その2
―…ふぅ。
―まぁ…こんな所でしょうか。
―ちょっと山には悪い気がしますが。
土石流のようにして土や石を巻き上げながら私をフィエロ以外を全て下へと押し流すそれは一体、どこまで続くのか私にだって分かりません。今まで声帯や咽喉が上手く作れなかった私は詠唱を前提とする魔術を使ったことなどなかったのです。まして三重詠唱など初めて行ったので、どれほど後を続くかなんて想像もできないのでした。
―まぁ…きっと死んではいないんでしょうが。
―精霊の力を借りてる訳ですしね。
―水の精霊さんありがとうございます。
元々、精霊さんは人を傷つける魔術を好んではいません。特に水の精霊さんはその傾向が顕著で、癒しの術を得意としているのです。私が使ったアド・プレッシャーも元々は農耕、開拓用に開発されたものであり、攻撃用では決してありません。少なくとも相手を傷つけるのを目的とした魔術には水の精霊さんは力を貸してはくれないのです。今回の様に元々、それ用ではない魔術を攻撃に使う時には、力を貸してくれたとしてもその命を奪う所までは決していきません。
―まぁ…全てフィエロの受け売りなんですが。
―だから…出来ればこんな方法は取りたくは無かったのです。
―確信が持てなかった訳ですしね。…まぁ、私としてはあんな連中に死んじゃっても良いと思いますが。
―流石にそれは…言い過ぎじゃないかと。
―容赦しない(キリッ)とか言ってた人に言われたくありません。
―…喧嘩なら買いますよ?
―…いい加減にしなさい。
自分自身にからかわれ、自分自身に怒り、そして自分自身を諌めるという光景。それはとても不毛な事であったでしょう。しかし…それが私であるのです。あくまでただのスライムでありますが、こうして胸の内に別の自分を飼っていて…喧嘩したり、今回の詠唱のように協力したりする。幼いながらにそんな自分が他とは少しだけ違うのを理解していましたが、特に何か特殊な能力がある訳ではありません。
―…それよりフィエロの事ですね。
―顔色は少しマシになりましたが、脈はどうですか?
―正常です。…どうやら少し落ち着いたようですね。
「…良かった」
思わず安堵の感情が言葉として出てきます。三重詠唱の為にしっかりと整備された咽喉は人に近い発音が可能になっていました。それを知ればフィエロは悲しむかもしれませんが…今回ばかりは不可抗力でしょう。そうしなければ私も彼も命が危なかったのですから。きっと彼も許してくれる…と思います。多分。
―そんな事より彼を別の場所に運ばないと。
―そうですね。少しは落ち着ける場所に…後、濡れて汚れたコートも脱がさないと…。
―…脱がす…。
―そこに反応しないで下さい。自分だと思うと悲しくなってしまうので。
―二人だって本当はドキドキしてるじゃないですかー!やだー!!
仲間の言葉通り、私の胸は確かにドキドキと高鳴っていました。でも、それも仕方のない事でしょう。だって、フィエロは私にとって大好きで、とても大事で、そして物語の王子様のように助けてくれた愛しい人なのです。そんな人を脱がすとなれば、やはり女としてどうしても興奮してしまうでしょう。だから、私はあからさまに反応した子に比べれば、淫乱なんかじゃありませんし、エロエロなんかでは断じてありません。
―自分が比較対象って…虚しくなりませんかそれ。
―…うるさいですよ。とりあえず運ぶのは何時もの住処にしておきましょうか。
―そうですね。あそこならば、人も動物もそうは寄り付きませんし。
そう仲間内で結論を出した私はそっとフィエロの身体を背中に背負いました。普段、背負われている側である私がこうしてフィエロを背負うというのは妙に新鮮です。まだはっきりとした意識を取り戻さないのか、胡乱な瞳のフィエロは決して私を頼っているわけではないのでしょう。しかし、背中に感じる体温と重みが何となくそう感じられて、私の胸はそっと高鳴るのでした。
―よっと…では、フィエロの身体を固定しますね。
―お願いします。代わりに私は足を進めるのに集中しますから。
―…じゃあ、私はフィエロの体温に…。
―働きなさい。
とは言いつつも、彼女がフィエロの体温に心奪われるのも分からないでもないのです。そっと背中に倒れ掛かるフィエロの重みも体温が一緒になっているのは添い寝をしている時くらいしか感じられないものなのでした。そして…あの独特の全身でフィエロを包んでいるはずなのに、逆に包まれているような暖かくも甘い感覚を思い出してしまうのです。私の下腹部をキュンと疼かせて蕩けさせる感覚を思い出した私は一つ熱い吐息を吐き出してしまうのでした。
―…欲情してる暇はありませんよ?
―わ、分かってますってば…!!
―…ハァハァ。
―…貴女はもうちょっと自重しなさい。いや、本当に。
しかし、欲望に正直な彼女がいてくれるからこそ、我が振りを省みられると言う事でもあるのでしょう。そういう意味では私達はバランスが取れていると言えているのかもしれません。もしかしたら、淫らな欲望という面を一手に引き受けて成長した彼女がいなければこうして運んでいる間にも欲望に負けてしまっていたのかもしれないのですから。そう考えると今にもフィエロに襲い掛かりそうな彼女に感謝の気持ちが……湧き出るはずもありませんでした。
―ともあれ…自重しなさい。もうすぐ水源地なんですから。
―…つまり戻ったらフィエロを脱がしてあんな事やこんな事をしてもいいんですか!?やったー!!
―違います。…そもそも…彼の健康を害する可能性が高いというのに襲えるはず無いじゃないですか。
魔力を枯渇させたフィエロをどうやれば元の状態に戻してあげられるかは分かりませんが、少なくとも今の彼を襲っても問題は解決しないでしょう。勿論、彼の事が大好きであると自覚した今の私にとって、フィエロの体温を感じるだけでも襲いたくなってしまうのは事実です。しかし、今はそんな欲望に負けている暇はありません。どうすればフィエロが元に戻ってくれるかを考えるのがまず先決なのですから。そういう意味では人里に降りて医者を頼ったほうがいいのかもしれませんが、彼らと何処で鉢合わせすると分からない以上、迂闊に山を下る訳にも参りません。
―まぁ…彼らを吹っ飛ばしたのは私が生まれたスライムの群生地方向なのです。
―途中でスライムやら魔物娘に拾われてる可能性が高いので、鉢合わせになってもこっちに構えるない可能性は高いでしょうが。
―ハァハァ…あ、気付きましたよ、フィエロ。
―貴女ってば本当に…いえ、でも、お手柄ですよ。
もう少しで水源地に着く頃ですが、これからどうするのかフィエロとも話し合わなければいけません。意識を取り戻して早々…と言うのは心が痛みますが、彼の健康に関する問題でもあるのです。ここは心を鬼にしてフィエロから話を聞きださなければいけないでしょう。
「フィエロ。大丈夫ですか?」
「……うー…か…」
「はい。今、私達の住処の方へと昇っている所です。彼らは下の方へと流れていったから昇っていたのですが…やはり貴方を医者に見せた方が宜しいのでしょうか…?」
「…いや…問題無い」
「…了解しました」
短く応えた後、フィエロはそのままぐったりとして動かなくなってしまいました。恐らく気力と体力も尽きてしまったのでしょう。元々、そのどちらにも大きく影響している魔力が枯渇しているも同然なのですから当然です。ハァハァと荒い息が背中にかかる感覚が妙にこそばゆいですが、それがなければまた意識を失っていると思っていたかもしれません。
―…魔力を分け与える術…なんてのがあればいいんですけれど。
―あるかもしれませんし…フィエロに聞いてみますか?
―…この状態で答えられるとは思えませんね。詠唱は兎も角、構成を理解しなければいけませんし。
―…ですよね…。
ふと浮かんだアイデアですが、それも仲間達にあっさりと否定されてしまいました。確かに魔術と言うのは詠唱だけで成り立つものではありません。その根幹となる魔力の変換を行わなければいけないのです。一般的に『構成』と言われるそれは先の数式の例に当てはめるとするならばxなどの変数を数字に直す作業に当たるでしょう。その数式数式に合わせた変数を埋め込まなければ、どれだけ数式を長くしても答えが出ないように魔術は発動しません。
そして、詠唱そのものよりもその『構成』と言うのが魔術における大きなハードルの一つなのです。詠唱だけすれば魔術を使えるのであれば、皆、それを使っているでしょう。しかし、この『構成』は魔術における基礎的な知識がなければ土台無理ですし、数式が違えば答えが違うように万人に一般化できるものではありません。一流の魔術師はこれを感覚で行っているので尚の事、『構成』を人に伝えるのは難しくしているのです。
―そんな難しい講義を今のフィエロが出来るはずもありませんし…。
―ただでさえ魔力の受け渡しって詠唱や構成が面倒そうですものね。
―面倒なのはあんまり好きじゃ…あ、でも、フィエロに焦らされたり、一晩中、ご奉仕強要されちゃうのは面倒じゃありませんよ♪
―…貴女、本当、ブレませんね。同意しますけど。
そんな馬鹿な事を仲間内で話している間に私達の両足は元の住処へと辿り着きました。聞きなれた水のせせらぎが今は何故かとても懐かしい感じがします。その間に色々とありすぎた所為でしょうか。離れていたのは二時間も経っていなかっただけなのに、一ヶ月はここに帰ってきていないような気がするのでした。
―まぁ…それはさておき、フィエロの汚れた服を脱がさないといけませんね。
―D・V・D!D・V・D!!
―…なんですかそれは?
―いえ、何となく頭の中に浮かんだだけなんですが。
―馬鹿な事を言ってる暇はありませんよ。脱がす前にフィエロの許可を取らないといけませんし。
制止する仲間の言葉に本筋を思い出した私はそっとフィエロの様子に意識を傾けました。少し身体が休まったのでしょうか。その断続的な吐息はさっきよりも少しだけ穏やかなものに代わっていました。額に山ほど浮かんでいた冷や汗も今は止まって、顔色も青ざめたものから本来の色へと近づいています。まだまだ動けるようになるには程遠そうですが、少なくとも最悪のケースは乗り越えたと思って良いでしょう。
「フィエロ…その…服の事なのですが…泥水で汚れていますし…脱がしても構わないでしょうか…?」
「あぁ…」
―封印が解けられた!!
―はいはい。それより早く身体を動かしますよ。
短く答えられたフィエロの言葉に私の胸がきゅんと疼いて、高鳴りました。勿論、その言葉は汚れているコートだけを脱がすのを意図したものなのでしょう。しかし、言葉尻だけ捉えればフィエロの服を全て剥ぎ取っても構わないのです。勿論、彼はそんなものを意図したものではありません。ありませんが…やはり、どうしてもその誘惑に負けそうになってしまうというか…服などと言う邪魔なものを取り去って、フィエロの熱を直接、受け取ってしまいたくなるのです。
―こういう欲望は貴女の担当でしょう。仕事してください。
―どうしてその話の流れで私が責められるのかは分かりませんが、私が責めてほしいのはフィエロだけなのでノーサンキューなのですよ。
―…遊んでないで二人とも仕事してください。
女が三人寄れば姦しい。そんな下らない事を脳裏に浮かべるくらい騒がしいですが、私の身体はちゃんとその間も動き続けていました。彼が羽織っているコートの裾をそっと掴み、肩からゆっくりと剥ぎ取っていくのです。その間も腰は足などをしっかりとホールドして背中のフィエロを地面に落としません。無防備に私に身体を預けたままのフィエロはそうしてコートを剥ぎ取られ、何時もの白いシャツとズボン姿になるのでした。
―さて…次は…。
―フィエロがちゃんと落ち着けるようにしなければいけませんね。
―まぁ、それは慣れたものですが。
今まで何度かフィエロはここに泊まってくれているのです。その間、彼のベッド代わりとして私の身体を使っていたわけですから、その変化はお手の物なのでしょう。そんな事を考えながらコートを近くに枝に引っ掛けた私は身体を大きく広げてフィエロを包み込んでいきます。まるでその全身を保護するようなそれは、以前の私では出来なかった事でしょう。しかし、私の肉体はこの一ヶ月で思春期の少女程度にまで育っているのです。私自身、何を糧にして成長しているのかは分かりませんが、今はそれに感謝する気持ちで一杯でした。
「フィエロ…では…このまま何時ものようにベッドになりますね」
「あぁ…」
その声にも力を取り戻しつつある彼の様子に小さく安堵しながら、私はそっと地面へ向かって倒れこんでいきます。後ろに――いえ、フィエロの様子を探ろうと首を回転させた今はある意味、前なのですが――フィエロがいるので以前のような無茶は出来ません。そっと支えを身体から伸ばしてゆっくりと地面に軟着陸していくのです。そのままストンと私の身体が石の床と触れ合ってから私は胸中で小さく溜め息を吐きました。
―…ふぅ。とりあえずは…これで落ち着けますね。
しかし、その言葉とは裏腹に私の身体はまるで落ち着いてはくれません。フィエロを背負っている状態から前のめりになっている今、私達は抱き合っている様な形になっているのです。何時もはフィエロの背中から私が抱き着いているので、こんな風に密着するのは初めてでした。そして…これはまるで恋人同士のように情熱的な抱擁でもあるのです。それが私の背筋にゾクゾクとした寒気を走らせ、もっとフィエロの身体を感じたいと欲望を滾らせるのでした。
―ハァハァ…フィエロの身体…くんかくんかしたいですぅ…♪
―自重し…いや、しなくても構いませんか。貴女が欲望を引き受けてくれないとこっちまで負けてしまいそうですし。
ただでさえ欲望に弱い仲間があっさりとそれに屈して、フィエロの身体に思考を蕩けさせていました。そして、彼女から伝わってくる微かな欲望や情報が私達の意識もまた欲望に染め上げようとしています。しかし、それでもまだ直接的に身を晒されるよりは大分マシでしょう。主人格である私が欲望に屈してしまえば、今の衰弱したフィエロを本当に襲いかねません。その防波壁として私の前に立ってくれている彼女がいるからこそ、今の私はまだ冷静でいられるのです。
―…そうで無ければ…こんな甘い感覚耐え切れません。
抱き合うようにして触れ合う面からは私を蕩けさせるようなフィエロの優しい体温が伝わってきているのです。何時もはこのシャツとズボンと言う姿に白衣を見につけているからでしょうか。普段よりもはっきりと伝わる体温が私の芯のようなものを揺らがせていました。その上、何時も感じる心地良い彼の体重と共にその吐息まで私に降りかかってきているのです。疲労の所為か、まだ何処か熱っぽいその吐息を直接、感じているのですから…今すぐにでも欲望に陥落してもおかしくはないでしょう。
「うー…」
「どうしました…?」
そんな私の様子に気付いたのでしょうか。フィエロは意思の強さを取り戻した瞳と未だ震える言葉で私の名前を呼びました。それに私は彼の手をぎゅっと握りながら答えます。そんな私の手をぎゅっと握り返しながら、フィエロは震える唇をそっと開きました。
「…すまないな。迷惑を掛けた」
「そんな…」
フィエロが謝る必要などありません。ドジをして彼らに見つかってしまったのは私達の方なのですから。そもそもの原因は私の方にあるのです。彼はそれを助けてくれた命の恩人なのですから、謝られる筋合いなどありません。寧ろ私がフィエロに謝り、そしてお礼を言わなければいけないでしょう。
「私の方こそ…ご迷惑をおかけして申し訳ありません。私がいなければ…もっと上手く切り抜けられたでしょうに…」
―思い返すのは切羽詰ったリーダーの台詞です。
あの時、私が動揺を表さなければあの時点で決着が着いていたことでしょう。しかし…あんな安っぽいカマ掛けに引っかかった私は彼の魔力が尽き掛けている事を彼らに教えてしまったも同然なのです。そして、その結果、フィエロはその魔力を殆ど使い果たし、こうして倒れ伏してしまいました。つまり…今、こうして彼が様々な不快感に襲われているのは私の所為も同然でしょう。そう思うと胸の奥がズキリと痛み、粘性の身体をふるふると震わせました。
「そもそも…私が見つからなければ彼らと戦闘になる事はありませんでしたし…」
「…それは違う…さ」
「え…?」
短い言葉と共にフィエロの手は再び私を握り返してくれました。さっきよりも強いその仕草は、まるで私の痛みを知っているかのようでした。握り締めた手から胸の痛みを打ち消す優しい熱が広がって、私を癒してくれているように感じるのですから。
「元々…俺はあいつ等から抜けるつもりだったんだ…。そうなれば…必ず戦闘になっただろうし…あいつ等とやりあうのが少しばかり早くなっただけの事だ。…寧ろ詠唱する俺を必死に護ってくれて…感謝している」
「フィエロ……」
確かに彼らに向かって幾つか隠し玉を仕込んでいたような様子から察するに、抜けるつもりであったのは本当なのでしょう。しかし…例えそうでも他にもやり方は幾らでもあったはずです。フィエロ一人であれば逃げながら詠唱を繰り返し、彼らを各個撃破に追い込むことだって難しくは無かったでしょう。いえ…そもそもこれだけの魔術の腕を持つフィエロであれば彼らから気付かれずに逃げおおせることだって可能であったかもしれません。
そして、そんな彼の予定を崩したのは間違いなく私です。その上…戦闘でも足手纏いになり、彼がこうして倒れる原因にまでなったのですから話にならないでしょう。ですが…フィエロはそんな私を慰めようとこうして優しい嘘を吐いてくれているのです。なら…私は責任を持って、それに騙されなければいけません。
「はい…。でも…ありがとうございます…」
助けてくれてありがとうございます。慰めてくれてありがとうございます。何時も一緒にいてくれてありがとうございます。色々な事を教えてくれてありがとうございます。それら万感の思いを込めて唇を割った私の言葉にフィエロはそっと微笑んでくれました。何時も…この小さな水源地で見る優しくも暖かい微笑み。それに私の胸は大きく打たれて、ドクドクとあるはずのない鼓動を感じさせるのでした。
「…俺がお前にした事を考えればこれくらい当然だ」
「した…事?」
しかし、その瞬間、フィエロの目はそっと伏せられます。まるで気まずい事実から目を背けるようなそれは彼の雰囲気を一気に暗いものに変えました。良くは分かりませんが、フィエロは私に何か償わなければいけない事をしたようです。しかし…私にはそんな自覚がありません。彼は色々な事を丁寧に教えてくださり、食事だって分け与えて貰っていたのですから。彼らのように私を傷つけた事などありませんし、寧ろ私はフィエロにお礼を言わなければいけないくらいでしょう。
「…俺はお前を実験動物にしたんだ」
「…実験?」
「そうだ。少し長くなるが…聞いてくれるか?」
―それは今までずっと私が求めてきた事でした。
彼の目的。その過去。それは今まで私が欲していてもずっと誤魔化されてきたものであるのです。それが…今、彼の口から語られるかもしれない。そう思って、首を横に触れるはずがありません。一も二も無く頷いた私にフィエロは小さく息を吐きました。まるで自分の決意を固めるような小さな呼吸の後、彼はそっと瞳を開き、口を動かし始めます。
「俺は…魔術の最高学府に所属する人間だった。その当時のは…プライドだけは一丁前に高いガキでな。…飛び級を重ね、天才と持て囃されたのも無関係じゃなかったんだろうが…まぁ、子供だったんだよ、俺は」
―そこで一端、言葉を区切った彼の目には一体、何が映っているのでしょうか。
見慣れた遠い瞳の向こうには彼の言う『魔術の最高学府』での生活が移っているのかもしれません。きっと…そこはとても設備が整い、研究するには持って来いの環境だったのでしょう。そして…きっとそこに所属しているというだけで高い評価も得られたに違いありません。何処か羨望のような色を灯す彼の瞳に何となくそう思います。
「だが、最高学府ともなれば俺レベルなんてゴロゴロ居るんだ。それは…俺にとって初めての壁だったよ。どれだけ努力しても自分が埋没する一個人レベルでしかないなんて…な。プライド高い俺には我慢出来なかった」
―その気持ちは…きっと私には理解できないものでしょう。
私は生まれてからずっとただのスライムであるのです。フィエロによってその情緒などは育ちましたが、プライドと言う拠り所とは無縁な存在なのですから。私にとっての拠り所はフィエロと彼から教えられた知識しかありません。その他は私にとって必要の無いものなのです。
「勿論…プライドだけが無駄に高い俺には友達なんて出来なかったんだ。常に孤独で…人と群れようとする連中を毛嫌いしていたと言っても良い。……だけど、そんな俺にも話しかけてくれる奴が一人だけ居たんだ」
―苦々しいその言葉が少しだけ浮き足立ちました。
独白し続けるフィエロの言葉。それは重苦しい過去を思い出している所為か、とても苦々しい色に染まっていました。しかし…その最後の部分だけは少しだけ声音が上ずったのです。まるで、そこだけ嬉しい事を思い出しているように、ほんの少しだけ。
「だが…俺はソイツが大嫌いだった。ソイツは俺なんかよりも遥かに優秀で、常に成績はトップ。教授の覚えも良く、何れは教授になるだろうと噂される男だったからだ。そんな奴に優しくされて…強い劣等感を感じた俺は逃げるように何度もソイツを罵ったよ。…けれど、ソイツな何度だって俺の目の前に現れて俺の世話を焼こうとしていたんだ」
―でも、それはすぐに苦々しい色に飲み込まれていきます。
彼の言葉から察するに相手は本当に優秀な方だったのでしょう。相手を嫌っているはずのフィエロがこれほど褒めるのですから。しかし…だからこそ、彼の声には苦々しい感情に埋め尽くされていきます。それはやはりフィエロがまだ相手に対して強い劣等感を抱いているからでしょう。私が成長しない自分を、情けない自分を、ドジばかりする自分を情けなく思うように、フィエロもきっとその感情と付き合い続けていたのです。
「…そしてあの日…俺とソイツが魔術の実践訓練で戦う事になった。…俺はそれをチャンスだと思ったよ。あのいけ好かない奴に一泡吹かせてやれるってな。でも…同時に今の俺の実力じゃソイツに敵う自信は無かった。だから…俺はそれに…禁呪と呼ばれる魔術に手を出したんだ」
―禁呪。
それは魔術師にとって禁忌と言う言葉以上に相応しい言葉はありません。時に世界の普遍的法則さえ書き換えかねない恐ろしい魔術を人は『禁呪』と呼んで区別するのです。それは勿論、唱える事も、存在を話す事さえ強く禁止されているものでした。その存在を書き起こす事さえグレーであるほどの禁忌。それが禁呪という魔術なのです。
―でも…フィエロはどうしてそんなものを手に入れたのでしょう?
最高学府に所属した人間ともなれば、禁呪の存在そのものは知っていてもおかしくはありません。しかし、その構成や呪文などは書物にされることさえ禁じられているほどのタブーなのです。例え書物になっていたとしても、それは最高学府の中で厳重に管理されているかとっくの昔に焚書されているかのどちらかです。そんな禁呪を一学生であったであろうフィエロがどうして使えるようになったのか。その辺りの説明が途切れているだけにどうにも分からないのです。
「お前にも教えたが…それは魔術師にとって口に出す事すら憚られる恐ろしい術だ。それを…俺は教授の目を盗んでソイツへとぶっ放した。幸いに…かそれとも不幸に…なのか。ギリギリの所で教授に取り押さえられたんだがな。だが…既に顕現し始めていた禁呪は俺のコントロールを離れて暴走した。俺を取り押さえる教授ごと飲み込もうとして――それを助けたのが俺の大嫌いな相手だったんだよ」
―その瞬間はきっとフィエロにとって人生で辛い時間だったのでしょう。
そっと瞼が閉じた向こう側でその光景を思い浮かべているのでしょうか。私の手を握るフィエロの力が急激に強くなっていきました。まるで当時を思い返し、その悔しさまでも再生しているような姿に私の心が大きな痛みを訴えました。勿論…フィエロがしたのは許されるべき事ではないのかもしれません。禁呪と言う最高のタブーに触れただけではなく、その発動まで行ったのですから。けれど…私にとって現実であるのはそんな過去の出来事ではなく、今、こうして胸を痛めている愛しい人の顔だけ。そして、その辛そうな顔に私はどうしても慰めてあげたいと、受け止めてあげたいと思ってしまうのです。
「そして…その所為でソイツは両腕を失った。その上…魔力の大半も禁呪を抑えるのに奪われたのか人並み程度の魔力になっていたよ。だが、ソイツは…俺を責めなかったんだ。それどころか処刑か、良くとも絶縁が確実であろうと噂されていた俺を助けようと走り回ってくれた。自分だって大変だろうに、そんな状況に追い詰めた俺を助けようとして」
―処刑か絶縁。
それはある種、当然の結果でしょう。フィエロがどうして禁呪を手に入れられたかは彼の話では伝わってきませんが、彼が禁呪を使ったのは確実なのです。私は人間社会にまだまだ疎いので分かりませんが、その場で処刑されても文句は言えない大罪であるのは分かります。けれど…現実、彼はこうして生きているのです。ならばきっと…その相手が走り回った事が結実したのでしょう。それに私は渦中の人物に大きな感謝を抱いたのです。だって…彼がこうして走り回ってくれなければ私とフィエロは出会う事がなかったのですから。
「惨めだったよ…胸を掻き毟りたくなるくらい。それで…何も結果にならないのであればともかく、処刑でも絶縁でもなく、破門と言う処罰に落ち着いたのがまた惨めだった。その上…学府から追い出される俺の唯一の見送りに来るんだからな。どれだけお人好しだって話だよ……」
―苦々しくも粗暴な言葉はきっと当時の彼の口調そのものなのでしょう。
何処か子供っぽい話し方に少しだけ胸が沸き躍るのを感じます。何時もは年上らしく私を受け止めてくれる大人っぽい彼がまるで愚痴るようにして口を尖らせたのですから。それは一瞬だけの事ではありましたが、母性本能を日々強めている私はぎゅっと彼を抱き締めたくなってしまうのです。勿論、真剣にフィエロが話している今、そんな事は出来ませんが、脳裏を何度も過ぎってしまうのはまた事実でした。
―ですが…禁呪を使って破門?
