連載小説
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触手の森のアリス(中)
「貴様ァ!!」

 突然聞こえた怒声に、アリスとルシは戯れるのをやめて下を向く。(もっとも、ルシの方に顔は無いのでいくつかの触手の先端がそちらを向いただけだったが)その先には、草の汁に濡れた剣を掲げて飛びかかってくる1人の騎士の姿があった。その黒髪を躍らせ、煌めく銀光を今にもルシに叩きつけようとしている。
 だが、ルシも負けてはいない。今まで無意味に宙を漂っているだけだった数本の触手が機敏に反応し、その女騎士を迎え撃つ。同時に、間違ってもアリスに被害が及ばないようにアリスを抱えた触手を少し持ち上げ、剣が届かない位置に置く。

「その少女を放せ!!」

 女騎士が叫ぶ。それを聞いていたアリスは、きょろきょろとあたりを見渡し、話題に上がった少女をさがす。だが、そんな人物は見当たらない。
 アリスがそんなことを考えている間も、四方八方から伸びた触手が騎士を追い詰める。彼女は鋭く剣を振るうが、ルシの素早い動きに剣先は翻弄されている。そして、前ばかりに気を取られていた彼女は、後ろから近づいた触手に胴体を絡め取られた。
 
「――ッ!!」

 それと同時に手にも触手は絡みつき、その剣を封じる。あっという間にルシに絡め取られた騎士は、悔しそうな表情を浮かべていた。その瞳の光が、微かに揺らぐ。
 しかし、次の瞬間。その表情は驚愕に変わった。それと同時に、さあっと顔に赤みがさす。
 ばちん、と音を立てて鎧がはじけた。それは腹部のプレートで、その下にはルシの触手が見える。そして、次々と各所の鎧が内側から破壊される。その間も、騎士は見えない何かに貫かれたかのように顔をゆがめ、体をひねる。
 それらが何も意味しているのかを悟ったアリスは、慌てて目を閉じ耳を手で塞いだ。こちらの顔も真っ赤だ。

「みえないきこえなーい」

 それは、触手の習性。今まで触手に育てられたアリスとは違い、ただの外敵である騎士は一片の慈悲も無く、文字通りの餌食となる。
 騎士の鎧は全て壊され、剣も地面に落ちる。だが、唯一その騎士だけがルシに絡め取られたまま、宙に浮いている。そして、その肢体をなぞるように絡みつくルシの触手が、彼女を貫く。

「うっ……、くぅ………」

 しかし、それでもその騎士は光の消えない瞳でルシをにらみつける。触手に体の各所を嬲られながら、唯一自由のきく瞳で、相手を睨みつける。ともすれば、羞恥に歪む顔を必死に引き締めて。
 だが、ルシはそれを完全に無視し、更に数本の触手を騎士を犯しに向かわせる。たちまち、それらは彼女の体に絡みついた。

「がぁぁぁ………!!」

 今、彼女の火処では無理に入れられた数本の触手が暴れまわっているのだろう。それだけでも想像を絶する快感を味わっているはずだが、さらに周りの触手によって体中をまさぐられている。全身くまなく責め立てられ、もはや彼女は抵抗の言葉を紡ぐことすらできない。
 触手に孔を掘られ、敏感な部分を激しく責められる。その快感に、騎士は耐えることができなかったようだ。もはや表情すら緩み、体が細かく痙攣する。

「ぁ、ぁあっ! ぁああ、ああぁッッ!!」

 ルシの触手がわずかに動く度、彼女の体はそれを数倍にした勢いで激しく動く。それはもはや体が勝手に反応しているだけなのだろう。
 その口からは嬌声と共にだらしなく唾液が垂れ、下の口からもとろりとした蜜が零れおちる。先ほどまでは意思に満ちていた瞳も今は暗く濁り、抵抗するべく力がこもっていたはずの腕も力なくだらりと垂れている。
 その後、まだしばらく彼女は犯され続けた。




