ぬらりひょんの失敗
「おかえりなさーい。ご飯にする? お風呂にする? それとも、妻であるわ・た・し❤」
帰ってきた彼に私はシナを作りながら問いかける。
「ただいま。お風呂にする」
ちぇー、と頬を膨らませる私をほっぽって、彼は背広を脱ぎ、ネクタイを緩める。
待った、待って。それは私の役目、と、私ははしゃぎながらその背広を奪い取る。彼はやれやれ、なんて言いながら私に背広を渡す。シワにならないように気をつけながら、背広をハンガーにかける。次にネクタイを受け取って、シャツを受け取って、
おっと、いけない。彼の汗の香りが届いたせいで、ヨダレを垂らしそうになってしまった。
私のそんな表情は彼に見えているに違いない。
それなのに彼は、そそくさと脱衣場に向かう。
この絵に描いたような新妻である私をそんな風に扱うとは、世の男たちから多大なるバッシングを受けるだろうに、彼はそんなことは御構い無し。
そんな彼に、健気な私がついていかないわけがあろうか、いや、ないわけがない(力説)。
私の目の前で彼はパンツを脱ぐと(それを受け取った私は顔をうずめる)、そそくさと風呂場に入る。私は名残惜しいものの、パンツを洗濯機に放り込んで、急いで自分の服を脱ぐ、そうして映った脱衣場の鏡には、魔性の美女が生まれた姿で突っ立っていた。
気だるそうでありながら、切れ長で黒目がちの瞳。片目を閉じて見せれば長い睫毛が目立ち、ぽってりした唇でキスをねだれば、これで落とせない男はいないと確信できる。ほっそりとした首には鎖骨が浮き立って、自慢のツンと張ったおっぱいには花柄の墨が入っている。その花をさす花瓶のようにほっそりとしたウェストがあったと思えば、直ぐに前から見えるお尻があらわれる。丁寧に整えられた淫毛は、気合十分。
大事なことなのでもう一度言っておこう。
脱衣場の鏡には魔性の美女が立っている。
ーーぬらりひょんの私が立っている。
ぬらりひょん。魔物娘。この極東の島国における大妖怪。
男を籠絡して淫らな性生活を送ることには定評がある魔物娘の中ですら、大物として定評のある存在。
私はもう一度鏡を見る。
うん。美女だ。
ナルシストでなくとも、自他ともに認める美女に違いない。
だというのに、彼……言い直そう、あの野郎。いやいや、彼、は……。
ぬらりひょん。
いつの間にか家にいて、その家の主人であるかのように堂々と振る舞い、寝食をともにする。そこまではイイ。私たちもそういった関係だ。
私の手練手管により、彼はいつの間にやら私とまぐわい、私の夫になる。
そう、なるはずなのに……。
いや、そうなっている。私たちは何度もまぐわった。だから私たちは内実ともに夫婦である、はずなのに……。
あやつ私を妻として認知しやがらねぇ。
もうすでに数日を共にして、何度も交わって、あいつは私を手放せなくなっている。
それは確かだ。確信だ。
私に気がついたらもう普通に妻にしてくれるはずなのに、彼はどうしてだか私が妻であることだけは認めない。
私の魅力にめろめろであるはずなのに。
私に夜はいいようにされてるくせに……。
なんたることであろうか!
「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ」
私は歯をぎりぎりと噛み締め、力の入った眉間にシワがよる。
その顔を見て私は頬を叩く。
美女がこんな顔をしていてはもったいない。
よーし。今宵も戦である。頭の中のホラ貝を合図に、私は風呂場に突入する。
頭を洗っている彼の背中に張り付いて、ふくよかな胸をおしつける。ビクリとする彼に気を良くして、「かゆいところはありませんか」と彼の返答を聞くまでもなく、ムズムズしているところをまさぐってやる。
「お風呂を選んだ意味がないじゃないか。君は我慢がきかないな」
呆れた声を上げたくせに、私の手のひらの中で彼は可愛らしく呻き、すぐに果ててしまう。
手のひらについた彼の液に舌を這わせながら、私は次の行動に移る。
「君とこうしていると疲れがふっとぶのは事実だけどな」
呆れながらも彼は私を受け入れてくれる。むしろ彼の方から私の体に覆いかぶさって、それなのに、
「理性もふっとべば、私のことを妻と認めやすくなるでしょう?」
「おいおい、いつも理性がふっとぶのは君の方じゃないか」
それだけは認知しない。
私が押せばすぐに包み込んでくれるあたり、彼の方に理性があるというのはおこがましい。いや、あるのか……。それでも始まってしまえば彼こそ野獣のような有様。
互いに舌を絡ませて、浴槽の縁に腰掛けて、くんずほぐれつ。
「今日もお勤めご苦労様。今からは私が妻の勤めを果たすわ」
