餅つき
「あけまして…おめで、とうございます…♥」
「えっと、あけまして、おめでとう……でいいのかな?」
「ふふ…あって、ますよ、貴方様♥」
三つ指をつき、うやうやしく頭を下げる彼女に見習い、
彼もまた、彼女を真似て挨拶をする。
「今日はその…なんかいつもと違って、凄い綺麗というか…素敵な感じだね」
「くす…お正月です、から」
普段から濡れた着物を羽織っているような彼女――ぬれおなごと呼ばれる魔物――だが、
今彼女が身につけている着物は普段のような薄い浴衣ではなく、
小さな模様が全体に入っている小紋と呼ばれる少し小洒落たものになっていた。
淡いピンクに近い紫色の生地に、小さな小桜の花が無数に散りばめられており、
振り袖のような派手さは無いものの、彼女のもつ淑やかさを表す様な、そんな優しさが垣間見れる。
大陸で生まれ、長らく大陸を旅していた彼――名をレオナという――にとっては、
初めてジパングで迎える【正月】というものに戸惑いつつも、普段と異なる数々の催しを心から楽しんでいた。
「ふふ…まずは。お年玉から…ですね」
「お年玉?」
「はい…くすくす」
そう言うと彼女は懐から何やら袋を取り出す。
普段身につけている服は常に湿ったような見た目だが、彼に渡すものは不思議と濡れているものはない。
そんな不思議さも、旅人として長く暮らしていた彼の好奇心を刺激したのかもしれない。
受け取った袋はジパング固有の植物から造られた紙で作られており、
大陸の紙とは異なる、独特な触感をしていた。
小さく書かれた狗の絵は、その年を表すだけでなく、1年を通してジパングの人々を守る神様として役目もあるらしい。
そんな見た目も良いお年玉袋だが、肝心の中身が気になる。
彼がふと彼女に視線を向けると、彼女は嬉しそうにニコリと微笑む。
それを了承の意と捉えた彼は、嬉しそうに袋を開ける。
「これは…券?しかもなんかすごい沢山入ってるんだけど…」
「はい…くすくす」
「あの……好き放題って…」
「貴方様の…好きな服装で…好きな場所…好きな体勢で…うふふ♥」
「えっと…あり、がとう?」
「どういたし、まして…ふふ」
いまいちお年玉が何であるか理解できなかったが、嬉しそうに頬を染める彼女を見て、
自分が抱える疑問を明らかにすることは諦めることにした。
「えっと、とりあえずご飯にしようか、お腹空いてきたしさ」
「はい…それじゃあ…」
そういうと彼女は普段のように台所へ向かうのではなく、彼の隣に寄り添い彼の腕にぎゅっと抱きつく。
うっとりとした、恍惚とした表情を浮かべる彼女と、ドギマギとした彼。
寄り添った彼女は、優しく彼の手に自分の手を添える。
「…ぼ、牡丹さん…?あの…そのご飯を」
「くす…今日のご飯、は…お餅…ですよ」
「オ、オモチって…?」
「はい…きっと貴方様の、お口に…合いますから…くすくす」
そういうと彼女の身につけていた小紋の着物は、
まるで見えない手に脱がされているかのように、ゆっくりと脱げていく。
細く女性らしさを感じる丸い肩が見え、徐々に脱げていく着物の隙間からは鎖骨も覗く。
そして彼が大好きな、彼女の豊満な胸の谷間が見える所で動きは止まる。
元々着物は擬態であり、彼女の意思によって色も質感も彼女の思うがままに表現できるものだが、こんなことまで出来るとは彼も知らないことだった。
露出し、けれども肝心の所は見えず、どこかじれったさを感じるところで止まっている。
彼の目が彼女の谷間に釘付けになっているのを、彼女は満足げな笑みを浮かべて見つめていた。
そんな彼を前に、彼女は彼の手を掴むとそっと自分の谷間へと持っていく。
何も出来ずに彼女の行動を見ることしか出来ない彼を、くすくすと笑いながら彼の手を着物と肌の間に導く。
いつも少し湿り、ひんやりとする彼女の肌だが、今日は何故か人肌よりも少し温かい程になっていた。
「あっ…温かい…」
「くすくす♥ 特製のお餅は、どう、ですか?貴方様だけの…特別なお餅…♥」
「すごい…温かくて…とても、柔らかくて…それに、いつもより大きくて…」
「ふふ…♥ もっと、もっと…満足するまで……貴方様の…好きなように♥」
「これが…オモチ…」
無論、完全に間違えたことを教えているが、時たま彼女はこうして彼に誤ったジパング文化を教える。
それがわざとなのか、それとも天然なのかは不明だが。
だが、いつもよりもモチモチとした、サラサラなその肌はまさしくもち肌と言えるものだった。
ぬれおなごという種族であるからこそ出来るこの芸当に、彼はすっかり夢中になっていた。
