paradigm shift
宿敵との戦いで傷ついた竜は、自らの巣を目指す。
あちこちに傷を負い、紅にまみれた巨体は、ふらふらと揺れながら空を往く。
しかし、その恐ろしげな瞳に怒りの色は無い。眼底の真紅を映して染まる瞳には、ただ笑みの色があった。
宿敵との戦いで傷ついた剣士は、人の街を目指す。
鎧は砕け、兜は壊れ、炎に焦がれた剣士は、力なく歩みを進めて山道を歩く。
しかし、その幼げな顔に怒りの表情は無い。太陽の光を受けて輝きを放つ瞳には、ただ笑みの色があった。
――宿敵よ、しばし眠れ。
傷を癒し、英気を養い、再び闘気を燃やせしとき、我らはあいまみえよう。
気が熟せしときまで、しばし眠れ。我が宿敵よ。
◆◇◇◆ paradigm shift ◆◇◇◆
私は数年ぶりに目を覚ました。
かつて宿敵である剣士から受けた傷も全て癒え、身体のどこにも痛む場所は無い。
もぞりと体を起こす。
「……?」
違和感がある。視点が低いのだ。
本来ならば私の体は10メートルを下らない巨体であるはずだ。なのに、視点の高さはせいぜい2メートル弱。いや、もっと低いだろう。
不思議に思ってあたりを見回すも、以前と変わった場所はない。巣にしている洞窟の壁には私が集めた財宝が山と積まれているし、柔らかい毛皮や草を敷き詰めた寝心地の良い寝床もそのままだ。
だが、その全てが妙に大きい。洞窟も寝る前より大きくなっているように感じる。
違和感につられて、自分の手に視線を落とした。
「……何が起こった……?」
私の手は、まるで人間のそれのようになっていた。ごつごつとした鱗が生えており、完全に人間のものという訳ではないが、フォルムとしてはそれに近い。
続いて、足や腹、身体のあちこちを調べる。
驚いたことに、私は縮んでしまったようだ。いや、それだけではない。
私はどうやら以前とは全く別の姿になってしまったようだ。
太くて力強かった脚は見る影も無く、代わりにあるのはほっそりした曲線を持つ、白い柔肌の覗く薄い鱗に包まれた脚。
かつての巨体を浮かせた巨大な翼は、すっかり小さくなって背中に畳まれている。
一薙ぎするだけで城壁を玩具のように砕いた剛腕は、細身で華奢な女の細腕に。
蓄えた財宝の中から、宝石のあしらわれた鏡を取り出す。
それを覗きこむと、そこには薄紫の長い髪を持ち、眼底の血を映した真紅の瞳がこちらを見返していた。その顔は端正に整っており、薄い驚きが見て取れた。
本当に、私は竜では無くなってしまったらしい。
まったく、どういう事だろうか。こんな体では、宿敵である彼に笑われてしまう。
だが、今更足掻いたところでどうにかなるものでもないだろう。
私が目覚めた事に、彼は気づいただろうか。いや、きっと気付いただろう。
「今の内に、もてなしの準備を整えるとしようか」
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
俺は重い鎧を着て、腰に長剣を吊って険しい山道を登っていた。
まったく、アイツはいつもこんなところに巣を作る。アイツは飛べるから良いだろうが、ひ弱な人間であるオレの事も考慮して欲しいものだ。
まあ、それも含めて俺とアイツはいつも戦ってきた。正直、もう何度目だか覚えていない。
無駄な思考を巡らせる間も足は止めず、ごつごつした岩場を踏みしめて歩く。
そろそろ、アイツのテリトリーだ。ペースを落とし、いつでも剣を抜けるような歩き方に変え、あたりを窺った。
今頃、アイツは俺が来たのを悟って巣で待ち構えているだろう。罠や不意打ちという姑息な手を使わない堂々とした奴ではあるが、用心するに越したことは無い。
「思えば、腐れ縁だよな……」
俺の今までの人生はほぼアイツとの戦いだったと言っていい。戦い始めた理由などもう覚えてはいないが、今までの戦いは後腐れの無い有意義なものだったと思う。
俺はアイツに鍛えてもらったようなものだ。
ざりっ。俺の足は洞窟の入り口を踏みしめた。もう、後戻りはできない。
わずかな逡巡の後、俺は最後の一歩を踏み出すのだった。
「ようこそ、クライン。私の巣へ」
低く腹に響くような重低音では無く、金属を打ち合わせたような澄んだ声は、俺の名を呼んだ。
その声の主を認めて、俺は抜きかけていた腰の剣を慌てて戻す。
俺の眼の前に居たのは、すらりとした細身の体を持つ女性だった。女性らしい曲線で形作られた体のラインは、見事な美を醸し出している。真っ白な絹のような肌を覗かせる腕や太ももは蠱惑的な魅力を放ち、だが全く媚びることのないその姿勢が清楚さを纏わせていた。
彼女の薄紫の長い髪は腰まで届き、そのベールに護られた双眸は、血を映して煉獄の赤色。やや憂いを帯びた無表情は、何故かこちらを誘惑しているようにも見える。
その、完璧とも言える女神の如き美貌から覗く異形さえなければ、俺は駆け寄り手の甲にキスでもしていたかもしれない。