「そうか、大根の役目か」
「んだと、コラァー!」
私は股の間の彼の頭を締め付ける。彼は必死でタップするが、頭に血が上った私は彼を離さない。
妻という単語をはぐらかすなや。
しかも妻、ツマ、さしみのツマ、だいこーん、の連想という、上手いのかどうかもよくわからないネタをブッコんで来た。
「ひゃん!」
苦しくなった彼が私の股間で魚のように呼吸をする。まん呼吸をされてはむしろ力が入るだけだ。私の大根、じゃない。カモシカのような足を緩めて、彼を押し倒す。
正確にはカモシカの足のような足じゃないのか、四足獣カモシカのような足があったら怖いわ! とかいうツッコミは今はおいておいて。
「罰は体で受けてもらおう」
「お手柔らかに……」
彼は頬をヒクつらせながらの笑顔。
ふぃー、ご飯の前なのにお腹いっぱいになってしまった。
私はツヤツヤとした顔で食卓につく。
見れば彼は腰を叩きつつ、ついてくる。
私の完全勝利、そう言えればどんなにいいことか。
でも残念ながら、私を妻だと認知させることはできなかった。試合に勝って勝負に負けている。それは結局私の負けだということに他ならない。
「夫の射精管理は妻の務め❤」
それで頷かせようとしたのに、ぅおっドピュ、ぅおっドピュ、ってするだけで、うんと頷いてはくれなかった。妻として、という単語を出すと、まるでそのワードだけが抜け落ちているような言動をとってきよる。
これじゃあ、どっちがぬらりひょんだか分からない。
ぬらりひょんの夫がそうである、ということは望ましいことかも知れないけれどオリジナルぬらりひょんである私の沽券に関わるにはきまっている。
パクッ、と彼の頬についたごはん粒を口でとっても、「ありがとう」こそ言え、私のことを妻だとは言ってくれない。
「はい、あーん」
「あーん」「アーン❤」「そんなあーんは求めていない」
食事はお互いにお互いに食べさせてあげる。どこの仏教の天国だよ、というネタはわかる人だけ分かっていてもらいたい。
泣き落としなんて手を考えたけれども、それは最終手段どころか、ぬらりひょんとしての、魔物娘としての私の尊厳をかなぐり捨てるような手段に思えて、取れるわけがない。
やはり、私としては、夜の営みで、私が妻であることを認めさせるしかない。
晩御飯にはちゃんと精のつくものを用意したし、買ってきたのも作ったのも私だ。
あまりにも彼が私のことを妻だと認めないから、私は形だけでも、と外に出て買い物をして、若奥様的な行動をしている。
(……今、若!? とか考えた奴は住所を言いなさい。電話一本で配下の妖怪を送りつけてあげる)
ーーコホン(咳払い)。
食事を作ってあげる方がぬらりひょんらしくない?
そんなの関係ねぇ!
私を妻だと認めさせる方が重要だ。
でも、今のところ上手くはいっていない。
どうしたらいいのだろう?
ま、考えるよりも腰を振ろう。
私は第2ラウンドのイメージトレーニングをする。
私が彼と出会ったのはひょんなキッカケ。ーーというほどのキッカケもない。
歩いていた彼を見つけて、なんかいいなーと思って、なんか疲れてそうだなーと思って、なんとなく家に着いて行って、彼がいない間にドアノブをゴンゴンとたたいて壊して、あまりにも汚(き)ったなかったので掃除して、キセルで一服して、彼のエロ本から彼の傾向と対策を予習して、私のプロポーションの系統のエロ本を厳選して、丁寧に机の上に並べて揃えて晒してやって、彼が帰ってくる前にシャワーを浴びて、タイミングを見計らって、畳の上でふんぞりかえってやっていた。
「よぅ、おかえりなさい」
「ああ。ただいま」
私のぬらりひょんパゥアーのおかげで、彼は訝しがることもせず、帰宅の挨拶をしてくれた。
そしておもむろに置いたのは、カップ麺。
それは私にとって衝撃的だった。ぬらりひょんというだけあって、実はいいところのお嬢様でもあった私は、そんなものだけで夕食を済ませる彼が信じられなかった。
とっさにシェフ付きで満漢全席を出前しようと思ったが、この部屋のテーブルに乗らないことに気づいてやめた。
それにカップヌードルというものに興味があった。
テキトーな番組を見て三分間を待っている彼の顔とヌードルを、私はじぃっと、見ていたものだ。時間が来て食べ始める彼。
ほほう、なかなか美味しそうだ。
異文化コミュニケーションが取りたくてしかたのなかった私は、今度は真・ぬらりひょんパゥワーを使って、
「ちょっと、ちょーだい」
といって分けてもらった。
ヌードルをくれたお礼に、彼だけのヌードル(ヌードアイドル)になってやったというのに、「風邪ひくぞ」という優しい言葉に、私は彼が童貞であることを確信してニンマリとした。
