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不思議な洞窟探検

あれから何事もなく、村についた遊撃隊一向。
クレアル地方、最南端の村……ミサスである。

まず、依頼人は村長に連絡するために別れ、ヴェン達は情報を収集する。

「まずは宿を取って、それから別行動だ。日が沈む頃に落ち合おう。………遊ぶなよ…」

この村の中で一番広い部屋を取り、それぞれが情報を収集する。












日が沈む頃、ヴェン達は部屋に集まった。既に宿の風呂を体験した者もいる。

「さて、どれぐらい情報が集まった?」

ヴェンが集めた情報はその不思議な洞窟の位置といつごろからということだけであった。そもそも、彼は諜報活動には向いていない。顔は優男風ではあるが、隻眼で眼帯をしているだけあって、一般人には日常生活では許容できないほどの威圧感を与えてしまうからだ。
対して隊員達は……

「ねぇねぇ、この服。この村の最新トレンドなんだって!超イケルくない!!?」

人に化けたライムが買ったばかりの服を着て、ウッフンとアピールしている。

「ん、次…」

ライムの予想通り残念な情報に適当に相槌を打つ。

「近くの川で綺麗な石見つけたよお兄ちゃん。えへへ、キラキラしてる〜」

「ああ、キレイだな、よくみつけたな。次…」

まあどっちみちこの二人に情報収集は無理だろうとは思っていた。コロロはまあ仕方がないと彼は踏んでいる。

頼みの綱は後の二人……

「たくさん果物を買ってしまいました…本拠地に戻ったら美味しいお菓子を作りますね♪」

「…………次」

これにはヴェンもガックリと肩を落とした。
お前まで俺を裏切るのか……

「なあ、エルフィン。お前は何かあったか?」

「……………(プイッ)」

「……………何か言ってくれよ…」

「………………」

ああ、もうわかったよ。お前らは本当に情報を集めてなかったんだな。
確かに村に着いたのは本拠地から出て数日後の昼過ぎだ。夕方まで2,3時間といったところだったからそんなに多くは集められないだろう。

だが…………

「お前ら………真面目に仕事する気あるのかぁぁぁぁあああ!!!!」

叫んだ…近所迷惑だろうがなんだろうが叫びたくもなる。
コロロとライムはヴェンの中では予想の範疇だった。だがいつも彼に献身的だったセシルまでもが裏切る…エルフィンは言わずもがな。

「大体、ライム!なんだその服!?」

「え?ヴェンとアタシの、ペ・ア・ル・ッ・ク☆ だよ!ほら、こっちに男のもう一枚」

「いらんわそんな物!」

「あらあら…御主人様、あまり怒られては体に毒ですよ。この村の名物、十色桃は環境によって味が変化する他にリラックス効果もあります。ぜひご賞味を」

「セシル…お前もふざけているならいい加減にしろよ…」

「お兄ちゃん…綺麗な石……ダメだった……?ゴメンね…コロロ…もっと綺麗なの探してくるから…ひっく…ぐすん…」

「大丈夫…お前はもう少し勉強すればいいから……」

そして、次の相手はエルフィンである。ヴェンは彼なりに、彼女のことを信頼していた。…のだが結局裏切られた。

「エルフィン、お前は………」

パサッ……

ふと、エルフィンは宿室の机に紙束をおいた。 それを手に取り、内容を見ると事細かにこの村で立っている噂、情報をまとめ、わかりやすくされている。

筆跡から…ヴェンの知る限り、彼女の筆跡だ。

「…………なぜ、さっき渡さなかった…?」

「…アンタの喜ぶ顔を見たくなかったから」

目はそらしてる。だが、口調だけはやけにハッキリだった。

「ど〜せ、ホントはその時に褒められるのが恥ずかしかったんzy」

ビュン……!

