触手の森のアリス(下)
ベリルは、夢を見ていた。
今は穴だらけとなったはずの、まだ彼女が幼かった頃の夢。
ベリルの家は武家の家系で、祖父も父も兄も国に仕える立派な軍人だった。そんな環境で育ったベリルも、漠然と将来は軍人になろうと思っていた。
だが、小さな彼女にはその剣はあまりにも重すぎた。そんな、遥か昔の夢。
小さなベリルは、大きな木剣を手に、広い庭に座り込んでいた。長い金髪は砂埃にくすみ、その白い頬もところどころ土で汚れている。白い膝までのズボンに灰色の上着をはおった彼女は、今にも泣き出しそうな表情で必死に嗚咽を堪えていた。
やがて、奥歯をかみしめて立ちあがる。膝についた土を払うこともせず、手に持った大きな木剣を構える。その構えは無様で、剣先はゆらゆらと揺れ、それを支える手もプルプルと震えている。とてもではないが、攻撃足り得る斬撃を放てる体勢ではない。
「やあっ!」
それでも、小さなベリルはそれを振る。父が、兄がやっていたように、利き足を大きく踏み出しての一撃。本来なら、踏み込むと同時に相手の頭を割るべく渾身の一撃が振り下ろされる。
だが、小さな彼女がそれを実行できるはずもない。素早く相手の懐に入り込むための踏み込みは鈍重な足踏みとなり、それと同期して振り下ろされる必殺の一撃はただの自由落下になりはてる。鈍い音を立て剣先は浅く地面を抉り、それを支えきれなかった彼女は地面に転がる。
「………っ!!」
その無様さに、再び涙が溢れそうになる。
訓練場の土に仰向けに体を預けながら、手でごしごしと涙を拭く。それでも、まだ剣は放さない。再び、体に力を入れて起き上がろうとした時。
「ああ、オマエ。そんなんじゃいつまでたっても上手くなんてならねーぜ」
いつの間にか、目の前には燃えるような赤い髪を持つ、三白眼気味の目をした少年が立っていた。その服装は地味で、いかにも普通の平民と言った感じだ。だが、その手には細身の木剣を下げていた。
だが、ここはベリルの家の庭だ。他人がほいほい入って来られるような場所ではない。
「………あなた、だれ? どうしてココにいるの?」
だから、そういった意味を込めてベリルは聞いた。だが、赤髪の少年は悪戯っぽく笑って何も答えない。
そして、持っていた細身の木剣をこちらに向かって放った。ベリルの目の前に落ちたその剣はからんと乾いた音を立てて地面に転がる。
「オマエにその剣は重すぎる。そっちを使え。で、俺に斬りかかってこい」
そう言うと、少年はかがみこんでベリルの持っていた大きな木剣を奪い、両手でしっかり構える。剣の鍔に近い部分を持ち、正眼で。
それに背中を押されるように、ベリルも少年が投げてよこした木剣を片手で握り、半身で構えた。それを見て、少年は口元を釣り上げて笑う。
「そうだ。そのまま来い」
挑発的な笑い。その言葉に誘われるまま、ベリルは少年に斬りかかった。
「うわああぁぁッ!!」
叫び声を上げ、体が命ずるままに剣を振るう。さっきの少女と同一人物かと疑いたくなるほどの踏み込みを以て、ベリルは一瞬で赤髪の少年の懐に入り込む。
そのまま袈裟に振り下ろされた剣を、少年は体をさばいて避ける。だが、ベリルは止まらない。かわされたと見るや、体を捻って剣を横なぎに振るっていた。しかし、それも木剣の腹で受けられる。
「やるじゃねーか」
少年は、嬉しそうにそう言った。返事の代わりに、ベリルは再度木剣を構え、斬りつけた。
「はぁ……はぁ……」
夕暮れ。家の庭に、ベリルは汗だくで倒れ込んでいた。その傍らには、赤髪の少年がいくらか傷の増えた大きな木剣を肩に担いで立っている。
世界が赤く染まり、影がどこまでも伸びる時間。その輝きに包まれながら少年は言う。
「オマエ、大分上手くなったぞ。またいつか来る。その剣は持っとけ」