彼女の手が離れても、彼の手は彼女特製の【おもち】をその手でひたすらに堪能していた。
「んっ…ふふ…あ、んっ♥ 貴方様…もっと、触ってくださ、い…♥」
手で触れば容易く形を変えるにも関わらず、まるで手に吸い付いてくるような彼女の胸。
揉みしだくほどにもっと触りたくなる、そんな触感だった。
「んぅっ…んっ…ふあ♥…貴方様…んふふ…【おもち】は…もう1つ、ありますよ?」
「うぅぁっ…牡丹さんっ!」
湧き上がる興奮が我慢できず、彼女のその豊満な【おもち】を両手で揉みしだく。
半ば無理矢理に彼女の着物を脱がすと、彼女の背後から抱きしめるかのように両手を回し
先程よりもより強く、より彼女の【おもち】の感触を楽しむように手を動かす。
「牡丹さんっ!牡丹さんっ!」
「あんっ♥…ふふ…んっあっ…もっと…んぅっ♥触って、下さい…んぁっ♥」
揉みしだくほどに手に馴染んでいくような、より吸い付いてくるような彼女の胸のさわり心地に、ひたすらに夢中になって揉みしだいていた。
それでいて、彼女の胸の先端部だけは、彼の愛撫に悦ぶかのようにぷっくりとし、
ほんの少しだけ固くなっていた。
指で優しく抓む度に、普段の彼女からは想像も出来ないくらい、甘い吐息とともに喘ぎが零れてくる。
「んくぅっふぁ…♥貴方様…そこは…【おもち】じゃな、ひゃうっ♥んっあぁっ♥」
「ごめん、でも!手が止まらなくて…」
「んっはぅ♥あっ、んっ…んんぅ…意地悪♥♥」
だが、言葉とは裏腹に彼女の顔はとろんとし、蕩けきった笑みを浮かべていた。
彼が夢中で揉みしだく程に、彼女はその顔を綻ばせ、悦びの顔へと染まっていく。
時を忘れるほどに夢中で彼女の【おもち】を揉みしだいていたが、
次第に彼女の喘ぎは大きく、そして身体がふるふると震えていた。
「んっあっ…あぅ…んんぅっ…♥…触るのが…上手で、私…あぁ♥」
「牡丹さん…いいよ、我慢しないで」
「あっあっんっ…♥ふあぁ…だめ…です、もう…あぁぁっ♥♥」
その瞬間、彼女は身体を大きく、ビクンと震わせる。
その後も何度も身体を震わせながら、彼の手によってイかされたことを全身で悦んでいた。
次第に収まっていく震えの中で、ふと彼女は優しく彼が抱きしめてくれていることに気がつく。
彼のために特別に準備した温かさを上回る、彼の優しさという温もりに彼女は心から笑みを浮かべる。
「ふふ…貴方様…とても、温かい…です♥」
「牡丹さんも…とっても暖かくて、その…柔らかくて…」
「くすくす♥ご堪能、頂けて…なによりです♥ でも…」
そういうと彼女は、ゆっくりと彼に寄りかかっていた身体を起こすと、彼に向き合うように身体の向きを変える。
改めて正面から見る彼女の身体は、細身でありながらもたわわな胸を携えている。
彼女が常に濡れた服を身に纏うことを知らなければ、彼女がスライム属であることですら忘れるほどに
それほどに彼女の身体は彼にとって魅力的で、官能的だった。
そんな彼女は、見とれている彼の膝の上に向かい合うように座ると、そっと顔を近づける。
互いの吐息を感じるほどに顔を近づけ、優しい笑みで彼を見つめる。
彼女の優しいその瞳に、どこか吸い込まれるような感覚を味わっていると、ふいに彼女の唇が重なる。
「んっ…ちゅ…ぁむ…ちゅ、れぅ…ぢゅ…んぅ…ちゅ♥」
気持ちよくしてくれたお礼と言わんばかりに、彼女の唇に、舌に蹂躙される。
驚いた表情を浮かべていた彼も、次第に彼女と唇を重ねる度に、舌が交わる度にその表情は蕩けていく。
優しく彼女の背中に手を回し、なぞるように彼女の背中に指を這わす。
くすぐったさと気持ちよさが混ざったその快感に、彼女の口づけは更に艶かしく、情熱的に変わっていく。
「んむぅ…ちゅ…んふ♥ぢゅる…れぅ…ぁぷ…ちゅ…んっ…ふふ、貴方様♥」
漸く彼女も満足したのか、ゆっくりと唇を離す彼女。
恍惚とした表情を浮かべながら少しだけ出した舌からは、互いの唾液が混じり合った蜜が滴り落ちる。
そんな彼女を見て、思わずゴクリと唾を飲み込んだ彼を、彼女は満足そうな笑みを浮かべる。
「くすくす♥…貴方様、気持ち…よかったです、か?」
「…うん…凄い気持ちよくて…」
「ふふ♥よかった、です…ところで、お腹が、空いたって…言ってまし、たね」
「えっ?…あ、うん。そうだね…」
もはや、彼女との行為に夢中になっていたせいか、完全に忘れ去っていたことだったが、
そう言われると確かにお腹は空いていた。
そんな彼に、彼女は嬉しそうな笑みを浮かべると、少しだけ彼から身体を離す。
そして、自分の胸を両手で下から持ち上げ、彼に見せつけるようにする。