ライムの言葉を最後まで聞かぬうちに、エルフィンは弓を引き絞り、風の矢をライムの頬に掠らせた…

頬からは紫色の液体がにじみ出ている…

「…ごめんなさい……」

頬を引きつらせ、彼女は謝罪する。
本当に…いっつもこれだ…いざと言う時はちゃんとするものの、普段は協調と言う言葉とは無縁だ。

「あのな…俺が喜ぶとか喜ばないとかどうでもいいだろう…人を助けるのが俺達の仕事だぞ……」

なにか嫌われる事したのか……?…思い当たる節は彼には無かった。

「どうだって良いでしょう…なんとなくそう思っただけよ」

まあ、これは今日始まったことでもない。彼女は入隊してからそうだった。
結局…まともな情報にありつけたのはこんなエルフィンのおかげだ…
こんなチームワークでいいのだろうか…

「はい、話もまとまってきましたし、そろそろ明日に備えましょうか」

話の折りをみて、セシルはシーツをベッドに敷いていた。

宿屋で寝る……もちろん一番広い部屋のため、一人が眠れるぐらいのベッドが4つ並んでいる………

そう……4つ…

「そうね、じゃあ私はもう寝るわ」

部屋の隅のベッドにエルフィンはそそくさと潜り込んだ…

あと…3つ……

「コロロ!!アンタは家に帰ったらいくらでもヴェンといられるでしょうが!!ここはアタシに譲りなさい!」

「いやいやぁ…お兄ちゃんと寝るのぉ〜〜〜〜!ライムお姉ちゃんにはぜぇ〜ったい渡さないもん!!」

「あらあら、困ったものですねぇ……ここは間を取ってわたくしと御主人様が添い遂げ」

「ぬぁ〜にが間を取ってだぁ!!」

そう…この場合、誰かが誰かと一緒に寝ない(もしくは野宿)といけない…
その誰かが重要になるわけで…

「俺……野宿でいいか?」

「「「ダメ(よ)(です)(だよ)!!!」」」

このまま、三人の決着が済むまで待つしかないのだろうか…

三人はこのままだと、本気で戦闘するかもしれないところまできていた…
温厚なセシルに至っては袖からナイフをちらつかせ、コロロも四つんばいでグルル……と唸って臨戦体勢…ライムもいつでも体を変化できるようにスタンバイしている。

「そんなにそいつと寝たいなら全員で寝れば?」

不意に、ベッドからうるさそうに顔を出したエルフィンは呟いた。正直、彼女も迷惑しているのだろう。
一番終わって欲しいと思っているのはヴェンではあるが……

「全………員……?」

三人がベッドとヴェンを交互に見た。
終わって欲しいとは思っているが……どうも彼にとってはバッドな終わり方のようだ。

「セシル!」

「ベッドメイキングならお任せを!!」

「あ、お兄ちゃん逃げちゃダメ!!!」

「おっふ!!?」

ライムが名前を呼び、セシルがベッドを解体し始め、ヴェンが逃げの体勢に入ってコロロがソレに気付き、膝関節の裏を蹴ったのは同時だった。

「さあ、御主人様。4つのベッドを繋ぎ直してみました…これで、皆で一緒に夜をすごす事ができますね♪」

膝カックンという古風な足止めを受け、思いっきり膝を床に打ち付けて呻いている間に、セシルの作業は終了していた。
四つを四角に並べてつなぎ合わせると、まさにキングサイズのベッドになる。