ぬらりひょん。いつ間にかいて、いつの間にか、いることが当然になる。
とは言うけれども、彼は私をなんだと思っているのだろう。
認識しているのは確かだけれども、それは他人として認識しているのか、それとも家族として認識しているのか、さっきの言葉からは家族っぽいけれども、彼女以上、妻未満といったくらいの立ち位置ではなかろうか。
それも時間の問題。というか、時間の問題ですらなく、距離の問題にもならなかった。
ま、そのままその夜に結ばれて、ホクホク顔の私は次の日の朝には送り出した。
しばらく、彼は私と過ごしていたけれども、まぁ、なんだかいることが当たり前で、きっと彼がひょんなことで私がいなかった時のことを思い出して、そうしたら妻と認知させよう。だから、私は彼に聞いたことはなかった。
だけど、きっと。
それが私の失敗だったのだろう。
彼が気がつく前に、妻であるという言質を取っておくべきだった。
「おっと(夫)、ツマづいてしまったわ」
「大丈夫か。気をつけろよ」
今日も今日とて、私は潜在意識(サブリミナル)に訴えてからまた彼を攻める。
「ねぇ。私はあなたの奥さんよね?」
「おいおい、俺にはそんな金はないぞ」
「億ションじゃねーよ」
「私はあなたの妻よね」
「いいや。君はつまらない女じゃないさ。魅力的な女性だ」
「あ、ありがとう……じゃなくて!」
「あれ? ここに置いてあった俺の箸がない」
「さぁ?」
「さもキセルのように咥えてるんじゃない!」
「ペッ」
「楊枝みたいに吐き出すな!」
「楊枝の上につける言葉だけを言ってみて?」
「上につける言葉? ……さい」
「さい、さいようじ……何ソレ」
「寺の名前だ」
「知らないわよ!」
「えーっと、ケータイは……」
「どうぞー」
「なんでお前が持っているんだ」
「ケータイは携帯するものでしょ」
「お前じゃなくて俺がな! 俺のケータイは俺のものだ!」
「こんなところでジャイアニズムを聞くなんて思っていなかったわ。まさか私をカラオケに連れていってリサイタルをする気じゃないでしょうね。ジャイアンみたいに、ジャイアンみたいに!」
「カラオケ行きたいなら素直にそう言え。というか、俺よりもお前の方が採点低いだろ」
「点数なんて関係ない。大事なのは人を震わせられるかどうかよ」
「物理的に震わせるものはただの凶器だ。カラオケボックスでポルターガイストに出会うとは思わなかった」
「本気を出せば建物ごと震わせられるわよ」
「やめろよ、絶対やめろよ」
「つまらない男ね。つまらないから<らない>を取ってみて」
「はい」
「何コレ」
「だから、羅内(らない)町の地図だよ」
「誰が物理で寄越せと言った!? 口で寄越せ」
「ん(咥えている)」
「ん(せっかくなので受け取った)」
という、お互いにぬらりくらりとした日々を私たちは送るハメになった。
ハメるのも、ハメを外すのもいいが、送るハメはよくない。
◆ーー彼視点
家に帰ったら妻ができた。
何を言っているか分からないと思うが、大丈夫、俺だって分からない。
だが事実だ!
それがいつのことだったかは分からない。彼女に聞けば正確な日付を教えてくれたが、俺にはまるで実感がない。 いつの間にかいて、いつの間にかいることが当然になっていた。
彼女が昔はいなかったのだ、と気がついたのはいつのことだったか、それこそひょんなキッカケで、いつの間にかだったかも知れない。
いや、違う。
彼女が席を立ったタイミングでオナニーをしようとしているたら、
「なんてもったいないことをするの!?」
と、彼女が血相を変えて襲いかかって来たからだ。
俺がどんな認識の上で、そんな行動を起こしたのか、どんな状況でそう至ったのか、なんてことは今となってはわからない。過ぎ去った過去は過去でしかなく、それがひょん、と浮かび上がってくることなどは、結局のところ、ありはしないのだ。
あまりにも慌てた彼女の姿に、俺は彼女を認識するしかなかった。
彼女を認識して話してみれば、彼女はぬらりひょんという魔物娘だという。
ぬらりひょん。
実は妖怪好きだった俺は、あやつの姿を本で見たことがある。
頭の中に思い浮かべた姿は頭のでっかいじいさん。後頭部に大砲の弾でもいれてんじゃないかってほどに後頭部がでかい、奇妙なじいさん。エイリアンといい勝負かもしれない。
だが、俺の前で「私、ぬらりひょんでーす」とけたけた笑っている女は似ても似つかない絶世の美女だ。
さらによくよく聞いてみれば、いつの間にか家にいる、家の主人のように振る舞い、その手練手管を尽くして男を籠絡して妻になるという。
ありがとうございます!
