ゲイザーちゃんのいる日常
僕の妻はゲイザーです。
名前はひとみ。高校の時の美術部の先輩で、僕らの馴れ初めは彼女の暗示だった。
人間社会でその正体を隠して暮らしている魔物娘。彼女はその一人。でも、本当の姿は一つ目で、ゼリー状の黒い物体で体の大事なところを隠す、異形の姿だ。当時、自分の容姿に自信の持てなかった彼女は、僕を籠絡するために暗示を使った。
最後に全てを思い出したけれども、僕の知らないところで彼女は僕に暗示をかけて、僕とsexしていた。別に彼女を恨んだりなんて事はない。僕ももともと彼女が好きだった。結局、僕に彼女を忘れさせる暗示をかけて消え去ろうとしていたみたいだけれど、僕はそれを許さず、彼女と心を通わせる事が出来た。
あの時の僕、グッジョブ、と今でも思う。
彼女のいない生活なんて、考えられない。
今日は、彼女との1日を紹介したいと思う。
可愛い可愛い僕の最愛の妻。
「おい、何を口走ってるんだよ。あ、あたしが可愛いとか……最愛……とか。そう言うのはちゃんと、面と向かって言ってくれないと……」
「ごめんごめん」
拗ねたように口を尖らせる彼女に僕は真正面から顔を近づける。
外では人間の姿を取っているけれど、家の中では僕の大好きな一つ目の本当の姿を見せていてくれている。
彼女の顔の半分もあるだろう、その真っ赤で大きな目には僕の顔が映っている。
「は、早く……言えよ」
「…………好きだよ」
「ハゥ……ッ」と身を悶えさせて、瞳と同じような色に頬を染めて、目をそらそうとする彼女の頭を僕はガッシと掴む。そしてジーッと見つめてみる。
「…………(モジモジ)。ぅ〜、…………。ちょっ、ちょっと長いって。だから、お前に見つめられるのは嫌いじゃないけど、あたしの顔、と言うか目ばっかり見つめていたって、面白くないだろ?」
ジーッ、と無言。
「だ、だからぁ、か、かっこいい? (顔更に真っ赤)お前の顔を近くで見ていられるのは良いけれど? そうやって見つめられ続けていると、なんと言うか? 顔の火照りが止まらないと言うか? ……ヨシ、後、さ、三秒数えたらこの手を振りほどくぞ? そんな悲しそうな顔をしたってダメだ。じゃ、じゃあ暗示をかけてやる。私の頭から手を離せって、本当だぞ? 本当の本当に。あ、謝ったって許してやらないし」
「もう三秒たったよ」
「う、うるさい馬鹿ァ」
「可愛いひとみの顔はずっと見ていたって足りないくらいだよ。その大きな目はまるで湖に映った夕日のようで、どんな宝石だって、本物の夕日だってかないっこない。僕はそんなに綺麗で可愛い赤とか、目だとか君以外に見た事がない」
「…………(プツン)あ、あああああ! 聞こえなーい。聞こえませーん。私の顔を至近距離で可愛いなんて言ってくるバカな奴の声なんて聞こえませーん」
「可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い」
聞こえないらしいから、可愛いがゲシュタルト崩壊を起こすまで言ってやった。。崩壊したところで彼女の可愛さは一ミリも崩壊しない。
あ、そろそろ、目がぐるんぐるんして来た。目が大きいと、そのグルグル具合も迫力があるけれども、可愛さだって三倍じゃあ効かない。
と、僕が観察を続けていれば、彼女はショートしたようで、勝手に目を回して顔も真っ赤っかだった。
「きゅう」なんて可愛らしく彼女は僕に倒れ込んでくる。僕は彼女を抱き上げて、ソファーへと運ぶ。「こ、この鬼畜ぅ……」なんてうわ言を言っているのが僕の妻です。
僕の妻はその一つ目のという容姿に強いコンプレックスを抱いていて、僕はそれを克服するために、こうして時折彼女を可愛い責めしてみる。
初めは本当にリハビリのつもりだったけど、最近じゃ僕は楽しくなってしまった。
そのリハビリの甲斐あって、彼女のコンプレックス自体は最近は克服されつつあるけれども、可愛い責めに対する耐性はドンドン下がってきている気がする。どうしてだろう? 繰り返せばむしろ耐性は上がるはずなのに。
「お前の腕が上がってんだよ……。初めは目を見て可愛いっていうだけだったくせに、今はいろんな言葉を取り入れて、私の目線を先読みして、色んな手を使って来るじゃないか……」
ようやく起き上がった彼女は頬を染めて恨みがましい目で僕を見る。
僕はその目にゾクゾクしてしまう。
僕にこの気持ちを覚えさせた彼女にも責任の所在は求めたい。二人の共同作業で僕らの性癖は作られた。
「準備は出来てる?」僕は彼女に尋ねる。
「出来てたのに、お前のせいで台無しだよ……。下着を変えなくちゃいけない。せっかく可愛いのをはいたのに」
「それは僕ため?」
「…………言わせるなよ。私は言わないぞ」
「あはは。それは申し訳ないけど、僕は君のことを可愛いと言ってただけだ。勝手に感じたのはひとみの方だよ」
「ばかぁ……。昨日のベッドと同じ文句を言われたら思い出すに決まってる」
それは悪い事をした。彼女はいそいそと洗面台に向かって、履き替えてきた。
彼女は花柄のシャツにオーバーオールと言う服装。帽子を目深に被っている。その目は二つ。僕としては一つ目の姿の彼女とデートをしたいのだけど、魔物娘なんて存在がいるのだと知られたら大騒ぎになってしまう。
それに、僕はむしろ好きだけれども、彼女の本当の姿はやっぱり一般人には刺激が強いだろう。
僕はカラメルに混じった一粒の焦げのような苦々しさを感じながら、彼女の手を取る。柔らかくて、容易く手折れそうな感触。
◆
彼女は水槽に噛り付いている。
二つの目をまん丸くさせて、湖畔に反射する朝日のように瞳を輝かせている。彼女が見ているのはラッコ。ちょうど餌の時間だったようで、器用に両手でイカをつかんで食べている。
