恨み晴らさで・・・ %02 c=15d %02 c=15d %02 c=15d

逆襲

「うん。これでいいです。次は吉田屋さん用の瓶をですね………。」

「頭取、今月の仕入れ量が合わなくて…。」

「どれどれ。…うん、ここの数が間違えてますね。」

「頭取!山田屋さんの使いの人が来てますよ!」

「はーい!今行きます!」

 町にあるとある一軒の卸問屋。古めかしいが中規模程度の大きさはある店の中で、喜助は忙しく指示を飛ばしていた。言葉には、子供の頃のような訛りがなく、はきはきとした聴きやすい口調が宿っている。この卸問屋に貰われてから早八年。何故か子供が出来ない主人夫婦の奉公先で見初められた喜助は、読み書き算盤を教え込まれ、頭取としての才覚を表していた。ここまで良くして貰った恩を返そうと身を粉にして働くが、奥方にはいつも無理をするなと釘を刺されるのであった。

「(奥様が気を使ってくださるのは私がまだまだ未熟だからだ。もっと精進せねば…。)」

 そう決意も新たに帳簿とにらめっこを始めるがいまいち数字が頭に入ってこない。またか、と一息つくと喜助は捗っていない帳簿を閉じて、台所へとお茶をもらいに立ち上がった。
 前まではこんなことはなかったのに、最近になって仕事が手につかなくなることがある。その原因は、喜助にもよくわかっていたが、だからと言って何が出来るわけでもなく、こうやってお茶を飲んだり、煙草を吹かしたりして誤魔化してきた。

「そろそろ一ヵ月か…。どうしているんだろうか。」

 小平太が居なくなったと言う便りが来てからすぐに返事を書いたがもう一ヵ月も進展を報せる便りはない。六郎田、幸六それぞれに便りを出したのにどちらからも返事はなかった。そこまで密に連絡を取っていた訳ではなかったが、親友が一人居なくなったと言われ、そのあと何も音沙汰がないのでは、気にするなと言う方が無理な話である。一ヵ月の間に二人に出す手紙の数が増える度に喜助の心にもやもやとしたものが溜まっていくのであった。

「まったく。まだ見つからないならそうと報せてくれるだけでもいいのに。」

 奉公人に淹れて貰ったお茶を啜りながら喜助は息をついた。すると、ぱたぱたと急ぎ足な音が廊下から聞こえ始めた。足音は障子の前で止まると、一呼吸おいて声をかけてきた。

「頭取、お手紙が届きました。」

「ああ、松屋さんからかな?入りなさい。」

「失礼します。これを。」

「はい。確かに。……!」

 手紙の宛名には、なんと、幸六と書かれていた。丁稚小僧が部屋から出ていくと、喜助はすぐさま手紙の封を切った。

『拝啓、喜助へ。
 急いでいるので細かいことは抜きで話す。六郎田達を拐った相手がわかった。
 急いで助けに行きたいが俺自身の身も危ない。寺に身を隠すので直ぐに来てほしい。
 なるべく急いでくれ。
                    幸六より』

 切迫した内容を読み、喜助は暇を貰うために直ぐに大旦那の元へ駆け出した。
 しかし、内容が内容なだけに喜助は気づくことはなかった。

 追い詰められているにしては落ち着いた雰囲気の文字、幸六にしては女らしい書体、所々、紫に染まった紙。

 そう、気づくことはなかったのだ。







 駿馬に鞭を入れ、脇目もふらず飛ばし続けたが、喜助が寺に着いたのは、日がすっかり沈んでしまった宵の入り口であった。
 峠の途中にある寺「禅昌寺」。幸六とその師匠であり、育ての親でもある和尚の二人が暮らす寺である。昼に来れば周りの林から溢れる日に照らされた風流な佇まいを見られただろう。
 しかし、今は夜。沈んだ日の残光と星々の薄明かりが纏わり着くように建物を覆い、不気味な雰囲気を醸し出していた。
 その余りの異様さに思わず生唾を飲み込んだ喜助であったが、親友の助けを断ることは出来ないと意を決して歩を進めた。
 開け放たれた門をくぐり、様子を伺う。寺は、正面に本堂を構え、その横に渡り廊下を挟んで寝所があった。どちらもシンと静まり返っており、一つの明かりも見えない。
 いや、正確には薄明かりは見えていた。しかし、これを明かりと言っていいのだろうか?本堂は揺らめく空気に覆われ、実際には明るくもないのに闇夜から浮き上がって見えた。それが星明かりによるものなのか、それとも別の何かなのかは解らないが、これだけは言える。
 この空気は明らかにヤバい。
 喜助は心底、引き返そうと思った。だが、こうも考えていた。もし、幸六が襲われていて、この雰囲気がそれを示しているとしたら…。助けられるのは自分しかいない。ここで見捨てれば後悔する。そう思いつつも恐怖で足が動かない。そうやって足踏みを続けていると向こうから動きがあった。なんと、本堂の障子が勝手に動き、少しの隙間を作ったのだ。喜助は驚いたが、次の動きには心臓を堅くした。
 隙間から声が聴こえて来たからだ。