俺はそれを聞いて、思わず土下座で感謝しそうになった。
だが。
「さて、じゃあ私はあなたの妻ね。大丈夫。私は人間じゃないし、プロポーズとか結婚指輪とかいらないし、ただ夫婦になれればいいの。ま、正直いえば憧れてないわけじゃないけど」
その言葉は俺の琴線を引きちぎるくらいに刺激した。
そしてこいつは譲れないと思った。
結婚できるわけがないと思っていた俺は、結婚指輪も、ましてや結婚式の費用なんて貯金はない。
だけどその寂しそうな横顔を見て仕舞えば、俺がそれを用意できるまでは彼女を妻として認めるわけにはいかないと思った。
それは彼女にいつの間にか居座られてしまった俺の、なけなしでちっぽけな意地だ。
ともすれば、たちまちのうちに彼女に屈してしまいそうになるが、はぐらかす点を「妻」に関わることにだけすれば、なんとかなるものだった。そのやり口は彼女に散々やられたものを真似ればいいだけなので、俺は俺の潜在意識にいつの間にかぬらりと張り付いていたやり口を使った。
正直、妻、ツマ、だいこーん、だとはうまくないにも程があるとは思うが、はぐらかせていれば無問題(もーまんたい)だ。
ぶっちゃけ彼女の手口も似たようなものなので、ぬらりひょんの中でも彼女はあまりうまくはない方なのではないか。それでも、ぬらりくらりとはぐらかされていた身としては、偉そうなことはいえない。
それでも自分を「妻」だと認めさせようとする彼女を見るのは微笑ましく、のらりくらりとかわして見るのも案外面白いものだ。ぬらりひょん相手にそのような事を仕掛ける人間は俺が初めてではないだろうか(そもそも妖怪に出会う人すら、ほぼいないだろう)。
1つ断っておけば、俺は彼女を苦しめたいわけではないので、もしも泣き落としなんて手を使われて仕舞えば、観念して白状するしかないのだが……。
彼女はそれを使わず、しかも、俺の主観でしかないが、彼女も俺に認知させようとする事を楽しんでいるフシがあると思う。
そうでなければ、こんな幸せそうな顔で眠っているわけがないだろう。
俺は隣の彼女の寝顔を見る。
精魂果てたのは俺が先だが、ぬらりひょんらしからぬことに気を配っている彼女は、疲れているのか、済んだらさっさと眠ってしまう。
俺は彼女という肉布団に体を埋める。
そしてポツリと。
「おやすみ、俺の可愛い奥さん」
そう言って俺も眠りにつく。
わたわたしている彼女を見るのは楽しいし、一つくらい勝っているところがなくてはーー意地悪にすぎるやり方かもしれないが、彼女も楽しそうだから、ウィンウィンの関係ということで1つ
。俺のぬらりひょんに対するぬらりひょんの振りは大目に見てやってほしい。
それは俺が結婚指輪、結婚式の費用を稼ぐまでの間。
彼女には内緒。そんなことを言えば、今すぐに用意してくるだろうことは目に見えるよりも明らかだ。ポロポロ漏れ聞くところによれば、彼女はやはりいいところのお嬢さんではあるようだ。
で、彼女の何が失敗だったかというと、俺が強情なまでに彼女を喜ばせてやりたいと思っていたことだ。
俺を舐めるなよ。
◆ーー彼女目線
私は目を閉じたまま、にやけそうになる頬を必死で我慢する。
この野郎、私が眠っている時しか認知しやがらねぇ。
だから私はさっさと寝たふりをするのだし、そんなことに私が気がついていないわけがない。
彼の言葉に合わせて目を開けてみれば、彼はどんな顔をするのだろうか。
それはとても魅力的な案なのだけど、それをしてしまえば私の完全敗北、それを取り返すことはもうできない。だから私は断腸の想いで我慢をする。
ガマン、我慢、がーまーんー。
彼が何を企んでいるのか、それはうすうす気がついているけれども、気がついているけれども、せっかくだから黙って騙されてやることにしている。私が期待しているのは間違いない。
感謝しなさい。
私を喜ばさせてあげる。
それまで、ぬらりひょん気分を味あわせてあげて、あなたも喜ばさせてやる。
結局、ぬらりくらりと騙しているような騙していないような、噛み合っているような、噛み合っていないような。
ぬらりひょんのカップルとしては、まぁ、ありなのではないだろうか。
そう思ってしまうあたり、この状況を選んでしまったあたりが、私の失敗だ。
失敗は成功の母だというけれど、確かに性交の母で、彼の企みが叶う前に私が母になってしまったら彼は今度はどうするのだろう。
私は我慢できずににやけてしまう。
ま、どうとでもなる。
てきとうに、のらりくらりと、ぬらりくらりと、一緒にいられれば。
今宵も二人で、ぬらりぃーー、ひょん。とな。