「可愛いなぁー」なんて言っている彼女方が可愛いと思います。「というか、美味そうだな」
「ラッコが!?」
「ンなわけねーだろ! あのイカとかアワビとか、」
ラッコはグルメだ。彼らの主食はイカや貝、ウニといった高級食材。彼らのよる食害で漁師さんは困っているなんって話も聞いたことがある。と、僕がジッと彼女が見ていると、どうしてだか彼女は顔を真っ赤にして俯いていた。
「どうしたの?」
「い、いや。他意はないんだ」
「?」意味が分からず僕が首を傾げていると、彼女は更に顔を真っ赤にさせてギザっ歯を見せつつ、手をワタワタとやりだす。
「だ、だから何でもないって。そ、そんな事は良いからラッコ見よーぜ」
どうしたのだろう。そうして僕も彼女と一緒にラッコに目を戻す。美味しそうにイカを食べている。イカ……、アワビ……。ははぁん、と僕は気がつく。彼女の耳元に口を寄せる。
「そんなに欲しかったら僕のイカを食べさせてあげるけど、瞳のアワビも食べさせて欲しいな」
殴られた。彼女の顔は真っ赤で肩で息をしている。
「お前なんて知らねーよ。……ばーか」
彼女はプリプリと僕に顔が見えないようにラッコの方に顔を向ける。でも、僕を置いて何処かに行ってなんてしまわない。僕は微笑みながら彼女の帽子に手を乗せる。
「何だよ」期待のこもった声。
「可愛いね」
彼女は帽子を抑えて俯いてしまう。おやおや、そんな事をするとラッコなんて見えないだろうに。と、思う僕だって、周りの舌打ちや壁を殴る音なんてものは聞こえない。
彼女はラッコを堪能して、僕は彼女も堪能して、水族館を巡る。
水槽のトンネルに、青空を行き交う飛行機のような魚の群れが飛ぶ。悠々と泳いでいく亀は、瞳がつぶらだ。僕の隣で目を輝かせている彼女の瞳もつぶらだ。ふれあいコーナーでナマコを触ったら、潮を吹かれた。顔をしかめる僕に、彼女は笑う。
「お前だって可愛いじゃねーか。うひゃあ!」
彼女の方がより多くの水を被った。
「水も滴るいい女、ってね」
「ばーか、当たり前だろ?」
と、彼女は胸を張って返す。少しだけ頬が赤いが、彼女なりのささやかな抵抗らしい。そうした様子も、
「可愛いな」
「べべ、バッ……!」
やはりこのワードはよく効くらしい。僕のリハビリワークはもしかしたら調教だったのかもしれない。
「いやいや、慣れない言葉を無理して使おうとしている所なんて、僕の心のスケッチブックに一瞬で100枚は描かれたね。でも、君の可愛さをちゃんと描ききれた自信なんてない」
「フー……ッ」
威嚇された。やり過ぎたらしい。
「そんな事をこんな所で臆面もなく言うんじゃねぇよ……ばかぁ……」
そう言えば、再び舌打ちなり何なりが聞こえている気がする。彼女にはキチンと届いていようだ。いけないな。僕はこんなに人の目を気にしないタチじゃなかったはずだけど……。だから彼女の事を可愛い責めしつつも、度を超えたボディタッチは控えている。
それなのに僕は彼女に夢中で、ついつい。恐るべし、ゲイザーの魅力、いや、ひとみの魅力、かな。
「だからぁ……声に出さなくても唇が動いてるんだよぉ……」
どうやら彼女は読唇術を使えたらしい。と、
「……ぁ、」なんて言って彼女は顔を真っ赤にさせていた。
「どうかした?」
「ぅー……」彼女はモジモジしている。「このぉ、変態……馬鹿男ぉ……」
「あ、もしかして濡れ……」バシィ、と強めに肩パンされた。「パンツ買……」ガブリ、と噛み付かれた。キザギザの歯が、甘く痺れた痛みを伝えてくる。
彼女は僕に頭を下げるように、チョイチョイと手招きをする。言われた通りにすると、彼女は僕の耳元でボショボショと、
「オムツ履いてきたから大丈夫……」と言った。
「……………………」
さて、ちょっとご同行願おうか。
僕は彼女の手を有無を言わさずに引いていく。
「お、おい。どうしたんだよ。突然、チカラ強いし、それに、目が、コワイデスヨ?」
それは君が悪い。しかし、僕の意図に気づいている彼女は、しっかりと手を握り返してくれていた。
◆
さて……。
僕らはトイレの個室にいた。運良く、というか彼女の暗示の力を借りた、というか。トイレの個室に入るまでの道を開けてもらった。僕らを見咎める者は誰もいなかった。でも、トイレ自体に人避けをしているわけじゃないから、この個室の外には知らない男の人たちが用を足すために出入りしている。
最近はベビーシート付きの大きめの個室もあったりして、丁度いい。
彼女を座らせてみたいという好奇心もあるが、流石にそれは壊れてしまうので、やりはしない。
「ぅー、」この光景だけで十分過ぎる。彼女はオーバーオールの留め具を外して下に下ろすと、確かにオムツをはいていた。白くてホッソリとした太ももを擦り合わせてモジモジとしている。
僕の行動を予測していた彼女はその対策としてオムツをはいたようだった。だからオーバーオールなんてものを着ていたのか。確かにスカートで誰かに見られたら大変だしーーもしかすると僕にお尻を触られて気がつかれるかもしれない。僕は人前でそんな事をするつもりはないけれど、電車の中でコッソリとかはやりかねない。デニムだったら、線が浮いてしまうかもしれない。
「ひ、秘密にしとくつもりだったのに……」
「でも、期待してたんじゃないないの?」
「馬鹿ッ、そ、そんな事あるわけッ」「シーっ、声を大きくすると誰かに気がつかれるかもしれない」
「……そんな事あるわけない(ポショポショ)」
「そっか。無いんだ」
僕はあからさまに肩を落としてみる。その姿に彼女は慌てて、