それはフィエロから教えられた知識では中々、考えられない事でした。だって、知る事さえ禁忌である禁呪をフィエロは使っているのです。勿論、その詠唱も構成も覚えている事でしょう。そんな彼を絶縁で済ませるだけでもかなり甘い処置であるのは疑いようがありません。それをさらにその下の破門で済ませるだなんて…まず考えられないのです。奔走した相手がどれだけ影響力を持つ人物だとしても不可能としか思えません。
―でも…フィエロはそうは思っていないようで……。
強い違和感を感じるのを否めません。無論、全体としてフィエロの話は正しいのでしょう。しかし、禁呪に限ってはまるでフィルターが掛かっているように朧気なのです。まるで霧の向こうにあるようにその輪郭が揺らいでいるように思えるのでした。さらに不気味なのは私などよりも聡明な筈のフィエロがまったくそれに違和感を感じていない事で…私の胸に何か嫌な胸騒ぎを引き起こすのです。
「その時…ソイツが言ったんだよ。無茶して背伸びしなくても良いって。無理矢理、背伸びしたって歪んでしまうだけだからって。最後の最後まで年上面してアドバイスするそんな奴が…憎かった。正直、今でも憎い。…だから…破門された後、意地でも同じ場所に戻ってやろうと走り回ったよ。破門であれば学府に戻れるくらいの研究成果を出せば、また戻れる可能性がある。だから…ってな。」
そんな違和感と胸騒ぎを覚えながらも、私はフィエロの言葉に耳を傾けました。
私の考え方をも変えるようになったあの言葉はどうやら受け売りだったようです。しかし、だからと言って私はフィエロに幻滅などしません。それを内面化し、私に伝えてくださったのは名も知らない人ではなく、他でもない彼なのですから。
「だけど…俺は世間って奴を甘く見すぎていたんだ。研究しようにも莫大な費用が要る。今までそのお金は所属する機関が出してくれていたが、破門された俺は何処にも属する事が出来ない。自然、一人で研究からその費用の捻出までを行わなければいけなかったんだ。だが…今まで学業ばかりであった俺に商売の才能などあるはずもなく、何度も騙されて借金塗れにまで落ちたよ。…そして、そんな時にあの男と…あの盗賊団の頭に出会った」
―その言葉には苦渋と言って良い程の苦々しさが含まれていました。
恐らく彼にとってそれは禁呪を使ったことか、それ以上に汚点なのでしょう。プライド高いと自負するフィエロが借金を背負う事になるまで堕ちる詳しい経緯は私には分かりません。しかし、きっと信用し、騙されを繰り返してきたのでしょう。彼らに向けたあの刺々しさや挑発するような言葉はそんな経験から捻れた心が生み出していたのかもしれません。そう思うと…私の胸はまたズキリと痛み、ぎゅっと彼の身体を抱き寄せてしまうのです。まるで今、感じているであろう胸の痛みを分けて欲しいとアピールする私の仕草にフィエロは少しだけ――ほんの少しだけ微笑んで再び口を開きました。
「アイツは大きなヤマの為に腕の良い魔術師を探していて、俺も借金を返すために手っ取り早く金を稼げる方法を求めていた。そんな二人の利益が一致し…『元最高学府所属の天才様』は盗賊にまで落ちた訳だ。」
―それでもその言葉に満ちた自嘲の色は打ち消せません。
『元最高学府所属の天才様』。それはきっと彼が今まで嘲られ、罵られる度に叩きつけられた言葉なのでしょう。苦々しくも自嘲に満ちた呼び名にそんな予想が頭を過ぎります。人間社会に疎い私と言えど、堕ちたエリートに対する世間の嘲りが酷い事くらいは理解出来ました。特に…フィエロは何度も人に騙されていたのです。それらを含めた世間知らずと言う意味合いでも、その言葉は彼に投げかけられ続けたのでしょう。そして…それがきっとフィエロを盗賊にまで突き落とした要員の一つなのです。…そう思うと名も知らない顔も知らない人々に対して言い知れない怒りが湧き上がってくるのでした。
―だって、そんな…余りにも酷いではありませんか。
確かにフィエロは償いをしなければいけないほどの罪を犯したのかもしれません。しかし、それで彼が騙されたり、罵られたりするのが正当化されるわけではないのです。増してや彼は既に破門と言う形でその罰を受けている身。フィエロを罰するべき場所とのやり取りは既に済んでいるのです。しかし、そんな彼を嘲り、罵り、騙して…盗賊に身を窶すまでに追い込んだのはまるで関係の無い――彼の罪とは何の関係も無い人々。そう思うと…彼に強く惹かれている私は言い知れない不快感と共に怒りを抱いてしまうのです。
「それでも、俺はあの場所に戻るのを諦めなかった。リーダーに魔物娘と似たような匂いを発する香水を提供し、官吏から逃げるようにこの山奥にアジトを移して……お前と出会っても」
―それでも…そんな彼に救いがあったと感じるのはその声に少しだけ明るいものが混じっていたからでしょうか。
そこで言葉を区切りながらフィエロは思い返すようにそっと目を閉じました。その表情は苦々しいものが混ざりながらも、何処か穏やかで優しい色を灯しています。それは何時もこの水源地で私に向かって向けられる優しい表情に似ていました。勿論、これから語られるのは私の事であるというのが先入観として私のイメージを歪めているのかもしれません。しかし…一瞬、私の目の前で目を閉じるフィエロは先ほどの苦々しい過去を語る時よりも少しだけ明るいものに見えてしまうのです。
「その時の俺は…精霊を探している所だった。水や土壌が豊かなこの山であればウンディーネかノームに出会えるかもしれない。そして…もし、契約できれば大きな収穫だ。精霊使いは学府にとっても貴重な存在であるし、戻れる可能性も大きく跳ね上がる。そう思って」
精霊と契約するのは魔術師にとって一種の栄誉、或いはステータスなのです。しかし、それ故に精霊そのものに目を向けず、栄誉や名声の為に彼女らとの契約を求める魔術師は後を絶たないとフィエロ本人から聞きました。今から思えばそれは自虐であったのでしょう。自分の目的の為に精霊を求めるフィエロはそんな魔術師を『道化』と称し、そんな連中の前に精霊は決して現れないと語ったのですから。当時はどうしてそこまで強く罵るのかと疑問に思っていましたが、アレはきっと自分に向けての言葉だったからこそなのでしょう。
「だけど、三日ほど足を棒にして歩き回った俺が出会ったのはスライムの群生地だけだった。それに失望し肩を落とした俺の目の前で…うー。…いやウィータ。お前が生まれた」
―ウィータ。
それは私が最初に彼に貰った名前です。しかし、命を意味するその言葉をフィエロが呼んでくれたことは殆どありません。最初の頃はウィータと彼も呼んでくれていたのですが、単音しか発音出来ない私に合わせて「うー」と言う愛称に変わっていったのです。彼に愛称を貰った事を私も喜び――今から思うとアレはからかわれていただけだったのかもしれませんが――こうしてそれは定着していました。
―けれど…敢えて今、私をウィータと呼んだのは……。
私がもう一人前になったと認めてくれたからなのかもしれません。そう思うと少しだけ胸が感慨深いもので溢れました。しかし、同時に…愛称で呼んでくれないと言う事に恐怖感のような感情も抱いてしまうのです。一個人として受け止められ、認めてもらうのは今までずっと与えられるままであった私からの脱却を意味しているでしょう。…しかし、それと同時にそこには突き放すような意味合いも含まれているのです。一個人として『自立』出来るが故に、フィエロはもう必要ないと…そう取られかねません。しかし、私にはまだまだフィエロが…いえ、一生、彼が必要なのです。
―でも…それを伝えようにも言葉を遮る訳にはいかず…。
彼の独白はまだまだ続いているのです。それにまだフィエロが私から離れるとは限りません。しかし、心の中には言い知れない不安感が雪のように積もって思考を埋め尽くしていくのです。じわじわと背中から這い上がってくるような憔悴を振り払おうと私は言葉を紡ぐフィエロの手を再びぎゅっと握り返しました。
「俺はそれをチャンスだと思ったよ。スライムの生態と多様性の限界はまだまだ学府でも知られていない。まして生まれたてのスライムがどう変わっていくのかと言う研究はまだまだ不十分だ。一般的には単純で適応力が高いと考えられているスライムだが、人間による高等教育を行えば人間に近づくのか。それはきっと学府の連中も心惹かれるテーマになるだろう。その時の俺はそう考えたんだ」
―それは私が彼の言う『実験動物』として扱われてきたという裏打ちなのでしょう。
私はこれまでにフィエロの言う『高等教育』を受けてきたのです。一般常識レベルの算数や国語などから発展し、魔術や数学まで。今では人間の社会における構造や欠陥までもフィエロから教えられるようになりました。それらの教育は人間であっても中々、受けられないものでしょう。そうした教育を経て、彼は私がどう変わっていくのかを知りたかったのです。
「だから、お前の両親を騙してこんな離れた水源地に住まわせた。他のスライムからの影響を受けないように、俺の教える事だけを信じ、受け入れるように」
それは結果として成功したと言うべきでしょう。だって、私にとってフィエロが全てだったのですから。他の何者も必要ありません。特に…さっきの出来事でそれがより顕著になりました。一歩間違えれば殺されていたかもしれないという恐怖は私の中にしっかりと根付いているのです。今の私にとってフィエロ以外の人間は恐怖さえ感じる対象であり、近づこうとも思わないのですから。『ヒト』だけが神を持つ…とは誰の言葉か忘れましたが、私にとってその神はフィエロに他ならないのです。
「結果として…お前は普通のスライムより高い知性と人間らしい思考を手に入れた。いや…人間に近づきすぎた…と言うべきかな。普通のスライムはあんな風に剣を怖がったりはしない。あの程度じゃ自分を傷つけられない事を本能的に知っているからだ。寧ろ…自分から近づいてきた男を嬉々として襲い、精を絞るだろう」
―では…私はもう人間なのでしょうか?
そんな事はありません。私はどれだけ知識を蓄えたとしても所詮、スライムであるという現実は変わらないのです。周りの目は多少、変わったとしても私の肌の色がフィエロと同じになる事はありません。それに…私の身体には確かにオスを求め、子孫を増やそうとするスライムの本能が宿っているのですから。
しかし…逆に、そんな私が完全にスライムであるかと言うのも微妙なラインでしょう。彼の言う『スライムらしいスライム』とは乖離してしまった私はきっともう群生地には戻れません。戻った所で他のスライムと同じように生活など出来るはずも無いのです。習慣や慣習と言う面で既に浮いてしまっているであろう私は何れは居心地が悪いそこから逃げ出してしまうでしょう。
―…つまり、私はスライムにも人間にもなれないのです。
両者からも浮いた境界に立つ存在。フィエロの言葉が正しければそれが今の私なのでしょう。両者からも馴染めず、排斥されかねない立場はハーフエルフとも似ているかもしれません。しかし…私はハーフエルフの多くが強い排斥や反発を経験したのとは違い、こうしてフィエロに保護されて生きてきたのです。それが一番、大きな違いでしょう。多くのハーフエルフがどっちつかずの自分のアイデンティティを構築するのに苦しむのに対し、私は内なるフィエロという神にアイデンティティを求めればいいのですから。それはこれまでと何も違いませんし、揺らぐ必要はありません。
「…分かるか?お前はそれほど一般的なスライムから乖離した存在になったんだ。それは…勿論、俺の所為だ。俺がお前を自分の実験動物にして弄んだからだ。…だから、お前はこんな風に俺に優しくする必要は無い。…ないんだ」
―そう言葉を結んで、フィエロはそっと口を噤みました。
独白の内容は確かにショッキングなものでした。確かにこれでは易々と他人には話せない内容でしょう。特に…今現在も『利用している』私にとっては特に言いづらい内容である事は間違いありません。その上、彼は禁呪を使った罪人ですし、きっとその手で人を殺した事だってあるのでしょう。下手をすれば私に怖がられてしまう危険性もある。そう思って、彼は今までそれらを私に誤魔化し続けたのだと容易に想像がつきました。
「それが何だって言うのでしょう?」
「…何?」
それ以上に私は彼から多くの物を受け取っているのです。それは最早、数え切れません。一つ一つ声に上げていくだけできっと数時間が経過してしまうでしょう。それだけのものをフィエロから受け取った私が、彼に冷たくする理由の方がないではありませんか。それに…私はあくまでスライム。人間の社会のルールなど知った事ではありません。彼が殺人を犯していようが、禁呪を使っていようが、それが罪となるのはあくまで『人間』のルールです。スライムである私にとって、彼がこうして私の傍に居てくれる事の方がよっぽど重要な事でした。
―それに…彼の独白には重要な部分が抜けているのです。
「…フィエロ。貴方は私を実験動物として利用してきたと言いました。でも…さっきは?命懸けで私を助けてくれた先ほどの出来事は…本当に実験動物として私を見ていたからですか?」
「それは……」
―そう。彼の独白には『私達が出会ってからこれまで』の経緯がすっぽりと抜け落ちているのです。
確かに私を接した最初は利用するのが目的であったのかもしれません。しかし、私は今も尚、同じ目的で私に接してくれていたとはどうしても思えないのです。だって…私に微笑んでくれた表情も、暖かい手も、優しい言葉も全部、私にとっては『本物』なのですから。最初はぎこちなかったフィエロの表情もまるで『妹』を見るように穏やかなものに変わっていった経緯を私は目の当たりにしているのです。それだけに、どうしても彼が今、私に抱いている感情が『ただの実験動物』であるとは思えません。
「本当にただの実験動物としてみていたのであれば私など見捨てればよかったではありませんか。スライムなど掃いて捨てるほどいるのです。次の実験動物を確保しにまた群生地に寄れば幾らでもスライムを確保できるでしょう?」
「……」
「それを…貴方は命懸けで私を助けてくれた。魔術師一人では敵わないというのに身を削ったブラフまで使って。…これで私の事を何とも思ってないと思う方がどうかしていますよ」
―そこで言葉を区切って私はそっとフィエロの額を空いた手で撫でてあげました。
額に浮かんでいた脂汗はもう殆ど消え去っています。瞳の色も独白の内にしっかりしてきて、肌の色も普段通りに戻っていました。まだ少しだけ疲労の色が浮かんでいるのを除けばもう何時も通りでしょう。実はもう動けるかもしれません。
―でも…離れて欲しくはありません…。
折角、こうしてフィエロが内心を吐露して私に甘えてくれているのです。それは今までに無い甘美な充実感を私に齎してくれていました。胸の底から暖かく染まっていくその感覚は怒りや痛みで荒んでいた心を癒してくれているようです。その熱をどうしても手放したくない私は未だ気まずそうに目を伏せるフィエロの背中をぎゅっと抱き締めたのでした。
「だが…俺は禁呪を使い、殺人だって犯した。…本当は許されるべきではない人間で…」
「そんなの…私にはまったく関係ありません」
「……ウィータ…」
そのままあやす様に、なでるようにして抱き締めた背中を撫でていきます。それは決して成人した――それもプライド高いと自負するほどの――男性にする様なことではないでしょう。しかし、本能的に蠢いた私の身体は止まりません。一撫で毎に彼の心を癒そうとするかのとうに優しく、ゆっくりと動き続けるのでした。
「…駄目だ。やっぱり俺は…お前とは一緒に居られない…」
「…フィエロ?」
しかし、それが駄目だったのでしょうか。フィエロは小さく呟いて、両手を地面に着きました。そのまま腕に力を込めて私から離れていきます。それを阻止しようと身体中が蠢きましたが、私の理性がそれを何とか堪えました。だって、彼は私にとって『神』にも等しい存在なのです。それを実力で食い止めるのは、出来ればしたくありません。こちらに大義名分があれば別ですが…今回は彼の安全や命が懸かっている訳でもない完全な我侭なのです。
「そんな風にお前が想うのは…俺がそう仕向けたからだ。お前が俺に依存するように俺が教え込んだからだ。…もしかしたら、俺はそんなお前に甘えたかったのかもしれない。ならば、尚の事…俺はお前に甘える訳にはいかない」
そう言葉を区切って、フィエロはそっと立ち上がります。そのまま私から逃げるようにして後ろを向きました。そんなフィエロに追いすがるようにして私の身体も人型に戻って立ち上がります。しかし…背中を向けるフィエロに何と言葉を掛ければいいのか分かりません。フィエロの身体が離れただけで心の中は吹雪が吹きすさぶように冷たくも寂しい感情が吹き荒れるというのに、彼を留める言葉がどうしても出てこないのです。
―そして…フィエロは腰の皮袋を取り外し、言葉が出ないままの私に振り返りました。
「もう予想がついてるかもしれないが…これはサキュバスなどに流通してる精を補給する為の薬だ。これだけあれば後、二、三ヶ月は大丈夫だろう。その間に…誰か良い相手でも見付けると良い。少なくとも…俺よりはマシなはずだ」
私に向かって差し出された皮袋はジャラリと小さな音を立てました。彼の言葉が正しければ、その中には瓶詰めにされていたあの錠剤と同じものが入っているのでしょう。しかし…私はそれを受け取りたくはありませんでした。だって…これではまるで餞別ではありませんか。まるで二度と私に会わないような言葉を聞いて、素直に受け取れるはずがありません。そんな味気ない錠剤よりもフィエロが傍に居てくれる方が私にとってはずっとずっと幸せなのです。
「…貴方はどうするおつもりですか?」
「…連中を縛り上げて、出頭する。それが俺に出来る最後の償いだ」
―確かにそれは償いであるのかもしれません。
私にはままならない事情があったとしか思えませんが、フィエロが盗賊団に入って人を殺めていたのはきっと事実なのです。そして、それを許して上げられる人はもうこの世には誰もいません。彼がその手に掛けたであろう人々でしかフィエロを許す権利を持っていないのですから。しかし…社会的には自首という形が一応の償いになるのです。その手土産として一団を引き連れれば幾らか情状酌量ももらえるかもしれません。
―それでも…きっと何十年と会えなくなってしまうでしょう。
彼らがどれだけの罪を重ねてきたのかは私には分かりません。しかし、生まれてから数ヶ月の間、フィエロがここにこなかった日は結構な数に昇るのです。そして私に教えるための書物や紙、薬の数もまた同じように。それら全てがどれだけの価値に昇るのかは分かりませんが、少なくとも一度や二度の犯罪行為では賄えない額でしょう。つまり彼の罪はそれだけ重くなると言う事で…もしかしたら情状酌量も認められず、そのまま死刑となる可能性だって否定できません。
―そんなの…嫌…!!
会えなくなってしまうだけでも嫌なのに、もし、フィエロが死刑になるとしたら…気が狂ってしまうかもしれません。だって…その想像だけで足元が崩れ落ちるように感じるのですから。まるで暗い暗い奈落の底に落ちていく感覚に私はとっさに手を伸ばしました。しかし、それを掴んでくれる筈のフィエロは私の手に皮袋を押し付けて、再び背中を向けるのです。
「…じゃあ、な。きっと二度と会うことも無いだろう」
「待っ――」
待って、と。私はそう言おうとしました。しかし、そこから先が途切れてしまったように言葉になりません。声帯も、舌も、口も、全てが正常なはずなのに、言葉が出てこないのです。フィエロがそこから先の言葉を聞きたくはないだろう、と分かっているからでしょうか。私の身体を縫い付けるようにしてジャラジャラと鎖が絡みついているようにさえ感じるのです。
―…このままで良いのですか?
そんなの…良い筈がありません。このまま物別れになるなんて悲しすぎるのです。しかし…それが私の我侭であると言う事も理解しているのでした。フィエロによって人間社会の規範や構造を教えられた私にとって、彼の行動が『正しい』ものであるのと分かるのです。彼の行為によって死んだ人々の遺族が少しは心休まるというのも理解出来てしまうのです。彼がそれだけの事をしでかしていると知ってしまっているのです。それらがまるで雁字搦めの様に私を縫い付けていました。
―でも…こんなの…こんなの悲しすぎますよ…。
―そんなの…私だって分かっています…!!
しかし、彼に刷り込まれた道徳や良心と言う鎖は私を中々、手放そうとはしてくれません。そんな下らないものよりも彼の方がずっと大事であるというのに、意識に刷り込まれた鎖は中々、千切れないのです。ギチギチと音を鳴らして今にも弾け飛びそうなのに、後…ほんの少しの後押しが足りません。
―待って…!待ってフィエロ…!私は…私は…貴方が…!!
心の中では幾らでも彼の名前を呼ぶことが出来ます。しかし、それでは彼の足を止める事は出来ません。私達とは違い、フィエロとは意識で繋がっているわけではないのですから。どれだけ心の中で叫んでもそれが彼に伝わる事はありません。そんな事は私にだって理解出来ているのです。でも…でも…今の私には…っ!!
―仕方ありませんね。
―まぁ、フィエロの為ですし。
―……え?
そんな仲間達の声が聞こえた瞬間、私の腕が変形を始めました。受け取った皮袋を一気に破き、中の錠剤を粉状に磨り潰します。百粒近い数の錠剤は私の中で一瞬で粉に変わり、取り込まれていくのでした。普段は私の中で数分ほど漂っているその錠剤は粉状になる事で、急速に吸収されていきます。まるで身体中で咀嚼するように広がるそれは何時もの百倍近い量だと言うのに一気に私の中へ取り込まれて消えていきました。
―そして…その時から私に変化が始まります。
許容量を超えた精を受けたはずの私の身体は際限無く膨らみ、少女から女性の姿へと変貌しました。ふくよかな胸を揺らし、肉付きのいい太股で支えられる身体は今までのものとは比べ物にならないくらい大きく…そして重いものです。しかし、私の変化はそれだけでは終わりません。精を受けて膨らむ身体は根を張るようにして地面に広がり、辺り一面をスライム塗れに塗り替えるのです。それは普通のスライムでは考えられない現象でしょう。スライムは確かに得た精を蓄えて身体を大きくする傾向がありますが、途中でそれを子供として切り離すのですから。しかし、今の私は一気に大量の精を得た所為か、分裂せずに身体を肥大させ続けていました。加速度的に広がるスライムの領域は私自身にも止める事が出来ず、フィエロの足を包み込んで動けなくして尚、広がっていっています。
「これは…!?」
「うふ…♪」
困惑するフィエロの右側にザパリと自ら上がるようにして人影が作られます。変貌する前の私に良く似ているその姿は、胸だけは以前の私とは比べ物になりません。大きく張った胸の大きさはフィエロの手だとしても掴みきれないでしょう。幼い姿と豊満な胸。そのギャップを発揮する『私』はそのまま甘えるようにして彼の腕を抱きかかえます。
「フィエロぉ…行かないで下さい…♪」
私では言えなかった言葉をその『私』は余りにもあっさりと言葉にする事が出来ました。まるで最初から私を縫い付ける鎖が無かったかのようにその『私』はフィエロに甘える事が出来るのです。しかし、独善的なまでに我侭で甘えん坊で…そして子供と言われるべきでしょう。彼の望む『淑女』になるには決してそんな姿は相応しくありません。しかし、子供っぽいその『私』の姿に強い羨望を感じるのです。
「…こらこら。フィエロが困っているでしょう?まずは説明しないと」
「うー…」
そんな子供の『私』を諌めるようにしてフィエロの左側に再び人影が作られました。それは今の私よりも背が高く、顔の雰囲気も冷たいものです。しかし、その瞳には確かな優しさが灯っており、とても優しい性格をして居る事を伺わせました。その雰囲気の所為か私よりもフィエロに似ている姿も勿論、『私』です。自分の胸が私や『私』に比べて小さい――というより一般的なサイズと言うべきでしょうが――のを気にしている別の『私』でした。
「まずは…初めまして、ですね。私達は貴方の事を良く知っていますが」
「…お前達は…」
「貴方の言うウィータの別人格ですよ。もっとも根幹は全て同じですが」
「別人格だって…?」
驚いたようなフィエロの言葉も無理は無いでしょう。私は一度だってそんなのを億尾に出した事は無いのですから。これが特異な体質であると自覚したのは最近で、自覚してもフィエロに怖がられてしまうのではないかと言い出す事が出来なかったのです。結果として驚かせるような形になったのは申し訳なく思いますが……――と言うか、そっちの『私』は離れなさい。貴方から伝わってくる感覚でこっちも何だか妙な気分に…。
―知りませんよ、そんなの♪寧ろ…欲望に塗れて気持ち良くなっちゃいましょうよ♪
―うぐぐ…。
離れろと注意したものの、主人格であるはずの私の言う事を中々、聞いてはくれません。何時もよりも強気なその反抗は『私』達も『一個人』としての枠組みを得たからでしょうか。今も私が全体を総括する主な人格であるのに違いはありませんが、『私』の身体までは操作できないのです。まるで管轄が違うと弾かれるように私の意思はそこまで及ばないのでした。それでいて…『私』の抱きついたフィエロの腕の逞しさや体温はしっかりと伝わってきているのですから性質が悪いのです。
「今までおかしいとは思いませんでしたか?時折、ウィータが子供っぽくなったりしたり…我慢が出来なくなったりしていたでしょう?」
「それは……」
説明する『私』の言葉にフィエロはそっと言葉を濁します。多分、彼もそれは薄々感じていた事なのでしょう。突然、我侭になったり、フィエロに甘えたりする事は私にとってはそう珍しい事ではなかったのです。初めて彼と添い寝をした日もそんな風に突然、我侭を言い出したのですから。それは勿論、私達が全会一致しての行動でしたが、こうしてフィエロに抱きついている『私』の影響も多くあったのです。
「それは彼女の…貴方の腕に抱きついている『ウィータ』の仕業ですよ。彼女は貴方の教育によって追いやられた『スライムの本能』を総括する人格です」
「うふ…♪まぁ…フィエロの教育で私も大分、知恵をつけてますけどね。本能だけの女じゃないのですよ…?其の辺りは…後でしっかりと教えて差し上げます…♪」
そう言い放ちながら『私』はそっとフィエロの腕を胸に抱きこみました。大きな胸の谷間で逞しい腕を挟む感覚に私の脳髄はジュンと熱く蕩けてしまいます。胸と言う性的な部分でその脈動を感じている所為でしょうか。熱い吐息さえも漏らしてしまいそうになるのです。しかし…ここでそれに負けてしまえば『私』の思う壺。フィエロの為にもここは『私』に負けるわけにはいきません。
「そ、そんな風にフィエロを誘惑しないで下さい!!私まで誤解されるじゃないですか!!」
「あら…?私は貴女のしたい事を忠実に実行しているだけですよ?貴女が我慢してる事を…して欲しいことをオネダリしてるだけです…♪」
「う…うぅぅ…!!!」
確かに『私』の言う通り、それは確かに私のしたいことでもあるのです。私はもう欲情と言う甘い果実を食してしまったのです。その感覚がどういうものか理解してしまった私にとって…確かにフィエロとの交わりは求めるものと言えるでしょう。しかし、だからと言ってそんな痴女のような誘惑の仕方を許せるはずがありません。どうせするのであれば…もっとこう恋人のようにムードのある感じで…こう甘いキスからですね――。
「それにほら…見てくださいな…♪フィエロだって満更でもない顔をしていますよ…♪」
「う…」
「え?」
そんな『私』の言葉に驚いて視線を向けるとフィエロの顔は赤くなっていました。まるで初心な子供のような姿に私の母性本能がキュンと疼いてしまいます。美形と言う言葉が相応しいフィエロだけにそういう経験は豊富だと思っていましたが…実はそうでないのかもしれません。気まずそうに視線を背ける姿に何となくそう思ってしまいました。そして…それが私の胸を疼かせて、もっとその可愛い顔を見せて欲しいと言う欲望が顔を出すのです。
「はいはい。では次に、私ですが貴方によって与えられた『知識』を総括する人格です。まぁ…最近は最後の一人がサボっているので、仲裁役が多いですが…まぁ、それは追々」
「うぐぐ…」
その欲望に負けそうになる私を寸での所で引き止めたのが『私』の言葉でした。冷や水をぶっ掛けられるような冷たい言葉は残念ながら事実を指し示しています。別にサボっているつもりはありませんが…その、本能の『私』が少し調子に乗っているので…それを追う様にどうしてもヒートアップしてしまうというかですね……。
「そしてあっちにいるのが、貴方が作り出した『理性』を総括する人格です。基本的に貴方がウィータと呼んでいるのは彼女の事を指しますね。主にこの身体を統御する主人格であり、『本能』を引き止める立場にあります。…まぁ、最近はそれも少し危うく」
「わーわーわーわーーーーー!!!」
言わなくても良い事まで言おうとする『私』を遮るようにして私は大声を挙げました。そのまま二人の間に割り込もうと足を進めますが、重い身体は中々、進んではくれません。元々、機敏とは言えなかった少女時代の数倍近い重さを感じるのです。急にこれだけの大きさに成長したからでしょうか。制御の出来ない私の身体は何度か転びそうになりながら、二人の間に割り込みました。
「よ、余計な事は言わないで良いんですよ!!」
「…余計ですか?私達を知ってもらうのに情報は多い方が良いと思いますが…」
「じゃあ…♪身体の隅々まで知ってもらわないといけませんね…♪」
「貴女は黙ってなさい!!…まぁ…その一理あるんですが…情緒と言うか羞恥心がですね…」
「理解不能です。この場は感情よりもお互いの理解を優先すべきです」
―うぅ…この子も言う事を聞いてくれなくなってる…。
元々、感情よりも損得を優先する傾向にありましたが――勿論、フィエロに対しては別ですが――こうして真っ向から対立する事はそうありませんでした。しかし、本能の『私』と同じく確固としたパーソナリティを手に入れた所為でしょうか。私が必死で伝えようとする感情の機微を理解してくれず、難しそうに首を傾げているだけなのです。
「…まぁ、それはさておき。以上三人が『今の』ウィータを構成する人格です。ご理解頂けましたか?」
流石に知識を総括するだけあってこのまま話していても平行線であると理解したのでしょう。話を短く纏めて、『私』はフィエロに振り返りました。それにフィエロは赤く顔を染めながらも小さく頷きます。その腕には未だ『私』がしがみ付き、胸をこれ見よがしに押し付けていますが…話を拗れさせかねないので今は黙っているべきでしょう。
「…あぁ、一応…な」
「それは重畳。では…次のお話ですが…」
「それよりフィエロぉ…♪私とイイコトしませんかぁ…♪」
「貴女は黙ってなさい!!」
「うー…私が意地悪します…。自分だって本当はイイコトしたいって思ってる癖に」
「…話を戻しますと、私達は貴方に離れて欲しくはありません。より分かりやすく言うと私達は貴方に強い好意を抱いており、ずっと一緒に居たいと考えています」
「だが……」
ムードも何も無い『私』の告白。それはやはりフィエロには届かないものでした。当然でしょう。『私』の口調は常に平坦で殆ど抑揚がありません。それで好きと言われても信じられる男性はきっとそういないでしょう。其の上、フィエロは今、こうして私達から離れる事を決心したばかりなのです。情熱的に告白したとしても彼の足を止められるか怪しいというのに、そんな口調では無理に決まっているでしょう。
「逃げるのですか?」
「…何?」
「私達に対する『責任』を果たさず逃げるのですか?と聞いているのです」
―其の上…こんな風に挑発するのですから目も当てられません。
それは確かに私も思っていることでした。だって、フィエロの論理は私には一切、向いていないのです。彼の言葉が正しければ私にだって償いを要求する権利――まぁ、私はそんな事はまったく思っていませんが――はあるでしょう。しかし、フィエロはそんな私に見向きもせずに、自首すると言っているのですから。そんな風に蔑ろにされ、そう思う気持ちは私にも確かにあったのです。
しかし、だからと言ってそれをこんな場面でフィエロに叩き付けてどうにかなるものではありません。そんな重いだけの言葉ではフィエロの足を鈍らせるだけでしょう。だけど、私は…彼に納得してここに残って欲しいのです。彼の意思で、私と共に居る事を選択して欲しいのです。しかし、そんな言葉では彼を追い詰めるだけで自主的に残ってくれる事など望めるはずがありません。
―それがいけないのですよ。
―…え?
