読切小説
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ご主人様と一緒
 僕の『ご主人様』はちょっとだけ変わっています。
 水仙のような薄い水色の髪も、ルビーのように真っ赤な瞳も、ぴょこん、と髪から突き出た尖った耳も、ぎょろり、とした目玉が沢山ついていて少し怖いイメージの鎧も、そんな鎧に隠されてるけれど、本当は凄い大きい胸も、鎧から伸びるむちむちの太股も、全部、他の『ご主人様』とそれほど変わりがないように見えます。けれど、それでも僕のご主人様は少しだけ変なのでした。

 「…お外。行こう」

 そんな少しだけ変なご主人様が今日も僕の手を掴んでそう言いました。その表情はまるで能面のように固まって、何を考えているのか僕にはあまり分かりません。

 「えっと…どうしてですか?」

 僕たちが今居るのはご主人様の私室です。魔王軍の中でもそこそこのエリートであるご主人様は大きめの私室を与えられているのでした。しかし、その中はあまり整頓されているとは言えません。基本的に物に無頓着なご主人様は、物を整理する、と言う感覚に疎いのでした。自然、衣服や物はその辺りに乱雑に置かれて、部屋の中が散らかっていきます。それを僕が見かねて整理するのが何時もの休日でした。

 「ピクニック」

 僕の問いに短く応えてご主人様は少しだけさっきよりも力を込めて僕の手を握ります。

 ―これがご主人様なりの自己表現であり、おねだりの仕方であることは分かっています。なので、僕も出来れば応えてあげたいのですが…。

 「駄目ですよ。今日はお部屋片付けないと」

 最近はお仕事が立て込んでいて、ご主人様のお部屋を片付ける暇が無かったのです。今すぐ必要と言うほどではありませんが、僕にとっては我慢が出来ないほど部屋は散らかってしまっているのでした。最近は忙しく休日なんて滅多に取れないので、できれば今日の内に部屋を片付けてしまいたいのです。

 「……ぅー」

 しかし、ご主人様にとってそれは不満なようでした。まるで犬を飼って良い、と両親に聞いて駄目だった子供のように不満そうな色を瞳に溜め込んでいます。

 ―う…可愛い…。

 年上―そりゃもう魔物娘が魔物であった黎明期からずっと一線級で活躍していたご主人様ですから―とは言え、何時までも若々しく、美しいご主人様にそんな目で見られたら心が揺らぎます。

 ―だけど…ここは心を鬼にしないと…!

 次の休日は何時取れるか分かりません。その間に、ご主人様がお部屋を修復不可能にまで散らかしてしまうことも考えられます。そうなれば困るのは僕ではなくご主人様なのですから、ここで折れる訳にはいきません。

 「そんな目で見ても駄目ですよ!」

 そう言って部屋に散らかる衣服を拾い上げます。…しかし、よく見ずに拾い上げたそれは、白いレースで装飾してあったひらひらとした白い布でした。手触りはさらさらしていて、シルクで出来ているようです。

 ―それがご主人様の下着だと気づいた時には、僕は真っ赤になってそれを床に落していました。

 「…初心」
 「う…」

 そんな僕を相変わらずの無表情で見ながら、ご主人様はぽつりと呟きます。

 ―でも、仕方ないじゃないですか!人間の男である僕にとって、それは女の人の大事なもので、刺激が強過ぎるものなんです!

 「何回も見てる」
 「そ、そりゃ、まぁ、そうですが…」

 そりゃ…僕とご主人様は人間の男と魔物娘な訳だから、何度も何度もえっちはしています。昨日も久しぶりの休日前だからと、一晩中ここで繋がっていました。…お陰でまだ腰も痛いのですが、それはさておき。
 しかし、何度もえっちしているからと言って未だにご主人様の出る所は出て、引っ込むところは引っ込む整った身体に酷く欲情を掻き立てられるように、下着に慣れるのとは別問題です。誰がなんと言おうと僕の中ではそうなのです!

 「可愛い…♪」

 思わず、もう片方の手にぐっ、と力を込めた僕にそう言って、ご主人様は抱きしめてきました。今日は休日なのでご主人様も鎧を着ておらず、ラフなパジャマのままです。其のため、下着もつけずに素肌にパジャマを羽織るご主人様の身体の柔らかさはほぼダイレクトに僕に伝わってきました。
 むにむにと身じろぎするたびに動き、僕の顔に密着する胸も、僕の股間に差し込まれて内側を擦る弾力に溢れた太股も、それだけで理性を奪われそうなほど魅力的な部位なのですがー

 ―ま、負けるもんか…!

 最近はこうやって誤魔化されっぱなしなのです。僕としてもそろそろ負けるわけにはいきません。幸い、今までの負けた経験から対策は練ってあります。

 ―まず胸の間にいる時は息をしてはいけない…!

 もし、少しでも息をしてしまえばむせ返るような甘い香りに理性を奪われてしまうことは必至です。大きな胸で一部の隙も無いほど密着させられて苦しいですが、そこは仕方ありません。
 そうして息を止めている間に背伸びをして上へと逃げ出すのです。後ろではありません。後ろや左右に逃げようものなら、ご主人様は逃がさないように、より強く抱きしめて身動き一つ取れなくさせるのです。こうなったら僕に抗う術はありません。甘い体臭を理性を失うまで嗅がされて、何時もの様に精液を搾り取られてしまうでしょう。

 「…?」

 ご主人様が怪訝そうに首を傾げたような気がしました。けれど、今の僕にはそれを確認する術も、余裕もありません。ただ、ひたすら上に向かって背伸びし続けるだけです。もぞもぞと身じろぎながら上を目指すこと一分。ようやく僕は胸の谷間から脱出することが出来たのです。

 ―勝った!第三部完!!

 そう思い、息を吸おうと口を開けた瞬間、僕の口に入ってきたのは空気ではなく、柔らかく、粘性に溢れた『何か』でした。

 ―これ…何だろう…?

 その『何か』は僕の舌めがけて一直線へと進んできました。そのまま、まるで「遊んで遊んでっ」と誘う様に僕の舌を突きます。その感覚は僕にとって、とても馴染みのあるもので、長い時には一時間や二時間ずっと味合わされるものに近くて……酸欠で頭の回らない僕は少し考えた後、それの正体に気づきました。

 ―これ…!ご主人様の舌じゃないか…!

 その瞬間、ぼんやりとした視界がゆっくりと鮮明になっていき、目の前で目を瞑って僕の唇に吸い付いているご主人様の顔が見えました。その表情は何時もとあまり変わりはありませんが、薄く上気した肌がご主人様の興奮をしっかりと僕に伝えてきます。

 「ン…♪ちゅ…っ♪」

 呆然とする僕には構わず、ご主人様は僕の舌に絡み付いてきました。そして、ぬるぬるとした唾液をまるで僕の舌に塗りつけてきます。まるで、僕の舌を自分のものであると主張するかのように何度も何度も匂いをつけるように塗り付けてくるのです。逃げようとしてもご主人様の舌は何処までも執拗に僕の舌を追いかけ、昨日僕にしたように何度も何度も可愛がるのでした。

 ―これ…駄目…っ♪

 そんなご主人様のキスが僕は大好きなのです。必死になって背伸びをしていた背も足も、快感でぷるぷると震えてしまいます。
 今にも快感で腰が砕けて倒れこんでしまいそうですが、それは許されません。僕の内股を撫でるご主人様のすべすべとした足がそれを防いでいるのです。

 「じゅるる…っ♪」

 僕とご主人様の口からとてもやらしい音がします。それは唾液同士が混ざり合ってどろどろに溶け合っているのをご主人様が吸い上げた音でした。ご主人様はその唾液同士のカクテルが大好きで、毎日、溺れそうになるくらい僕の口に唾液を流し込んでくるのです。そして僕もそれが決して嫌いではありませんでした。

 ―あぁ…もう…っ!

