epEX「初めての特別講師」
ここはとある魔界にある港町「アクアフォース」という賑やかなところだ。
俺こと修十・アッシフォードまたはシューという人間だ。
俺はこの町にあるギルドで働いている者でもある。
「シューよちょっと来ておくれッ!!」
「おや、どうかしたの?」
今はギルドの窓を雑巾で磨いていると突然ギルドの長であるバフォメットのリザリア・レンベールという名前のバフォメットが手招きをしながら掲示板の方を指さしていた。
俺は首を傾げてリザリアさんの元へと向かった。
「この依頼を受けてはくれぬかの?」
「んッ、どれどれ?」
リザリアさんが掲示板のクエストを一枚手に取ってから俺に差し出してきた。
その依頼内容を見てから俺は苦笑いを浮かべる。
「……何で俺がこれを?」
「お主だけではないぞ?ヴァンとセツにも頼もうと思ってな」
「分かったよ。ちょっと聞いてみる」
俺はギルドにある階段を上って二階へと足を運んだ。
二階では確かヴァンがセツと一緒に武器の整備をしていたはずだ。
俺は二階にある道場を覗いた。
「……んッ?」
「……わふッ?」
「……あッ」
道場に顔をのぞかせた瞬間に目の前にはヴァンとセツが居た。
しかし、ここで問題が発生したのだ。
彼女たちは道場で生着替えをしていました。
しかもTシャツをたくし上げている。
「……シューのスケベ」
「くぅ〜んッ、シューのエッチ」
「いや待って、これは不可抗力だ……うぎゃあああああッ!!」
俺は飛んでくるナイフや斬撃を交わしながら急いで一階へと逃げ出した。
何だか彼女らは道場ではこういった羞恥心を持つようになったのだという。
これを夜の時にも持っていてほしいものである。
「……相変わらず騒がしいの?」
「えぇ、本当ですね?」
俺が道場の中でヴァンとセツから逃げ回っている最中、リザリアさんとシリアさんはテーブルの上にティーセットを置いて紅茶を楽しんでいたのだという。
そんな騒動の中を何者かがギルドの扉を開けて中に入ってきた。
「すみません、ここがアクアフォースのギルドですか?」
「そうじゃがお主らは何者じゃ?」
「あぁ、申しくれました……俺の名前はベルン・トリニティと言います」
「……ふむッ、と言うことはお主がリクラトスとやらの学校の生徒かの?」
「はい、シュートさんはいませんか?」
そう言ってリザリアさんは俺たちが争っている二階の方へと指さした。
それと同時に俺が階段を転げ落ちると言う何とも無残な姿でベルンと会うことになったのだ。
「いててッ、まったくまさか魔法弾を撃ち込んでくるやつがある……か……」
「あのぉ……大丈夫ですか?」
「気にしないでくれ……いつものことだからさ?」
俺はそのまま何もなかったのように立ち上がる。
そして、俺は目の前の青年の顔を見てみた。
「俺の顔に何かついているんですか?」
「あぁ……目つきが怖いな?」
「……気にしないでください」
目の前の青年が何だか肩をぐったりさせながら俺に言った。
俺は何か悪いことをしたのだろうか?
「お、オホンッ!!……それじゃあ、依頼内容を確認したいから移動しよう」
「はい、わかりました。では俺の仲間が近くの喫茶店に居ますので行きましょう」
「あぁ、わかった。おっとッ、自己紹介が遅れたね……シュート・アッシフォードだ」
「ベルン・トリニティです」
そう言って自己紹介をした後に俺とベルンは微笑みつつ握手をした。
この青年むっちゃ良い子やないかい…。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして喫茶店に向かった俺とベルンは向かった。
喫茶店のテラスには数人の青年たちが一つのテーブルを囲むかのように座っていた。
「遅いぜベルン、待ちくたびれたぜ?」
「あぁ、わるいなロック……講師を連れてきたぞ?」
「……そこの男の人?」
何だかベルゼブブの嬢ちゃんが俺を指さしながら言ってきた。
俺はテーブルに手をついてから微笑む。
「俺の名前はシュート・アッシフォードって名前だ。気軽にシューさんとでも呼んでくれ」
『は、はぁ……』
まぁ、そう言う反応をしますよね?