思わず彼女の胸に視線を送ってしまう彼に、彼女は嬉しそうに告げる。
「ふふ…おもちは、食べれる、んですよ…」
「えっ…たべ?え?」
「くすくす♥…貴方様に、揉まれて…ちょうど食べごろ、です…冷めない、うちに…召し上がれ♥」
「あ…あぁっ…い、頂きます!」
そういうと、彼は彼女の胸に顔を押し当てる。
無論本当に食べるわけではなく、優しく唇で甘噛するような優しい愛撫で彼女の【おもち】を堪能する。
柔らかさ、温かさは先程の手で触っていた時と変わらないものの、
先程では感じることの出来なかった、彼女の【おもち】の味が口に広がる。
「ぁむ…ん…」
「ふふ…どう、ですか?貴方様の、お口に合えば…いいのですけど」
「はぷ…ちゅ…っは…ほんのり甘い…とっても美味しい…」
「くすくす♥それは、良かった、です♥もっと…もっと、召し上がれ♥」
普段以上の興奮を感じながら、彼女のその胸を何度も何度も味わう。
ほんのりとした甘さは、素朴ながらもいつも彼のことを思う彼女の優しさそのもののようだった。
そしてそれは、いつまでも口に含んでいたくなるような、飽きない味わいだった。
遠い記憶の奥底、自分が思い出すことも出来ないほどに深い場所にある何かを浮かばせるような、そんな優しい味だった。
そんな彼を、彼女はとても柔らかな笑みを浮かべながら、彼の頭を撫でていた。
両方の乳房を何度も彼がしゃぶっているのを優しく眺めていた彼女だが、ふとした拍子にあることに気がつく。
彼のパンパンに膨れ上がった股間は、彼の表情とは裏腹にとても苦しそうにしていた。
先程までの優しい笑みとは少し意味の異なる、魔物特有の笑みを浮かべると、
手を彼の股間部に這わせながら、優しく彼の耳元で囁く。
「ふふ♥貴方様のここ…とても、苦しそう…ですね♥♥」
「ぁう…ごめん…その…」
「いいのです、よ…くすくす♥ちょうど…そろそろ、【餅つき】を…しようかと、思って、ましたから♥」
「も、餅つき?それは…」
何をするの?と聞こうとした瞬間、彼女が体重をかけ、彼のことを押し倒す。
恍惚とした表情を浮かべながら、彼の下半身を慣れた手つきでさらけ出すと、
露わになった彼の怒張したペニスを見てうっとりとしている。
そして彼のペニスに手を添えると、自分の秘所へと何度も擦り付けるようにする。
「ま、まってまって!今餅つきをするって!!」
「くすくす…だから、【餅つき】…ですよ♥貴方様、の立派な、杵で、【餅つき】です♥」
「あの…それって…」
「あは♥…それじゃあ、餅つきの…開始です、くすくす♥」
その瞬間、彼女の腰が落ち、彼の怒張したペニスは彼女の秘所に包み込まれる。
普段そこまで積極的ではない彼女が、珍しく見せたその姿にすっかりペースを奪われてしまう。
それだけでなく、普段以上にみっちりと吸い付いてくる彼女の秘所に思わず全身に力が入ってしまう。
気を抜けば、直ぐにでも射精してしまいそうなほどに、熱く、強い快感が襲ってくる。
「あはぁ♥貴方様…の、杵が、奥まで…」
「ぐっ…うぅぅ…牡丹さん…ちょっとまっ…」
「くすくす♥さぁ【餅つき】、です…くすくす♥ぺったん、ぺったん♪」
「あっ…く、ああぁぁっ!」
普段交わる時以上に、どこか楽しみ、嬉しそうな笑みを浮かべながら腰を振る彼女。
ぬちゅ、ぢゅぷ、くぢゅり…と彼女が腰を動かす度に淫らな水音が部屋に響く。
彼女の自在に変化する膣壁の感触と、蕩けてしまいそうな位熱くなっている彼女の膣に、
もはや為す術もなく、暴力的とも言える快感に必死に彼は必死に堪えるしか無かった。
そんな彼を更に責め立てるように、彼女は彼の手を取ると自分の胸へとあてがう。
「ふふ♥だめ、ですよ。【餅つき】は、ちゃんと、合いの手、が必要ですから…ね♥」
「くぁっ…くぅっ…合いの手、って言われても」
「つくだけ、では、おもちは…美味しく出来ません、よ…くすくす♥ほら…ぺったん、こねこね♥♥」
不思議な魔法にでもかかったかのように、彼女の胸に当てた手は、彼の意思を無視する様に、彼女の胸を揉みしだき、離すことができなかった。
両手は彼女の胸に吸い付かれるように、何度も何度も揉みしだき、
腰は彼女の動きに合わせるように、自然と上下に動いてしまっていた。
「んっんっ…あは♥んっふぁ、んぅ♥貴方様の、んんぅ♥杵、とっても、ひゃぅ♥気持ち、いい♥」
「まって…激し…」
「我慢、しないで、下さい♥私の中…いっぱい出して、下さい、ね♥」
「ぅぅ…牡丹、さん…っ!」
次第に動きの早くなる彼女の腰に、もはや彼の限界は目前だった。
彼の込み上がってくる射精感に合わせるかのように、彼女もまた絶頂は目前だった。
