読切小説
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Whereabouts of Love
「最近、夫の態度が素っ気ないのよね〜」


青い空。白い雲。そよぐ風。
ポカポカと暖かい陽気の下、三人の女性が小さなテーブルを囲んで座っている。
テーブルの上を覗いてみると、そこにはティーカップやクッキーなどが小綺麗に並んでいる。
そう、今は彼女たちの憩いの時間。
お茶やお菓子を楽しみながら談笑をして、
毎日の苦労をねぎらう場だった。

彼女たち、とはいっても、人では見られないような体つきが三人が魔物であることを物語っている。
ため息混じりに夫への不満を漏らしていたのは
蛇の下半身をもつラミアのサラ。
彼女は現在の夫と婚約してから半年ほど経っている。

「サラさんの旦那様……ハールさんってたしかお医者様をやってる方でしたよね〜」

間延びした声でそうたずねるのは
ホルスタウロスのミィス。
三人の喉を潤しているミルクティーは
彼女が淹れたものだ。

「きっと患者さんに鼻の下伸ばしてるのですー!」

ティーカップを抱えるようにして持つのは体の小さなリャナンシーであるリーナ。
背中の羽はパタパタと楽しげに揺れている。

「あら、あの人はそんなことしないわよ?だって私だけを愛してくれるって約束してくれたもの♪」

そんなことをサラは当たり前のように笑顔で言ってのける。
するとリーナはしまったとばかりに眉をひそめた。

「あー……別にいつものサラ姐の惚気話を聞きたくて言ったわけではないのですよー」

「いいじゃないですか、リーナ。種族の壁を越えて愛し合うサラさんとハールさん……ステキですね〜♪」

「でしょ?私にプロポーズしてくれた時のあのドキドキといったら……幸せだったな〜♪」

「はいはい、ごちそうさまなのですー」

キラキラと目を輝かせるサラとミィス。
それをリーナが半ば呆れ顔で眺めている。
こんなやりとりは三人の中ではよくあることだった。



「でも最近は素っ気ないのですよね?どうしたんです?」

「ん、そうね……それが分からないのよ」

サラは表情を曇らせてうーん、と悩ましげに頬に手を当てる。


「話しかけても返事が曖昧だし、なんだか上の空って感じになったのよねぇ。最初は疲れてるって言うからそのせいだと思ってたんだけど……」

「……?そうじゃないんですか〜?」

「えぇ。様子が変だったの」

「ふむぅ、様子が変……なのです?」

二人とも興味深げに身を乗り出して話に聞き入っている。

「家にいる時、たまに私のことをちらちら見てるのよ。どうしたの?って訊いても、何でもないって言ってそっぽ向いちゃうし、でもしばらくするとまた見てくるし……」

そこまで言うと、ひと口ミルクティーを含み、ため息を吐いた。

「思い当たるようなこともないし…どうしちゃったのかしら…」

「むぅ、謎なのです」

「何かあったんでしょうけど……」

三者三様に首をかしげ、思い悩んでいる。
普段とは違った沈んだ雰囲気に、三人のお茶の手もあまり進んでいなかった。

「そういえば夜の方もそんな感じなのです?」

リーナが尋ねると、サラはコクッと頷く。

「最近じゃめっきり……そのせいか元気でないのよねぇ。食欲も沸かないし」

「そういえば私の作った卵クッキーも手をつけてませんね。大好きだって言ってましたのに〜」

「ごめんなさいね、でも食べる気が起きないのよ」

「私は構いませんけど……大丈夫ですか?」

「えぇ大丈夫よ。ごめんなさいね、心配させて」

サラは笑顔で返すが、やはりどこか力がなかった。

「むぅ、サラ姐しおらしいのです。それなら……」

意を決したように目を開くと、リーナはぐっとサラに顔を近づけ


「襲っちゃえばいいのです!」


「「え?」」

突然の彼女の提案に、それを聞いた二人はキョトンとした表情をする。
それにも構わず、リーナは続ける。

「元気ないときはダーリンとヤっちゃうに限るのです!そうすればサラ姐のダーリンもきっとのってくれるのですよ!」

「でも……」

「心配することはないのです!たまには自分のわがままを通してもいいのですよ。それでまた明日になったら惚気話でも聞かせてくれればいいのです」

「リーナ……そうよね!たまにはぱーっとヤらなきゃね!ふふ、そう思うと今夜が楽しみになってきちゃった♪」

曇っていた表情も徐々に普段の明るさが戻ってくる。
それを見た二人もひと安心といった風に胸を撫で下ろした。

「元気になってなによりです。私も明日楽しみにしてますね〜」

「えぇ、分かったわ♪」

三人に笑顔が戻ることでお茶会にもまたいつもの穏やかな雰囲気が流れるようになる。
しかし三人の上、空高くにはぽっかりと大きな雲がひとつ浮かんでいることに、彼女たちは気付いていなかった。