俺は目の前の青年たちを見まわした。
ベルゼブブは良いとしよう、そのベルゼブブの隣に座っているメドゥーサの女子はどこかで見たことのある目つきをしていた。
「何処かで見たことのある目つきをしているメドゥーサだな」
「そ、そうですか?」
「あぁ、確か……冒険者のお嫁さんだったかな?」
俺の一言により周囲の空気が硬直した。
首を傾げてながら聞いてみることにした。
「何か俺変なことを言ったかな?」
「い、いや……続きを聞いても良いですか?」
「あぁ、その冒険者は確か本を出版してたりする有名な人でな?そのお嫁さんがヴァンとセツを見るに何だかえらい嫉妬深いメドゥーサの夫婦だったな?」
俺は微笑みつつペラペラと話しているとメドゥーサの女女子が顔を真っ赤にして俯いていることに気づいた。
それを見ながらベルゼブブがメドゥーサの肩を叩きながら笑っていた。
まぁ、彼らと少しだけ距離を掴めることができたと思いたい。
「それじゃあ、まずは自己紹介をしてくれ」
「それじゃあ……「ちょっとシューッ!?」……わぷッ!?」
何故か立ち上がったバスターソードを背に吊るしてある細マッチョの青年を突き飛ばしながらヴァンとセツが俺の目の前に現れた。
「勝手に行くなんてひどいじゃないかッ!!」
「……謝罪を求める」
「あははッ、悪い悪い」
何ていっていたらベルンが大の字になって倒れている青年に近寄り揺さぶっていた。
「おいロックしっかりしろッ!?」
「うぅッ、はッ!?誰だ今俺を突き飛ばした奴……は……」
急に性音が起き上がり俺と話していたヴァンとセツを目撃した。
その瞬間彼のナンパ魂とかいうやつ(?)が発動したらしい。
「初めまして私はロック・サンドラと言います。失礼ですがお名前は?」
「私の名前はヴァン。そこの目つきの悪い男と同じガンナーだ」
「……セツだ」
「ヴァンさんにセツさんですね?宜しくお願いしますッ!!」
ロックと名乗った青年は彼女らに頭を下げてから挨拶をする。
それにつられて彼女らも綺麗なお辞儀をした。
「……見事なまでの変貌だな?」
「まぁ、アイツはいつもそうですよ?」
「そうか、それじゃあ……そこのベルゼブブとメドゥーサの名前を聞こうか?」
「私の名前はサティア・ウィーリィと言います。父と母がお世話になりました」
「いやいや、別に気にしてないから問題ないさ。次はベルゼブブの方だな?」
「私の名前はベーゼ・B・ティトラスって名前だ」
「何だか年上への態度がなっていない奴だな?」
「これがベーゼなんで許してやってください」
「まぁ、気には止めてないから良いんだがな?」
こうして俺は彼らと一緒に二日間は一緒に行動を共にすることになった。
初めての講師としての緊張とワクワク感でうずうずしながらだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
こうして俺たちはアクアフォード近くにある草原で待ち合わせることにしたのであった。
俺の嫁たちは「着替えてくる」と言って一旦ギルドに戻って行った。
ベルンたちは「ちょっとこの街を見ていきたいのでいいですか?」と言っていたので許可を出して俺は先に待ち合わせの草原に居る。
「……ふぅ〜ッ」
俺は一人大きな石の上で胡坐をかいて座り口に火のついた煙草を咥えている。
この煙草は母さんが定期的に魔界通販で送ってくれるから無くなることは無いのだ。
……十カートも一気に送り込んでは一ヶ月以上は持つのだけどな?
「……偉い早く来たな?」
俺は口に煙草を咥えたまま後ろを向いた。
そこにはロシアの軍服に身を包み二つのケースを担いだヴァンと黒い黒装束を着たセツが居た。
何でこの二人はこう……何でも似合うのだろうかな?
因みに俺の服装は黒で統一されたスーツだ。
「セツはいつも道理だろうけど……ヴァンは何でキャスコなの?」
「わふぅッ、これが一番扱いやすいんだよね?」
ヴァンが微笑みつつケースから取り出したのは自動小銃キャリコ-M105という二十二経口もある銃だ。
彼女曰くこの銃が私の戦時の相棒だとか言っているのだ。
しかもゴム弾を使用しているから物凄くたちが悪いのだ。
セツは背中にコンバットナイフを二本背中にあるフォルダーに差しているのだ。
彼女はスーツの中には投げナイフが仕込んでいるのだ。
こっちもこっちで余計にたちが悪いのだ。
「まぁ、良いんだけどさ?」
そんな俺の装備も癒えたことではないのだ。
祖父から譲り受けたサイクロプスが作り上げたこの刀。
この刀はどんな硬いものでも簡単にスライスができると言うとんでもない品物なのだ。
「お待たせしました」
「おぉ、待っていたよ?」
ヴァンとセツと話しているとリクラスト学生連中と合流したので煙草を一気に吸ってから煙を吐きだして吸殻を携帯灰皿に入れてから立ち上がり俺は背伸びをした。
「一応、講習内容を発表するぞ?」
『はい、お願いします(するぜ)』
「うん、それじゃあヴァン任せた」
俺はヴァンの方を見てから微笑むと彼女は一度頷いた後、ベルンたちを見て腕を組んだ。
「今回の講習ルートを説明する。まずはこの草原から歩いて半日ほどある鉱山に向かう。そこの鉱山でとある鉱石を採取するのが今回の講習だ。
何か説明があるものは居るか?」
ヴァンがベルンたちを見渡しているとロックが勢いよく「はいッ!!」と手を上げた。
「うむ、ロックよ質問を許可する」
「ヴァンさんとセツさんは彼……「ふんッ!!」……ふげぁッ!?」
「……はぁ」
これが彼らの日常なのだろうな…ベルンとサティアは毎回苦労してそうだ。
ヴァンは一息漏らしてからせき込み説明を続けた。
「次に説明するのは注意する魔物や魔界生物だ。ここの鉱山にはワームやドラゴンが住み着いているという情報がある為気を付けることだ。次に魔界生物については……基本的に穏やかな性格のものが多いから気にしないで大丈夫だろう。説明は以上だ」
さすがはヴァンってところだろうか?