不思議な艶を持つ薄紫の髪からは、太く長い角。その長い髪のカーテンをかき分けて伸びるは、力強い翼。そして、身体の要所を覆う鱗と甲殻。
その異形が不思議な魅力を持たせていたのも確かだったが、その姿は俺にある種の警戒を抱かせた。
「あ、あなたは?」
距離を置いて問いかける。
アイツに呪いをかけられた、哀れな犠牲者かもしれない。
だが、だとしたらアイツはどこに居るのだろう。
すると、目の前の美女はくすくすと笑いだした。決して下品な笑いでは無く、その中にもどこか気品のようなものを漂わせる余裕を持った笑み。
「ふふ、クライン。私だよ。分からないか? 君も私が目覚めたのを感じてこんな山奥まで来たのだろう?」
聞いたことがある。
何故だか分からないが、世界各地で“魔物”が消えている、という話を。だが、それは消えたのではなく、新たな姿になっただけなのだという話も。
実際に見てきた者の話では、魔物は人間の女性のような姿に変わり、男を攫うのだと言う。
だが、目の前のドラゴンのように、圧倒的な魔力を持つ種族までその変化に呑まれてしまうとは思ってもみなかった。
「グランディリア……!?」
「まったく、悲しいよ、クライン。君なら一目で気づいてくれると思っていた」
確かに、彼女の口調に変わりは無い。昔からこういう言い回しをする竜だった。
いつも落ち付いていて、しかしその真紅の瞳の奥には得体の知れない光を秘めている。そんな竜だった。
だが、その姿が絶世の美女に変わろうと、俺のやることに変わりは無い。
「グランディリア、俺の要件は解ってるんだろう……?」
剣の柄に手をかけて言う。それに対し、彼女は目を閉じてゆっくりと首を横に振って答えた。その仕草すら優美さにあふれ、後を追って舞う髪が美しい。
「私だって戸惑っているんだ。少し待ってくれないか」
「待つ?」
「ああ。まだ日も高い。少し話でもしよう」
「話って、なにを」
「なんでもいいさ。ああ、思えば君とこうしてゆっくり言葉を交わすのは初めてじゃないか? そう思うと緊張してくるよ」
緊張も興奮もしていない、平淡な声でグランディリアは言葉を紡ぐ。竜の姿だった時もこいつの感情は声と言葉から推察するしかなかったなあ、と俺は場違いな感想を抱いた。
「……馬鹿を言うな。俺はお前を倒すためにここに来たんだ」
「君は優しいな、クライン。今も敢えて“殺す”ではなく“倒す”という言葉を使ったろう。
その優しさに免じて、私の話も聞いて欲しい」
彼女の真紅の瞳が、俺の眼を真正面から覗きこむ。
心臓の鼓動が速くなり、頬が火照った。なまじ相手が美人なだけに、そういう顔をされると体は反応してしまう。
「そうやって煙に巻こうとしても無駄だ!」
それを振り払う意味も込めて、つい語気を荒くしてしまう。
「君がどうしてもというのなら、戦おう」
そう言った彼女は相変わらず無表情で、何を考えているのか分からないものだったけれど。
その言葉に含まれた悲しみのようなものは、少しだけ伝わって来た。
「……なんだよ…」
「……そうだ、話を聞いてくれたら、何だって一つ言う事を聞こう。何だって、だ」
そう言って、見つめられる。血色の眼が、どうしようもない真摯さで俺を貫いた。
その様は、無表情なのにどこか必死で、俺にちぐはぐな印象を与えてくる。
彼女の無表情は、感情が無いのではなく、その表現の仕方を知らない。そんな不器用の産物のように見えた。
「……ああもう! 良いよ。話をしよう!」
「……そう言って貰えてありがたいよ。前にも言ったけれど、私も今、混乱している。話相手が欲しかったんだ」
そう言って、にこりと笑った。
そして、笑みのまま言った。
「私は、君が好きだ。クライン」
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
やっと私の想いを伝える事が出来た。
やや満足していると、まるで時間が止まったように硬直しているクラインが若干のタイムラグを経て動き出す。
「お、おま、なに言ってるの!?」
どうやら驚いているようだ。
「どうした? そんなに意外か?」
「意外もなにも、まさかずっと殺し合い演じてた相手にそんな事言われる方が珍しいですよ!?」
「そうか。人間は難しいな」
まさか驚かれるとは。
だが、ずっと前から変わらないこの想いはその程度の事でくじけたりはしない。
「君に斬られた右の翼。折られた左の角。尻尾は3回も切り落とされたな。全部覚えているよ。切り裂く鋼の味まで」
「うっ……でもあれは……」
「わかっているよ。でも、私は、強い男が好きだ。そして君は強い。
恐らくこの世界で、私の事を一番に知っているのは君だろう」
そう言うと、彼はやれやれと首を横に振った。
「まったく、そう言う事言ってるのに全然恥ずかしそうじゃないな」
「いや、恥ずかしいよ。そして、断られたらと思うと冷や汗が吹き出る思いだ」
