そうか……」私はそんな彼の言葉に、空恐ろしさと、期待を覚えた。
「でも、夕希ちゃんが言うなら、そうだな。ちゃんと責任とってもらわないとね」
「セキ……ニン」
私はその甘美な響きにゴクリと唾を飲みこむ。
「ああ。お義母さんからも、好きにしていいと言われている」
グッジョブ。お母さま。悠久に長生きしてください。
私は心の中でそう呟いた。
そうして彼は私の手を取る。
彼の力強い手が触れている肌が、焼け落ちてしまいそうなほどに熱かった。
彼の瞳の中には私の顔が写っていた。
ポニーテールにした金髪で、透き通るような白い肌をバラ色に染め、艶やかな唇を歪めた、その鋭く赤い瞳を情欲の期待に蕩けさせている女の顔。手を掴む牡に、ここで組み伏せられたいと懇願する牝の顔だった。
「まさか、ここで……?」
「嫌? 大丈夫。魔術で鍵はかけた」
「…………」
お母さま、どこまで私を尊敬させるのですか。
「もし嫌と言われても、これは君にされたことへのお仕置きだから、僕はやめないよ」
そう言って彼は私の口をふさいだ。あの時とは違って彼の方から求めてきた。私の弱いところを執拗に攻めてきて、私はもう、このキスだけで、溶けてしまいそうだった。
口を離した彼に私は言う。
「はい、私をお仕置きしてください、ご主人さま……」
ヴァンパイアの私だが、もはやプライドなどなかった。
彼の手が私のシャツのボタンを外していく。
紫のレース付きブラが、彼の前にさらされる。マジマジとした彼の視線を痛いほど感じた。今日はまだ悪くない下着をつけていてよかった。と、私は思う。
「大きいな……」感動するような彼の声。
「アッ……」
彼の手が私の乳房に伸びてきて、左右を包み込むようにしてもみしだてきた。
「ウッ……ン……ぁあっ」
私は自らの指を噛んで、吐息をこらえていた。彼の指が引っ掻くようにブラをずらし、白い双丘の上には、すでに硬くなった桜色の蕾があった。
「すごいな。ぷっくりと膨らんでいる」
「言わないでくれ……ンアぁッ!」
そう言った私の乳首を、彼の指がつまみあげた。その鋭すぎる快楽に上がった声を、私は両手で口をふさいで止める。私はか細く首を振って、刺激を弱めてくれるように彼に目で懇願するが、彼は私の乳首を容赦なく弄んでいた。
「……ン、ふ」
根元を摘み、「やぁッ」上下にしごいて「ン、ぐ、……ふ、ン」先っぽをグリグリと押しつぶしてくる「ン”ン”〜〜〜〜〜〜!」
私は抑えた手にヨダレがつくのを感じながら、肩で荒く息をしていた。
「すごいな、感じやすいんだ」
「だって、お前に触られているから……ンッ……」
彼は私のおっぱいを揉むことをやめない。丹念に指を沈み込ませつつ、揉みしだく。彼はおっぱいが好きなのだろうか。あの時とは比べ物にならないほど大きくなった胸を私は自慢に思う。
しかし、ふと彼は私のおっぱいから手を離した。「あ……」私は離れてしまった彼の指の感触を寂しく思ってしまう。
彼は私の目を見て言う。そこには蕩けかけた女の顔が写っていた。
「ご主人さまに向かってお前呼ばわりはよくないな」
「す、すまない……」
殊勝な私の態度に、彼はクスリと笑う。そう言えば、そういうことになっていた。彼は私のご主人さま……。そう、心の中で言葉にした途端、私はそれだけで背中に細かな電流が走ったように感じた。私は彼に気づかれないように、薄く震える。
彼は続ける。
「でも、僕は優しいご主人さまになろうと思うから、君のしてほしいことを言ってくれれば、その通りにしてあげるよ。何も望みがなければホームルームに行こうか。風紀委員が遅れたらマズイだろ」
彼は、私の腕章を指差し、腕時計を見せてきた。もう、始業のチャイムがなる時間だった。
そうだ。私は風紀委員で、他の生徒の模範とならないといけない。私がここで風紀を乱していてはいけない。
「どうする? 夕希ちゃんは風紀委員なんだろ。……それとも、夕希は僕の奴隷だとでもいうのかな?」
呼び捨てにされて私は心臓に杭を打たれたように感じた。それは、ご主人さまである彼に打ち込まれてしまったもので、私にはどうしようもできないものだった。彼は、意地悪で、最高のご主人さまだった。
私はスカートの下に手を差し入れ、自分でパンツを下ろす。紫のレースは、すでにぐっしょりと濡れていた。私は抑えようのない劣情とともに、スカートを捲り上げる。彼の前に、私の女の子の部分が丸見えになった。
「私はご主人さまの奴隷だ。ご主人さまに、奴隷の証を刻みつけてほしい……です」
彼はゴクリと唾を飲んだようだった。でも、私はまだお預けされたままだった。
「具体的にどうして欲しいか言ってみてよ」