――――――――――――――





「はぁ……どうしようかな……」

帰り道。僕はため息を吐いて夜空を見上げる。
雲が厚くかかっていて星は見えそうにない。
一様に灰色に染まっている空を眺めて、再びため息を吐く。

「言ったほうがいいのかなぁ」

僕の名前はハール。
この街で開業医をやっている。
今はすでに診療所での仕事を終え、我が妻の待つ家へと帰る途中だ。
僕には、ある悩みがあった。
それは僕と妻の今の生活を変えてしまうほどの
重要なものなのだが、彼女にはまだ言い出せずにいた。
このことを伝えるべきか伝えないべきか。
それが、僕の頭を悩ませていたのだった

「やっぱり早めの方が……
いや、でもはっきりしないしなぁ……」

ぶつぶつと一人で呟きながら歩いていると、
いつの間にか我が家までたどり着いていた。
何気なくドアを開け、いつものようにただいまと言おうとしたそのとき。

僕は言葉を失った。
何故ならば

「おかえりなさい、アナタ♪」

そこにいたのは

「エッチにする?交尾にする?それとも…
ワ・タ・シ?」

すっ裸の妻だったからだ。

「…………」

「今夜は寝かせないからね……なぁんてね♪キャッ♪」

何故かひとりではしゃいでいる彼女は紛れもなく僕の妻だ。
一糸纏わぬ姿で玄関先に立ち、
大事なところは腕で隠されているが、
それでも豊満な体つきは惜しげもなく晒されていて、その姿は見ていて興奮をそそるもので…


いや待て、その前にひとつ言うことがあった。


「……どれも一緒じゃないか」

「あら、アナタには拒否権なんてないのよ♪
しばらく溜まってた分たっぷり出してもらいますからね〜♪」

「……僕疲れてるんだけど?」

「大丈夫!アナタは黙って抱かれていればいいから♪さ、いきましょ♪」

「あ、ちょっ……!」

二の句を次ぐ暇もなく妻に手を引かれて寝室へ。
部屋にはいるや否やベッドに突き飛ばされ、押し倒すような形で体を押さえつけられてしまう。
そのまま僕に蛇の下半身を巻き付けて動けないようにした彼女は、上気して朱が差した顔でふふ、と妖艶に微笑む。



ああ、なんて美しいんだろう。


押し倒されているという状況にも関わらず、僕の頭は彼女の美しさに魅せられていた。
窓から微かに漏れる月明かりは、かえってその肌理の細やかさを強調し、柔らかな曲線を描くシルエットを写し出し、彼女の醸し出すまさに魔性の美をまざまざと見せつけていた。
そのしなやかな肢体で僕を抱き、惜しみ無い愛を注いでくれる。
男として、いや彼女の夫としてこれ以上の幸せはあるはずがない。
このまま最上級の幸福に、身を委ねてしまいたかった。


だけど


ふと頭を払って冷静に思い直す。
このまま流されてはいけない。
だって僕は彼女のことを全て知っている訳ではないのだから。
これが僕と彼女の為なのだから。



――――――――――



「フフフ、もう逃げられないからね♪」

「……」


これからせっかくのお楽しみだというのに、私に組伏せられている彼は未だに戸惑っているような表情をしていた。

でもそれもすぐに変えてあげる。
快楽の色で塗り潰して、私だけを見て私だけを感じて私だけしか考えられなくしてあげる。
そう思うと心が躍った。
いつも以上に、私の胸は高ぶっていた。
数日分の愛の飢えのせいもあるかもしれない。
でもそれ以上に、彼を襲うというこの行為が魔物としての本性を刺激した。
だから彼を今すぐにでも