そんな私の胸に小さく響いた言葉。それは本能の『私』から届いたものでした。何処か優しい、母性すら感じさせる感情の波は子供っぽい姿からは想像も出来ないものでした。しかし、それは今、確かに私の心に届いて、暖かくしてくれています。しかし、自分から慰められるような慣れないその感覚に私は強い困惑も覚えてしまうのでした。
「それは……悪いとは思っている。だが…俺は裁かれなければいけない人間だ。だけど、お前達と一緒に居ればそれは望めない。俺にそんな安寧を受け取る資格などないんだ」
「そうですか」
その困惑の間にも『私』とフィエロの間で話は進んでいきます。裁かれなければいけないという覚悟とそれを引きとめようとする『私』。両者の論理は一方通行であり、交わる事はありません。やっぱり説得など無理だったのでしょう。少しだけ…ほんの少しだけ期待していただけに私は胸中で小さく失望の溜め息を漏らしました。
「でも、貴方は一つ勘違いしていますよ。私達は別に貴方の意思なんて関係ないのです」
「「え?」」
無慈悲な『私』の言葉に私とフィエロの言葉が重なりました。それは普通であればありえない事でしょう。フィエロは兎も角、私は『私』達と意識が繋がっているのですから。その殆どを意識せずにやり取りする事が出来るのです。そんな私が『私』の言葉で驚くだなんて普通は考えられません。しかし、その時の私には『私』がそんな風に言葉を繋げようとしていただなんてまるで伝わっては来なかったのでした。
「うふふ…♪」
「う、うわっ!?」
そして本能の『私』がフィエロの足を絡めとり、広がったスライムの身体に尻餅を着かせた事も私には伝わってはきませんでした。本来であれば、それらは私の事前に伝わっている筈の事でしょう。しかし、まるで二人は私とは別の確立した『人格』となってしまったかのように全てが伝わってくるわけではありません。今もその胸中に渦巻く様々な感情――強い喜悦とフィエロに対する好意、そして欲情など――が伝わってくるので繋がりが絶たれた訳ではないのでしょう。しかし、まるで『私』達が私に隠し事をしているかのように一部の企みや考えが遮断されてしまっているのです。
「だって…これは私達からフィエロへの『裁き』ですものね…♪」
「そう言う事です。これは貴方への私達からの罰。一生、人間の社会には戻さないという…極刑です」
「なっ!!」
―だから、二人がそう言ってフィエロの下半身を取り囲み始めた時も私には訳が分かりませんでした。
お尻が私の身体と接したフィエロを逃がさないと言わんばかりに粘液の身体が彼を絡め取っていました。その足首から地面に着いた手首まで、しっかりと取り込んだ私の身体はがっちりと周りを固めて逃がしません。それは勿論、私の意思ではなく、『私』達の意思なのでしょう。私から離れて暴走し始めた『私』達は私以上に身体を上手く操って、フィエロをスライムの領域に閉じ込めようとしていました。
「勿論、痛い事なんて何もしませんよぉ…♪大好きなフィエロにそんな酷い事する訳ありませんもの…♪」
「その代わり…貴方の一生を使って…いいえ。永遠に償い続けていただきます。ただのスライムに戻れなくなった責任を、貴方の事をこんなに恋焦がれるようにされた責任を、貴方無しでは生きていけなくされた責任を、その身体で」
「身体で償うってとっても素敵な響きですよねぇ…私…とっても興奮しちゃいます…♪」
「私も不覚ながら貴方の身体にこうして触れているだけでも欲情してしまうようです。…この責任も取ってもらわなければいけませんね」
「ま、待て…っ!!」
制止するフィエロの声を無視して、二人の『私』は彼のズボンに手を掛けました。何か思い入れがあるのか何時も身に着けている彼の衣服を『私』達は上手くズリ降ろしていきます。右へ左へ抵抗するフィエロを上手くいなしながら、身体全体――勿論、地面に広がる一部も含めて――を使って降ろしていくのでした。それに幾ら抵抗しようとしても無駄でしょう。どれだけフィエロが抗おうにもその手も足も『私』に封じられているのです。其の上、必死に逃げようとする腰に合わせて『私』達の手は動くのですから。抵抗らしい抵抗にさえなるはずもありません。
「うふふ…♪さぁ…ズーリズリしちゃますよぉ…♪」
「フィエロの下着は何色なんでしょうね…黒?それとも白でしょうか?…今からでも楽しみです」
「私はねー…♪オーソドックスに白だと思いますっ♪」
「ほぅ…賭けますか?」
「うふ…良いですよぉ♪そっちは逆の黒に?」
「えぇ。では…勝った方が最初にフィエロのオチンポに口をつける権利があると言う事で」
「か、勝手に人を賞品扱いするな…!!」
フィエロを置いてけぼりにして話を進める『私』に彼が鋭き言い放ちました。その強い語気には怒りさえ混じっているような気がします。それも当然でしょう。二人は勝手にフィエロを物扱いして、話を進めているのですから。そこに彼の意思を気にするような素振りはありません。我が事ながら強引に話を進める『私』達に頭痛さえ感じてしまいました。
―っと…頭痛を感じている暇などありません。
隠し事をされていたショックでしばしの間、呆然としていましたが、暴走する二人を止めて、フィエロを説得しなければいけないのですから。二人の『私』から伝わってくる熱や匂いなどは確かに甘美ですが彼に与えられた理性を固持する私はそれに負けるわけには参りません。欲望の誘惑に打ち勝つのが理性の役目なのですから。出来ればその後、フィエロを説得したくもありますが…それはまぁ、『私』達をフィエロから引き剥がしてからでも良いでしょう。
「や、止めなさい二人とも!!合意もなく男性を襲うだなんてそんなはしたない真似…!」
「はしたないと言いますが…これはフィエロも望んでいることなのですよ?」
「な、何でそんな論理になる!!」
『私』の言葉にすぐさまフィエロが反論を口にしました。当然でしょう。私自身、『私』がどうしてそんな言葉を口走ったのかが分からないのですから。フィエロは一度だって私に襲われたいなどと言ってはいません。そんな事を言ってくださればもっと早く私が…と、兎も角、そんな言葉はフィエロの口から欠片だって出てきてはいないのでした。
「だって…フィエロは償いたいのでしょう♪私達はその場を与えているに過ぎませんわ…♪」
「そんな詭弁…っ!!」
「…いい加減、誤魔化しは止めましょう。本当に嫌ならば止めれば良いじゃありませんか」
「っ!!」
私の反論を誤魔化しと一蹴する『私』の言葉に私は何も言えませんでした。確かに『私』の言う通り、本当に嫌であれば実力行使もあるのです。しかし、私は口喧しく言うだけで無理矢理、二人を引き剥がそうだなんて一度だって考えませんでした。
「私達は所詮、貴女のサブの人格です。貴女が本当にこんな事を望んでいないのであれば私達だって何も出来ません」
「けれど…現実、私達はこうしてフィエロを愛そうとしています…♪それは…貴女もこんな展開を望んでいたからではありませんか…?」
「そ、それは……」
二人の言う通り、確かに私の中にも期待の感情が無い訳ではありません。こうしてフィエロの股間に顔を近づけ、その体臭を嗅いでいる感覚も私にもしっかりと伝わっているのですから。『私』達が本格的にフィエロの股座を弄ればその感覚も勿論、私に伝わってくる事でしょう。それは消極的かつお零れに預かるような卑しい行為ですが、対面を保ったままフィエロを愛する事が出来ると言う事に小さな期待感を抱いていたのは間違いなく事実なのです。
「もし、止める気であれば実力行使しかありませんよ…♪」
「もっとも…貴女にそんな気概があるとは思えませんが」
「…うぅ……」
トドメを差すような『私』の言葉に私はそっと俯いてしまいました。まるで目の前で行われている現実から逃げるような仕草は事実上の敗北宣言でしょう。だって、私には実力で二人を排除する事なんて出来ないのです。この僅かな間にも私の中ではむくむくと期待するような感情が育っているのですから。意地と妻引きが出来る程に大きく育ったその期待感は私の道を塞ぎ、現実から逃げる事を選択させたのでした。
「では…主人格様のお許しも出たことですし…♪」
「賭けの結果を確認するとしましょうか」
「や、止め…」
しかし、制止するフィエロの声を聞かず、『私』達の手は無慈悲にもズボンを引き降ろしました。瞬間、『私』達の目の前には白と黒のチェック柄が目に入るのです。それはまず間違いなく彼の下着の色でしょう。しかし…まさかこんな結果になるとは思わず、二人の『私』は下着を見つめながら、数秒ほど固まっていました。
「…これ、どっちが勝ちになるんでしょう?」
「勝ちも負けもありませんね。引き分けです」
「…では、賭けの結果は?」
「ドローなので同時に口を着ければ良いんじゃないでしょうか」
「ですね♪」
そのやり取りで結論を出した二人の手はズボンだけでは飽き足らず、下着にまで手を掛けました。せめて下着だけは護ろうとフィエロの身動ぎが大きくなりますが、尻餅を着いた様な状態のまま動けません。手首も足首もしっかりと私に固定されたままなのです。そんな状態ではマトモに抵抗出来るはずもなく、また私に制止する気概も残されてはいません。そのまま二人の手で焦らすようにしてゆっくりと剥ぎ取られた下着の向こうからフィエロの肉棒が現れたのです。
「ふわぁ…♪」
「これが…フィエロの…」
感慨深そうに呟く『私』と歓喜の吐息を吐き出す『私』。二者それぞれの反応ですが、二人とも強く喜んでいるのは同じでした。当然でしょう。私達にとってそれは念願の瞬間であったのです。こうしてフィエロのオチンポを見ているだけでも心がざわついて落ち着かないのに、微かに香るオス臭さがそれをさらに加速させているのですから。
「うふふ…可愛いオチンポぉ…♪」
「これが精臭と言う奴なのですね。…しかし、この臭いは…昨日オナニーでもしたのですか?」
「…」
無理矢理、襲われて剥ぎ取られたので興奮も何も無いのでしょう。『私』達の目に晒されたフィエロのオチンポは人差し指大の大きさしかありません。ふにょんと仕方なく垂れ下がっているそれは何処か怖がっているようにも見えました。それを『私』は指でそっと摘み、感触を確かめていきます。まるで私達の身体と同じくらい柔らかい其の部分は興奮すると硬くなるとは到底、信じられません。少なくとも今の小さな姿からは『オスらしさ』と言うよりも『可愛らしさ』しか感じられないのです。
しかし、姿からはそうでも匂いはまた違います。指で摘む『私』とは別のもう一人の『私』は股座に顔を突っ込んでスンスンと鼻を鳴らしているのでした。未だ未発達な私の匂いでも性に関する匂いだけはしっかりと分かるのか微かな精の残滓を感じ取ってしまうのです。何より確かな『オス』の残滓に私の下腹部はドロリと溶けてしまうのでした。
「いけませんねぇ…♪オナニーなんて非生産的ですよぉ…♪ここにフィエロの精液を欲しがってるメスがいるんですからその御腹に注いであげないとぉ…♪♪」
「概ね同意します。オナニーするくらいなら、性欲処理に私達を使った方が効率的でしょう。私達もそれを望んでいますし、双方にメリットがあるのですから」
「そ、そんなの出来るか…!!」
「「「……」」」
思いも寄らない強いフィエロの否定に三つの人格が一様に傷ついてしまいました。予想はしていたとは言え、そこまで強く否定されると、やはり女としてどうしても傷ついてしまうのです。これが他のスライムであればまるで気にしないのかもしれませんが、仮にも私は人としての価値観をフィエロに与えられた身。そこから生み出される恋愛観や男女観はどうしたって人間の物に近くなってしまうのでした。フィエロが私達を傷つけるためにそんな言葉を放ったのではないと理解していても、女として見られていなかったと言う事実にチクリとした鋭い痛みを感じるのです。
「…これは御仕置きが必要ですね」
「ですね♪」
「な、何を…うあ…っ!!」
勿論、フィエロに罪はありません。そんなものは二人の『私』にだって理解出来ているのです。それでも御仕置きと言う『言葉』を使ったのはそれだけ悔しかったからでしょう。予想はしていたとは言え、完全に子供扱いだったと言う事に臍を曲げて拗ねてしまったのです。まだ『理性』に近い私はそれを仕方ないと自分を落ち着けることが出来ますが、二人はそのままフィエロを『御仕置き』しようとオチンポに触れた手を少しずつ動かし始めるのでした。
「ほぉら…コスコスすると…少しずつむくむくしてきますねぇ…♪うふふ…かぁわいいっ♪」
「勃起と呼ばれる現象を確認。海綿体に熱が灯るのを感じます。…興奮してるのですね、フィエロ」
「う……っ」
『私』が根元から優しく扱き、もう一人の私が皮を被った亀頭を弄ります。それらの刺激にフィエロのオチンポはピクピク震えてどんどんと起き上がってきました。そこにさっきの重力に惹かれていただけの肉の姿はありません。柔らかい肉の中にしっかりとした芯を手に入れ、水平になるまでに持ち上がってきているのです。大きさも人差し指くらいのサイズから二倍近い成長を遂げていました。態勢で言えば二倍では済まない量になっているでしょう。
―凄い……。
それは思っても見ない大きな変化でした。勿論、私にもある程度、性教育がありましたので男性の変化について知識はあるのです。しかし、目の前で実際にこうして見せ付けられるのは今までにありません。目の前で小さな肉がしっかりとした肉の棒へと変化するのを始めて見たのです。そして、雛鳥が親へと変わるよりも急激な変化に私達は心奪れてしまいました。さっきの御仕置きの件を忘れてもっと見たいと極限まで興奮した姿が見たいと興奮した吐息を漏らしながら指の動きを早くしていくのです。
「はぁ…はぁ……♪精臭の増大を感知しました。凄い…こんなに…匂いが一杯…♪」
「汗臭くて…イカ臭くて素敵…ぃ♪これがオスの…ううんっ♪フィエロの匂いなんですねぇ…♪」
「そう…ですね♪情報を更新しないと…こんな良い匂い…忘れられませんっ♪」
微かに感じていたオスの香りもまた『私』達の刺激で大きく膨れ上がってきました。まるで大きくなるオチンポに比例するようなその匂いに二人はあっさりと屈します。横目でチラリと様子を見れば、二人とも目をトロンと潤ませて目尻を下げていました。まるで夢でも見ているような胡乱な目ですが、しっかりとフィエロのオチンポだけは見据えています。オチンポに心奪われ、魅了されていっているような二人の様子に私の胸もまた疼いて仕方ありません。
「もっと大きくして…このフィエロの匂いを私達に下さいね…っ♪」
「その代わり…とっても気持ち良くして差し上げます…♪その先っぽから…白くて美味しいのをびゅるびゅるって吐き出してくれるくらいに…♪」
そして、欲望に屈した二人にそれほど意識の差異は感じられなくなりました。元々は私の一部であるのですから、それも当然と言えば当然なのかもしれません。しかし、今まで大なり小なり伝わってくる感情に違いがあったはずの二人はまったく同じように欲情と歓喜しか流してこないのです。その感覚は余りにも強く、私の『理性』を揺るがしかねないほど大きなものであったのでした。
「うふ…っ♪」
「ふ…わぁ…♪」
そんな『私』達の目の前でドンドンとフィエロのオチンポは大きくなっていきます。それはもうついさっきの水平だなんていうレベルではありません。天を突くほどに反り返っているのでした。勿論、大きさもさっきの非ではありません。太さは私の手首くらいにまで成長し、長さは私の手よりも遥かに長いのです。皮を被っていた亀頭も完全に剥けて、ピンク色の可愛らしい色を晒していました。しかし、膨れ上がった肉の先端はその可愛らしさの中に確かな迫力を孕んでいるのでした。同じようにさっきまで可愛らしかった肉はその身に青筋を浮かべてビクビクと震える棒に変貌しており、まるで圧倒されるような迫力を『私』達に見せつけています。
「これがフィエロのオチンポ…♪」
「これが…『私』達を気持ち良くしてくれるんですね…♪」
思わず呟いたような『私』の言葉に思わず背筋が震えてしまいます。だって…気持ち良くしてくださると言う事はそれを私が取り込むと言う事なのです。口でもアソコでも手でも…何処からでも構いません。フィエロのこの逞しくも恐ろしい肉の剣を突き刺されると言う事は…私にとって余りにも甘美過ぎる想像でした。こうして見ているだけでも私に宿る本能が騒ぎ出して溜まらないというのに…もし、突き刺されでもしたら…――。
―こ、壊れちゃうかもしれません…。
『理性』を総括する私はその存在の多くをフィエロから与えられた倫理観や道徳に依存しています。アイデンティティの殆どをそれらの準拠する私にとって欲望に負けるのはそのまま消滅へと繋がる可能性があるでしょう。しかし…私の心にはそれでも良いと、壊れてしまっても良いからフィエロのオチンポが欲しいと、そう願う気持ちが確かに芽生え始めていました。
「うふふ…♪じゃあ…いっただっきまぁす…♪」
「私も…いただきまぁす…♪」
「ふ…ああああっっ♪」
そして、私を追い込むようにして二人の口から甘い甘い感覚が伝わってくるのです。目の前までアップになった肉の棒を二人は口の中に咥え込んだのでしょう。其の辺りから少ししょっぱい感覚が湧き上がってきていました。勿論、その匂いもセットで私の鼻腔を擽っています。二人をノックダウンしたあの淫らなオスの香りが直接、口から嗅覚細胞に突き刺さっていました。しかも…それが一つではなく二つ。亀頭の先をパクリと咥え込んだ『私』と根元に舌を這わせる『私』とではまったく別の感覚が伝わってくるのでした。
―そして…勿論…伝わる快感もぉ…っ♪
私達はあくまでもスライムです。『ヒト』のように決まった性感帯がある訳ではありません。人型とそれ以外の部分では意識の繋がり方に違いがあるのか感じ方に違いはありますが、人型の中では大きな変化はありません。その気になれば何処でもアソコに、胸に、口に、アナルに出来てしまう私達にとって性感帯と言うのは余り意味の無い概念でした。そして、何処でも性感帯に出来るからこそ二人は咥え込んだオチンポの感覚を性感帯に刺激する快楽として処理する事が出来るのです。二方向から叩きつけられる私が腰が砕けそうになってしまうくらいの快楽として受け止める事が出来るのでした。
「ふ…っやああ…っ♪」
内股を摺り寄せながらガクガクと足を震わせる姿はいまや生まれたての小鹿よりも弱弱しいものでしょう。しかし、そうは理解していても、私の身体は止まってはくれません。生まれて初めて味わう確かな『快感』は余りにも強すぎるものであるのでした。甘美なオチンポの味や匂いと一緒に伝わってくるその強い波は私の下腹部を完全に蕩けさせて小さな空洞を作っていました。まるで人の子宮を模したようなその部分は蕩けた私の体液がたっぷり詰まっていて、早くそこにオチンポが欲しいと疼ききっています。
「ふひゅ…ン♪れろぉ…♪」
しかし、その疼きを必死で我慢する私とは対照的に二人の『私』はフィエロのオチンポを好き勝手に頬張っていました。亀頭を口に咥えた私は吸い上げるようにして頬を狭めています。四方から押し付けられたその刺激にフィエロのオチンポはピクピクと震えて、身に孕む熱をまた一つ大きくしました。大きさもまた一つ大きく膨れ上がり、亀頭は握り拳ほどの大きさに近づいていくのです。その逞しさに胸を躍らせながら私は口を窄めて、フィエロのオチンポを味わっていました。時折、舌を動かして表面を撫で回す刺激にフィエロもまた小さく呻いてくれています。
「うふゅ…♪はぁむ…♪やっぱり…美味ひ…♪」
もう一人は競合しないように根元を齧る様にして咥え込んでいます。しかし、硬い歯が存在しない私達にとってどれだけ力を入れてもフィエロのオチンポを傷つけることが出来ません。寧ろ、力を入れれば入れるほど粘性の身体と強く触れ合って気持ち良いのでしょう。ハムハムと口を動かす度に根元の熱もまた確かに跳ね上がっていき、力強くなっていくのでした。勿論、オス臭さもそれに比例するように伸びていき、それに魅了された二人の心をときめかせるのです。
「うっくぅ…!!」
そんな二人の決して上手とは言えないであろう『ご奉仕』にフィエロは瞳を閉じるようにして食いしばっていました。やはり、彼にもプライドがあるのでしょう。必死に『堕ちまい』と我慢していました。それはプライド高いフィエロらしい姿であると言えるかもしれません。しかし、だからこそ、そんな彼に心惹かれる『私』達の心に火を点けて、行為をエスカレートさせていくのでした。
「ふひゅ…♪」
「はみゅ…♪」
「あああっ」
亀頭側の『私』がその舌で先端の鈴口を穿った瞬間、根元側の『私』が裏筋に舌を這わせ始めました。完璧に一致したその行動は根幹で繋がっているからでしょう。三重詠唱を可能にする程の意思疎通を淫らな方向にも遺憾なく発揮しながら二人はフィエロを責め立てていきます。しかし、一見、一方的に私達が責め立てている様に見える姿も、実はそうとは限らないのです。こうして愛撫を激しくする度に私たちに跳ね返ってくる快楽の量も跳ね上がるのですから。フィエロのオチンポから感じる『快楽』に私達もまた追い込まれているのでした。
―あぁ…しゅご…♪オチンポしゅごいです…っ♪御腹の中もうドロドロですよぉ…♪
―この快感はぁ…分類不能…ですね…っ♪気持ち良過ぎ…てぇ…♪特別過ぎますぅ…♪
二人から伝わってくる心の声もそれを裏打ちしていました。実際は彼を責め立て、『堕とそう』としているはずなのにもう二人の中にはオチンポの事しかないのです。二人を経由して快楽を受け取っている私でさえ腰が砕けそうな位になっているのですから、直接受け取っている二人はまた一入なのでしょう。そう遠くない内に腰を砕けさせて、『ご奉仕』も満足に出来なくなってしまうかもしれません。
―そうなったら…この快感も…消えてしまう……。
今、私に与えられている淫らな感覚は全て二人のお零れに預かっていると言う二次的なものです。決して自分から進んで手に入れようとしたものではありません。それだけでも卑しい行為だと言うのに、私はそれを残念にさえ思ってしまうのです。未だ自分から行動する勇気などないというのに失うことを早くも恐れ始めていたのでした。
―でも…こんな…こんな甘い感覚…っ!耐えられる筈ないじゃないですか…ぁ。
伝わってくる快楽は二人が夢中になればなるほど、激しく絡み付けば絡み付くほど大きくなっていくのですから。既に二人が咥え込んだ時のあの感覚よりも遥かに強い快感が伝わってきているのでした。際限なく何処までも高まっていくようなその痺れるような気持ち良さは不安と共に期待を高めるものなのです。背筋から腰まで甘く痺れさせ、腰や足をガクガクと震わせる電流は下手をすれば痛みに近いように受け取られるかもしれません。私の身体を文字通り蕩けさせる淫らな熱は形を保てなくなる恐怖を煽るかもしれません。しかし、それら二つが合致したこの心地良くも激しい感覚はまるで私に刻み込まれるようにして快楽として求められていくのです。
―そぉですよぉ…♪もっと素直になってもいいんです…♪
―貴女が加われば単純計算で快楽が二倍から三倍に跳ね上がります…ね♪…もっと…この快感が欲しくはありませんか…?
そんな私を誘惑しようと二人の『私』から心の声が届きます。確かに二人だけでフィエロを独占されている今、それを考えないでもありません。根本が繋がっているとはいえ、私と二人は別の人格なのです。自分で感じるのと二人が感じるのとではやはり違うものなのでしょう。自分で感じるあのオチンポの感覚は一体、どれほどのものなのか、そして、三人でフィエロのオスの証に絡みついた時にどれほどの快楽になるのか。それに心惹かれなくはありません。
―でも…そんな事をしたらきっと私はすぐに壊れちゃいます…。
欲望に負けただけでも『理性』としてのアイデンティティが崩壊しかねないと言うのに、其の上、今以上の快楽を味わう事になったら…もう二度と戻っては来れないかもしれません。一生、フィエロのオチンポの虜として欲望に塗れた私になってしまうでしょう。それは…とてもとても魅力的ではありますが、私にだって『理性』としてのプライドがあるのです。そう簡単に負けるわけには参りません。
―うふ…♪強情ですね…♪まぁ…良いですよぉ…♪そう簡単に…って事は何れ負けてしまうんでしょうし♪
―理解不能。プライドよりも現状の快楽の総量を増やすほうが有意義です…よ。どの道…フィエロのオチンポに勝てる勝算なんて0に等しいんですからぁ…♪
―う、うるさいですよ…!黙りなさい…!!