「んっあっふっ、んんっ♥あぁっ、貴方様、私も、もう…イッて、しまいそう♥」
「牡丹さん、僕ももう…っ!」
「出し、て下さい♥貴方様の、子種…いっぱい…牡丹、の中に♥♥」
「牡丹さんっ、牡丹っ!!あぁぁっっ!!」
「〜〜〜っ♥♥♥」
瞬間、彼のペニスからは勢い良く精子が飛び出し、彼女の膣内を彼色へと染め上げていく。
その脈動に合わせるように、彼女の膣壁はうねり、最後の一滴までもを搾り取る、
互いに身体を震わせながら、全身を駆け巡る快感に酔いしれる。
いつも以上に長く強い快感に痺れながら、何度も互いの名前を呼び合い、愛を確かめ合う。
身体の震えが漸く止まるころ、そっと彼女が身体を倒し、彼に甘えるように抱きついてくる。
「如何、でしたか?牡丹、との【餅つき】、は…ご堪能、頂けました、か?」
「んっ…うん…凄い、気持ちよかったよ」
「ふふ♥よかった、です♥」
そういうと、彼女は優しく彼の唇に自分の唇を重ねる。
先程のような激しさはなく、優しく包み込まれるような甘い口づけだった。
そっと唇を離すと、彼女はいつも通りの優しい笑みを浮かべていた。
「今年も、宜しく…お願い申し、上げます、貴方様♥」
「うん…こちらこそ宜しくね、牡丹さん」
二人の顔に笑みが浮かび、自然と口からは笑い声が溢れる。
終始彼女のペースに押されてしまったが、漸くこれでいつも通りの日常に戻ると彼が思った瞬間だった。
彼女が再び艶めかしい笑みを浮かべると、彼の耳元で囁く。
「貴方様の、杵は…まだ、つき足りない、みたいですね…くすくす♥」
「ち、ちがっ!これは」
「こんなに、硬いままでは、可哀想、です、ね♥」
そう言うと彼女は、腰を上げて一旦彼のまだ固いままのペニスを抜くと、そのまま床に寝転がる。
彼女の行動が読めない彼は、ひたすらに彼女の動きを目で追っていた。
彼に見せつけるように、ぎゅっと腕で胸をはさみ、寄せあげるようにしながらも、
手は自身の秘所に当て、先程まで彼のペニスに満たされていたそこを彼に見せつけるように広げている。
もはや彼女の言葉はなくとも、意味を理解する。
立ち上がり、彼女に覆いかぶさるようにすると、優しく彼女の唇に己の唇を重ねる。
「いっぱい…ついて、くださいませ、貴方様♥」
結局、元日は日が暮れるまで彼女と共に、【餅つき】をして過ごすこととなった。
− ○ − ○ − ○ − ○ − ○ − ○ − ○ − ○ − ○ −
満足気に笑みを浮かべながら、鼻歌交じりで台所に立つ彼女の後ろ姿を、
少し疲れ気味の表情で見つめる彼が居た。
さきほどまで散々乱れ、精子にまみれていた着物も、今朝見たときのように綺麗に整っており、改めて見る後ろ姿に思わず見とれてしまう。
そんな彼の視線を感じたのか、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべると、小皿を手に彼の元へと戻ってくる。
彼女の手にある小皿には、何やら小さな丸い白い物がのっている。
「ご飯が、出来るまでの間、お食べ…ください」
「これ…は?」
「くすくす、お餅、ですよ」
「え?これ?これがお餅なの?」
「えぇ…そうですよ、くすくす♥貴方様だけの、本当に…特別なお餅、です♥」
「……ってことは結局さっきまでの餅つきは嘘だったの?もぅ!」
「くすくす、嘘じゃ、ありませんよ…お食べに、なれば…分かります、から♪」
彼女の言っている意味がいまいち理解できない彼だったが、彼女の嬉しそうな顔を見て、
これ以上文句を言うのはやめることにし、そのお餅とやらを食べることにした。
小皿に手を伸ばし、小さなそのお餅を手に取った瞬間だった。
「(あれ?この感触って…)」
思わず彼女の顔を見ると着物の袖で口元を隠しているものの、とても嬉しそうに笑っていた。
もはや疑うまでもなかった。
手に取った餅を口にした瞬間、彼の予感は確信に変わる。
ほんのりと甘く、そして滑らかな舌触り。
モチモチとした感触の中に感じる、ほのかな温かさと優しさ。
「どう、ですか?貴方様だけに贈る…特別な、お餅です、よ。くすくす」
「…美味しい、とても…とっても美味しいよ」
「くすくすくす…良かった♥」
彼女がどうやってそれを作り出したのかは彼には分からなかったが、それは些細なことだった。
彼が口にしたその餅は、たとえ一国の王が求めようとも口にすることは出来ない、
彼だけが口にすることを許された、特別な餅であると理解したから。
自然と溢れた笑みからは、やがて笑い声が溢れ出る。
二人の幸せそうな笑いは、いつまでも絶えることなく続いていた。