「“恥ずかしい”って言う時に、頬を染めるくらいの可愛さがほしいなあ……」
「……私じゃダメか?」
ドキドキする。
これが恋の味と言う奴なのだろうか。
この体になってから、初めてのことばっかりだ。
「やっぱり、私みたいな醜女ではダメか?」
「……いや、ダメじゃないさ」
「ならば、返事が欲しい」
声が震えていたかもしれない。
でも、それを聞かない訳にはいかなかった。耳を塞いでしまいたい衝動にかられながら、なんとか彼の眼を見据え続ける。
そして彼も、視線を逸らさない。
「お前は綺麗だよ。グランディリア。胸も大きいし腕は細いし太もももエロいし、顔も凄くきれいだ」
「胸? これが良いのか?」
そう言って、自分の胸にぶら下がっている二つの塊を手で持ち上げる。
以前の体にはなかったものだ。しかし人間の男の評価基準になっているらしい。
大きくてよかったと思う。
「あ、そんなふうに鷲掴みにしちゃダメ! それはもっと丁寧に扱いなさい!」
「? まあ、君が言うならそうなのだろうな。以降、これの取扱には気を付ける」
もっと、すくうような感じだろうか。とりあえず、扱いに気を付けなければ。
「まったく自覚の無い奴は……。それは大変貴重なものなんですよ!」
「むう、すまない」
彼は力強く語った。その剣幕に少し押され気味になる。
「で、俺から見てもお前はとても綺麗だよ。でも、それで良いのかが分からない」
彼の顔は少しだけ真剣で、やっぱりその視線は私から離れない。
「俺はお前の外見しか見てない。お前は一部であれ俺の内側を見てくれているのに、俺は外側しかみていない……見えないんだ」
「……残酷だな。君は。今度は夢を見る暇もくれないのか」
優しくて、残酷で。弱っちいくせに、強い。
人間は皆そうだ。矛盾を抱えて、時にそれに押しつぶされそうになりながらも、この世で最も輝く存在。
一歩間違えても、絶対にやり直せる、奇跡のような存在。
「だから、一つお願いがある。お前は一つだけ、言う事を聞いてくれるんだよな」
「ああ、私が出来る事なら、なんでも」
それは本心からの言葉だ。首だろうと命だろうと、私の持てるものなら何でも差し出そう。
「俺に、お前の内面を見せてくれ。それが俺のお願いだ」
彼の言葉と共に、夕日が音も無く山の向こうに沈んでいった。
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
「むう、恥ずかしいな、これは」
俺はグランディリアに組み伏せられていた。柔らかい草や毛皮が敷き詰められた寝床に、彼女に抱かれたまま押し倒される。
人型になっても竜族、彼女はその細腕のどこから発せられるのかという力で俺を離してくれない。
「おい、グランディリア」
「分かっている。だが、私に任せておくがいい。私とて初めてだが、見事やり遂げて見せよう」
既に鎧の類は脱がされ、その下にインナー代わりに着ていた簡素な上下も、半分以上脱がされている。
彼女も体のあちこちを覆っていた鱗や甲殻が消え、そのほっそりした裸身がほとんど露わになっていた。
その顔の前には、力強くそそり立つ俺のモノ。
かぷり、と可愛い口で、それを咥えられた。それと同時に、ざらついた肉食種特有の舌が不器用に愛撫する。
しばらく、彼女の口から漏れる水音だけが洞窟に響いた。
彼女は不器用で、淫靡な水音が途切れることなく洞窟にこだまし、同時に彼女の荒い息遣いがそれにアクセントを添える。
今まで見た事のない媚態であり、いつかの雄々しく力強い竜のイメージは、今の彼女からは感じられなかった。
「ど、どうだ、気持ち良いか?」
「ああ……」
口の周りを唾液で汚し、上目遣いでそう聞いてくる彼女はその返事に満足したのか、再び俺のモノに口を付ける。その小さな口で懸命にモノを咥え込み、舌だけでなく口全体での優しい愛撫。
「ん……はぁ、なんだか変な気分だ……。何か衝動じみたものが湧きあがってくる」
彼女はそう言って、今までは軽く咥えていただけだったモノを口いっぱいに頬張る。
途端、今までとは比べ物にならない快楽が俺を襲った。
「うっ!」
だが彼女はびくりと揺れた俺の身体をガッチリと押さえつけ、わずかな抵抗も許さない。彼女の舌は、まるで別の生き物のように俺を責めた。口腔全体が、ひっきりなしに快楽を伝えてくる。
「ぁう……、ん…はむ……」
彼女の可愛い口は、ぴちゃぴちゃと音を鳴らし、俺を高みへと持っていく。彼女はまるで肉を貪るように激しく俺のものを嬲った。口の端からは溢れ出た唾液が一筋、形の良い顎まで伝って銀の糸を作り出していた。
やがて、彼女が無尽蔵に与える快楽が許容値を超え、陰茎が限界まで膨張する。
「はぁ、出るぞ……!」
「?」
彼女はその言葉の意味が分からなかったのか、俺のモノを口に含んだまま小首を傾げた。両の煉獄の真紅を映した瞳には、疑問の光が浮かんでいた。
その瞬間、俺は限界を迎え、咄嗟に抜くことすらできず射精する。