「う……ぅう……鬼畜ぅ……」
私は彼に陰部をさらしたままそう言うが、心はもうトキメキっぱなしだった。やっと私は彼と結ばれる。私が傷つけてしまった彼が、こうして私を好きにしてくれる。私に、罰を与えてくれる。
だから、私は一言一句を噛みしめるようにして言う。
「ご主人さまのおチンポを私のおまんこに突き刺してください。自分の欲望のままにご主人さまを傷つけた悪いヴァンパイアを、ご主人さまのたくましい肉杭で、退治してください」
もはや我慢のできなくなっていた私は、片手でスカートを持ち上げつつ、もう片方の手で、女陰を押し開いていた。あふれ続ける私の蜜が、すでに屋上の床にシミを作っていた。
「よくできました」
そう言ってご主人さまは嗜虐的な笑みを浮かべた。いいや、嗜虐的な笑みを浮かべようとして、それはぎこちなかった。彼は私の痴態に頬を染め、その目は私の股に釘付けだった。
ズボンの中で、彼の肉棒はすでにその形がわかるほどにパンパンに膨らんで、これ以上焦らされると私の方が耐えきれなくなりそうだった。
彼がズボンを下ろすと、成長した彼の肉棒があらわになった。
あの時とは違って大きくたくまし過ぎるほどに成長したそれは、ビクビクと血管が浮き、とてもグロテスクだった。ああ、あのカリでこすられたら気持ちがいいだろうな、と思っていた私の入り口に彼が触れる。
ぷっくりと膨らんだ亀頭に私の下の唇が触れて、今度は私が食べられるのだと思って、私はどうしようもなくゾクゾクとする。
彼は一気に、私を貫いた。
「うぁ、あああああ!」
あられもない嬌声を上げ、思わず彼にしがみつき首を反らした私の首筋に、彼の歯が立った。
「うう、ギ……。うぁ、……あ……は、ぁあッ!」
私は全身をガクガクと震わせ、そうして、彼のマグマのような白濁が注ぎ込まれるのを感じた。
「ごめん、我慢できなかった。でも、大丈夫?」
あまりの私の感じ方に、彼は私の身を案じてくれた。
「だ、大丈夫だ。でも、この、痛みは……」
「痛かった?」
「いや、もう痛くはない。もう今は気持ちいいだけで……」
と、私は自分の股にぬるりとした感触を覚えた。まさか、と思って触れてみると、それは血だった。
「え……?」
それに私は呆然となる。まさか私はまだ処女だった……? あ、もしかして……あの時の彼のペニスはまだ小さすぎて、届いていなかった……?
私がそれに小さくない感動を覚えていると、私の中の大きな彼の肉杭を強く感じた。私はそれを締めつけているようだった。さざ波のように体に広がってくる快感に、私は彼の耳元でささやく。
「ご主人さま、私は大丈夫だから。もっと、もっと私に罰を。私にお仕置きをしてくれ」
「わかったよ」
「ヒャンッ!」
そう言って彼は私の足を抱え、さらに深く肉杭を突き刺してきた。彼の精液と私の愛液で滑りの良くなった膣肉は、そのツブツブでかれの肉を愛おしそうに締めつけた。
「これ……感じ覚えてる……」
彼は私の唇を奪い、さらに注挿を速めていく。私のむき出しの白い胸が、彼の学生服の上で潰れる。ザラザラと乳首をこすられる感触が刺激的だ。
「あっ、あっあっあっあっ……、ン、ぅう……」
パンパンと、肉のぶつかる音に、クチュクチュと、淫らな水音が響き、学び舎の屋上に、風紀を乱すシミができていく。私は彼から与えられるお仕置き(ご褒美)を劣情のままに貪り、やがて吐き出された白濁に、獣のような声を上げていた。
「舐めてよ」
私は言われるままに、ご主人さまにお掃除フェラをさせていただく。
私の純潔と、彼の欲望の味が混ざり合った、一度しか味わえない贅沢なカクテルだった。
彼の手が私の髪を撫でる。その優しい撫で方に、私はまだご主人さまから罰をいただききっていない、と思う。彼が私のご主人さまになるには、私が彼を育てなくてはいけない。
そんなことを思いつつ、私は彼の肉棒の弱いところを見つけては責め立てていく。
ふと、頭上から声が降りてきた。
「順番が逆になってしまったけど……」
バツの悪そうな彼の声。私は彼を口に頬張ったまま上目遣いで彼を見る。彼の肉棒が膨らんだ気がした。
「久しぶり。また会えて嬉しい。僕と結婚を前提に付き合ってくれないか?」
彼はそう言った。私は目を見開き、嬉しさのあまりその返答として、私は彼の肉棒を思いっきり吸い上げてやる。
彼は押し殺した悲鳴を上げて、私の口内に熱いものを容赦なく吐き出してきた。それを舌で転がし飲み干してから私は言う。
「そうじゃないだろ。……これからよろしく。私のご主人さま」
「ああ」
彼は微笑みながらそう答えた。その顔は、春の日差しよりも暖かだった。
17/11/01 14:30更新 / ルピナス