現代では俺の家のマフィア連中を結構鍛えていたりしていたからこういった者は得意なのだろうと俺は思う。
セツはこの付近に住む魔界生物をあらかた飼いならしている為、アクアフォード近くの森はセツのプライベートルームと言って過言ではない。
「それじゃあ、説明も済んだことだし行こうか?」
『おぉーッ!!』
こうして俺たちの二日間の講習が始まったのである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
草原を歩くこと五分が経った。
目の前には二十人と言う数の山賊が俺たちの前に立ち尽くしていた。
「おうおう、そこのお前ら」
「何か用だろうか?」
「悪いが荷物を全て寄越しな?」
全く…ここはとんだ輩が居ないもんだな?
俺の後ろでは武器をそれぞれ構えるベルンたちとそのまま両手をフリーにしているセツとヴァンが彼らの前に立っていた。
これならば俺一人で十分だろうな?
「悪いが押し通らせてもらうぞ?」
「交渉決裂だな?やっちまえッ!!」
『うおぉぉぉぉぉぉぉッ!!』
まさかこんな変な挑発に乗っかる輩とは思ってもみなかったです。
俺はベルトに差している刀を鞘から抜き取り剣を振り下ろしてきた男を刀の柄で鳩尾を殴った。
「うごぉッ!?」
「悪いな、俺は刀を抜いた瞬間は容赦はしないぞ?」
そう言って俺は刀に母さん(サフィアという名前のバフォメットです)に教わった方法で魔力を流し込んだ。
すると刀の刀身は銀色から黒いオーラを纏い始めた。
黒いオーラを纏い始めた刀を見た数人の山賊たちは後ずさりをしたが時すでに遅し。
「……遅いぞ?」
そう言って俺は一瞬にして山賊たちの背後に向かい刀を鞘に戻した。
すると、山賊たちの体に切込みが入り傷口からどす黒い血飛沫が周囲に散った。
「……峰打ちだから安心しな」
俺は皆の方を見てから微笑んだ。
ヴァンとセツは同じてはいないがベルンたちは驚いていた。
「こ、こんなことをして大丈夫なんですか?」
「あぁ、命までは取るようなことは俺たちはしない」
「おいおい待てよシューさんよ?」
「お前が言いたいのはこういうことだろ?『何でそれで平然としていられるのか』とな」
俺の発言でロックは一瞬驚いていたが何かを察したようでベルンがロックの肩に手を置いて首を横に振った。
「……あの人が本当に私のパパとママと一緒に冒険した人なの?」
「仕方が無いさ、あれがシューの呪いのようなものだから」
「へぇ〜ッ、何か大変なんだねヴァンさんとセツさんは?」
『いやいや、全然何とも思っていない』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あれから三時間が経っただろう。
辺りは薄暗くなってきているが目の前には鉱山の入り口ができている。
ここに入る前に俺はその場で立ち止まった。
「皆心の準備は良いだろうか?」
俺は振り返って皆に聞いてみた。
「大丈夫です」
「いつでも行けるぜッ!!」
「ちょっとッ、大声を出さないでくれるッ!?」
「バッチコーイッ!!」
リクラトス生徒は問題ないようだった。
しかし、ヴァンとセツの様子がちょっとおかしかった。
『……。』
「どうしたんですか二人とも?」
ロックが彼女らの異変に気づいてから近よるとセツが手首の鎌を全開に開いた後に目が赤く光った。
ヴァンは眼帯を外して背中のケースから相棒を取り出してセーフティを外した。
「……おい、お前ら戦闘準備に入れ」
『……えッ?』
彼らが気づいた時には遅かった。
俺の眼の前には大きな魔界蟲「デッドスパイダー」という凶暴な人食いが五体も出現したのだ。
しかもデッドスパイダーの中で最も凶悪な『ダークデーモン』というタランチュラが巨大化したような感じなのが鉱山の中から十体も出てきたのだ。
「これは真剣に戦わないと……」
恐らく俺一人でも犠牲になってもできて二人が助かるだろう。
それほどにこのダークデーモンは凶悪な魔界蟲だと言うことだ。
「……精神統一」
セツが何かを唱えると何だか力が上がった気がした。
なので俺は目を閉じてから刀を手に取り水平に構えた。
ベルンたちもそれぞれ自分らの武器を構えてから戦闘態勢に入っていた。
俺は周囲の様子を見まわしてから微笑んだ。
「さぁ、戦闘開始だッ!!」
『おうッ!!』
前衛は俺とセツとロック、サティアで目の前から襲ってきた三対のダークデーモンと戦闘を開始した。
「セツとサティアは右側のをやれッ!!」
「……了解」
「いつでも行けるわよ?」