「い、いや。帰りのホテルでお披露目するつもりだったんだ。ウン」
「変態さんだ」「ぅ、……ぅうう。狡いよぉ……」
「でも可愛い」
「ぅー……この鬼畜夫……」
彼女は大きな一つ目をフルフルと震わせている。ここなら誰の目も気にする必要はない。彼女は僕の大好きな元の姿に戻ってくれている。彼女の元の姿。それは顔いっぱいの真っ赤な大きな一つ目で、何本もの、先に目がある触手がついた姿。だから、むしろ衆人環視よりも視線を感じる。
彼女の大きな瞳には羞恥に滲んでいる。でも、それだけのわけがない。色白の頬は桜色に染まって、劣情の期待に火照っている。
「は、早く……」
「早く、何?」
僕は小さな声で、問いかける。意地悪な笑みを浮かべて。彼女は僕の意図を分かっている。
「……お、オムツ脱がして、綺麗にして。ください」
「了解」
僕は彼女のオムツに顔を近づけて、それを下ろしてやる。
むわっ、と。牝の匂いがした。
「こんなにお漏らしして、この子はだらしがないなぁ」「ぅ、五月蝿いィ……ヒグッ」
彼女は漏らした吐息を、指を咥えて噛み殺す。僕は、彼女の割れ目に舌を這わせていた。
「もしかして、本当におしっこも漏らしてた?」
「そ、それは今の刺激で……ゥ、ちょっと」「正直でよろしい」「……ばか」
僕は、牝の匂いに口づけをする。彼女の割れ目をなぞって、指で押し広げてみる。
「でもすごい濡れてるね。これは、さっきの可愛いのせいだけじゃないよね。このトイレに来てからだ。こうされる事を期待されてたんでしょ」
「そ、そうだよ。だから、焦らさない……でッ」
恥ずかしがっていても彼女は性に貪欲だ。自分から腰を前に出して僕の舌を求めてくる。だけど僕はその奥に舌を差し入れる事はせずに、表面だけで焦らしてやる。
モジモジと、もどかしい刺激に業を煮やした彼女は僕の頭を掴むと自分の秘裂へと押し付ける。僕は一気に彼女の肉筒へ舌を入れた。酸っぱくて苦い、おしっこ混じりの彼女の蜜。目線を上げると、両手を僕に使っている彼女は唇を噛んで声を押し殺している。
その艶と不安の混じる大きな瞳に、僕は夢中だ。
「ゥ……ッ、く、ン」溢れてくる彼女の蜜と、漏れてくる喘ぎを、僕は堪能する。
しばらくして、彼女は僕の顔をより一層股に押し付けると、体を小刻みに震わせた。声を飲み込んだせいで、その快感は普段よりも芯を震わせたらしい。彼女の体からは力が抜けて、壁にもたれかかる。でも、その触手たちはむしろ爛々と目を光らせて僕たちを見ている。
彼女はヨダレを垂らしながら、「この、変態……」と言う。荒い息のせいで、彼女のギザっ歯が覗いている。
「変態って、君が高校生の時に、僕にこれでもかって教えてくれたんじゃないか。だから君は興奮してしまった僕を、責任を持って鎮めなくちゃいけない」
「鎮めない、と……」
「それに、奥さんのつとめでもあるんじゃないかな。僕は今、夫のつとめをちゃんと果たした」
「そ、そうだな……。こ、これは私がやらなくちゃいけない事……ヤりたい事」
彼女は快楽で虚ろになった瞳を僕に近づけると、唇を重ねて来た。彼女の舌が侵入してくる。僕はノックもない無作法な彼女を、快く受け入れる。僕たちの舌は絡み合う。
「お前は私のアワビを食べたんだから、私はお前のイカを食べていいんだ……」
「召し上がれ」「…………ばぁーか」
彼女は僕を押して、便器に座らせる。顔を股間に近づけて、歯で咥えてチャックを下ろす。口だけを器用に使って、僕のペニスを取り出した。
「お、大きい……。私でこんなに興奮してくれてるんだ」
「うん、だから鎮めてくれないかな」
了承として、彼女は僕の竿と玉の境を舌でつついた。これから出てくる精子にノック。こんなところは礼儀正しいらしい。竿の裏を遡っていくヌメッた舌の感触に、今度は僕が声を押し殺す番だった。視線があうと、彼女は悪戯っぽく笑った。彼女の大きな瞳はトロンとしている。
「はン、む……」ワザとらしく声を出して、彼女は僕の亀頭を頬張る。両手は球を揉んで、チューペットでも吸うかのように、彼女は美味しそうな顔をしている。僕は彼女の髪を撫でる。
彼女は目を緩ませて、口の中のカリの裏側を、ギザっ歯で引っ掻くように刺激してくる。閉ざされたトイレの個室に、悩ましい湿気が篭っていく。扉を一枚隔てた外側では、知らない男たちが用を足している。だというのに、僕は、こんな「可愛い」妻に、別の用を足させてもらっている。
僕の可愛いと言う言葉に、彼女は抗議するように注挿を早めていく。頬も、喉も、歯も、舌も、口蓋だって。口を構成している器官の全てを余す事なく使用して、彼女は僕に快感を刻み込んでくる。僕らの痴態を彼女の触手たちは余すところなく見ている。
じゅぷじゅぷと、くぐもった水音。僕は彼女から手を離して口を抑えようとするが、彼女の寂しそうな瞳に、それを許してもらえない。僕は諦めて、むしろ彼女の頭を押し付けて、彼女の喉深くに肉棒を突き立てる。彼女は驚いて背中を仰け反らせたが、僕を受け入れて、強く、キツく吸い上げるーー。
ビュクビュク。彼女の深くに僕の白い欲望が吐き出された。彼女はそれを音を立てて嚥下していっく。最後の一滴まで吸い尽くして、彼女は顔を上げる。一つ目の彼女の、上気した得意そうな顔。口を開ければ僕が彼女を汚した証が舌の上に乗っていて、彼女はよく咀嚼してから、ゴクリと飲み込む。そのエロティックな喉の動きに、僕の喉も鳴る。
「イカ……美味しかった」
唇を舐める彼女は可愛く、妖艶だった。