「!?」
びゅるりと送り込まれた白濁液は彼女の口に満たされ、口の端から唾液と一緒に漏れ出る。その間にも液は注がれ続け、彼女の口を満たした。
彼女は驚いたようにそれを受け入れたが、すぐに口の中はいっぱいになる。慌てて口から抜いた際にもそれは迸り、彼女の髪や顔に大量にふりかけてしまう。
精液を体中にまぶし、胸の双丘のくぼみにも口から零れたそれが溜まっている。その表情はいつもの無表情では無く、どこか恍惚のそれだった。
「あぁ、ん……」
こくりと口の中のそれを飲み下し、彼女は笑みを浮かべてこちらを見た。顔中に精液をまぶし、口からも唾液を垂らす。
その表情は快楽の虜で、とろんとしたどこか吹っ切れた表情。
彼女は俺と視線を合わせ、その豊かな胸を押しつけるように抱きついてきた。体中を覆っていた甲殻も今は無く、完全に白の裸体を晒している。
「クライン」
「………」
「さっきから股がべたべたするのだ。よく分からないが、自分で抑えきれない衝動が私を動かす。こういう時どうすればいいのか、クラインならば知っているだろう?」
ちら、と視線を送ると、彼女の火処はすでにべたべたに濡れていた。濡れそぼったそこから愛液を滴らせながら、彼女は俺を見る。
「ああ、知ってる」
「今度は私の番だ。もっと私を知ってくれ」
しなだれかかってくる彼女の体を軽く受け止め、彼女の胸を思い切り顔に押しつけられた。膝立ちのような体勢の彼女の内股を伝う愛液が、俺の腹を濡らす。
そのまま、上からゆっくりと降りてきた彼女の体を受け止める。彼女の柔肌が、吸いつくように俺の全身を犯した。肌を重ねただけで分かる。この女は魔性の竜であることが。
「もっと、あぁ……、私に、教えてくれ」
情愛の赤に彩られた彼女の両の瞳に覗き込まれ、俺の理性は跡形も無く消し飛んだ。
「ぁぁあああぁああっ……!」
堪え切れない、といった感じに口から漏れる嬌声。もう何度目の絶頂だろうか。彼女の花弁の奥深くに突き立てられたモノはこちらも白い液を撒き散らし、彼女の花弁は惜しみなく蜜を撒く。既に二人ともべたべただ。
彼女の白い柔肌の上には玉の汗が浮き、重ねた俺の肌とのほどよい潤滑剤となる。
「きもちいぃよ……クライン……!」
「俺も、だよ。グランディリア……」
そう言うと同時に、彼女は俺を離すまいとするように俺を抱きしめる。そのせいでモノはより深い位置に突き立てられ、その快楽に彼女は身を震わせた。
抱きしめ合い、彼女は俺を受け入れながら、さらに顔を近づけて唇を貪った。彼女の長い舌が口の中に入り込んでくる。
息はすでにこれ以上ないほど荒く、全身汗と愛液まみれ。幾度となく口づけをかわした口は相手の味でいっぱいだ。
それでもまだ身体の奥底から湧き上がってくる衝動は消えず、彼女もまだ力尽きることなく俺を受け入れる。
「ずっとこのままでいたい。もっと気持ちよくなっていたい」
そう言って彼女はまた腰を動かす。
「はぁあぁぁ……♪」
それに呼応して、俺も彼女の火処に向けてモノを突き出す。
彼女の花弁は、まるで甘い甘い罠のようだった。どこまで行っても底すら見えず、もっと奥へ誘うように大量の蜜を滴らせる。それに浮かれて更に奥に踏み込めば、ばっくりと閉じた花弁に全てを絞り取られるのだ。
今もまた、彼女はきつく俺のモノを締め付ける。その摩擦と蜜で、甘い痺れのような快楽が俺をまっすぐに貫いた。
「うぅぅ……ッ」
「あぁ、もっと、んっ……出して、いいよ?」
いつの間にか口調すら変わった彼女に、もっともっととせがまれる。それにつられて、俺は未だ萎えずに貪欲に彼女を求めるモノを突き立てる。
瞬間、視界さえ暗転するほどの快感がスパークし、彼女の花弁から粘ついた白濁液が迸った。
「んぁぁああああぁぁあああッッ!」
痙攣にも似た動きで、彼女は耐えられない快楽に翻弄される。それは俺も同じで、最早処理の限界を超えた快感の濁流に身を弄ばれた。
「私の、はぁっ…、味はどう……? 我が君」
それが、この日、俺がちゃんと意識を留めているうちに聞いた最後の言葉だった。
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
「結婚しよう、グランディリア」
「は? 今なんと言ったのだ、我が君」
「だから、結婚しようと言ったんだ」
「本当か、それは本当にうれしいな。本当に夢のようだ」
「夜以外のお前は本当に無表情だなぁ」
「我が君が命令すれば、どんな表情だってしてみせるとも」
「だーっ、そんなんじゃないの。女の子が自然に浮かべる表情が見たいの!」
「そうか。それについては善処しよう」
「出来てない……今の時点で出来てないよ……」
「何か言ったか? 我が君」
「いいや、なんにも……。
で、どうだ? 俺と結婚してくれる?」
「当然だ。例え我が君が嫌だと言ってももう無理だ」
「そうか。では改めて。
――結婚しよう、グランディリア」