仲間達の誘惑を振り払うように私はそっと頭を振りました。しかし、其の間も二人は私を追い詰めるようにして『ご奉仕』をエスカレートさせていくのです。ぐちょぐちょとオチンポの熱で蕩けた粘液を唾液のように亀頭に刷り込む『私』と根元だけでなく裏筋を舐め始めた『私』。カリ首よりも少し下の部分で時折、触れ合いながらも仲良くフィエロのオチンポを分け合う二人にフィエロの腰が震え始めました。私達の身体の中に取り込まれた腕や足も力一杯まで我慢しているのかブルブルと震えを見せ始めています。まるで身体中で必死に抵抗してみせるフィエロの可愛くも…そして哀れな姿に『私』達の心はまた熱くなっていくのでした。
―あはぁ…♪もう射精しそうなんですねフィエロは…♪
―オナニーするほど溜まっていたようですからね…仕方ありません。
―うふ…♪貴女もフィエロの事となると甘くなりますよねぇ…♪
―愛していますから。当然でしょう…♪
―そうですよねぇ…♪まぁ、愛している割には…フィエロを気持ち良くさせてあげないで突っ立ってるのが一人いますけど…♪
―…う。
揶揄するような『私』の言葉は確かに痛い所を突いていました。二人の行動を黙認と言う形で認めておきながら、私は一人離れて伝わってくる快感を享受しているだけなのです。どっちつかずの其の立場はどちらからも卑怯者だと言われても仕方ないとは自覚していました。しかし…だからと言って葛藤する私の心は答えを出してはくれません。どっち着かずのまま左右に振れ続けていました。
「う…ああああっ!」
その瞬間、フィエロが大きく叫ぶようにして背筋を逸らせました。同時に私に伝わる快感も一気に膨れ上がって、身体中を震わせます。何が起こったのか理解出来ないまま私はべちゃりと粘液の中に膝を着いてしまいました。完全に砕けてしまった腰は足から力を奪って立つことを許しません。快楽を示すだけの余力を残したまま、惨めにも震えるだけなのです。それに抵抗しようとしても後から後から沸き上がってくる快感の波は止まりません。幾らでも増え続けていくのです。
―な、なに…をぉ…♪
遠からず砕けたであろう腰にトドメを差した快楽の波。それは今までの物とは比べ物にならないものでした。その原因を探ろうと私は二人に意識を向けます。
そこではもう『ご奉仕』と言う言葉では生易しい陵辱が始まっていました。亀頭を咥え込んでいた筈の『私』は根元まで一気にフィエロのオチンポを咥え込んでいるのです。スライムである私達には呼吸は特に必要ありません。咽喉奥まで貫かれても息苦しさや苦しさなどはなく、快楽や美味しさ、良い匂いと言う感覚が先立つのです。それだけ大きな部分でフィエロのオチンポと接触していると言うだけでも身体が震えてしまいそうなのに、さらに『私』は舌を動かして裏筋を舐め回していました。敏感な舌の部分が裏筋を擦れ合う感覚は様々な色を見せて快楽のアクセントに変わるのです。
しかし、それだけでは終わりません。肉茎を担当していた『私』は担当していた部位を奪われて暇になったのではないのですから。根元までを『私』に譲って、自分はその下にあるふくよかな玉を取り込んでいました。フィエロの子種汁がたっぷり詰まった美味しそうなその部分にオチンポの熱で蕩けた粘液をたっぷりと刷り込んでいくのです。少し汗臭いそこは舌で刷り込むたびにピクピクと震えてくれてとても可愛らしい反応を返してくれるのでした。そして勿論、そこから跳ね返ってくる快感も大きく陰毛を生やした玉を口の中で転がす度に『私』の身体は喜んで止まらないのです。
「ふ…ああああああああっ♪♪」
それら二つの快感は私の中で幾つも弾けて止まりません。今迄でも十分、気持ち良かったのにそれらが下腹部でぶつかり合って弾けていくのです。その激戦区である子宮のような空洞はさっきからその快楽の余波に震えて、全身にそれを広がらせていきました。まるで身体中全体に広がっていくような悦びに私の腰は壊れたように跳ねてパシャパシャと水音をかき鳴らします。しかし、私自身の身体すらコントロール出来なくなった私はそれを抑えることが出来ません。その激しい快楽に堪える為に両腕で身体を抱き締めながら、魚のようにパシャパシャと粘液の上で身体を跳ねさせるのです。
―うふふ…♪ようやく貴女もイッたんですねぇ…♪
―どうです…♪初めてのアクメは…とても素晴らしいでしょう…?
強すぎる快感に身体を跳ねさせる私に二人の言葉が届きました。勿論、私も其の言葉の意味は理解しています。初歩的な性教育はフィエロに受けているのですから。『イく』や『アクメ』と言う言葉が『絶頂』や『オーガズム』とも現され、快楽の最高点であるのは私も理解していました。しかし、当たり前ながら経験するのは初めてで、私の意識も身体も困惑の渦に叩き落していたのです。
―これが…『イく』…?
しかし、それもしっかりと定義をされれば受け入れやすくなるのが常。身体が浮き上がるような浮遊感すら伴った快楽を『絶頂』であると教えられた私はそれをすんなりと受け入れられる事が出来ました。無論、慣れない身体が粘液の上で跳ねるのは止まりませんが、それでも意識はそれと『とてもキモチイイコト』であると理解したのです。それはまた一つ経験知を増やしたと言う意味では私に であったのかもしれません。しかし、それ以上に定義され、受け入れやすくなった『アクメ』は私の我慢を一気に削り取っていったのです。
―貴女が今味わっているそのアクメを私達は何度も味わってるんですよぉ…♪
―もっと…もっとその快楽が欲しくありませんか…♪もっともっと…気持ち良くなりたくありませんか…♪
―あぁぁ…っ♪♪
そして、それが私から誘惑する二人を一喝する気力させ奪い始めていました。元々、私は決して我慢強い方ではありません。『知識』の『私』が言っていた通り、最近では欲望に染まりかけることも多々あるのです。そんな私がこんな激しさの中に心地良さを感じるような快楽を味わって、突っぱねられるはずがありません。身体中を無慈悲に這いまわる蛇のような快楽に屈さないようにするのが精一杯でした。
―うふふ…♪…もう一押し…ですかね…♪
―あんまり焦らすのもかわいそうですから…早めにトドメにいってあげましょうか…♪
そんな二人の言葉と共に愛撫がエスカレートしていきます。ペロペロと飴を舐める様にして舌先を使っていた『私』は舌全体を広げて裏筋を舐めるように。また咽喉の奥もきゅっと締め付けて、敏感な亀頭に刺激を咥えることも忘れてはいません。その下にいる『私』は口に咥える玉を舌先で転がすだけでは飽き足らず、口を窄めて刺激していました。粘液塗れの口全体で精液のたっぷり詰まった大事な部分を包まれる感覚にフィエロもまた大きな声をあげています。
「あああああぁっっ♪ふわぁぁっ♪♪」
けれど、それよりも大きな声を私はあげてしまうのです。だって…だって、二人から伝わってくる快感はアクメしている私をより高いところへ連れて行くような激しいものなのですから。さっきの絶頂を皮切りにして、雪だるま式に快楽が膨れ上がっていくのです。オーガズムの中で絶頂する感覚はフィエロにだって教えられたことはありません。知識でさえ知らない感覚に私は身体中を跳ねさせて必死で堪えていました。
―でも…ぉでも…っ♪♪
しかし、寄せて返す事もなく只管、寄ってくる快楽の波は私の我慢をその中へと取り込んでいくのです。まるで防波壁が津波の前では無力なようにあっさりと飲み込まれて消えていくのでした。そんな状態で我慢など続けられるはずがありません。何処までも高まっていくような感覚に私の意識はおぼろげなものへと変わり始めていました。
―んふ…♪アクメがずぅっと続くのは気持ち良いでしょう…?
―止めようと思っても…もう無駄ですよ♪一度、始まった絶頂は中々、止まらないんですから♪
―少なくとも…私達が動いている間はまず無理ですね…♪
―しょん…なぁぁ…っ♪
無慈悲な仲間達の言葉に私の意識が揺れ動き始めました。だって、こんな激しい快感がずっと続くだなんて考えられないのです。いえ…ただ続くだけではなくきっとドンドンと大きくなっていくのでしょう。私が今、こうして感じている快楽はアクメを繰り返すたびに大きく膨れ上がっていくのです。まるで一つのアクメの波が次に来るオーガズムの為に身体を慣らして敏感にしていくように、私の身体を駆け巡る快楽は大きくなっていくのでした。もはや蛇ではなく大蛇にも近いその悦楽の波は私の身体を這い回る度に、前屈姿勢になった私の奥から蕩けた粘液を噴出させています。
―止めてぇっ♪こんにゃの…無理…っ♪無理だからぁぁっ♪
ついに始まった哀願。それは敗北宣言にも近いものでしょう。だって、今までは何だかんだ言いつつも私の方が主人格であり、一番の支配権を持っていたのも私なのです。しかし、今、こうして止めようも無い絶頂を与えられて、私はもう余裕を無くしてしまったのです。かつて二人の上位であったと言う事も忘れて、自分を壊しかねない快楽の波を止めてほしいと必死に懇願していました。
―だぁめ…♪
しかし、そんな私の哀願を仲間は一刀の元に切り捨てました。取り付く島もないその言葉に私の身体の奥から絶望感が這い上がってきます。だって…このオーガズムは私にはどうやっても止められません。私ではなく『私』達から伝わってくるものなのですから。無理矢理、二人をフィエロから離せば話は別かもしれませんが、最早そんな余力は私にはありません。地上で魚が跳ねるしかないように、快楽の上で私は身体を跳ねさせ、震えさせるしか出来ないのですから。
―やだ…こんなのぉ…♪無理ですよぉぉ…っ♪
―別に私達だって意地悪でこんな事してるんじゃありませんよ。貴女が素直になってくれれば…皆でもっと気持ち良くなれるんです♪
―さぁ…三人で…ううん…フィエロも入れれば四人ですね…♪一生、絡み合って…二度と離れないように…ずっとずっとエッチな事続けましょう…♪♪
必死で繰り返す懇願もやっぱり聞き入れてはもらえません。それどころか二人は欲望に塗れた思考を私に押し付けてくるのです。先ほどまではそれを押し返す力もありましたが、今の私にはそんな余裕がありません。耳を塞いでも言葉がどうしても聞こえるように私の思考の中に二人の言葉が交じり合っていくのです。高まる絶望感から諦めにも似た感情へと至った私は、少しずつですが無防備に二人の言葉を受け入れ始めていました。
―うふふ…♪もう少しで堕ちちゃいますねぇ…♪
―そろそろフィエロも射精しそうですし…それに合わせてフィニッシュといきますか…♪
―名案ですね…♪そうしましょう♪♪
その言葉と共に欲望塗れの二人は再び陵辱を激しくさせていきました。オチンポ全体を咥え込んでいた『私』が頭を動かすようにして抽送を始めるのです。咽喉の奥から口の先まで。数十センチにも及ぶ抽送を髪を振り乱すように繰り返しているのでした。無論、それだけで終わるほど『私』は甘くありません。じゅるじゅると粘液をカリ首に引っ掛けて引き出すのに合わせて舌も動かしているのですから。特に敏感なカリ首の辺りは重点的に舌で穿っていきます。其の上、唇の前まで引き出された亀頭に愛しそうにキスの雨を降らせながら、舌で鈴口を抉るのですから溜まったものではないでしょう。そうして再びオチンポを飲み込んでいく前にフィエロは数え切れないほどの震えと呻き声を上げて快楽を伝えてくれていました。
それに比べれば派手さはありませんが、下の『私』も負けてはいません。片方の金玉をそっと口から排出して、それを指でそっと弄んでいくのです。無論、ただ弄ぶのではなく、そのひんやりとした掌に取り込んで四方八方から舌のようなもので突き始めます。時にべったりと粘液を塗りこむようにして舐め回される玉はきゅっと窄まり、皺皺の姿に変わりました。勿論、口の中に残された玉も手加減はされていません。口の内側に新しく作られた粒粒の突起でゴロゴロと転がされているのです。その度に粘液がくちゅりと淫らな水音をかき鳴らし、『私』達やフィエロの興奮を高めているのが見て取れました。
「ひゅぅぅぅんっっっ♪♪♪」
そして、勿論、高まっていくのは興奮だけではありません。それを受け取る側の私の快楽もまた一段落、跳ね上がるのです。セックスそのものを髣髴とさせるような激しい口淫も、手加減無しに人外の快楽を刷り込み始めた愛撫も、どちらも私に強いオーガズムを齎していました。荒れ狂う嵐のような快楽の波に私はもう息も絶え絶えです。そこにはもう快楽を我慢すると言う思考すらなく、意識すら失いかねない蕩悦を堪えようとするので精一杯でした。
―うご…動かにゃいでぇぇっ♪こんな…こんなのぉ飛んじゃうっ♪私、ほんとぉに飛んじゃいますぅっ♪♪
懇願する私の言葉通り、その蕩悦は私の意識と身体を切り離しつつありました。そして、それはスライムにとってはとても辛い感覚を伴っているのです。だって、今の身体は私が意識して形作っているのですから。その意識が途切れたり、離れたりしてしまった時、私が今の形を維持出来るか分かりません。これが『ヒト』であれば、こんな悩みは抱かないのでしょう。しかし、睡眠も必要ない私にとって意識が途切れる、離れると言うのは、今までに無い、恐ろしいものであったのです。
―やっらぁぁっ♪♪壊れりゅぅっ♪壊れちゃいましゅぅっ♪気持ち良くって…こんなああぁっ♪
そしてもう一つ。何処までも際限なく高まっていく絶頂の波は未だ途切れていないのです。私の意識を飲み込もうとするかのような感覚はまるで大きなアギトに飲み込まれ、黒に塗り替えられるようにも感じるのでした。無論、その元となっているのは快感であり、否定しづらいものであります。最早、拒むことすら考えられないその奔流に幾ら抗おうとしても、抜け出す事が出来ません。じっくりと意識を塗り替えられるのを待つだけなのです。まるでアイデンティティを崩壊させるようなその快楽にどうしても本能的な恐怖を禁じえません。
―大丈夫ですよぉ…♪そんな風に抗おうとしなければ…とぉっても気持ち良いんですからぁ♪
―壊れてしまいましょう…?何もかも投げ捨てて…フィエロに与えられた価値観を投げ捨てて一匹のメスになりましょう…♪
―あっあああああぁぁぁっ♪♪
そんな私の両足を取るようにしてそっと二人の言葉が届くのです。甘い媚びに塗れ、快楽の余韻を響かせるその言葉は『私』達もまたこの蕩悦を味わっていると言う何よりの証拠でしょう。しかし、二人はそれを素直に受け止めている所為か、私のように恐怖を感じてはいません。味わっている快楽の量で言えば、二人の方がよっぽど大きい筈であるのに、私を暗い欲望の海に引きずり降ろそうとする余裕さえあったのでした。
―さぁ…そろそろフィニッシュですよ…♪分かりますか…このオチンポの震えが…熱が…猛りが…っ♪
―こっちの金玉も…きゅうって引きあがって…中のぷりぷりのザー汁発射前ですよ♪ぎゅるぎゅるって…私達を孕ませたいって言ってます…♪
―あぁ…あぁ…あぁぁぁ……っ♪
私にトドメを差すように二人から伝わってくる感覚はとても恐ろしいものでした。だって、フィエロのオチンポが一段と膨れ上がり、咽喉に引っかかりくらいのカサからぷんぷんってオスの匂いを撒き散らしているのです。同じように大きくなった肉茎はアレだけ『私』が丹念に舐めあげたというのに蕩けそうな熱をさらに一段を高めていました。真っ赤になった亀頭は特にそれが顕著で、咽喉奥を貫かれるたびに周りの粘液がドロドロに蕩けそうになってしまいます。其の上、その先端から微かに感じた精液の香りを撒き散らしているのですから溜まりません。その下の金玉も小さくなったその身をぎゅるぎゅると蠢かせて射精の瞬間を今か今かと待ち望んでいます。きゅっと引きあがった皮越しにさえぷっりぷりのザーメンが分かるくらいです。
まるで今にも射精が始まりそうなフィエロの様子。それらは否が応にも私の中のメスの本能を呼び起こしていくのでした。そして、その影響でさらに勢いが増した欲望の波が私の足首までを飲み込み、真っ黒に染めてしまいます。逃げ出せない程どっぷりと浸かった欲望の海は私の大事なところを攻め落とそうとすぐそこまで来ているのです。それが恐ろしくも…そしてとてつもなく甘美で期待感をそそられるものでした。
―や…やらぁぁ…っ♪今…今しゃせーされたら私…っわらひ本当に壊れりゅぅっ♪私じゃなくなっちゃううっ♪♪
射精の予兆を感じ取っただけでもすぐそこまで欲望が近づいてくるのです。これでもし射精などされたら一溜まりもありません。私が必死に今まで構築してきた自分と言うものは藁の家のように軽々しく吹き飛ばされてしまうでしょう。それに私は強い恐怖を抱いていました。
しかし、同時に私を吹き飛ばそうとしているのは例えようも無いくらい大きくて強い快楽なのです。今や台風にも近い勢いで私の中を荒れ狂う悦楽をもっと感じたいと言う気持ちは欲望に染まった中から生まれてきていました。そしてそのお陰で私の中にもしっかりとメスの本能が目を覚ましているのです。愛したオスに孕ませてもらいたいと、愛してもらいたいと、そうすればとても幸せなのだと、そんな価値観が鎌首を擡げ始めていました。そこから湧き出る強い期待感が私の中にじわりじわりと増えていきます。
―あぁ……ああああぁぁぁっ♪♪
恐怖か期待か。この期に及んでも強く葛藤を始める私の心はひび割れるような痛みさえ訴え始めていました。しかし、それも荒れ狂う悦楽の嵐の中にあっさりと飲み込まれていきます。胸が痛いはずなのに気持ち良い。気持ち良いハズなのに痛い。そんな相反する二つの感覚が目まぐるしく私の中で入れ替わり、どんどんと意識がおぼろげに近いものになっていきます。朝と夜が何度も入れ変わるような劇的な変化を繰り返す私はばしゃりとその上半身を粘液の中に倒れこませてしまいました。しかし、最早、私にはそこから起き上がる気力はありません。快楽に身悶えし、捩るしか道は残されていないのです。
「ふあああぁっ♪♪ひあああああぁぁ……っ♪」
「くっ…ああああああああっ!!」
そして、私とフィエロの嬌声が重なった瞬間、その先端が大きく震えました。いえ、それは小さな脈動であったのでしょう。しかし、それを咥え込んでいる『私』にとっては地震のように劇的な変化であり、そして天国のように待ち望んだ感覚であったのです。ずっと待ち望んだ『それ』が始まると言う事に『私』達の身体も震えて、悦び、崩れそうになっていました。しかし、『私』達はそれを本能でコントロールしながらラストスパートをかけていくのです。それに応えるようにしてフィエロの腰も浮き上がり…そして――
―やっあああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ♪♪♪
ドクドクと熱い液体が『私』の口腔に吐き出された瞬間、私の意識は白く染まりきってしまいます。それは勿論、欲望の海から逃れられたと言う事ではありません。頭の中がその白濁した液体の事で一杯になってしまったのです。その少しだけほろ苦くて、甘い味から、つんと鼻を差すほどの強烈で甘美なオス臭さ、舌では絡まって咽喉奥には張り付く程の濃厚さまで。それら愛しいオスの精で埋め尽くされた思考に崩れ落ちた私の身体が跳ねるのを止めません。その情報だけでイってしまいそうなほどの興奮を感じているのです。
「ああああぁぁっ♪ん…にゃあああぁぁぁぁっ♪♪」
ドロドロの精液で埋め尽くされた思考とは別に私の心はドロドロに蕩けていっていました。その肉の滾りから射精の瞬間までをリアルタイムで味わった私の心はもうぐじゅぐじゅになってしまっていたのです。咽喉元まで欲望に飲み込まれ溶けていった私はもう戻ってはきません。暗く暖かいその海の中で荒れ狂う快楽を享受し、悦び、喘いでいるのです。例え元も戻れなくとも、ずっとこの中で過ごしたい。そしてずっとフィエロの精液を味わっていたい。そんな感情すら芽生えるくらい私の心は射精で崩れて言ってしまったのでした。
―ふああああああぁぁっっ♪♪効っくぅぅぅぅっ♪アクメ響くっ♪響いちゃうぅっ♪♪せーえきでアクメおわんにゃいいぃっ♪
―フィエロの味っ♪フィエロの味っ♪フィエロの味ぃっ♪おいしぃれすぅしゅてきれすぅさいこうれすぅっ♪あぁ…フィエロフィエロフィエロぉぉぉっ♪♪
そして快楽。あの快楽に慣れているはずの二人でさえぐじゅぐじゅにするほど悦楽が今、私の身体中を駆けずり回っていました。暴力的なまでの快楽の波に私達は耐え切れません。身体中を跳ねさせる電撃のような感覚と境界が薄っすらと消えていく感覚に翻弄され、時折、点いたり消えたりを繰り返す意識を必死に繋ぎとめていました。しかし…それは決して消えるのが怖いからではありません。この瞬間が、フィエロの射精を味わっているというこの瞬間を一瞬たりとも見逃さないように、余す所なく味わいつくせるようにと、私達全員は意識を必死につなぎとめようとしていたのです。
「…あ………ふわ…あ…………♪♪」
そして、フィエロの射精が収まり始めるのに比例して波が収まり始めた頃、私の身体は粘液の中に完全に倒れこんでしまっていました。その視界は粘液が溶け出しているのか歪んでしまって上手く前が見えません。他の二人も同じようで白く瞬く視界に四苦八苦していました。前のめりになる私の下腹部はもうドロドロになってしまい、境界の薄れた股間から愛液のようにしてドロドロと内股を伝って零れ落ちています。そのまま身体中が溶け出してしまうのではないかとも思いましたが、どうやら形を失うのだけは免れたようです。
「ふああぁ…♪美味しかったれしゅよぉ…」
「ぷはぁ…♪…うふふ…しゅご…♪しゃせーだけでにゃん回イッたか分かりましぇん…♪♪」
しかし、そんな私とは違い、残り二人はまだ余力を残しているようでした。私などはもうさっきの絶頂が余韻を引いてジンジンと身体中が痺れているというのにもうフィエロのオチンポから口を離して褒めちぎっているのですから。その欲情に塗れた表情にメスとしての充足を示す姿が魅力的だったのでしょうか。未だ硬いままのフィエロのオチンポがピクリと震えて自己主張をしていたのです。
「うふゅ…♪まだまだ…こぉんなに元気れすねぇ…♪」
「硬度も熱もじゅーぶん♪まだまだ射精出来るのは間違いありましぇんね…♪」
それにフィエロの興奮を見て取った二人は射精の余韻で肩と胸を震わせるフィエロのオチンポに再び手を這わせました。ひんやりとした手に触られたそれはビクリと悦び、先端から白濁した液を漏らしてくれます。どうやら…まだまだその中には精液が残っているのでしょう。そう見て取った二人は顔を見合わせて淫猥な笑みを浮かべました。
「じゃあ…このまま次に行きましょうかぁ…♪」
「まっ待て…せめて…休憩を…」
「あらぁ…どうしましょうか♪」
しかし、ここで二人は初めてフィエロの要望を聞く素振りを見せるのです。てっきりそのままもう一度、フィエロの精液を強請ると思っていただけにそれはとても意外ではありました。…けれど、意外なだけではないのです。既に快楽と射精を覚えてしまった私はもっとこれが欲しいと叫んでいるのですから。フィエロの中にまだ残っているのであれば尚更です。その太い幹の中に残っている精液を思いっきり吸いだして欲しいとさえ思っていたのでした。
「では…私達に名前をつけてくれれば…聞き入れても構いませんよ♪」
「名前…?」
「えぇ…♪何時までも名無しでは折角、ご奉仕しても味気がありません♪ウィータとはまた違う名前を私達に下さいませ…♪」
そんな私の感情が伝わっている筈なのに、二人は勝手に話を進めていきます。『私』達にとってもまだまだ満足できているはずがありません。だって、その根幹で繋がっている私はまだこんなにも彼に飢えているのですから。しかし、まるでそれを感じさせないように二人はここで『お開き』にしようとしているのです。それが未だ蕩悦で痺れる思考とは言え、私には理解できませんでした。
「名前…?」
「えぇ…♪とっても素敵な…私達だけの名前を下さいな♪」
「…知識のお前がスキエンティアで欲望のお前がアモールだ」
首を傾げる『私』を見てほんの少しだけ間を開けて、フィエロはすっぱりと応えました。普通はこんな風にして名前を聞かれて即答など出来ないでしょう。私はフィエロがとても頭の良い方であると知っていますが、こんな風に名前を決められるのと頭の良さはまた別物です。その上、与えられた二つの名前自体も決して簡潔なものではなくとても素敵なのですから、どうしてそこまで早いのか気になってしまうのでした。それは『私』――いえ、スキエンティアにとっても同じなのでしょう。彼女はそっと口を開き、それを彼に問おうとしていました。
「回答所要時間一秒。…素敵な名前ですが…どうしてそんなに早く答えられたのですか?」
「ウィータと名付ける時に他にも幾つか案があった。…それだけだ」
しかし、ぶっきらぼうな口調と視線を逸らす仕草はそれが嘘である事を教えてくれています。無論、その中には本当の事も幾つか含まれているのでしょう。しかし、肝心な部分でフィエロはきっと嘘を吐いているのは私にも、そしてアモールにも明白でした。
―うふふ…♪可愛い人…♪♪
どうしてフィエロがこうして嘘を吐くのかは分かりません。しかし、それはきっと彼が気恥ずかしいからなのでしょう。それを目敏く見抜いたアモールの心から強い喜悦と共にそんな言葉が伝わってきました。私よりも『本能』に近い彼女は同じようにして母性本能も強いのです。彼のぶっきらぼうな仕草にその母性本能を高めて、ぎゅっと彼の身体に抱きついていました。
「うふふ…♪とぉっても素敵な名前をありがとうございますねぇ♪」
「アモール。彼を独り占めするのはとても卑怯な行為です。半分、明け渡すのを要求します」
「あら…それもそうね…♪『休憩』するとは言え、やっぱり仲良くフィエロを分け合わないと♪」
しかし、抱きついても二人はさっきのような激しい快楽を私にくれません。両側からフィエロの腕に抱きつくようにして仲良く彼を分け合っているだけなのです。それは少し前であればとても微笑ましい光景に移ったでしょう。しかし、今の私は欲望の海にその殆どを沈めて、身体に強い疼きを宿しているのです。今にも暴れだしそうなその疼きはただ貪欲にフィエロだけを求めていました。しかし、彼女達は約束を破るつもりはないようで、私もまた欲望に完全に負けてしまった訳ではありません。再び始まる葛藤の時間に私は胸を押しつぶされそうなくらいの苦しさを感じるのでした。
「はぁぁ…っ♪はぁぁ……はぁ…♪♪」
「まぁ…私達は『休憩』するにしても…もう名前を貰ってる人はいますけどねぇ♪」
「その人がどうするかは私達が存じ上げるものではありませんが。一応、私達はサブ人格ですし」
理性と欲望の最後とも言える葛藤の最中、彼女達のそんな声が私に届きました。確かに…二人がフィエロと交わした約束は私には適用されません。だって、私は既にウィータと言うこの世で最も素敵な名前を頂いているのですから。彼女らの約束は『名前を貰えたら休憩させる』と言うものであるので、既に貰っている私は自由に動く事が出来るのです。
―でも…だからと言って…そんな…ぁ…♪
未だ尾を引く快楽の余韻でドロドロに崩れている思考でも、それはいけないことであると理解出来ました。だって、それはもう私の崩壊を意味するも同然なのですから。今までの消極的に享受するようなものではなく、自主的に参加をすれば『理性』を投げ捨てて『欲望』に負けたも同然です。それはきっと私のアイデンティティを修復不能なまでに傷つけてしまうでしょう。今でさえこれが終わった後に『元』の私に戻れるか、かなり危うい所なのですから。
―でも…ぉ…っ♪♪
しかし、それと同時に私の身体の殆どは『欲望』に敗北しているのです。理性としてしっかりと形を残しているのは本丸である顎から上だけでした。残りの部分は欲望の海に飲み込まれて、快楽の余韻を貪っています。そんな状態でも『理性』は必死に抵抗を続けていますが、旗色が悪いのは否めません。じわじわと、さっきの快感を、あの甘美な精液を、そして何よりフィエロを味わいつくしたいという気持ちがむくむくと鎌首を擡げ始めるのです。
「…はぁぁ…♪はぁ…♪はぁ…っ♪」
「…ウィータ…」
粘液の中に倒れ伏したまま胸を上下させる私に心配そうなフィエロの声が届きます。決定的なまでに迷惑を掛け、無理矢理、精液を搾った私に対してさえフィエロはそんな風に優しくしてくれるのでした。それに…胸が暖かくなった瞬間、私は一つの決断を下します。それに身体も同意するように力を宿し、未だ余韻の響く重い身体をズルズルとフィエロの元へ這い寄らせるのでした。
「フィエロ…フィエロ…フィエロぉ…♪」
「うあ…っ」
そして、私の手はそっとフィエロのオチンポを掴みました。――そう。私は敗北したのです。フィエロのオチンポに触れたそれは『理性』であるはずの私が全てを『欲望』に明け渡した事実上の敗北宣言だったのでした。けれど、その決定打となったのは欲望や快楽などではありません。フィエロへの深く強い愛情がトドメとなったのです。
―フィエロ…ぉ♪迷惑掛けた分…ずっとずっと気持ち良くしてあげますからぁっ♪♪
これだけの迷惑を掛けても、まだ私を心配してくれる大好きな人。彼を独占しようとしてその目的を阻んでいるスライムにさえ優しさを向ける愛しい人。そんなフィエロをもっと気持ち良くしてあげたい。一緒に気持ち良くなりたい。そう思ってしまったのが『理性』の敗因でしょう。思いも寄らない方向からの援軍に『理性』は成す術も無く陥落し、こうしてフィエロの元へと私を這いずらせていました。『お掃除』をするだけであると、迷惑をかけた『償い』をするだけであると。心の中にはそんな言い訳が横たわっていますが、それは私自身でさえ騙すことのできない嘘なのです。