こんなの、我慢できるわけない。僕は彼女を膝に座らせて、後ろから控えめな胸を揉む。首筋に舌を這わせて、シャツを脱がせて生で乳首を摘(つま)む。彼女は僕の上でビクビクと肩を震わせる。彼女の牝汁に汚れたオムツが、まだその足に引っかかっている。彼女の太ももの間からは、そそり立ったままの僕の肉棒。
「我慢出来ない」
子供のような声は僕の口から。彼女は「可愛いな」なんて言いながら、僕の亀頭の先を撫でる。平静なら君の方が可愛いと返すところだけど、今の僕にはそんな余裕はない。彼女のナカに入れたくて堪らない。
「どうして欲しい?」
これは彼女の仕返しだ。僕はどう答えれば良いのか知っている。
「先輩の中に入れさせてください。お願いします」
「よく出来ました。後輩くんのお願いじゃ、断れねぇ」
彼女は腰を浮かせて、僕を自身のナカへと招き入れる。お互いに声を我慢するので精一杯だった。僕らは肩越しに見つめ合うと、お互いを助けるために互いの唇を塞いでいた。
「動くよ」コクリ、と彼女は頷く。
彼女は声を押し殺す。僕も声を押し殺す。彼女の膣肉はこれでもかと僕の肉棒に絡みついて、一緒になって溶けてしまうのではないかと思った。僕の肉棒が覚えている彼女の弱いところを、ぼくのカリの弱いところで執拗に刺激する。
彼女は悲痛なまでに歯を食いしばって、快楽の波に翻弄されている。きゅうきゅうと締め付けてくる彼女の股からは、僕らが混ざった液が便器に落ちて、淫らな水音を伝えてくる。
「おい、なんか変な音しないか? 水の跳ねる音っていうか……」
外から聞こえた声に、僕らは身を竦ませる。だけど、この快楽を途中で止めることなど出来るはずがない。雪山で互いに身を寄せ合うように、僕らは固く固く肌を重ねて、快楽を貪る。
押し殺した吐息が、お互いの耳にだけはうるさく聞こえる。
「ションベンの音だろ?」
「いやいや、もっとなんかエロっぽいって言うか……」
「つーか、お前さっきのくそバカップルに憤慨して、妄想垂れ流してたからじゃねーのか。あの、帽子にオーバーオールの彼女を連れた」
彼女の膣が一際強くしまった。僕は声を漏らさないように彼女の肩を噛んだ。
「イグッ……」と言う彼女の口に指を突っ込む。彼女に噛まれた痛みすら、官能に変わる。彼女は恨みがましそうに、僕の指を舐めて吸う。
「今、変な音しなかったか?」
「知らねーよ。バカなこと言ってないで、ナンパするぞ。ナンパ。はやくバカップルになりたーい」
「俺がいるじゃないか」
「バカなこと言ってんなよ……」
という男たちの声が遠ざかる。
「い、行ったのかな……」僕は彼女の耳元に囁く。
「イった……。でも、お前はまだイってないよな」
彼女は僕から立ち上がると、壁に手をついてヨダレを垂らす女陰を開いてくる。
「この体勢なら、お前も早くイけるんじゃないか……。ぅアンッ……馬鹿ァ……いきなり挿れる奴がいるかよ……」
彼女は華奢な肩を震わせて全身を貫いた快楽に耐えている。だけど、彼女の触手たちは愛おしそうに僕に絡みついてくる。
「じゃあ、イくぞ」「こ、来い……ッ」
音が大きくならないように僕は彼女に後ろから腰を打ち付ける。少しもどかしいが、そのぶん彼女は巧みに膣をくねらせて、僕を絶頂へと導いてくれる。僕は彼女の乳首を捏ねつつ、容赦なく、劣情の昂りを彼女の奥深くに吐き出すーー。
僕が彼女から引き抜こうとすると、
「待て」と、彼女はカバンから何かを取り出した。
新しいオムツだった。
「こぼすと勿体ねぇから……」
期待のこもった彼女の瞳。僕は微笑んで、
「仰せのままに」
と答えた。
◆
「トイレであんなにしたって言うのに、ディナー後のホテルは外さないんだね」
「ホテルは別腹に決まってるだろ?」
「挿れるところは違うけど?」「馬、っ鹿……」
「君が言い出したんじゃないか」
僕らはシメのホテルに立ち寄って、再びsexにふけっていた。
もちろん、彼女を可愛いと言って調教するのも忘れずに。
僕の下で喘いでいた彼女の瞳を見る。どんな宝石よりも美しく、可愛らしい、魅力に溢れたゲイザーの、妻の瞳。花弁のようにくったりとシーツに投げ出されている触手たちの瞳も可愛らしい。
「今日の結婚記念日デートはどうだった?」
「すごい意地悪だった……」
彼女は恨みがましい目で口を尖らせる。
「すごい恥ずかしかったし……」
「でも、確か前に君がしたいって言ってた事の一つだったとは思うけど?」
「へ、変な事を覚えてるんじゃねぇよ」
彼女は顔を隠そうとするが、僕はそれを許してやらない。
「だって、自分の姿を卑下していた君に、君が可愛いと言う事を教える事が僕の役目だから」
「ぅー、それはもう分かったから……あ、あたしは可愛い。それでいいだろ?」
と、真っ赤な彼女。僕は今日最後の意地悪を口にする。
「じゃあ、もう言わない方がいい?」
彼女はそれに愕然とした表情を浮かべる。これはやり過ぎだったらしい。
「い、言って欲しい……」
「もちろん。言わないのは僕の方が我慢ができない」
「バカぁ……。いつも狡いんだから」彼女は僕に絡みつきながら耳元でそう言う。
だけど、僕にしてみれば狡いのはどちらだと言う話。
「これからもよろしく。僕の可愛い奥さん」
耳元でそう返した僕に、彼女はきつい抱擁で返してくる。
僕はこんな感じで彼女と暮らしている。
彼女の本当の姿で、大手を振ってデートを出来ない事は残念にも思う。だけど、それでもいいと思う僕がいる。
だって、こんな大切な宝石をむき出しで人目に晒すなんて、考えただけでもゾッとする。彼女の一つ目と言う名の宝石は、こうしてコッソリ、僕だけが愛でる事が出来ればそれでいいと思うのだ。だから、僕の妻の紹介はここまで。
僕は宝石箱の蓋を閉める、僕だけのキャンバスのページを閉じる。
今日も僕は彼女をひっそりと愛でている。