 ご主人様の舌が撫で回してくるたびに、ぴくんっと僕のオチンチンが服の中で震えます。昨日も沢山可愛がってもらったのに、そこはもう膨れ上がっていました。お陰で、快感で身じろぎする度に服と擦れ、先端から出る透明な液がご主人様に貰ったパンツを超えて緑のショートパンツすら少し濡らしてしまいるのが分かります。それがバレるのが嫌で、必死になってご主人様を引き離そうとしますが、僕とご主人様では力の差は歴然で、揺るぎもしません。

 「んっ♪んんっ♪ちゅぅ…♪じゅる…♪」

 必死に抵抗しようとしている僕とは違い、ご主人様はとても幸せそうに吸い付いています。いえ、顔自体は無表情で、何時もと変わりがありません。しかし、長年一緒にいる僕にとってはご主人様の瞳はとても幸せそうな色に染まっているように見えるのでした。
 そして…そんなご主人様を見ていると身を委ねても良い、と言う気がしてくるのです。

 ―別に…明日、お仕事の前に頑張ってお掃除すれば良いだけだよね…。ご主人様だって気持ち良さそうだし、断ったら可哀想だもん…。

 そう自分に言い訳して―早い話が今日もご主人様に負けてしまったわけですが―僕も積極的に舌を絡めます。僕の舌が遊びに付き合ってくれることを悟ったのか、ご主人様の舌が嬉しそうに震えて、僕の舌により激しく唾液を塗りこんできました。それに僕も応えます。僕の舌もご主人様と同じように舌で自分の唾液をご主人様に塗りこむように絡ませるのです。

 ―気持ち良い…っ♪

 それはとても甘美な感覚でした。性交ともまた違う甘くて柔らかい粘膜の交わりが、僕の中の本能に火をつけます。十分もキスをした頃には僕はとろとろに蕩けきっていて一人では立てないようになっていました。必死に背伸びをしてぴーんっと張っていた足は今やもう快感に震えて、ご主人様に気持ちいいことを伝える器官になっていまっています。そこは本来の役割を果たしていないどころか、支えてくれているご主人様のすべすべの足を必死になって挟み、少しでも快感を得ようと必死になっていました。そして腰はがくがくと発情した犬のように撫で付け、服越しにさえカウパーでご主人様の足を汚してしまいます。

 ―あぁ…♪ご主人様…っ♪

 ちょっと変だけど、綺麗で、可愛くて、大好きなご主人様が僕のオチンチンから溢れたカウパーで汚してしまう光景は僕にとってはとても倒錯的でした。ご主人様のすべすべの肌に、僕の汚いところから出た透明な液が糸を引くのです。まるで自分の大事なものを自分で壊してしまうようなその感覚はくらくらするくらい魅力的でした。自然、僕の腰はもっともっと、とはしたなく動いてしまいます。

 「じゅ…っ♪れろぉ…♪」

 そんな僕の様子に興奮したのか、ご主人様もより激しく下を絡ませて来ます。既に舌が疲れてきてしまった僕とは違い、まるで底なしの体力を持っているようにぐりぐりと撫で回しました。それに僕はさらに快感を求めて、壊れたようにがくがくと腰を震わせてしまいます。

 ―もう…っ♪イキそ…っ♪

 キスだけでさえ、開発された僕にとっては絶頂に辿り着けるほどの興奮を得てしまいます。堪え性のない―ご主人様はそれが可愛いと言ってくれるのですけれど―オチンチンを恨みながらも、一度、快楽に屈してしまった身体はもっともっと、と貪欲にご主人様を求めました。
 そんな僕の様子にきっと気づいたのでしょう。ご主人様は応える様に自分からも足を動かしてくれました。すりすりとした感覚が僕の気持ちいいところでどんどん大きくなって、僕の身体がふわふわになっていきます。

 ―ご主人様っ♪イッくぅぅぅ…♪

 そのまま僕は我慢することもなく、絶頂してしまいます。同時に、溢れんばかりにパンツの中で噴出した僕の精液がショートパンツを貫いて、ご主人様の綺麗な足を汚してしまいました。

 ―あぁ…綺麗にしないと…。

 そう思ってもキスと絶頂でとろとろに溶かされてしまった僕の身体は思うように動きません。はぁはぁといやらしく息を吐いて、いまだ止まらないご主人様のキスを従順に受け止めるだけです。
 ご主人様が満足したのはそれからさらに十分くらいした頃でした。どろどろになった僕の口に飽きたのかいきなり、ちゅぽんと舌を抜いて、真っ赤に上気した顔のまま僕の身体を自由にします。いまだ力の入らない僕の身体は糸の切れた人形のようにその場にへたり込んでしまいました。そうなると僕の目の前に白い液体がかすかに糸を引いて、しかし、確かに汚されているご主人様の足が見えるのです。
 
 ―僕の精液で…汚しちゃった…。
 
 僕はそのままもたれかかる様に震える手でご主人様の足にしがみ付きます。そしてご主人様の足に着いた、自分の精液を舌で舐めとりました。

 「ん…っ♪」

 一瞬、ご主人様は驚いたような声を上げましたが、僕をそのままにしてくれました。僕はそれが嬉しくて、ぺろぺろと犬のように舌を這わせます。僕の出した精液は少し苦いくらいでしたが、ご主人様の出した汗と混ざって少しだけ塩味が効いていました。それは決して美味しいと言えないような味でしたが、僕が出したものは僕が綺麗にしなければいけません。

 「もう…良い」

 そう言って舐め取りきった僕の頭をご主人様が撫でてくれました。それが嬉しくて僕は目を細めてより強くご主人様の足に抱きつきます。
 何分ほどそうしていたでしょう。ようやく絶頂の波が引いて、立ち上がれるようになった僕は真っ赤になって顔を伏せました。

 ―また、あんな恥ずかしいことを…!

 何時も何時もそうなのです。僕は頭がピンク色になると、まるで発情期の犬のように、かくかくと腰を振るって、そのことしか考えられなくなってしまうのでした。ご主人様はそんな僕が好きだといってくれますが、僕はこんな自分が嫌いです。だって…ご主人様を汚していやらしいものをあんなに出してしまうのです。それをご主人様が望んでくれていると知っていても、嫌で仕方ありません。

 「…良い子良い子」

 自己嫌悪に顔を伏せる僕の様子に気づいたのでしょうか。いまだ座り込んだ僕の頭を撫でながら、ご主人様がそう言ってくれます。…その事に少しだけ救われたような気がしました。

 「…お外。行こう」

 気持ち良いので思わず目を伏せてしまう僕の手をご主人様が握ります。きゅっ、と少しだけ力の篭った其の手の親指は、握った僕の手を安心させるように撫でてくれました。

 ―…こんなの断れるはず無いじゃないですか。

 そう心の中でだけ愚痴りながら僕も少しだけ力を入れて、ご主人様の手を握り返します。

 「…はい」

 僕の応えに表情は変えないままで、でも、何時もとは違う浮かれたような色を瞳に浮かべて、ご主人様に連れられて僕は寝室の外へと出たのでした。









 僕とご主人様が出会ったのは魔界に程近い森の中でした。そこで僕は馬車に乗せられて移動させられていたのです。…いや、移動させられていた、と言うのは正しくないでしょう。正確には檻の中に入れられて、『運ばれていた』のでした。
 その時の僕は『商品』以上でも以下でもありません。まぁ、その、つまりは奴隷だったのです。それも特殊な嗜好に応えるために身体を開発し、魔法の薬を沢山飲まされて成長しないようにされて、えっちなことには逆らえなくされた性的な奴隷。キスされただけでくたくたになって、びゅっびゅって白い精液出しちゃう位、敏感なのはこの所為なのです。
 そしてご主人様はこの時、魔王軍に負け、逃げている教団の軍を追撃している時でした。まるで黒い炎から生まれたような、真っ黒い馬に跨り、まるで戦女神のように勇ましく剣を振るい、普段とは想像も出来ないくらい苛烈な美しさを放っていたのを良く覚えています。
 そんな僕たちが出会ったのは沢山の偶然のお陰でした。
 僕を運ぶ商人たちがチェックの厳しくなった関所を抜けるため魔界近くの森を危険を承知で通らなければいけなかった偶然。
 そして、その時、近くで教団と魔王軍が大規模な戦いを繰り広げていた偶然。
 教団側の敗北が濃厚となり、教団側に着いた傭兵がたまたま商人の馬車の居る方向へ逃げ出した偶然。
 それを高い機動力を持つご主人様の所属する騎兵部隊が追いかけた偶然。
 そして傭兵が逃げるために商人たちの馬車を奪おうとした偶然。
 その瞬間、ご主人様たちが傭兵たちに追いついた偶然。
 そして最後に…馬車の中身をご主人様が確認した偶然。
 思いつくだけでこれだけの偶然を超えて、ご主人様は僕を引き取ってくれたのです。

 それでも最初は大変でした。教団の力が強い地域で育ち、調教されていても毎日のお祈りを欠かさなかった僕にとって、魔物は恐ろしいものだったのです。助けてくれたご主人様が魔物だと知ると、何度も逃げ出そうとしました。…その度に他の魔物娘さんに捕まって、ご主人様の元に返されたのですが。