「で………なんで私まで?」

早く寝たい……という言葉が顔に書いてあるように呟くエルフィン…

「いいじゃない、スキンシップよ」

「ちょっと待て!俺に、俺に拒否権はないのか!?」

ヴェンは抵抗も空しく、三人にベッドまで引きずられ……

「ほらほら、良く言うでしょ?お前のモノは俺のモノって、だから♪アンタの体はアタシのモノなのよ!」

「この場合、正確にはわたくし達の…ですね♪」

「皆で寝るの、絶対気持ち良いよ!お・に・い・ちゃ・ん!!」

諦める以外の選択肢は…あったのだろうか……

いや、あるはずがない………

「………五月蝿い…」

べッドの上で揉めている4人…そのやりとりを聞いて口にしたが…
瞳には、嫌悪は映っていなかった…











翌日、店員にこっぴどく叱られたヴェン達……当然のことではあるが。
ベッドを直し、5人は村を出た……行き先は、「スズナリの洞窟」

「村のさらに南にある洞窟で、風が洞窟内で吹くと中の特殊な鉱物が音を鳴らす…という実はカップルの間で人気の幻想的なデートスポットなんです」

セシルは、歩いている途中にその洞窟の説明をしてくれた。

「アンタって詳しいのね。もしかして南の方出身だったり?」

ライムの質問に、彼女は首を振り…

「私の生まれは北の…ノースクラウです。御主人様のためにいろいろと文献を読んでいるのですよ……それ以外にも理由はありますけど……」

セシルのいつもの笑み…それが少しずつ曇り始めていた……

「え、なになに?聞かせて欲しいな〜」

セシルのわずかな変化に気付かず、ライムはさらに追求する。
…そこに、

「どこだって良いだろう?生まれも種族も関係ないさ。そういう奴らは少ないけどな…俺はそう思う…」

「ええ、そんな些細な事でいちいち気にしてても時間の無駄よ……私も癪だけどヴェンに同意…」

ヴェンは話の腰を折るように…エルフィンはこれ以上聞きたくないかのように語気を強めた口調で話した。

「ライムお姉ちゃん、でりかしーの無い人は嫌われるよ!」

「え、アタシ何か悪い事したの?」

コロロの指摘にライムは訳も分からず、渋々と大人しくなった。

「御主人様…」

セシルはそっとヴェンに近づき…他に聞こえない声で囁いた。

「ありがとう…ございます……」

「いいんだよ……そんなんで礼を言わなくても…」

ハイ……と呟き、頬を赤らめたまま…セシルはいつもの笑みに戻った。







リーン……リーン



鈴の音のようなものが聞こえてきた…風が吹く度にその安らかの音は響いた。

「ここがスズナリの洞窟……」

見えてきたのは入り口…近づくと鈴の音がより一層聞こえた。

これが鉱物の音なのだろうか……

「生鳴石(しょうめいせき)と共鳴石(きょうめいせき)…という鉱石があり、生鳴石が風の微弱な衝撃により鈴のような音を鳴らし、共鳴石がそれを増幅させているのです」

衝撃により音が変化する生鳴石は、音爆弾にも使われていますね。と最後にセシルは付け足した。

「………綺麗な音…」

その音色に、エルフィンは固い表情を緩めた。

「エルフィお姉ちゃん、今笑ったぁ♪ 笑ったよ、お兄ちゃん♪」

「珍しいな、お前が笑うなんて……」

「っ…!? わ、笑ってないわよ…バカ…」」

エルフィンは少し頬を赤らめたが、すぐにそっぽを向き、

「ほら、任務なんでしょ? そんな風に油断してると、足元すくわれるわよ」

と言って、さっさと洞窟の中に入ってしまった。

「ほんとにあのエルフは…素直じゃないんだから……」

ライムの発言に苦笑したヴェン達は、彼女の後を追った。






リーン…リーン……


洞窟の中を吹き抜ける風は、周りにある、生鳴石を刺激し、音を鳴らし続けている。

「確かに、男女二人でここに来たら、良いムードになりそうだな」

四方八方……微妙に違う音が心地よく流れている…リラックス効果は十分にあった。

「ホントねぇ〜…きっとアタシとヴェンの二人できたら絶対、良いムードになるわぁ♪」

それはもういい、やめてくれと小声で告げ、ヴェンは辺りを見回した。
こんな所に異常があるのか?…噂止まりだとしても怪我人が出たのも事実…
一体、この洞窟で何が起こっているんだ…?