俺は目の前でバスターソードを構えているロックの肩を数回叩いてから微笑んだ。
ロックの手が少し震えていたからだ。
「良いかロック、お前は奴らの脚を狙え」
「お、おう……シューさんは?」
「お前の後い攻撃を叩き込む」
「わ、わかった……何だか分からないがヤルしかねぇみたいだなッ!!」
そう言って俺とロックは目の前のダークデーモンと戦いを開始した。
「これでも喰らえッ!!」
ロックがバスターブレードを横に振るとダークデーモンは上にジャンプした。
それを俺が同時に飛んで相手の顔に刀を突き刺した。
「おしッ、これで一体倒したぜッ!!」
「まだ油断するなッ!!」
サティアとセツの方を見てみると何とも素晴らしい連係プレイをしていた。
まずはサティアが相手を殴って空中に吹き飛ばし身動きが取れないダークデーモンを木端微塵にセツが空中で切り裂くと言う感じの連携だった。
そして着地したセツはサティアとハイタッチをしていた。
「シューそこのいてッ!!」
「ロックもどいてくれッ!!」
「邪魔だぞお前らッ!!」
『……えッ??』
するとロックの背後でキャリコM‐105を二挺もった眼帯を外したヴァンが構えていた。
その横にはベルンとベーゼが銃器を構えていた。
『ちょッ、うおぉぉぉぉッ!!』
俺とロックは慌ててその場から急いで逃げることとなった。
全速力でその場から離れて華麗にジャンプをした後、ヴァンとベーゼがそれぞれの武器を構えて射撃を開始した。
その弾丸の雨を浴びた五体のダークデーモンが灰となって浄化された。
残るは後四体はいるが残りは一斉に片づけようと思いそれぞれ武器を再度構えた。
「お前ら準備は良いかな?これが俺らなりの講習だッ!!」
『はいッ!!』
「それじゃあ、ぶっ飛ばそうぜッ!!」
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして翌日の朝型の時間帯。
俺は目が覚めて体を起こして周囲を見渡した。
辺りには薬莢や斬撃の後がところどころにあり気づいたらセツとヴァンが俺の傍で横になって寝ているのが分かった。
そして、辺りを見てみると砂となり浄化されてゆくダークデーモンの残骸が目に映った。
「……こ、これって」
『勝ったぞッ!!』
俺は声のした方を見てみるとベルンたちが大喜びで燥いでいるのを目撃した。
驚いたものだった…まさかたった四人で十体ものダークデーモンを撃退していたのだ。
これじゃあ、何も教えることが無いじゃないか。
「はぁ〜ッ……やれやれ」
「まったくシューはあまあま〜ッ♪」
「……本当にな?」
「……ははッ、そうかもしれんな?」
俺は朝日に照らされながらもボロボロな姿で燥ぐベルンたちを見て微笑んでいた。
そして、数時間が経ち俺たちはアクアフォースの門の前に来ていた。
「本当に行ってしまうのか?」
「えぇ、そろそろ出発して戻らないといけないですからね?」
「そっか……また会えるよな?」
「あぁ、ロックさえよければいつでも来い」
「その時はヴァンさんとセツさんにプロポーズしてみせるぜ?」
ロックの発言で俺はその場で腹を抱えつつ高らかに笑った。
「な、何だよシューさん?」
「いやいや、悪い悪い……この二人は俺の妻だ」
『……えッ?』
まさかベルンたちまでもが驚いたのはこっちも吃驚だ。
「そ、それじゃあ……」
「ご、ごめんねぇ〜……」
「悪気は無いんだ」
「そ、そんなぁ……」
ロックはその場で膝をついてしまった。
俺はロックの肩を数回叩いて微笑む。
「俺はお前の恋路を応援してるからな?」
「……シューさん」
俺とロックはその場で立ち上がり腕を組んで微笑んだ。
「……皆も元気でね?」
「うぅッ……セツさん……ぐすッ……」
「あぁ〜ッ、セツがサティアを泣かしてる」
「五月蝿いぞヴァン」
「あははッ、いやいや楽しいねッ♪」
彼女らは彼女らで別れを惜しんでいた。
そして、彼らが帰る時間となり目の前には空間ゲートが開いていた。
この空間ゲートをくぐれば彼らとはしばらく会えなくなるのだ。
「また何か困ったことがあれば遠慮しないで来い」
『はいッ!!』
「……焦るな、何事も自信を持て」
『はいッ!!』
「わふぅ〜ッ……えぐッ……ちゃんと頑張るんだよ?……うぅッ……」
『はいッ!!』
そして空間ゲートにベルンたちが入って俺たちの方を見た。
それも最高の笑顔を俺たちに見せてくれた。
『本当にありがとうございましたッ!!』
それが彼らとの「またね」という合図だったのかもしれない。
またこうやって出会う日々をまた俺は楽しみにしているよ?