 ―しかし、そうこうしている内に僕は周りの様子が教団の教えとはまったく違うことに気づいたのです。

 人を食べてしまうという教団の教えとは違い、ご主人様は僕の事を一向に食べようとしません。それどころか、僕の連れてこられた城には僕以外にも沢山の人間の男の人が居て、幸せそうに魔物と暮らしていたのです。
 最初は勿論、僕だって信じられませんでした。だって、ずっと魔物は人を食べてしまう邪悪な生き物だと教えられてきたのですから。これは罠で、油断させたところを食べてしまうつもりなんだと思っていたのです。

 ―実際には何度か食べられていたんですけれど。

 僕はいやらしい身体に開発されてしまったので日に何度か射精しないと眠れないのです。最初の内は、それを自分で処理していましたが、途中からはご主人様が胸や足で処理してくれるようになりました。どうして口じゃないのかって…?ご主人様はデュラハンさんなので、お口でえっちしちゃったら首が外れてしまうからです。そうなったら、ご主人様は他のデュラハンさんと同じようにえっちになって、僕に襲い掛かっていたでしょう。もし、そうなっていたら魔物や性行為に怯えていた当時の僕にとって、それは強い心の傷を残したに違いありません。当時は分かりませんでしたが、ご主人様のそう言った気遣いを今ではとても感謝しています。…まぁ、そのお陰で今も足で撫でられたり、胸に抱きしめられるだけで当時の事を思い出して、気持ちよくなってしまうのですけれど。

 まぁ、それはともかく。それでも一向に僕を食べないご主人様に僕は少しずつ警戒心を解いていったのです。
 …自分でも節操が無いと思いますが、仕方ないじゃありませんか。毎日毎日、今まで味わったことが無いくらい優しく射精させられて、夜中に怖くなったら泣き止むまで優しく抱きしめてくれて、眠るときも優しく抱いてくれていたのですから。そんな風に優しくされたのは生みの親から奴隷商に売られた僕にとって、人生で初めてだったんです。

 ―まぁ…そんな訳で、ご主人様に心を許した僕は開発されきった身体を晒して…今朝のような力関係に落ち着いた訳なのでした。






 結局、頷いてしまった僕の手を握り、もう片方の手でバスケットを持ちながら、ご主人様は意気揚々と城門を潜り外へ出ました。勿論、手を繋がれている僕も引きずられていくように城門を潜ります。

 ―あぁあああああああっ!お掃除が遠のいていくうぅうううううう

 冷静になった頭は頷いたことに対しての後悔が一杯でした。届かないものを掴もうとするようにお城に向かって手を伸ばしますが、勿論、ご主人様はお構いなしに僕の手を引っ張ります。

 「…?」
 「…いえ、もう、なんでもないです」

 ずるずると若干の抵抗を続ける僕を不思議に思ったのでしょう。怪訝そうに首を傾げながら振り向いたご主人様に僕は諦めてついていくことにしました。こうなってしまったのは僕の責任でもあるのです。抱きしめられた時点で、詰んでいるとは言え、抵抗できないとは言え、ご主人様がとってもずるいとは言え!!!しかし、それでも、ご主人様に頷いちゃったのは僕なのですから。

 ―それに…ご主人様も楽しそうだし。

 ご主人様はいつもの鎧姿ではなく、余所行き用の薄い青で染められたワンピースを着ています。リボンで装飾され、フリルが沢山着いたワンピースはまるで貴族のお嬢様のようでした。まるで跳ねるようにご主人様が歩くたびにふわふわと裾が揺れるそれは、ご主人様の誕生日に僕がプレゼントした特注品です。プレゼントしてからあまり休日もなかったので着込んでいる姿を見ることはなかったのですが、何処か不思議な雰囲気を纏うご主人様に良く似合っていました。少し奮発して城下街で探したかいがあるものです。
 そんなご主人様の表情は他の人が見ても判別できないでしょう。正直、僕もあまり見分けがつくわけではありません。でも、何時も音もなく歩くご主人様がまるで跳ねるように歩いているその姿からは抑えきれない喜びが伝わってきます。

 ―よっぽど楽しみだったんだなぁ…。

 大事そうにバスケットを握り締めて僕を先導するその姿は、何百歳も年上で、黎明期から魔王を護るエリートであり、人間を震え上がらせる騎兵部隊の隊員とは到底思えません。その身体は僕よりも頭一つ分ほど大きいですが、まるで大きな妹のようです。その微笑ましい姿に、頷いて良かったかもしれない、と自分を納得させながら、僕は一つ聞かなければいけないことを思い出しました。

 「〜♪」
 「そういえばご主人様、何処に行くんですか?」

 そうです。それも重要だったのです。この辺りは魔界の奥地で、住んでいるのは魔物さんばかりです。魔界の淫気に歪められた木々や草木は楽しくピクニックできる雰囲気では決してありません。少なくとも人間にとっては、ですが。その辺りの感覚の違いを知らず、最初のピクニックは触手の森へと連れて行かれて、酷い目に会いかけたのです。流石に二度も同じ轍は踏みたくありません。 

 「湖」

 警戒する僕に対してご主人様はそう短く応えました。

 ―湖…?

 今までにそんな所に連れて行かれたことはありません。しかし、今までの経験からきっと緑色や紫色なんでしょう。少なくとも普通の水のような水色をしていることは決してない事だけは確かです。
 そう身構える僕の手を優しく引きながら、歪んだ木々や草木を掻き分けてご主人様が進んで行きます。木の上から沢山の刺す様な視線―もしご主人様をはぐれたらすぐさま襲われてしまうのでしょう―や、茂みの中から聞こえる男女のぐちゅんぐちゅんという交わりの音と喘ぎ声は全力で無視しました。えぇ。無視しましたとも!!!

 ―…まぁ、その、やっぱりちょっとだけ前が大きくなるのは仕方ないですよね。うん。

 そんな風に自分を納得させていると、いつの間にか視界が開けて僕の目の前に巨大な青色の塊が広がります。

 ―それは湖でした。

 地平線の向こう側まで広がるその青は、まさしく人間にとっても湖であったのです。

 「ご主人様、湖ですよ!」
 「うん」

 思わず嬉しくなって声を上げる僕に向かってご主人様は楽しそうな色を瞳に浮かべました。

 ―あぁ…まさかこんな『普通』の湖を再び見れる日が来るなんて…!

 魔界の中心にあるお城で毎日お仕事している僕にとって、窓の外から目に入る景色は歪んだ木々が立ち並ぶ森ばかりだったのです。それで、気が滅入るというほどではありませんでしたが、『普通』の景色がたまに恋しくなっていたのは人間として仕方がないでしょう。
 そして、それにきっとご主人様は気づいていてくれたのです。

 ―ご主人様はきっとこれを僕に見せたかったんだ…!

 まるでご主人様の優しさが胸に入り込んできたように、僕の心はぐっと暖かくなりました。そして今までお掃除なんて事に拘っていて、ご主人様の優しさに気づけなかったのに申し訳なくなります。

 「…ご主人様。ごめんなさい」

 素直に謝るとご主人様は何も言わず頭を撫でてくれました。…ご主人様はやっぱり変ですが、こういう優しさだけは、誰にも負けていません。
 そのまま少しの間、撫でた後、ご主人様は少し屈みます。そして左手で持っていたバスケットを抱え持つようにして、籐で編まれた蓋を開きました。中にはサンドウィッチが沢山、入っていて、とても美味しそうな匂いが伝わってきます。

 「食べよ?」
 「はいっ♪」

 僕は持ってきたシートを広げました。その上にご主人様が腰を下ろして、バスケットを開けます。さっきは詳しく種類まで見ることが出来ませんでしたが、卵サンド、ハムサンド、コロッケサンドに、サラダサンド、ミックスサンドも、チーズサンドも…他にも沢山のサンドウィッチが詰まっていました。

 「わぁ…美味しそう」

 焼きたてのパンで急いで作って閉じたのでしょう。バスケットに入っていたそのパンは冷めていましたが、それでも、中には焼きたての良い匂いが沢山詰まっていました。そして、ご主人様はその美味しそうなサンドウィッチの中からまず卵サンドを取って、僕に渡してくれます。其の後、自分の分のハムサンドを取って自分の口に運びました。
 ご主人様が食べたのを見て僕も受け取った卵サンドを齧ります。それは匂いに恥じない位美味しいサンドウィッチでした。幾らでも食べられてしまいそうなほど味も匂いも食欲をそそります。

 ―けど、これ何か違う気がする…。

 なんとも言えませんが、何時も食べているサンドウィッチとは違う気がするのです。軍勤めであるご主人様と一緒に行く食堂は少ないお金で沢山食べられて、しかも美味しいと三拍子が揃っています。焼きたてのパンの匂いがそっくりなので、てっきり僕はそこのサンドウィッチをテイクアウトしてバスケットに詰めたのかと思ったのですが、味付けが少し違うような気がしました。しかし、そこの食堂のサンドウィッチも今食べているサンドウィッチも味付けこそ違っても、優劣つけがたいほど美味しかったのです。
 
 ―どういうことなんだろう…?

