連載小説
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その2
 それからの私の日常は今までと少し変わりました。
 朝はマークが朝食を持ってきて検温や包帯の交換をする度に、昼はリハビリを手伝ってもらった後、昼食を作ってくれる度に、夜は夕食を持ってきてくれる度に、彼は体中からむせ返るほどの魔物の匂いをさせているのです。私がそれを許せずはずもなく、毎日三回『浄化』するのが日課になり…そしてそれは今も続いているのです。

 「ちゅ…♪ふぅ…♪」

 もう結構な回数、マークの『浄化』をしているので、私の技術も大分上がってきているようでした。こうして、媚びるような声をあげ、時折見上げるように彼の顔を覗きこむのも悦んでくれるのが分かりましたし、舌の動きなども最初に比べればだいぶスムーズなものになってきたのでしょう。ベッドの上に横たわる―と言うより横たわらせているのですけれど―彼はあの時の魔物に対するような余裕の無い表情をずっと浮かべ、最初の頃のほど長持ちしなくなっています。

 「まったく…♪またこんなに…魔物の匂い一杯させて…♪またえっちなことしたんですよね…?」
 「いや、それは誤解だってば…っ」

 何度も何度も『浄化』しても、彼はこうして少し目を離した瞬間に、魔物の匂いを沢山させて現れるのです。その度に、こうして『浄化』しながら彼を追及しますが、彼は何時も認めません。

 「嘘はいけませんよ…?こんなに…こんなにここからは魔物の匂いが沢山するんですからぁ…♪」

 彼のオチンチンはむせ返るような魔物の匂いで一杯でした。発情したメスのフェロモンのような甘い匂いは一発で魔物のものだと分かるほどです。それなのに、まだ認めようとしない彼は往生際が悪いとしか言いようがありません。

 「いや…だから、本当に…っアイシャとはあれからなにもしてないってば…っ」

 ―嘘つきです。こんなに証拠があるのに認めないなんて往生際が悪過ぎます。

 「じゃあ…どうしてここに…甘いメスのフェロモンがこんなについてるんですか…?」

 ―まるでマークが自分のオスだと主張するような……甘い甘いミルクみたいなフェロモンが

 「知らないってばっ!いや、ホント…くぅ」

 最後に小さく呻いたのは認めない彼に腹を立てた私が少し亀頭に歯を立てたからなのですが…それでも尚、マークは一向に認めようとしません。悔しくて彼の竿を撫で上げた私の舌にびくんっと反応はするのに、私の言葉には私の欲しがる反応をくれないのです。

 ―まぁ、良いです。それならば念入りに『浄化』するだけなのですから。

 マークが認めないのもきっと私の『浄化』が足りないからなのでしょう。きっと私が知らないうちにどんどん汚染されていっているに違いありません。ならば、汚染された部分が残らないくらい『浄化』してしまえばいいのです。
 
 ―沢山浄化して、浄化して、そして…あれを沢山私の口に…っ♪

 そう思うだけで私の下腹部はきゅんきゅん疼きます。あれから何度も抑えようとし続けているその疼きは結局、何を欲しがっているのか分からず、毎日毎日、どんどん強くなるようで、私の『意思』を…いえ、きっと正確には理性を殆ど奪いきっていました。毎日、『浄化』をする度に、私の下着はべとべとになってしまうし、最近は『浄化』をしている際、腰が勝手に何かを求めるように動くことも少なくありません。きっと私の身体はどんどん『何か』へと変わって行っているのです。

 ―けれど…もう止まりません…♪

 私の中に残った最後の欠片はこのままではいけないと強く警告してきています。けれど、私の身体はもう私の意思とは殆ど無縁の存在でした。私自身でさえ止められない衝動に突き動かされ、勝手に動いてしまっているのです。

 ―この指も…そう…♪

 何時しか私の指は『浄化』の最中に内股を撫で擦る事が多くなりました。それだけで敏感になった私の身体は震え、小さく電流のようなものを走らせるのです。私はそれがもっと欲しくて、たまらないのですが、私の中の何かはそれを強く禁じ、私の一番、触りたくて仕方が無い場所には触らせてはくれません。代わりに私はマークのオチンチンに集中し、ご奉仕して、それからずっと目を逸らし続けてきましたが、いい加減、限界に近づいてきています。

 ―私はどうしたいのでしょう…・?

 彼に奉仕したいと願う私も、変わり過ぎた自分の姿に危機感を覚える私も、どっちも確かに私なのです。どっちも私で、どっちもしたいと思う私は、もう自分で自分自身が分からなくなっていました。けれど、そんな私でも、彼の『浄化』だけは義務のようにきっちりこなしているのです。

 「ちゅ…♪ふふッ…♪びくんびくんして…とってもえっちです…♪」
 「させてるのはネリーだから…っあっ」

 亀頭にキスを落とすと、彼は小さく呻きました。何時もの様に『力』で抵抗力を奪っている彼は例えどれだけ嫌がっていても逃げることは出来ません。それがまた私の中に強い衝動を湧き上がらせるのです。

 「もっと…もぉっと…綺麗にしてあげますねぇ…♪」

 言いながら私は亀頭だけをぱくっと咥えて、唇で反り帰しを締め付けます。そのままどろどろとした粘性の唾液を雨のように垂らして、それを塗りたくるように舌先で撫で回しました。しかし、それでも魔物の匂いはなくならず、寧ろ濃くなるような気さえするのです。

 ―まったく…こんなに…こべり着くまで魔物とえっちに交わったんですね…っ♪

 その光景を脳裏に浮かべるだけで、私の身体に黒い衝動と、熱い衝動が湧き上がるのです。抑えられる黒い衝動とは違い、熱い衝動の方は私の身体をもっともっとと熱心にマークへの奉仕へと駆り立てるのと同時に、私の指先を『そこ』へと導こうとするのです。

 ―あぁ…もう…限界…っ♪

 毎日毎日、収まらない衝動にあぶられ続けた私の理性はもう耐え切ることが出来ませんでした。自分の内股を撫で退る右手をゆっくりとそのまま上げていき、下着に触れます。そこは彼が部屋に入ってきた時からずっとどろどろになっていて、撫でる私の手の潤滑剤になるほど内股にも垂れてきていたのでした。しかし、何日も同じ行為を繰り返している私には既に、その感覚は不快ではなく、寧ろ熱い衝動に注ぐ油のようなものになってしまっています。

 ―ここ…っ♪ここが疼くんです…っ♪

 下着で隠されているそこがずっと疼く続けてるのは流石に私も理解していました。そこがずっと『何か』を欲しがっているのを目を背けていたのですから。けれど、私はもう目を背けることは出来ません。熱くてじんじんして、痛いほど張り詰めた何かが私の理性をついに飲み込んでしまったのです。
 どろどろになった下着越しに触れる感覚でさえ、今の私には物足りないものでした。すぐに触れるだけではもう満足できないと悟った私はオチンチンに吸い付いたまま両手で下着を乱暴に下ろします。その瞬間、どろどろと糸を引いた粘液が私のそこから零れ落ち、床に幾つもの染みを作りましたが…もう私にはそれを気にしている余裕もありません。

 ―あぁ…♪ここ…ここをずっと触りたかったんです…っ♪

 そこに触れられるということが幻ではないかと確かめるように私はゆっくりと手を近づけました。そして…どろどろになった粘液を吐き出しているそこに触れた瞬間、私の身体に電流が走ったのです。

 「きゅうううううんっ♪」

 それは今まで味わったことの無いはずの感覚でした。そこは普段から滅多に触らないはずの場所ですし、あの疼きを経験した時からは理性がそれを押し留めていたので、触っていません。けれど、そこから頭の先へ電流でも流し込まれたような独特の感覚は私にとって記憶は無くとも、馴染みのあるものでした。

 ―何処で…?何処でこれを味わったのでしょう…?

 しかし、そんな思考も物足りない感覚にすぐに流されてしまいました。
 直接触れるだけでももう駄目なのです。触れただけで勿論、足ががくがく震えるほどの電流が走ります。どろどろとした粘液は奥からさらに流れてきますし、本来はこれで十分なはずなのです。

 ―だけど…これじゃないんです…っ♪これじゃ足りないんです…っ♪

 ピンク色に染まった衝動はどんどんと私をそれへと駆り立てていきます。

 「ひゃあああっ♪んひゅ…ぅ♪」

 そこを内股のように撫で擦るとさらに強い電流が走ります。けれど、これも全然物足りません。変な声が口から漏れるのもお構いなしに、もっともっとと私を追い詰めていくのです。

 ―あ…こ、声…?