「えっと、あけまして、おめでとう……でいいのかな?」
「ふふ…あって、ますよ、貴方様♥」
三つ指をつき、うやうやしく頭を下げる彼女に見習い、
彼もまた、彼女を真似て挨拶をする。
「今日はその…なんかいつもと違って、凄い綺麗というか…素敵な感じだね」
「くす…お正月です、から」
普段から濡れた着物を羽織っているような彼女――ぬれおなごと呼ばれる魔物――だが、
今彼女が身につけている着物は普段のような薄い浴衣ではなく、
小さな模様が全体に入っている小紋と呼ばれる少し小洒落たものになっていた。
淡いピンクに近い紫色の生地に、小さな小桜の花が無数に散りばめられており、
振り袖のような派手さは無いものの、彼女のもつ淑やかさを表す様な、そんな優しさが垣間見れる。
大陸で生まれ、長らく大陸を旅していた彼――名をレオナという――にとっては、
初めてジパングで迎える【正月】というものに戸惑いつつも、普段と異なる数々の催しを心から楽しんでいた。
「ふふ…まずは。お年玉から…ですね」
「お年玉?」
「はい…くすくす」
そう言うと彼女は懐から何やら袋を取り出す。
普段身につけている服は常に湿ったような見た目だが、彼に渡すものは不思議と濡れているものはない。
そんな不思議さも、旅人として長く暮らしていた彼の好奇心を刺激したのかもしれない。
受け取った袋はジパング固有の植物から造られた紙で作られており、
大陸の紙とは異なる、独特な触感をしていた。
小さく書かれた狗の絵は、その年を表すだけでなく、1年を通してジパングの人々を守る神様として役目もあるらしい。
そんな見た目も良いお年玉袋だが、肝心の中身が気になる。
彼がふと彼女に視線を向けると、彼女は嬉しそうにニコリと微笑む。
それを了承の意と捉えた彼は、嬉しそうに袋を開ける。
「これは…券?しかもなんかすごい沢山入ってるんだけど…」
「はい…くすくす」
「あの……好き放題って…」
「貴方様の…好きな服装で…好きな場所…好きな体勢で…うふふ♥」
「えっと…あり、がとう?」
「どういたし、まして…ふふ」
いまいちお年玉が何であるか理解できなかったが、嬉しそうに頬を染める彼女を見て、
自分が抱える疑問を明らかにすることは諦めることにした。
「えっと、とりあえずご飯にしようか、お腹空いてきたしさ」
「はい…それじゃあ…」
そういうと彼女は普段のように台所へ向かうのではなく、彼の隣に寄り添い彼の腕にぎゅっと抱きつく。
うっとりとした、恍惚とした表情を浮かべる彼女と、ドギマギとした彼。
寄り添った彼女は、優しく彼の手に自分の手を添える。
「…ぼ、牡丹さん…?あの…そのご飯を」
「くす…今日のご飯、は…お餅…ですよ」
「オ、オモチって…?」
「はい…きっと貴方様の、お口に…合いますから…くすくす」
そういうと彼女の身につけていた小紋の着物は、
まるで見えない手に脱がされているかのように、ゆっくりと脱げていく。
細く女性らしさを感じる丸い肩が見え、徐々に脱げていく着物の隙間からは鎖骨も覗く。
そして彼が大好きな、彼女の豊満な胸の谷間が見える所で動きは止まる。
元々着物は擬態であり、彼女の意思によって色も質感も彼女の思うがままに表現できるものだが、こんなことまで出来るとは彼も知らないことだった。
露出し、けれども肝心の所は見えず、どこかじれったさを感じるところで止まっている。
彼の目が彼女の谷間に釘付けになっているのを、彼女は満足げな笑みを浮かべて見つめていた。
そんな彼を前に、彼女は彼の手を掴むとそっと自分の谷間へと持っていく。
何も出来ずに彼女の行動を見ることしか出来ない彼を、くすくすと笑いながら彼の手を着物と肌の間に導く。
いつも少し湿り、ひんやりとする彼女の肌だが、今日は何故か人肌よりも少し温かい程になっていた。
「あっ…温かい…」
「くすくす♥ 特製のお餅は、どう、ですか?貴方様だけの…特別なお餅…♥」
「すごい…温かくて…とても、柔らかくて…それに、いつもより大きくて…」
「ふふ…♥ もっと、もっと…満足するまで……貴方様の…好きなように♥」
「これが…オモチ…」
無論、完全に間違えたことを教えているが、時たま彼女はこうして彼に誤ったジパング文化を教える。
それがわざとなのか、それとも天然なのかは不明だが。
だが、いつもよりもモチモチとした、サラサラなその肌はまさしくもち肌と言えるものだった。
ぬれおなごという種族であるからこそ出来るこの芸当に、彼はすっかり夢中になっていた。
彼女の手が離れても、彼の手は彼女特製の【おもち】をその手でひたすらに堪能していた。