「喜んで、クライン。私は我が君にどこまでも付いて行くとも」
あちこちに傷を負い、紅にまみれた巨体は、ふらふらと揺れながら空を往く。
しかし、その恐ろしげな瞳に怒りの色は無い。眼底の真紅を映して染まる瞳には、ただ笑みの色があった。
宿敵との戦いで傷ついた剣士は、人の街を目指す。
鎧は砕け、兜は壊れ、炎に焦がれた剣士は、力なく歩みを進めて山道を歩く。
しかし、その幼げな顔に怒りの表情は無い。太陽の光を受けて輝きを放つ瞳には、ただ笑みの色があった。
――宿敵よ、しばし眠れ。
傷を癒し、英気を養い、再び闘気を燃やせしとき、我らはあいまみえよう。
気が熟せしときまで、しばし眠れ。我が宿敵よ。
◆◇◇◆ paradigm shift ◆◇◇◆
私は数年ぶりに目を覚ました。
かつて宿敵である剣士から受けた傷も全て癒え、身体のどこにも痛む場所は無い。
もぞりと体を起こす。
「……?」
違和感がある。視点が低いのだ。
本来ならば私の体は10メートルを下らない巨体であるはずだ。なのに、視点の高さはせいぜい2メートル弱。いや、もっと低いだろう。
不思議に思ってあたりを見回すも、以前と変わった場所はない。巣にしている洞窟の壁には私が集めた財宝が山と積まれているし、柔らかい毛皮や草を敷き詰めた寝心地の良い寝床もそのままだ。
だが、その全てが妙に大きい。洞窟も寝る前より大きくなっているように感じる。
違和感につられて、自分の手に視線を落とした。
「……何が起こった……?」
私の手は、まるで人間のそれのようになっていた。ごつごつとした鱗が生えており、完全に人間のものという訳ではないが、フォルムとしてはそれに近い。
続いて、足や腹、身体のあちこちを調べる。
驚いたことに、私は縮んでしまったようだ。いや、それだけではない。
私はどうやら以前とは全く別の姿になってしまったようだ。
太くて力強かった脚は見る影も無く、代わりにあるのはほっそりした曲線を持つ、白い柔肌の覗く薄い鱗に包まれた脚。
かつての巨体を浮かせた巨大な翼は、すっかり小さくなって背中に畳まれている。
一薙ぎするだけで城壁を玩具のように砕いた剛腕は、細身で華奢な女の細腕に。
蓄えた財宝の中から、宝石のあしらわれた鏡を取り出す。
それを覗きこむと、そこには薄紫の長い髪を持ち、眼底の血を映した真紅の瞳がこちらを見返していた。その顔は端正に整っており、薄い驚きが見て取れた。
本当に、私は竜では無くなってしまったらしい。
まったく、どういう事だろうか。こんな体では、宿敵である彼に笑われてしまう。
だが、今更足掻いたところでどうにかなるものでもないだろう。
私が目覚めた事に、彼は気づいただろうか。いや、きっと気付いただろう。
「今の内に、もてなしの準備を整えるとしようか」
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
俺は重い鎧を着て、腰に長剣を吊って険しい山道を登っていた。
まったく、アイツはいつもこんなところに巣を作る。アイツは飛べるから良いだろうが、ひ弱な人間であるオレの事も考慮して欲しいものだ。
まあ、それも含めて俺とアイツはいつも戦ってきた。正直、もう何度目だか覚えていない。
無駄な思考を巡らせる間も足は止めず、ごつごつした岩場を踏みしめて歩く。
そろそろ、アイツのテリトリーだ。ペースを落とし、いつでも剣を抜けるような歩き方に変え、あたりを窺った。
今頃、アイツは俺が来たのを悟って巣で待ち構えているだろう。罠や不意打ちという姑息な手を使わない堂々とした奴ではあるが、用心するに越したことは無い。
「思えば、腐れ縁だよな……」
俺の今までの人生はほぼアイツとの戦いだったと言っていい。戦い始めた理由などもう覚えてはいないが、今までの戦いは後腐れの無い有意義なものだったと思う。
俺はアイツに鍛えてもらったようなものだ。
ざりっ。俺の足は洞窟の入り口を踏みしめた。もう、後戻りはできない。
わずかな逡巡の後、俺は最後の一歩を踏み出すのだった。
「ようこそ、クライン。私の巣へ」
低く腹に響くような重低音では無く、金属を打ち合わせたような澄んだ声は、俺の名を呼んだ。
その声の主を認めて、俺は抜きかけていた腰の剣を慌てて戻す。
俺の眼の前に居たのは、すらりとした細身の体を持つ女性だった。女性らしい曲線で形作られた体のラインは、見事な美を醸し出している。真っ白な絹のような肌を覗かせる腕や太ももは蠱惑的な魅力を放ち、だが全く媚びることのないその姿勢が清楚さを纏わせていた。
彼女の薄紫の長い髪は腰まで届き、そのベールに護られた双眸は、血を映して煉獄の赤色。やや憂いを帯びた無表情は、何故かこちらを誘惑しているようにも見える。
その、完璧とも言える女神の如き美貌から覗く異形さえなければ、俺は駆け寄り手の甲にキスでもしていたかもしれない。