 脳髄を貫くような快感が、ベリルの体を駆け抜けた。もう、先ほどまで何を考えていたのかすら思い出せない。異常なまでの快楽に全て押し流された。だが、それでいい。この何物にも勝る快楽さえあればいい。
 ぬらぬらとした肉の質感を持つ触手が、遠慮容赦なくベリルの体に巻きつく。その引きしまった筋肉を思わせる弾力に、ベリルは体を任せる。その間もベリルの亀裂は絶え間なく他の触手が暴れまわって、蜜を貪欲にすすっている。そこから溢れ出る蜜で、すでにベリルの内腿はべたべただ。だが、その気味の悪い感触すら、今のベリルにとっては快楽を助長する1つの要素でしかない。

「ぅああぁッ! あぁぇ、っはぁあああぁッッ!!」

 激しく暴れる触手に、思わずベリルは叫び声を上げる。それと共に、体を思いきり仰け反らせる。
 が、それを許さないと言わんばかりに、ベリルを拘束したままの触手は勢いよくベリルを貫いた。ずぶっ、とくぐもった音をたて、それはベリルの奥深くまで進む。

「ぁ―――――」

 頭は電撃が走り抜け、視界までもが一瞬、暗転する。その代償に、耐えられるはずもない、圧倒的な快感がベリルをいたぶる。下の唇もそれを受け、口に含んだ触手をすべて吐き出すほどの勢いで艶めかしく糸を引く蜜を吐き出す。
 もはや、ベリルには快楽以外の物事を処理する余力は残っていない。触手に与えられた快楽にのみ律儀に反応し、体を震わせる。その口から垂れ流された唾液が、体が跳ねる度に宙に糸を引いた。
 あまりに激しい快楽に、意識すら数度持っていかれ、その度に更に激しい快楽によって意識を取り戻す。それに晒され続けた体は、すでにがくがくと震えだしていた。
 だが、ベリルはそれでも快楽を求める。もはや、自分の体すら顧みず、ひたすらに快楽を求める。そのベリルを、触手は疲れを知らないかのように犯し続けた。




 テューレは、ベリルが通ったであろう獣道を、同僚の騎士たちと進んでいた。
 邪魔な枝を切り払い、出来るだけ急ぐ。だが、この樹の乱立する森にこれだけの人数がいると、どうしても移動は遅くなってしまう。それが、どうしようもなくテューレを苛立たせる。

「くそッ!!急げ急げ!!」

 そう言って、自ら先頭を走る。が、太い枝や樹の蔓などが行く手を阻み、テューレの焦りを加速させてゆく。

(こんな時、アイツを守るために俺は騎士になったんだろ!? なんで今すぐ駆けつけられないんだッ!?)

 同僚の騎士たちは、皆一様に真剣な顔をしている。それも当然で、これくらいのことすら真面目に出来ないような者はこんな重要な任務には連れてこない。
 しかし、テューレにはそれが歪んだ笑みに見えて仕方がない。わざと自分を焦らせて、それを影で笑う歪んだ笑みに。
 もちろんそんなはずはない。彼らとて、副長が心配なのだ。歯を食いしばって前に進み続ける者もいる。だが、副長の無事を確認しないとテューレの焦りは納まらない。

(急げ。急げ急げ。急げ急げ急げ急げ急げ!!)

 だが、耐える。テューレ個人にとってはベリルの方が大切でも、ベリル自信はそうは言わないだろう。
 だから、耐える。焦りの劫火に、じりじりと身を焦がしながら。




 唐突にベリルは解放された。それと同時に、今までベリルを包み込んでいた最上の快楽が、淡い夢のように儚く砕けてゆく。
 どさり、とやわらかい草地に、仰向けにベリルは落ちる。それでも、ベリルの火処は蜜を溢れさせ、緩やかに体を濡らす。