帰ってきた彼に私はシナを作りながら問いかける。
「ただいま。お風呂にする」
ちぇー、と頬を膨らませる私をほっぽって、彼は背広を脱ぎ、ネクタイを緩める。
待った、待って。それは私の役目、と、私ははしゃぎながらその背広を奪い取る。彼はやれやれ、なんて言いながら私に背広を渡す。シワにならないように気をつけながら、背広をハンガーにかける。次にネクタイを受け取って、シャツを受け取って、
おっと、いけない。彼の汗の香りが届いたせいで、ヨダレを垂らしそうになってしまった。
私のそんな表情は彼に見えているに違いない。
それなのに彼は、そそくさと脱衣場に向かう。
この絵に描いたような新妻である私をそんな風に扱うとは、世の男たちから多大なるバッシングを受けるだろうに、彼はそんなことは御構い無し。
そんな彼に、健気な私がついていかないわけがあろうか、いや、ないわけがない(力説)。
私の目の前で彼はパンツを脱ぐと(それを受け取った私は顔をうずめる)、そそくさと風呂場に入る。私は名残惜しいものの、パンツを洗濯機に放り込んで、急いで自分の服を脱ぐ、そうして映った脱衣場の鏡には、魔性の美女が生まれた姿で突っ立っていた。
気だるそうでありながら、切れ長で黒目がちの瞳。片目を閉じて見せれば長い睫毛が目立ち、ぽってりした唇でキスをねだれば、これで落とせない男はいないと確信できる。ほっそりとした首には鎖骨が浮き立って、自慢のツンと張ったおっぱいには花柄の墨が入っている。その花をさす花瓶のようにほっそりとしたウェストがあったと思えば、直ぐに前から見えるお尻があらわれる。丁寧に整えられた淫毛は、気合十分。
大事なことなのでもう一度言っておこう。
脱衣場の鏡には魔性の美女が立っている。
ーーぬらりひょんの私が立っている。
ぬらりひょん。魔物娘。この極東の島国における大妖怪。
男を籠絡して淫らな性生活を送ることには定評がある魔物娘の中ですら、大物として定評のある存在。
私はもう一度鏡を見る。
うん。美女だ。
ナルシストでなくとも、自他ともに認める美女に違いない。
だというのに、彼……言い直そう、あの野郎。いやいや、彼、は……。
ぬらりひょん。
いつの間にか家にいて、その家の主人であるかのように堂々と振る舞い、寝食をともにする。そこまではイイ。私たちもそういった関係だ。
私の手練手管により、彼はいつの間にやら私とまぐわい、私の夫になる。
そう、なるはずなのに……。
いや、そうなっている。私たちは何度もまぐわった。だから私たちは内実ともに夫婦である、はずなのに……。
あやつ私を妻として認知しやがらねぇ。
もうすでに数日を共にして、何度も交わって、あいつは私を手放せなくなっている。
それは確かだ。確信だ。
私に気がついたらもう普通に妻にしてくれるはずなのに、彼はどうしてだか私が妻であることだけは認めない。
私の魅力にめろめろであるはずなのに。
私に夜はいいようにされてるくせに……。
なんたることであろうか!
「ぐ、ぐぬぬぬぬぬ」
私は歯をぎりぎりと噛み締め、力の入った眉間にシワがよる。
その顔を見て私は頬を叩く。
美女がこんな顔をしていてはもったいない。
よーし。今宵も戦である。頭の中のホラ貝を合図に、私は風呂場に突入する。
頭を洗っている彼の背中に張り付いて、ふくよかな胸をおしつける。ビクリとする彼に気を良くして、「かゆいところはありませんか」と彼の返答を聞くまでもなく、ムズムズしているところをまさぐってやる。
「お風呂を選んだ意味がないじゃないか。君は我慢がきかないな」
呆れた声を上げたくせに、私の手のひらの中で彼は可愛らしく呻き、すぐに果ててしまう。
手のひらについた彼の液に舌を這わせながら、私は次の行動に移る。
「君とこうしていると疲れがふっとぶのは事実だけどな」
呆れながらも彼は私を受け入れてくれる。むしろ彼の方から私の体に覆いかぶさって、それなのに、
「理性もふっとべば、私のことを妻と認めやすくなるでしょう?」
「おいおい、いつも理性がふっとぶのは君の方じゃないか」
それだけは認知しない。
私が押せばすぐに包み込んでくれるあたり、彼の方に理性があるというのはおこがましい。いや、あるのか……。それでも始まってしまえば彼こそ野獣のような有様。
互いに舌を絡ませて、浴槽の縁に腰掛けて、くんずほぐれつ。
「今日もお勤めご苦労様。今からは私が妻の勤めを果たすわ」
「そうか、大根の役目か」
「んだと、コラァー!」
私は股の間の彼の頭を締め付ける。彼は必死でタップするが、頭に血が上った私は彼を離さない。
