読切小説
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妄想☆パラダイス
ある部屋の一室。
「ダーリン…そろそろ…」
私とダーリンは一緒のベッドで夜を過ごしてる。もう…限界。
「添い寝したばかりなのに…ヤレヤレ、君は早いな」
優しく言って、ダーリンは私の上を覆い被さる様に移動して私の服のボタンを外す。
私もお返しに、彼の服を脱がす。
素肌を露わにした私達はお互いの肌を密着させて擦り合わせる。
「ふぁ…ダメ。焦らさないでぇ…」
甘い快感に我慢できなくなって私は彼のを求めて…。
そして……

「わぁーーーーーー!!?」
そこで現実に戻された。超イイトコまでいってたのにぃ。
「あのね!!君が僕に取り憑いているのは許してるよ。だけど寝てるのにここまで君の妄想が頭に流れ込んでたら寝れないよ!」
ダーリンは怒って私に文句を言う。
だけど元々が優しい顔だからそんな事言われてもちっとも怖くない。
「そんなこと言わないでぇダーリィ〜ン。私、アナタがいないと生きていけないの〜」
私はダーリンに抱きついた。でも私はゴースト…実体化できない私の体は貫通するだけ。このまま暖かい感覚を感じたいのにそれができない…。
「わかってるよ。君は好きでそんな風になってる訳じゃあないんだろ?でも、流石にこんな風に妄想を流すのはよしてよ」
ダーリンは優しい…こんな私でも許してくれる。
そして…このまま触れ合ってお互いを感じ合ってレッツ!!ベッド IN!
「あー!?もうやめて!!それ以上君の妄想には付き合えないよ」
もう…私の妄想ってそんなにエロイのかなぁ?

私は美那御 麗(ミナミ レイ)…どういう訳かわからないけどいつの間にゴーストになってた可憐な女の子。
この人はマイスウィートダーリンの高上 明(タカガミ アキラ)…顔はカワイイ系で声も男にしては高い。器量よし、勉強もできて家事もこなせる万能彼氏。
私達が住んでるところは少し高級なマンション。ダーリンの両親は結構仕事が成功しててお金持ち。両親から離れて自分で生活してみたいからここで暮らしてるみたい…でもそれは私と二人きりになるためだって分かってるんだから。
「変な妄想してないで…もう朝か。学校は休みだしもうちょっと寝たいけど…」
そして娘さんを僕にくださいでダメだったら愛の逃避行になるの。君がいれば何もいらないって言って寒い冬の中で暖め合ってetc etc
「これじゃあ寝れないよ…それに今は夏だし…」
ため息をしてダーリンはベッドから出る。もう出ちゃうの?これからだったのにぃ。