「……な、いで。……やめ、ないでぇ」

 欲望に濁りきった瞳で、ベリルは触手を見上げる。火照った手を触手を追って伸ばすが、それは宙を掴むばかりで触手を引き寄せることは叶わない。
 すでに、ベリルは耐えがたい疼きを感じていた。今まで感じたことのない、どうしようもないほどの渇望。一度知ってしまった味は、もう二度と手放せないほどの甘美な味わい。
 
「止めないでぇ! もっと、もっと欲しいの!」

 それでも、目の前に揺れるいくつもの触手は何の反応も返さない。たまらず、ベリルは自らの手で秘所をいじりだす。
 指先に、どろりとした熱い蜜が絡みつく。それは勢いを弱めつつもなお滴り、緩やかにベリルの手を押し流そうとする。ベリルはそれに構わず手を深く差し込んだ。
 だが。どれほど強くこすろうと、先ほどまでの甘美な快楽は戻ってこない。ベリルはまるで狂ったように自分を責め続ける。

「はぁ、はぁ、はぁ、はぁ………」

 くちゃ、ぬちゃ、と淫猥な音が響き、ひっきりなしに自分の秘所をかき回すベリル。だが、一向に何も感じない。
 それを見下ろすように、触手はただ佇む。その様は、まるで何かを待っているようにも見えた。




「副長!!」

 ついにテューレは暗い森を抜け、ベリルの飛び込んだ広場に飛び込む。
 同時に抜剣し、いつでも斬りかかれるように正眼に構える。まぶしい日差しに目が慣れた時、テューレの目に飛び込んだのは。
 破れた衣服の破片を身にまとい、濁った瞳で自らを慰めるベリルの姿だった。

 そして、その時の訪れを契機に、広場に迷い込んだ騎士たちに、大量の触手が襲いかかった。


「ッ!!」

 咄嗟に襲いかかってきた触手を剣の腹でいなし、横に跳び退って避ける。だが、後ろの騎士たちとは切り離されてしまった。
 あちらはあちらで襲撃を受けており、混乱に陥っているようだ。それを見てとり、テューレは頭のスイッチを素早く切り替える。同時に、広場の中心に向かって走り出す。
 一瞬前までテューレが居た場所を、太い触手が通り抜ける。前から襲いかかってきた触手を踏み台にし、背後から襲ってきた触手もまとめて回避する。

「副長!!」

 先ほどと同じ台詞を繰り返し、荒い息を吐きながら自らの秘所をいじるベリルを抱え上げる。小柄なテューレだが、力は意外と強く片手でベリルを抱え上げた。
 そのまま彼女を肩に乗せたまま、やや速度を落としつつもテューレは走る。広場を横切り、暗い森の中に逃げ切るのに、さほど時間はかからなかった。




「はぁ、はぁ、はぁ…………」

 薄暗い森の中。既に目印を見失ってずいぶん経った。が、周りが少し明るくなってきていることからして、外に近づいているのだろう。
 少し樹の密度が下がっている場所を見つけ、樹にもたれさせるようにして背中のベリルを下ろす。走っている最中に眠ってしまったようで、浅い寝息を立てていた。裸のまま放置するのはよろしくないので、自分のマントをかぶせてその白い肢体を覆い隠してやる。
 テューレも体力が限界に達し、ベリルの脇にどさりと倒れ込むようにして寝そべる。本来ならせめて森を脱してから休むか、最悪でも不寝番を立てるべきなのだろうが、あいにく他の騎士たちとは分断されてしまった。テューレももう余力がない。
 剣をベルトごと外し、脇に置く。鎧のベルトも緩め、外すことはしないが、楽に寝られるように少し浮かせる。それから、脇で眠りこけるベリルを一瞥し、

「…………」

 テューレは、意識を手放した。
11/02/05 12:20更新 /
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■作者メッセージ
こんにちは、湖です。

何故か、このままでは異常な文章量になりそうです。
上と中をまとめた方が良かったかもしれません。
最悪、下がとても長くなる可能性も………。
はい、がんばりますので見捨てないでください。

では、読んで下さった皆様に、最大限の感謝を。

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