それは彼が望んだ淑女にはあるまじき姿であったのかもしれません。しかし、そんな事、私にはもうどうだっていいのです。もう…こんな快楽を知って淑女になどなれるはずがないのですから。フィエロのオチンポの先端からあのとっても甘くて濃厚な汁が出る感覚を知って、貞淑でなどいられるはずがありません。どれだけ淫らな姿を晒してでも、私はあの射精の瞬間をもう一度味わいたくあったのです。そして、それこそがフィエロへの恩返しと償いになると硬く信じて――いえ、心の拠り所にしていたのでした。
「ふわ…あぁ♪♪」
さっきのスキエンティアとアモールのようにフィエロの股座に顔を埋めながら、私は思いっきり匂いを吸い込みます。さっきの射精の後、ちゃんと『お掃除』されていなかったからでしょうか。そこはザーメンの鼻に突くようなオス臭さで一杯です。何処か生臭さすら感じるそれは慣れないと不快でさえあるかもしれません。しかし、私にとってそれは決して初めてではないのです。さっきまで二人が嗅いでいたそれらの匂いはもう私にとって鼻腔と共に欲情を擽るものでしかありません。自分で感じるその匂いに一気に下腹部に熱が灯ったのを感じながら私はゆっくりと口を開いて、舌を伸ばしていくのです。
「うぃ…ウィータ…!?」
そんな私を食い止めるようにフィエロが名前を呼びました。でも、それはきっと照れ隠しなのでしょう。『だって、フィエロも私に気持ち良くしてもらうのを望んでくれているはずなのですから。この硬く反り返ったオチンポがその証拠です。先端から今にも精液を漏らしてしまいそうなオチンポはまだまだ快楽を求めている所為なのでしょう。ならば…これが萎えるくらいまで気持ち良くしてあげなければ私の償いは終わりません』
「うふふ…♪待っていてくださいねぇフィエロぉ…♪」
アモールと同じように欲望に塗れた声をあげながら私はそっとその先端に舌をつけました。最初はぺロリと味を確認するような小さな接触。それだけで濃厚な精液の匂いが私の思考を焼きつかせるのです。既に私の中に刻み込まれた子種汁の味や匂い、濃厚さを引き出すようなそれに私の身体は軽く絶頂を迎えてしまいました。しかし、今の私はその程度では足を止めません。寧ろそれに背中を押されるようにしてゆっくりと舌の動きを早くしていくのです。
「あは…♪ウィータもフィエロのオチンポ汁とっても美味しいんですって…♪よかったですねぇフィエロ…♪」
「でも…もっともっと子種汁欲しいみたいですよ…♪フィエロのぷっりっぷりのザーメンがなくなっちゃうまで搾り取っちゃうつもりみたいです…♪」
「なっ!!」
そんな私の気持ちを代弁するかのように両側のスキエンティアとアモールがフィエロの耳元で囁きます。それがフィエロに大きな効果を与えたのでしょう。真っ赤になったフィエロの腰はビクリと強い反応を示してくれています。まるで私の愛撫に悦んでくれたようなそれに私の心はさらに興奮を加速させて、精液の残滓を残す亀頭を舐め回し始めるのでした。
「うあああっ…」
「ほらぁ…見てください♪あのだらしのないメスの顔…♪」
「オスのオチンポ舐めるのが最高に幸せって言うような淫らな顔をしているでしょう…♪」
―らって…らって仕方ないじゃないですかぁぁっ♪♪
舌先から舌腹、それに舌の裏まで使って亀頭を舐め回す私を揶揄するようにして二人の声が届きました。でも、二人だってついさっきまで同じ顔をしていたはずなのです。そんな彼女達にそこまで言われるのにやっぱり微かな反発心を覚えてしまいます。それに愛しいオスのオチンポを舐めまわして顔が蕩けないメスなどいるでしょうか。オチンポを一つ舐めるとしっかりと反応を返してくれる。その満足感と充実感があるこのご奉仕に心を砕かないメスなどいるはずがありません。どんなメスでも愛しい人のオチンポを舐めれば、今の私のような淫らな顔をしてしまうに違いないのです。
―それに…精液の味も…まだ残っていましゅ…♪
愛しいオスの射精の残滓。それは私の興奮を掻きたててくれる媚薬のようなものでした。そんなものを直接、舌で舐め取っているのですから身体が燃え上がらないはずがありません。背筋から子宮までが蕩けるような甘い痺れを感じてしまうのです。さっき味わった快楽にも似た感覚は、彼女達というフィルターを通していない所為か、容赦なく私に突き刺さってきました。一舐め毎に精液の残滓を感じ、燃え上がる身体がより明確な形となった快楽が震わせているのです。
―ふ…あぁ…♪美味しひ…♪美味しいれすよぉ…♪
さっきのフェラチオでもうすっかり蕩けきった脳髄に甘い媚を浮かべながら、私は必死で亀頭を舐め回します。しかし、それも永遠に続く訳ではありません。私は既に終わった射精と言う行為の残滓を感じているに過ぎないのです。過去となった事象をどれだけ引き出そうとしてもそれは敵いません。きゅっとしまった鈴口をどれだけ舐めても精液の味や匂いを感じられなくなってしまうのでした。
「あぁ…あ…あぁぁ…っ♪」
スキエンティアやアモールと言うフィルターを通した状態でさえ、フィエロの子種汁は私を虜にして止まないのです。それをこうして自分で味わって、我慢など出来るはずがありません。すぐに精液の残滓をより引き出そうと私の『お掃除』が激しくなっていきました。舌で先端を舐め回すのは変わりませんが、両手で逞しい根元を持って、絞るようにして精管の中にザーメンを引き出すのです。勿論、それはただ乱暴にするのではありません。ちゃんとフィエロが気持ち良くなってくれなければ私の償いは終わらないのですから。
「うあ…ウィータ…やめ…っ!!」
そんな私を引き止めるようにしてフィエロが言いますが、それはさっきも言ったとおり照れ隠しでしょう。だって、オチンポを硬くして私の愛撫に応えてくれているだけではなく、腰まで震わせてくれているのですから。それだけ悦んでくれると『お掃除』する側としても熱が入ってしまいます。それを現そうと私の身体はつい口に亀頭を含んでしまうのでした。
「うあああっ!!」
その刺激にフィエロの腰はまた震えて亀頭を膨らませてくれました。やっぱり舐めるだけでは刺激が足りなかったのでしょう。こうして口の中に含んだ方がその反応が顕著になっていました。射精前の硬さや大きさにまで復活したオチンポはさっき叩きつけられた快楽を思い出しているのか、ピクピクと私の中で期待に震えているのです。それがフィエロの感情を何より端的に表してくれているようで、もっと気持ち良くしてあげたいと言う欲望を大きくしていくのでした。
―ひゅふぅ…♪でも…しょの前にぃ…♪
今はまだ『お掃除』なのです。子種汁が精管の中に残っている状態ではフィエロも射精しきった気分にはならないに違いありません。それでは私の『ご奉仕』を堪能してもらえないかもしれないのです。それではいけません。だって、これは私からフィエロに対する償いなのですから。身体中だけでなく心まで蕩けるくらい――今の私のようになるまで気持ち良くなってその精嚢を空っぽになるまで射精してもらわないといけないのです。その為にもこの『お掃除』はとても重要でしょう。
―らからぁ…たっぷり吸っちゃいまふねぇ…♪
その言葉を胸に浮かび上がらせるのと同時に私は一気に肺の部分を広げました。その所為ではっきり生まれる圧力差に口腔内の亀頭も引っ張り込まれていきます。それにオチンポの熱で蕩けてしまった粘液が絡み合い、じゅるじゅると淫らな水音をかき鳴らしていきました。まるで興奮してドロドロになった唾液がかき鳴らすような淫らな音にフィエロの顔はさらに快楽で歪みます。
「あはぁ…♪見てくださいあの無様なフェラ顔…♪とぉっても間抜けですよねぇ…♪」
「理性の崩壊を感知…♪間抜けでも無様でも構わないから…とフィエロのザーメンを必死で欲しがっていますね…♪」
「うふふ……精液で感じてるメス豚の表情ですよぉ…♪」
そして、二人が言う通り、私もきっと似たような顔をしているのでしょう。圧力差の関係上、フィエロのオチンポを取り込んでいる頬の部分も凹んで間抜けな顔になっているのです。その上…フィエロの精管からはまだ精液が残っていたのですから。バキュームする度に、オチンポを扱く度に、その先端からトロリと漏れてくる寒露を必死で嘗め回していたのでした。それは彼女達が言うように無様で間抜けな顔に違いありません。フィエロが欲した淑女などとは正反対に位置する存在に堕ちてしまったのです。
―あぁ…♪れも…そんなのどうでもいいでしゅ…♪♪
淑女になるというのは私の中での大きな目標の一つでありました。しかし、快楽でぐじゅぐじゅになってしまった私の思考ではそれはどんどん後ろの方へと落ちていってしまっているのです。今の私にとってそれは快楽や精液を引き換えに目指すものでは決してありません。それよりもフィエロにたっぷり償い、精液を頂ける方がよっぽど重要なのでした。
―ううんっ♪寧ろ、見てくだしゃいっ♪私のフェラ顔をぉっ♪♪ザーメン欲しくて仕方が無いメス豚の表情見てぇっ♪♪
そんな本能丸出しの顔をフィエロに見られている。そう思うだけで私の下腹部はまたドロリと溶けてしまいました。背筋から首と頭の付け根までも鋭い電流が走って震えてしまいます。被虐的なその想像に私のメスが反応してしまったのでしょう。きゅんと唸った下腹部ではまたドロドロの欲望が高まっていました。そして、その欲望がもっと今の快楽が欲しいと、フィエロに淫らな姿をもっと見せ付けたいと叫び始めているのです。
「償いだなんだって言いながら…結局、子種汁欲しくて仕方が無いメス豚なんですよねぇ…♪」
「見られている事に対する快楽を確認…♪ホント、無様なマゾ豚の姿です…♪」
「あ…う…あぁぁっ!」
私の与える快楽に反応してくれているのでしょうか。また一つ呻き声を大きくするフィエロにそっと二人が囁きました。欲情塗れでメス丸出しの彼女達にだけは言われたくはありませんが…それもまた事実です。本当は私にだって、償いなんて建前であるのは分かっているのです。メスの本能を剥き出しにして彼に襲い掛かっているのだと理解していました。でも…それでも、私はそう思うしかないのです。これがフィエロの為にやっているのだと言う事が私が私である最後の境界なのですから。
―そんな風に必死にザーメン吸い上げてフィエロの為だなんて笑わせますねぇ…♪
―子種汁欲しくて愛した男性にフェラ顔晒して感じているって言うのに…♪
そんな二人の言葉は愚かな私に向ける自嘲なのでしょう。だって、彼女達も勿論、私という大きな括りの中の一部なのですから。今もその根幹では繋がっていますし、同じように欲情とフィエロへの愛情を抱いているのです。そんな二人がここまで私を罵ると言う事は、私が心の奥底ではそう思っているも同然なのでしょう。けれど、それでも私は譲れません。私が私であるためにも最後の拠り所を失うわけにはいかないのです。
―うふ…♪でも、どうします…?もうフィエロのザーメンは打ち止めですよぉ…♪
スキエンティアの言う通り、私を最後の部分で繋ぎとめている『お掃除』はもう終わりに近づいてきていました。どれだけ卑猥な音をかき鳴らしながら吸い上げても、どれだけゆっくり幹を扱き上げても精液はもう出てこないのです。元々、大量に中に残るはずがありませんから、それも当然と言えば当然でしょう。しかし、精液の味を本能的に求めてしまっている私はこれから自分に言い訳を繰り返しながらフィエロを次の射精に導かなければいけないのです。
―これは償い…そう…フィエロに対する償いなんでしゅ…♪だから…私は…ぁ…っ♪
「ぷぁぁ…♪あは…♪とぉってもきれぇになりましゅたぁ…♪」
身体中が蕩けてしまいそうなオチンポの熱をずっと感じていた所為でしょうか。思考よりもさらに舌足らずになった言葉で私はそっと報告します。それにフィエロは胸を上下させながら応えてくれました。そっと見れば、身体を支える腕は今にも崩れ落ちそうにガクガクと震えています。やはり今のままの態勢では辛いのでしょう。そう判断した私はそっと思考を粘液に向けて彼の束縛を解きます。瞬間、力なく地面に倒れ付したフィエロの身体をそっと粘液の身体で受け止めるのでした。
―…あれ?
そこまでして私がさっきまで身体の支配権を失っていたことに気付きました。しかし、今は今までどおりスムーズに身体をコントロールする事が出来たのです。驚いて二人を見ますが、彼女達は同じように欲情の色を浮かべてフィエロに寄り添っているままでした。今まで私を遮ってきた二人が素直にコントロールを返したことに強い違和感を感じます。しかし、それが何か言葉にする暇は無く、私の思考は視界の下でピクピクと揺れるオチンポに引き戻されてしまうのでした。早くその奥にある精液を味わいたいと私は仰向けになったフィエロにそっと身体を倒していきます。
「…ちゅぎはぁ…♪しゃっきの…お詫びの分れす…♪」
「お、お詫びなんて要らないから休ま…うああっ!」
そんな私を遮ろうとするフィエロの言葉を意図的に聞き逃しながら私は亀頭にキスを降らせます。腫れぼったい肉感的な唇を作り出し、それで柔らかく挟み込むようなキスにフィエロは腰を震えさせながら悦んでくれました。少し腰を浮き上がらせる姿はさっきよりも感じているというわけではないのでしょう。きっとより反応をストレートに示しやすくなった姿勢のお陰です。しかし、そうと理解していてもそこまで反応してくれる彼にドロドロとした感情がまた大きくなっていくのでした。
「ちゅ…ちゅぅっ♪んふ…♪ぢゅるるるるるっっ♪♪」
「くぁぁ…っ!!」
それを示そうと私の身体は本能的にフィエロの亀頭にむしゃぶりついてしまいます。しかし、それはさっきのようなただ吸い上げるだけのバキュームではありません。舌で裏のカサを舐め回す、射精させる為の『ご奉仕』でした。先ほどの『お掃除』のような遠慮は無く、二人が培った経験知を存分に使ってフィエロを感じさせようとし始めていたのです。それにフィエロもとっても悦んでくれていました。
―あぁ…♪♪ザーメンの匂いがなくてもしゅてきですよぉ…♪
逞しいフィエロの肉棒には念入りの『お掃除』をした所為…いえ、お陰で精液の残滓は少しも感じられません。もう味や匂いの欠片一つ残ってはいないのです。しかし、それでフィエロのオチンポが不味くなるかと言えばそうではありません。寧ろ精液に割かれていた思考が、その肉棒の逞しさに向けられるようになり、私の心を高鳴らせるのです。
―こぉして頬張ってるらけでも…一杯れしゅぅ…♪
大きな大きなフィエロの亀頭は私の口に丁度、ぴったりな大きさをしていました。それは当然と言えば当然なのでしょう。スライムである私にとって身体の変化と言うのは自由自在です。小さくしようとすれば幾らでも小さくできますし、逆もまた然り。それは口のサイズも同様でフィエロの亀頭にぴったりのサイズに本能的に変わったのでしょう。しかし、だからと言って、それに心動かされないわけではありません。まるでオーダーメイドのようにフィエロの亀頭がぴったり納まっている私の口。愛しい人と一致している、専用であるという子供らしい感情が女としての幸せを湧き上がらせてしまうのです。
―それに…ドロドロで硬いぃ…♪♪
既に味わっている事とは言え、二人のフィルターを介した感覚と自分で味わうフィエロのオチンポはやっぱり違います。触れた部分がドロドロに溶けるような熱はそこだけ別の生き物のようにも感じさせるのでした。しかし、それもまたフィエロの一部である事に疑いようは無く、身体だけでなく思考まで淫らに蕩けさせていくのです。
そしてその硬さも忘れてはいけません。肉で出来ているとは到底思えない硬質さは私の手を強く弾き返していました。まるで鉄で出来ているような肉の剣に私の心が高鳴っていくのです。だって、それはフィエロの興奮の証なのですから。射精直前を除けば最高潮に至るまで硬くしたオチンポはそれだけ私で感じていると言う事なのです。その上、文字通り歯が立たないような硬さにオスの逞しさを感じ、メスの本能が疼いて仕方ないのですから溜まったものではありません。こうして口に含んでいるだけでも興奮のボルテージが上がり、再び絶頂へと連れていかれそうになるのです。
―あぁ…またぁ…またイッちゃう…っ♪♪
元々、さっきの『お掃除』の最中にも快楽を我慢していたのです。もし、あの絶頂が始まってしまったら私は『お掃除』出来なくなってしまうのですから。せめて『お掃除』の間くらいはアクメを我慢しようと必死に堪えていました。しかし、その我慢は『お掃除』が終わってしまった今、無意味なものになってしまったのです。新たな線引きを見つけられないままフィエロのオチンポにむしゃぶりついた私は接触した粘膜から燃え立つような熱を感じ始めていました。
―あぁ…イくっ♪アクメ来ちゃうっ♪フェラでアクメしちゃってる淫らな顔見られちゃいましゅっっ♪♪
ドロドロの熱の中にアクメ顔を見られるという背徳感が宿った瞬間、私の腰はビクビクと震え始めました。瞬間、オチンポとの接触部から子宮に降りた淫らな熱が全身に広がっていきます。ドロドロとゆっくりと手を伸ばすような絶頂の仕方はさっきのような電撃を直接浴びるような激しいモノではありません。しかし、何もかも飲み込んでいく欲望の熱波は私の全身を敏感にして、次のアクメへの興奮を高めるのです。まるでこれから先の絶頂をより深く大きいものにしようとするアクメの仕方に私の背筋は震えて、奥までフィエロのオチンポを咥え込んでしまうのでした。
「う…おぉぉ…っ!」
それにフィエロは今までよりも呻き声を少し高くして、腰を跳ね上げさせました。さっき二人がやっていたようにこうして全部を咥え込まれるのはやはり気持ちの良い事なのでしょう。まして私はスライムなのです。その肉の蠢きから大きさまで全てをフィエロぴったりに調整できるのですからその快楽も大きいに違いありません。勿論、そうしてぴったりと調整されたくちマンコは私にとっても莫大な快楽を齎してくれます。先端を口に含んだだけでも私はあっさりとアクメしてしまったのですから。咽喉奥まで一杯にされて絶頂しないはずがありません。跳ね上がったオチンポの情報に頭を焼きつかせながら、再び私の身体をあのドロドロの熱波が襲い掛かってくるのです。
―あぁ…フィエロも感じてくれてるんでしゅねぇ…♪私の咽喉の奥ぅ…♪まだ誰も触れてない処女咽喉マンコで感じてくれてるんですねっ♪♪
その絶頂の最中でフィエロは何度も腰を震わせて反応を示してくれました。ドロドロと溶けてしまいそうな身体が絶頂に震えを示しているからでしょうか。その反応は何時までも止まることがありません。まるで私を絶頂の波から現実に引き上げるようにして咽喉の壁を突いたり擦ったりしてくれるのです。しかし、二度のアクメで敏感になった私はそんな刺激にさえ敗北し、イき続けてしまうのでした。
―ふあぁ…♪またアクメしちゃうぅぅっ♪イッちゃうっ♪
そして、私がイけばフィエロも反応し、フィエロの反応で私はイッてしまうのです。まるで快楽でお互いに繋がっているような感覚に私の心は躍りました。だって、それはとても幸せな感覚なのです。まるで『ヒト』同士の交わりのようにお互いに高まり合い、絶頂へと進んで行くと言うのは私の憧れでもあったのですから。それを今、大好きなフィエロと共に味わえているというのがとても感慨深く、そして嬉しいのです。
―フィエロぉ…♪フィエロフィエロぉ…っ♪
オーガズムの中で愛しい人の名前を呼びながら、私の顔はゆっくりと動き始めます。咥え込んで粘液を痙攣させるだけの状態から左右に擦るような動きへ。首を傾ける仕草にも似ているそれは私の咽喉の奥とフィエロの亀頭を擦り合わせる事になるのです。きゅっとしまった食道でオチンポの一番敏感な部分を洗うように擦り上げているのですから。その快楽はきっと今までの非ではないのでしょう。小刻みに顔を動かすだけでフィエロのオチンポはとっても震えて悦んでくれています。
「あは…♪フィエロのオチンポ全部飲み込んじゃって…♪そんなにザーメン欲しいんですね…♪」
「ぴくぴくって咽喉の…いいえ、咽喉マンコ痙攣と絶頂を感知…っ♪何度も絶頂してるメス豚にお情けでもいいから精液下さいって懇願してるみたいです…♪」
意地悪な二人の言葉にピクリとフィエロのオチンポが反応しました。彼女達の淫語責めもやはり効果のあったものなのでしょう。そっと上を見上げれば興奮した視線で私を見下ろしているフィエロと目が合いました。熱に浮かされたような頬も少し血走った目も大きく上下する胸も全部、私が引き出したものなのです。普段は冷静な彼からこれほどの興奮を引き出したのは他の女ではない私なのです。そう思った瞬間、私の中でドロリとした欲望がまた大きくなると同時に被虐心を引き出していました。
―あぁぁ…♪見られてるぅ…♪アへ顔で必死にフェラしてるの見られてるぅ…っ♪
他の二人から伝わってくる視界ではなく、私と目が合うと言う事は彼が見下ろしてくれていると言う事に他なりません。つまり今のとても他人には見せられないようなメス豚の顔までばっちりと見られてしまっているのです。涎のように溶けた粘液を口の端から漏らして、何度も続く絶頂に目を緩ませながら、必死で頬を窄めてオチンポを扱き上げている顔を見られていると言う事なのです。それに火が着いた私の被虐心は一気に燃え上がり、また一つ大きな絶頂の波を迎えるのでした。
―見てぇっ♪アへ顔見てくだしゃいっ♪フィエロのオチンポで何度もアクメしてる私を見へぇ…♪♪
今までだって見て欲しいと言う欲望を浮かび上がらせたことはあります。しかし、こんな風に現実として実感するのは初めてなのでした。想像ではなく、現実としてフィエロに見られているという感覚に私の興奮は加速していきます。もっと淫らな顔を見て欲しいと、もっとフィエロにも興奮して欲しいと、ぐちゅぐちゅと頭を回すのを激しくしてしまうのでした。
「うふふ…♪ほらぁ…ウィータは今のはしたない格好をフィエロに見て欲しいみたいですよぉ…♪」
「彼女は見られると感じちゃう感じるメス豚ですから…♪さぁ、フィエロぉ…♪子種汁欲しくて必死にむしゃぶりついてるメスの姿をばっちり見てあげてくださいな…♪」
そんな私の興奮を助けるように二人がフィエロの耳元で再び囁きます。しかし、彼女達はそれで終わってくれるほど優しい性格はしていません。私から二人にも伝わっているであろう感覚に興奮したのか熱っぽい吐息を吐きながらフィエロの腕に肢体を押し付けるのです。手はまたに挟み、肩の辺りを胸で挟むようなそれはきっと彼の興奮も助長するものでしょう。元々、私達の全身は『ヒト』の胸程度には柔らかいのです。『ヒト』のセックスアピール部位を彷彿とさせる全身で包まれているのですから、オチンポがピクピク震えても仕方ないでしょう。
「私達も…勝手に楽しんでしまいますから…♪」
「ま…待て…っ!休憩と言う話は…あぁっ!」
「既に休憩と言う話を聞いてから十分が経過しています…♪もう十分、『休憩』しましたよね…♪もっとも…ウィータがこんな風になるなんて私達も『予想外』でしたけれど…♪♪」
誰にだって分かるだろうあからさまな嘘を吐きながら二人は同じようにフィエロの胸へと手を伸ばします。そのままツンと乳首が浮き上がった小さな胸に指を添えました。そして、添えた指を汗まみれになった胸を拭うようにしてそっと動かしていくのです。愛撫にしては優し過ぎる、しかし、快感を想起しないには淫ら過ぎる絶妙な動かし方にフィエロの胸はビクンと跳ねて可愛らしい反応を示してくれました。
―ホント…可愛い人ですねフィエロは…♪…それに…こんなに汗も美味しいですし…♪
―こんなに素敵で美味しいだなんて…やっぱりフィエロは最高です…♪愛してますよぉフィエロぉっ♪♪
そしてその度に彼が浮かべる汗をスキエンティアとアモールは全て指を介して取り込んでいました。元々が単純なスライムは人の体液をエネルギーに変える事が出来るのです。精液や汗は言うに及ばずその唾液まで私達にとってはご馳走だと言えるでしょう。それが愛しい人のものであればさらに格別、最高です。精液ほどではありませんが濃厚なフィエロの匂いとちょっぴり塩っぽい味に二人はもう虜になっていました。
「まぁ…安心してくださいな…♪私達もウィータの楽しみを奪うような無粋な真似は致しません♪」
「こうしてオチンポ以外の部分で我慢しますから…フィエロはたぁっぷり楽しんでくださいねえ…♪」
「そ、そん…っうぁぁっ!」
二人の言葉に反論しようとしたフィエロの口は私の刺激によって閉ざされました。…別に嫉妬などしているわけではありません。根幹が繋がっている私達にとって名称や意識は別であっても一個体である認識にブレはないのですから。根本的にはこうしてフィエロのオチンポをフェラしている私も、胸を弄っているスキエンティアとアモールも同じなのです。感覚的には別の手で同じ事をしているのと近いのでした。
―れも…♪私を見て欲しいれすぅ…♪フィエロぉ…こっちを見てぇ…♪♪
しかし、二人とは違って、私は被虐的な快楽が欲しいのです。フィエロのオチンポに夢中になっているメス豚の顔を見て、一杯、興奮して欲しいのです。それはフィエロが二人と会話をしていれば決して望めないものでしょう。なら、強制的にでも会話を終わらせるしかありません。そう考えた私は飲み込んだフィエロのオチンポを引き出すようにして亀頭を口まで持ってきながら、再び咽喉の奥まで一気に飲み込むのです。
「あああっああっ!!」
本物のセックスを髣髴とさせるその抽送にフィエロの口からまた呻き声が上がり始めます。いえ、それはもはや呻き声と言うよりも叫び声の方が近いのかもしれません。腰もガクガク震えて今にも砕けそうになっているのですから。縫い付けられた手足もぶるぶる震えて、とても辛そうにも見えるのです。しかし、それは全て快楽を示してくれているに過ぎません。それだけ彼が感じているのだと思えば私の快楽もまた激しくなるのは当然であり、そしてそれがまた私に新しい絶頂を齎してくれるのでした。
―んあああぁぁぁっ♪こりぇ激しひっ♪♪じょりじょり来てましゅぅっ♪♪
フィエロと同じように胸中で叫び声をあげる私の中では激しい絶頂が吹き荒れ始めていました。ついさっき私の心を打ち砕いたオーガズムを彷彿とさせるその電流はさっきから私の中を這い回って止まりません。熱波にも似たドロドロの絶頂を繰り返したお陰か、それに身体が屈することはありませんが、一度の抽送の度にそれが二個も三個も湧き上がってくるのです。二人と言うフィルターを介さないその快楽は勿論、鮮烈であり、その絶頂もまた先ほどとは比べ物になりません。そんなのが雪だるま式に大きくなっていくのですから溜まったものではないでしょう。
―れも、止まんにゃいっ♪止まらないんれすぅっ♪ビリビリアクメ止まんにゃいのぉっ♪♪
けれど、私の身体はそれを待ち望んでいたとでも言わんばかりに動き続けているのです。その度にきゅっと締まった咽喉がフィエロのカリ首に引っかかれてゾリゾリと引き出されていくのでした。まるで咽喉の粘液を抉るようなその刺激に被虐心をそそられた私の絶頂はさらに強くなっていきます。しかし、それだけでは終わりません。引き出した亀頭に頬を押し付けて磨いた後は再び咽喉の奥へと差し込まなければいけないのですから。そして、その度にフィエロが気持ち良い様にと調整した咽喉を亀頭が押し広げて、食道まで入り込んでくるのです。フィエロの肉棒が奥に収まる形で調整した咽喉はまるで蹂躙されるように形を変えて、再び私の被虐心を高まらせていきました。
―ふあぁぁっ♪♪マゾアクメ来りゅっ♪また来ちゃうぅっ♪ビリビリすりゅのぉっ♪♪
外からでは私が一方的にフィエロを弄り、襲っているようにしか見えないでしょう。しかし、実際は私もまたフィエロのオチンポに虐められているのです。存在そのもの自体がメスを屈服させる肉の剣に私の本能は悦び、止まりません。もっとこのオスに身を捧げたいと、そして虐げられて犯されたいと必死に頭を動かし続けるのでした。
「あはは…♪ついに頭まで動かしちゃって…♪咽喉奥突かれる度にアクメしちゃってますよぉ♪ホント、どうしようもないマゾですよねぇ…♪」
「お口一杯にフィエロのオチンポ頬張る度に彼女の胸に幸福感が満ち溢れています…♪きっと…とても幸せなんでしょうね♪ほら…見てくださいよ、あの頬にオチンポ落ち着けてるときの陶酔した顔…♪それだけでイきまくって仕方ないって顔をしてますよ…♪」
二人の罵りさえ今は気になりません。いえ、正確にはその殆どが耳に入ってきてはいないのです。私の全てはフィエロのオチンポに集約されてそれ以外には広がりません。まるで世界が私とフィエロしかないようにどんどんと狭まってきているのです。その中には同じ私であるスキエンティアやアモールも例外ではなく、どんどんと周辺へ辺境へと追いやられていくのでした。
―でも…それが良いんですぅっ♪それで良いんでしゅぅっ♪
だって、私はもう他には何もありません。フィエロの為に私は『自分』すら投げ捨ててしまったのですから。そんな私に残っているのは最早、彼だけです。プライドも知識も何もかも無く、フィエロを求める事こそが今の私のアイデンティティでした。そこにはもう償いと言う意識さえも薄れて、霞んでいっています。ただ、フィエロの存在だけを感じて、想おうとそれ以外のものを心が排除し始めているのでした。
―フィエロぉ…♪フィエロ…っ♪愛してましゅよぉ…♪大好きで大好きで…愛してまふぅ…っ♪