そに日は心地よい風が草原を走っていたような気がした。
何だかいい気分だったのを俺は忘れることは無いだろう。
〜END〜
俺こと修十・アッシフォードまたはシューという人間だ。
俺はこの町にあるギルドで働いている者でもある。
「シューよちょっと来ておくれッ!!」
「おや、どうかしたの?」
今はギルドの窓を雑巾で磨いていると突然ギルドの長であるバフォメットのリザリア・レンベールという名前のバフォメットが手招きをしながら掲示板の方を指さしていた。
俺は首を傾げてリザリアさんの元へと向かった。
「この依頼を受けてはくれぬかの?」
「んッ、どれどれ?」
リザリアさんが掲示板のクエストを一枚手に取ってから俺に差し出してきた。
その依頼内容を見てから俺は苦笑いを浮かべる。
「……何で俺がこれを?」
「お主だけではないぞ?ヴァンとセツにも頼もうと思ってな」
「分かったよ。ちょっと聞いてみる」
俺はギルドにある階段を上って二階へと足を運んだ。
二階では確かヴァンがセツと一緒に武器の整備をしていたはずだ。
俺は二階にある道場を覗いた。
「……んッ?」
「……わふッ?」
「……あッ」
道場に顔をのぞかせた瞬間に目の前にはヴァンとセツが居た。
しかし、ここで問題が発生したのだ。
彼女たちは道場で生着替えをしていました。
しかもTシャツをたくし上げている。
「……シューのスケベ」
「くぅ〜んッ、シューのエッチ」
「いや待って、これは不可抗力だ……うぎゃあああああッ!!」
俺は飛んでくるナイフや斬撃を交わしながら急いで一階へと逃げ出した。
何だか彼女らは道場ではこういった羞恥心を持つようになったのだという。
これを夜の時にも持っていてほしいものである。
「……相変わらず騒がしいの?」
「えぇ、本当ですね?」
俺が道場の中でヴァンとセツから逃げ回っている最中、リザリアさんとシリアさんはテーブルの上にティーセットを置いて紅茶を楽しんでいたのだという。
そんな騒動の中を何者かがギルドの扉を開けて中に入ってきた。
「すみません、ここがアクアフォースのギルドですか?」
「そうじゃがお主らは何者じゃ?」
「あぁ、申しくれました……俺の名前はベルン・トリニティと言います」
「……ふむッ、と言うことはお主がリクラトスとやらの学校の生徒かの?」
「はい、シュートさんはいませんか?」
そう言ってリザリアさんは俺たちが争っている二階の方へと指さした。
それと同時に俺が階段を転げ落ちると言う何とも無残な姿でベルンと会うことになったのだ。
「いててッ、まったくまさか魔法弾を撃ち込んでくるやつがある……か……」
「あのぉ……大丈夫ですか?」
「気にしないでくれ……いつものことだからさ?」
俺はそのまま何もなかったのように立ち上がる。
そして、俺は目の前の青年の顔を見てみた。
「俺の顔に何かついているんですか?」
「あぁ……目つきが怖いな?」
「……気にしないでください」
目の前の青年が何だか肩をぐったりさせながら俺に言った。
俺は何か悪いことをしたのだろうか?
「お、オホンッ!!……それじゃあ、依頼内容を確認したいから移動しよう」
「はい、わかりました。では俺の仲間が近くの喫茶店に居ますので行きましょう」
「あぁ、わかった。おっとッ、自己紹介が遅れたね……シュート・アッシフォードだ」
「ベルン・トリニティです」
そう言って自己紹介をした後に俺とベルンは微笑みつつ握手をした。
この青年むっちゃ良い子やないかい…。
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そして喫茶店に向かった俺とベルンは向かった。
喫茶店のテラスには数人の青年たちが一つのテーブルを囲むかのように座っていた。
「遅いぜベルン、待ちくたびれたぜ?」
「あぁ、わるいなロック……講師を連れてきたぞ?」
「……そこの男の人?」
何だかベルゼブブの嬢ちゃんが俺を指さしながら言ってきた。
俺はテーブルに手をついてから微笑む。
「俺の名前はシュート・アッシフォードって名前だ。気軽にシューさんとでも呼んでくれ」
『は、はぁ……』
まぁ、そう言う反応をしますよね?