「き………す………………け………。」

 くぐもった、消え入りそうな声であったが、確かに、名を呼ばれた。
 男か女かも解らないような微か声なのに、何故か助けを乞うような切実な響きを感じた喜助は、居ても立ってもいられず、障子戸を乱暴に開けはなち、本堂へと転がり込んだ。
 本堂には、立派な菩薩像が祭られており、その前に女が一人、座っていた。






−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−

 あの方の匂いがする。あの方の匂いが近づいてくる。近づいて来る度に匂いが濃くなり、あの日の思い出が脳裏に甦る。

 あの日の乱暴が、あの日の凌辱が、あの日の辱めが、あの日の暴力が、あの日の屈辱が、
 あの日の歓喜が、あの日の興奮が、あの日の快楽が、あの日の悦楽が、あの日の愛おしさが、
 わたくしの心を蝕んでいく。

 凌辱が心に傷を付け、快楽がその傷に塗りこまれる。痛みがどんどん気持ち良くなり、その内、痛みそのものを求めるようになった。
 でも、足りない。男を襲っても満たされない。あの方でなければ、あの方でなければわたくしを傷つけることも、癒すこともできない。

 ああ、もっと、もっと早くいらしてください。そんなところで止まっていないで、どうぞ、中に入ってください。

 そして、わたくしを犯してください。わたくしを辱めてください。口汚く罵り、甘美な唾を吐きかけてください。貴方様の毒でわたくしを満たして欲しい。

 そして、
 そして、

 貴方様は、わたくしのものになるのです。

−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−







<ピシャッ!!
 勢い良く開けられた障子は端にぶつかり、甲高い悲鳴を上げた。かなりの音であったが、女は動じることもなく、じっと喜助の方を見つめていた。
 何時から点いていたのか、外からは一切窺えなかったが、菩薩像の両横には青い炎が燭台に灯っており、お堂の中を薄っすらと照らし出していた。
 喜助が唖然として入口に立っていると女の方から声をかけてきた。

「一体、何事ですか?菩薩様の御前ですよ。」

 女の声はしっとりと夜気に混じり、流れるように喜助の耳に届いた。なんと綺麗な声であろう、と一瞬骨を抜かれかけたが、先ほどまでの尋常ではない空気を思い出し、ハッと意識を取り戻すと語気を荒げて女に答えた。

「この寺の住職に呼ばれて来たのだ。和尚は、幸六はどこにいる!お前こそ何者だ!」

 普段、頭取として見せている落ち着いた顔とは似つかない睨み顔で女を脅す喜助であったが、一方の女はそんなことはどこ吹く風と澄ました顔で受け流していた。

「わたくしは旅の者で今宵はこちらのお寺に御厄介になったのです。和尚様と幸六殿でしたら急用があると出て行かれましたよ。今夜は戻らないとも仰っていましたね。」

「な!?そんなはずはない!私は幸六に呼ばれて来たのだぞ!」

「さぁ?日を間違えたのでは御座いませんか?それはさておき、立ち話もなんでしょう。こちらにいらしてゆっくりお話しされてはいかがですか?菩薩様の御前でそのように語気を荒げられては罰があたりますよ。」

 そう言われて、喜助は菩薩像をちらりと見た。立派な菩薩像は青白い炎に照らし出されて、本来の神々しさより、不気味さの方が際立っていた。しかし、そのような姿になっても菩薩は菩薩。これから六郎田と小平太と襲った正体も解らぬ奴を相手にしなければならないかと思うと如何に不気味と言えどもその加護を失いたくはない。
 喜助は仕方なく、言われるがままに女の方へと歩み寄った。数歩近づいたところで、またピシャリと音が鳴った。喜助が振りかえると今自分が入ってきた障子がぴっちりと閉じられているのだ。
 閉じ込められた!!そう思った喜助は慌てて障子戸に飛びつくと乱暴に開けようとした。が、戸が開かない。押しても引いてもビクともせず、蹴破ろうとしても分厚い木板のように逆に跳ね返されてしまった。床に転がった喜助が見上げた先にあの女の顔が見えた。いつの間にか近寄った女は、四つん這いになって仰向けになった喜助の顔を覗き込んでいた。女は心底愛おしそうな蕩けた目で喜助を見つめ、笑みがこぼれそうなのを我慢するように口元を吊り上げた表情をしており、それはとても扇情的なものに感じられた。