ダーリンは今、キッチンでホットケーキを作ってる…エプロン姿がカワイイ♪
「まず、牛乳を入れてかき混ぜて…」
料理を作ってるときに調理法を呟くのが彼の癖。
「かき混ぜるの!?私のおm」
「間違っても君のじゃないから安心してよ」
期待が混じった私の言葉をいつも遮ってくる。どうしてそんなことするんだろう?
私みたいなゴーストは強制的に意思疎通ができるみたいだけどそんな事したくない。ヤッパリ相手の気持ちってのはその人だけの物だし…それを想像するのも楽しいし♪
「とか言ってる割には君の気持ちとか妄想が僕の方に流れてくるんだけどね」
「だって、私の気持ちも何もかもアナタのものだもん」
でも、普段はそんな事してないんだよってアイコンタクトをしながら伝える。やれやれ…とため息をついて焼きあがったホットケーキを皿に移して机に乗せる。
机の上には半分で切り分けられたホットケーキがある…向かい合ってるダーリンと私の方に半分ずつ。
「もう一ヶ月ぐらい続いてるけど……別にそこまでしなくていいのに」
お供え物みたいにご飯の時は半分を私にくれる…その後結局は自分で食べるのに意味は無いと思う。
「いいのいいの…いくら霊でも一緒に住んでる人なんだから何かしたいよ」
精が欲しいんだけどなぁって小声で言ってみたけどヤッパリ聞こえてない。
私はフォークを動かす…と言っても物理的にじゃなくて魔法で。一ヶ月も一緒にいたおかげで魔法が使えるようになったの。ポルターガイストって言うのかな?
「ハイ、ダ〜リン。アーーン♪」
私は蜜が付けられたホットケーキをフォークで刺して彼の口に持っていく。
「私の蜜がたっぷりかけられたホットケーキ。よく味わってねぇ」
「蜂蜜でしょ?」
バッサリと切り捨てられる…すっごく悲しい。しかも何か変な事言ったかな?って顔してる…ソッチの知識はあるのにこういう時に限って伝わらない。
無理矢理ダーリンの口にホットケーキを突っ込ませて冷蔵庫にある牛乳瓶をポルターガイストで取り出して、思いっきりそれも口の中にぶち込んだ。
乙女心を踏みにじった罰よ…。
「ブッハ!?何でこんなことするんだよ!?」
勢い良く押し込みすぎたからバランスを崩して倒れながら牛乳を噴き出した
あ、牛乳を口からぶちまけて丁度いい感じに服に付着してる…マンガのカラーページにしたらうまい感じにイイ絵になるわ。
すかさず近くにあったダーリンの携帯を操って連写で撮る。
カシャシャシャシャ!
「え?ちょ、それはやめて!?しかも連続で撮らないで!!」
あわてて顔を隠したり逃げたりしたけどもう遅い…ちゃんと目は隠さないといけないけど…女子に売ったら何円ぐらいかな……2万はいける筈。
「その携帯返して!!もしくは早く写真を消して!」
「イヤ!これは全国の腐女子の宝だもん!男には分からないわ」
「分からないし分かりたくないし!!いいからそr」
「うるさいうるさいうるさい!!アキラは黙って私のブログに載せられてればいいの!!」
「なんかそれ違うよね?とにかく早く携帯返して!!」
カタカタカタカタカタカタ…
争ってる間にパソコンを起動させて携帯から画像を送信。
「怖!?パソコンが一人でに動いてる!夜の学校のピアノより怖い!!」
お楽しみライブラリに保存。暗号入力…二重…三重。
ダーリンは止めようとしたけど私のポルターガイストに為す術も無く叫びながらパソコンに手を伸ばす…届かないと知っていながら…。
作業が終わって、残ったのはダーリンのすすり泣く音だけ。
「母さん…僕、大人になったらハッカーになるよ…ハッカーになって……」
虚空を見上げて遠くに住んでるお母さんに何か誓ってる。将来が心配ね。



昼まではホントに暇だった。マンガを読んだりして時間を潰してるんだけど。
「あ、リビングの蛍光灯…切れちゃったかぁ〜」
いきなりバチッて音がしたから何があったと思ったら蛍光灯が切れちゃったみたい。でも…そんなことより。
「ダーリン……エッチが………したいです」
今読んでるマンガのセリフをちょっと引用してみた。
「諦めなサーイ。そこで試合は終了デース」
難なく返してくる。私がしたいのはネタのキャッチボールじゃなくて愛の寝技なのにぃ。
彼は暗くなってしまった部屋を明るくするために日光を防いでたカーテンを開けて日の光を部屋に入れる。その光は夏だと言わんばかりにサンサンと輝いてた。雲も無い正に晴天。
「昼の間は暑いのを我慢すればコレでいいと思うけど夜が暗くなっちゃうから電機屋に行っとかないと」
あ〜…早くダーリンとシタいな〜。こんな晴れの日にベランダでヤって誰かに聞こえるかもしれないって緊張の中でヤるのもいいかもしれないし…。
「バスで行こうか、経費を削減するために自転車にするか…でも外は暑いしな〜」
あ、でもロープとか持ってそれでするのもいいかもしれない。ゾクゾクしてきたぁ。
「ねえ、麗はどっちで行きたい?」
イキ…たい……?
「そりゃあもう!!ダーリンの立派な剛ty」
「ゴメン、君に訊いた僕が馬鹿だった…」
え、違ったの!?もしかして場所だった?
「だ、だったら私は当然、下の方d」
「違うから…ちなみに言うけど僕のはそれほど大きくないよ」
そんな…小さいだなんて…
「神よ!何故!?何故、日本人のアレの平均は短いのですかぁ!!?」
「謝れ……。この世に生きる全日本男子に謝れ…」
あ、そういえば…。
「…で、何の話だったの?」
本日三回目の溜息は…深く…重かった。