 悩む僕の様子に気づいたのでしょう。ご主人様は相変わらずの無表情のまま僕を見つめながら口を開きました。

 「私」

 ―…私?

 ご主人様は他のデュラハンさんとは違って、普段、感情も言葉もあまり外に出しません。最低限の言葉しか発さないので、こういう時とても困ってしまいます。

 「作った」

 そんな僕にご主人様はもう一度ヒントをくれました。その言葉の意味について数秒考えた後…僕はそれに気づきます。

 ―私が…作った…?

 「え?これご主人様が作ったんですか!?」

 驚く僕とは対照的にご主人様はあくまで無表情に頷きます。驚いた顔でご主人様を見つめると、いつもより早いスピードでぱくぱくと、サンドウィッチを口に運んでいる姿が見えました。

 ―これは…つまり、その…まさかご主人様が照れているんでしょうか…?

 普段の様子からはあまり信じられませんが、恐らくこれは照れているのでしょう。出なければ何時も冷静でクールなご主人様が両手でサンドウィッチを持って食べるなんて事するはずがないのですから。

 ―いや、驚いている暇はありません。それよりもまず言うべき事があるのです。

 「美味しいですよ!ご主人様っ!」
 「…そう」

 そう言うとご主人様は両手に持ったサンドウィッチを食べるのを止めました。そのまま螺子が切れた時計のように固まっていましたが、数秒もすると何時もの様にゆっくりとした動きでサンドウィッチを片付け始めます。その姿がまるで必死に取り繕うとしているようで、思わず笑いがこみ上げてきました。

 「…何?」
 「いや、何でもありません」

 何時もより赤く上気している顔で睨まれても微笑ましいだけです。何か不服そうな視線で見つめてくるご主人様を見ながら、僕は卵サンドを平らげて次のサンドウィッチに手を延ばそうとします。
 しかし、その手はご主人様のすらりとした右手で掴まれて止められてしまいました。

 「え…?」
 「…笑った」

 珍しいことにあのご主人様が少し頬を膨らませています。しかし、今の僕にはそれを楽しむ余裕がありません。じぃぃぃと見つめるご主人様の視線は怒ってはいないまでも拗ねているような気がするのですから。

 「ご、ごめんなさい」

 折角、作ってきてくれたです。それを幾ら可愛かったからと言って笑うのは確かに失礼でした。そう反省して、僕は謝ります。しかし、ご主人様は僕の手を掴むのを止めません。寧ろ「逃がさない」と言わんばかりに強く強く握り締めてきます。

 「駄目」

 そう言ってご主人様はバスケットを乗り越えてきました。そのまま、動けずにいる僕の上に跨ると、開いている左手で器用に首を持ち上げます。

 ―え…これはいやあの…そ、そういうことですか…?

 胴体と切り離されたご主人様の顔に一気に赤色が射していきます。それと比例するかのようにご主人様の首から、白いほわほわとしたものがどんどん空気中にばら撒かれ、霧散していきました。まるで雪が地上から立ち上って消えていくような幻想的な景色にも見えますが、僕にとってはそれどころではないのです。

 「…よくも笑ってくれたわね…」
 「いや、あの、ごめんなさいあやまるんでゆるしてくださいいい」

 たじたじになって、腰を逃がそうとしますが、がっちりとご主人様の足でホールドされた僕の腰は微動だにしません。諦めて手と足をじたばたさせますが、それでも、ご主人様の身体はまるで揺らぐ気配すらありません。
 そしてご主人様の頭は抵抗する僕をまるで、大好物を見下ろすように艶めかしく見下ろしています。鮮やかな赤色が射したその顔は、さっきまでの無表情とは違い、嗜虐的な笑みを浮かべていました。

 ―デュラハンは首を取ると素直になる種族なのだと聞きます。だから、ご主人様の本性はどちらかといえば此方の方なのでしょう。僕を虐めて精を搾り取る事に最高の喜びを見出すこちらのご主人様の方が。

 「奴隷の分際で私を笑うなんて良い度胸ね…♪」

 そう言ってご主人様はするりと、僕の股間を右手で撫で回します。それだけで、さっき着替えたパンツとズボンが先走りに濡れてしまうのでした。本能が、これまでどれだけ気持ちよくしてくれたのかをはっきりと覚えていて、これからどんなに気持ちよくしてくれるのに期待しているのです。

 「あの…ごめんなさいっ。ホントごめんなさいいいっ」

 『こっち』のご主人様は本当に容赦がありません。もう精液が出なくなって、僕のオチンチンが勃起しなくなっても、満足していなかったらお尻を攻め立てて無理やり勃起させたりもするのです。お尻を指先でぐにぐに広げて、前立腺を刺激されるのは確かに気持ち良いのですが、だからと言って何度もされるのは溜まったものではありません。まるで勃起人形のように扱われるのは僕の身体は大好きですが、僕の心はあまり好きではないのです。

 「駄ぁ目♪私は一人早起きして君の為に頑張って作ったのに…両手に傷を一杯作って、仲間に笑われても頑張ったのに、君は笑ったんだもの。許さない…っ」

 ―うぅ…笑わなければ良かった。

 こうなったらどんな言い訳や謝罪をしても無駄です。既にご主人様の中では僕を虐めて搾り取るのは決定事項と化していて、どんな言い訳も謝罪も、ご主人様の欲情に華を添えるアクセントでしかありえないのですから。
 酷い後悔が体を襲うのを感じながら、僕は身体の力を抜きました。こうなれば、下手な抵抗はご主人様を喜ばせるだけなのです。そうなると本当に手がつけられなくなってしまうのは分かっていました。

 「ふふ…っ♪素直な良い子は好きよ…?」

 そう言ってご主人様は左手に持っていた頭を僕の胸の上に下ろします。そのまま、まるで女王様のように僕に命じました。

 「抱きしめなさい。…勿論、落したら…何時もの様に罰ゲームだからね…?」

 その言葉にぞくり、と背筋に寒気が走り、反射的に僕はご主人様の頭を抱きしめます。
 以前、誤ってご主人様の頭を落してしまった時は本当に酷かったのです。前立腺を何度も責められ、まるで精液タンクのような扱いで泣き喚いても射精させられ続けだったのでした。二日経って、休暇が終わってもまだ顔を出さないご主人様を不思議に思った同僚の人が部屋を尋ねてくれなければ、僕は今、この世にいなかったかもしれません。あの時はそれくらい酷かったのです。

 「ふふ…手から伝わるわ…。君のどくんどくんって熱い興奮…っ♪」

 そう言ってご主人様はゆっくりと右手で僕のオチンチンを撫で擦ります。同時に、僕の薄い草色のシャツを捲くって、乳首を左手でこりこりを弄りました。

 「ひゃんっ♪」
 
 それだけで僕の身体びくんっと震えてご主人様の頭を落しそうになってしまいます。慌てて僕は両手でご主人様の頭をぎゅううぅ、と快感を堪える為に抱きしめました。

 「良い声ね…♪もっと鳴きなさい…♪」

 僕の反応に満足したのかご主人様はより激しく、胸とオチンチンを刺激します。それに奴隷になるために開発されきった僕の身体は抵抗できるはずがありません。長い間、媚薬漬けにされて、女の子よりも感度の上がった乳首をコリコリされる度に、腰が上がってしまうほどの感じてしまいます。オチンチンの方も、もうカウパーでパンツをどろどろにするほどの快感を僕に伝えていました。

 ―気持ち良い…っ!