「どこに行かれるのですか、喜助様?わたくしはここにいると言うのに。」

「な、なにを言って…!これは貴様の仕業か!?」

 このような状況になってまで男を煽る表情を出来る女など居るはずがない。つまり、これはこの女の仕業に違いない!そう考えた喜助はすぐに身体を起こし逃げようとしたが、女は這いずる喜助の上に圧し掛かり、うつ伏せの状態から再び向き直るように喜助の身体を回した。とてもではないが女の力で出来る業ではない。

「ああ、喜助様。どれほどこの時をお待ちしていたことか。ずっと、ずっとお慕い申しておりました。ああ!この汗のにおい!10年ぶりの匂い!すっー、はぁー。」

 女は喜助の胸に顔を埋めるとその匂いを一身に嗅いだ。着物をはだけさせると肌に自らの頬を擦りつけ、喜助が流す冷や汗を一つ一つ舐め取っていった。
 女は堪らないと言った表情を浮かべていたが、堪らないの喜助の方である。見ず知らずの怪しい美人が自分を押し倒し、厭らしく汗を舐めているのだ。状況の把握など出来るわけがない。ずっとお慕いしていた?10年ぶり?訳が分からない。

「おい!女!私はお前など知らん!早くそこを退け!」

 しかし、女は全く退く気配がない。それどころか、押し退けようと喜助が強く肩を掴むとますます興奮した様であった。

「ああ!そんな強くされたら我慢がなりません/// 出ちゃいます!」

 何が出るのかいぶかしんでいると女の頭からにょきにょきと細長いものが生えてきたのだ。髪の間から伸びてきたそれが虫の触角の様だと思った瞬間、一気に女は変貌した。
 顎の下からは巨大な牙が現れ、女の着物が千切れ飛んだかと思うとその下から数本の虫の脚が出てきた。そして、女の背後には、鎌首を擡げるように伸びあがった百足の胴体が見えていたのだ。
 「大百足」に変身した変化(へんげ)はあの愛おしさに溢れる視線と言葉を喜助に落とした。

「愛しております、旦那様♥」

「うあああああああああああああああ!!」

 喜助は、変化の肩から手を離すと障子戸の方へと腕を動かすが変化の人の部分ががっしりと喜助の身体を掴み、さらに後ろの百足脚が床に爪を立てているので逃げられないでいた。
 その状況を楽しむように変化は、喜助の身体を這い上り、顔と顔がくっつくぐらいの距離まで近づいた。それほどの距離になると嫌でも解る変化の美しさ。垂れ気味の目が送る恋慕の視線にはこんな状況でも喜助をドキリッさせるのに十分な威力があった。
 変化は両手で喜助の頬を撫でるとあうあうとさせている口に指を滑り込ませた。変化の指は柔らかく、舌触りも良く、ほのかに甘い。思わずしゃぶりたくなるほどの絶品である。しかし、そんな喜助の葛藤とは裏腹に変化はあっけなく指を引いた。何をするのかと見ていると、変化は涎の糸を引く指を自分の鼻へと持っていき、匂いを嗅ぎ始めた。その匂いが強力すぎるのか、変化は一吸いする毎に天井を仰ぎ見て、何かに耐えるように身体を震えさせた。

「こ、これです…♥ これを求めていたんです♥ ふぁ/// もう、頭がくらくらしてきちゃいます♥」

 一頻り、涎の匂いを嗅いだ変化はポカンとする喜助に口と顎肢をカッ!っと開いて向き直った。これには喜助も身の危険を感じた。

「さぁ、わたくしのものになってくださいな♥ わたくしの毒に侵され、わたくししか目に入らない様になってくださいな♥ 代わりに、この身体のすべてを差し上げましょう♥ 10年前のようにわたくしを犯して、辱めてくださいまし♥ 10年前のあの時のように……くすくす♥」