 気がつくと私はご奉仕…いえ、浄化を中断していました。彼の股間に顔を埋めたまま、オチンチンに触ることも無く、舌で撫でることもせず、嬌声をあげるだけだったのです。私のそこから走る感覚は今まで欠かしたことが無い彼の浄化でさえ中断させてしまうほど、私の身体を蝕んでいました。

 ―『浄化』…してあげないとぉ…♪

 しかし、私の指は蠢くのを止めず、私に更に変な叫び声を上げさせるのです。その度に、私の身体は痙攣し、オチンチンを『浄化』してあげることが出来ません。それでも私は必死にオチンチンを口に咥えますが、動かす前に叫び声をあげて、口からオチンチンが飛び出てしまうのです。

 ―あぁ…駄目…こんなのぉ…♪

 「ネリー…?」

 いきなり叫びだした私を心配してくれているのでしょう。私の耳に彼の声がはぁはぁと言う荒い吐息と共に届きました。私はそれに答えようと口を開きますが、そこから飛び出すのはピンク色の声だけなのです。

 「やぁぁ…♪こんなの…やぁぁ…っ♪」

 ―だって、私が…『浄化』しなければ、マークは穢れた魔物にぃ…♪

 けれど、私の指は嫌がるような私の言葉とは違い、どんどん擦りあげるのを早くするのです。しかし、私の中の何かはもうそれだけでは満足できなくなり、物足りなさそうにさらに指を蠢かせ…そして、ついに『その中』へと辿り着きました。

 ―じゅぷ…♪

 それはえっちな音でした。どろどろになった液をたっぷりと吸い込んだ下着を指で押したって、こんなえっちな音はしなかったでしょう。聞いているだけで、顔を赤らめてしまいそうなほどえっちなその音と共に私の中に『それ』はやってきたのです。

 「んきゅうううぅ♪」

 それは電流なんてものではありませんでした。例えるなら雷と言うほうが近いでしょう。足の間から脳天まで一気に突き抜けるようなその感覚は、さっきまでとは比べ物になりません。我慢なんて出来るレベルをあっさりと超えて、『浄化』しなければいけないという私の想いすらあっさりと流してしまいます。そうなると私の指を遮るものは何もありません。自然、私の指はもっとこの激しい感覚を味わおうと『その中』へと指を出し入れするのです。その度に私の指は火傷しそうなほどの熱と四方八方から扱く様に絡みつくえっちな『何か』に襲われ、私の思考をさらにピンクに染め上げるのでした。

 「マークぅ…こ、これ変ですっ♪私…おかしくなっちゃいましたぁぁ♪」

 こんな…こんなどこかに飛んでいきそうな感覚を味わうなんて、きっと病気なのです。だって、天使である私がこんな風になるなんてありえないのですから。だから、これが間違いなく何かの病原菌の所為なのです。

 ―だ、だったらマークに見てもらわないとぉ…♪

 その想いはどろどろに蕩けた私の四肢に少し力を取り戻してくれました。ふらふらになった手足に力を入れて、私はベッドで横たわるマークの顔のほうへと腰を突き出して、『そこ』を広げます。

 「マーク…っ♪ここ見てくださいぃぃっ♪ここっ……ここが変なんですぅぅ♪」

 広げると『そこ』は今までに無いほどどろり、と液体を漏らしました。マークのお腹に広がるほど盛れ出たそれは今までの透明な粘液とは違い、若干、白く濁っているのです。きっとこれがさっきから私をおかしくしている原因なのでしょう。そう思った私はそれを掻き出そうと、指を蠢かしました。しかし、指を動かすたびに走る雷に邪魔される上に、それは掻き出せば掻き出すほど私の奥から流れ出てくるのです。

 「ひゅぅぅ…っ♪嘘ぉ…♪これ何ですかぁっ♪何の病気ですかぁ…ぁぁぁっ♪」
 「ネリー…それは…っ」

 じぃっと興奮して私の『そこ』を見つめるマークの視線を私ははっきりと感じました。刺すようにさえ感じるその視線は、はっきりと熱を持っていて、私の中の衝動をさらに高めるのです。

 「沢山見てくださいっ♪診察ぅ……し、診察してくださいぃぃぃっ♪触って、動かしてっ確かめてくださいっっ♪」

 無論、マークの身体は今も私の力によって身動き一つ取れません。けれど、私はそれが欲しくて溜まりませんでした。マークの視線が、指が、舌が、そして彼の『何か』が欲しくてたまらないのです。

 「指でっ舌でっ沢山弄くって…一杯、目で見てぇ…診察してくださいぃ♪お、お願いですから…これを治してぇぇぇ♪」

 きっと今の私の姿はとてもみっともないものなのでしょう。けれど、それを自覚して尚、止めようと言う気さえ起こらない所か、寧ろ、その感覚がさらに私を燃え上がらせるのです。そんな状態で我慢なんて出来るはずがありません。激しく弄くる指はもっと彼の視線を受け止めようと『そこ』の皮膚を大きく指で広げました。

 「どうですかぁぁ♪ここ、変でしょう…?真っ赤に腫れて熱いんですぅ…っ♪」

 その瞬間、彼の視線が直に『そこ』に突き刺さりました。皮膚越しでさえ、私の衝動を燃え上がらせていた彼の視線に晒されたそこは、さっきよりも強い雷を私の身体に走らせるのです。そして、私はその雷を皮切りにどんどんと、浮き上がるような感覚に支配されました。

 「あぁぁっ♪これ…これなんですかぁぁう、浮きそうですっ飛びそうですっ…♪」

 私の翼は大分良くなって来ているとは言え、まだまだ完治しているとはいえません。少しの制御程度ならば効くようになりましたが、私の身体を浮き上がらせるような力を取り戻すにはまだ至っていません。それに例え、翼が完治していたとしても、身体の制御が出来ないような状態で飛行できるはずないのです。けれど、私の身体は無理やり空へと連れて行かれるような感覚に包まれて、抵抗しようにも指以外の全てに力が入りません。

 「飛ぶっ私、飛んじゃいます♪いやぁぁあああ飛びたくないんですぅうう♪」

 だって、浮き上がりそうになるたびに、私の身体はどんどん敏感になっていくのです。もう私の身体は『そこ』しかないように、『そこ』から溢れる感覚で支配されているのですが、それがどんどん増していくのです。まるで身体全てが消えていってしまうような感覚に満たされてしまうのです。それに私は本能的に恐怖を感じました。

 「助けてっ助けてくださいマークっ♪私…私ぃぃぃ♪」

 恐怖に逃れる為に彼の名前を呼んだ瞬間、私の中の何かがついに弾けました。飛び上がるのを阻止しようと必死に地面にしがみ付いていたそれは全て流されてしまい、私の身体から最後の力までも奪い去ってしまうのです。

 「いやあああああああああ♪」

 ぴーんと背筋を後ろに倒し、天井を見る私の口からはどろりとした唾液が零れ落ちました。しかし、今の私にそれを知覚する余裕さえありません。体中を走る感覚は、そこら中で暴れ、弾け、今までのそれがまるでお遊びであったかのように私の体中を蹂躙していくのです。その感覚に私の中の全ては翻弄されるだけで、感覚に応えるように筋肉を震わせるだけなのでした。
 びくんびくんと体中を震わせる度に満足したように私から出て行くその感覚が全て消えたのはおそらく現実には五分も経っていないのでしょう。しかし、私にとっては、被虐に満ちたその時間は一時間にも匹敵していたのです。

 「…あ…♪ひゅ……ぅ♪」

 口から漏れる吐息に特に意味はありません。けれど、私の口が意味の無い音を吐き出すのを止めるのは、もう少し先になりそうでした。何せ口にさえ力が入らず、閉じることさえまだ出来ないのですから。

 ―あぁ…♪こんな感覚が私の中に眠っていたなんて……っ♪

 疲れきって陶酔にも似た感覚の中で、ようやく私の理性は少しずつ起きだしたようでした。指先はようやく私の意思で動くようになり、倦怠感の中、彼の胸の方へと倒れこみ、身体を預けます。

 「あの…大丈夫…?」
 「はい…大丈夫です…」

 私の頭の少し上からかかる彼の声にそう応えましたが、あまり大丈夫とは言えない状態でした。指先だけでなく、身体にも力が入るようになりましたが、ちらちらと燻る様な衝動は私の中にまだ強く残っており、再び燃え上がるときを待っているのですから。今は収まっていますが、切欠さえあれば何時でもそれはさっきまでと同じように燃え上がるでしょう。

 ―…あ…この姿勢って…。

 彼の胸に完全に密着している私のお腹に当たる熱いものは間違いなく、マークのオチンチンでしょう。中途半端に終わった『浄化』に抗議するように震えるそこは、未だに強い力を誇っており、汗まみれの私の白い服に不満そうに押し付けられていました。

 ―あぁ…早く『浄化』してあげなければ…。

 中断していた『浄化』を行わなければ、彼もまだ辛いままなのです。だから私は、彼の『浄化』を再開しようと腕に力を込め、再び、彼のオチンチンへと降りていこうとしました。けれど、下腹部越しに感じるその熱にまるで私は縫い付けられたように動けなくなってしまいます。

 ―どうして……ここがまたこんなに疼くのでしょう…?