名前はひとみ。高校の時の美術部の先輩で、僕らの馴れ初めは彼女の暗示だった。
人間社会でその正体を隠して暮らしている魔物娘。彼女はその一人。でも、本当の姿は一つ目で、ゼリー状の黒い物体で体の大事なところを隠す、異形の姿だ。当時、自分の容姿に自信の持てなかった彼女は、僕を籠絡するために暗示を使った。
最後に全てを思い出したけれども、僕の知らないところで彼女は僕に暗示をかけて、僕とsexしていた。別に彼女を恨んだりなんて事はない。僕ももともと彼女が好きだった。結局、僕に彼女を忘れさせる暗示をかけて消え去ろうとしていたみたいだけれど、僕はそれを許さず、彼女と心を通わせる事が出来た。
あの時の僕、グッジョブ、と今でも思う。
彼女のいない生活なんて、考えられない。
今日は、彼女との1日を紹介したいと思う。
可愛い可愛い僕の最愛の妻。
「おい、何を口走ってるんだよ。あ、あたしが可愛いとか……最愛……とか。そう言うのはちゃんと、面と向かって言ってくれないと……」
「ごめんごめん」
拗ねたように口を尖らせる彼女に僕は真正面から顔を近づける。
外では人間の姿を取っているけれど、家の中では僕の大好きな一つ目の本当の姿を見せていてくれている。
彼女の顔の半分もあるだろう、その真っ赤で大きな目には僕の顔が映っている。
「は、早く……言えよ」
「…………好きだよ」
「ハゥ……ッ」と身を悶えさせて、瞳と同じような色に頬を染めて、目をそらそうとする彼女の頭を僕はガッシと掴む。そしてジーッと見つめてみる。
「…………(モジモジ)。ぅ〜、…………。ちょっ、ちょっと長いって。だから、お前に見つめられるのは嫌いじゃないけど、あたしの顔、と言うか目ばっかり見つめていたって、面白くないだろ?」
ジーッ、と無言。
「だ、だからぁ、か、かっこいい? (顔更に真っ赤)お前の顔を近くで見ていられるのは良いけれど? そうやって見つめられ続けていると、なんと言うか? 顔の火照りが止まらないと言うか? ……ヨシ、後、さ、三秒数えたらこの手を振りほどくぞ? そんな悲しそうな顔をしたってダメだ。じゃ、じゃあ暗示をかけてやる。私の頭から手を離せって、本当だぞ? 本当の本当に。あ、謝ったって許してやらないし」
「もう三秒たったよ」
「う、うるさい馬鹿ァ」
「可愛いひとみの顔はずっと見ていたって足りないくらいだよ。その大きな目はまるで湖に映った夕日のようで、どんな宝石だって、本物の夕日だってかないっこない。僕はそんなに綺麗で可愛い赤とか、目だとか君以外に見た事がない」
「…………(プツン)あ、あああああ! 聞こえなーい。聞こえませーん。私の顔を至近距離で可愛いなんて言ってくるバカな奴の声なんて聞こえませーん」
「可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い、可愛い」
聞こえないらしいから、可愛いがゲシュタルト崩壊を起こすまで言ってやった。。崩壊したところで彼女の可愛さは一ミリも崩壊しない。
あ、そろそろ、目がぐるんぐるんして来た。目が大きいと、そのグルグル具合も迫力があるけれども、可愛さだって三倍じゃあ効かない。
と、僕が観察を続けていれば、彼女はショートしたようで、勝手に目を回して顔も真っ赤っかだった。
「きゅう」なんて可愛らしく彼女は僕に倒れ込んでくる。僕は彼女を抱き上げて、ソファーへと運ぶ。「こ、この鬼畜ぅ……」なんてうわ言を言っているのが僕の妻です。
僕の妻はその一つ目のという容姿に強いコンプレックスを抱いていて、僕はそれを克服するために、こうして時折彼女を可愛い責めしてみる。
初めは本当にリハビリのつもりだったけど、最近じゃ僕は楽しくなってしまった。
そのリハビリの甲斐あって、彼女のコンプレックス自体は最近は克服されつつあるけれども、可愛い責めに対する耐性はドンドン下がってきている気がする。どうしてだろう? 繰り返せばむしろ耐性は上がるはずなのに。
「お前の腕が上がってんだよ……。初めは目を見て可愛いっていうだけだったくせに、今はいろんな言葉を取り入れて、私の目線を先読みして、色んな手を使って来るじゃないか……」
ようやく起き上がった彼女は頬を染めて恨みがましい目で僕を見る。
僕はその目にゾクゾクしてしまう。
僕にこの気持ちを覚えさせた彼女にも責任の所在は求めたい。二人の共同作業で僕らの性癖は作られた。
「準備は出来てる?」僕は彼女に尋ねる。
「出来てたのに、お前のせいで台無しだよ……。下着を変えなくちゃいけない。せっかく可愛いのをはいたのに」
「それは僕ため?」
「…………言わせるなよ。私は言わないぞ」
「あはは。それは申し訳ないけど、僕は君のことを可愛いと言ってただけだ。勝手に感じたのはひとみの方だよ」
「ばかぁ……。昨日のベッドと同じ文句を言われたら思い出すに決まってる」
それは悪い事をした。彼女はいそいそと洗面台に向かって、履き替えてきた。
彼女は花柄のシャツにオーバーオールと言う服装。帽子を目深に被っている。その目は二つ。僕としては一つ目の姿の彼女とデートをしたいのだけど、魔物娘なんて存在がいるのだと知られたら大騒ぎになってしまう。
それに、僕はむしろ好きだけれども、彼女の本当の姿はやっぱり一般人には刺激が強いだろう。
僕はカラメルに混じった一粒の焦げのような苦々しさを感じながら、彼女の手を取る。柔らかくて、容易く手折れそうな感触。
◆
彼女は水槽に噛り付いている。
二つの目をまん丸くさせて、湖畔に反射する朝日のように瞳を輝かせている。彼女が見ているのはラッコ。ちょうど餌の時間だったようで、器用に両手でイカをつかんで食べている。