妻という単語をはぐらかすなや。
しかも妻、ツマ、さしみのツマ、だいこーん、の連想という、上手いのかどうかもよくわからないネタをブッコんで来た。
「ひゃん!」
苦しくなった彼が私の股間で魚のように呼吸をする。まん呼吸をされてはむしろ力が入るだけだ。私の大根、じゃない。カモシカのような足を緩めて、彼を押し倒す。
正確にはカモシカの足のような足じゃないのか、四足獣カモシカのような足があったら怖いわ! とかいうツッコミは今はおいておいて。
「罰は体で受けてもらおう」
「お手柔らかに……」
彼は頬をヒクつらせながらの笑顔。
ふぃー、ご飯の前なのにお腹いっぱいになってしまった。
私はツヤツヤとした顔で食卓につく。
見れば彼は腰を叩きつつ、ついてくる。
私の完全勝利、そう言えればどんなにいいことか。
でも残念ながら、私を妻だと認知させることはできなかった。試合に勝って勝負に負けている。それは結局私の負けだということに他ならない。
「夫の射精管理は妻の務め❤」
それで頷かせようとしたのに、ぅおっドピュ、ぅおっドピュ、ってするだけで、うんと頷いてはくれなかった。妻として、という単語を出すと、まるでそのワードだけが抜け落ちているような言動をとってきよる。
これじゃあ、どっちがぬらりひょんだか分からない。
ぬらりひょんの夫がそうである、ということは望ましいことかも知れないけれどオリジナルぬらりひょんである私の沽券に関わるにはきまっている。
パクッ、と彼の頬についたごはん粒を口でとっても、「ありがとう」こそ言え、私のことを妻だとは言ってくれない。
「はい、あーん」
「あーん」「アーン❤」「そんなあーんは求めていない」
食事はお互いにお互いに食べさせてあげる。どこの仏教の天国だよ、というネタはわかる人だけ分かっていてもらいたい。
泣き落としなんて手を考えたけれども、それは最終手段どころか、ぬらりひょんとしての、魔物娘としての私の尊厳をかなぐり捨てるような手段に思えて、取れるわけがない。
やはり、私としては、夜の営みで、私が妻であることを認めさせるしかない。
晩御飯にはちゃんと精のつくものを用意したし、買ってきたのも作ったのも私だ。
あまりにも彼が私のことを妻だと認めないから、私は形だけでも、と外に出て買い物をして、若奥様的な行動をしている。
(……今、若!? とか考えた奴は住所を言いなさい。電話一本で配下の妖怪を送りつけてあげる)
ーーコホン(咳払い)。
食事を作ってあげる方がぬらりひょんらしくない?
そんなの関係ねぇ!
私を妻だと認めさせる方が重要だ。
でも、今のところ上手くはいっていない。
どうしたらいいのだろう?
ま、考えるよりも腰を振ろう。
私は第2ラウンドのイメージトレーニングをする。
私が彼と出会ったのはひょんなキッカケ。ーーというほどのキッカケもない。
歩いていた彼を見つけて、なんかいいなーと思って、なんか疲れてそうだなーと思って、なんとなく家に着いて行って、彼がいない間にドアノブをゴンゴンとたたいて壊して、あまりにも汚(き)ったなかったので掃除して、キセルで一服して、彼のエロ本から彼の傾向と対策を予習して、私のプロポーションの系統のエロ本を厳選して、丁寧に机の上に並べて揃えて晒してやって、彼が帰ってくる前にシャワーを浴びて、タイミングを見計らって、畳の上でふんぞりかえってやっていた。
「よぅ、おかえりなさい」
「ああ。ただいま」
私のぬらりひょんパゥアーのおかげで、彼は訝しがることもせず、帰宅の挨拶をしてくれた。
そしておもむろに置いたのは、カップ麺。
それは私にとって衝撃的だった。ぬらりひょんというだけあって、実はいいところのお嬢様でもあった私は、そんなものだけで夕食を済ませる彼が信じられなかった。
とっさにシェフ付きで満漢全席を出前しようと思ったが、この部屋のテーブルに乗らないことに気づいてやめた。
それにカップヌードルというものに興味があった。
テキトーな番組を見て三分間を待っている彼の顔とヌードルを、私はじぃっと、見ていたものだ。時間が来て食べ始める彼。
ほほう、なかなか美味しそうだ。
異文化コミュニケーションが取りたくてしかたのなかった私は、今度は真・ぬらりひょんパゥワーを使って、
「ちょっと、ちょーだい」
といって分けてもらった。
ヌードルをくれたお礼に、彼だけのヌードル(ヌードアイドル)になってやったというのに、「風邪ひくぞ」という優しい言葉に、私は彼が童貞であることを確信してニンマリとした。
ぬらりひょん。いつ間にかいて、いつの間にか、いることが当然になる。