がらん、と大きな木剣がベリルの脇に転がされる。じゃあな、とこちらを向かずに手だけを上げる少年に、ベリルは慌てて声をかける。
「あ、あの……名前、教えてくれる?」
それに、既に向こうを向いて数歩進んでいた少年の足が止まる。
「私、ベリル。………あなたは?」
夕焼けを抱える赤髪の少年は、顔だけでこちらを振り向く。沈む間際の太陽が放つ光で、その顔には深い陰影が刻まれていたけれど、ベリルは彼の視線を感じた。
その三白眼で挑戦的に笑う彼は、その夕焼けの世界にあってただ一人、朝日が昇る時のような雰囲気を纏っていた。
「俺の名前は―――」
「テューレ………」
ベリルは呟く。暗い森の中、樹にもたれながら。
もう忘れたと思っていた、遠い過去の記憶。だが、そこに確かに存在した少年は、今もこうしてここに居る。
あの時と同じ赤髪。あの時と同じ瞳。
「そうだ。私は君のことが好きだったんだ……」
ずっと忘れていた。あの少年が最後に言った言葉。彼の名前。
だが、ベリルが忘れてしまっても、彼はずっとそばに居てくれた。
ベリルは、そっと自分の体を覆うマントをめくった。その下の、彼女の肢体が露わになる。
それは、白い肌と、薄桃色の体毛だった。背中からは小さな翼と尻尾も生えている。頭を撫でれば、きっと角の感触もあるのだろう。
「テューレ……ようこそ、魔界へ」
ベリルは、眠りこけるテューレにゆっくりと近づいて行った。
「アリスはそんなことでルシをわるく思ったりしないよ」
森の中心部、開けた広場のようになっている場所で、アリスはルシと向かい合っていた。
先ほどまでの激闘が嘘のように静まり返った広場には、今は日の光の代わりに怜悧な月光が差し込む。
ルシはアリスに、言葉を介さずに言った。もし、触手の本性を見ておぞましいと思ったならばこの森を出るといい、と。
この森を出ても、十分生きていけるようにルシや他の触手達はアリスを育てた。
だが、それはルシの勝手な思い違いだったらしい。
「アリスはルシが大好きだもん。ルシになら、アリスの全部をあげていいんだよ」
満月の明かりが照らすなか、アリスはそう言った。その顔に浮かぶのは、満面の笑み。
月光は、その顔に、そして彼女の純白のワンピースのようなドレスに淡い陰影を作りだす。その金髪のみが、まばゆい黄金のような光を放つ。
月に祝福されし、太陽の一輪花。その姿は、まるで神々しい女神のようだった。
「……だから、つぎはアリスにやってほしいな」
その言葉に、馬鹿言ってるんじゃない、とルシがアリスの額を小突いた。アリスがあぅ、とのけぞり、そして、
「えへへ〜」
笑った。
まず、唇を重ねた。
浅く呼吸を繰り返していたテューレの口に、自分のそれを押し当てる。それと同時に、ベリルの手は緩めてあった彼の鎧の留め具を完全に外す。
この時点でテューレは目を覚ましていた。だが、自らの置かれた状況を理解することが出来ず、硬直する。
幸か不幸か、それが彼の抵抗する最後のチャンスだった。彼が我に返った時には、すでに鎧は全て外され、脇に置いてあった剣もベルトごと放り投げられた後だった。
そこでやっと、ベリルが口を放す。
何かを言おうと口を開いたテューレだが、ベリルの顔を見た途端、喉まで出かかっていた言葉が霧散する。
まず目に入るのは、小さな角。そして、その体を覆う薄桃色の体毛にその後ろに見える翼と尻尾。それらは、テューレにある事実を突き付けていた。
「テューレ……一緒に来てくれる?」
甘い色の瞳に覗き込まれ、そんな言葉を投げかけられる。
その言葉と共に、彼女はテューレのズボンを脱がしにかかっている。そして、テューレの返事も聞かず、その中身を細い指先でなぞるように撫でた。
「……っ」
「このまま、しちゃうよ?」