「う、うあぁ…、や、やめ…。」

 喜助は焦った。じりじりと近づいてくる口と牙を何とか避けようともがくが、やはり動かない。身を守れそうな物もなく、武器になりそうな物もない。それでも何とか助かろうと必死で考えた。
 10年前…、10年前に何をした?しかし、どれだけ記憶を浚ってもあやかしや変化にちょっかいを出した記憶は無く、そうこうしているうちに変化は息がかかる距離まで近づいていた。

「(考えろ…!考えろ…!!変化には何が効いた?何か、何かあったはず!百足…百足………あっ!!)」

 喜助はあることを思い出し、きっ!っと変化の顔に狙いを定めた。そして、変化がいよいよと大きく口を開けた瞬間を見計らい、勢い良くある物を口から飛ばした。
 飛ばした物は見事に変化の口の中に命中。変化は訳も分からず口を閉じたが、次の瞬間には両手で口を押さえて、喜助から弾かれるように仰向けに倒れた。

「…〜〜!?!?! ;;+*#$%〜〜///♥♥」

<ドウッッッ!!

「はぁはぁ、小平太のじっちゃんに感謝だな…。」

 変化はしばらくのたうった後、ピクピクと痙攣しながら動かなくなった。
 これ幸いと喜助は身体を起こし、逃げようとしたが、弱々しい変化の声に呼び止められた。

「まっふぇ………、まっふぇくらはい…!おねがいでふゅ…!」

 その声に思わず喜助は立ち止った。
 いやいや、何故立ち止るのか?相手は自分を襲おうとした化け物だぞ?
 だが、弱っている。それにこのまま逃げ帰ってもいいのか?
 小平太と六郎田を襲ったのはこいつだろう。そして、おそらくは幸六もすでに襲われている。3人の居場所を聞き出すには今しかないのではないか?
 それに…。


 なんとも美しい肢体ではないか。


 喜助は、何故そんな風に考えたのか気づくことはなかったであろう。
 この寺には変化が編んだ結界が張られていた。幸六が姿を消した後、幾日幾晩もの間、この結界内で変化は自慰に耽っていた。変化から漏れ出した妖力が溜まり、濁った空気は喜助の心を浸食し、変化の欲望がその攻め受けを逆に喜助の欲望へと変化していったのだ。ここに入ってしまった時点で喜助は百足の毒に侵されていた。


 踵を返した喜助はしっかりとした足取りで倒れた変化のもとへ向かった。変化は未だ喜助の唾が効いているのか息も絶え絶えに仰向けに倒れている。沢山の脚は時折思い出したかのようにピクピクと動くだけで先ほどまでの力感がない。上半身はというと、変身によって引き裂かれた着物をかろうじて纏ってはいるが、胸もへそも淡く紫に光る毒腺もわき腹から出ている脚も丸見えになっていた。当然、変化が雌であることを示す秘部も…。
 変化は口を押さえ、涙に滲ませた瞳で喜助を見つめている。だが、それまでの恋慕の光以外にも不安と恐怖の色も見て取れた。それもそのはずであろう。今の喜助は、変化に押し倒されて逃げ惑っていた喜助ではない。大百足の妖力に中てられた一匹の雄だ。雌を犯すために生まれてきた一匹の雄に墜ちたのだ。
 喜助は変化の触角を掴むと力任せに、それでいてゆっくりと持ち上げた。

「〜〜っう、あぁ…!くぅぅ………!」

「おい、幸六達はどこや?」

 ぎりぎりと触角を締め上げる。髪を掴み上げられるように、触角を掴まれ、変化は吊り上げられるように上半身を持ち上げられた。味覚、嗅覚、聴覚、触覚と人間で言う五感の内、4つもの神経が集まる触角を乱暴に扱われて流石の変化も一切の抵抗が出来ないでいた。

「おら、答えろや。」

「くあっ!引っ張らないで、いぎッ♥」

「なら答えろや。幸六達はどこや?ちゃんと答えんともっと酷い目に合わすぞ。」

「ッ…はぁはぁ…。」

 里言葉を隠そうともしないで喜助は変化を脅す。喜助自身もびっくりするほどの悪役っぷりである。しかし、相手は化け物。これぐらいでもやり過ぎているということはないと思ってはいたが、変化はその上を行った。