不思議な艶を持つ薄紫の髪からは、太く長い角。その長い髪のカーテンをかき分けて伸びるは、力強い翼。そして、身体の要所を覆う鱗と甲殻。
その異形が不思議な魅力を持たせていたのも確かだったが、その姿は俺にある種の警戒を抱かせた。
「あ、あなたは?」
距離を置いて問いかける。
アイツに呪いをかけられた、哀れな犠牲者かもしれない。
だが、だとしたらアイツはどこに居るのだろう。
すると、目の前の美女はくすくすと笑いだした。決して下品な笑いでは無く、その中にもどこか気品のようなものを漂わせる余裕を持った笑み。
「ふふ、クライン。私だよ。分からないか? 君も私が目覚めたのを感じてこんな山奥まで来たのだろう?」
聞いたことがある。
何故だか分からないが、世界各地で“魔物”が消えている、という話を。だが、それは消えたのではなく、新たな姿になっただけなのだという話も。
実際に見てきた者の話では、魔物は人間の女性のような姿に変わり、男を攫うのだと言う。
だが、目の前のドラゴンのように、圧倒的な魔力を持つ種族までその変化に呑まれてしまうとは思ってもみなかった。
「グランディリア……!?」
「まったく、悲しいよ、クライン。君なら一目で気づいてくれると思っていた」
確かに、彼女の口調に変わりは無い。昔からこういう言い回しをする竜だった。
いつも落ち付いていて、しかしその真紅の瞳の奥には得体の知れない光を秘めている。そんな竜だった。
だが、その姿が絶世の美女に変わろうと、俺のやることに変わりは無い。
「グランディリア、俺の要件は解ってるんだろう……?」
剣の柄に手をかけて言う。それに対し、彼女は目を閉じてゆっくりと首を横に振って答えた。その仕草すら優美さにあふれ、後を追って舞う髪が美しい。
「私だって戸惑っているんだ。少し待ってくれないか」
「待つ?」
「ああ。まだ日も高い。少し話でもしよう」
「話って、なにを」
「なんでもいいさ。ああ、思えば君とこうしてゆっくり言葉を交わすのは初めてじゃないか? そう思うと緊張してくるよ」
緊張も興奮もしていない、平淡な声でグランディリアは言葉を紡ぐ。竜の姿だった時もこいつの感情は声と言葉から推察するしかなかったなあ、と俺は場違いな感想を抱いた。
「……馬鹿を言うな。俺はお前を倒すためにここに来たんだ」
「君は優しいな、クライン。今も敢えて“殺す”ではなく“倒す”という言葉を使ったろう。
その優しさに免じて、私の話も聞いて欲しい」
彼女の真紅の瞳が、俺の眼を真正面から覗きこむ。
心臓の鼓動が速くなり、頬が火照った。なまじ相手が美人なだけに、そういう顔をされると体は反応してしまう。
「そうやって煙に巻こうとしても無駄だ!」
それを振り払う意味も込めて、つい語気を荒くしてしまう。
「君がどうしてもというのなら、戦おう」
そう言った彼女は相変わらず無表情で、何を考えているのか分からないものだったけれど。
その言葉に含まれた悲しみのようなものは、少しだけ伝わって来た。
「……なんだよ…」
「……そうだ、話を聞いてくれたら、何だって一つ言う事を聞こう。何だって、だ」
そう言って、見つめられる。血色の眼が、どうしようもない真摯さで俺を貫いた。
その様は、無表情なのにどこか必死で、俺にちぐはぐな印象を与えてくる。
彼女の無表情は、感情が無いのではなく、その表現の仕方を知らない。そんな不器用の産物のように見えた。
「……ああもう! 良いよ。話をしよう!」
「……そう言って貰えてありがたいよ。前にも言ったけれど、私も今、混乱している。話相手が欲しかったんだ」
そう言って、にこりと笑った。
そして、笑みのまま言った。
「私は、君が好きだ。クライン」
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
やっと私の想いを伝える事が出来た。
やや満足していると、まるで時間が止まったように硬直しているクラインが若干のタイムラグを経て動き出す。
「お、おま、なに言ってるの!?」
どうやら驚いているようだ。
「どうした? そんなに意外か?」
「意外もなにも、まさかずっと殺し合い演じてた相手にそんな事言われる方が珍しいですよ!?」
「そうか。人間は難しいな」
まさか驚かれるとは。
だが、ずっと前から変わらないこの想いはその程度の事でくじけたりはしない。
「君に斬られた右の翼。折られた左の角。尻尾は3回も切り落とされたな。全部覚えているよ。切り裂く鋼の味まで」
「うっ……でもあれは……」
「わかっているよ。でも、私は、強い男が好きだ。そして君は強い。
恐らくこの世界で、私の事を一番に知っているのは君だろう」
そう言うと、彼はやれやれと首を横に振った。
「まったく、そう言う事言ってるのに全然恥ずかしそうじゃないな」
「いや、恥ずかしいよ。そして、断られたらと思うと冷や汗が吹き出る思いだ」
「“恥ずかしい”って言う時に、頬を染めるくらいの可愛さがほしいなあ……」