とは言うけれども、彼は私をなんだと思っているのだろう。
認識しているのは確かだけれども、それは他人として認識しているのか、それとも家族として認識しているのか、さっきの言葉からは家族っぽいけれども、彼女以上、妻未満といったくらいの立ち位置ではなかろうか。
それも時間の問題。というか、時間の問題ですらなく、距離の問題にもならなかった。
ま、そのままその夜に結ばれて、ホクホク顔の私は次の日の朝には送り出した。
しばらく、彼は私と過ごしていたけれども、まぁ、なんだかいることが当たり前で、きっと彼がひょんなことで私がいなかった時のことを思い出して、そうしたら妻と認知させよう。だから、私は彼に聞いたことはなかった。
だけど、きっと。
それが私の失敗だったのだろう。
彼が気がつく前に、妻であるという言質を取っておくべきだった。
「おっと(夫)、ツマづいてしまったわ」
「大丈夫か。気をつけろよ」
今日も今日とて、私は潜在意識(サブリミナル)に訴えてからまた彼を攻める。
「ねぇ。私はあなたの奥さんよね?」
「おいおい、俺にはそんな金はないぞ」
「億ションじゃねーよ」
「私はあなたの妻よね」
「いいや。君はつまらない女じゃないさ。魅力的な女性だ」
「あ、ありがとう……じゃなくて!」
「あれ? ここに置いてあった俺の箸がない」
「さぁ?」
「さもキセルのように咥えてるんじゃない!」
「ペッ」
「楊枝みたいに吐き出すな!」
「楊枝の上につける言葉だけを言ってみて?」
「上につける言葉? ……さい」
「さい、さいようじ……何ソレ」
「寺の名前だ」
「知らないわよ!」
「えーっと、ケータイは……」
「どうぞー」
「なんでお前が持っているんだ」
「ケータイは携帯するものでしょ」
「お前じゃなくて俺がな! 俺のケータイは俺のものだ!」
「こんなところでジャイアニズムを聞くなんて思っていなかったわ。まさか私をカラオケに連れていってリサイタルをする気じゃないでしょうね。ジャイアンみたいに、ジャイアンみたいに!」
「カラオケ行きたいなら素直にそう言え。というか、俺よりもお前の方が採点低いだろ」
「点数なんて関係ない。大事なのは人を震わせられるかどうかよ」
「物理的に震わせるものはただの凶器だ。カラオケボックスでポルターガイストに出会うとは思わなかった」
「本気を出せば建物ごと震わせられるわよ」
「やめろよ、絶対やめろよ」
「つまらない男ね。つまらないから<らない>を取ってみて」
「はい」
「何コレ」
「だから、羅内(らない)町の地図だよ」
「誰が物理で寄越せと言った!? 口で寄越せ」
「ん(咥えている)」
「ん(せっかくなので受け取った)」
という、お互いにぬらりくらりとした日々を私たちは送るハメになった。
ハメるのも、ハメを外すのもいいが、送るハメはよくない。
◆ーー彼視点
家に帰ったら妻ができた。
何を言っているか分からないと思うが、大丈夫、俺だって分からない。
だが事実だ!
それがいつのことだったかは分からない。彼女に聞けば正確な日付を教えてくれたが、俺にはまるで実感がない。 いつの間にかいて、いつの間にかいることが当然になっていた。
彼女が昔はいなかったのだ、と気がついたのはいつのことだったか、それこそひょんなキッカケで、いつの間にかだったかも知れない。
いや、違う。
彼女が席を立ったタイミングでオナニーをしようとしているたら、
「なんてもったいないことをするの!?」
と、彼女が血相を変えて襲いかかって来たからだ。
俺がどんな認識の上で、そんな行動を起こしたのか、どんな状況でそう至ったのか、なんてことは今となってはわからない。過ぎ去った過去は過去でしかなく、それがひょん、と浮かび上がってくることなどは、結局のところ、ありはしないのだ。
あまりにも慌てた彼女の姿に、俺は彼女を認識するしかなかった。
彼女を認識して話してみれば、彼女はぬらりひょんという魔物娘だという。
ぬらりひょん。
実は妖怪好きだった俺は、あやつの姿を本で見たことがある。
頭の中に思い浮かべた姿は頭のでっかいじいさん。後頭部に大砲の弾でもいれてんじゃないかってほどに後頭部がでかい、奇妙なじいさん。エイリアンといい勝負かもしれない。
だが、俺の前で「私、ぬらりひょんでーす」とけたけた笑っている女は似ても似つかない絶世の美女だ。
さらによくよく聞いてみれば、いつの間にか家にいる、家の主人のように振る舞い、その手練手管を尽くして男を籠絡して妻になるという。
ありがとうございます!