 挿入もされていない、ただ撫でられて、弄られているだけの感覚です。しかし、僕はそれに腰が砕けそうな快感を見出してしまうのでした。

 「ちなみに…良いと言うまでにイッたらお仕置よ…♪」
 「そんなぁぁ♪」

 こうなったご主人様は僕の我慢する顔が好きなのか、良くそう言います。そして、必死になって耐えて耐えて限界まで我慢しないと「良い」と言ってくれないのです。もし、我慢しないでイッちゃたら僕の大嫌いで大好きなお尻責めがたっぷりと待っているので、僕も必死に我慢しますが、僕の勝率は五割もないのでした。

 「当たり前でしょう…?君は私の孕ませ奴隷なのよ…?一滴だって精子は無駄にさせないんだからぁ♪」

 そう言ってご主人様はパンツ越しに爪の先をぐりぐりと立てます。オチンチンの裏筋に痛いほどの刺激が襲い掛かりました。しかし、僕のオチンチンはあっさりとそれを快感に変換して身体中に走らせます。

 ―あぁぁっ♪駄目えええええっ♪

 僕の堪え性のないオチンチンはそれだけで絶頂してしまいそうになります。しかし、まだご主人様のお許しがありません。もし、イッてしまったらあの甘美で辛い時間が待っています。それだけは…それだけは避けなければなりません。

 「ふふ…♪我慢してるわね…♪もっとよ…もっと…っ♪」

 辛そうに歯を食いしばって快楽に耐える僕の顔を間近で見ているご主人様が嬉しそうにそう言います。ご主人様も欲情しているのか、顔を真っ赤にして、はぁはぁ、と息を荒くついています。普段のご主人様からは想像も出来ないくらい乱れたその姿に、また僕は興奮を掻き立てられてしまうのでした。

 「ご主人様ぁ♪ご主人様ぁぁぁ♪」

 早くお許しが欲しくて僕は必死にご主人様の名前を呼びます。しかし、ご主人様はそんな僕を見て荒く息をつくだけで、お許しの言葉をくれないのでした。それどころか二つの性感帯を弄る指先にどんどん力を込めて、僕を絶頂へと導こうとします。

 「ご主人様ぁっ♪意地悪しないでえええええ♪」
 「意地悪じゃないわ…お仕置きよ…♪」

 ご主人様はぎゅっと乳首を痛いくらいに捻りました。その瞬間、目の前に真っ白になるほどの快感が止めど無く流れます。

 「ひゅうううんっ♪」

 大きく声を上げて僕は身体をがくがくと揺らします。僕のいやらしい乳首はご主人様の指先にごりごりと削るように抓られていました。皮膚が引っ張られ、いやらしいくらいに真っ赤になった乳首は、やっぱり痛みではなく快楽を走らせます。

 ―駄目ぇえええっ♪もう駄目えええええっ♪

 何とか我慢していた僕の身体はその快感に決壊してしまいました。ごりごりとされる乳首もオチンチンも、痛ければ痛いほど気持ち良いのです。とっくの昔にいやらしく調教されちゃったのです。我慢できるはずがありません。

 「出ますっ♪ご主人様っ♪ごめんなさいっ♪出ちゃいますううううっ♪」

 身体はまるで火がついたように熱いのに目の前が快感でどんどん真っ白になっていきます。オチンチンの下に眠る白いマグマはどんどん上ってきていて今にも噴火の時を待っているようでした。それを止めようと必死になってオチンチンに力を入れますが、快感に蕩けた腰ではもう射精を遮ることは出来ません。

 ―そして今にも射精してしまうという瞬間に。

 「良いわ…っ♪ズボンの中にだらしなく射精しなさい♪虐められて痛いのでイキなさい…♪」

 ―っ!

 ご主人様のお許しをいただいて僕の腰はまるで壊れてしまったようにがくがくと揺れます。止めどなく流し込まれていた快感をついに我慢しなくても良くなった僕は、必死にご主人様の手にオチンチンを押し付けて絶頂をより高いものにしようとしているのでした。

 ―あぁ…でも、その前に…っ!

 真っ白に染まりきる寸前、唯一残った僕の理性がそれに抵抗しました。我慢に我慢を重ねて後、絶頂まで一秒もないでしょう。しかし、それでも、言わなければいけません一言があるのです。

 「ご主人様ありがとうございましゅうううううううっ♪」

 その瞬間、僕は絶頂していました。朝の蕩けるような快感とは違い、激しく虐められた快感は僕を朝とは比べ物にはならない絶頂へと連れて行きます。パンツの中でびゅるびゅるって、いやらしく射精した精子はパンツをすぐにびしょぬれにして、さっき着替えた薄い青のショートパンツさえ貫通しました。オチンチンの亀頭のある辺りからじんわりと白い液が漏れだし、ご主人様の手を汚してしまいました。

 「まったく…孕ませ奴隷の癖にまた子種をパンツの中で出して無駄にしたのね…♪」
 「ご…ごめんなさ…い…」

 いまだ僕の中に尾を引く快感は言葉を話すだけでも億劫でしたが、それでも僕は謝りました。だって、僕はご主人様の孕ませ奴隷なのです。一滴残らずご主人様の膣に射精して、ご主人様を孕ませて少しの期間でもお休みさせてあげるための愛玩奴隷なのです。パンツの中に出すなんて本来は許されることではないのですから。

 「パンツを貫くくらい射精して…これじゃ私じゃなくパンツが孕みそうじゃない…♪」

 そう言ってご主人様は見せ付けるように僕の目の前で右手を閉じたり開いたりします。その度に、べたべたになった僕の白い精液は糸を引きました。大事な大事なご主人様が僕のいやらしい白い液で汚されてしまったのを見せ付けるようなその姿は僕の中の欲情に再び火をつけます。

 「君はそんなにパンツが好きなの?私よりこんな布きれを孕ませたいのかしら?」
 「ち、違いますっ!僕はご主人様の孕ませ奴隷だからっ!ご主人様を孕ませる為にあうんでしゅ!!」

 −噛んじゃったあああああああああああっ!
 いや、でも、本当に口を開くのも気力がいるほどに僕はどろどろにされてしまったのです。少し噛むくらいは仕方ありません。えぇ。そうに違いありません。

 「じゃあ…今度は勿論、こっちに出してくれるのよね…♪」

 そう言ってご主人様は少し腰を上げてスカートの裾をたくし上げました。その瞬間、僕の目の前に白い布が広がります。それらが真っ白なシルクで編まれ、左右の紐で留めるだけのパンツであり、パンツから伸びる白いガーターだと認識した時には僕はもう目が逸らせなくなってしまいました。

 ―あぁ…ご主人様あんなに濡らしてる…。

 僕を虐めている間に興奮していたのでしょう。既に白いシルクは吸いきれないほどの愛液を注がれてぽたぽたと愛液を濾過する布になっていました。内股にも沢山の愛液が伝いガーターへと吸い込まれていきます。僕は快感に必死で気づきませんでしたが、ご主人様が腰を落していたお腹に目をやるとご主人の愛液でどろどろに濡れて染みになっていました。それはまるで、女神様がとてもいやらしいことをしている光景のようで、僕の中の倒錯感を掻き立てます。同時に僕のオチンチンが力を取り戻し、またぴんっとお腹に着く位に張り詰めてしまいました。

 「ふふっ…♪下着を見ただけで、もうこんなに張り詰めて…♪君は本当に下着が大好きなのね…♪」
 
 意地悪そうに笑いながらご主人様は両手でするり、とパンツの結び目を解いてしまいました。留まるところがなくなり、一枚の布と化したそれは重力に従ってぱさり、と僕のお腹に落ちます。それだけで僕は、ごくり、と咽喉を鳴らしてしまいました。

 「さぁ…♪見てないで…ね♪」

 そう言ってご主人様は大地に背を預ける僕の身体を両腕で起こしました。そのまま後ろに体重をかけ、まるで逆でんぐり返りのようにころん、とシートの上で横になります。自然、ご主人様に引き起こされた僕は、ご主人様に圧し掛かる形になりました。

 「下着なんかよりも…こっちの方が気持ち良いのよ…?」

 ご主人様は右手を秘所に這わせて、人差し指と中指で唇を開きました。少しやらしく唇をはみ出させていたそこはぱっくりと開かれると鮮やかなピンク色をしています。何度も何度もえっちしても綺麗なピンク色をして、何度も何度もえっちしても飽きずに僕を絶頂へと導いてくれるそこに僕は再び釘付けにされてしまいました。

 「ここは君を気持ち良くする為の場所で、君の精液を何時でも孕ませて欲しくて強請っている場所なんだから…♪」

 ご主人様はそのまま開いていた中指でそこをくりゅくりゅと刺激します。僕のご主人様が、あんなに優しくてあんなに意地悪で、強くて綺麗で可愛い僕の女神様が、自慰をしている姿に僕の股間は否応なく熱くされてしまいました。

 「それなのに…君はパンツの中で出しちゃったのよね…?」
 「ご、ごめんなさい…っ」
 「許さない…っ♪」

 そう言って、僕の腕の中のご主人様は僕の胸に何度もキスをしました。そして痛い快感でイッちゃうこんなにやらしい孕ませ奴隷をご主人様のものだと示すように紫色のアザを残します。

 「許して欲しかったら何度も射精しなさい…っ♪パンツの何十倍も、何百倍も、流し込みなさい…♪精液が枯れはてるくらい私の膣に出しなさい…っ♪」
 「はいっ♪」

 ご主人様のお許しをもらえて僕はご主人様の身体に飛び掛りました。ピクニックシートの上で待ち受けるご主人様の膣の位置を確認するのもそこそこに腰思いっきり突き出します。