「可愛いなぁー」なんて言っている彼女方が可愛いと思います。「というか、美味そうだな」
「ラッコが!?」
「ンなわけねーだろ! あのイカとかアワビとか、」
ラッコはグルメだ。彼らの主食はイカや貝、ウニといった高級食材。彼らのよる食害で漁師さんは困っているなんって話も聞いたことがある。と、僕がジッと彼女が見ていると、どうしてだか彼女は顔を真っ赤にして俯いていた。
「どうしたの?」
「い、いや。他意はないんだ」
「?」意味が分からず僕が首を傾げていると、彼女は更に顔を真っ赤にさせてギザっ歯を見せつつ、手をワタワタとやりだす。
「だ、だから何でもないって。そ、そんな事は良いからラッコ見よーぜ」
どうしたのだろう。そうして僕も彼女と一緒にラッコに目を戻す。美味しそうにイカを食べている。イカ……、アワビ……。ははぁん、と僕は気がつく。彼女の耳元に口を寄せる。
「そんなに欲しかったら僕のイカを食べさせてあげるけど、瞳のアワビも食べさせて欲しいな」
殴られた。彼女の顔は真っ赤で肩で息をしている。
「お前なんて知らねーよ。……ばーか」
彼女はプリプリと僕に顔が見えないようにラッコの方に顔を向ける。でも、僕を置いて何処かに行ってなんてしまわない。僕は微笑みながら彼女の帽子に手を乗せる。
「何だよ」期待のこもった声。
「可愛いね」
彼女は帽子を抑えて俯いてしまう。おやおや、そんな事をするとラッコなんて見えないだろうに。と、思う僕だって、周りの舌打ちや壁を殴る音なんてものは聞こえない。
彼女はラッコを堪能して、僕は彼女も堪能して、水族館を巡る。
水槽のトンネルに、青空を行き交う飛行機のような魚の群れが飛ぶ。悠々と泳いでいく亀は、瞳がつぶらだ。僕の隣で目を輝かせている彼女の瞳もつぶらだ。ふれあいコーナーでナマコを触ったら、潮を吹かれた。顔をしかめる僕に、彼女は笑う。
「お前だって可愛いじゃねーか。うひゃあ!」
彼女の方がより多くの水を被った。
「水も滴るいい女、ってね」
「ばーか、当たり前だろ?」
と、彼女は胸を張って返す。少しだけ頬が赤いが、彼女なりのささやかな抵抗らしい。そうした様子も、
「可愛いな」
「べべ、バッ……!」
やはりこのワードはよく効くらしい。僕のリハビリワークはもしかしたら調教だったのかもしれない。
「いやいや、慣れない言葉を無理して使おうとしている所なんて、僕の心のスケッチブックに一瞬で100枚は描かれたね。でも、君の可愛さをちゃんと描ききれた自信なんてない」
「フー……ッ」
威嚇された。やり過ぎたらしい。
「そんな事をこんな所で臆面もなく言うんじゃねぇよ……ばかぁ……」
そう言えば、再び舌打ちなり何なりが聞こえている気がする。彼女にはキチンと届いていようだ。いけないな。僕はこんなに人の目を気にしないタチじゃなかったはずだけど……。だから彼女の事を可愛い責めしつつも、度を超えたボディタッチは控えている。
それなのに僕は彼女に夢中で、ついつい。恐るべし、ゲイザーの魅力、いや、ひとみの魅力、かな。
「だからぁ……声に出さなくても唇が動いてるんだよぉ……」
どうやら彼女は読唇術を使えたらしい。と、
「……ぁ、」なんて言って彼女は顔を真っ赤にさせていた。
「どうかした?」
「ぅー……」彼女はモジモジしている。「このぉ、変態……馬鹿男ぉ……」
「あ、もしかして濡れ……」バシィ、と強めに肩パンされた。「パンツ買……」ガブリ、と噛み付かれた。キザギザの歯が、甘く痺れた痛みを伝えてくる。
彼女は僕に頭を下げるように、チョイチョイと手招きをする。言われた通りにすると、彼女は僕の耳元でボショボショと、
「オムツ履いてきたから大丈夫……」と言った。
「……………………」
さて、ちょっとご同行願おうか。
僕は彼女の手を有無を言わさずに引いていく。
「お、おい。どうしたんだよ。突然、チカラ強いし、それに、目が、コワイデスヨ?」
それは君が悪い。しかし、僕の意図に気づいている彼女は、しっかりと手を握り返してくれていた。
◆
さて……。
僕らはトイレの個室にいた。運良く、というか彼女の暗示の力を借りた、というか。トイレの個室に入るまでの道を開けてもらった。僕らを見咎める者は誰もいなかった。でも、トイレ自体に人避けをしているわけじゃないから、この個室の外には知らない男の人たちが用を足すために出入りしている。
最近はベビーシート付きの大きめの個室もあったりして、丁度いい。
彼女を座らせてみたいという好奇心もあるが、流石にそれは壊れてしまうので、やりはしない。
「ぅー、」この光景だけで十分過ぎる。彼女はオーバーオールの留め具を外して下に下ろすと、確かにオムツをはいていた。白くてホッソリとした太ももを擦り合わせてモジモジとしている。
僕の行動を予測していた彼女はその対策としてオムツをはいたようだった。だからオーバーオールなんてものを着ていたのか。確かにスカートで誰かに見られたら大変だしーーもしかすると僕にお尻を触られて気がつかれるかもしれない。僕は人前でそんな事をするつもりはないけれど、電車の中でコッソリとかはやりかねない。デニムだったら、線が浮いてしまうかもしれない。
「ひ、秘密にしとくつもりだったのに……」
「でも、期待してたんじゃないないの?」
「馬鹿ッ、そ、そんな事あるわけッ」「シーっ、声を大きくすると誰かに気がつかれるかもしれない」
「……そんな事あるわけない(ポショポショ)」
「そっか。無いんだ」
僕はあからさまに肩を落としてみる。その姿に彼女は慌てて、
「い、いや。帰りのホテルでお披露目するつもりだったんだ。ウン」