「うぅぅ………。もっと…、もっと酷い目とは、どのようなものですか?」

「あ゛あ゛?」

 なんとこの女、自分から求めてきたのだ。いくらあやかしや変化の類であると言っても、酷いこと、つまり凌辱すると言われてそれを望むなど、相当の好き者に違いない。

「(まぁ、なら遠慮はいらんやろ。せいぜい、楽しませてもらおうか。クッ、クククッ!)」

 喜助は、変化の頭を片手で持ち上げながら反対の手で着物を脱ぎ始めた。前をはだけ、褌を脱ぐと硬くそそり立った肉棒が姿を現した。妖力に中てられ、いつもより大きくなった肉棒は、精と妖力でびくびくと奮えている。
 そのような凶器を目の前に見せられて変化の目は釘付けとなった。ちゃんと風呂に入っている喜助には感じることは出来ないが、妖怪である変化には咽返るような精の匂いを感じることが出来た。
 喜助の精は褌が床に落ちた瞬間から溢れだし、変化の顔面を直撃した。その匂いは鼻も口も目も耳も触角も、感じることが出来る部分すべてに絡みついた。例えるなら、匂いの触手が口を犯し、耳をほじり、鼻をねぶり、目を舐め、触覚に巻き付き粘液を塗りこむようなものであろう。
 妖怪にとって自分が好いた者の精は極上の御馳走と言う。変化は知らず知らずの内に自分から舌を出して求め始めた。

「はぁ〜はぁ〜、んぁ/// れぇ〜る♥ すぅはぁ、すぅうあぁぁぁ♥」

「そんなにこいつが欲しいか、化け物?飛んだ好き者やな。え?」

「うっはぁぁ〜/// 欲しいれす。お口に、お口にくださひぃぃぃ/// 一舐め、せめて一舐めぇぇぇ。」

「ふん!一舐めと言わずに全部くれてやるわ。おらっ!!」

「…んぎゅっ!?」

 喜助は、変化の触角を手綱を持つように両手に持ち直すと、開けっ放しの変化の口に赤黒い肉棒を突き入れた。触角を引き寄せ、変化の顔が下っ腹にぶつかるほどの深く、勢い良く入った肉棒に変化は思わず咽た。しかし、頭を引こうにも触角を持たれているので逃げ場はなく、おまけに千切れるかと思うほど強く引っ張られたので脳に響き渡るほどの衝撃に襲われていた。何故、衝撃かと言うと、変化にとってもこれが激痛なのか快感なのか判別がつかなかったからだ。だが、頭の中を真っ白にしてしまうほどの威力、だから衝撃なのだ。もちろん、口に押し込まれた肉棒の味と匂いは紛れもない快楽であったことは言うまでもない。

「ん、んごっ!…んぅ、ぐ、…うぶ。」

「ははっ!こりゃええわ。ごっつい気持ええで。おらっ!まだ終わってへんど!おりゃ!おりゃ!おりゃ!」

「んん!!ぐべ!んご!ぐぶっえぇ!!おぐ!」

 触角を前へ後ろへと引っ張りまくり、変化の頭を前後させる。変化の口の中は温かく、突けば突くほどぬらぬらとした粘液が溢れ出てくる。口から垂れる液に紫色が混じっていることからただの涎だけではないのだろうが、喜助には最早どうでもいい話、そんなことを気にしていられないほどちんぽが熱いのだ。自分でも解るくらいに玉の中がぐるぐると回り、精液を造っており、それが今にも漏れそうで我慢できない。一突き毎にカリの感度が上がり、ちんぽの先から背骨へと雷が走るように感じていた。
 変化はと言えば、触角が麻痺し、頭の中がちんぽ一色になっていた。腕はだらんと垂れ、虚ろな目が喜助を見上げていたが見つめると言うよりも裏返る寸前と言った様子であった。それでもちんぽを逃がさないよう口を窄めて吸いついているため、息苦しさと吐き気で涙を目に貯めたなんとも崩れた顔を晒していた。

「ぐぅぅ…!はぁあっ!なんだこりゃあぁぁ!気持ち良すぎて、で、射精ちまうぅぅぁぁああ!!」

「んんんぶぅ♥♥ んぐぅ♥ …んんん〜〜♥♥♥」

「ぐうっぅうううううあああああああああ!!」

<どびゅぅぅううう!!どぶっ!どびゅぅ!!どぷっ!!ごぷ!

「〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜♥♥♥」

 射精とは言い難いほどの濃い塊がちんぽの先から撃ち出された。液と言うよりも煮過ぎた餅のようにどろどろの精液が変化の喉を叩く。その激しさにも負けず、変化は一向に口を離そうとしない。余りの量に頬が膨らみ切ってもそれでも口を開けようとせず、ごくごくと飲み干していった。最早、飲むと言うより食べている感覚に近い。

<じゅる、じゅちゅりゅるるるるるるるる
「おああぁぁぁ。ま、まだ吸い取られ、うはぁぁ…。」

「ごきゅ、ごきゅ、んぐ、ごく、んきゅ。ちゅるる、ちゅぽん♪」

 玉を吸い尽くすかのように先端まで引き抜くとようやく変化は口を離した。それと同時に喜助は腰の力が抜けて床にどっと尻もちをついた。
 変化の方は、吸い取った精液を口の中で美味しそうにもごもごとしながら今にも倒れそうに上半身をふらふらさせていた。未だ裏返りかけな目を見る限り、どうやら無意識に吸い取っていたようで、最後の一飲みを音を鳴らして飲み干すとゆっくりと床に崩れた。
 喜助が床に倒れるとびちゃりと水の音がした。何事かと床を見ると喜助と変化を中心に水溜りが出来ており、次いで、精の匂いに混じって甘ったるい女の匂いが立ち上ってきた。変化はあれほどの凌辱にあいながら、秘部を濡らし、あろうことか潮を吹いていたのだ。その証拠に床に伏した変化の秘部からはぬらぬらとした光が照らし返されている。
 これに喜助はますます興奮した。これほどの乱暴にあっても耐える頑強さと感度、何をしてもいい、今のこの女になら何をしても許される。そう言った黒い感情が膨れ上がってきたのだ。ちんぽは、まだまだ萎える気配がない。それどころか抜いたままでも気持ちよさが持続している。これなら何戦でも出来そうである。
 喜助はさらなる暴力を加えるべく起き上がろうとしたが脚が言うことを聞かない。先ほどの射精で脚が笑っているのだろうと思った喜助は、仕方がないので少し休んでからにしようと考えた。


 しかし、これは失敗だった。


 先に回復したのは変化の方であった。ゆっくりと起き上がった変化は、ぴくぴくと触角を動かして喜助の位置を確かめると、にやりと笑みを浮かべて這い寄って来た。

「ふんっ!」

 喜助は、それがどうしたと言わんばかりに鼻を鳴らした。いくら動けようとも弱点は知れている。一度、体勢を整えれば何のことはない。そう思って立とうとするがやはり脚に力が入らない。それどころか、正座のし過ぎで足が痺れたかのように強い快感が駆け抜け、さらに身体を崩した格好になった。これはおかしい。射精程度でこんな風になるわけはない。ハッと気づくと変化はすでに足元まで近づいていた。

「きさん…!何を…!」

「…ふ、ふふふ♪喜助様♥大百足の毒は何も口からしか出せない訳ではないんですよ。」

「な!?」

 変化はカッ〜と顎肢を開いて先端から紫の液を垂らした。そして、口から舌を出すと涎と一緒にぼたぼたと同じ色の液を零した。

「喜助様のマラ様にたっぷり塗りこんで差し上げました。それにわたくしの顔にお腰をぶつける度にお脚に咬み付かせて頂きました。とっても歯応えがよくて美味しかったですよ♥」

「くっ!」

 喜助は、脚の上に乗りかかってきた変化に再び唾を吐き掛けたが今度は難なく避けられ、逆に滑るように素早く寄せてきた変化に、喉元に食らいつかれてしまった。
 痛みは無く、温かい人肌の感触に一瞬、心が和んだ。しかし、次の瞬間には、思考がぼやけ始め、上半身すら動かなくなり始めた。
 変化は、徐々に力を無くす喜助の身体を支えつつ、それでも更に毒液を流し込もうと口を離さない。まるで吸血鬼のそれと同じように、それでいて真逆の行為に酔いしれていた。

「ん…♥ ちゅ、ちゅばっ!っあはぁぁ♥ これで、これで貴方様はわたくしのもの。わたくしだけのもの。」

「がっ…、かっはぁ…。」

「フフ、御心配なさらずに。わたくしがすべてお世話させて頂きます。ついては………♥」

 未だびくびくとそそり立つ肉棒を手で弄ぶ。毒液で敏感になった肉棒はそれだけでびゅく!っと一発精液を吐きだす。粘つく精液が絡みつく手を口元に掲げ、指の一本一本を舐めしゃぶっていく。すると変化は本当に美味しそうに頬を綻ばせて目を細めるのだ。