 彼の下腹部からオチンチンまでの場所はどろどろとした私の粘液で塗れていました。さっきの私の行為で盛れ出たのでしょう。それ自体は、さほど驚くことではありません。しかし、そこからは今までに無いほどのえっちな匂いが、魔物の強いフェロモンが、甘いミルクのような匂いがします。
 さらにそれだけではなく、彼のオチンチンと密着した箇所がきゅんきゅんと疼き、再び私の身体の衝動に油を注ぎ始めました。

 「あぁ…♪…マークぅ…♪」

 彼の名前を呼んだ私の声は自分でも聞いたことの無い声音でした。まるで魔物が男を誘うときに使うような媚びに塗れたその声に、私自身の衝動も激しく揺さぶられ、どんどんと燃え上がっていくのです。それを少しでも身体から逃がそうと身じろぎした瞬間、マークが小さく呻きました。

 ―あ…そうか…これも気持ち良いんですね…。

 オチンチンは基本的にとても敏感な器官です。どくどくと律動するそこを手で扱き上げるだけでも、マークは気持ち良さそうな声を漏らすのですから、私の白い衣服を擦りつけるだけでも十分気持ちいのでしょう。特に、不本意ながら、彼のオチンチンは少しの間、焦らすことになってしまったのですから、その気持ちよさはさらに上がっているに違いありません。

 ―このままずりずりしてあげたら悦ぶでしょうか…?

 本当は今すぐ『浄化』してあげたいですが、『浄化』するにはまだまだ身体に力が戻っていないのです。ただでさえ焦らしてしまっているのですから、先に一度、射精に導いてあげるのもいいのかもしれません。そう思って、私はそのままお腹をオチンチンに押し付けるようにごりごりとこすり付けます。

 「あぅ…ね、ネリー…?」
 「これ…気持ち良いでしょう…?先に出させて上げますね…♪」

 困惑したようなマークの声に応えてずりずりと撫で上げます。その度に彼は「はぅ…」や「はあ…」と言った気持ち良さそうな声を上げてくれるのでした。私はそれが嬉しくて、もっともっと、と激しくしていきますが、段々、二人の潤滑油であった粘液がなくなって、上手く、彼を気持ちよくしてあげることが出来ません。

 ―無いならば注ぎ足せば…いえ、擦るのも同時にやってしまえば注ぎ足す必要も無いですね…♪

 だから、私は身体を起こして、服の裾を小さく摘み、彼のオチンチンに跨りました。そのままさっき沢山粘液を吐き出した私の『そこ』をオチンチンの茎へ押し付け、前後へと擦りあげるのです。

 「ネリー…っ!それは…だ、駄目だ…っ!」

 何故かそれにマークはとても焦って私を振り落とそうと腰を動かしました。けれど、私の身体はそんな彼の動きにお構いなしに腰を前後を擦りあげるのです。だって、その動きは既に私に制御できないものになっていたのですから。敏感な『そこ』をオチンチンで擦る感覚はすぐに私の衝動へと飛び火して、私の身体の制御奪ったのです。

 ―これ…好きぃ…っ♪

 熱いオチンチンで、熱い『そこ』を擦るのは指とはまた違った感覚でした。ふわふわと溶かされるような暖かさと、擦るたびに走る電流の二つがどんどん強くなって、私を包み込んでいきます。それはさっきまでの蹂躙するような激しいだけのものとは違い、激しい中に優しささえありました。

 「はぁ…っはぁ…ぁ♪マーク…これ気持ち良いですか…っ♪」

 ずりずりと擦るたびに、とろとろと潤滑油が溢れ、どろどろにされたオチンチンは今にも暴発しそうなくらい震えているのですから気持ち良くないはずが無いのです。けれど、私は、それでもマークに聞きたかったのです。こんなに素敵な行為を拒んだマークに『気持ち良い』と言って欲しかったのです。
 けれど、マークはそれに応えてようとはせず、ひたすら私の腰から逃げようとします。

 「ネリー…っ!君は分からないかもしれないけれど…これは駄目なんだよ…っ」
 「何が駄目なんですかぁ…?こんなに…気持ちよさそうじゃないですかぁ♪」

 良いながら腰を振るうと小さくマークが呻きました。その姿がとても可愛かった所為でしょうか。私の下腹部の奥がきゅんきゅんと激しい疼きを再び取り戻し、じゅるじゅるとえっちな音を立てながら、さらに強くオチンチンに吸い付くのです。

 「もし、入っちゃったら…っ」

 ―入る…?何が入るのでしょう…?

 心の中で首を傾げながらも私は、震える彼を射精へと導こうとより激しく腰を前後に振るいます。その感覚は、さっきほど激しいものではなくとも、私の思考を奪い、さっきの疑問ごと何処かへと押し流してしまいました。

 「ホント…駄目なんだよ…っ」

 そう言ってベッドの撓りを利用して逃げたマークの動きと、亀頭の先を撫で上げていた私の腰の動きが丁度、重なりました。そして…その瞬間…

 ―…じゅぅぷぅ♪

 さっき指を『そこ』を入れたのと似たような音が私の耳に届いたような気がしました。…いえ、実際は届いていたのでしょう。けれど、私はそれを理解する余裕もないまま、体中を襲う感覚に叫んでいました。

 「ああああああああああああああああっ♪」

 それは言い知れない感覚でした。私の奥まで熱い何かが蹂躙しているような、押し広げているような、何か膜のような物を破ったような感覚です。けれど、そこから連鎖するように身体中に広がる感覚はさっきの雷とは比べ物になりませんでした。体中の神経を直接、撫で上げられているような感覚は、強過ぎて不快ですらあったのです。

 ―嘘…なにこれえええええ♪

 勿論、私は反射的に逃げ出そうとしました。腰に力を入れて、じたばたと手と足を動かそうとします。けれど、私の中に走る感覚はあっという間に私を無力化して、思い通りに手足を動かさせてくれないのでした。自然、そうなると下手に抵抗して身を捩る分、私を貫いている熱いもの…彼のオチンチンは私のお腹の中で擦れて、さらに強い刺激を私に与えるのです。

 「ひゃあああああっ♪動いちゃやああああああっ♪」

 勿論、まだまだ身体に力が入らない上にベッドの上に押さえつけるように私が乗っているマークは殆ど動けるはずがありません。動いているのは私なのです。私の身体なのです。けれど、私の身体なのにまったく言う事を聞いてくれず、下手に逃げようとする度に、こりこりとした奥の部分と亀頭が擦れあって私の身体を再び身動ぎさせ…まるで無限に続く地獄でした。そしてそんな私を本当の地獄へと突き落とす為に、再びあの感覚が私を襲おうとしているのです。

 ―あぁあああああ♪また…またあれが来ちゃう…っ♪飛んじゃうぅぅっ♪

 しかし、さっきのアレと違うのはそれがさっきとは比べ物にならないほど、大きく膨れ上がろうとしていることでした。まるで引いた分、大きな津波が町を襲うように、私の目の前で膨れ上がるその感覚は貪欲に私を引きずり込み、解放の瞬間まで捉えて離さないのです。

 「やああああああああああああ♪」

 そして私に襲い掛かるのは一瞬の出来事です。天災のように私の身体を駆け抜けたその感覚は一気に私の身体を覆い、一切の抵抗も許しません。股間から何か透明な液体が凄い勢いで噴き出し、がくがくと震えるだけが私の身体に許された唯一のものでした。

 ―ああああああ♪震えちゃ駄目ぇええええ♪

 そしてがくがくと震えるたびにまた私の中でオチンチンを擦れ合うのです。そして、その刺激でまた力を蓄えた波が私をさらに高いところへと運ぼうとするのでした。

 「あひゅ…あひぃ…♪」

 そして私にはそれに成す術もありません。指でのあの感覚にさえ耐え切れなかったのですから、それの何倍、何十倍にもなる波に耐え切れるはずが無いのです。ただ、震えて、蹂躙され終わるのを待つことだけが私に出来る唯一の抵抗で……だから、私の股間から流れ出る黄色い液体を止める事を私には出来ませんでした。

 ―あぁ…♪私…マークの上で…マークに見られながらお漏らししてますぅ…♪

 それはなんとも言えない感覚でした。好意を持っている相手の上で、何より恥ずかしい排泄行為をして衣服も彼も穢してしまう…それは恥ずかしい、と言う感情が最も近いのでしょう。けれど、それだけではなく、背筋を舐め上げられるようなぞくぞくとした感覚が私の身体を駆け巡るのです。そしてその感覚は私自身でも意味を理解できない声をあげさせるのでした。

 「あ……ひゃあ…♪」
 「…まったく…初めてなのに入れただけ潮吹いてお漏らしまでするなんて…ボク以上の逸材だねこの子」

 ―…誰ぇ…?