「んっ…ふふ…あ、んっ♥ 貴方様…もっと、触ってくださ、い…♥」
手で触れば容易く形を変えるにも関わらず、まるで手に吸い付いてくるような彼女の胸。
揉みしだくほどにもっと触りたくなる、そんな触感だった。
「んぅっ…んっ…ふあ♥…貴方様…んふふ…【おもち】は…もう1つ、ありますよ?」
「うぅぁっ…牡丹さんっ!」
湧き上がる興奮が我慢できず、彼女のその豊満な【おもち】を両手で揉みしだく。
半ば無理矢理に彼女の着物を脱がすと、彼女の背後から抱きしめるかのように両手を回し
先程よりもより強く、より彼女の【おもち】の感触を楽しむように手を動かす。
「牡丹さんっ!牡丹さんっ!」
「あんっ♥…ふふ…んっあっ…もっと…んぅっ♥触って、下さい…んぁっ♥」
揉みしだくほどに手に馴染んでいくような、より吸い付いてくるような彼女の胸のさわり心地に、ひたすらに夢中になって揉みしだいていた。
それでいて、彼女の胸の先端部だけは、彼の愛撫に悦ぶかのようにぷっくりとし、
ほんの少しだけ固くなっていた。
指で優しく抓む度に、普段の彼女からは想像も出来ないくらい、甘い吐息とともに喘ぎが零れてくる。
「んくぅっふぁ…♥貴方様…そこは…【おもち】じゃな、ひゃうっ♥んっあぁっ♥」
「ごめん、でも!手が止まらなくて…」
「んっはぅ♥あっ、んっ…んんぅ…意地悪♥♥」
だが、言葉とは裏腹に彼女の顔はとろんとし、蕩けきった笑みを浮かべていた。
彼が夢中で揉みしだく程に、彼女はその顔を綻ばせ、悦びの顔へと染まっていく。
時を忘れるほどに夢中で彼女の【おもち】を揉みしだいていたが、
次第に彼女の喘ぎは大きく、そして身体がふるふると震えていた。
「んっあっ…あぅ…んんぅっ…♥…触るのが…上手で、私…あぁ♥」
「牡丹さん…いいよ、我慢しないで」
「あっあっんっ…♥ふあぁ…だめ…です、もう…あぁぁっ♥♥」
その瞬間、彼女は身体を大きく、ビクンと震わせる。
その後も何度も身体を震わせながら、彼の手によってイかされたことを全身で悦んでいた。
次第に収まっていく震えの中で、ふと彼女は優しく彼が抱きしめてくれていることに気がつく。
彼のために特別に準備した温かさを上回る、彼の優しさという温もりに彼女は心から笑みを浮かべる。
「ふふ…貴方様…とても、温かい…です♥」
「牡丹さんも…とっても暖かくて、その…柔らかくて…」
「くすくす♥ご堪能、頂けて…なによりです♥ でも…」
そういうと彼女は、ゆっくりと彼に寄りかかっていた身体を起こすと、彼に向き合うように身体の向きを変える。
改めて正面から見る彼女の身体は、細身でありながらもたわわな胸を携えている。
彼女が常に濡れた服を身に纏うことを知らなければ、彼女がスライム属であることですら忘れるほどに
それほどに彼女の身体は彼にとって魅力的で、官能的だった。
そんな彼女は、見とれている彼の膝の上に向かい合うように座ると、そっと顔を近づける。
互いの吐息を感じるほどに顔を近づけ、優しい笑みで彼を見つめる。
彼女の優しいその瞳に、どこか吸い込まれるような感覚を味わっていると、ふいに彼女の唇が重なる。
「んっ…ちゅ…ぁむ…ちゅ、れぅ…ぢゅ…んぅ…ちゅ♥」
気持ちよくしてくれたお礼と言わんばかりに、彼女の唇に、舌に蹂躙される。
驚いた表情を浮かべていた彼も、次第に彼女と唇を重ねる度に、舌が交わる度にその表情は蕩けていく。
優しく彼女の背中に手を回し、なぞるように彼女の背中に指を這わす。
くすぐったさと気持ちよさが混ざったその快感に、彼女の口づけは更に艶かしく、情熱的に変わっていく。
「んむぅ…ちゅ…んふ♥ぢゅる…れぅ…ぁぷ…ちゅ…んっ…ふふ、貴方様♥」
漸く彼女も満足したのか、ゆっくりと唇を離す彼女。
恍惚とした表情を浮かべながら少しだけ出した舌からは、互いの唾液が混じり合った蜜が滴り落ちる。
そんな彼女を見て、思わずゴクリと唾を飲み込んだ彼を、彼女は満足そうな笑みを浮かべる。
「くすくす♥…貴方様、気持ち…よかったです、か?」
「…うん…凄い気持ちよくて…」
「ふふ♥よかった、です…ところで、お腹が、空いたって…言ってまし、たね」
「えっ?…あ、うん。そうだね…」
もはや、彼女との行為に夢中になっていたせいか、完全に忘れ去っていたことだったが、
そう言われると確かにお腹は空いていた。
そんな彼に、彼女は嬉しそうな笑みを浮かべると、少しだけ彼から身体を離す。
そして、自分の胸を両手で下から持ち上げ、彼に見せつけるようにする。
思わず彼女の胸に視線を送ってしまう彼に、彼女は嬉しそうに告げる。