その言葉にたっぷりの媚を塗して私はフィエロと『ご奉仕』に没頭していきます。必死に頭を動かしながら、その合間合間にチロチロと舌先で裏筋やカリ首を刺激するのを忘れません。勿論、唇は常にフィエロのオチンポを扱き上げるために窄めた状態です。動かせる間の少ない手の分を補うようにして敏感な裏筋からカリ首までを全部、扱くのでした。勿論、手も休んでるわけではありません。その剛直を咽喉奥から引き出した時には私の粘液でべとべとになっている根元からカリ首近くまでをゴシゴシと擦っているのですから。それは少しばかり強めかもしれませんが、たっぷりと潤滑油が塗りたくってあるのですからきっと問題はありません。その証拠にフィエロは痛みを訴えないどころか腰を跳ねさせて悦んでくれているのですから。
「あぁ…っ♪あんなにじゅぼじゅぼ音を立てて…っ♪味覚全部をフィエロのオチンポに差し向けているのを感知出来ます…っ♪よっぽどフィエロのオチンポが美味しいんでしょうねぇ…♪」
「必死で舌も動かしてるのも分かりますか…♪クチュクチュって裏筋から表側、そしてカリ首までぜぇんぶペロペロしてるんですよ…♪」
そんな風にフィエロの耳元で甘く囁く二人もまた興奮を高めて、愛撫をエスカレートしていくのです。胸のライン指でなぞり、浮かんだ汗を拭うようだった愛撫は今や乳首をそっと弾くようなものに変わっていました。指の先でピンっと弾くたびにピクリと小さな乳首は震えて感じている事を教えてくれるのです。しかし、男であるフィエロにとってはそれは悔しいものでしかないのでしょう。胸の先を弄られる度、その顔に羞恥とも怒りとも取れるような感情を浮かび上がらせるのです。それは一瞬で快楽に塗り替えられますが、彼がそれを屈辱であると感じていることは間違いないでしょう。
―なら…その分、気持ち良くして差し上げないといけませんね…♪
しかし、最早、フィエロの体液の虜となった彼女達はそんな風に考えて、彼を弄ぶのを止めません。それどころか爪のように指を硬くしながら、ツンツンと乳首を突き始めました。そうして震える乳首を指できゅっと摘んで、指の間で転がすのです。それは力なんて殆ど入っていないようなものでしたが、フィエロにとってはしっかりと快楽として変換されているのでしょう。堪えるように背筋を丸めながら小さな呻き声が聞こえてきました。
―あはぁ…♪そんな可愛い顔されたら…もっと一杯、シてあげたくなるじゃないですかぁ…っ♪
フィエロの反応に興奮をさらに高めたアモールはそっと指を彼の胸板から手放しました。勿論、彼女が手を離したのは彼を休ませる為などではありません。そのまま腕を地面に突き立てるようにしてフィエロに覆いかぶさって、彼の唇に自分の舌を突き入れたのですから。
「んんんんっ!!」
「あぁぁっ♪♪♪」
驚いて身を硬くするフィエロとは対照的に私達の身体は一様にブルリと震えてしまいました。それも当然でしょう。だって、彼の口に舌を突き入れたアモールからはその甘美な感覚がはっきりと伝わってくるのです。その唇の柔らかさから口腔内にたっぷり詰まった甘い甘い唾液まで。興奮の所為か高まった体温も肌から感じるのとは比べ物になりません。それらの情報がアモールというフィルターを通して一気に私達に注ぎ込まれたのですから、強い悦楽を感じてしまうのです。被虐的な快感を味わう私を上書きするように加えられた嗜虐的な快感に私の背筋は震えてオーガズムの波を止めません。
―あぁぁっ♪舌…唾液もぉっ♪ドロドロで…ぐちゃぐちゃぁぁっ♪♪オチンポもお口もじぇんぶ熱いれすぅ…っ♪♪
勿論、フィエロの口の感覚だけではなく、私には今も咥え込んでいるオチンポの感覚が襲い掛かってきているのです。それらは『ヒト』では決して味わえない感覚でしょう。だって、私は今、キスをしながらフェラチオをしているも同然なのですから。しかし、それぞれが独立しているとは言え根幹で繋がっている私達にとってはそれは決してありえない感覚などではありません。現に今も私の中ではオチンポを舐めている私自身の感覚とフィエロの口腔を舐め回すアモールの感覚が両立しているのです。オチンポを舐めていると同時ににフィエロの粘膜を舐めまわして蕩けそうなくらい甘い唾液を舐め取る感覚は私の思考をさらに混乱の渦へと叩き落しました。自分が何を舐めているのか、という事さえも快楽の中で混ざり合っていき、曖昧になっていくのです。しかし、それ故に新たな色を灯した快楽は私の中を大蛇のように駆け巡り、快感で染め上げていくのでした。まるで身体が快楽を感じるだけのモノに堕ちていく感覚に私の頭と御腹はドロリと蕩けて、もう一段、上のアクメを迎えます。
―美味しい…っ♪フィエロのお口もやっぱり美味しいれすぅ…っ♪♪
度重なるオーガズムと重なる感覚。一つだけでも大変なそれら二つが襲い来る私の胸に必死でフィエロの唇を割って、貪っているアモールの感情が届きます。彼女は今、両手でフィエロの顔を固定して逃げられないようにしながらその口の中を蹂躙し続けていました。粘液で作られたからだというのを最大限利用する彼女は普通では届かないような場所さえも舌を伸ばす事が出来るのです。奥歯の向こう側や舌の付け根までを縦横無尽に弄ぶ彼女の愛撫にフィエロの身体はまた熱くなっていきました。そして、それを誰よりも如実に実感する私の身体も熱くなり、その熱源であるオチンポにたっぷりと粘液を塗して、フェラチオを激しくしていくのです。
「あぁ…もう…二人ともずるいですよ…っ♪私にだって少しくらい分けてくれても良いじゃないですか…♪」
拗ねるように言いながらスキエンティアは空いた乳首にそっと手を向けました。そして、さっきまで自分が弄っていた側にそっとキスを落とすのです。ぽってりとした肉厚の唇で何度も何度も彼の胸へと吸い付き、真っ赤な華を咲かせていました。まるでフィエロが自分の物であるという印をつけるように鬱血するまで肌を吸い上げてキスマークをつけるのです。
「ちゅぅ…♪ふふ…っ♪仕方ないから…私はキスマークで我慢することにします…♪それくらいは…許してくれますよね…♪」
「んっんんん!!」
甘い媚を浮かせたスキエンティアの言葉に勿論、フィエロは答えることが出来ません。その口はさっきからずっとアモールが塞いでしまっているのですから。必要最低限の呼吸が可能な隙間を残し、他は全て自分で埋めようとしている彼女が言葉を漏らす余裕を与える訳がありません。舌根にまで自分の舌を絡みつかせるアモールの前ではフィエロとて無力でしょう。
そしてスキエンティアもまた本気で答えを求めている訳ではありません。今のアモールが夢中になってフィエロの口腔を貪っているのに彼女が気づかない訳が無いのですから。私と同じようにその舌のつぶつぶから甘くて蕩けそうな唾液、そしてそれが無尽蔵に溢れてくる粘膜に心奪われ、他の事を考える余裕の無いアモールの思考が伝わっているはずです。つまり今、このタイミングで聞いた事自体、彼女が故意犯であるという証なのでしょう。
「ちゅ…ちゅぅ…♪ふふふ…こうしてフィエロにキスマークつけてると…とっても安心して…興奮するのを感知…♪やっぱり私は独占欲の強い女のようですね…♪」
十数個に渡るキスマークをつけながら、スキエンティアはそっと囁きました。自分のつけた真っ赤な跡を一つ一つ撫でる仕草には艶やかさと愛しさが浮かんでいます。大好きで大好きで狂ってしまいそうな――いえ、狂ってしまったくらいに愛した男性を愛でているのですからそれも当然でしょう。まるで宝物がそこにある事を一つ一つ確認するように、指でゆっくりと撫でていくのでした。
「ふ…あぁぁっ♪♪」
そんなスキエンティアの気持ちが伝わったのでしょう。蹂躙という言葉が相応しい程、彼を貪っていたアモールの舌の動きが大人しくなるのです。その内壁に溢れる唾液を全て舐め取ろうとする貪欲な動きから、フィエロの舌と絡み合うキスの仕草に。勿論、その動きにはまだまだ彼女の欲望や獣性が宿っていますが、さっきまでのような自分勝手なものだけではありません。ちゃんとフィエロを感じさせようと舌を伸ばして、舌根まで絡みついていくのです。ぷりぷりとした独特の柔らかさを持つ器官を余す所なく自身の粘液で捕まえたアモールはその粘液の中でくちゅくちゅとフィエロの舌を刺激し始めるのでした。
「んんんっっ!!」
いきなり快楽を与える動きに変わったアモールにフィエロは抵抗の声をあげようとしていました。しかし、その舌は既にアモールの中に取り込まれ、声を発することなど出来ません。その舌が解放されることは恐らく当分無く、彼女が満足するまでその粘液の中で愛撫され続けるのです。その上、アモールは一部の隙も許さない程、彼の口に密着し、気道を完全に塞いでいました。その息苦しさにフィエロが腕や足を震わせて抵抗を示しましたが、彼女は決して容赦しません。自分の背中から取り込んだ空気を時折、舌を介してフィエロに分け与えるだけでまるで解放しようとはしないのでした。
―うふふ…♪フィエロが私で一杯…っ♪一杯…一杯なんでしゅよぉ…♪その肺の中までぇ…っ♪♪
呼吸すら封じられ、与えられるものだけを享受するしかないという状況。それはきっとフィエロにとってとても屈辱的な状態でしょう。顔を見れる位置にいるアモールから伝わってくる表情もそんな色を強く灯していました。しかし…そうと分かっていても私達にはもう自分自身をコントロールする術はありません。欲情をたっぷり浮かばせた思考で、フィエロを独占しているという悦びで、彼の身体の奥まで私で一杯と言う充実感で、溢れかねないくらいなのですから。その前にはフィエロがどれだけ屈辱的であろうとも遮る壁にはなりません。良心を痛める材料にはなりますが、それを超えるものにはなりえないのです。それ以上に私にとって、今こうして味わっている弾ける様なアクメや、充実感の方が大きくなってしまったのでした。
―ごめんなさいフィエロ…♪だから…だから…ぁ…っ♪♪
きっと今のフィエロは辛いでしょう。苦しいでしょう。屈辱でしょう。しかし、それは私自身の手によって行われている反面、私には如何することも出来ません。ならば…それを忘れるくらい気持ち良くなって…私と同じように堕ちて…いえ、壊れてもらうしかありません。それが私の出来るフィエロへの最後の恩返しであり…最大の我侭でしょう。そう決意した私は口の中に意識を引き戻し、自分の身体を変化させていくのです。
「〜〜〜〜〜っっっ!!!」
その変化にフィエロは腰を今まで以上に震わせてくれました。当然でしょう。だって、私の口の中は今やオスを射精するための器官になっているのですから。口腔に舌をたっぷりつけて四方八方からオチンポを舐め回すのです。咽喉奥には鑢のような突起をたっぷり用意して抽送されてきたフィエロのオチンポを扱き上げるのでした。そのままきゅっと窄まった食道が突起を擦り合わせるようにしてオチンポを洗い上げるのです。それらの刺激は決して『ヒト』のフェラチオでは味わえないものでしょう。人外とも言える魔性の快楽にフィエロの腰の揺れは止まらなくなっていきます。まるでそこだけ壊れてしまったかのように私の咽喉奥に何度も何度もオチンポの先端をこすり付けてくれるのでした。
―あは…ぁっ♪射精るんでしゅねぇ…っ♪まらどぴゅどぴぃってせぇえきくだしゃるんですねぇっ♪♪
そして、そのオチンポの蠢きはどんどんと高まって、硬さも熱も膨れ上がっていくのです。それは間違いなく絶頂の予兆でしょう。さっきスキエンティアやアモールから伝わってきたそれを見間違う筈はありません。変化と呼ぶには微小なもの。しかし、気付かないには大きすぎるそれは私のメスの本能を擽り、高鳴らせていくのです。それに引っ張られるように一気に加速した快楽が私の思考を真っ白に染め上げました。そして何もかも白に染まっていく中でフィエロのオチンポを必死に咽喉の奥まで一気に突き入れた瞬間、今まで以上の熱が私の身体の中で弾けるのです。
「〜〜〜〜〜っっっ!!」
―あぁぁぁっ♪♪ざーめんっ♪せぇえきっ♪こだねぢるきたぁぁぁぁっ♪♪
どぴゅと言う音が聞こえそうなくらい激しい勢いで始まった射精に私の心が一気に歓喜に染まりきってしまいます。さっきの決意もなんのその。全てを射精される感覚と快楽に塗り替えられた私にたっぷりと精を込められたザーメンが叩きつけられるのです。甘くて、オス臭くて、とっても熱いそれはやっぱり自分で味わうと格別でした。まるで咽喉が焼け付くような感覚と共に身体中が熱くなって蒸発してしまいそうなのですから。それでいて甘くて美味しい感覚は私の身体を悦ばせ、下腹部から幾らでも快楽を引き出してくるのです。嵐のようだと例えられた絶頂の波を再び味わう私の身体はそれに勝るとも劣らないメスの充実感に溢れていました。
―ふわぁぁっ♪美味しい…っ美味しい美味しい美味しい美味しいっ♪♪
愛しいオスが私の身体で興奮し、射精してくれた証。それだけでも嬉しいのにその精液は私がずっと待ち望んでいたものなのです。その充実感は今までとは比べ物になりません。真っ白に染まって瞬き続ける視界の向こうでは薔薇色な世界が広がっているかのように私の胸の中には幸福感が湧き上がってくるのですから。フィエロの子種汁一つでここまで幸せになれる自分に歓喜の感情さえ浮かばせながら、私は咽喉の奥にたたきつけられる精の味をたっぷり味わっていたのです。そして、その味が私の絶頂に彩を添えて、激し過ぎる蕩悦を受け止めやすくしてくれていました。
「ちゅ…っ♪ぢゅるるっ♪♪」
勿論、その間もスキエンティアとアモールはサボっている訳がありません。寧ろフィエロの射精に後押しされるようにその愛撫を激しくしていくのでした。共に淫らな音をかき鳴らしながら充実感と快楽を返してくる二人に私の絶頂がまた高まっていくのです。まるで三人がそれぞれ感じる快感を渦のように回し続けているようにどこまでもどこまでも快楽が上っていくのでした。それに私の下腹部はまたドロリと蕩けて奥から透明な液体を噴出させます。まるでメスの潮吹きのようにして粘液に落ちたそれらは余りにも蕩けすぎて私は制御できなくなった一部なのでした。余りにも強すぎる快楽の嵐に身体の境界が薄れるのを感じ、ドロドロの粘液を漏らしながらも、私は悦んで翻弄されています。そして、その快楽の元になる精液を一滴残らず味わおうと必死に咽喉を窄めて、舌を動かしていました。よりその絶頂が激しくなるように、と快楽を注ぎ込む私にフィエロの腰はまた一つ浮き上がり、ドロリと熱いザーメンを吐き出してくれるのでした。
「ん…ぐ…ぅぅ…!」
しかし、どれだけ刺激してもそれは永遠には続きません。快楽に惚けたアモールがフィエロの口を少しだけ解放して、彼が声を漏らせるようになったように何事も永遠など無いのです。その下にあるオチンポも今や萎えかけてしまって、くたりと力を失っていました。恐らく短いスパンでの射精でフィエロの身体に負荷を掛けすぎたのでしょう。そこにはついさっきまで私の咽喉を突き破ろうとするような逞しさはありません。最初のような小さく可愛らしいオチンポがあるだけでした。勿論、そんな状態で射精など続くはずが無く、鈴口からは幾ら舌で穿っても精液が出てきません。まだまだ名残惜しいですし、ザーメンはもっと欲しいですが、この辺りが限界でしょう。
―あはぁ…っ♪でも…でも…ですねぇ…っ♪♪
これは所詮、『ヒト』の限界です。確かにフィエロのオチンポは萎えてしまいました。それに再び力を灯すのは難しいかもしれません。しかし…それで諦めてしまっていては彼に堕ちて貰う事は、壊れてもらうことは出来ません。もう私抜きでは生きていけないようにして私に依存するまでフィエロを追い詰めるのが私の償いなのですから。それが達成されるまで私は諦めるわけには参りません。彼が壊れるまで…いえ、例え、壊れてもその精液を貪りつくさなければいけないのです。
―らからぁ…次は…ちょっとしゅこーを変えましょうかぁ…♪
舌足らずな言葉を胸中に浮かび上がらせながら、私の身体はぐにゃりと変形していきます。人型から不定形、そして再び人型に戻るような変形はフィエロの前では何度か見せているものでした。しかし、それでも変形した後の私を見て、胸を激しく上気させるフィエロの顔には驚きが宿っています。今、私の腰はフィエロの下腹部の上にあり、彼の上に跨っているような姿勢になっていました。無論、そのオチンポは萎えきった可愛らしいものです。そこから味わう快感はやはりさっきよりも遥かに小さいものでした。精液でぐちょぐちょになった身体の中にフィエロのオチンポがあるというだけ強い興奮を覚えてしまいますが、それだけなのです。
―でも…それで終わらせる訳ないでしゅよねぇ…♪
「ふゅわ…ぁ♪どぉれすかぁ…私のおまんこぉ…っ♪ふぃえおせんよーのめしゅまんこ気持ち良いでしゅかぁ…っ♪♪」
ずっとフェラチオを続けていた身体をその場で変化させ、口であった部分をオマンコに、そして足であった側を頭にしてフィエロに圧し掛かったのです。『ヒト』では決して出来ないその芸当は私がスライムであるが故でしょう。そして勿論、スライムならではの技はこんな所では終わりません。寧ろ、ここからが本番なのです。
「うふゅ…♪くちゅくちゅぅ…♪どろどおってオチンポ愛してあげますねぇ…♪」
「っ!!」
甘い媚を浮かばせた言葉と共に私の下腹部はどんどんと変形していきます。ドロドロの粘液がたっぷり詰まっただけの部分から、オスを受け入れ気持ち良くするための器官へ。周りをオチンポに密着させるように近づけながら、さっきの咽喉と同じようにゾリゾリと洗い立てるような突起を作り上げていくのです。勿論、その突起だけではありません。奥に進めば進むほどまるでミミズのように絡みつく細い襞が増えていくのです。ぐちょぐちょと粘液を絡ませながら音をかき鳴らすその部位はフィエロにきっと強い安心感を与えてくれるでしょう。
―あはぁ…後はぁぁ…♪
フィエロと迎え入れる準備は出来上がりました。後はフィエロを奥へと誘うだけ。そう考えた私の入り口がきゅっと締まります。左右からふにゃふにゃのオチンポを摘むようにしながらそっと角度を修正するのでした。そのままその部位が――まるでヒトの膣肉のようにオチンポと密着し、上を目指すような角度で固定します。後は…それを上下に擦ってあげれば…っ♪
「んう…んんっ!!」
未だアモールに口を塞がれ続けているフィエロはきっと止めろと言っているのでしょう。快楽よりも苦悶に近い表情は射精の限界を達したことを何より如実に現しています。そんな状態でオチンポを扱かれてもきっと辛いだけなのですから。けれど、今更、私は止まりません。膣肉を模した部分を絡みつかせ、オチンポを扱く様にして中で動かし続けているのです。勿論、その間、腰は動いていません。フィエロとずぅっと密着したまま私の膣肉だけが動き続けているのでした。
「ふあああぁぁっ♪♪」
そして、それが私の快楽を引き上げる結果にも繋がるのです。当然でしょう。萎え掛けとは言え、可愛いこれはフィエロのオチンポなのですから。愛しい人がメスを孕ませる為の部分で中を擦って、快楽を感じない訳がありません。特に魔物娘の本能か、下腹部はずっと疼いてオチンポを欲しがっていたのです。残念ながら私には妊娠と言う概念はありませんが、フィエロの精液で蕩けた空洞を満たされるのを待ち望んでいたのでした。
「あは…ぁっ♪オチンポ良いれすよぉっ♪もっとこすこしゅ…♪じゅぼじゅぼしておっきくなりましょぉれぇ…♪」
とは言え、それは口の中一杯にオチンポを頬張っていた頃に比べれば快感の総量は少ないものでした。まだ全然、勃起と言うレベルではないのですから当然でしょう。じぃんと下腹部を暖かくする熱がアクメと結びつきますが、そこには先ほどのような激しさはありません。フェラチオの最初にも感じたあの癒すような暖かい熱が広がり続けて行くだけなのです。しかし、今の私にとってそれだけでも十分なのでした。フィエロのオチンポをオマンコの部分で咥え込んでいる。まるで『ヒト』が行う生殖行為のような姿勢は私のオーガズムに新たな彩を加え、強い充実感を結び付けていくのです。
―しょれにぃ…♪もうオチンポは大きくなってきてましゅもの…♪♪
私の膣肉の刺激が効いたのか。或いは今もフィエロを貪り続ける二人の愛撫に感じたのか。フィエロのオチンポはぐんぐんと膨れ上がり、かつての勢いを取り戻し始めていました。既に可愛かった頃の印象を脱ぎ捨てた肉の剣は密着していた膣肉を逆に圧迫し始めています。ぎちぎちと音が鳴りそうなくらいですが、スライムである私にはそれに痛みを感じる事はありません。寧ろ私を跳ね返すほどの力を取り戻したフィエロに強い歓喜の念を覚えてしまうのです。
「ほぉら…見れくだしゃい…♪わらしのスケスケオマンコでもうフィエロのオチンポこんにゃに大きくなってますよぉ…♪」
その悦びのままそっと下腹部に触れると青く透けた粘液の体がその先にあるオチンポの震えを伝えてくれていました。文字通り一目で分かるオチンポの変貌っぷりに私の興奮と絶頂は止まりません。熱い吐息を一つ吐いて背筋を震わせてしまいます。そして、興奮と快楽を示すその仕草でズレた重心がオチンポに別の角度からの刺激を加えるのでした。それにまた一つフィエロは悦んでビクリとオチンポを反応させてくれるのです。
「こんにゃに硬かったら…まだしゃせぇ出来ますよれ…♪♪」
「〜〜〜っ!!」
私の言葉にフィエロは必死に首を振って否定の意を示そうとしています。しかし、それは顔を押さえ込んでいるアモールが許しません。顔だけではなく舌を完全に取り込んで、ドロドロの粘液で愛撫している彼女は私達の誰よりも貪欲なのです。一度、手に入れた獲物を早々、簡単に手放すことは無く、フィエロの抵抗をいなしながらその唾液を思う存分に味わっていました。
ならば、と彼は身体を浮かせてアモールを跳ね除けようとしてもそれは敵わないでしょう。だって、その胸はスキエンティアの支配下にあるのですから。フィエロの胸だけでなくすっきりと割れた腹筋までキスマークで埋め尽くした彼女は今、乳首を舐め回すのに夢中です。片方の乳首を指で転がりながら、もう片方をねっとりと粘液を塗りこむようにして舌の腹で舐めているのでした。そこから這い上がってくる感覚は勿論、私やアモールが感じている快楽に比べれば些細なものです。しかし、フィエロに『ご奉仕』しているという感覚が私達の充実感を増して、より興奮とアクメを高めさせていくのでした。
「んふゅ…♪じゃあ…私も…ぐちょぐちょしましゅねぇ…♪」
スキエンティアとアモールから感じる暖かくも淫らな感覚。それに後押しされて、私の膣肉も激しく動き始めました。さっきまでの擦るだけの動きではなく、今度は奥へ奥へと誘うようなものへ。たぁっぷりと糸状の襞で待ち構えているオマンコの奥へとオチンポを近づけるようにぎゅっと周りが圧縮するのです。まだ最盛期の力を取り戻してはいないオチンポはその刺激にびくりと震えましたが、それもまた突起の中に取り込まれていくのです。
「っっっ!!」
ズル剥けになった亀頭に一本の襞が触れました。それはまるで触手のように私の意志で蠢き、カリ首の裏をそっと撫でるのです。敏感な急所に刺激を加えられたオチンポが再び震えようとした瞬間、次の触手が先端の鈴口を擽りました。そしてまた別の触手が亀頭を撫で回すように蠢き、さらに別の触手は亀頭を締め付けるように動くのです。それらまったく違う刺激をフィエロに加えようとする動きは別々のようでありながら全て私のコントロールされていました。まるで私達自身のように根幹で繋がっている触手たちはそれぞれがスタンドプレーに走りながら、タイミングを合わせたり、逆に少しずらしたりするなどの連携を取っているのです。
「あはぁ…♪わかりましゅかぁ…♪もうアクメしちゃってりゅんでしゅよぉ…♪フィエロのオチンポまら半勃ちにゃのにぃっ♪もうめしゅアクメしちゃってるんでしゅぅ…♪」
それは勿論、私にとっても耐え難い快楽でした。元々、フィエロのオチンポが大きくなりだした辺りでもう背筋が震えるほどの快楽を味わっているのですから。その上、ぐちょぐちょの肉襞を作り出して絡ませて我慢出来るはずがありません。熱波のようなアクメをあっさりと乗り越え、私には早くもビリビリと電流のような絶頂が帰ってきています。しかし、射精の瞬間にこれよりも激しい快楽を私は味わっていたのでした。今更、この程度で怯む筈も無く、もう蕩ける余地の無い思考で自分の身体をコントロールし、フィエロの弱点を突き続けているのです。
「はあぁぁっ♪♪アクメとまんにゃいれすよぉっ♪ぐちゅぐちゅすりゅたびにアクメ増えましゅぅっ♪ビリビリでイッてりゅのぉっ♪♪」
そして、弱点を突かれ続けたフィエロもこのままで終わるような甘い男ではありません。そのオチンポをビクリと震わせてまた膨れ上がっていくのです。二度の射精を経て、限界を迎えて尚、それは逞しく大きなものでした。再び最盛期の大きさと熱を取り戻したオチンポに私の心は歓喜と快楽で沸き立ちます。それを現すように奥で絡み付いている触手は狂喜乱舞し、より激しく刺激を加え始めました。ぐちゅぐちゅとにじゅにじゅと粘液越しにかき鳴らす音に私の絶頂も高まって、オチンポが入っていないはずの口からドロリと粘液が零れ落ちてしまいます。
「ふ…ひゅぅぅっ♪♪」
激しく絡む触手の蠢き。それを私は少しずつコントロール出来なくなり始めていました。最盛期の力を取り戻したフィエロのオチンポの所為で思考と本能が完全に逆転してしまったのです。私では止められなくなってしまった粘液の蠢きに私の口からも高い嬌声が漏れ始めました。淫語を漏らす余裕も段々と失せて行き、本格的にオチンポに心奪われ始めていたのです。
「おほぉっ♪おーがじゅむくりゅぅぅっ♪♪まらビリビリきちゃううっ♪」
痺れる身体から逃げ出そうとしているかのように突き出された舌から粘液が再び零れ落ちました。それがべちょりとフィエロの下腹部に溜まって、まるで穢しているようです。しかし、私には最早、それを厭う余裕はありません。高まった本能が快楽をもっと求めようと、再びあの甘美な射精の瞬間を味わおうと膣肉そのものを動かし始めたのですから。伸縮性に富む粘液の肉を縮こまらせ、奥の突起で貪った後は、今度は広げて入り口の粒粒で全体をゴリゴリと洗い上げるのです。入り口と奥。二つの違う快楽のスポットを行き来するフィエロはきっとその思考に困惑を浮かべているのでしょう。抑えきれない悦楽で真っ白に染まりきった視界では見えませんがきっとそうに決まっています。
―らってぇ…こんなにドロドロでピクピクなんれしゅぅ…っ♪
まるで抽送のように奥から入り口へ引き抜かれる度に、そして入り口から奥へと突き入れられる度にフィエロはビクビクと何度もオチンポを震わせてくれるのです。方向性は違えども、激しい二つの快楽。そのどちらでもフィエロはオチンポを震わせて感じていることを示してくれているのですから。ピクピクでドロドロでぐちょぐちょで…そんな私のオマンコでたぁっぷり感じてくださっているのです♪
―わらひもぉっ♪私も気持ち良いれしゅよぉっ♪おきゅでも入り口れもぉ♪どっちもアクメしてますっ♪♪
そして、それは私も同様です。基本的に何処でも感じられる私にとって入り口と奥に大した感度の差はありません。しかし、その触れ合い方と言うのが圧倒的に違っているのです。入り口が咽喉の奥で締め付けているときの快楽だとすれば、奥はまるで沢山の舌で舐めあげているような快楽なのでした。それら二つの感覚の違いは私に慣れさせる余裕を与えず、ドロリと身体を溶かし始めます。そしてその粘液を潤滑油にするように私の身体はさらに激しくフィエロに絡み付いていくのでした。
―はぁ…はぁぁっ♪♪アクメしゅごいっ♪アクメしゅごいアクメしゅごぃぃっ♪♪
自分の身体を構成する粘液を潤滑油にしてフィエロに『ご奉仕』…いえ、『蹂躙』する感覚。それはさっきのフェラチオの時にも味わっていたものでした。しかし、その悦楽はまるで異なります。オチンポを下腹部で咥え込んでいると言うだけで、憧れの『ヒト』のようなセックスをしているというだけで充実感が溢れて止まりません。より激しい、そして熱いそれはフェラチオの時と同じように絶頂に彩を加えながらも、まったく違うモノへと変貌させているのです。感じている快楽は殆ど同じ筈だというのに、それをまるで感じさせないほど、私を遠くへと連れ去っていくのでした。
―オチンポぉっ♪セックス凄いれすっ♪♪フェラよりもじゅっと良いのっ♪
そして遠く離れた意識の間隙を縫うようにして本能が私の中へと入り込んできます。既に身体中が蕩けてしまいそうな蕩楽に達している私を塗り替えるようにしてドロドロの欲望が入り込んできているのでした。しかし、私はもうそれに恐怖を感じません。既に私は一度、それを味わい、それに敗北してしまっているのですから。堪えるだけ無駄であると心身に刻まれてしまった私は自分を再び塗り替えようとするそのドス黒い波を悦んで受け入れました。
―うふふ…完全に堕ちちゃいましたねぇ…♪
そんな私に甘くて優しいアモールの声が届きました。それには何時ものように揶揄するような色はありません。私たちに比べて幼い姿をしている彼女には似合わないとも思うほどの母性に溢れた声でした。それに胸を暖かくする私はオチンポの感覚に心を奪われて返事をする余裕すらありません。惨めな豚のような嬌声をあげながら、本能と共に激しく身体を強請っていくのです。そこにはもう何の迷いもありません。ただ、フィエロを求めることを是とする自己肯定と激しい悦楽だけが横たわっていました。もはやなんの大義名分も無く、求めたいが故に愛する人を襲っている一匹のケダモノがいるだけなのです。
―どぉです…♪最高の気分でしょう?