 唐突に後ろから聞こえてきたその声はマークのトーンより数段高く、相手が女性である事がすぐに分かりました。しかし、誰であるかまでは身体を震わせるしかない私には判別できません。

 「それにしても派手にイッたものだね…うわぁ…ベッドもびちゃびちゃじゃないか」

 その声の主はそう言いながら私の顔の前に立ちました。うつろな視界でもはっきりと見えるその青白い肌はどこか見覚えがあるのですが…朦朧とした私の頭はその持ち主を思い出してはくれないのです。

 「アイシャ…どうしてここに?」
 「あんなに激しく叫んでたら僕の病室まで届くよ。まったく…柄にも無く赤面しちゃったじゃないか」

 ―アイシャ…誰でしょう…聞き覚えはあるのですが…。

 そう考えた瞬間、私の耳にまるで鉄同士がこすれあっているようなおかしな音が聞こえました。それはここ最近聞いたような音で…この診療所で確かに聞いた音で……そう…あれは…あの魔物の病室で…。
 その瞬間、私の中で全てが糸になるようにそこに経っている相手の像が浮かび上がりました。

 「魔物…っ」
 「魔物…ねぇ。まぁ、間違っては居ないんだけれど」

 少しくすりと笑ったような声が私の耳に届きました。それがまた余裕に溢れていて、私の気にとても障るのです。

 「何しに来たのですか…っ!?また彼に手を出そうと…っ」

 威嚇するように強く声に力を込め、きっと睨みつけました。けれど、魔物はそんな私にペースを崩された様子はありません。寧ろ、そんな私の精一杯の抵抗を見ながら、愉しそうに手をぱたぱたを振るうのが前のめりに彼の胸へと倒れている私にも分かりました。

 「イきまくってへたりこんでる天使様に睨まれても怖くないね」

 ―ぎり…っ

 『イきまくって』と言う言葉の意味は分かりませんが、侮辱されたのだけは今の私にだって理解できました。穢れた魔物に、侮辱され、文句の一つも言いたいですが、今の私の頭ではまともな切り返しすら思いつかないのです。それが悔しくて小さく噛んだ歯の根からこすれあう様な音が聞こえました。

 「それより…手を出すって言うけれど、それは君のほうじゃないのかい?」
 「何の冗談を…っ!私がやっているのは神聖な『浄化』です!あんなに彼に沢山匂いをつけて貴方まで言い逃れするつもりですかっ」

 そうです。あんなに魔物のフェロモンさせて手を出していない方がありません。それなのに、言い逃れするだけでなく、人に責任を押し付けるなんて…っ!
 そう憤慨する私とは裏腹に、答える魔物の表情には同情の色さえ混じっていました。

 「…なるほど。そういうことか。君は今、自分のしていることがどういうことかさえ…今、自分の感じている感覚が何なのかさえ知らないんだね?」

 ―ゾクリ。

 その声に私の中の『何か』が身を震わせました。それに応えるように、熱くて熱くて仕方がない私の背筋に、ぞわりとした悪寒がせり上がってくるのです。

 ―これを聞いてはいけません…っ!

 そう私の『何か』が警告しますが、朦朧とした私の思考はそれを深く考えられません。警告を警告だと理解しては居ますが、それに対して、耳を塞いだりなどのアクションへと線が繋がらないのです。

 「ネリー!聞いちゃ駄目だ!!アイシャ…君も何を言うつもr「悪いけど、今は黙っててくれるかな」

 警告したマークの身体にすっと魔物が手を触れた瞬間、彼の声はそこで途切れてしまいました。何が起こったのか不安になって、彼の顔を見上げると呆然としたように口をぱくぱくと開け閉めしています。

 「か、彼に何をしたんですか!?」
 「君と同じことだよ。少しの間、口を効けなくしただけで身体に害は無いはずさ」

 そう言って、魔物はベッドの脇へと腰を下ろしました。その瞬間、私の目に青白い肌だけでなく、黒い翼や、鎖で繋がれて結ばれているだけの薄い下着が飛び込んできます。黒い翼は私の真っ白な翼とは違い、そこの見えない深淵のような暗さで、下着はシルクのような艶やかな黒は扇情的で魔物らしいえっちなものでした。

 「さぁ…何から話して上げようか…いや、そうだね。やっぱり最初は…その行為の意味から『教えてあげる』べきなんだろう。親愛なるお母様に代わって」
 「魔物の貴方がお母様とか言わないでください…っ!」

 からかうようなその声に私は声をあら上げました。それでさえ、魔物にとっては愛らしい小鳥の囀りにしか聞こえないようで、優しく私の頭を撫でるように触れてくるのです。

 ―こんな…魔物に触れられるなんて…っ!

 勿論、嫌に決まっています。えっちな魔物のすることなのですから、えっちな事に決まっているのです。けれど、その手は私が思っているようなえっちなものはまったくなく、母が我が子を優しくあやす様な優しささえあるのでした。その優しさが今も私の中で燻り続けるあの感覚を少しずつ解して咀嚼させてくれるような感覚さえあるのです。私は…イメージの中の魔物と、目の前の魔物の暖かさが一致しないで、少しずつ困惑してきました。

 「君の今やっているのはね。セックスやエッチと呼ばれる性行為なんだよ」
 「性…行為…?」

 そんな私を安心させるように、魔物は優しく私に囁きました。するりと理性を飛び越えて、私の中に入り込んでくるような魔物の言葉は…きっと私を堕落させるためのえっちな言葉に決まっています。勿論、聞いて天使である私がどうにかなるなんてことはありません。しかし、拒もうとする私の心とは裏腹にその声はどんどんと私の中へ入り込んでくるのです。

 「そう。魔物が男の精を求める時にする行為…男性器を女性器の中に…まぁ、女性器ではない場合もあるけれど、そういう行為。その中でも多くの魔物が男を襲うときに使う騎乗位と言う形だね」

 ―この魔物は何を言っているのでしょう…頭がくらくらする…。

 目の前の魔物が言っている言葉が理解出来ないで、私は震える指先で額を押さえました。

 ―え…?性行為…?魔物…?…襲う…?

 何度も何度も頭の中で反芻しても、それらの意味が私の中では理解できませんでした。…いえ、正確に言えば何を言っているのか理解は出来ているのです。けれど、その言葉の指す意味を私は認めたくありませんでした。だって…だって…そうでしょう?

 ―私がまるで魔物みたいなんて…そんなこと…あるはずがないのですから。

 「わ、私を魔物と一緒にしないでください…っ」
 「何を言っているのさ。君はもうボクたちの仲間だろう…?」
 「そ、そんなことありません!私はお母様の元から遣わされた天使で…」
 「そのお母様のところへ戻れなかったのがその証拠さ」

 そう言いながら魔物は私に背を向けました。そして見せ付けるように少し腰を浮かせて、私の目の前でぱたぱた、と翼を動かすのです。

 「見て…ボクのこの黒く染まった翼を。綺麗だろう…?青白く染まった肌も吸い付くようで気持ち良さそうだろう…?大事なところしか隠さないこの服もマークは大好きで、時々だけど、じぃっと見つめてくれるんだよ…♪…でもね。そんなボクも最初は君と同じ白い肌と白い羽根を持つ天使だったのさ」

 ―…天使…?こんなえっちな格好をした魔物が…?

 私の中でのイメージの天使は清らかで清楚で道徳的な神の使いです。目の前の魔物のように、淫らで、いやらしく、本能的なケダモノでは決してありません。こんな天使なんてあるはずが…いえ、あってはいけないのです。

 「そんな…っそんなことあるはずがありません!お母様に力を分け与えてもらった天使が魔物になるなんてありえるはずが…っ」
 「ありえないものなんてありえない、んだよ。特にこの世界では。君もよく考えてごらんよ。マークを抵抗できないようにして一方的に男性器を舐め、射精を強要し、あまつさえ彼の意思も問わず一人勝手に性交する…それの何処が魔物じゃないって言うのさ?」

 魔物の言葉にさっきの私のしていた事が脳裏に浮かび上がってきました。

 ―何時もの様に、とマークの抵抗力を奪い
 ―浄化の為と射精を強請り
 ―射精させるために性行為さえしてしまう…。

 それは私が魔界で嫌と言うほど見せ付けられた本能的な魔物の姿そのものでした。でも、結果的にはそうであっても違うのです。違うはずなのです。だって、私は彼を綺麗にする為にしていただけで…天使で、お母様の遣いで…っ!!!