「ふふ…おもちは、食べれる、んですよ…」
「えっ…たべ?え?」
「くすくす♥…貴方様に、揉まれて…ちょうど食べごろ、です…冷めない、うちに…召し上がれ♥」
「あ…あぁっ…い、頂きます!」
そういうと、彼は彼女の胸に顔を押し当てる。
無論本当に食べるわけではなく、優しく唇で甘噛するような優しい愛撫で彼女の【おもち】を堪能する。
柔らかさ、温かさは先程の手で触っていた時と変わらないものの、
先程では感じることの出来なかった、彼女の【おもち】の味が口に広がる。
「ぁむ…ん…」
「ふふ…どう、ですか?貴方様の、お口に合えば…いいのですけど」
「はぷ…ちゅ…っは…ほんのり甘い…とっても美味しい…」
「くすくす♥それは、良かった、です♥もっと…もっと、召し上がれ♥」
普段以上の興奮を感じながら、彼女のその胸を何度も何度も味わう。
ほんのりとした甘さは、素朴ながらもいつも彼のことを思う彼女の優しさそのもののようだった。
そしてそれは、いつまでも口に含んでいたくなるような、飽きない味わいだった。
遠い記憶の奥底、自分が思い出すことも出来ないほどに深い場所にある何かを浮かばせるような、そんな優しい味だった。
そんな彼を、彼女はとても柔らかな笑みを浮かべながら、彼の頭を撫でていた。
両方の乳房を何度も彼がしゃぶっているのを優しく眺めていた彼女だが、ふとした拍子にあることに気がつく。
彼のパンパンに膨れ上がった股間は、彼の表情とは裏腹にとても苦しそうにしていた。
先程までの優しい笑みとは少し意味の異なる、魔物特有の笑みを浮かべると、
手を彼の股間部に這わせながら、優しく彼の耳元で囁く。
「ふふ♥貴方様のここ…とても、苦しそう…ですね♥♥」
「ぁう…ごめん…その…」
「いいのです、よ…くすくす♥ちょうど…そろそろ、【餅つき】を…しようかと、思って、ましたから♥」
「も、餅つき?それは…」
何をするの?と聞こうとした瞬間、彼女が体重をかけ、彼のことを押し倒す。
恍惚とした表情を浮かべながら、彼の下半身を慣れた手つきでさらけ出すと、
露わになった彼の怒張したペニスを見てうっとりとしている。
そして彼のペニスに手を添えると、自分の秘所へと何度も擦り付けるようにする。
「ま、まってまって!今餅つきをするって!!」
「くすくす…だから、【餅つき】…ですよ♥貴方様、の立派な、杵で、【餅つき】です♥」
「あの…それって…」
「あは♥…それじゃあ、餅つきの…開始です、くすくす♥」
その瞬間、彼女の腰が落ち、彼の怒張したペニスは彼女の秘所に包み込まれる。
普段そこまで積極的ではない彼女が、珍しく見せたその姿にすっかりペースを奪われてしまう。
それだけでなく、普段以上にみっちりと吸い付いてくる彼女の秘所に思わず全身に力が入ってしまう。
気を抜けば、直ぐにでも射精してしまいそうなほどに、熱く、強い快感が襲ってくる。
「あはぁ♥貴方様…の、杵が、奥まで…」
「ぐっ…うぅぅ…牡丹さん…ちょっとまっ…」
「くすくす♥さぁ【餅つき】、です…くすくす♥ぺったん、ぺったん♪」
「あっ…く、ああぁぁっ!」
普段交わる時以上に、どこか楽しみ、嬉しそうな笑みを浮かべながら腰を振る彼女。
ぬちゅ、ぢゅぷ、くぢゅり…と彼女が腰を動かす度に淫らな水音が部屋に響く。
彼女の自在に変化する膣壁の感触と、蕩けてしまいそうな位熱くなっている彼女の膣に、
もはや為す術もなく、暴力的とも言える快感に必死に彼は必死に堪えるしか無かった。
そんな彼を更に責め立てるように、彼女は彼の手を取ると自分の胸へとあてがう。
「ふふ♥だめ、ですよ。【餅つき】は、ちゃんと、合いの手、が必要ですから…ね♥」
「くぁっ…くぅっ…合いの手、って言われても」
「つくだけ、では、おもちは…美味しく出来ません、よ…くすくす♥ほら…ぺったん、こねこね♥♥」
不思議な魔法にでもかかったかのように、彼女の胸に当てた手は、彼の意思を無視する様に、彼女の胸を揉みしだき、離すことができなかった。
両手は彼女の胸に吸い付かれるように、何度も何度も揉みしだき、
腰は彼女の動きに合わせるように、自然と上下に動いてしまっていた。
「んっんっ…あは♥んっふぁ、んぅ♥貴方様の、んんぅ♥杵、とっても、ひゃぅ♥気持ち、いい♥」
「まって…激し…」
「我慢、しないで、下さい♥私の中…いっぱい出して、下さい、ね♥」
「ぅぅ…牡丹、さん…っ!」
次第に動きの早くなる彼女の腰に、もはや彼の限界は目前だった。
彼の込み上がってくる射精感に合わせるかのように、彼女もまた絶頂は目前だった。