「この石…蹴ったらどうなるのかなぁ…」

好奇心で動いたコロロは、近くの生鳴石を見つめていた…そして、後先考えず、足を振り上げた。

「あっ!!いけません、コロちゃん!!」

ガキッ! 
キイイイイィィィィィィィィン!!!!!

コロロが石を蹴った瞬間、甲高い金属音…それもとてつもなく大きい音が一気に洞窟内に響き渡った…

「あ"…あ"あ"あ"あ"……コロロ…あんた気をつけなさいよ…!」

「っ…………耳……が…」

「だからいけない…と…」

ライムは全身を震わせていた…粘液状の体はプルプルと揺れている…耳を塞いでも振動が伝わってきそうだ…
セシルは知っていて、エルフィンは大体の予想が付いていたから耳を塞ぐことができた…

「きゅぅぅぅぅ………」

音を一番間近で聞いてしまったコロロは、そのままバタンっと倒れてしまう………

「ぐっ………まずは考えてから行動しろって毎回言ってるのにな……」

あまりの音に気絶しかけたが…何とか持ち直す…
気絶したコロロをおぶり、ヴェンは先に進もうとする…

しばらく歩くと、少し広めの通路に出た…天井が見えない…

「見たところ普通だな…なんの水音もしない…本当に水があるのか…?」

ふと、天井の見えないこの通路を見上げてみた。
実際はそれほど高くなく、暗いだけかもしれないが。

「御主人様っ!!」

セシルは右腕の袖から、銃を抜き、撃った。
発砲音と共に、何かを弾く音が聞こえる。

何かが落下する…槍だ……

「え、ちょ…槍がたくさん降ってきたぁぁぁ!!?」

ライムは上を見上げ叫ぶ間にも…槍が降って……次々と地面に刺さっている。

「とにかく走るぞ!!」

「ふえ……お兄ちゃんおはよ〜…きゃうん!!?」

ヴェンに負ぶってもらっていたコロロが彼の叫びで起き、その瞬間に槍が鼻を掠める。

「コロロ、舌噛むなよ!」

5人は全速力で駆け抜けた。





「全く…一体なんなのよ……槍が降るなんて自然現象じゃない…」

いつの間にか槍が振らなくなっており、5人は全速力で走った体を休めている。かすり傷で済んだのは幸いだった。

「この洞窟……まだ何かあるのでしょうか…槍が降るだけでもありえないというのに…」

エルフィンもセシルもこの異常現象には頭を抱えた。そもそも槍が降るなんてことは人為的でしかありえない…
だが気配は無かった。相当な手腕の持ち主か……もしそうだとするとこの洞窟に何の用があるのかもヴェンには気がかりだった。

「ふえ〜…お鼻に傷が付いちゃった…」

コロロは鼻を擦り、うっすらと涙を浮かべる…

「う〜ん…あ、あっちから水の音がするわね。コロロ、ちょっと行ってすすいでくれば?」

ライムはコロロをなだめながら指を指した。
ヴェンには聞こえないが…人間には聞こえない微弱な音らしい…

「あ、ほんとだっ!」

コロロはパッと瞳を輝かせ、狼の耳に手を当てて水の音を聞いている。

「どんどん近づいてるよ!すご〜〜い!コロロの事心配して、お水さんが来てるのかなぁ?」

……えっ………!?

4人はコロロを…そして、水があるという方向をみた…

「…さて…俺の気のせいであって欲しいが……これから噂にあった事が起こるのだろうか……」

どんどん音が聞こえるようになってくる…

「とにかく……」

「逃げるぞ!!!!!!」

ドッパァァァァァン!!