「この悪戯なマラ様の面倒を見ませんとね♥」

 変化は、百足の脚でがっちりと喜助の脚を掴むと左手で自らの秘部を広げ、右手でちんぽを優しく掴んで広げた秘部にあてがった。亀頭が肉壺に触れるとまた勢い良く精液が飛び出した。
 これでもかと毒液を流し込まれたちんぽは浮き出た血管に妖力と毒液が混じり、元の赤黒さに毒液の紫が加わり、気持ち悪いほどの不気味な凶器に成り果てていた。そんな状態になっても、いや、そんな風貌だからこそ愛おしいのか、発射された精液を肉壺に塗りこみ、そのままずぶずぶと沈めていった。
 もちろん、その間も射精は止まることなく子宮に当たるまでに3度も射精していた。そして、その度に変化は身体を震わせながら子種が投げれ込んでくる感覚に歓喜した。

「あ、熱いぃぃぃ…!なんて熱いんでしょう♥ んんっ/// こんなに熱くては膣内が火傷してしまいます♥」

「うっがぁ、ぎいぃあぁああぁぁあ…。」

「んあっ!?い、う、ま、また射精したんですね?くっうぅ、い、イキそうですけど、我慢しますからね。」

 変化は、百足脚で脚に抱きつき、腕で胸に抱き付きながら腰の部分だけ動かし始めた。子宮口まで突き抜けたちんぽを入口ギリギリまで引き抜くとぼたぼたと精液が落ちてきたが、粘度が高いので流れていくことなくちんぽにこびり付いて残るか、その根元に溜まっていった。そして、再び子宮口に突撃する。亀頭が子宮口に当たるとまた射精されて子宮に精を注ぐ。一頻り注ぐとまた引き抜くのだ。

「ぐっがああああ!うあああ!」

「ああ!くひ♥わ、解ってい、ひうっ!いますよ!も、もう限界、ふぅあ!これで、んああ!♪わたくしも、い、いきゅっ♥イキまふゅ!!」

 変化が段々と動きを速め、ばちんっばちんっと肉がぶつかる音を上げる。一回の移送で射精していたのにこんなに速く動かされることで栓を抜いた様に止めどなく精液は出続けた。最早小便と変わらない。出続ける精液はその勢いで子宮を満たしていき、すでに小さくぽっこりと腹が膨れている。そして、それでも入りきらなかった精液が喜助の腹の上に溜まり、変化との間にいくつもの白い橋を掛けていた。

<ばちゅっ!ぶちゅっ!ぶちゃっ!ぐちゅっ!ぐちょっ!
「ふぁ!い、イグっ!♥!イギュっ♥♪♥むり、無理っ!!我慢、できな、あひっ♪」

「ぎ!がああ!うあああ!あぐ!ぎがああああ!!」

「おっきいの!おっきいのくるんですね!?ひあっ♥きて、キテッ!!」

「ぎがっ!!ぐああ!」

「口付け、口付け下さい!!わたくしも、わたくしもイギます!!」

「んちゅ、じゅる、ちゅびゅ、ちゅる、ちゅば、んぐ!!んんんんぐううううう!!」

<どぷっ!!ごぽっ!!びゅるるるるるる!!!

「んぐぅ!ちゅじゅ!ちゅ、んあああああああああああああああ♥♥♥」

 数えることが馬鹿らしいくらいの膣内射精に耐えた変化であったが、最後は自らの毒に狂うようにイキ狂い、ぷつんと糸が切れたように喜助の上に倒れこんだ。そして、喜助はと言うと、変化が止めを刺しに来た時点で意識がなかったのだが、毒によって人間の射精量を遥かに超える量を出さされたことによって痙攣しながら眠りに着くこととなった。
 愛液と精液が混じった池の中に二人は沈み込み、朝の気配が近づいて来るまで狂喜のまどろみがそこに漂っていた。






 翌日、和尚が帰ってくると寺の雰囲気がどこか違っていた。和尚は、幸六が居なくなってから友人のところへ旅に出ていたのだ。
 しかし、寺の雰囲気とお堂の惨状を見て、和尚はすぐに事態を把握した。

「ふむ。あやつらうまくやったようだの。」

 和尚は菩薩像の前に座ると手を合わせて呟いた。

「許せよ、小平太、六郎田、幸六、喜助。まさか、わしの娘達がそなた等に目を付けていたとわ思わなんだのだ。まぁ、皆良い娘だ。幸せにしてくれるじゃろうて。」

<ザワ、ザワザワザワザワザワザワ

 和尚がそうつぶやくと菩薩像の陰から変化達よりも一回り大きな大百足が這い出て来て、和尚の身体を包みこんだ。
 大百足が百足脚を伸ばし、障子戸をぴしゃりと閉めると寺にはいつもの静寂が戻った。