俺は目の前の青年たちを見まわした。
ベルゼブブは良いとしよう、そのベルゼブブの隣に座っているメドゥーサの女子はどこかで見たことのある目つきをしていた。
「何処かで見たことのある目つきをしているメドゥーサだな」
「そ、そうですか?」
「あぁ、確か……冒険者のお嫁さんだったかな?」
俺の一言により周囲の空気が硬直した。
首を傾げてながら聞いてみることにした。
「何か俺変なことを言ったかな?」
「い、いや……続きを聞いても良いですか?」
「あぁ、その冒険者は確か本を出版してたりする有名な人でな?そのお嫁さんがヴァンとセツを見るに何だかえらい嫉妬深いメドゥーサの夫婦だったな?」
俺は微笑みつつペラペラと話しているとメドゥーサの女女子が顔を真っ赤にして俯いていることに気づいた。
それを見ながらベルゼブブがメドゥーサの肩を叩きながら笑っていた。
まぁ、彼らと少しだけ距離を掴めることができたと思いたい。
「それじゃあ、まずは自己紹介をしてくれ」
「それじゃあ……「ちょっとシューッ!?」……わぷッ!?」
何故か立ち上がったバスターソードを背に吊るしてある細マッチョの青年を突き飛ばしながらヴァンとセツが俺の目の前に現れた。
「勝手に行くなんてひどいじゃないかッ!!」
「……謝罪を求める」
「あははッ、悪い悪い」
何ていっていたらベルンが大の字になって倒れている青年に近寄り揺さぶっていた。
「おいロックしっかりしろッ!?」
「うぅッ、はッ!?誰だ今俺を突き飛ばした奴……は……」
急に性音が起き上がり俺と話していたヴァンとセツを目撃した。
その瞬間彼のナンパ魂とかいうやつ(?)が発動したらしい。
「初めまして私はロック・サンドラと言います。失礼ですがお名前は?」
「私の名前はヴァン。そこの目つきの悪い男と同じガンナーだ」
「……セツだ」
「ヴァンさんにセツさんですね?宜しくお願いしますッ!!」
ロックと名乗った青年は彼女らに頭を下げてから挨拶をする。
それにつられて彼女らも綺麗なお辞儀をした。
「……見事なまでの変貌だな?」
「まぁ、アイツはいつもそうですよ?」
「そうか、それじゃあ……そこのベルゼブブとメドゥーサの名前を聞こうか?」
「私の名前はサティア・ウィーリィと言います。父と母がお世話になりました」
「いやいや、別に気にしてないから問題ないさ。次はベルゼブブの方だな?」
「私の名前はベーゼ・B・ティトラスって名前だ」
「何だか年上への態度がなっていない奴だな?」
「これがベーゼなんで許してやってください」
「まぁ、気には止めてないから良いんだがな?」
こうして俺は彼らと一緒に二日間は一緒に行動を共にすることになった。
初めての講師としての緊張とワクワク感でうずうずしながらだ。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
こうして俺たちはアクアフォード近くにある草原で待ち合わせることにしたのであった。
俺の嫁たちは「着替えてくる」と言って一旦ギルドに戻って行った。
ベルンたちは「ちょっとこの街を見ていきたいのでいいですか?」と言っていたので許可を出して俺は先に待ち合わせの草原に居る。
「……ふぅ〜ッ」
俺は一人大きな石の上で胡坐をかいて座り口に火のついた煙草を咥えている。
この煙草は母さんが定期的に魔界通販で送ってくれるから無くなることは無いのだ。
……十カートも一気に送り込んでは一ヶ月以上は持つのだけどな?
「……偉い早く来たな?」
俺は口に煙草を咥えたまま後ろを向いた。
そこにはロシアの軍服に身を包み二つのケースを担いだヴァンと黒い黒装束を着たセツが居た。
何でこの二人はこう……何でも似合うのだろうかな?
因みに俺の服装は黒で統一されたスーツだ。
「セツはいつも道理だろうけど……ヴァンは何でキャスコなの?」
「わふぅッ、これが一番扱いやすいんだよね?」
ヴァンが微笑みつつケースから取り出したのは自動小銃キャリコ-M105という二十二経口もある銃だ。
彼女曰くこの銃が私の戦時の相棒だとか言っているのだ。
しかもゴム弾を使用しているから物凄くたちが悪いのだ。
セツは背中にコンバットナイフを二本背中にあるフォルダーに差しているのだ。
彼女はスーツの中には投げナイフが仕込んでいるのだ。
こっちもこっちで余計にたちが悪いのだ。
「まぁ、良いんだけどさ?」
そんな俺の装備も癒えたことではないのだ。
祖父から譲り受けたサイクロプスが作り上げたこの刀。
この刀はどんな硬いものでも簡単にスライスができると言うとんでもない品物なのだ。
「お待たせしました」
「おぉ、待っていたよ?」
ヴァンとセツと話しているとリクラスト学生連中と合流したので煙草を一気に吸ってから煙を吐きだして吸殻を携帯灰皿に入れてから立ち上がり俺は背伸びをした。
「一応、講習内容を発表するぞ?」
『はい、お願いします(するぜ)』
「うん、それじゃあヴァン任せた」
俺はヴァンの方を見てから微笑むと彼女は一度頷いた後、ベルンたちを見て腕を組んだ。
「今回の講習ルートを説明する。まずはこの草原から歩いて半日ほどある鉱山に向かう。そこの鉱山でとある鉱石を採取するのが今回の講習だ。
何か説明があるものは居るか?」
ヴァンがベルンたちを見渡しているとロックが勢いよく「はいッ!!」と手を上げた。
「うむ、ロックよ質問を許可する」
「ヴァンさんとセツさんは彼……「ふんッ!!」……ふげぁッ!?」
「……はぁ」
これが彼らの日常なのだろうな…ベルンとサティアは毎回苦労してそうだ。
ヴァンは一息漏らしてからせき込み説明を続けた。
「次に説明するのは注意する魔物や魔界生物だ。ここの鉱山にはワームやドラゴンが住み着いているという情報がある為気を付けることだ。次に魔界生物については……基本的に穏やかな性格のものが多いから気にしないで大丈夫だろう。説明は以上だ」
さすがはヴァンってところだろうか?