昔に戻ったような口調。少なくとも、テューレの上司としての口調ではなかった。表情も、いつものような怜悧さをうかがわせるそれではなく、子供のように豊かだ。
「………ああ。いいぜ」
だから、テューレも昔の口調で答える。その答えに、ぱぁっとベリルの顔に喜色が広がった。
そして、その嬉しそうな顔のまま、手で撫で続けていたそれを口に咥える。テューレの脳天を、電撃のような快感が駆け抜けた。
彼女はそれを咥えたまま、舌で撫でる。口の中から、ぴちゃぴちゃと淫靡な水音が漏れた。それと同時に、彼女の火処にも仄かな熱が燈る。
その感覚に、ベリルは頭の一部に靄がかかったような、不思議な気持ちになる。そして、より一層強く口の中のものを舐めた。
「んっ……はぅ」
そして、それが口の中で熱を持っていることを感じる。そこで耐えきれなくなって、ベリルは一旦口を放した。
「はぁ、はぁ、もう入れちゃっても、はぁ、いい? ガマンできない……」
そう言った時、彼女の火処から溢れた蜜が、たらりと糸を引いて地面に落ちる。徐々に冷えていくそれを肌で感じ、
「ああっ!もうダメっ!!」
ベリルは、テューレの返事を待たずにテューレの根を自らの亀裂に埋める。そうして2人が繋がった時、テューレは強くベリルを抱きしめた。
そして、今度は自分から、唇を重ねた。
「もうねたほうがいいかな〜?」
そう言ったアリスの周りに、ルシの触手が複数集まり、彼女の体を絡め取って大きな揺り籠を作り上げる。
それに恐れを微塵も感じず、朗らかにアリスは言う。
「そうだね。じゃあ、あしたはあのひとたちに会いにいこう。ともだちになってくれるかなぁ」
そう言いつつ、アリスはその青い瞳を閉じ、完全にルシに身を任せる。
そして、最後にこう言った。
「いつか、アリスとも遊んでね。ルシ」
今は穴だらけとなったはずの、まだ彼女が幼かった頃の夢。
ベリルの家は武家の家系で、祖父も父も兄も国に仕える立派な軍人だった。そんな環境で育ったベリルも、漠然と将来は軍人になろうと思っていた。
だが、小さな彼女にはその剣はあまりにも重すぎた。そんな、遥か昔の夢。
小さなベリルは、大きな木剣を手に、広い庭に座り込んでいた。長い金髪は砂埃にくすみ、その白い頬もところどころ土で汚れている。白い膝までのズボンに灰色の上着をはおった彼女は、今にも泣き出しそうな表情で必死に嗚咽を堪えていた。
やがて、奥歯をかみしめて立ちあがる。膝についた土を払うこともせず、手に持った大きな木剣を構える。その構えは無様で、剣先はゆらゆらと揺れ、それを支える手もプルプルと震えている。とてもではないが、攻撃足り得る斬撃を放てる体勢ではない。
「やあっ!」
それでも、小さなベリルはそれを振る。父が、兄がやっていたように、利き足を大きく踏み出しての一撃。本来なら、踏み込むと同時に相手の頭を割るべく渾身の一撃が振り下ろされる。
だが、小さな彼女がそれを実行できるはずもない。素早く相手の懐に入り込むための踏み込みは鈍重な足踏みとなり、それと同期して振り下ろされる必殺の一撃はただの自由落下になりはてる。鈍い音を立て剣先は浅く地面を抉り、それを支えきれなかった彼女は地面に転がる。
「………っ!!」
その無様さに、再び涙が溢れそうになる。
訓練場の土に仰向けに体を預けながら、手でごしごしと涙を拭く。それでも、まだ剣は放さない。再び、体に力を入れて起き上がろうとした時。
「ああ、オマエ。そんなんじゃいつまでたっても上手くなんてならねーぜ」
いつの間にか、目の前には燃えるような赤い髪を持つ、三白眼気味の目をした少年が立っていた。その服装は地味で、いかにも普通の平民と言った感じだ。だが、その手には細身の木剣を下げていた。