「変態さんだ」「ぅ、……ぅうう。狡いよぉ……」
「でも可愛い」
「ぅー……この鬼畜夫……」
彼女は大きな一つ目をフルフルと震わせている。ここなら誰の目も気にする必要はない。彼女は僕の大好きな元の姿に戻ってくれている。彼女の元の姿。それは顔いっぱいの真っ赤な大きな一つ目で、何本もの、先に目がある触手がついた姿。だから、むしろ衆人環視よりも視線を感じる。
彼女の大きな瞳には羞恥に滲んでいる。でも、それだけのわけがない。色白の頬は桜色に染まって、劣情の期待に火照っている。
「は、早く……」
「早く、何?」
僕は小さな声で、問いかける。意地悪な笑みを浮かべて。彼女は僕の意図を分かっている。
「……お、オムツ脱がして、綺麗にして。ください」
「了解」
僕は彼女のオムツに顔を近づけて、それを下ろしてやる。
むわっ、と。牝の匂いがした。
「こんなにお漏らしして、この子はだらしがないなぁ」「ぅ、五月蝿いィ……ヒグッ」
彼女は漏らした吐息を、指を咥えて噛み殺す。僕は、彼女の割れ目に舌を這わせていた。
「もしかして、本当におしっこも漏らしてた?」
「そ、それは今の刺激で……ゥ、ちょっと」「正直でよろしい」「……ばか」
僕は、牝の匂いに口づけをする。彼女の割れ目をなぞって、指で押し広げてみる。
「でもすごい濡れてるね。これは、さっきの可愛いのせいだけじゃないよね。このトイレに来てからだ。こうされる事を期待されてたんでしょ」
「そ、そうだよ。だから、焦らさない……でッ」
恥ずかしがっていても彼女は性に貪欲だ。自分から腰を前に出して僕の舌を求めてくる。だけど僕はその奥に舌を差し入れる事はせずに、表面だけで焦らしてやる。
モジモジと、もどかしい刺激に業を煮やした彼女は僕の頭を掴むと自分の秘裂へと押し付ける。僕は一気に彼女の肉筒へ舌を入れた。酸っぱくて苦い、おしっこ混じりの彼女の蜜。目線を上げると、両手を僕に使っている彼女は唇を噛んで声を押し殺している。
その艶と不安の混じる大きな瞳に、僕は夢中だ。
「ゥ……ッ、く、ン」溢れてくる彼女の蜜と、漏れてくる喘ぎを、僕は堪能する。
しばらくして、彼女は僕の顔をより一層股に押し付けると、体を小刻みに震わせた。声を飲み込んだせいで、その快感は普段よりも芯を震わせたらしい。彼女の体からは力が抜けて、壁にもたれかかる。でも、その触手たちはむしろ爛々と目を光らせて僕たちを見ている。
彼女はヨダレを垂らしながら、「この、変態……」と言う。荒い息のせいで、彼女のギザっ歯が覗いている。
「変態って、君が高校生の時に、僕にこれでもかって教えてくれたんじゃないか。だから君は興奮してしまった僕を、責任を持って鎮めなくちゃいけない」
「鎮めない、と……」
「それに、奥さんのつとめでもあるんじゃないかな。僕は今、夫のつとめをちゃんと果たした」
「そ、そうだな……。こ、これは私がやらなくちゃいけない事……ヤりたい事」
彼女は快楽で虚ろになった瞳を僕に近づけると、唇を重ねて来た。彼女の舌が侵入してくる。僕はノックもない無作法な彼女を、快く受け入れる。僕たちの舌は絡み合う。
「お前は私のアワビを食べたんだから、私はお前のイカを食べていいんだ……」
「召し上がれ」「…………ばぁーか」
彼女は僕を押して、便器に座らせる。顔を股間に近づけて、歯で咥えてチャックを下ろす。口だけを器用に使って、僕のペニスを取り出した。
「お、大きい……。私でこんなに興奮してくれてるんだ」
「うん、だから鎮めてくれないかな」
了承として、彼女は僕の竿と玉の境を舌でつついた。これから出てくる精子にノック。こんなところは礼儀正しいらしい。竿の裏を遡っていくヌメッた舌の感触に、今度は僕が声を押し殺す番だった。視線があうと、彼女は悪戯っぽく笑った。彼女の大きな瞳はトロンとしている。
「はン、む……」ワザとらしく声を出して、彼女は僕の亀頭を頬張る。両手は球を揉んで、チューペットでも吸うかのように、彼女は美味しそうな顔をしている。僕は彼女の髪を撫でる。
彼女は目を緩ませて、口の中のカリの裏側を、ギザっ歯で引っ掻くように刺激してくる。閉ざされたトイレの個室に、悩ましい湿気が篭っていく。扉を一枚隔てた外側では、知らない男たちが用を足している。だというのに、僕は、こんな「可愛い」妻に、別の用を足させてもらっている。
僕の可愛いと言う言葉に、彼女は抗議するように注挿を早めていく。頬も、喉も、歯も、舌も、口蓋だって。口を構成している器官の全てを余す事なく使用して、彼女は僕に快感を刻み込んでくる。僕らの痴態を彼女の触手たちは余すところなく見ている。
じゅぷじゅぷと、くぐもった水音。僕は彼女から手を離して口を抑えようとするが、彼女の寂しそうな瞳に、それを許してもらえない。僕は諦めて、むしろ彼女の頭を押し付けて、彼女の喉深くに肉棒を突き立てる。彼女は驚いて背中を仰け反らせたが、僕を受け入れて、強く、キツく吸い上げるーー。
ビュクビュク。彼女の深くに僕の白い欲望が吐き出された。彼女はそれを音を立てて嚥下していっく。最後の一滴まで吸い尽くして、彼女は顔を上げる。一つ目の彼女の、上気した得意そうな顔。口を開ければ僕が彼女を汚した証が舌の上に乗っていて、彼女はよく咀嚼してから、ゴクリと飲み込む。そのエロティックな喉の動きに、僕の喉も鳴る。
「イカ……美味しかった」
唇を舐める彼女は可愛く、妖艶だった。
こんなの、我慢できるわけない。僕は彼女を膝に座らせて、後ろから控えめな胸を揉む。首筋に舌を這わせて、シャツを脱がせて生で乳首を摘(つま)む。彼女は僕の上でビクビクと肩を震わせる。彼女の牝汁に汚れたオムツが、まだその足に引っかかっている。彼女の太ももの間からは、そそり立ったままの僕の肉棒。