食べてしまいたかった。


「じゃあ、いただきま……」


「……ごめん」


襲いかかろうとしたその瞬間、
彼の口から突然出た言葉に思わず手がひたと止まる。
それと同時に内でふつふつと燃え上がりだしていた炎は水をかけられたように急激に勢いをなくしてしまう。

「……なんで謝るのよ」

意味が分からなかった。
何故この状況で、この瞬間で、この言葉なのか。
いきなり冷やされた頭では考えても理解は出来ない。
そんな私の当惑とは裏腹に、彼の答えはいずれにも答えてはいなかった。

「君を愛してるから。だから……」

    
 「ごめん」   


「いや……いやよ!私、あなたが欲しいの!あなたのこと愛しているのよ……!」

必死に懇願しても彼の言葉は変わらない。

「知っているよ。でも、今は駄目なんだ」


「なんで……なんでなのよ……」


理解できない。
彼が伝えたいことが。
私はどうしたらよいのか。
ただひとつ分かること。
それは私を拒絶していることだった。

「なんで……そんなこと言うのよぉ……」

途端に悲しくなって、
火照っていた体も、頭も、心も。
急速にさめてしまった。







――――――――――――――――――




「どうして……どうしてなのぉ……ぐすっ」

翌日の昼下がり。
そこには昨日と同じく三人の魔物が
ひとつのテーブルを囲んでいる光景があった。
しかしその状況はいつもの雰囲気とは一変しており、
テーブルに突っ伏してしまっているサラをリーナとミィスが慰めるという、和やかとは程遠い状態だった。


「元気出してくださいサラさん。
いつもはこんなことではくよくよしないじゃないですか」

「だって……だって……今までこんなこと無かったのに……」

「むぅ……なかなか深刻な問題なのです……」

さすがのリーナも難しい顔をしている。
普段から明るく笑顔が多いサラがこのように泣き崩れてしまうのは彼女にとっても初めてのことだった。

「私がダメなの……?私が、ちゃんと愛してなかったからなの……?」

「そんなことないのですよ、サラ姐。ダーリンだってきっと疲れてるだけなのです」

「もしかして他に女ができたのかも……そうよ、そうに違いないわ……」

「そ、そんなわけないじゃないですか!
ハールさんも、愛してるって言ってくれたんでしょう?」

必死に諭すも、サラは聞き入れようとはしない。

「きっとそれも嘘なんだわ……
他の女に取られるくらいならいっそ私の手であの人のことを……」

「ちょ、待って!早まらないでくださいサラさん!感情的になってるだけですから!
いったん座って、落ち着きましょう。ね?」

「……ちょっとハーブティーでも淹れてくるのです」



―――――――



「落ち着きましたか?」

「うん、ありがとう……だいぶ落ち着いたわ」

「サラ姐、だいじょぶです?」

「えぇ大丈夫よ。ごめんなさい、取り乱してしまって」

心配そうに声をかける二人に、
申し訳なさそうにサラは少しうなだれる。


「それにしてもハールさん、いったいどうしたのでしょうか…」

「こればっかりは本人に聞くしかないのですね」

「そうよね……やっぱり私が聞かないとね……」

ふぅとため息を吐き、物憂げに空を見上げる。
その瞳には空も、太陽も写ってはいなかった。

「でも嫌われたんじゃないかと思うと怖くて……」

「サラ姐……」

「サラさん……」

いつになく弱気な発言をするサラ。
その変化に二人も言葉を失わずにはいられなかった。
それほど、彼女にとって愛していた夫と心が離れてしまうのは辛いことだった。
夫をもたないリーナにもミィスにも、そのことはひしひしと感じられた。
だからこそ、慰めてあげたかった。