「……私じゃダメか?」
ドキドキする。
これが恋の味と言う奴なのだろうか。
この体になってから、初めてのことばっかりだ。
「やっぱり、私みたいな醜女ではダメか?」
「……いや、ダメじゃないさ」
「ならば、返事が欲しい」
声が震えていたかもしれない。
でも、それを聞かない訳にはいかなかった。耳を塞いでしまいたい衝動にかられながら、なんとか彼の眼を見据え続ける。
そして彼も、視線を逸らさない。
「お前は綺麗だよ。グランディリア。胸も大きいし腕は細いし太もももエロいし、顔も凄くきれいだ」
「胸? これが良いのか?」
そう言って、自分の胸にぶら下がっている二つの塊を手で持ち上げる。
以前の体にはなかったものだ。しかし人間の男の評価基準になっているらしい。
大きくてよかったと思う。
「あ、そんなふうに鷲掴みにしちゃダメ! それはもっと丁寧に扱いなさい!」
「? まあ、君が言うならそうなのだろうな。以降、これの取扱には気を付ける」
もっと、すくうような感じだろうか。とりあえず、扱いに気を付けなければ。
「まったく自覚の無い奴は……。それは大変貴重なものなんですよ!」
「むう、すまない」
彼は力強く語った。その剣幕に少し押され気味になる。
「で、俺から見てもお前はとても綺麗だよ。でも、それで良いのかが分からない」
彼の顔は少しだけ真剣で、やっぱりその視線は私から離れない。
「俺はお前の外見しか見てない。お前は一部であれ俺の内側を見てくれているのに、俺は外側しかみていない……見えないんだ」
「……残酷だな。君は。今度は夢を見る暇もくれないのか」
優しくて、残酷で。弱っちいくせに、強い。
人間は皆そうだ。矛盾を抱えて、時にそれに押しつぶされそうになりながらも、この世で最も輝く存在。
一歩間違えても、絶対にやり直せる、奇跡のような存在。
「だから、一つお願いがある。お前は一つだけ、言う事を聞いてくれるんだよな」
「ああ、私が出来る事なら、なんでも」
それは本心からの言葉だ。首だろうと命だろうと、私の持てるものなら何でも差し出そう。
「俺に、お前の内面を見せてくれ。それが俺のお願いだ」
彼の言葉と共に、夕日が音も無く山の向こうに沈んでいった。
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
「むう、恥ずかしいな、これは」
俺はグランディリアに組み伏せられていた。柔らかい草や毛皮が敷き詰められた寝床に、彼女に抱かれたまま押し倒される。
人型になっても竜族、彼女はその細腕のどこから発せられるのかという力で俺を離してくれない。
「おい、グランディリア」
「分かっている。だが、私に任せておくがいい。私とて初めてだが、見事やり遂げて見せよう」
既に鎧の類は脱がされ、その下にインナー代わりに着ていた簡素な上下も、半分以上脱がされている。
彼女も体のあちこちを覆っていた鱗や甲殻が消え、そのほっそりした裸身がほとんど露わになっていた。
その顔の前には、力強くそそり立つ俺のモノ。
かぷり、と可愛い口で、それを咥えられた。それと同時に、ざらついた肉食種特有の舌が不器用に愛撫する。
しばらく、彼女の口から漏れる水音だけが洞窟に響いた。
彼女は不器用で、淫靡な水音が途切れることなく洞窟にこだまし、同時に彼女の荒い息遣いがそれにアクセントを添える。
今まで見た事のない媚態であり、いつかの雄々しく力強い竜のイメージは、今の彼女からは感じられなかった。
「ど、どうだ、気持ち良いか?」
「ああ……」
口の周りを唾液で汚し、上目遣いでそう聞いてくる彼女はその返事に満足したのか、再び俺のモノに口を付ける。その小さな口で懸命にモノを咥え込み、舌だけでなく口全体での優しい愛撫。
「ん……はぁ、なんだか変な気分だ……。何か衝動じみたものが湧きあがってくる」
彼女はそう言って、今までは軽く咥えていただけだったモノを口いっぱいに頬張る。
途端、今までとは比べ物にならない快楽が俺を襲った。
「うっ!」
だが彼女はびくりと揺れた俺の身体をガッチリと押さえつけ、わずかな抵抗も許さない。彼女の舌は、まるで別の生き物のように俺を責めた。口腔全体が、ひっきりなしに快楽を伝えてくる。
「ぁう……、ん…はむ……」
彼女の可愛い口は、ぴちゃぴちゃと音を鳴らし、俺を高みへと持っていく。彼女はまるで肉を貪るように激しく俺のものを嬲った。口の端からは溢れ出た唾液が一筋、形の良い顎まで伝って銀の糸を作り出していた。
やがて、彼女が無尽蔵に与える快楽が許容値を超え、陰茎が限界まで膨張する。
「はぁ、出るぞ……!」
「?」
彼女はその言葉の意味が分からなかったのか、俺のモノを口に含んだまま小首を傾げた。両の煉獄の真紅を映した瞳には、疑問の光が浮かんでいた。
その瞬間、俺は限界を迎え、咄嗟に抜くことすらできず射精する。
「!?」