昼ごはんを食べたら、近くのバス停でバスに乗って電機屋にいくことになった。私達が住んでるマンションは電機屋が近くにないことを除けば良い所なんだけどその電機屋が結構遠かったりする。今は夏真っ盛り…私は霊体だから暑さなんて感じないけど、ダーリンは人間。運動は出来るけどこの暑さは苦手みたい。バスが来て普通に乗る、乗客はそんなに多くないけど互いに間を空けて立ってるから満席みたいな状態かも。
当然、私はダーリン以外に誰にも視えないし透き通るからそんなの関係ないけど。
「…う……えっと…」
彼の困ってる顔に気づいて見やると、アキラに擦り寄ってきてる女子高生(私服だが見た目で判断)が!
アタシのダーリンを黒魔法「この人、痴漢です」で落としいれようとする気なの?
…いや違う。彼女の目は何かに期待している目…まあ可愛い系の美形とは言えもてるからありえない事は無いけど。これはもしや、伝説の白魔法「責任…取ってよね…」(自分で命名)に発展させる気かこのアマ!そんな事はさせないんだから。
「ウォラァーーーーーーー!」
誰にも聞かれない声を上げながらポルターガイストを発動させる。
「キャーーーーー!?」
女子高生のスカートが蝙蝠傘のように一気にめくれる。
「え?う、うわぁーーーーーー!!?」
しまった、強すぎてダーリンのジーパンにも影響が…ベルトが外れてこのままじゃあ下に………下ろしちゃお。
「イヤァァァァァァァァァァァ!!!!」
男が出す悲鳴じゃないものを上げながら抵抗してジーパンを上げようとしてる。周りの人たちも異変に気づいて騒ぎ出してる。これ以上は…
「キングクリムゾン!!」

「……………あれ?」
私達が今いるのは行こうとしてた電機屋。あの魔法は一瞬で目的地にワープさせるための魔法…だけどこれで一ヶ月溜めた魔力がパーだわぁ。しばらくは魔法は使えなさそうねぇ。
「もうダーリン、危なかったんだからぁ〜」
「危ないって君がやったんでしょ!!悪戯にしても度が過ぎてるよ!!!」
「確かにちょっとやりすぎたかなぁって思うけど…女の子に好かれるアナタも悪いんだからね」
「何でそうなるの!?とにかくこれ以上何かしたら本気で許さないからね」
怒りながら電機屋に入ると、いつも使ってるタイプの蛍光灯を買いに行った。
ワープしたからあまり時間も経ってなくてまだ昼。物を燃やさんばかりの太陽の熱を感じたような気が……気のせいかな?