「ハールさんが急にサラさんのこと嫌いになったりなんかしませんよ。だってあんなに愛し合ってたじゃないですか。そのことは一番サラさんが知ってるはずです」

「……」

「きっと何か理由があるはずなのですよ。それはちゃんと、サラ姐が聞かなきゃダメなのです。もしひとりが嫌ならリーナもついていくのですよ」

「ええ、私たちはいつでも力になりますよ」

「……そうね。分かったわ。
……ありがとう、二人とも。ふふっ、私ったら助けられてばかりね」

そう言って涙を拭いながらも気丈に笑って見せようとする。
しかし、止めどなく溢れる涙を拭いきることはできず、再び俯いてしまう。

「……ごめんなさい……でも……もう少しだけ……泣かせて……」



その日、森の中には、一人の女性の泣き声がいつまでも響き、止むことはなかった。





――――――――――――――





「はぁ……」


ため息を吐きながらの帰り道。
今日は昨日とは違い、夜空には綺麗な星が燦々と輝いている。
しかし、僕の胸の内は何かに覆われているように重く、息苦しかった。

なぜ、あんなことを言ってしまったのか

昨夜の妻の悲痛な慟哭が、帰路を進む足を重くする。
彼女を突き放す必要はまるでなかったはずだ。
秘密を守ろうとする意図が、未知の事に対する不安が、そして彼女に驚いてもらいたいという思惑が、その方向性を変えてしまっただけだった。

だけど今なら言える。
一応は彼女に確認をとる必要があるが、
今日資料を調べた限りほぼ間違いない。
もうこれ以上妻の悲しむ顔は見たくない。

その一心で帰路を急いだ。

息も絶え絶えに家に着き、
ドアノブを掴み、扉を引き開けた途端、
何かによって体の自由を奪われてしまう。
それが妻の蛇体であることに気付くのに、そう時間はかからなかった。

「おかえりなさい、あなた……」

「た、ただいま……」

いつも交わしているはずの挨拶は、いつも与えてくれる安心感を失っていた。
こんな間近な距離なのに、俯いてしまっている彼女の顔は伺うことができない。
逃げるつもりは全くないが、放すまいとでもいうように、強く体が締め付けられる。


「「…………」」


沈黙が、流れる。
その間にもギリギリと圧迫が強まっていく。
それはまるで、力を込めることで必死に痛みを堪えているようにも思えた。
そのことが僕の胸をも苦しめた。


「ねえ、あなた……」

先に沈黙を破ったのは彼女だった。
それと同時に束縛が少しだけ緩む。

「教えて……くれない……?
なんで……その……最近……冷たいのか……」

彼女は途切れ途切れに、ひとつひとつ言葉をたどるように尋ねる。
それを聞いて、気付いた。

彼女は泣いている。

顔を見なくても、声が震えていた。
この時ばかりは体の自由が奪われているのが心苦しかった。
すぐにでも抱きしめ、慰めてあげたかった。
だけど、それはまだだ。
今は伝えることが先だ。
僕は彼女に、真っ直ぐに視線を向ける。


「その前に、いくつか聞きたいことがあるんだ」

「……」

僕の言葉に、返事はなかった。
当然かと思い肩を落としたとき、
彼女が頷いた。

「……その後に……私の質問にも答えてくれるのよね……?」

「あぁ、もちろんだよ」

「なら……いいわ」

「……ありがとう」

「……」

感謝せずにはいられない。
ここまで来たら恐らく、いや、きっと伝えられるはず。
そう確信し、1つ目の質問をする。

「最近元気がなかったのは、なんで?」

「なんでって……それはあなたが冷たかったから……」

彼女が不審そうな視線を上げる。
それがいったい何なのか。
そう言わんばかりだが、気にかけずに続ける。

「その前から元気がなかったよ。何か激しい運動したとか、それか悲しいことがあった?」

「いえ……ただなんとなく疲れが溜まってたみたいで……」

「……次。最近、突然頭痛がしたり急に眠くなったりする?」

「えぇ。……それほど酷くはないけれどたまにあるわ」

二つ目の質問に答えたとき、彼女はふと顔をこちらに向ける。
そこには先程までの涙は消え、代わりに驚きが含まれていた。

「あなた……まさか……」

「……まだ最後が残ってるよ」

彼女は気が付いただろう。
これがただの質問ではなく、『問診』であることに。
そして、これが意味するところを。

「……最後。食事に好物があっても残すことが多くなったよね。あれは……」

「食欲がなかったから」

僕が言い終える前に彼女が答える。
もう彼女には不安も悲しみも消え、期待に満ちた表情をしていた。

「あなた……やっぱり……!」

「……もう僕が言わなくても分かるだろう?」

「いいえ、私はあなたの口から聞きたいの」

「……しょうがないな……」

たった一言。これから告げるだけなのに、今は他のどんなことよりも緊張している。
それは不安でもあり、喜びでもあり、幸せでもあった。
僕だけではない。
それは彼女も同じだった。
彼女に触れている肌の感触から、表情から、鼓動から、感情が伝わってくる。
もう、ためらう必要はない。