だが、ここはベリルの家の庭だ。他人がほいほい入って来られるような場所ではない。
「………あなた、だれ? どうしてココにいるの?」
だから、そういった意味を込めてベリルは聞いた。だが、赤髪の少年は悪戯っぽく笑って何も答えない。
そして、持っていた細身の木剣をこちらに向かって放った。ベリルの目の前に落ちたその剣はからんと乾いた音を立てて地面に転がる。
「オマエにその剣は重すぎる。そっちを使え。で、俺に斬りかかってこい」
そう言うと、少年はかがみこんでベリルの持っていた大きな木剣を奪い、両手でしっかり構える。剣の鍔に近い部分を持ち、正眼で。
それに背中を押されるように、ベリルも少年が投げてよこした木剣を片手で握り、半身で構えた。それを見て、少年は口元を釣り上げて笑う。
「そうだ。そのまま来い」
挑発的な笑い。その言葉に誘われるまま、ベリルは少年に斬りかかった。
「うわああぁぁッ!!」
叫び声を上げ、体が命ずるままに剣を振るう。さっきの少女と同一人物かと疑いたくなるほどの踏み込みを以て、ベリルは一瞬で赤髪の少年の懐に入り込む。
そのまま袈裟に振り下ろされた剣を、少年は体をさばいて避ける。だが、ベリルは止まらない。かわされたと見るや、体を捻って剣を横なぎに振るっていた。しかし、それも木剣の腹で受けられる。
「やるじゃねーか」
少年は、嬉しそうにそう言った。返事の代わりに、ベリルは再度木剣を構え、斬りつけた。
「はぁ……はぁ……」
夕暮れ。家の庭に、ベリルは汗だくで倒れ込んでいた。その傍らには、赤髪の少年がいくらか傷の増えた大きな木剣を肩に担いで立っている。
世界が赤く染まり、影がどこまでも伸びる時間。その輝きに包まれながら少年は言う。
「オマエ、大分上手くなったぞ。またいつか来る。その剣は持っとけ」
がらん、と大きな木剣がベリルの脇に転がされる。じゃあな、とこちらを向かずに手だけを上げる少年に、ベリルは慌てて声をかける。
「あ、あの……名前、教えてくれる?」
それに、既に向こうを向いて数歩進んでいた少年の足が止まる。
「私、ベリル。………あなたは?」
夕焼けを抱える赤髪の少年は、顔だけでこちらを振り向く。沈む間際の太陽が放つ光で、その顔には深い陰影が刻まれていたけれど、ベリルは彼の視線を感じた。
その三白眼で挑戦的に笑う彼は、その夕焼けの世界にあってただ一人、朝日が昇る時のような雰囲気を纏っていた。
「俺の名前は―――」
「テューレ………」
ベリルは呟く。暗い森の中、樹にもたれながら。
もう忘れたと思っていた、遠い過去の記憶。だが、そこに確かに存在した少年は、今もこうしてここに居る。
あの時と同じ赤髪。あの時と同じ瞳。
「そうだ。私は君のことが好きだったんだ……」
ずっと忘れていた。あの少年が最後に言った言葉。彼の名前。
だが、ベリルが忘れてしまっても、彼はずっとそばに居てくれた。
ベリルは、そっと自分の体を覆うマントをめくった。その下の、彼女の肢体が露わになる。
それは、白い肌と、薄桃色の体毛だった。背中からは小さな翼と尻尾も生えている。頭を撫でれば、きっと角の感触もあるのだろう。
「テューレ……ようこそ、魔界へ」
ベリルは、眠りこけるテューレにゆっくりと近づいて行った。
「アリスはそんなことでルシをわるく思ったりしないよ」
森の中心部、開けた広場のようになっている場所で、アリスはルシと向かい合っていた。
先ほどまでの激闘が嘘のように静まり返った広場には、今は日の光の代わりに怜悧な月光が差し込む。
ルシはアリスに、言葉を介さずに言った。もし、触手の本性を見ておぞましいと思ったならばこの森を出るといい、と。
この森を出ても、十分生きていけるようにルシや他の触手達はアリスを育てた。
だが、それはルシの勝手な思い違いだったらしい。