びゅるりと送り込まれた白濁液は彼女の口に満たされ、口の端から唾液と一緒に漏れ出る。その間にも液は注がれ続け、彼女の口を満たした。
彼女は驚いたようにそれを受け入れたが、すぐに口の中はいっぱいになる。慌てて口から抜いた際にもそれは迸り、彼女の髪や顔に大量にふりかけてしまう。
精液を体中にまぶし、胸の双丘のくぼみにも口から零れたそれが溜まっている。その表情はいつもの無表情では無く、どこか恍惚のそれだった。
「あぁ、ん……」
こくりと口の中のそれを飲み下し、彼女は笑みを浮かべてこちらを見た。顔中に精液をまぶし、口からも唾液を垂らす。
その表情は快楽の虜で、とろんとしたどこか吹っ切れた表情。
彼女は俺と視線を合わせ、その豊かな胸を押しつけるように抱きついてきた。体中を覆っていた甲殻も今は無く、完全に白の裸体を晒している。
「クライン」
「………」
「さっきから股がべたべたするのだ。よく分からないが、自分で抑えきれない衝動が私を動かす。こういう時どうすればいいのか、クラインならば知っているだろう?」
ちら、と視線を送ると、彼女の火処はすでにべたべたに濡れていた。濡れそぼったそこから愛液を滴らせながら、彼女は俺を見る。
「ああ、知ってる」
「今度は私の番だ。もっと私を知ってくれ」
しなだれかかってくる彼女の体を軽く受け止め、彼女の胸を思い切り顔に押しつけられた。膝立ちのような体勢の彼女の内股を伝う愛液が、俺の腹を濡らす。
そのまま、上からゆっくりと降りてきた彼女の体を受け止める。彼女の柔肌が、吸いつくように俺の全身を犯した。肌を重ねただけで分かる。この女は魔性の竜であることが。
「もっと、あぁ……、私に、教えてくれ」
情愛の赤に彩られた彼女の両の瞳に覗き込まれ、俺の理性は跡形も無く消し飛んだ。
「ぁぁあああぁああっ……!」
堪え切れない、といった感じに口から漏れる嬌声。もう何度目の絶頂だろうか。彼女の花弁の奥深くに突き立てられたモノはこちらも白い液を撒き散らし、彼女の花弁は惜しみなく蜜を撒く。既に二人ともべたべただ。
彼女の白い柔肌の上には玉の汗が浮き、重ねた俺の肌とのほどよい潤滑剤となる。
「きもちいぃよ……クライン……!」
「俺も、だよ。グランディリア……」
そう言うと同時に、彼女は俺を離すまいとするように俺を抱きしめる。そのせいでモノはより深い位置に突き立てられ、その快楽に彼女は身を震わせた。
抱きしめ合い、彼女は俺を受け入れながら、さらに顔を近づけて唇を貪った。彼女の長い舌が口の中に入り込んでくる。
息はすでにこれ以上ないほど荒く、全身汗と愛液まみれ。幾度となく口づけをかわした口は相手の味でいっぱいだ。
それでもまだ身体の奥底から湧き上がってくる衝動は消えず、彼女もまだ力尽きることなく俺を受け入れる。
「ずっとこのままでいたい。もっと気持ちよくなっていたい」
そう言って彼女はまた腰を動かす。
「はぁあぁぁ……♪」
それに呼応して、俺も彼女の火処に向けてモノを突き出す。
彼女の花弁は、まるで甘い甘い罠のようだった。どこまで行っても底すら見えず、もっと奥へ誘うように大量の蜜を滴らせる。それに浮かれて更に奥に踏み込めば、ばっくりと閉じた花弁に全てを絞り取られるのだ。
今もまた、彼女はきつく俺のモノを締め付ける。その摩擦と蜜で、甘い痺れのような快楽が俺をまっすぐに貫いた。
「うぅぅ……ッ」
「あぁ、もっと、んっ……出して、いいよ?」
いつの間にか口調すら変わった彼女に、もっともっととせがまれる。それにつられて、俺は未だ萎えずに貪欲に彼女を求めるモノを突き立てる。
瞬間、視界さえ暗転するほどの快感がスパークし、彼女の花弁から粘ついた白濁液が迸った。
「んぁぁああああぁぁあああッッ!」
痙攣にも似た動きで、彼女は耐えられない快楽に翻弄される。それは俺も同じで、最早処理の限界を超えた快感の濁流に身を弄ばれた。
「私の、はぁっ…、味はどう……? 我が君」
それが、この日、俺がちゃんと意識を留めているうちに聞いた最後の言葉だった。
◆◇◇◆ ◆◇◇◆
「結婚しよう、グランディリア」
「は? 今なんと言ったのだ、我が君」
「だから、結婚しようと言ったんだ」
「本当か、それは本当にうれしいな。本当に夢のようだ」
「夜以外のお前は本当に無表情だなぁ」
「我が君が命令すれば、どんな表情だってしてみせるとも」
「だーっ、そんなんじゃないの。女の子が自然に浮かべる表情が見たいの!」
「そうか。それについては善処しよう」
「出来てない……今の時点で出来てないよ……」
「何か言ったか? 我が君」
「いいや、なんにも……。
で、どうだ? 俺と結婚してくれる?」
「当然だ。例え我が君が嫌だと言ってももう無理だ」
「そうか。では改めて。
――結婚しよう、グランディリア」
「喜んで、クライン。私は我が君にどこまでも付いて行くとも」
11/09/09 11:53更新 / 湖