 「ひゅうううぅぅんっ♪」
 「んっはあああああああっ♪」

 ご主人様と僕は仲良く嬌声を上げました。ご主人様の膣は何度も何度も味わっています。どろどろに愛液で一杯で、突き込むだけでぐちゅぐちゅいやらしい音が聞こえる所も、最初は嬉しそうにぎゅうぅぅう、って抱きしめるように膣を一杯締めてきて、子宮口もキスみたいにちゅっちゅするのも、僕は何度も味わっています。けれど、どんなに味わっても、昨日もあれだけえっちしたはずなのにご主人様の膣は何時も腰が蕩けそうなほどの快感を僕に与えてくれるのでした。

 「はぁぁ♪ふぅぅんっ♪」

 それはもしかしたらご主人様も同じなのかもしれません。僕の腕の中のご主人様は少し僕のオチンチンが動く度に、ピンク色に染まった吐息を吐きます。嬌声こそ最初のようにあげないものの沢山感じてくれているのは僕の目にも分かりました。

 「ご主人様っ気持ち良いです…っ♪」
 「私も…っ♪私も君のオチンチン大好きぃ♪」

 そう言ってご主人様は僕の腰を逃がさないようにがっちりと捕まえてしまいます。

 「一突きで私の気持ち良い所、全部擦りあげてるのぉ♪コリコリした奥もっ♪ぐちょぐちょの入り口もっ♪クリトリスの裏もっ♪全部っ全部ぅっ♪」

 自分の言葉に興奮したのか、ご主人様はより強く僕を抱きしめてきます。痛いほどの拘束ですが、今の僕にはそれがとても嬉しいのでした。こんなにやらしい奴隷の本性でさえ、ご主人様は喜んで受け入れてくれているのです。それだけで胸が一杯になって、射精へと導かれるほどでした。

 「僕も…気持ちいいです…♪コリコリで吸い付いてくる子宮口もっ♪ぐちょでぐちょで一杯抱きしめてくれる膣もっ♪ざらざらした天井もっ♪」
 「当たり前…よぉ♪」

 ご主人様は生意気なことを言った奴隷をたしなめるように僕の乳首にキスをして甘く噛みます。快感で思考がどろどろにされている僕にとって、それは堪えようのない快感でした。

 「ここは君しか知らないっ君が開発したっ君を絞るためだけにある膣なんだからぁ♪」

 そう言ってご主人様はぐいぐいと腰を僕に押し付けてきます。突きこむ角度が少し変わって、その度に僕の身体に違う快感が走りました。既に入れたときから興奮が最高潮で、絶頂間近だった僕にとって、その快感は決定的なものになります。

 「ご主人様っ♪出ますぅぅ♪」
 「出しなさいっ♪一滴残らず子宮にっ♪外したらお仕置だからねっ♪」

 ご主人様はより深く僕を誘う為か足に力を入れました。その瞬間、ぱちゅんっ!と肉の弾ける音がして、僕とご主人様の間にまったく隙間がなくなり、僕は堪えきれず射精してしまいます。

 「くぅぅぅぅん♪」

 射精がびゅるびゅると放たれ、子宮口へと飛び込みます。しかし、ご主人様の膣は並みの射精では満足できないのか、よりさっきより強く締め付け、激しく脈動して、僕を絶頂へと導き、もっと精を絞ろうとしていました。その動きに僕のオチンチンの中に残っていた射精の残りカスが絞られ、鈴口から漏れ出るようにご主人様の膣に解けていきます。

 「はぁ…ぁあ……♪」

 幸せそうに蕩けたご主人様の表情と、膣の激しい締め付けを見る限りご主人様も絶頂してくれたのかもしれません。僕はそれが嬉しくて、また腰を動かし始めます。

 「んっ♪ふふ…♪ねぇ…君。あそこの茂み見なさい…♪」

 また必死に腰を動かしだした僕に向かって、ご主人様の頭が目線でその茂みを示します。僕は導かれるまま、そちらに目を向けると目と目が合いました。

 ―え…?

 そこにいたのはワーラビットの少女と、僕と同じくらいの少年でした。その二人が僕たちの交わりを欲情に濡れた目線で必死に見つめているのです。少女がご主人様が持っているバスケットと同じものを手に握り締めているので、恐らく、僕たちと同じようにピクニックに来たのでしょう。そして、先客である僕たちの姿を見つけてしまったに違いありません。

 ―だ、駄目っ!

 見られていると意識した瞬間、まるで氷でも差し込まれたように欲情に染まった頭が少し冷静になりました。しかし、同時にそう意識することで自分の中に新しい熱が生まれるのを感じます。

 ―とりあえず抜かないと…っ!

 そう判断して引き抜こうとした僕の腰をご主人様の足ががっちりと止めてしまいました。

 「何をしてるの…?」
 「だ、だってご主人様、見られてます…っ」

 今までは感じませんでしたが、意識してしまったら二人の視線がまるで刺さるように感じます。僕が突きこむ度にぱちゅんぱちゅんと音を鳴らして、美味しそうに揺れるご主人様の胸も、すらりとしたご主人様の足も、ぐちょぐちょになったご主人様あの秘所も、真っ赤になってピンク色の吐息を放つご主人様の表情も全部全部、僕だけのご主人様なのに見られてしまっているのです。
 そして、それは僕も同じです。快感に震える足で必死になって体重を支えながら、はぁはぁ言って、発情した犬のように必死に腰を振るい、射精したいと、種付けしたいと、それだけしか考えられない孕ませ奴隷の姿が見られているのです。僕は恥ずかしくて顔から火が出そうなほど真っ赤になってしまいました。

 「良いのよ…♪見せ付けましょう…♪」

 そう言って、ご主人様の足は奥の奥へと誘う様に、より密着させるように足を絡めてきます。

 「で、でも…っ」

 ―こんな調教なんてされたことないし…っ!

 ご主人様が良いと言っても、見せ付ける、と言ってもそれでも恥ずかしさがなくなるわけではありません。しかし、引き抜くことも出来ず、おどおどとする僕にご主人様は怒ったのかまた乳首を甘噛みします。

 「ひゃぅ♪」
 「君は…誰の孕ませ奴隷なの…?」
 「ご、ご主人様のですっ」
 「そう。じゃあ、私は…?」
 「ぼ、僕のご主人様ですぅっ」
 「なら、何も疚しいことはないじゃない…♪」

 そう言ってご主人様は鬱血した僕の乳首を慰めるようにちろちろと唾液を塗りこみます。その度に痛みで敏感になった僕の乳首はびくっと震えてしまうのでした。

 「でも…っっ!」
 「…君は私のこと好き?」

 思いもよらないことを聴かれて僕の思考は一瞬、止まってしまいます。
 そりゃ勿論、ご主人様のことは大好きです。首が外れてしまうとこんな風に意地悪をされることもありますが、それも愛情表現だと分かっていますし、何時もはとても優しいのですから。

 ―けれど、僕のようなやらしい奴隷がご主人様に好きと言っていいのでしょうか…。

 僕の身体は成長することはありません。乳首やオチンチンだけじゃなく、鞭で叩かれただけでも気持ちよくなってしまうようなやらしい身体なのです。お尻は他の男の人のオチンチンを受け入れて喜ぶような穴に変わってしまいました。誰が如何見ても僕は穢れた奴隷なのです。

 ―そんな奴隷が女の人を好きだなんて言って良い筈がないのです。

 だから、僕はずっとご主人様の孕ませ奴隷でした。恋人や夫なんて関係にはなれるはずもないのです。そんなことになれば、僕の大好きなご主人様が穢れてしまうのですから。だから、僕はずっとご主人様に好きと言うのは避けてきました。

 「もし、好きなら好きと叫びなさい…♪あそこの二人の事なんか忘れて…私のことだけ感じなさい…っ♪」
 「ご主人様…っ」

 ―でも、僕はっ!

 そう反論しようとした僕の唇にご主人様の細い指が押し当てられます。それに思わず黙り込んでしまい、ご主人様は満足そうに笑いました。

 「君は私の孕ませ奴隷なのよ…♪好きじゃないと許さないから…♪」

 そう言って、ご主人様は器用に体重を移動させて、僕の方へと、倒れこんできます。さっきとはまるで逆のモーションで、今度は僕がピクニックシートに寝かされてしまいました。そのまま、ご主人様の身体は僕のお腹に手を着いて、淫らに腰を振るいます。ごりごりとオチンチンが削れる感覚が襲い、再びオチンチンに耐えようがない快感が戻り始めました。

 「私は好きよ…♪私専用の孕ませ奴隷が大好きよ…っ♪」

 聞かせるように叫んでご主人様は自分の胸をワンピースの上から見せ付けるように揉みしだきます。服の上からでも分かるほどの形の良い胸はご主人様の指を柔らかく受け入れ、その姿をいやらしく変えていました。
 自分で胸を揉んで興奮したのでしょう。ご主人様の腰の動きはどんどん早くなり、いやらしい肉のぶつかり合いの音が辺りに響きます。単純に上下していただけの腰の動きは円のような動きを取り入れて、より快楽を貪ろうとしていました。

 ―もうっ…!