「んっあっふっ、んんっ♥あぁっ、貴方様、私も、もう…イッて、しまいそう♥」
「牡丹さん、僕ももう…っ!」
「出し、て下さい♥貴方様の、子種…いっぱい…牡丹、の中に♥♥」
「牡丹さんっ、牡丹っ!!あぁぁっっ!!」
「〜〜〜っ♥♥♥」
瞬間、彼のペニスからは勢い良く精子が飛び出し、彼女の膣内を彼色へと染め上げていく。
その脈動に合わせるように、彼女の膣壁はうねり、最後の一滴までもを搾り取る、
互いに身体を震わせながら、全身を駆け巡る快感に酔いしれる。
いつも以上に長く強い快感に痺れながら、何度も互いの名前を呼び合い、愛を確かめ合う。
身体の震えが漸く止まるころ、そっと彼女が身体を倒し、彼に甘えるように抱きついてくる。
「如何、でしたか?牡丹、との【餅つき】、は…ご堪能、頂けました、か?」
「んっ…うん…凄い、気持ちよかったよ」
「ふふ♥よかった、です♥」
そういうと、彼女は優しく彼の唇に自分の唇を重ねる。
先程のような激しさはなく、優しく包み込まれるような甘い口づけだった。
そっと唇を離すと、彼女はいつも通りの優しい笑みを浮かべていた。
「今年も、宜しく…お願い申し、上げます、貴方様♥」
「うん…こちらこそ宜しくね、牡丹さん」
二人の顔に笑みが浮かび、自然と口からは笑い声が溢れる。
終始彼女のペースに押されてしまったが、漸くこれでいつも通りの日常に戻ると彼が思った瞬間だった。
彼女が再び艶めかしい笑みを浮かべると、彼の耳元で囁く。
「貴方様の、杵は…まだ、つき足りない、みたいですね…くすくす♥」
「ち、ちがっ!これは」
「こんなに、硬いままでは、可哀想、です、ね♥」
そう言うと彼女は、腰を上げて一旦彼のまだ固いままのペニスを抜くと、そのまま床に寝転がる。
彼女の行動が読めない彼は、ひたすらに彼女の動きを目で追っていた。
彼に見せつけるように、ぎゅっと腕で胸をはさみ、寄せあげるようにしながらも、
手は自身の秘所に当て、先程まで彼のペニスに満たされていたそこを彼に見せつけるように広げている。
もはや彼女の言葉はなくとも、意味を理解する。
立ち上がり、彼女に覆いかぶさるようにすると、優しく彼女の唇に己の唇を重ねる。
「いっぱい…ついて、くださいませ、貴方様♥」
結局、元日は日が暮れるまで彼女と共に、【餅つき】をして過ごすこととなった。
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満足気に笑みを浮かべながら、鼻歌交じりで台所に立つ彼女の後ろ姿を、
少し疲れ気味の表情で見つめる彼が居た。
さきほどまで散々乱れ、精子にまみれていた着物も、今朝見たときのように綺麗に整っており、改めて見る後ろ姿に思わず見とれてしまう。
そんな彼の視線を感じたのか、彼女は嬉しそうに笑みを浮かべると、小皿を手に彼の元へと戻ってくる。
彼女の手にある小皿には、何やら小さな丸い白い物がのっている。
「ご飯が、出来るまでの間、お食べ…ください」
「これ…は?」
「くすくす、お餅、ですよ」
「え?これ?これがお餅なの?」
「えぇ…そうですよ、くすくす♥貴方様だけの、本当に…特別なお餅、です♥」
「……ってことは結局さっきまでの餅つきは嘘だったの?もぅ!」
「くすくす、嘘じゃ、ありませんよ…お食べに、なれば…分かります、から♪」
彼女の言っている意味がいまいち理解できない彼だったが、彼女の嬉しそうな顔を見て、
これ以上文句を言うのはやめることにし、そのお餅とやらを食べることにした。
小皿に手を伸ばし、小さなそのお餅を手に取った瞬間だった。
「(あれ?この感触って…)」
思わず彼女の顔を見ると着物の袖で口元を隠しているものの、とても嬉しそうに笑っていた。
もはや疑うまでもなかった。
手に取った餅を口にした瞬間、彼の予感は確信に変わる。
ほんのりと甘く、そして滑らかな舌触り。
モチモチとした感触の中に感じる、ほのかな温かさと優しさ。
「どう、ですか?貴方様だけに贈る…特別な、お餅です、よ。くすくす」
「…美味しい、とても…とっても美味しいよ」
「くすくすくす…良かった♥」
彼女がどうやってそれを作り出したのかは彼には分からなかったが、それは些細なことだった。
彼が口にしたその餅は、たとえ一国の王が求めようとも口にすることは出来ない、
彼だけが口にすることを許された、特別な餅であると理解したから。
自然と溢れた笑みからは、やがて笑い声が溢れ出る。
二人の幸せそうな笑いは、いつまでも絶えることなく続いていた。
18/01/02 03:34更新 / クヴァロス