 「彼は優しいから何も言わなかっただろうけれど、君は既に魔物に汚染され、どんどんそれに近づいているんだよ。君が邪魔したあの日からボクと何もしていない彼に魔物の匂いがついていたのも…君の発情した匂いが移っているだけなんだよ」

 その声はさっきまでと同じようにとても暖かいものでした。そして私の頭に触れる手も、とても優しいままなのです。けれど、だからこそ、その言葉を聴かなかったことには出来ないのです。胸の中に染み込んで、振り落とそうとしても、まったく落ちないのです。その意味を理解したくなくて、駄々っ子のように首を振るっても、ずっと付きまとってくるのです。

 ―魔物…?私が…こんなやらしい匂いを振りまいてる魔物…?

 反芻するようなその言葉で自分の中の『何か』をがらがらと崩壊していくのを感じました。まるで今の『私』が全部崩れていってしまっているようなその感覚は耳を塞いで、叫んでも、目尻から涙が流れても、止まることは無いのです。

 「いやぁあああ…いやぁああああああっ」
 「ふふ…っ♪アイデンティティーが崩壊し始めたかな…?でも、まだまだこれからだよ…じっくりと堕としてあげる…♪」

 そう言って叫び、耳を両手で塞ぐ私の後ろに魔物がすっと回りこみました。けれど、今もなお、崩壊し続ける私はそれを目で捉えていても、知覚する機能を失っていたのです。

 「最初は辛いよね…ボクもそうだったから分かるよ…。だから…少しでも辛くないように、全部教えてあげるよ…♪」

 後ろに回りこんだ魔物が私の耳元でそう囁きます。まるで母親が眠れない子供に寝物語を聞かせるようなその声音は優しくも、淫らな色が混じり始めていました。

 ―あぁぁ…き、きっとエッチなことをされてしまう…っ堕とされちゃう…っ。

 そのまま、私の小さな胸に触れようとする手から逃げたくて、私は身体の身を捩りました。それは、殆ど自己防衛本能に近いもので、崩壊する自己を必死で繋ぎとめようとする私の意図したものではありませんでした。けれど、その行為の結果、亀頭と私の奥が激しくこすれあって、私の身体にまたあの感覚を走らせるのです。

 「きゅうううぅぅう♪」
 「ふぅ…こんなに感じて…。馴れないまま何段も飛ばしてセックスするからだよ」

 言いながら脱力した私の胸に手を伸ばした魔物はそのまま、自分の身体に凭れ掛からせるように引き上げました。それに私は抵抗することが出来ないまま、好きに弄られてしまうのです。

 「最初はね…こうやって胸を揉むだけでも十分気持ちよくなれるんだから…♪」

 魔物の手は私の胸で撫で始めました。まずは左右から中心へと揉み解すように…硬く張った乳首には手を触れないまま、何度も何度も撫で上げるのです。それはさっきまでの体中で弾ける様な激しい感覚ではなく、体中を伝うように広がる熱のようでした。しかし、その熱は決して嫌なものではなく、あの感覚に蹂躙された私の身体を癒すように広がっていくのです。

 「じんわりしてきたかな…?」
 「はぁぁ…♪」

 魔物の言うとおり、私のそこはとても熱くなってきました。最初に股間でオチンチンを撫でている時に感じた熱とも似ていますが、癒すような熱が身体中に広がると、今度は物足りない感じが私の中で強く溜まってくるのです。

 「ふふ…♪物足りない…?じゃあ、そろそろ次のステップに行こうか…♪」

 言いながら魔物の指は撫で上げる最後に私の乳首を少しだけ撫で過ぎて行くのです。硬く張ったそこは親指と人差し指で少しだけ触れるような感覚にさえ飢えていたのか、触れるたびに嬉しそうに震えるほどでした。同時に私の中にも、暖かく広がるだけの熱に少し強い電流が追加されるのです。けれど、それはさっきまでのような激しいだけのものではなかったのでした。

 「はぁ…ふぁぁあ…♪」
 「ふふ…覚えてね。今の感覚が『気持ち良い』とか『快感』って言う事なんだよ…」

 ―気持ち良い…?これが…?

 確かに熱と共に身体に広がる電流のようなものは心地良いものでした。溶かすような熱に電流が与えるアクセントは、まるで緩急をつけるようでより私を夢中にさせているのです。

 「さぁ、言ってみて…気持ち良いって…♪」
 「き…気持ち良い…」

 導かれるままに言ったその言葉は私の中にすとんと落ちてしまいました。今まで味わった感覚を明確に表す言葉を与えられたのですから当然です。
 けれど…それは『私』を溶かす劇薬でもあったのです。『気持ち良い』と言う名前を与えられ、受け入れられ始めたその感覚はさっき吹き飛ばされ、再構成されるのを待っていた『私』を再生不可能なほどに溶かすようでした。
 そしてそんな私をさらに追い詰める為に、また魔物は私の耳元で甘く囁くのです。

 「何処が気持ち良いの…?」
 「胸ぇ…胸が良いんです…っ」
 「違うよ…ここはね…オッパイって言うんだよ…♪」

 ―オッパイ…オッパイなんだぁここ…♪

 普段であればきっと抵抗していたでしょう。こんな風に魔物の言葉をそのまま受け入れるなんてありえません。けれど、ボロボロにされた『私』は新しい拠り所を求めるように、魔物…いえ、アイシャの言葉をまるで水を吸うスポンジのようにどんどん受け入れてしまうのです。

 「オッパイ…オッパイ気持ち良いですぅ♪」

 陶酔のまま言ったその言葉に、『私』は再び溶かされて、なくなっていきます。まるで自分で自分を虐めて、生まれ変わるようなその感覚は背徳的で、私をどんどん夢中にさせるのでした。

 「ちゃんと言う事を聞く良い子にはご褒美あげないとね…♪」

 言いながらアイシャはだらしなく開く私の唇に後ろから吸い付きました。そのまま舌先で快感に震える私の舌に吸い付いてくるのです。

 ―あぁ…私のファーストキス…。

 突然、奪われてしまった『初めて』に困惑しながらも、私の身体は一切抵抗しようとはしませんでした。だって…だって、とっても気持ち良いんです。優しく絡み合うその舌も、流し込んでくる甘い唾液も、全部が全部、私を溶かすような優しい気持ち良さなのですから。マークに捧げたいと思っていたので、残念な気持ちこそありますが、抵抗できるはずも無いのです。

 「ふゅ…ひゅう…♪」

 だから、私は甘い声を出しながらアイシャのキスに応えました。優しく教えてくれるように私を受け入れて、リードしてくれている彼女のキスを追いかけ、絡み合い、甘い唾液のお礼に唾液を渡すのです。その度に二人の舌でねちゃくちゃと粘液同士の交わる音が聞こえてきました。

 ―なんてえっちな音…♪

 聞いているだけでどんどんと興奮してくるような音と、それ以上にエッチに絡まりあう二人の舌…そして絡み合う時はオッパイを、舌が離れたときには乳首を撫でるアイシャの指はどんどん緩急をつけて、私を気持ちよくしてくれるのです。

 −女同士…なのにぃ…♪

 既に、相手が穢れた魔物であるという感覚は私の中から消え去っていました。代わりに、女同士でキスしているというアブノーマルな状況が背徳感を助長させるのです。

 「んちゅ…♪ちゅ…♪」

 そして興奮しているのはアイシャも同じようでした。すぐ目の前にある彼女の顔は青白い肌を赤くして、「ふぅんっ♪」と甘い息を沢山吐いて、私のキスに付き合ってくれているのです。その姿はとても倒錯的で…同性から見ても綺麗でした。そんな彼女に夢中になってたっぷりキスをして…舌が痺れてきた頃にようやく離れた私たちの唇からはお互いの唾液が混ざり合って出来た一本の線が引かれてマークの身体へ落ちて行ったのです。

 「ふふ…♪思ったとおりやっぱり君は才能があるね…♪」

 朱を帯びた頬のまま嬉しそうにアイシャはそう言いました。それは妹の成長を喜ぶ姉のような表情で、私も少し嬉しくなってしまうのです。

 ―けれど…私は一言文句を言わなければいけません。

 「…私…ファーストキスなんですけれど…」
 「…え……?」
 「ファーストキス…マークに捧げるはずの初めてのキス…」

 恨みがましく見つめる私の視線に初めてうろたえたアイシャは気まずそうに頬をかきながら視線を逸らします。そんな様子に少し、心が晴れる気もしましたが、やっぱり悔しい気持ちの方が強いのでした。…だって、女の子にとって、やっぱり『初めて』と言うのは特別なのです。一生思い出に残るものなのですから。

 「ここまでやってるものだからとっくにしてるものかと…」

 ―じぃぃぃぃ

 「いや、なんていうか、その…女ノ子同士ダトノーカウントダカラ大丈夫ダヨ…?」

 ―じぃぃぃぃ

 「…ごめん」

 ついに私の視線に屈したアイシャが頭を少しだけ下げて、謝りました。その様子は本当に気まずそうで、許してもいいと思う気持ちが出てくるのです。けれど、その気持ちを声に出そうとする前に、アイシャは私の身体に再び手を這わせました。

 「ひゃっ…♪」
 「代わりにもっと気持ちよくしてあげるね…♪」

 言いながら、アイシャの手は私の身体を這い降りていきます。小ぶりで敏感なオッパイからお腹を抜けて、マークのビンビンになっているオチンチンが埋まる下腹部へ。そしてそこに両手を優しく置いて、私の耳元で囁くのです。

 「ここ…オチンチンが下から押しあげてる所は何かな…?」
 「わ、分かりません…」
 「そう…。お母様はそんなことさえも教えないようにしたんだね。そんなことしても堕ちる時に余計辛くなるだけなのに…」

 少し悲しそうに目を伏せて、アイシャは優しくそこを撫でてくれました。それだけで興奮して敏感になった私の身体は快感として受けとって、熱を広げるのです。

 「ここはね…子宮だよ。男の精を受けて、子供を作る女の一番大事なトコロ。そしてメスにとっては、一番気持ち良い素敵なトコロなんだよ…♪」

 ―子宮…ここが…?