―ひゃぁい…♪欲望さいこぉなのっ♪本能でドロドロすりゅのしゅてきぃっ♪
胸中に響くアモールの言葉に私は最大限の好意と感謝を込めて返します。だって、二人が教えてくれなければこんな素晴らしい事を知らずに終わっていたのですから。フィエロを手放していたかもしれないだけでも胸が痛むのに、こんなに気持ち良い事を知らなかったかもしれないだなんて考えたくもありません。本能に身を任せて快楽を貪り、フィエロへの愛情の高めていくセックスに比べれば道徳や規範なんて下らないものでしかないのに…そんなものに一時でも縛られていた自分に嫌気さえ覚えてしまいます。
―れも、良いのっ♪知っちゃったの…っ♪本能は気持ち良いって私、知っちゃったからぁぁっ♪
けれど、そんな嫌気も今の私の悦楽にとっては些細なものです。ぐちゅりと奥にオチンポの先っぽを突っ込む度に、そして、そのオチンポを引き抜く度に、オーガズムを迎え入れる今の私にとって自己嫌悪などあっという間に快楽に流されるものでしかありません。それよりも心を割くべきはフィエロとオチンポの事です。それ以外の事は些事として投げ捨ててしまって構わないでしょう。そして、勿論、その中には私自身の事も含まれているのです。
「ふあああああああぁっ♪♪」
甲高いメスの叫び声をあげながら、私の腰はぐじゅぐじゅと結合部で淫らな音をかき鳴らし続けていました。そこから湧き上がる悦楽は今でさえとんでもないものです。本能に完全に負けてしまった今、受け入れられる快楽は上がっている筈なのにそれを振り切って今にも身体から溢れてしまいそうなのですから。これ以上、気持ち良くなってしまうと本当に私は元には戻れなくなってしまうかもしれません。そんな思考が私の中にはあったのです。
―でも、良いのっ♪もう戻れなきゅても良いんれすぅ…♪ずっとじゅっとこうしてフィエロと繋がってるから良いのぉっ♪
しかし、今やそれは道徳等と言うものと同じくらい私を縛り付けるものにはなりません。寧ろ自分で自分を壊して行くと言う被虐的のようでもあり、嗜虐的のようでもある快楽に後押しされているのです。そして、それに押し出されるようにして私の腰はゆっくりと浮き上がり、じゅるじゅると粘液塗れのオチンポを引き出していくのでした。今までオマンコの中で疑似的な抽送は再現していても本当の抽送など一度もしてはいません。テラテラと光るオチンポが私の中から引き出されるのを見ながら、私はこれから襲い来る未知の感覚に胸と身体を震わせていました。
―…ふわぁぁ…♪どんな風になるんれしょう…♪♪
最初の可愛らしいオチンポに合わせた狭くて窮屈なオマンコ。それを一気に奥まで逞しいフィエロのオチンポで貫かれてしまうのです。ギチギチと音が鳴りそうなくらい狭くて…粘液でたっぷり満たされた私のオマンコを…青筋を浮かべて真っ赤な亀頭を晒すフィエロのオチンポで…っ♪♪あぁぁ…早く味わいたいっ♪…ううんっ♪もう限界です…っ♪♪
「ああああああぁぁぁっ♪」
そのままズンと腰を下ろした瞬間、私の思考は真っ白に焼きつきました。既に快楽で一杯である筈の思考が白く染まって、何も考えられません。その中で鉄砲水のような悦楽が一気に押し寄せてくるのです。まるで意識を刈り取ろうとするかのような快楽を叩きつけられた私は腰を震わせてまた叫び声を上げるのでした。しかし、今の私はそれで終わりません。叫び声をあげながら、再び震える腰を引き上げてフィエロに向かって降ろすのです。
―あぁぁぁっ♪あああああっ♪♪あぁっ♪あぁぁぁぁぁっ♪♪
一秒にも満たない時間でオマンコの全てを刺激される感覚。それはやはり私にとっては大きすぎるものでした。快楽塗れの思考からオーバーフローして殆ど何も考えれない域にまで達するのですから。しかも、それは一度ではなく二度も三度も沸き起こってくるのです。今や私よりも身体に馴染んだ本能が腰を抜かす私を無理矢理、動かしてオーガズムの嵐を呼び起こしているのですから。身体を動かすことなんて本当は考えられない筈なのに、本能が何よりも貪欲にフィエロを求めてしまう。そんな自分に悦びを感じる暇も無く、私は意識を薄れさせていき――そして………――。
「――ふ…あ…あぁ…♪」
感じた覚えのある刺激に意識が戻ってきた頃には私の身体は悲惨なことになっていました。身体中がドロドロになって粘液なのか身体なのか。その境界が曖昧になっています。まるで『ヒト』が汗を掻いている様な身体の下では幾つか白いものが浮かんでいました。恐らくそれはフィエロの精液なのでしょう。先のフェラチオの時に比べれば量はかなり少なくなっていますが、その味や匂いを私が忘れるはずがありません。
―あぁ…♪これで私が目を覚ましたんですね…♪
さっきの感じた覚えのある刺激は恐らくフィエロの射精であったのでしょう。まだ出されたばかりであると主張する暖かい精液もそれを裏付けています。その事から察するに私が意識を失っていたのは長くとも十分ほどでしょう。短いとも長いとも取れませんが、その間にフィエロが射精していた、と言うのがとても残念に思えます。
―まぁ、良いですよね♪まだ…次がありますし…♪
しっかりと意識を保ってられずにその瞬間を迎えたというのは残念でありますが、今更、何を言っても変わりません。それならば、次をもっと味わう事に専念したほうが良いでしょう。そう決意した私は急速に萎えつつあるオチンポを扱く様にして腰をゆっくりと引き上げ、抽送を開始するのです。
―ふああああぁぁっ♪や、やっぱり気持ち良いっ♪ゾリゾリゴリゴリってきちゃうぅっ♪♪
さっき私の意識を染め上げ薄れさせたほどの快楽なのです。それが気持ち良くないはずがありません。しかし、私はもうそれに意識を飛ばすことはありませんでした。それどころかぐじゅぐちゅの粘液で溢れたオマンコを抽送するだけではなく腰を左右前後に動かす余裕さえあります。きっと私が意識を失っていた時に本能が身体に教え込んだのでしょう。それは殆ど意識する事無く動き出しました。くるりと円を描きながらオチンポを引き出す感覚はカリ首で身体を引きずりだされるのと相まって、とても気持ち良いです。同じように腰を下ろすときに円を描けば私の下腹部がまた蕩けるのでした。途切れる事の無いアクメはオチンポが再び萎えつつあるというのにさっきと遜色ない威力を発揮しているのです。でも、私がそれに心奪われることはあっても、意識を薄れさせるなんて事はありません。
―やっぱり…スライムだから…ですか…ね♪
快楽で痺れる頭に思い浮かぶのはスライムの適応能力の事。構造が単純なスライムは土地ごとに適応して様々な亜種を生み出しています。単純な上位種であるレッドスライムからサキュバスの魔力に適合したダークスライムまで。その種類は数え切れないほどあるのです。その上、スライムは適応する速度も速く土地の変化に応じてすぐさまその身体を作り変えるのでした。そんなスライムである私が大きくなりすぎた快楽を受け止めるために身体や意識を作り変えたとしてもおかしくはありません。もしかしたらさっき意識を吹き飛ばしていたのはその為であったのかも知れないとさえ思うのです。
―まぁ…それも些事ですね…♪今はそれよりも…セックスとオチンポですぅ…っ♪
例え意識が創り変わっていたとしても私にとってフィエロが一番大事で、セックスが大好きであるというのは変わりません。小難しい思考をスキエンティアの方へと丸投げして、頭の髄まで突き刺されるような悦楽に身を震わせます。腰を揺らしながらの抽送は私だけではなくフィエロにとっても大きな快楽を与えているのでしょう。既に三度の射精を経験しているというのにオチンポは再び膨れ上がっていました。流石に三度も射精しているので最盛期…とまでは言いませんが、次の射精を予感させる姿に私の腰はさらに激しく動き始めるのです。
―もう三度目じゃないですか…。フィエロのオチンポを独占するのは大罪ですよ。位置の組み換えを要求します。
そんな私の脳裏にスキエンティアの言葉が届きました。普段、冷静な人格とは思えない程、拗ねた感情はそれだけ彼女が怒っている証しなのでしょう。考えても見ればさっきからずっと彼女は胸ばかりなのです。勿論、そこもまたフィエロの性感帯であり重要な場所である事に違いはありませんが、オチンポや口から見れば重要度は幾らか下がってしまうでしょう。その上、自分で手に入る快感は少ないのですから彼女が欲求不満になっていても仕方はありません。
―でも…っもう始めちゃいましたし…♪
―ずるいですよ!もう三回もフィエロのザーメン独り占めじゃないですかっ!!
―さっきのは意識が飛んでましたしノーカンですよぉ♪次は譲りますから…ね♪
―むぅぅ…!!
未だ納得はしていないようですが、私の言葉に何とかスキエンティアは矛を収めてくれました。彼女としても別に私の邪魔をしようとしている訳ではないのです。そもそも嫉妬と言う感情とは私達は殆ど無縁なのですから。それでも彼女がそう言ったのは自分が蔑ろにされているような感じがしたのと欲求不満が原因です。知識をその柱にしているとは言え、彼女だって感情がない訳ではありません。寂しさや欲情だって感じますし、フィエロの事を私たちに負けず劣らず愛しているのですから。
―では…スキエンティアに譲るためにも…フィエロにはすぐに射精してもらわないといけませんね…♪
折角、フィエロが勃起してくれたのですからもっとねっとりぐっちょりと絡み合うように愛し合いたくもありました。しかし、スキエンティアが言っている通り、独り占めは重罪です。全員が私であるのですから独り占めという表現は正しくはありませんが、彼女達だって感情を持っていないわけではないのです。私ばかりが精液を味わっていれば、良い気がするはずがありません。また自分同士で喧嘩をするという無益な事をしない為にも出来るだけ早く変わってあげるべきでしょう。
―ふふふ…♪まぁずはぁ……♪
舌足らずな言葉を思い浮かべながら私はそっと身体を作り変えるのです。しかし、それは何か目新しい変化ではありません。さっきと同じオマンコを収縮させ、亀頭の先を奥へと突っ込ませるようなものなのですから。これ以上、私はフィエロを気持ち良くするためのオマンコにするアイデアもありませんし、これが限界なのです。しかし…アイデアは限界であったとしても、それだけで終わりではありません。ぎっちゅぎっちゅと粘液塗れの下腹部を収縮させながら、私は抽送を止めていないのですから。
「〜〜〜〜っっっ!!!」
それにフィエロが腰を突き出してビクビクと震えてくれました。意図的に抽送とは別の方向へと収縮し広がる膣肉はその刺激をさらに大きなモノへと変えているのでしょう。まるで橋を現しているかのように背筋を浮かせてガクガクと揺れる腰はフィエロが壊れる寸前にも見えるのです。しかし、そんなフィエロを押さえ込む二人の視界には虚ろな目に欲情と興奮と浮かばせている顔が映っていました。少なくとも拒まれてはいない。その確信を強めた私はさらに腰をくねらせて悦楽をエスカレートさせていくのです。
―あは…ぁ♪そんなに悦んでくれるなんて…とっても嬉しくなっちゃうじゃないですかぁっ♪
勿論、気道をアモールに塞がれているフィエロは満足に呼吸が出来ず、意識が朦朧とし始めているのが大きな原因であると私も気付いていました。アモールもフィエロにちゃんと空気を送り込んではいますが、必ずしもそれが足りているわけではないのです。足りない酸素を節約しようとその大部分を消費される脳の動きが鈍り始めているのでしょう。そして脳で生み出される理性と言う鎖もまた鈍くなり、快楽をより受け入れやすくしているのです。
―でも……♪
そう…でも、過程がどうであれフィエロが私たちを受け入れ始めていると言う事に違いはありません。それが例え私達の手によって彼の意向が濁ってきていると言う事であったとしても彼の抵抗がなくなっている事実は変わらないのです。無防備になりつつあるフィエロの様子はまた私の胸を歓喜で躍らせて高鳴っていく原因になるのでした。
―もっともっともっともっとぉっ♪もっとぐちょぐちょになりましょうねぇ…♪溶け合っちゃいましょうねっ♪
歓喜に塗れた胸の中でそんな言葉を思い描きながら私の腰はさらにエスカレートしていきました。円を一つ描いていただけの腰の動きが8のような二つの輪を描き始めます。その動きによって右へ左へ上へ下へと押し付けられるオチンポはその度にピクピクして悦んでくれていました。腰もさらに浮き上がって私の足が地面から離れてしまいそうです。しかし、下の粘液と本体と繋がっている私は離れることはありません。同様にフィエロの腰から離れることはあっても、絡みついたオチンポを逃がさないのです。抽送のタイミングに合わせて絡みつくオマンコの部分は空気の入り込む隙間すら惜しむように粘液を塗し続けていました。
―ふわぁっ♪くりゅぅっ♪また来ちゃいますよぉっ♪♪アクメ止まんないですっ♪
余裕が出来たといってもフィエロのオチンポから感じる快楽はさっきとまるで遜色ありません。言うなれば快楽を受け止める器が大きくなっただけに過ぎないのですから。寧ろ意識が薄れていかない分、より確かに快楽を受け止め、高いオーガズムを経験出来るのです。そして、今の私にとってそれは何よりも嬉しい事でありました。だって、それはさっきのように濁った意識の中でフィエロの射精を味わうなんてことがない、と言う事なのです。その射精の最初から最後まで。あの蕩けそうなくらいに甘いドロドロの白濁液が私の身体に注ぎ込まれるのを全て感じ取れると言う事なのですから。
―あは…っ♪幸せぇ…♪オチンポで私、とぉっても幸せですぅ…っ♪
フィエロのオチンポさえあれば何も要らない。そんな思考を再び脳裏に思い浮かべながら私はぱちゅんと密着した腰を前後に揺らします。オマンコの部分を下腹部に押し付けるような仕草はフィエロの亀頭で突起の部分をかき回すことにも繋がるのでした。ぐちゅぐちゅとじゅるじゅると溶けた粘液塗れの突起をかき回されるたびに私の背筋に強いアクメが湧き上がります。思考も視界もそれで真っ白に染められた瞬間、フィエロのオチンポがビクンっとまた一つ大きくなったのでした。
―うふ…♪しゃせー来るんですねぇ…♪私を白く染めてくれるんですねぇっ♪♪
それに私は強い喜悦を禁じえません。だって、それは紛れも無く射精の予兆なのですから。最初ほどの硬さや大きさには決して及びませんが、膨れ上がる熱は最初とまるで遜色ありません。まるでマグマのようなドロドロに煮え滾った熱が解放の瞬間を今か今かと待ち望んでいたのです。それに私は強い興奮を感じて、狭い膣肉をさらに締め上げました。私が味わう最後の射精をより高いものにしようと抽送も収縮も今まで以上に激しくなっていくのです。
「〜〜〜〜っ!!〜〜〜〜っっ!」
そんな私の膣奥を目指すようにフィエロの腰はさらに浮き上がっていきます。しかし、私にはその最奥である子宮口や子宮というものが存在しません。勿論、作ろうと思えば作れますが、私には『ヒト』のように子を成すという概念がないのです。そういう意味では子宮を保護する入り口よりもフィエロにより快楽を感じさせる部分の方が良いでしょう。そう考える私のオマンコは何処まで言っても粘液と突起塗れで、どれだけ腰を浮かしても精子が目指すべき子宮などないのです。
―でも…無駄になんかしませんよぉっ♪
フィエロの精子は私の御飯としてこの身体を巡っていくのです。そうして蓄積された精は『ヒト』とは違った形になりますが、別の命を生み出す事でしょう。だから、私に射精しても何の無駄でもありません。新たな命の糧になるという意味では『ヒト』とまるで変わらないのですから。
―だからぁ…安心してどぴゅってくださいなぁ♪
その言葉と共に私の腰がぐちゅんと淫らな音を立てて、フィエロの腰を密着しました。瞬間、くいっと捻った腰の奥でオチンポがビクリと大きな脈動を始めます。まるで噴火の予兆のような響きに私の全身に歓喜と絶頂が行き渡った瞬間、フィエロの先端からドロドロの精液が私に送られてくるのでした。
「ふああああああぁぁぁぁんっっ♪♪」
甘い甘いメスの嬌声をかき鳴らしながら、密着した私の腰はビクビクと震えます。今まで本能の手によって止めようとしても止まらなかった腰は精液を味わおうと密着したまま震え続けているのでした。それを伝わる背筋も腕も足さえも悦楽と震えが止まりません。御腹の奥から湧き出てくる蕩悦の波に何もかも飲まれていくようにさえ感じるのです。
―ざぁめんっ♪ざぁめんっ♪せーぇきっ♪こだねじるぅっ♪美味しい美味しい美味しい美味しいっ♪
大きくなったはずの器を越えて、膨れ上がった悦楽に私の思考はドロドロと崩壊し始めます。蕩楽の名の通り蕩けていく思考の中はさっきから精液の事で一杯でした。勿論、本日、四度目となる射精は最初と二回目に比べれば大分、弱弱しいものです。しかし、その美味しさはまるで変わってはいません。あのオス臭い匂いも、甘くて蕩けそうな味も、ドロドロとした濃厚さもそのままなのですから。私の思考がそれ一色になったとしても何も不思議ではないでしょう。
―あぁ…♪でも…足りないっ♪美味しいの…美味しいけどこれ足りないのぉっ♪♪
そう。けれど、やっぱり絶望的に量が足りません。私だけで抜かずに三発。彼女らも含めれば短時間で四回も射精しているのですから当然でしょう。しかし、もはや理性よりも本能に比重を置く私の思考はそれがどうしても物足りなく感じてしまうのです。美味しい物がそこにあると分かっているというのに欠片しか与えられないのですから。もう打ち止めが近いと分かっていても、滾る欲望は止められないのでした。
―…欲しい…もっと欲しい…っ♪でも…次は……♪
一瞬で跳ね上がった快楽は放物線を描くようにして一瞬で落ちていっていました。その元となる射精がすぐに終わってしまったのですから当然と言えば当然なのでしょう。少しばかり冷静になった思考はそれにどうしても物足りなさを感じてしまいますが、次はスキエンティアの番であると約束したのです。約束通り彼女と場所を変わってあげなければいけないでしょう。
―名残惜しいですが…♪
こうしてフィエロのオチンポと密着する感覚ももう直接は味わえない。そう思うと胸に小さな疼きのようなものを感じてしまいます。しかし、これはずっと彼女達も感じていたものなのでしょう。そう思えば譲らない訳にも参りません。急速に私の中で力を失いつつあるオチンポに最後にキスをするようにしてきゅっと締め付けながら私はドロドロと粘液に身体を戻していくのです。そして、私の意識はフィエロの右側、つまりスキエンティアが寄り添っていた側に移動するのでした。そのままドロドロの粘液から私の身体を構成し、胸を上下させて必死に空気を求めるフィエロの胸に寄り添ったのです。
「ふふ…♪では次は私の番ですね♪」
そんな私とは対照的にスキエンティアは元々、私であった粘液を再構成して顕現しました。私よりも何処か大人っぽく冷静な雰囲気を纏わせる彼女の瞳は既に発情の色に溢れています。『ヒト』であれば頬を強く紅潮させているだろうと思うほどの興奮は見ている私の胸にさっきとは別種の熱を灯しました。根幹は同じでありますが表層は別々だからでしょうか。ナルシズムも入っているのかもしれませんが目を潤ませて嬉しそうに馬乗りになるスキエンティアが妙に魅力的に見えるのです。
「ウィータと同じように三度…いえ、二度は最低でも射精して頂きます…♪」
そう宣言して腰を動かし始めるスキエンティアにフィエロの顔が青ざめました。意識が朦朧としていてもその意味はしっかりと理解しているのでしょう。彼女の言葉はこの淫獄が後、最低でも四回は終わらないと言う事を示しているのです。スキエンティアの宣言数と同じだけの数をアモールも求めるに決まっているのですから。その合計数は今までの四回と含めれば八回にも昇るでしょう。
―でも…それはあくまでも最低の回数です…♪
勿論、それだけで終わるはずがありません。だって、私はまだまだ満足してはいないのですから。流石に二回を要求するほど恥知らずではありませんが、少なくとも後一回は精液が欲しい所です。しかし、私がそんな事を言い出せば二人だって欲しがるでしょう。そうなれば回数は11回、14回とドンドンと跳ね上がっていくことになるのです。その数が最終的にどれほどのものになるか、私自身にも予想がつきません。
「ふあぁ…っ♪直接感じるのと…では…やっぱり違います…ね…♪…快感と熱量の比例の公式…がぁ…っ♪測定不能です…っ♪こんなの…始め…てぇぇっ♪♪」
既にオチンポに虜になりつつあるスキエンティアを横目で見ながら、私は鬱血を浮かび上がらせたフィエロの胸板に指を這わせます。そのまま彼女がつけた跡を一つ一つ丁寧になぞりながら、そっと腫れあがった乳首に舌を押し付けました。何十分にもわたる間、虐められ続けたそこは再びの刺激にビクリと震えます。可愛いその反応に心を揺れ動かしながら、私はスキエンティアがやっていたようにゆっくりと舌を動かしていきました。
その間、スキエンティアもアモールも責め手を決して緩めません。本来は誰よりも本能に近いはずのアモールは朦朧とし始めているフィエロの口を貪り、埋め尽くしています。気道だけは埋めないように細心の注意を払いつつも頬の粘膜から顎の粘膜まで全てを覆い尽くした彼女は舌のような突起を作り出して口中を舐め尽していました。
またゆっくりと立ち上がったフィエロのオチンポを咥え込むスキエンティアはその快楽に心を奪われながらも必死に腰を動かしています。何をしているのかまでは伝わってはきませんが、きっと知識を総括する彼女らしい独特な責めが行われているのでしょう。青く透き通った――勿論、それはかつて私だったので白濁液も浮かんではいますが――身体の中は私とはまるで違った構造になっており、オチンポを射精へと導いていました。
―ふふ…っ♪しかも…それはずっとずっと終わりません…♪
だって、スライムには睡眠など必要ないのです。スキエンティアの次はアモール。アモールの次は私。そんな風にサイクルとなって幾らでもフィエロのオチンポから精液を引き出すことでしょう。睡眠と言うサイクルを途切れさせるものがない以上、それらはフィエロが気を失うまで続くのです。そして目を覚ませばまたそのサイクルは回り始め、再び彼が気を失うまで続くのでしょう。つまり…フィエロにとっては永遠に犯され、陵辱される日々が続くのです。
―でも…それがフィエロの望みなのですよね…♪
フィエロは私に裁かれたいと言いました。ならば、私達はそれを与えてあげるに過ぎません。永遠に快楽の牢獄の中で彼を繋ぎ止め続けるのです。彼が壊れるまで…いえ、壊れたとしても永遠に…♪
「ずっとずっと一緒ですよぉフィエロ…♪他の誰にも渡しません…♪フィエロを裁く権利は…誰にも譲らないんですから…♪」
もう聞こえているかさえ怪しいフィエロにそう囁きながら、私の愛撫は激しくなっていきます。そしてそれに同調するように二人もまた興奮を高めていき……そして――
―そんな何時までも終わらない淫獄は何時までも何時までも続いていくのでした♪
―そこは見渡す限り青い空間でした。
壁も天井も床も椅子も机もその上にあるお皿も何もかも。全てが透き通るような真っ青で構成されていました。まるで子供が青いペンキをぶちまけたように青い空間だけがそこにはあるのです。それはいっそ狂気すら感じられるものであるのかもしれません。しかし、それを作り上げた私にとっては、どうしようも無い事なのでした。
―だって…色なんて変えようと思っても変えられるものではありません。