現代では俺の家のマフィア連中を結構鍛えていたりしていたからこういった者は得意なのだろうと俺は思う。
セツはこの付近に住む魔界生物をあらかた飼いならしている為、アクアフォード近くの森はセツのプライベートルームと言って過言ではない。
「それじゃあ、説明も済んだことだし行こうか?」
『おぉーッ!!』
こうして俺たちの二日間の講習が始まったのである。
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
草原を歩くこと五分が経った。
目の前には二十人と言う数の山賊が俺たちの前に立ち尽くしていた。
「おうおう、そこのお前ら」
「何か用だろうか?」
「悪いが荷物を全て寄越しな?」
全く…ここはとんだ輩が居ないもんだな?
俺の後ろでは武器をそれぞれ構えるベルンたちとそのまま両手をフリーにしているセツとヴァンが彼らの前に立っていた。
これならば俺一人で十分だろうな?
「悪いが押し通らせてもらうぞ?」
「交渉決裂だな?やっちまえッ!!」
『うおぉぉぉぉぉぉぉッ!!』
まさかこんな変な挑発に乗っかる輩とは思ってもみなかったです。
俺はベルトに差している刀を鞘から抜き取り剣を振り下ろしてきた男を刀の柄で鳩尾を殴った。
「うごぉッ!?」
「悪いな、俺は刀を抜いた瞬間は容赦はしないぞ?」
そう言って俺は刀に母さん(サフィアという名前のバフォメットです)に教わった方法で魔力を流し込んだ。
すると刀の刀身は銀色から黒いオーラを纏い始めた。
黒いオーラを纏い始めた刀を見た数人の山賊たちは後ずさりをしたが時すでに遅し。
「……遅いぞ?」
そう言って俺は一瞬にして山賊たちの背後に向かい刀を鞘に戻した。
すると、山賊たちの体に切込みが入り傷口からどす黒い血飛沫が周囲に散った。
「……峰打ちだから安心しな」
俺は皆の方を見てから微笑んだ。
ヴァンとセツは同じてはいないがベルンたちは驚いていた。
「こ、こんなことをして大丈夫なんですか?」
「あぁ、命までは取るようなことは俺たちはしない」
「おいおい待てよシューさんよ?」
「お前が言いたいのはこういうことだろ?『何でそれで平然としていられるのか』とな」
俺の発言でロックは一瞬驚いていたが何かを察したようでベルンがロックの肩に手を置いて首を横に振った。
「……あの人が本当に私のパパとママと一緒に冒険した人なの?」
「仕方が無いさ、あれがシューの呪いのようなものだから」
「へぇ〜ッ、何か大変なんだねヴァンさんとセツさんは?」
『いやいや、全然何とも思っていない』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
あれから三時間が経っただろう。
辺りは薄暗くなってきているが目の前には鉱山の入り口ができている。
ここに入る前に俺はその場で立ち止まった。
「皆心の準備は良いだろうか?」
俺は振り返って皆に聞いてみた。
「大丈夫です」
「いつでも行けるぜッ!!」
「ちょっとッ、大声を出さないでくれるッ!?」
「バッチコーイッ!!」
リクラトス生徒は問題ないようだった。
しかし、ヴァンとセツの様子がちょっとおかしかった。
『……。』
「どうしたんですか二人とも?」
ロックが彼女らの異変に気づいてから近よるとセツが手首の鎌を全開に開いた後に目が赤く光った。
ヴァンは眼帯を外して背中のケースから相棒を取り出してセーフティを外した。
「……おい、お前ら戦闘準備に入れ」
『……えッ?』
彼らが気づいた時には遅かった。
俺の眼の前には大きな魔界蟲「デッドスパイダー」という凶暴な人食いが五体も出現したのだ。
しかもデッドスパイダーの中で最も凶悪な『ダークデーモン』というタランチュラが巨大化したような感じなのが鉱山の中から十体も出てきたのだ。
「これは真剣に戦わないと……」
恐らく俺一人でも犠牲になってもできて二人が助かるだろう。
それほどにこのダークデーモンは凶悪な魔界蟲だと言うことだ。
「……精神統一」
セツが何かを唱えると何だか力が上がった気がした。
なので俺は目を閉じてから刀を手に取り水平に構えた。
ベルンたちもそれぞれ自分らの武器を構えてから戦闘態勢に入っていた。
俺は周囲の様子を見まわしてから微笑んだ。
「さぁ、戦闘開始だッ!!」
『おうッ!!』
前衛は俺とセツとロック、サティアで目の前から襲ってきた三対のダークデーモンと戦闘を開始した。
「セツとサティアは右側のをやれッ!!」
「……了解」
「いつでも行けるわよ?」
俺は目の前でバスターソードを構えているロックの肩を数回叩いてから微笑んだ。
ロックの手が少し震えていたからだ。