 限界でした。今までずっと秘めていた想いを見抜かれて、感情が決壊していきます。最後の砦でもあった我慢が崩されて、僕も快楽を貪る為に腰を振るいながら口を開きました。

 「好きですっ♪僕も大好きですっ♪ご主人様の奴隷で幸せですぅぅぅぅっ♪」

 ずっと言いたくて言いたくて仕方のなかった言葉は、するりと出てきました。しかし、その言葉はそれだけでは止まりません。まるで快楽をどんどん引き出すように、口から出てきます。

 「ごめんなさいっ♪やらしい孕ませ奴隷なのに好きでごめんなさいぃぃ♪」
 「許してあげるっ♪だから、沢山出しなさいっ♪」
 「はいぃっ♪」

 もう僕にはこの性交を見ているであろう二人のことなんて頭にありません。ただ、ご主人様にお許しをいただけたことが嬉しくて、必死になって気持ちよくなってもらおうとご主人様を突き上げます。その度のご主人様の膣は震えて、愛液に塗れた膣壁で沢山舐め上げて歓迎してくれました。

 「きゅふぅぅ♪」
 「良いわ…っ♪その顔可愛い…っ♪」

 そう言ってご主人様は腰を落とし、前後に揺らします。勿論、それだけでも気持ち良いのですが、今までの激しい快感に慣れきってしまった僕にとっては焦らされているようにしか感じません。必死に腰を動かそうとしますが、がっちりと密着させられているので、殆ど動かす余地がありませんでした。

 「ご主人様っ♪動かしてえええええっ♪」
 「駄ぁ目…♪私の膣をもっと味わいなさい…♪」

 ご主人様の膣は動かないでいるときもきゅっきゅ、と僕のオチンチンに吸い付いてきます。呼吸の度に少しだけ合間が出来て離れるのですが、それがまた沢山の唇でキスされているような快感を僕に与えました。それだけではありません。ご主人様の一番大事な子宮の扉でもある子宮口はねっとりとした愛液を沢山塗しながらずっとバキュームしているように吸い付きます。

 ―あぁ…ご主人様ぁ♪

 僕にとっても気持ち良いその律動はご主人様にとっても快楽足りえるのでしょう。僕の腕の中で荒い息をあげるご主人様は今にも絶頂を迎えそうなくらいいやらしい表情をしています。普段のご主人様とも、僕を虐めているご主人様とも違うその表情は、まるでメス犬のようでした。
 その表情に誘われるように、僕はお許しも貰っていないのに、ご主人様にキスしてしまいます。

 「んっ…♪ちゅぅぅ♪」

 一瞬、驚いたように身をすくませたご主人様ですが、すぐに立ち直って、舌を絡ませてくれました。朝のように甘くて甘くてとろとろになってしまいそうなキスが僕たちの間で始まります。お互いの唾液を塗りたくって、カクテルを作る様なそのキスは、動けないもどかしさを補ってあまりある快感を僕に与えてくれました。もぞもぞとしたもどかしさは少しずつ快感に変わり、何時しかオチンチンから吹き上がるほどの熱さに変貌してしまいます。

 ―イくっ…♪イッちゃいます…っ♪

 唾液を絡ませあうキスをしているので、それをご主人様に伝えることは出来ません。代わりにより激しく舌を突き出し、絡ませあいました。普段に無い僕の様子にご主人様は察してくれたのでしょうか。ご主人様も僕に応えながら、腰を再び動かし始めてくれました。

 ―幸せぇ……っ♪

 大好きなご主人様に貪られ精を提供できるこの瞬間が、ご主人様に大好きと言ってもらえて、ご主人様に大好きと言えたこの性交が、僕にとっては蕩けてしまいそうなほど幸せでした。しかし、そんな幸せな時間もそろそろ終わりに近づいてきています。
 僕のオチンチンは既にもう限界で今にも精液を噴出しそうなほどでした。それを我慢できていたのは少しでもこの幸せな時間が続いて欲しかったからなのですが、それももう無理になってしまいます。

 ―イくううううううぅっ♪

 精液が飛び出していく熱い感覚と殆ど同時に、僕の耳にぱちゅんっ、という音が聞こえます。それは孕ませ奴隷の僕にとって、再びご主人様の最奥に辿り着き、そこで射精することができる喜びの音でした。
 どくんっどくんっ、という快楽と、奉仕の音が僕の身体を駆け抜けます。最奥で放たれた射精は、ご主人様の子宮口にとくとく、と吸い上げられて無事に子宮の中へと入って行ったようです。

 ―良かった…。

 孕ませ奴隷としてきちんとご主人様に奉仕出来た喜びと痺れるほどの快感を味わった後の倦怠感に、僕はご主人様の頭を必死に抱きしめて何時までもそうしていました。




 僕が身体を動かせるようになったのは、日も暮れて辺りが暗くなりだした頃でした。

 −うぅ…不覚だ…。

 既に快楽が通り過ぎた僕にとっては、最中のことは火が出るほど恥ずかしい出来事なのです。あれから抱き合いながら、ご主人様に何度も何度も騎乗位で絞られ続けて泣き叫ばされてしまったのですから当然と言えるでしょう。見られていることも忘れて泣き叫んで射精させてもらえる許可を乞うたり、連続で何度も何度も射精させられて泣き叫んだのは当時にとっては快感でしたが、冷静になった今の僕にとっては黒歴史も良いところです。

 「出来た」

 そう短く応えたご主人様は既に首を定位置に置いていつものような無表情に戻っています。その手には結局食べられずに殆ど残ったままのバスケットを持って、逆の手で僕の手を握っていました。

 ―ちょっと勿体無かったかな

 初めて食べるご主人様の料理は、比較的、簡単に作れるサンドウィッチだったけれど、とても美味しかったのです。出来ればもう少し食べたい気持ちもありました。

 「…後で」
 
 ―たまにご主人様は僕の心が読めているのではないかと思う時があります。

 本当は勿体無さそうにバスケットを見る僕の視線に気づいてそこから推察しただけなのでしょうが…しかし、こうまで完璧に見抜かれると、それだけではない気がしないでもないのです。

 「…行こ」

 そう言ってご主人様は僕の手を引いて歩き出します。その手は僕の精液と愛液でかびかびになっていました。無論、こんなところにシャワーなんてありませんし、手を流す事が出来なかったのです。当然、お互いの服装は精液と愛液で濡れ濡れで、嗅いだだけで情事の後だと分かるほどでした。

 ―あ、そういえば…ここは湖なのです。水ならすぐそこにあるではありませんか。

 そう思って僕は足を止めました。それにご主人様は怪訝そうに首をかしげて振り返ります。

 「あの…せめて水浴びだけはしていきませんか?」

 別に今更、情事の後だとバレるくらいで恥ずかしい訳ではありませんが、かびかびになった身体は少しばかり歩きづらいのです。魔王城まで少しばかり距離がありますし、その前に汚れを洗い落としておきたい気分でもありました。

 「駄目」

 しかし、ご主人様はそれを許してくれません。逃がさないように僕の手をぎゅっと握り締めてまっすぐと見つめてきます。

 「え…でも…」
 「スライム」

 ―え…?

 その言葉に後ろを振り向くと湖がうごうご、と蠢き、ぴょこんとスライムさんが生まれました。ヘッドドレスのような髪飾りとメイドさんのような衣服を着ているようなそのスライムさんは、申し訳なさそうに僕たちに手を振っています。

 「え?えぇええええええ!?」

 ―つまり僕が湖だと思っていたのは大きい大きいクイーンスライムさんだったのです。

 あまりのサイズとまるで湖のように静かな湖面ですっかり誤解していましたが、その独特の服装はスライムさんたちの突然変異種のクイーンスライムさんに他なりません。

 ―…と言う事は今までの僕たちの情事はずぅぅぅっとクイーンスライムさんに見られてたって事…?