「アリスはルシが大好きだもん。ルシになら、アリスの全部をあげていいんだよ」
満月の明かりが照らすなか、アリスはそう言った。その顔に浮かぶのは、満面の笑み。
月光は、その顔に、そして彼女の純白のワンピースのようなドレスに淡い陰影を作りだす。その金髪のみが、まばゆい黄金のような光を放つ。
月に祝福されし、太陽の一輪花。その姿は、まるで神々しい女神のようだった。
「……だから、つぎはアリスにやってほしいな」
その言葉に、馬鹿言ってるんじゃない、とルシがアリスの額を小突いた。アリスがあぅ、とのけぞり、そして、
「えへへ〜」
笑った。
まず、唇を重ねた。
浅く呼吸を繰り返していたテューレの口に、自分のそれを押し当てる。それと同時に、ベリルの手は緩めてあった彼の鎧の留め具を完全に外す。
この時点でテューレは目を覚ましていた。だが、自らの置かれた状況を理解することが出来ず、硬直する。
幸か不幸か、それが彼の抵抗する最後のチャンスだった。彼が我に返った時には、すでに鎧は全て外され、脇に置いてあった剣もベルトごと放り投げられた後だった。
そこでやっと、ベリルが口を放す。
何かを言おうと口を開いたテューレだが、ベリルの顔を見た途端、喉まで出かかっていた言葉が霧散する。
まず目に入るのは、小さな角。そして、その体を覆う薄桃色の体毛にその後ろに見える翼と尻尾。それらは、テューレにある事実を突き付けていた。
「テューレ……一緒に来てくれる?」
甘い色の瞳に覗き込まれ、そんな言葉を投げかけられる。
その言葉と共に、彼女はテューレのズボンを脱がしにかかっている。そして、テューレの返事も聞かず、その中身を細い指先でなぞるように撫でた。
「……っ」
「このまま、しちゃうよ?」
昔に戻ったような口調。少なくとも、テューレの上司としての口調ではなかった。表情も、いつものような怜悧さをうかがわせるそれではなく、子供のように豊かだ。
「………ああ。いいぜ」
だから、テューレも昔の口調で答える。その答えに、ぱぁっとベリルの顔に喜色が広がった。
そして、その嬉しそうな顔のまま、手で撫で続けていたそれを口に咥える。テューレの脳天を、電撃のような快感が駆け抜けた。
彼女はそれを咥えたまま、舌で撫でる。口の中から、ぴちゃぴちゃと淫靡な水音が漏れた。それと同時に、彼女の火処にも仄かな熱が燈る。
その感覚に、ベリルは頭の一部に靄がかかったような、不思議な気持ちになる。そして、より一層強く口の中のものを舐めた。
「んっ……はぅ」
そして、それが口の中で熱を持っていることを感じる。そこで耐えきれなくなって、ベリルは一旦口を放した。
「はぁ、はぁ、もう入れちゃっても、はぁ、いい? ガマンできない……」
そう言った時、彼女の火処から溢れた蜜が、たらりと糸を引いて地面に落ちる。徐々に冷えていくそれを肌で感じ、
「ああっ!もうダメっ!!」
ベリルは、テューレの返事を待たずにテューレの根を自らの亀裂に埋める。そうして2人が繋がった時、テューレは強くベリルを抱きしめた。
そして、今度は自分から、唇を重ねた。
「もうねたほうがいいかな〜?」
そう言ったアリスの周りに、ルシの触手が複数集まり、彼女の体を絡め取って大きな揺り籠を作り上げる。
それに恐れを微塵も感じず、朗らかにアリスは言う。
「そうだね。じゃあ、あしたはあのひとたちに会いにいこう。ともだちになってくれるかなぁ」
そう言いつつ、アリスはその青い瞳を閉じ、完全にルシに身を任せる。
そして、最後にこう言った。
「いつか、アリスとも遊んでね。ルシ」
11/02/08 17:00更新 / 湖
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