「君のお腹には、僕たちの子供がいるんだ」









―――――――――――


「あの人ったら……最初からそう言ってくれたらよかったのに。私を驚かせようとしてたんですって♪」

「あら、ご懐妊なんですね〜おめでとうございます〜」

「ふぅ、一時はどうなることかと思ったのですよ」

「心配かけてごめんなさいね。
それより、二人に頼みたいことがあるんだけど」

「なんでしょう〜?」

「遠慮なく言うのです!リーナは何でも協力するのですよ!」

「ミィス、あなたにはミルクを分けてほしいの。
あなた達のミルクを飲むと子供が丈夫に育つっていうから」

「ええ。構いませんよ〜」

「リーナには子供が産まれたとき、絵を書いてほしいの。私と、あの人と、子供の。大きくなったとき、
いつでも思い出せるように」

「任せるのです!今までの最高の出来にするのです!」

「ふふ、ありがとう二人とも。あなたたちがいてくれて
本当に良かったわ」

「なんの!腕を振るうのはベイビーが産まれてからなのですよ!」

「ふふ、そうですね。赤ちゃん、無事産まれるといいですね〜」

「えぇ。きっと元気な子が産まれてくるわ。
だって、私とあの人の子なんですもの」

暖かな日だまりの下、そこには一人の『母親』が
新たな命の宿るお腹を愛おしそうに見つめていた。

11/12/25 00:36更新 / リテラル

■作者メッセージ
こんばんは、お久し振りです。
リテラルです。
今回のラミアさんのお話、いかがでしたでしょうか?
楽しんでいただけたら幸いです。

反省としては短くまとめるつもりがなんと
6836字という……自分でも驚きの文字数に。
……次からはショートにします

ストーリーの補足として、
ハールの態度が素っ気なかったのは、サラの調子がおかしいのを見て子供が出来たのでは、と思ったが確信がなく、でももしそうならずっこんばっこんするのは母体に影響があるのでは、と疑い、悩んでいたからです。
妻に過度に期待をさせたくなかったという理由もあります。
彼はかなり優柔不断だったわけですね。
……そういうのを本文で書けたら良かったのですが……

それはともかく、読んでいただきありがとうございました!
今日はこの辺で。









以下、没ネタ


――――――――その1

「最近夫の態度が素っ気ないのよねぇ」
「ダーリンの気を引きたいのです?
なら死んだふりをすればいいのです!」
「……死んだふり?」
「そうなのです!きっと効果てき面なのです!」
「そう。じゃあやってみるわ」

サラ宅

「ただいま…ってサラ!!?」
「うぅ……あなた……」
「大丈夫かい!?待ってて、今すぐ医者を呼ぶから!!
って僕が医者じゃないか!あぁ、こんなときはどうすれば……」
「……ククク……」
「……サラ?」
「ごめんなさい。騙すつもりはなかったのだけれど、あなたの反応を試したくて」
「……え?体は大丈夫なのかい?」
「えぇ。アナタのあの慌てようったら……フフッ」
「いや、でももしかしたら何か身体に異常があるかもしれない。
一度精密検査をしよう」
「え?ウソなのよ?そんなことがあるはずが……」
「いや、するべきだ。さ、安静になれるところに行こう。
足元、気を付けて」
「え、あの、ちょっと……
 えぇー……」




――――――――その2

「ただいま……」
扉を引き開けた途端、何かによって体の自由が奪われてしまう。
それが妻の蛇体だと気付くのに時間はかからなかった。
「おかえりなさいあなた……」
「た、ただいま……」
「ねぇ、教えてくれない?どうして最近冷たいのか」
「……実は君の誕生日のプレゼントを考えていたんだ」
「え……」
「君に何を贈ったらいいか考えあぐねていてね。だから……」
「あなた……私の誕生日は先月やったばかりでしょ!!!」
バキバキボキ!
「ちょ、強く絞めないで……苦しい……あっ」
「ふふふ、大丈夫。私もすぐにそっちに行くから……」

その後彼らの行方を知るものは誰もいなかった…










9/12 一部修正

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