 その事に思い至った瞬間、僕の顔に火が灯った様に真っ赤になってしまいました。

 「ありがと」
 「これくらい構いませんわ」

 ご主人様はそんな僕に構わずクイーンスライムさんと言葉を交わします。

 ―多分、ご主人様はクイーンスライムさんにお願いして湖の振りをしてくれるように頼んでくれたのでしょう。

 その短いやり取りだけでご主人様が、普段どれだけ僕の事を見てくれたのかが伝わって、顔と同じくらい胸が暖かくなりました。

 「行こ」

 再びご主人様は歩き出して、僕はその手に連れられていきます。しかし、僕はその前に言わなければいけない一言があるのです。

 「あ、あのっ!ありがとうございましたっ!」

 本当はしっかり頭を下げて、お礼を言いたかったのですが、拗ねた様に何時もより強めに手を引くご主人様は今度は止まってくれませんでした。僕は仕方なく、振り向きながら大声で言います。それが伝わったのか、クイーンスライムさんは微笑ましいものを見るように笑って、小さく手を振ってくれました。
 しかし、そんなやり取りがご主人様には気に入らなかったのか、さらに強く力を込めて僕の手を握ります。まるで離さないように、握り締めたその手は少し痛いくらいでした。

 「あ、あのご主人様…?」
 「…何?」

 思わず呼びかけた僕に応えたその声は、何時ものご主人様らしくないほど刺々しさに満ちたものでした。思わず身を竦めたくなる様な、迫力でしたが、僕は勇気を出して口を開きます。

 「今日は…その、ありがとうございました!とっても…楽しかったです」
 「…そう」

 短く言ったその声はさっきまでとは違って、刺々しさがなくなっていました。手に込められた力も、ふっと緩み、何時ものご主人様のように優しく手を引いてくれるようになります。
 ご主人様が拗ねていた理由は僕には良く分かりませんが、とりあえず不機嫌ではなくなってくれたようでした。それに僕はご主人様に隠れて胸を撫で下ろします。

 「ご主人様」
 「…?」
 「大好きです…っ♪」
 「…私も」

 そのまま二人で手を繋いで、ゆっくりと帰り道を歩きます。
 周りはいつもと同じ、紫色に変色していたり歪んでいたりする木々ばかりが生えていました。朝までであれば、ちょっと腰が引けていた光景です。しかし、ご主人様と手を繋いでいるだけで、こんな森も悪くないかな、と思わないでもないのでした。





 〜おまけ〜
 
 ―…今日も…またやりすぎてしまった…。

 湖に誘ったときは別に襲い掛かるつもりなどは無かった。普段、内政を手伝っていて、小さな身体で必死になって頑張っているあの子の気晴らしになれば、と思っただけなのに…気がつくとあの子を押し倒して、弄り倒している自分がいる。

 ―ホント…救いようがないな私は…

 昨日もそうだ。久しぶりに二人の休日が合わさったとは言え、あの子が戦場の最前線とそう変わらない睡眠時間しか取っていないのは知っている。知っているのに、いざ、あの子の傍に行ってしまうと、甘い体臭と、誘うような表情に、狂わされてしまうのだ。

 ―この子は自分の身体を好いてはいないと知っているのに…。

 親に売られて、人間に開発されて、どんな刺激でも快感として受け止めてしまう淫らな身体をこの子はコンプレックスとしているのは知っていた。其の事で人に対しても、線を引いて接していることも分かっているし、私に対しても「孕ませ奴隷」という妙な立場で二の足を踏み、恋人や夫という甘い関係になろうとしないのもそれが原因だと理解している。けれど、それらの理解をあっさりと超えてしまう様な魔性の魅力をこの子は持っていた。

 「ん…」

 私の胸中など知りもしない子が隣で寝返りを打った。白い肌にかけられたシーツが肌蹴てピンク色の可愛らしい乳首が見えるだけで、どきり、とさせられる魅力がある。今日も湖で虐めて、さっきベッドの上でも虐め続けたそこは、私の手で刻まれた赤い傷を行く筋か残していた。それがまた完成された美術品に傷をつけるような背徳感を私に与える。しかし、それは本当はこの子を事を思うなら、いけないことだ。

 ―私がもっと上手く人と付き合える魔物であれば…。

 昔から剣を振るって、戦い一筋で生きてきた。私自身が魔物であった頃から、人間相手に後れを取ることは殆どなかったし、今だって、私に勝てる人間があまりいないだろう。…しかし、今ではその経験が恨めしい。後悔してもしょうがないのは分かっているが、もっと人に接して置けばよかった。
 私が普段、無口なのもそれが影響している。魔物娘となってもデュラハンは人間の精を必ず求めるというわけではない。その為、昔からデュラハンとして魔界の一線で戦ってきた私にとっては、人間と交わるなんて考えられもしなかったし、其の必要も見出せなかった。
 しかし、魔物娘となった同僚はどんどん本能に陥落し、男を捕まえていく。そんな同僚を見下し、しかし、同時に心のどこかで羨ましく思いながら私はどんどん同僚たちの中でも孤立していった。その経験から私は今でも、首が外れなければ、必要最低限の事以外を語らない。
 
 ―しかし、それが変わった。この子に出会ってから…。

 私が始めてこの子に出会った時、この子は馬車の荷馬車に大事に置かれた檻に閉じ込められていた。最初は檻の上に、布がかぶせられており、中を見ることは出来なかったが、檻はしっかりと固定されており、大事に運ばれていたのが一目で分かったのを覚えている。ふと好奇心をそそられて何を運んでいるのだろう?と布を取った時、私は一目で彼に目を奪われることになった。
 スプーンのようなしっかりした銀色ではなく、月の光のような淡い銀の髪。はっきりと怯えを見せるその目は黒曜石で出来ているように艶やかな黒だった。震えるその顔は、まるで女の子と見分けがつかないほど線が細く、唯一、見ているほうが痛々しいほど上を突いていたこの子のオチンチンが男である事を伝えてくれている。白い肌は白磁そのもので、私はそれを最初、美術品だと思ったほどだった。
 今まで人間の男なんて興味も無い振りをし続け、意地を張り続けた私が、人間の男に転んでしまうほどの魅力を持っていたこの子がそこにいた。私はすぐさま、本能に従い保護してた訳だが…この子は怯えに怯え最初の頃は苦労の連続であった事を覚えている。それを乗り越える為に、人間と番になった同僚に何回も何回も相談して、この子に接した。自然、同僚と私の距離も近づき、今では昔のように孤立しているということはない。

 ―私の全ては変わった。価値観も、環境も。何もかも。

 それは全て目の前で寝ている子悪魔のお陰だ。魔物娘としての喜びを教えてくれ、孤立していた私が仲間の輪に戻るきっけになってくれたのは感謝しても仕切れない。

 ―しかし…私はこの子に何も返せていないのではないだろうか…。

 私はずっと剣一本で生きてきた。人との接し方どころか、同僚との接し方でさえ、ままならない。この子に優しくしようと、必死になって接するものの、空回りすることが多々ある。

 ―今日の湖の一件だってそうだ。

 この子が水浴びをしようと言ってくれたのは自分だけのためじゃないだろう。彼もそうだが、私の身体にも愛液と精液がこべり着いてべたべただったのだ。それを洗い流す為に気を利かせて言ってくれたに違いない。

 ―…けれど、私はそれに嫉妬しか出来なかった。

 この子はあの湖がクイーンスライムであるだなんて知らなかっただろう。本当に水だと思って、勧めてくれただけだ。
 それをクイーンスライムに搾られ、精を吐き出すこの子を想像してしまったから、嫉妬した…だなんて子供にもほどがある。

 ―明日はもっと優しくしてあげよう。…出来るかどうかは分からないけれど。

 何時も同じことを決めて結局達成できていないのを盛大に無視しながら、私は彼の頭を胸に抱いた。服も下着もつけていない素肌にこの子のすべすべした肌が当たって気持ち良い。

 「お休み。私の愛しい子…♪」

 そう呟いて私もこの子と同じように目を閉じる。せめて夢の中でだけはこの子を甘えさせてあげられるように、と願いながら、私もゆっくりと夢の中へと落ちていった。





12/08/13 12:54更新 / デュラハンの婿

■作者メッセージ
 どうも。こんばんは。
 何時もお姉さんに搾られてぴゅっぴゅするショタが逆襲するシチュも大好物ですが、
 淫乱でマゾなショタがお姉さんに搾られ続けるシチュには敵わないと思うデュラハンの婿です。異論は山ほど認めます。

 さらにお姉さんが情事の後、それを後悔しているとさらに倍率ドンですね!!!いや、まったくこの話通りのシチュな訳ですが!!!

 今回、短い割りにほとんどのシーンがエロシーン化してるわけですが私が悪いんやないんや。
 淫乱ショタの魅力が私を狂わせただけなんや…。

 ただ、特にエロくともなんともなくてもうしわけないです…。

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33