 その知識だけはありましたが、何処にあるかまでは教えてはもらっていなかったのです。ここに男性の…マークの精が入れば私と彼の子供が出来てしまうのでしょう。

 ―あぁ…♪なんて…素敵…♪

 大好きなマークと子供を作れるなんて、なんて素敵なんでしょう。それだけじゃなく二人で気持ちよくなれるなんて…素敵過ぎます…っ♪

 「さぁ…目を閉じて…♪」

 アイシャに言われるまま私は眼を閉じました。私が目を閉じたのを確認していたのでしょうか。目を閉じて、少しの間があった後、下腹部を意識させるようにアイシャの細い指が押すのが分かります。

 「今ここにあるマークのオチンポの先から溶かされちゃいそうなくらい熱い精液がどぴゅどぴゅ吐き出されて…♪」

 ―ぞくぞくっ

 「びくびくしながら、子宮のお口を擦りあげて…♪」

 ―ぞくぞくぞくっ

 「ここがマークの精液で一杯になっちゃうんだよ…♪」

 ―ぞくぞくぞくぞくっ♪

 それは甘美過ぎる妄想でした。瞼の裏にも移りこむそのイメージは劇薬にも近く、私の身体をどんどん蝕み、その瞬間を心から欲させるのです。ようやく求めていたものの名前を知った子宮の疼きは爆発するように高まり、背筋はさっきも感じたこそばゆい様な感覚が湧き上がり、腰が勝手に上下動き出そうとするのです。

 「はぁあああああああっ♪」
 「ふふ…っ♪今度はどう…?気持ち良いでしょ?」

 アイシャの言葉の通りでした。さっきまでは激しい激流のようにしか感じなかったその感覚が今はとても気持ち良いのです。きっと気持ち良いという定義を与えられたのと、さっきの胸の愛撫で快感を快感として受け入れる土壌を作ってくれたからなのでしょう。

 「気持ち良いっ♪気持ち良いですぅうう♪」

 腰を上下するたびに私の頭まで着き上げてくるような気持ちよさは胸で感じる快感とは比べ物にならない激しさでした。けれど、それが気持ち良いのです。子宮と亀頭がぶつかる度に頭の中が白く弾けて、チカチカと星が瞬くような快感がたまらないのです…っ♪

 「たまらない…っ♪あぁぁっ♪こんなの初めてですううぅ♪」

 ぱちゅんぱちゅんと私が腰を下ろすたびに響く肉同士のやらしい音も、ゴリゴリと亀頭の反り帰しで私の中を引き出すような快感も、子宮感じる亀頭の力強さも、全部全部が初めての経験なのです。

 「ふふ…♪じゃあ、またレッスンしようか…♪何で…何処が気持ち良いの…?」
 「お、オチンチンで…っ♪オチンチンっ♪股の間が…子宮が気持ち良いんですっ♪」
 「違うよ…っ♪」

 言いながら動き続ける私をがっちりと、アイシャの腕が捕まえます。お陰で、私は思うように腰が動かせなくなってしまいました。どんどん気持ちよくなって昂ぶっているのに無理やり中断され、私は抵抗しようと身を捩りますが、快感に蕩けた腕などよりも彼女の方が力強く身動き一つ取らせてはもらえないのです。

 ―疼く…っ♪こんな中途半端なのだけじゃ疼いちゃいますっ♪

 そう伝えようとして後ろを向いた私の下腹部から、アイシャの手が再び撫で下りました。つつつ、と焦らすように指先だけで伝い、今度は私の股の間で止まります。そして、そのまま、彼のオチンチンに小さく触れました。

 「マークの男性器がオチンポ…♪そして…それが入っている君の女性器…この穴がオマンコだよ…♪」

 ―オチンポとオマンコ…ぉ♪

 それはとてもえっちな響きでした。聞いただけで、淫語だと分かるその響きは、私の中に染み込んで、じくじくと広がっていくのです。

 「さぁ…言って…言って沢山気持ちよくなって…♪」
 「お…お…オチンポで気持ち良いんです…っ♪オチンポでオマンコっ♪オマンコの奥の子宮気持ち良いのぉぉ♪」

 ―あぁぁ…言っちゃった…私、こんなやらしい言葉使っちゃいましたぁ…♪

 また『私』がどろりと溶けて消えていくのが分かります。けれど、私にとって、それはもうどうでも良い事でしかありませんでした。そんな事より…昔の自分が消えてしまったとしても気持ち良い事が、快感を得られることの方がもっとずっと大事なのです。そして恥ずかしい言葉を沢山使うと、とっても気持ち良いのです…っ♪

 「大好きなマークのオチンポ気持ち良いんですっ♪オマンコの奥まで熱くて、溶けちゃいそうでっ♪ゴリゴリ削られて気持ちよくて仕方ないんですうううっ♪」
 「ふふ…♪もう完璧堕ちちゃったね…♪」

 そう言いながらアイシャはすっと手を離してくれました。その瞬間、自由になった私の身体は再びケダモノのように快楽を貪り始めるのです。

 ―…いえ、私はもうケダモノですね…っ♪

 えっちに腰をふるって、マークの精液を強請る姿は魔物と変わりがありません。そして魔物である以上、私が言っていた通り、淫らで、いやらしく、本能的なケダモノなのでしょう。

 ―けれど…それが気持ち良い…っ♪

 見下していたケダモノに堕ちたことが、口からは幾らでもえっちな言葉が飛び出しちゃうケダモノになった事が、背筋がゾクゾクして頭の中がピンク色に染まっちゃうくらい気持ちいのです…っ♪

 「はいぃ♪堕ちましたぁ…♪私、身も心も完全に魔物になっちゃったんですぅ…っ♪」

 言いながら私はぱちゅんと腰を下ろした後、腰を前後に震わせました。私のオマンコや子宮は沢山出し入れさせられるほうが好きなようで、その動きに不満そうにきゅんきゅんと疼き、オチンポに吸い付きます。

 「マークっ貴方も気持ち良いですかぁ♪私のオマンコ気持ち良いですかぁ♪」

 勿論、彼は今も、アイシャの力の制御下にあり、話すことはできません。その証拠に彼の形の良い唇は今も、はぁはぁと興奮した息を吐き出すだけで、言葉を放つことはありませんでした。けれど、それでも、私は聞いてみたかったのです。この身を焦がすような快感が私だけのものではない、愛しい彼も味わっているものなのだという証拠が欲しかったのです。

 「何時でも出しちゃってくださいっ♪堕ちちゃった天使のオマンコにっ♪たっぷり中で出してくださいねぇ♪」

 私の言葉にオマンコの中のオチンポがぶるり、と震えました。きっと私のエッチな言葉の数々にマークも興奮してくれているのでしょう。その事実に私の中の興奮は更に燃え上がるのです。頭の中では沢山の淫語が錯綜し、もっと彼を喜ばす為にもっとえっちな言葉を作り上げようとさえしていました。

 「あぁぁっ♪良いんですね…っ穢れた魔物オマンコ気持ち良いんですねっ♪嬉しいっ大好きですうぅっ♪」

 言いながら私はマークの唇に顔を近づけます。そこは興奮の所為かとても艶やかで、物欲しそうに膨らんでいました。そして私は、そんな唇に沢山吸い付いてキスを落とすのです。

 「ちゅ…♪ふぅっ……ぅ♪まぁく…らいしゅきですぅ…♪」
 「……ちょっと妬けちゃうなぁ…」

 後ろから聞こえたアイシャの声には聞こえないフリをしながら私は一心不乱にマークの唇に吸い付きます。時折、唇を舌で舐めるとふるふると震えるのが、また私をその唇に夢中にさせるのでした。そして私を一番夢中にさせている彼のオチンポは、唇を蹂躙するだけのキスに興奮しているのかまた一回り大きくなったのです。