それは全て私の一部なのです。彼を冷たい風から護る壁も、彼を熱い日差しから護る天井も、彼を支える床も、彼を包み込む椅子も、彼の食事が並べられる為の机も。何もかも私で構成され、私から生まれ出でたものなのでした。それらはきっと普通のスライムでは出来ない芸当でしょう。しかし、アレから何十年とフィエロと交わり続けた私は何故か本来起こるべき分裂を起こさず、その身体を肥大化させていったのです。その中から余った一部をこうして彼を庇護…いえ、閉じ込める為に使っていますが、その色までは変えられません。今や自由自在にその形を変える私の身体とは言え、色まではその範疇ではないのです。
―まぁ…フィエロも満足してくれているようですし…♪
言い訳のように結論付けながら私はそっと青いお皿の上から艶やかな葡萄を一房手にとって口に含みます。勿論、それは食事の為などではありません。スライムである私の主食はフィエロの体液全般なのですから。どれだけ果実を取り込んでも殆どエネルギーにはならないでしょう。その為、私はそのまま取り込むのではなくコロコロと舌で転がしながらゆっくりと皮を剥いて行くのです。紫色の果実を亀頭に見立てて、優しく…そしていやらしく。
―ふゅふ…そして…ぇ♪
剥き終わった葡萄をそっと舌に載せながら私はそっと青い椅子に座る愛しい人に口付けをするのです。そのままコロコロと私の中でたっぷり冷やした新鮮な葡萄をフィエロの口の中へと送るのでした。それをフィエロは悦んで受け入れて唾液のお返しをくださいます。砂糖よりもずっと甘いその唾液に私は悦び、フィエロの首に両腕を回してしまいました。そのまま何時ものように唾液を音を立てて啜りながら、彼の口腔を貪り続けるのです。
「ちゅぱぁ…っ♪」
そのままたっぷり数分ほど口付けを交わした後、私はゆっくりと彼の口の中から舌を離しました。それにフィエロは一瞬だけ名残惜しそうな顔を見せてくれます。出会った日から何も変わらない若く、瑞々しい姿に強い欲情を浮かべて私を見据えてくださるのでした。それが私にとっては何より嬉しい事であり、そして幸せなことであるのです。
―アレからフィエロはすぐにインキュバスになりました…♪
元々、錠剤と言う不自然な形で精を摂取してきた私はその内側にサキュバスの魔力を溜め込んでいたのです。幾つかそれを魔術と言う形で放出しましたが、それでも山ほど余っていたのでした。特に一か月分の錠剤を一気に取り込んだ私の身体は膨れあがるのと同時に処理しきれない魔力を溜め込んでいたのです。一歩間違えれば私を変異させかねない程の魔力は私を強く欲情させる――具体的に言うとより本能に近い二人に力を与えて――のと同時に、その捌け口としてフィエロを使っていたのでした。お陰で一週間も経った頃にはフィエロはインキュバスと化し、底無しの精力を持ってして私達を満足させてくれたのです。それは今も変わらず、何十年と経った今でも若々しい姿のまま私を愛してくれるのでした。
―まぁ…それはさておき…ね♪
「どうですフィエロ…美味しいですか…♪」
「あぁ。今日のも美味しいよ」
私の問いにフィエロは答えてくれました。その声に少しだけ抑揚が無い気がしますが、何も問題はありません。『数十年前』からフィエロはずっとこんな感じなのですから。その証拠に股間の剛直は今も腹筋と触れ合うほどに反り返っていました。病気か何かであればこうしてオチンポを反り返らせる余裕などないでしょう。
「ふふ…♪じゃあ今日もご褒美をあげないといけませんねぇ…♪」
その言葉と共に私は手を二回叩きます。パンパンと空気を震わせる音と共に床がドロリと持ち上がり、一人の少女が姿を現しました。私と同じ透き通った青い身体をしている彼女は勿論、私の一部です。年の頃は12から13ほどで平坦な身体に少しばかりの緩急がつき始めた姿をしていました。少女から女性への過渡期にある未熟な果実。そんなイメージが何より強い彼女はまだ名前がありません。この『国』では名前は全てフィエロから頂くものと決まっているのですから。
「は、初めまして国王陛下!わ、私がその葡萄を作ったものでしゅっ!!」
初めて憧れの人に出会った興奮。それに身体を硬くし過ぎた彼女は噛んでしまっていました。憧れの人の目の前でそんな失態を見せてしまった彼女は顔に一杯の羞恥を浮かべて俯きます。その心の中には激しい後悔が渦巻いていました。しかし、それを見る私にとっては妙に微笑ましくて、手助けをしてあげたくなってしまいます。
「気にしなくても構いませんよ。フィエロはとってもお優しい方なんですから気にしては居ません♪」
「あぁ、気にしていない」
平坦なフィエロの言葉に顔を輝かせて、少女は顔を上げました。絶望から一転、初恋が実ったような様子に微笑が溢れてしまいます。そんな可愛らしい彼女をもっと後押ししてあげようと私は再び口を開きました。
「さぁ…フィエロのオチンポがお待ちですよ…♪する事は分かっていますね…♪」
「は、はい…!一生懸命、ご奉仕させていただきます…!!」
ふっと握り拳を作りながら少女はそっと膝を降りました。そのまま椅子に座ったフィエロのオチンポに「失礼します」と声を掛けてそっと口に含むのです。既に剛直と化しているオスの証はそれを嬉しそうに受け入れてビクビクと震えていました。それを口で受け止める少女は喜悦を顔に滲ませて、激しいディープスロートを繰り返すのです。最初から容赦の無いその抽送にフィエロは小さく呻いてぎゅっと私を握ってくれました。まるで縋るような可愛らしい仕草に私の心も喜んでしまいます。しかし、今の主役は私ではなく少女。私はあくまで彼女を手助けする先導役に過ぎないのです。
「フィエロが食べ終わる前に射精に導くことが出来れば、もっと素敵なご褒美が待っていますよ…♪」
とは言え、フィエロが食べ終わるまでに射精に導けないなんて事はありません。だって、彼女も私の一部なのですから。彼の感じるツボや弱点などは全て把握しています。後はそれを実践するだけなのですから、負けるはずがありません。実際、今までこの『ご褒美』を受けてきた子は数え切れないほどいますが、一人だって失敗した子がいないのです。皆、最後まで――フィエロのオチンポで犯して貰い、射精してもらうという最高の栄誉を得ているのですから。
「では、フィエロはお食事を続けましょうね…♪」
じゅぽじゅぽと水音を鳴らしながら必死に頭を動かし続ける少女を横目で見据えながら私は次の葡萄を彼の口の中へと運びます。勿論、その度にくちゅくちゅと舌を絡ませあい、貪りあうのを忘れません。少女に負けないよう淫らな水音をかき鳴らしながら、その性感を高めていくのです。無論、少女にとってそんな援護は必要ありません。これは私がしたいからこそしているだけなのです。
―だって…やっぱり寂しいではありませんか。
少女も私であり、感覚は全て繋がっています。しかし、その表層として現れる人格はやっぱり別なのでした。他の女と思っている訳でも嫉妬している訳でもありませんが、やっぱり蚊帳の外に置いておかれるのは寂しいのです。二人だけ盛り上がるのではなく私も混ぜて欲しい。そんな気持ちを込めながら、私も必死に舌で愛撫し、食事を続けていくのです。
「う…うぅっ!」
しかし、快楽の量ではやっぱり少女には敵いません。少女は男の急所である肉棒を咥えているのに私は舌なのですから。与えられる快楽の倍率ではどうしても不利なのです。それを経験でカバーしようにも彼女の私であるので同じ経験を持っているも同然なのでした。そんな状態で勝てるはずもなく、フィエロの腰は小さく浮き出して射精の予兆を見せ始めています。
「あぁぁっ!」
そしてその予兆はすぐさま形となり、ドピュドピュと少女の口の中で弾け始めます。この青い世界の中で唯一、白いその液体は全て少女の中へと吸い込まれ溶け込んでいきました。受け止める少女の方も顔に強い陶酔を浮かばせて必死に吸い上げています。そして、吸い上げるザーメンが彼女の未熟な肢体に触れる度に彼女は大きなアクメを迎えているのでした。初めて直接味わう絶頂に、少女は身体を震わせながらものめり込んでいきます。まるでお菓子の味を知ってしまった子供のようにもっともっとと貪欲に求めていくのでした。
「ふふ…よく出来ましたね…♪さぁ…次はちゃんとお掃除するのですよ…♪」
「ふぁ…ぁぃ…♪」
私の言葉に短く答えながら、少女は未だ射精を続けるオチンポを唇で扱き始めます。根元から子種汁を引っ張り出すような動きにフィエロはまた小さく呻いて腰を震わせました。恐らくまた絶頂を迎えているのでしょう。インキュバスと化した彼にとって繰り返し射精を行うなんて簡単な事なのですから。その証拠に少女を白く染める白濁液の勢いは増して胸の部分まで真っ白にしていきました。
「う…くぅ…」
しかし、それも永遠には続きません。残念ですがインキュバスと言えど、インターバルは必要なのです。その精嚢を再び精液で一杯にするまでほんの僅かな時間ではありますが隙があるのでした。その間は幾らインキュバスでも射精が出来ません。それが初めて射精を味わう少女にとっては不満なのでしょう。必死に唇を窄めて扱きあげたり、ねっとりと亀頭を舐めたりしていますが、フィエロの身体が跳ねるだけであの甘いザーメンは出てきません。そうしている間にお掃除も済んでしまって、少女は名残惜しそうに剛直から離れたのでした。
「ではお掃除も出来た事ですし…今度は名前をつけてあげないといけませんね…♪フィエロ…何かありますか?」
「リジュ」
「…そう。リジュですね…♪喜びなさい。貴女は今日からリジュです」
「はいっ♪あ、ありがとうございまふゅっ…じゃなかったございます!!」
勢い良く頭を下げる少女―いえ、リジュの姿を見ていると私の顔も思わず綻んでしまいます。何もかも一生懸命と言う様なリジュだからこそ、こうしてフィエロに食事を提供できるまでに成長出来たのでしょう。
この『国』で取れる野菜や果実はフィエロが口にする一部を除き、全て交易用です。そしてフィエロが口にするその一部はこの『国』で取れる中でも最高の一品だけを厳選して作られているのですから。その狭き門を潜り抜けて、こうして彼の前にリジュが立ったのも努力の賜物でしょう。
―もっとも…フィエロの前に立てる手段はそれだけではありませんが…♪
こうしてフィエロに名前を与えられた子達は夜伽の際に、かつてのスキエンティアやアモールのように私の供として呼びつけられるのでした。それは順番によって選ばれており、不公平は可能な限り少なくしています。その他にも様々な手段で王国に利益を齎したり、手柄を立てればフィエロからの寵愛を頂ける様なシステムとなっていました。最近では料理本を安く仕入れてきた功績を讃えて、寵愛を受けた子もいます。
―まぁ…それは蛇足ですかね…♪
「では、少しだけ下がっていなさい。また食事が終われば呼びますから。その時…フィエロにたっぷり犯してもらいなさい♪」
「は、はいっ♪し、失礼しました!!」
私の言葉に期待を浮かばせながら、そっとリジュは床へと溶け込んでいきます。後に残るのは何も無い元通りの平面だけ。それを見ながら私は再び葡萄を口に含みます。そのまま再び口に運ぼうとして、フィエロの瞳に最近は殆ど見ない意思の光が宿っているのに気付きました。
「…フィエロ?」
「ウィータ…俺は……」
「…良いんですよ…フィエロ…」
何か言いたげなフィエロの頭をそっと抱きかかえてそっと頭を撫でました。まるで子供にするようなその仕草に彼の顔が少し和らぐのを感じます。
「良いんですよ。ずっとこうしていて。私の言う事を聞いて…私だけを感じて…私だけを見て…私だけを想っていて」
快楽で朦朧とする彼に何度も囁き、そして彼の心を壊したであろう言葉と同じフレーズを紡ぎます。そしてそれを刷り込むようにして何度も頭を撫で続けるのでした。まるで母親が我が子にするような母性溢れた仕草ではありますが、内実はまったく違います。私はその指先一つ一つにまで欲情と愛情を込めているのですから。母性よりももっと強いドス黒くも激しい感情の波によって私は突き動かされているのです。
「だから…ね…♪安心して私に全てを委ねてくださいな…♪その思考も感情も…何もかも全て…♪」
「思考も…感情も…全て…」
言い聞かせるような言葉と共にフィエロの目から意思の光が消えていきます。後に残るのは私の事を愛し、頷くことに違和感を感じない人形だけ。ですが、私はそんな人形と化したフィエロであっても、とても愛しているのです。フィエロを手放す事を考えたくも無い私にとって人形のような姿であっても心踊り、狂わされてしまう対象なのでした。
「…では、お食事を続けましょうか…♪あんまりリジュを待たせてしまうと可哀想ですしね♪」
「あぁ」
甘い私の言葉に何時ものように平坦に答えながら、フィエロは私の差し出す葡萄をそっと口に含みました。そこにいるのは最早、私が世話をしないと満足に生きてもいけない可哀想なヒトだけ。かつて私の危機を救い、助け出してくれた王子様は何処にもいません。私に数多くの知識を与え、今の基礎を作ってくれた恩師もいないのです。けれど…それが私の感覚を――フィエロの心までを手に入れたという実感を加速させて止まりません。本当は後悔もあるはずなのにそれを感じさせないほどの喜悦が私の心の中を渦巻いているのでした。
「…フィエロ…愛していますよぉ」
「俺もだ」
その感情を言葉にする私に短く応えてくれた愛しい人。そんなフィエロにそっと微笑みながら私は本日何度目かのキスを落とします。それは食事の為ではなく、お互いの感情を絡ませあい、すり合わせるような情熱的なものでした。そして、そこから絡み合った唾液と粘液がダラダラと零れ落ち、椅子を引いては私を穢していきます。
―…ふふ…♪まるで私達みたいですね…♪
最早、離れることも考えられない二つの液体。それらはお互いに絡み合いながら落ちていくのです。ただ一つ違いがあるとすれば私達には底なんて無いと言う事でしょう。何時までも何処までも永遠に二人で絡み合いながら、どちらが欠ける事も無く堕ちていくのです。
―それも…素敵ですよね…♪
永遠にフィエロと一緒にいれるのであれば何処に堕ちたって構わない。そう心の中で結論付けながら私はそっと手を肉棒へと伸ばしました。今の短いやり取り間も一切、萎えない逞しさは流石、インキュバスと言った所でしょう。常に最高の硬さと滾りを誇る肉の剣に悦びを感じながら、私はそっとそれを上下に擦り始めました。
―リジュには悪いですけれど…もうちょっと待っていてもらいましょう…♪
何処までも堕ちていくイメージは私の欲望を加速させて止まりません。今すぐにでもフィエロのザーメンを味わいたいと身体を動かし始めているのでした。そして、私もさっき見せつけられたリジュへの射精を忘れられないのです。彼女だけずるいと不平を訴えるようにして愛しい人のオスを刺激し、既にたっぷり詰まっているであろう精液をオネダリして――そして――。
―結局、そのまま三回戦まで始めてしまった私はスキエンティアに怒られるまでリジュの事をすっかり忘れていて、後で涙目になった彼女に謝罪する羽目になったのでした。
〜ある悪人の日記〜
○月×日
今日から日記をつけようと思う。理由は奪った積荷の中にこれがあったからと、もう一つ。
とは言え、俺は元々、筆がマメな方ではない。何かあったときにしか書かないだろう。
ともあれ、今日は良いモノを見つけた。生まれたてのスライムである。スライムについての研究は学府でも進んでいるとは言い難い。元々、順応性が高くて何処に居てもおかしくないのだから当然だろう。特にその知性に対する疑問は以前から強くあった。
つまりこれを上手く使えば俺は学府に戻れるだけの研究成果を生み出せるかもしれないのだ。その過程は難しい上に、襲われない様、精を作り出す錠剤も山ほど必要だろう。それに教材も……。その費用は莫大に昇る。しかし、それよりも遥かに高価な研究資材や道具を購入するよりも安くつくだろう。
この選択が吉と出るか凶と出るか。私にも分からないが、その経過を書き残すためにも日記は出来るだけ頻繁に書いていこうと思う。
○月△日
口八丁で騙したスライムはアレから俺の言う事を良く聞き、従順に従っている。親元から離して山奥の水源地に導いた時も何も言わなかった。それどころか転んでも泣き声一つあげずに俺の後を着いてくる。山歩きに慣れた俺に着いてくるのは辛いだろうに、健気な事だ。騙しやすくて本当に助かる。
知識を教えるという経過もそこそこ順調だ。スライムだけあって頭が良い訳ではないが教えた事はちゃんと吸収している。意外性や発展性は今のところ確認は出来ないが、長時間の講義にもついてくる。こういうのがきっと良い生徒と呼ばれるのだろう。少なくとも俺にとっては間違いなく良い生徒だ。お陰で俺自身にも身が入り、講義がサクサクと進む。
ともあれ俺の目的はスライムに知識を教える事ではない。コイツがどう変化するかを研究する為だ。今のところ、特に変化は無い。とりあえずこれからもこの方向性で進めようと思う。
○月◇日
今日はスライムが俺に果実をくれた。どうやら山の中を探検して果実をなる木を見つけたらしい。従順にあの場所で俺を待っているので特に行動は制限してはいなかったが、今後はそれも視野に入れるべきかもしれない。野生生物にでも襲われたら大変だし、連中と鉢合わせなどすれば殺されるかもしれないからだ。それに元々、アイツはドジなのだ。一体、何があったのか知らないが、満面の笑みで果実を差し出す身体には枝が幾つも突き刺さっていたのだから。スライムなので痛みなど感じないだろうが、やはり心配…いや、別にアイツの事を心配しているわけじゃない。ただ、こいつが死ぬと俺の研究が全て水の泡になってしまうのだ。それを防ぐ為にも少し考えないといけないだろう。……しかし、貰った果実は今まで食べた中で一番、美味しかったな。最近は枝や葉を吹き飛ばして快適に歩ける魔術も開発したことだし、今度、息抜きに果実を探しても良いかもしれない。其の時はスライムも一緒に連れて行ってやろう。きっと喜ぶ筈だ。
×月○日
最近はウィータの側から質問を色々してくるようになった。疑問と言うのは明確な自我が無ければ出来ない行為である。故に彼女の中に自意識が芽生え始めているのは確かだろう。最近はただ従順なだけではなく我侭なども言うようになった。それが困る反面、研究の成果が出ているのが見えて少し嬉しい。
とは言え、困るのはその質問の内容だ。住んでいる場所は適当に誤魔化して答えたが、目的や過去なんて答えられるはずが無い。あんな素直な奴に向かって「お前を利用する為だ」や「人を殺した金で生きている」などと言ったら傷ついてしまうだろう。…いや、それ以前にもう俺を警戒して会ってくれないかも知れない。そうなれば研究も終わりだ。ここまで少なくない資金をつぎ込んできただけにそれは避けたい。
しかし、誤魔化した瞬間のあの悲しそうなウィータの表情が気になる。何時かは言うべきか…いや…言わないべきか。これも何時かは決めるべきだろう。
△月×日
少し間が空いてしまった。最近はウィータに教える内容が高度化し始めてきて俺にも予習が必要になってきたからだ。その間に何度か連中と手を組んで隊商を襲ったりしているし、本当に時間の余裕が無い。いっそ連中から抜けるべきか…いや、それだと資金を調達する術がなくなってしまう。ウィータの教育の為にも出来ればそれは避けたい。
それはさておき。昨日はまさかのお泊りであった。とは言え、色っぽいものがある訳ではない。ウィータには教団の教えを是とする価値観を刷り込んであるし、無闇に襲ってきたりはしないだろう。その上、しっかりと精は補給しているのだ。そう簡単に本能に負ける事は無いだろう。
しかし、経緯はどうであれそれを言い出した過程は素晴らしい。その日はウィータの身に熱が入っていなかったのも合ってついつい話を長引かせてしまった。そして、普段は日が落ちる前には帰ってこれるようにはしているのだが、何だかんだと日が落ちてしまったのである。そんな私の意思を無視してでも引きとめようとしたのは反抗期の表れであろう。まだその入り口に立っただけとは言え、これからの成長に期待が持てる。
またスライムの身体を制御する術にも長け始めているようだ。腕を伸ばしたりするだけではなくナイフのように果実を切り裂く所まで見せてくれた。その上、ベッドのように身体を広げたりしている。しかし…それらはスライムとしての特性を活かしたものだ。それは本能が高まってきていると邪推出来るのではないだろうか。
上では本能に負ける事はそうないだろうと書いているが、それはあくまでも今の時点だ。これから先はどうなるのか気をつけなければならないだろう。
△月◇日
今日はあの男を少し喧嘩をしてしまった。どうやら最近、ずっと俺が別件で抜けているのが気に食わないらしい。確かに彼らとしても無駄飯喰らいを養っている余裕は無いだろう。その上、俺は彼らと協力関係にあるだけの男だ。用がなくなれば容赦なく切り捨てられるだろう。
しかし、ウィータの教育も佳境に入りつつある。ここで気を緩めるわけにはいかない。連中には次は手伝うと言ったがどうするか…問題は山積みだ。
問題と言えばもう一つ。最近、気付いたことだが、時折、ウィータが熱っぽい視線でこっちを見てくるのだ。自意識過剰でなければそれはきっと恋しているものだろう。恋愛なんぞした事は無いが、話に聞くかぎりではそうとしか思えない。前々からその傾向があるのを理解していたが、まさかあそこまで発展するとは思わなかった。最初はただの親愛の情だと思っていたのだが……。
それにしてもなんでこんなクズ男を好きになるのだろうか。確かに俺の言う事を良く聞く様に優しくはしていたが、俺の根本は他人を利用するのを何とも思わない下種だ。その上、人を殺しても何も感じなくなりつつある。そんな俺がウィータに好かれる理由があるとは思えない。
今はまだ我侭を言うくらいで大人しくしているがこれからどうなるか…注意が必要だ。
@月○日
最近、俺は何をしているのかと思うことが少なからずある。最初はただ…ウィータを実験動物としてみていただけに過ぎなかったはずだ。それなのに今は実験そのものよりも彼女の行く末が気になってしまう。それだけじゃない。講義の最中でこちらをチラリと見て、目が合っただけで嬉しそうに微笑む姿や、休憩中に無邪気にじゃれついてくる姿にドキリとさせられてしまったのも一度や二度ではないのだ。それは恋なのか経験の無い俺には分からないがそうなのかもしれない、と思い始めている。
…だが、それが恋だとして俺に何が出来るというのだ。俺は下種で救いようの無いクズ野郎だ。今も盗賊を抜けられず、人殺しを続けている。そんな血塗られた手でウィータを抱けるのか。あの純粋で素直な子を俺の手で穢すのか。…出来る訳が無い。
そもそも最初から無理も同然であったのだ。研究を続けながら盗賊を手助けする時点で不可能に近い。学府に認められるだけの成果は決して安くないのだ。それこそ全力で研究に没頭しなければ不可能だろう。…だが、今はそれすらも敵わない。研究そのものよりもウィータがこれからどうなっていくのか気になってしまう俺にはこうして纏めたデータを理論的に整理することは不可能だ。
どっちも無理であれば…道は一つしかない。どうせもうこれ以上ない程、俺の手は血塗られているのだ。それが多少増えたところで構いはしない。ウィータが自立できるだけの薬を集めたら、連中を連れて自首をしよう。…それが俺に出来る最後の償いだ。ウィータはそれに悲しむかもしれないが、説得すれば良い。彼女はこんな下種に惚れるほど、俺を信頼してくれているのだ。訳を話せば…幻滅はされるかもしれないが其の方が良い。彼女にとっても俺なんかよりもっと良い相手がいるだろうから。
明日は大仕事が控えている。それが終われば…本格的に自首することを考えよう。連中との一戦で死ぬかもしれないが…其の時は其の時だ。裁きだと思って潔く受け止めよう。
(日記はここで終わっている)
11/06/29 23:39更新 / デュラハンの婿
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