「我慢出来ない」
子供のような声は僕の口から。彼女は「可愛いな」なんて言いながら、僕の亀頭の先を撫でる。平静なら君の方が可愛いと返すところだけど、今の僕にはそんな余裕はない。彼女のナカに入れたくて堪らない。
「どうして欲しい?」
これは彼女の仕返しだ。僕はどう答えれば良いのか知っている。
「先輩の中に入れさせてください。お願いします」
「よく出来ました。後輩くんのお願いじゃ、断れねぇ」
彼女は腰を浮かせて、僕を自身のナカへと招き入れる。お互いに声を我慢するので精一杯だった。僕らは肩越しに見つめ合うと、お互いを助けるために互いの唇を塞いでいた。
「動くよ」コクリ、と彼女は頷く。
彼女は声を押し殺す。僕も声を押し殺す。彼女の膣肉はこれでもかと僕の肉棒に絡みついて、一緒になって溶けてしまうのではないかと思った。僕の肉棒が覚えている彼女の弱いところを、ぼくのカリの弱いところで執拗に刺激する。
彼女は悲痛なまでに歯を食いしばって、快楽の波に翻弄されている。きゅうきゅうと締め付けてくる彼女の股からは、僕らが混ざった液が便器に落ちて、淫らな水音を伝えてくる。
「おい、なんか変な音しないか? 水の跳ねる音っていうか……」
外から聞こえた声に、僕らは身を竦ませる。だけど、この快楽を途中で止めることなど出来るはずがない。雪山で互いに身を寄せ合うように、僕らは固く固く肌を重ねて、快楽を貪る。
押し殺した吐息が、お互いの耳にだけはうるさく聞こえる。
「ションベンの音だろ?」
「いやいや、もっとなんかエロっぽいって言うか……」
「つーか、お前さっきのくそバカップルに憤慨して、妄想垂れ流してたからじゃねーのか。あの、帽子にオーバーオールの彼女を連れた」
彼女の膣が一際強くしまった。僕は声を漏らさないように彼女の肩を噛んだ。
「イグッ……」と言う彼女の口に指を突っ込む。彼女に噛まれた痛みすら、官能に変わる。彼女は恨みがましそうに、僕の指を舐めて吸う。
「今、変な音しなかったか?」
「知らねーよ。バカなこと言ってないで、ナンパするぞ。ナンパ。はやくバカップルになりたーい」
「俺がいるじゃないか」
「バカなこと言ってんなよ……」
という男たちの声が遠ざかる。
「い、行ったのかな……」僕は彼女の耳元に囁く。
「イった……。でも、お前はまだイってないよな」
彼女は僕から立ち上がると、壁に手をついてヨダレを垂らす女陰を開いてくる。
「この体勢なら、お前も早くイけるんじゃないか……。ぅアンッ……馬鹿ァ……いきなり挿れる奴がいるかよ……」
彼女は華奢な肩を震わせて全身を貫いた快楽に耐えている。だけど、彼女の触手たちは愛おしそうに僕に絡みついてくる。
「じゃあ、イくぞ」「こ、来い……ッ」
音が大きくならないように僕は彼女に後ろから腰を打ち付ける。少しもどかしいが、そのぶん彼女は巧みに膣をくねらせて、僕を絶頂へと導いてくれる。僕は彼女の乳首を捏ねつつ、容赦なく、劣情の昂りを彼女の奥深くに吐き出すーー。
僕が彼女から引き抜こうとすると、
「待て」と、彼女はカバンから何かを取り出した。
新しいオムツだった。
「こぼすと勿体ねぇから……」
期待のこもった彼女の瞳。僕は微笑んで、
「仰せのままに」
と答えた。
◆
「トイレであんなにしたって言うのに、ディナー後のホテルは外さないんだね」
「ホテルは別腹に決まってるだろ?」
「挿れるところは違うけど?」「馬、っ鹿……」
「君が言い出したんじゃないか」
僕らはシメのホテルに立ち寄って、再びsexにふけっていた。
もちろん、彼女を可愛いと言って調教するのも忘れずに。
僕の下で喘いでいた彼女の瞳を見る。どんな宝石よりも美しく、可愛らしい、魅力に溢れたゲイザーの、妻の瞳。花弁のようにくったりとシーツに投げ出されている触手たちの瞳も可愛らしい。
「今日の結婚記念日デートはどうだった?」
「すごい意地悪だった……」
彼女は恨みがましい目で口を尖らせる。
「すごい恥ずかしかったし……」
「でも、確か前に君がしたいって言ってた事の一つだったとは思うけど?」
「へ、変な事を覚えてるんじゃねぇよ」
彼女は顔を隠そうとするが、僕はそれを許してやらない。
「だって、自分の姿を卑下していた君に、君が可愛いと言う事を教える事が僕の役目だから」
「ぅー、それはもう分かったから……あ、あたしは可愛い。それでいいだろ?」
と、真っ赤な彼女。僕は今日最後の意地悪を口にする。
「じゃあ、もう言わない方がいい?」
彼女はそれに愕然とした表情を浮かべる。これはやり過ぎだったらしい。
「い、言って欲しい……」
「もちろん。言わないのは僕の方が我慢ができない」
「バカぁ……。いつも狡いんだから」彼女は僕に絡みつきながら耳元でそう言う。
だけど、僕にしてみれば狡いのはどちらだと言う話。
「これからもよろしく。僕の可愛い奥さん」
耳元でそう返した僕に、彼女はきつい抱擁で返してくる。
僕はこんな感じで彼女と暮らしている。
彼女の本当の姿で、大手を振ってデートを出来ない事は残念にも思う。だけど、それでもいいと思う僕がいる。
だって、こんな大切な宝石をむき出しで人目に晒すなんて、考えただけでもゾッとする。彼女の一つ目と言う名の宝石は、こうしてコッソリ、僕だけが愛でる事が出来ればそれでいいと思うのだ。だから、僕の妻の紹介はここまで。
僕は宝石箱の蓋を閉める、僕だけのキャンバスのページを閉じる。
今日も僕は彼女をひっそりと愛でている。
17/08/08 22:46更新 / ルピナス