 「ひゅ…ぅ♪また大きくなりまひたよぉ♪」

 もう一杯でこれ以上広がらないと思っていた私のオマンコは、彼のオチンポにまた押し広げられました。オマンコの中の気持ち良いヒダヒダ全部を余すところ無く刺激するほどの大きさは快感に馴れた筈の私をまた浮き上がりそうな感覚へと連れて行くのです。

 「あぁぁ♪また飛んじゃいそう…っ浮いちゃいそうです…っ♪」
 「あぁ…イキそうなんだね…とっても気持ち良いから楽しみにするといいよ…♪」

 またあの体中蹂躙されるような感覚が来るのかと身構える私を安心させるようにアイシャはそう囁いてくれました。その言葉に私の中に一抹の不安だけを残して、恐怖のような感覚はすべて洗い流されていったのです。だって…彼女の言葉は今まで全部間違っていないのですから、それだけの信頼には値するのは当然でしょう。

 「イきゅ…?これがイきゅんですねっ♪まぁく…私イきまひゅっ♪たくひゃんみてくだしゃいぃ♪」

 浮き上がりそうな感覚に舌の滑舌まで奪われ、私の声はとても舌足らずなものになっていました。それだけでも気恥ずかしいですが、その気恥ずかしさを気持ち良さに変換してしまう私のエッチな身体はより高みへと浮き上がっていくのです。そして、彼のオチンポもそんな私に引き上げられるように、びくんびくんと震えはじめました。

 「まぁくもイきゅんれすねっ♪射精するんれすねっ♪」

 私の言葉に応えるようにマークの唯一自由が許されている腰がびくびくと震えました。私の子宮を目指すように、浮き上がるそれに応えるように私の子宮もどんどんと下へと降りてオチンポにちゅっちゅとキスをするのです。

 「あぁ、ちなみに…その状態で射精を膣で受けると間違いなくボクと同じようになるよ♪」

 夢中になって腰を振るう私の耳にそんな声が聞こえたような気がしましたが、私はそれどころではないのです。どんどんと高まる快感が私をさっきイッたのよりもはるかに高いところへと押し出している最中だったのですから。それに、たとえ何を言われていたとしてもきっと私は止まれなかったでしょう。例え、今の姿を捨てても、私はイキたかったし、イかせたかったのですから。

 「あぁぁぁ♪くりゅイキましゅ♪まぁくもイッてくださひっ魔物オマンコ孕ませてくだしゃいっ♪」

 イく寸前の私のオマンコはきゅんきゅん疼いて、抱きしめるようにオチンポを締め付けていました。裏筋に浮き出た血管から、オチンポの反り返し、亀頭のお口までまるで見えているように分かるほど密着したオマンコは射精を乞うように吸い上げます。

 ―早くぅ♪早くイってくださいっ♪

 その一念だけで快感で蕩けた腰を前後に振るう私についに根負けしたのか、びくんびくんと震えるマークのオチンポの先から熱い『何か』が飛び出してきて…私はそれを知覚した瞬間、ついにイってしまったのです。

 「イッくぅぅうううううううううううううううう♪」

 それは暖かいシャワーを何倍にも強くしたような感覚でした。暖かくて、優しくて、でも、激しい、それは、私の中の何もかもを巻き込み、飛ばし、飲み込んで、新しく生まれ変わらせる創生の嵐のようでさえあるのです。…いえ、それは創生そのものでした。かすかに残っていた私を全て飲み込んで、いやらしく生まれ変わった魔物の私だけを残す嵐なのです。

 「ひゅ…あぁぁ…♪」

 射精とイくのを同時に味わった私はぐったりと彼の身体に倒れこみました。その瞬間、脱力した私の股間からまちょろちょろと黄色い液体が漏れ出してきているのです。それは今回も我慢しようとしてもどうにかなるものではなく、マークとベッドを再び汚してしまいました。

 「ご…めんなさいぃ…♪」

 謝る余裕だけはかろうじてあるものも、身体に何も力が入らなくて、意識が閉じていくような気さえします。そして、閉じていく私の視界の端に移る手はじんわりと指先から青白くなっていったのでした。

 ―あぁ…私もアイシャみたいになってしまうんですね…♪

 それは決して嫌ではありませんでした。カラスのようで、不吉だけれど、引き込まれるような黒い翼…視線を捉える青白い肌…そして艶やかな下着のような衣服だけを着て、二人でマークを誘惑する…それはとてもエッチで甘美で…何より素敵な想像なのですから。
 そして私はそんな素敵な想像に包まれながら、目を閉じたのです。



                                    BAD END












 「あーぁ…またお漏らししてる…。これはお漏らし癖着いちゃったかなぁ」

 言いながらアイシャはベッドを備え付けのタオルでぽんぽんと叩くけれど…そんなものでどうにかなるものではないんだろう。…だって、気絶した今もちょろちょろと少しずつ漏らしているんだから。

 ―…これはベッドも布団も全部洗濯行きだなぁ…。

 それでも染みが落ちるか分からないレベルだし、最悪買い替えまで覚悟しておかなきゃいけないかもしれない。

 「それにしても…天使様の聖水を二回も浴びれるなんて…素敵なご褒美だね…♪」
 「本気で言ってるのなら、殴るよ?」

 ―あ、喋れる…。

 確認するように思わず口へと伸びた手も特に支障は無いように動くようだし、ネリーが気絶したから、魔術も解けたのかもしれない。

 「マークって大人しそうな顔をしてるくせにそんな趣味なんだ…?安心してね?ボク被虐趣味もあるから受け入れられるよ…♪」
 「そういうこと言ってるんじゃないって分かってて答えてるでしょ?」

 この期に及んでも悪戯っぽそうに笑って身を捩るアイシャの姿に怒る気も萎えてしまう。…ただ、代わりに若干、頭痛がするけれど。すっごく頭痛するけど。

 「さぁ…どうだろうね。でも、マークも罪作りだよね。こんなに可愛い子を堕としちゃうなんて」
 「突き落とした本人に言われたくは無いかな!!!」

 ―ネリーの好意には気づいていたけれど…魔物に染まった娘のそれだし、初めて優しくされた娘にありがちな恋に恋するものだと思ってた。

 だから、僕としてはのらりくらりとかわすつもりだったのに、アイシャに炊きつけられたネリーもどんどん魔物化が進んでいって押し倒されちゃうし…結局、本番までやっちゃうし…。

 ―ここまでエスカレートしたのは間違いなく目の前の堕天使の所為だと思う。

 「おや、君は全て人に責任を押し付けるつもりかい?男として最低だね」
 「ぐっ…」

 ―まぁ、確かに抵抗できないとは言え、特に対抗策も講じなかった僕の責任でもあるんだけど。

 しかし、正論とは言え、炊きつけたり後押しした本人に言われるとやはり理不尽なものを感じてしまう。

 「ふふ…♪それよりこの子をこのままにしとくと風邪引いちゃうよ」

 ―話を逸らしたな。

 愉しそうに笑うその顔はある程度、僕をイジめて満足したのだろう。それにまた頭痛を感じつつも率先して話題を逸らしてくれたのに僕は乗ることにする。…勿論、後で仕返しするのをしっかりと覚えておきながら。

 「そうだね。とりあえず…このベッドはもう濡れちゃってるし…」
 「シーツは?」
 「丁度、交換するつもりだったからそこにあるよ」
 「じゃあ、僕が取るよ。君はその子を起こさないように引き離してあげて」

 そう言いつつ僕は指出した方向へと歩き出すアイシャの後姿は小さく汗が浮き出ていて…それだけじゃなく、内股に透明な何かが伝っているのがすぐに見て取れた。

 ―これは…やばいかもしれない…。

 そりゃアイシャだって魔物娘な訳だから、目の前でこんな風に交わっていれば興奮もするだろう。ネリーをいじめている最中も僕の足で股間を擦ってオナニーの真似事をしていたとは言え、絶頂したとは思えないし、きっと今も欲求不満があの小さな身体の中で渦巻いている。

 ―そしてその欲求不満の解消を求める相手なんて僕しかいないわけで…。

 次の獲物は僕だということに気づいて、背筋がひやりとするのが分かった。別に何発でも出来る身体ではあるけれど、「出来る」のと「する」のはまったく違うんだから。

 「…マーク?」
 「あ、いや、なんでもないよ」

 目の前の危機が決して過ぎ去っていないのを実感して固まった僕を不審に思ったのだろう。小さくて形の良いお尻を誘惑するように振りながら後ろを振り向いたアイシャに僕は短くそう返した。

 ―そう。この危機を逃げるのにはスピードが命だ!!!