今度は何事も無く帰ってきた。元々ダーリンは過ぎた事をネチネチ言うタイプじゃないからもう熱は冷めてるけど下手に刺激しない方がいいかな。
蛍光灯の取り付けも終わって暇をさらに潰した所で夜になった。
『リアルタイム速報!!今日のニュースはぁ〜…こちら!!』
テレビのニュースだ。リアルタイムで今日起こったであろうニュースのリストがバァーン!…という音と一緒に表示される。
その中に一つ、「蝙蝠傘と消えた男」という題名のものがあった。
あれ?蝙蝠傘……消えた男?なんか心当たりがあるような…。
『今日、午後2時。○○県××市で、バスの中で△△高校3年生の女生徒のスカートが蝙蝠傘の様にめくられ、その生徒の隣にいた男子が突然消えたという謎のできごとがありました。事件として調べられるかどうかは検討中の様です』
ああ、アレか!それはあの雌猫が悪いんだからね。私は私の夫が黒魔法と白魔法で堕ちそうになったからやったのよ…正当防衛だわ。
顔写真がパッと浮かび上がった瞬間、ダーリンは飲んでた牛乳を盛大に噴き出した。それは私の体を通り抜けて、壁に当たるぐらい一直線に噴き出す。
「え!?あ、アイツ…僕のクラスで同じ演劇部の…!?エェェェェェ!!!」
「………気づかなかったの?」
「だ、だって私服だったし顔も見てなかったし…」
…らしい。まあ私は学校の友人関係なんて知らないけど。
「どうしよ…明日学校あるのに……一緒に演劇の練習することになってるのに、どんな顔で接すればいいんだ…」
「いつも通りでいいんじゃない?あの娘、アナタに気があるみたいだからアタシが乗り移ってキャッキャッウフフってしてあげてもいいけど?」
「そういう問題じゃないだろ!第一、君は学校生活の邪魔はしないって言ってたじゃないか」
「じゃあ普通でいいじゃん。意識してたらもっと気まずくなっちゃうよ?」
まあ、私のダーリンと学校で会えるのは癪だけど私はダーリンの気持ちが第一だから、何かしてあげないとなぁ。
「もぉ〜…そんなウジウジしてないで一発ヤらないか?って言えるぐらい気にせずに接すればいいの」
いつまでもウジウジしてるから思わずそう言っちゃった。
「………君はそうやって…人が悩んでるのにその手の話ばかりで茶化して…」
…あ、やっちゃったかな?
「もう我慢の限界だぁ!!そこに直れ!美那御 麗!!」
やっぱ出た!演劇部の部長であり学校のスターである彼は一度怒りが有頂天に達すると演劇モードにスイッチが入って口調がガラリと変わる。ちなみにその喋り方は今、部活で演じてるキャラクターになるらしい。
「だ、ダーリン、落ち着いて。えぇ〜っと…じゅ、ジュースを奢ってやろう」
「その様なネタは通じぬ!!それに、我はお茶派だぁ!」
あぁ〜〜〜どうしよ…はっきり言ってメンドクサイ!!
「いつもいつも卑猥な妄想ばかりしおって!我が成仏させてくれようぞ!!」
そういって御札を……博麗と書いてあるような札を取り出し、さらに何やら光る巻物も取り出した。
「そんな!?まさか、除霊をマスターしたというの!!?…アキラ…恐ろしい子……!」
「フッ、昔から学習能力が恐ろしい子と言われていたよ。貴様に憑かれてからの一ヶ月…通信教育で除霊を習ったのだよ…いざ、南無三!!」
普通の人間がそこまでやるなんて。でも…。
「私を除霊させるということは魔物娘を殺すという事と同じよ!!そんなの、健康な十字架様への冒涜に等しい行為だわ!」
「問答無用!」
「イヤァァァァァァーーーーー!!?」
突然!
「ちょっと!!演劇の練習をするのは感心だけどウルサイって苦情がきてるんだけど!!明君!!!」
「わぁ!?スイマセン!!大家のお姉さん!!」

こんな感じで私達の日常は続く。ずーーーーっと……ネ♪




〜fin〜
09/12/09 07:28更新 / zeno

■作者メッセージ
ど〜〜〜もぉ〜〜。zenoで〜〜す。
いやぁ、こんなショートストーリーなのに書くのに時間がかかってしまいました。読めば判るでしょうけどこの物語は勢いとノリだけでできています。
ゲームと小説の執筆を両立させる事は難しいけどこれからもがんばっていきたいです。

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