「良いかロック、お前は奴らの脚を狙え」
「お、おう……シューさんは?」
「お前の後い攻撃を叩き込む」
「わ、わかった……何だか分からないがヤルしかねぇみたいだなッ!!」
そう言って俺とロックは目の前のダークデーモンと戦いを開始した。
「これでも喰らえッ!!」
ロックがバスターブレードを横に振るとダークデーモンは上にジャンプした。
それを俺が同時に飛んで相手の顔に刀を突き刺した。
「おしッ、これで一体倒したぜッ!!」
「まだ油断するなッ!!」
サティアとセツの方を見てみると何とも素晴らしい連係プレイをしていた。
まずはサティアが相手を殴って空中に吹き飛ばし身動きが取れないダークデーモンを木端微塵にセツが空中で切り裂くと言う感じの連携だった。
そして着地したセツはサティアとハイタッチをしていた。
「シューそこのいてッ!!」
「ロックもどいてくれッ!!」
「邪魔だぞお前らッ!!」
『……えッ??』
するとロックの背後でキャリコM‐105を二挺もった眼帯を外したヴァンが構えていた。
その横にはベルンとベーゼが銃器を構えていた。
『ちょッ、うおぉぉぉぉッ!!』
俺とロックは慌ててその場から急いで逃げることとなった。
全速力でその場から離れて華麗にジャンプをした後、ヴァンとベーゼがそれぞれの武器を構えて射撃を開始した。
その弾丸の雨を浴びた五体のダークデーモンが灰となって浄化された。
残るは後四体はいるが残りは一斉に片づけようと思いそれぞれ武器を再度構えた。
「お前ら準備は良いかな?これが俺らなりの講習だッ!!」
『はいッ!!』
「それじゃあ、ぶっ飛ばそうぜッ!!」
『うおぉぉぉぉぉぉぉぉッ!!』
―――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
そして翌日の朝型の時間帯。
俺は目が覚めて体を起こして周囲を見渡した。
辺りには薬莢や斬撃の後がところどころにあり気づいたらセツとヴァンが俺の傍で横になって寝ているのが分かった。
そして、辺りを見てみると砂となり浄化されてゆくダークデーモンの残骸が目に映った。
「……こ、これって」
『勝ったぞッ!!』
俺は声のした方を見てみるとベルンたちが大喜びで燥いでいるのを目撃した。
驚いたものだった…まさかたった四人で十体ものダークデーモンを撃退していたのだ。
これじゃあ、何も教えることが無いじゃないか。
「はぁ〜ッ……やれやれ」
「まったくシューはあまあま〜ッ♪」
「……本当にな?」
「……ははッ、そうかもしれんな?」
俺は朝日に照らされながらもボロボロな姿で燥ぐベルンたちを見て微笑んでいた。
そして、数時間が経ち俺たちはアクアフォースの門の前に来ていた。
「本当に行ってしまうのか?」
「えぇ、そろそろ出発して戻らないといけないですからね?」
「そっか……また会えるよな?」
「あぁ、ロックさえよければいつでも来い」
「その時はヴァンさんとセツさんにプロポーズしてみせるぜ?」
ロックの発言で俺はその場で腹を抱えつつ高らかに笑った。
「な、何だよシューさん?」
「いやいや、悪い悪い……この二人は俺の妻だ」
『……えッ?』
まさかベルンたちまでもが驚いたのはこっちも吃驚だ。
「そ、それじゃあ……」
「ご、ごめんねぇ〜……」
「悪気は無いんだ」
「そ、そんなぁ……」
ロックはその場で膝をついてしまった。
俺はロックの肩を数回叩いて微笑む。
「俺はお前の恋路を応援してるからな?」
「……シューさん」
俺とロックはその場で立ち上がり腕を組んで微笑んだ。
「……皆も元気でね?」
「うぅッ……セツさん……ぐすッ……」
「あぁ〜ッ、セツがサティアを泣かしてる」
「五月蝿いぞヴァン」
「あははッ、いやいや楽しいねッ♪」
彼女らは彼女らで別れを惜しんでいた。
そして、彼らが帰る時間となり目の前には空間ゲートが開いていた。
この空間ゲートをくぐれば彼らとはしばらく会えなくなるのだ。
「また何か困ったことがあれば遠慮しないで来い」
『はいッ!!』
「……焦るな、何事も自信を持て」
『はいッ!!』
「わふぅ〜ッ……えぐッ……ちゃんと頑張るんだよ?……うぅッ……」
『はいッ!!』
そして空間ゲートにベルンたちが入って俺たちの方を見た。
それも最高の笑顔を俺たちに見せてくれた。
『本当にありがとうございましたッ!!』
それが彼らとの「またね」という合図だったのかもしれない。
またこうやって出会う日々をまた俺は楽しみにしているよ?
そに日は心地よい風が草原を走っていたような気がした。
何だかいい気分だったのを俺は忘れることは無いだろう。
〜END〜
13/04/24 00:30更新 / オガちゃん