 以来、この寺には誰もいないこととなり、不気味な雰囲気から近づく者もいなくなった。

 卸問屋の夫婦は人探しの依頼を出すことはなかった。丁稚小僧がそのことを訪ねると

「なんとなく、幸せに暮らしてる気がしますから。」

と答えると、金毛を蓄えた尻尾を揺らして去っていくだけだった。





















 喜助は顔にかかる水滴で目を覚ました。誰かが灯す薄明りで自分が洞窟らしいところを運ばれているのが解った。
 何故運ばれていると解ったかと言うと何のことはない。天井が移動していたからだ。
 身体を動かそうとするが全く動かせない。何かに巻きつかれているからと言う部分もあるが、どちらかと言えば身体が痺れて動けないのだ。

「御目が覚めましたか?まだ、毒が残っていますから暴れられない方がいいですよ。もっとも、動かないとは思いますが。」

 声のした方にぐるりと首を回すと美しい女の上半身が見えた。女は裸に着物一枚を被せただけの卑猥な格好をしていたが、その下は違った。長く伸びた百足の胴が喜助へと伸びており、喜助の身体を持ち上げながら器用に脚を動かして坂道を下りていた。

「〜…〜〜…〜〜〜!?」

「昨日は激しくし過ぎましたからね。喉が枯れて御声が出ないのでしょう。大丈夫ですよ。すぐに治りますから。」

「〜〜〜〜!!」

「フフフ、どこに行くのかですか?喜助様を家族に紹介したいと思いまして。」

 そう言いながら変化は更に下りていく。しばらく下りると木戸が見えた。黒塗りに百足が4匹絡む家紋が押された重そうな扉を変化は難なく開けて中に入った。
 最初に感じたのは咽返るような女の匂いと男の臭い。思わず鼻を摘まみたかったが、腕を押さえられているので出来なかった。

「皆、新しい家族ですよ。」

 変化がそう呼び掛けたが、誰もまともに返事はしなかった。代わりに返されたのは獣のような喘ぎ声だった。

「んんん〜♥♥小平太!もっと、もっと孕ませて♥ほら、もっと毒酒を飲ませてあげますから♥♥♥」

「いぎゅう!!いやぁ〜、触角も毒腺もおまんこもぉ〜、六郎田でどろどろぉ〜♥あひ、あへへ、あへひゃははは♥♥♥」

「イグ♥また、イグ♥幸六様、激しっ!尻尾の穴、お尻の穴ほじっちゃらめぇっ!ひい〜っ♥♥♥」

 喜助は絶句した。暴れる気力さえ折れてしまった。洞窟の壁に3匹の大百足が張り付き、それぞれの男を犯している。湧水のように流れていく愛液と精液はその奥に広がる地底湖へと流れていった。天井の隙間からかろうじて漏れる光が洞窟内を照らしていたが、こんな光景なら見たくはなかったと喜助は思った。

「さぁ、わたくし達も混ざりましょう♥そして、たくさん、たくさん卵を孕ませてくださいな♥」

「〜〜〜………。」

「え?ああ、そう言えばわたくしの名を知らないままでしたね。失礼しました。『夜宵』(やよい)と言います。」

 夜宵は、喜助を藁を引いた場所に寝かせるとすかさずその上に覆いかぶさり、唇を重ねた。
 何かが口に流し込まれるがそれを拒否することは出来ない。
 夜宵が毒液を口元から滴らせながら顔を離すと喜助は再び頭が熱くなってくるのを感じた。

「末永くよろしくお願いしますね、旦那さま♥♥♥」

 喜助は、顎肢を広げて咬み付こうとする夜宵とその後ろで狂乱に興じる大百足達を見て、自分の意識を手放した。



 そして、彼らは幸せに暮らしましたとさ。
 めでたしめでたし。



                         fin

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永らく、本当に永らくお待たせいたしました!!
最終話、なんとか書きあがりました。
感想と投票を頂いた方には支えて頂いた感謝を、また、完結までお待ちいただいていた方には謝罪を、してもしてもしきれません。
変化こと、「夜宵」さんは見事、幸せを手に入れることができました。

変化と言う名称は某妖怪漫画に登場したムカデの化け物の呼称から頂いたのですが、一度名前を隠してしまうと公開するタイミングを逸してしまい、結局、最後まで使ってしまいました。

まぁ、しかし、これで一区切りついたことですし、次回作は「魔界自然紀行」の中から書いていこうかと思います。(実はプロットできてるけどネタ被りしてるとか秘密)

ではでは、今回も終劇と相成りました。お付き合いいただき誠にありがとうございます。次回作で会いましょう!

12/08/15 20:57 特車2課

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