「ちょ!?なんでこんな大量の水がでてくるのよ!?」

「ダメ、これじゃあ追いつかれるわ!」

「泳げるように準備しておけよ!」

「御主人様…わたくしは泳げません…」

「なんだって!?そんな事は初耳だぞ…!」

「暗器が…」

ジャラ…わざと袖を振って鳴らした…小型のロケットランチャーまで仕込んであるぐらいだ…既に人が持てる重量ではない気がする…

「捨てれ!!!」

「そんな!そんな事をしてしまっては御主人様を守る事ができません!」

「命あっての物種って言ったのどこのどいつだ!!(前話参照)」

「はわわ〜〜!!追いつかれる〜〜!」

「はぁ…仕様が無い…!」

「く、来る!」

ザッバァァァン!!」




「…あれ?」

回りは綺麗な水…ヴェン達は水の中にいた。

「息ができる…?」

水の中なのに息ができる…辺りを見てみると…ドーム上に空気が集まっている。

「咄嗟にだったから大まかにしか空気を集められなかったわ…魔力を使いすぎた…」

エルフィンは、少し息を切らしていた。
時間が無いため、空気を短い時間で集めるために膨大な魔力を使ったらしい。

「そうか…助かった…」

回復するまで魔法は使えないわね…と彼女は付けたし、座り込んだ。
このまま水が引くのを待つしかないらしい。

「んで…なんでアタシはその空気のドームから外れてるの…?

「私達から離れていたし…それに、スライムなんだから水の中でも平気だと思ったのよ。魔力の無駄…」

水の中で座り込むライム…いや、そんなに離れてはいなかった…咄嗟のことでもしっかりと嫌がらせをするのは彼女らしい…
案の定、ライムは水の中でも流れることなく液状の体を留め、無事だった。


水も引き、改めて進む事にする。



※ここからは音声のみでお楽しみください※

「うわ、ちょ、みんな、大丈夫かぁ!?」

「ええ…なんとか…」

「なんでいきなり樹が生えるのよ!?」




「あら?なんでしょうか…?」

かさ…かさかさかさかさ……

「ひっ!?イヤァァァァァァァァァァ!!!!!頭文字!頭文字G(虫の)よぉぉ!!!」

「デビルバグの方が何万倍もマシですね…」

「セシル……?」

ガチャ……ズガガガガガガガガガガガガガガガ!!!

「セシル!やりすぎだ!!ガトリングはやめろ!怖い!」

「御主人様に近づく虫は……虫は…」




「お兄ちゃんお兄ちゃん。良い匂いがするよ!」

「ちょっと待て、行くな。絶対罠だから。だから待て!!行くなコロロォォ!」

「あ〜〜〜〜れ〜〜〜〜〜〜〜!?」

「洞窟の中で七輪においてある焼肉に誘われるなんて…ほら、兄でしょ?フォローしてあげなさい」

「フォローって…この落とし穴を降りるのか…?」

「ふえ…この穴……白いのがヌルネバするよぉ…助けてお兄ちゃん…」




「はぁ…はぁ…なんなんだこの洞窟…」

本当にいろいろな事があった…他にも十数個はハプニングがあった気がする。

「なんか…まるで一日が経ったかのように感じるわ…実際は経ってないのに…」

ライムの言う事はもっともだ…
一言で言えば…長かった……


そして…

今彼らの目の前には…

「……………」

宝箱がある…しかもなにかガタガタと動いている…

「ここが最深部みたいですね…」

セシルは宝箱が動いている事を意に介さず、辺りを見回す…
いや、本当は気付いているのだろう…だが……あまりにも分かりやすすぎる…!

(開けるのか…?開けないといけないのか…?)

今までこの洞窟の謎を突き止める情報も何もかもがなかった…例え目の前の宝箱が動いていたとしても開けざるをえないのかもしれない。

気が付けば、周りの隊員が期待の目でヴェンを見ている事に気付く…

(開ければいいんだろう……開ければ…)

そぉ〜っと彼は近づき…

ガチャ…

「サクセs」

バタン!

「……………」

ガチャ……

「センキューフォーユアープレインg」

バタン!