 素早くネリーをベッドに横たえてシーツをかけて、ネリーの着替えも一緒に持って洗濯に行けば良い。そして看病をアイシャに任せれば何とかなるはずだ!!!!

 ―………多分。

 自信は無いけれど、アイシャは今まで強引に僕に迫ったのは最初の一回だけだ。今回も逃げ切る理由さえあれば、何とかなる気はする。…気だけ、だれど。

 「ん……っ♪」

 そう小さく声をあげながら僕の上に身を委ねるネリーは身動ぎしていた。季節は春とは言え、愛液と涎で塗れまくって、扇情的に張り付いている衣服と一緒はやっぱり冷えるんだろう。けれど、その表情はとても満足そうで、まるで幼い少女のような童顔の天使が、頬を赤く染めて性的に満足していると言う光景が僕の中の倒錯感を掻きたてる。…それと同時にネリーの指先から色素がどんどんと抜けていき青白くなっているのが心を痛ませる。

 ―完全に堕ちちゃったんだな…。

 サキュバスに襲われ魔力を注ぎ込まれた天使は、快楽に敗北することで堕天使…ダークエンジェルと呼ばれる固体になると聞いたことがある。そして…そうなるともう元には決して戻れないそうだ。他の魔物と同じような男の精を食事とするサキュバスとして一生を生きていくらしい。…そんな道に不本意とは言え引きずり込んだ一因として、やはり良心が痛むのを止められなかった。
 僕はその痛みを振り払うように手を伸ばし、抱きしめたままベッドの上で、ごろん、と回転する。さっきまで僕の上だったネリーは今は僕の下にいて…簡単に言うと正常位の形になった。そしてそのまま怒張したままの僕の性器を抜き出すと、彼女の性器から愛液と白い精液がごぽりと音を立てて漏れ出す。

 「わぁ…また沢山出したものだね」
 「…じっくりまじまじと見ないでくれるかな?」

 いつの間にか僕の後ろに立っていたアイシャはそう軽口を叩きながら、僕にシーツを手渡した。けれど、それを受け取った僕の手をぎゅっとアイシャが握って離さない。

 「…アイシャ…?」
 「ねぇ…まさかこのまま逃げようなんて考えていないよね…?」

 ―か、完全に見透かされている…!?

 「ははは、何をだい?」

 少しばかり上ずった声になりながらも僕はそう答えた。けれど、そんなものじゃアイシャの疑いの目は晴らせなかったようで、アイシャは逃がさないように後ろから僕の身体を抱きしめてくる。そしてそのまま寂しそうに…本当に聞いている側の胸が痛くなるようなほど寂しそうに口を開いた。

 「…ねぇ…まだ昔の恋人の事、忘れられない…?」
 「っ……」

 ―何故それを…!?

 思わず声を荒上げそうになったのを堪えるのが精一杯で、誤魔化すことも、かわすこともできなかった。そんな僕をアイシャは追い詰めるように、さっきより強くぎゅっと抱きついてくる。

 「天使の恋人…居たんでしょ…?」
 「……あぁ」

 こんな辺鄙な村で薬剤師なんてやってる僕にも昔は恋人と呼べる人が居た。薬剤師になる為に出たこの地方の都会で出会い、お互いに愛を語り、何度も何度も交わった人が。けれど、その人はある時、唐突に居なくなってしまった。何も……何の一言も残さず。風の噂では教会の追っ手に追われて死んだとさえ言われている。けれど…僕はその噂を信じず、情報屋の真似事もやりながら行方を捜していた。…それでも、結局、生きているのか死んでいるのかさえ分からないままだったんだけれど。

 ―その彼女に雰囲気はネリーが、顔はアイシャがとても似ている。

 だからこそ僕は二人に性行為を強請られたとしても拒みきれなかった。彼女たちの中に面影を見つけて、その代用品として扱っているのは自分として分かっている。そんな自分と決別する為に、本当は拒まなければいけないのも理解していた。けれど……けれど、理性とは裏腹に、僕の心はどこかで二人を求めるのを止められなかった。

 「でも、どうしてそれを…?」
 「ふふ…♪ずっと見てたからね。マークのこと…ずっとずっと…」

 言いながらアイシャの手は僕の胸を撫でる。つつ…と通り過ぎていくような煽情的な感覚さえ残しながら、彼女の手は僕の心臓の上でぴたりと止まった。そのまま僕の心臓の鼓動を測るように掌をそこに当て続ける。

 「いい加減…新しい恋を見つけてもいいと思うよ。死んだかもしれない相手にずっと操を立てていたって辛いだけだろう?」

 ―…そうなのかもしれない。

 この村唯一の医療の心得のあった人が死んで…僕がここに戻ってから、いや、それ以前からずっとそれは僕の心に確かにあった。彼女の事を諦めてしまえばどれだけ楽だろう。新しい恋に身をやつせば、痛みも薄れて、傷も癒え、何時かそれは『過去』になる。…けれど、僕はそれをしたくなかった。

 「けれど…僕は…彼女を想い続けたい」

 それは理屈じゃない。損得でもない。ただ、意地に近いものなんだろう。けれど、僕はそれでも忘れられなかった。きっと、僕は『永遠の愛』って言う奴を…子供の頃、この村に来た吟遊詩人が語った大好きなラブロマンスのような愛を心の中で信じているからなんだろう。

 「……………そっか…。相変わらず弱虫の癖に変なところで頑固だよね」
 「放っておいてよ。それに弱虫はとっくの昔に治って…」

 ―……あれ?どうして僕が昔、弱虫でよく泣いてた事を知ってるんだ…?

 その事を知っているのは昔からこの村に住んでいた人と、あと一人…その事をよく思い出話として語った大事な人だけで……。

 ―え?もしかして…。

 ずっと求め続けた答えが後ろにあるような気がして、僕は振り返った。けれど、そこにいたのは悪戯そうに目を細めて笑うアイシャだけで…。

 「ふふ…っ♪さぁ、どうでしょう…?」

 右手の人差し指を口元に当てるようなポーズを取りながら、得意げにアイシャは笑った。それは何時ものアイシャの姿で…その中には『彼女』の面影のようなものは決して見えない。

 ―…気のせいだったのかな…?

 そう首を傾げる僕の胸にアイシャは再び抱きついてくる。子犬が飼い主に甘えるようにすりすりと首を擦りつけて、匂いをつけようとするその動きはアイシャらしい。

 「…でも、覚えておいてね…。堕ちた天使って言うのはね…堕ちるほど好きな男がいる分、下手な魔物よりも情熱的で…諦めが悪いんだよ…?」
 「僕も諦めの悪さには定評があってね」

 まるで売り言葉に買い言葉だと思う。けれど、そんな関係がとても居心地が良い。ネリーのような妹を見守るような心境とも違う、『彼女』のような愛しい恋人に対するような心境とも違う、まるで長年の親友に接するような、この掛け合いと距離感が、きっとアイシャとの関係そのものなんだろう。

 ―例え、アイシャが『彼女』だとしてもアイシャがアイシャとして僕の前に居るならば、僕もアイシャとして接するべきだろう。

 「じゃあ、勝負だね。君が恋人を諦めるか、ボクらが君を諦めるか」
 「ボクら…?」

 てっきり僕とアイシャの二人の勝負だと思っていたので思わず首を傾げてしまう。

 「勿論、ボクとネリーだよ。当然だろう?」
 「それ…僕の分が悪くないかな?」
 「おや?まさか諦めが悪いなんて自分で言っておいて降りるつもりかい?…まぁ、勝負から降りても結果は変わらないだろうけれど」

 言いながらアイシャは僕の胸にすりすりと擦りつけるのを止めて、僕を見上げてくる。普段は意志の強そうなアメジスト色の瞳をしているのに、今の目は興奮の所為か、潤んでいて、目尻に涙さえ浮かべていた。

 「とりあえず…公平性の為に僕にもキスしてもらおうかな…♪」

 そう言って絡み付いてきた舌に口内を蹂躙されるうちに、僕の理性がどんどん削られるようで…さらにはそのまま最初のときのように押し倒されてしまって…結局、僕はその日、ろくに洗濯ができないほど、搾り取られてしまうのだった。



10/09/17 23:52更新 / デュラハンの婿
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■作者メッセージ
 エロエロ天使の淫語責めと快楽堕ちが書きたかった。けれど、色々と技術が足りなくて反省はしています。

 でも、Dエンジェルたんがエンジェルたんを堕とそうとするのはきっと自分も辛かったからなんだよ!!!堕ちる時のアイデンティティーの崩壊を少しでも優しくしてあげるからなんだよ!!!と言うのは正義だと思います^q^

 今回、初めての魔物娘側…しかも、純粋無垢なエンジェルたんの視点なので色々目に付くことがあるかもしれません。もしご不快でしたら申し訳ないです(。。
 ご不快でしたら是非マークをもいでいってください^q^

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まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33