俺はそれを聞いて、思わず土下座で感謝しそうになった。
だが。
「さて、じゃあ私はあなたの妻ね。大丈夫。私は人間じゃないし、プロポーズとか結婚指輪とかいらないし、ただ夫婦になれればいいの。ま、正直いえば憧れてないわけじゃないけど」
その言葉は俺の琴線を引きちぎるくらいに刺激した。
そしてこいつは譲れないと思った。
結婚できるわけがないと思っていた俺は、結婚指輪も、ましてや結婚式の費用なんて貯金はない。
だけどその寂しそうな横顔を見て仕舞えば、俺がそれを用意できるまでは彼女を妻として認めるわけにはいかないと思った。
それは彼女にいつの間にか居座られてしまった俺の、なけなしでちっぽけな意地だ。
ともすれば、たちまちのうちに彼女に屈してしまいそうになるが、はぐらかす点を「妻」に関わることにだけすれば、なんとかなるものだった。そのやり口は彼女に散々やられたものを真似ればいいだけなので、俺は俺の潜在意識にいつの間にかぬらりと張り付いていたやり口を使った。
正直、妻、ツマ、だいこーん、だとはうまくないにも程があるとは思うが、はぐらかせていれば無問題(もーまんたい)だ。
ぶっちゃけ彼女の手口も似たようなものなので、ぬらりひょんの中でも彼女はあまりうまくはない方なのではないか。それでも、ぬらりくらりとはぐらかされていた身としては、偉そうなことはいえない。
それでも自分を「妻」だと認めさせようとする彼女を見るのは微笑ましく、のらりくらりとかわして見るのも案外面白いものだ。ぬらりひょん相手にそのような事を仕掛ける人間は俺が初めてではないだろうか(そもそも妖怪に出会う人すら、ほぼいないだろう)。
1つ断っておけば、俺は彼女を苦しめたいわけではないので、もしも泣き落としなんて手を使われて仕舞えば、観念して白状するしかないのだが……。
彼女はそれを使わず、しかも、俺の主観でしかないが、彼女も俺に認知させようとする事を楽しんでいるフシがあると思う。
そうでなければ、こんな幸せそうな顔で眠っているわけがないだろう。
俺は隣の彼女の寝顔を見る。
精魂果てたのは俺が先だが、ぬらりひょんらしからぬことに気を配っている彼女は、疲れているのか、済んだらさっさと眠ってしまう。
俺は彼女という肉布団に体を埋める。
そしてポツリと。
「おやすみ、俺の可愛い奥さん」
そう言って俺も眠りにつく。
わたわたしている彼女を見るのは楽しいし、一つくらい勝っているところがなくてはーー意地悪にすぎるやり方かもしれないが、彼女も楽しそうだから、ウィンウィンの関係ということで1つ
。俺のぬらりひょんに対するぬらりひょんの振りは大目に見てやってほしい。
それは俺が結婚指輪、結婚式の費用を稼ぐまでの間。
彼女には内緒。そんなことを言えば、今すぐに用意してくるだろうことは目に見えるよりも明らかだ。ポロポロ漏れ聞くところによれば、彼女はやはりいいところのお嬢さんではあるようだ。
で、彼女の何が失敗だったかというと、俺が強情なまでに彼女を喜ばせてやりたいと思っていたことだ。
俺を舐めるなよ。
◆ーー彼女目線
私は目を閉じたまま、にやけそうになる頬を必死で我慢する。
この野郎、私が眠っている時しか認知しやがらねぇ。
だから私はさっさと寝たふりをするのだし、そんなことに私が気がついていないわけがない。
彼の言葉に合わせて目を開けてみれば、彼はどんな顔をするのだろうか。
それはとても魅力的な案なのだけど、それをしてしまえば私の完全敗北、それを取り返すことはもうできない。だから私は断腸の想いで我慢をする。
ガマン、我慢、がーまーんー。
彼が何を企んでいるのか、それはうすうす気がついているけれども、気がついているけれども、せっかくだから黙って騙されてやることにしている。私が期待しているのは間違いない。
感謝しなさい。
私を喜ばさせてあげる。
それまで、ぬらりひょん気分を味あわせてあげて、あなたも喜ばさせてやる。
結局、ぬらりくらりと騙しているような騙していないような、噛み合っているような、噛み合っていないような。
ぬらりひょんのカップルとしては、まぁ、ありなのではないだろうか。
そう思ってしまうあたり、この状況を選んでしまったあたりが、私の失敗だ。
失敗は成功の母だというけれど、確かに性交の母で、彼の企みが叶う前に私が母になってしまったら彼は今度はどうするのだろう。
私は我慢できずににやけてしまう。
ま、どうとでもなる。
てきとうに、のらりくらりと、ぬらりくらりと、一緒にいられれば。
今宵も二人で、ぬらりぃーー、ひょん。とな。
17/05/30 09:13更新 / ルピナス