「……ミミックだったか…」

言葉に困り、とりあえずそう呟いた……

「ヒック…ぐすん……」

宝箱から何か泣き声が聞こえる…

「ひどいよぉ……ひどすぎるよぉ……私、何もしてない…なにも悪い事してないのに………」

…泣かせてしまったようだ…

「あ〜!ヴェン泣かした〜〜」

「あらあら…女の子を泣かすなんて…最低の御主人様ですね♪」

「ええ、最低ね…」

「い〜けないんだ〜いけないんだ〜〜!」

隊員達の罵倒が聞こえる…
なんで悪者みたいになってるんだ…?

「わかった…わかったから…もう泣き止め…開けてやるから…」

「ほ、ほんと…?もうフェイントとか…しない……?」

「ああ、しないしない…」

…ガチャ……

「コングレッチョレイショーー」

バタン……

……楽しい…かも……











鍵穴をかけず宝箱の中ミミックを出す…彼女は頭にたんこぶができ…ひっく…ぐすんとセシルの胸の中で泣きながら説明した…セシルはよしよし…と母性の塊のように優しく微笑んで頭を撫でている…

「つまり…この洞窟をアトラクション施設にしたいのね…?」

セシルに抱かれ、泣きじゃくりながらエルフィンの質問にコクッと頷く…

「わた、し、ね、ヒック…いっぱ、いね…冒険者…さんに…ひっく…楽しんでもらいたくてね……それ、で…仲間の…ぐすん…みんなに協力…してもらって…この洞、窟、全体を…私達の空間にして…ひっく…世界に散らばった仲間達が…水とか…樹とかいっぱい、異次元、に、溜めて…ここに、ぐすん…来た冒険者さんを…楽しませるように…わたしが、ね、頑張ってるの…」

冒険者のためのアトラクション施設…スリルを求める冒険者にはたしかに良いかもしれない…

「なのに…なのに…うわぁぁぁぁぁぁん…ひっく、うえええええん…」

一通り喋ったところで我慢の限界だったらしい…
隊員達はまるで養豚場の豚を見るような目でヴェンを睨んだ……

「頑張ったのにぃ!!!頑張ったのにぃ!!うわぁぁぁぁん…」

大泣きする彼女が何か口にするたびに隊員達の睨みがきつくなっている気がする…

「わかった!わかったから!!泣き止んでくれよ…何でもするから…!」

あ……

魔物に対して…なんでもするから…

これはいつも魔物と生活するヴェンの経験的に…禁句である…

コレを聞いたミミックは泣き止み…隊員達は一部は柔らかく…一部はニタァ…と微笑んでいる……

「ほんと…?…えっと……じゃあ…入場料…欲しいな……」

もじもじと……太ももを擦り合わせ、顔を赤らめてお願いをしてきた…

「では、そういうわけで、私達は退散しますね。報告書は帰ったらまとめておきますので、ごゆっくりどうぞ」

「お兄ちゃん!ごゆっくりね♪」

「私達の分まで払った方がいいと思うわ」

「ホントは混ざりたいけど、ヴェンは皆の物だからね♪」


「待ってくれ…待ってくれぇぇぇ!!!」



















報告書 第6部隊隊員 セシル・テンタシオン

依頼 スズナリの洞窟の異変の調査

依頼人 ミサス村の村長(代役は青年)

内容
一週間ほど前から、起こっているスズナリの洞窟の異変。
それはミミックによるアトラクション施設創設による物でした。
本人は民に害するつもりもなく、ただ冒険者を楽しませたいだけであり、危険性はないと判断しました。採掘用とアトラクション用の洞窟の入り口を作らせる事にし、できるだけ村人を困らせないようにします。
もし、問題があるのなら早急に対処するつもりです。





〜続く〜

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また一時期執筆を休んでいました…安定しないな〜自分…
そんなわけで第二話、まだエロ無し…
次ぐらいには…そんな風に思っています。

10/08/21 22:33 zeno

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