連載小説
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1# 出会い
俺の名前は岡崎雄介(ゆうすけ)という。
高校を卒業した俺はコンビニでアルバイトをしている。
俺の両親は交通事故で亡くなってしまった。
まだ中学生だった俺を拾ってここまで育ててくれた夫婦の家で暮らしてます。
午前七時に俺は目を覚ましてベットから体を起こして部屋を出た。
階段を降りると何処からか良い香りがしてきたのでそれにつられながらダイニングへと足を運ぶ。
そこには白のエプロンの下にはお腹が見えるほど丈の短い黒のタンクトップに白の短パンを着ている白い提灯おばけの緒形小雪(こゆき)さんが朝ご飯の準備をしていた。

「おはようございます」
「あら雄介君おはよう。脩也さんを起こして来てもらえる?」
「はい、わかりました」

小雪さんに言われて二階に上がり俺はある部屋の前に立つ。
そして、二回部屋の扉をノックする。

「脩也さん、朝ご飯です」
『あぁ、今行くよ』


部屋の扉が開き、黒のスーツを身に纏った男が大きなあくびをしながら出てきた。
小雪さんの夫である緒形脩也(しゅうや)さんだ。
脩也さんは俺の方を見ると微笑む。

「おはよう雄介」
「おはようございます脩也さん」

俺と脩也さんは一緒に階段を降りると小雪さんがお盆に乗せた朝食をリビングにある炬燵の上に置いてゆく。
今日の朝ご飯は魚の塩焼きに出汁巻き卵、アサリの味噌汁。
どれも、出来立てで湯気を立てていて実に美味しそうだ。

「おはよう小雪」
「おはようございます脩也さん。さぁ、では頂きましょうか?」

俺たち三人は手を合わせて「頂きます」と言ってから箸を持ち食べる。
小雪さんの作る料理は美味しいものだ。
俺はこの二人に育てて貰って本当に感謝をしている。
食事を済ませて時間を見る。
時刻は午前九時頃だったので俺は二階に上がり私服に着替えてから玄関に向かう。
それから俺と玄関先で待っていた脩也さんは玄関でそれぞれ靴を履いている。

「脩也さん?」
「んッ、どうかした?」
「研究の方はどうなんですか?」
「あぁ、今はまだ教えられないんだ」
「そうですか、頑張ってください」
「うん、ありがとう」

俺と脩也さんは玄関を開けてから微笑みながら立っている小雪さんを見る。

『いってきます』
「はい、いってらっしゃい」

俺と脩也さんは小雪さんに手を振りながら外に出る。
外は、白い銀世界が目の前に現れた。
天気予報では深夜に雪が降るって言ったっけか。
脩也さんは軽自動車に乗り込もうとしていた。

「あぁ、そうそう雄介?」
「はい、何ですか?」
「これ、やるよ…」

脩也さんが投げたものを俺が両手でキャッチをする。
それは、何かの鍵だった。

「倉庫にあったバイクがあったろ?」
「えぇ、ありましたね?それがどうかしたんですか?」
「昨日ね?友人のサイクロプスに頼んでフルメンテしてもらったから使いなさい」
「良いんですかッ!?」
「あぁ、それじゃあな?」

俺に手を振りながら脩也さんは車に乗り込み仕事場へと向かっていった。
俺は、嬉しさの余りに大きな声で歓声を沸かすと落雪が落ちてきてそれを浴びてしまう羽目になった。

〜暫くお待ちください…〜

俺は倉庫のシャッターを開けながらワクワクしていた。
バイクが好きな俺にとってバイクを貰えるのは嬉しいことだ。
このバイクは、脩也さんが昔乗っていたものだ。
このモデルはもう生産されていないものでめったなことが無い限りこのバイクは壊れないほど頑丈に作られている。
それにサイクロプスの技術を取り入れるとなるとかなり頑丈になり壊れにくくなっているだろうと俺は予測した。

「おぉ、ハンドルグリップもクラッチもどれも新品だ…脩也さんに帰ったらお礼を言わないとな?」

俺はバイクを押して倉庫から出した後にシャッターを閉める。
それからジャンバーを着てからヘルメットを着けバイクに跨り走り出す。
暫く走った後に近くの職安所へと入ってゆく。
それから受付で軽い手続きをしてから待合場所にあるソファに腰かける。
ここの職安所はサバトが経営していて、就職率が高いことで有名だ。

「岡崎さん?」
「はいッ!!」
「岡崎さん、二番窓口でお待ちです」
「わかりました」

俺は受付の魔女に言われた窓口へと進み椅子に座る。
その前には黒いスーツ姿の刑部狸が座っていた。

「おぉ、お主か。今日はどんな様で来たんや?」
「はい、今日は…」
「また、小雪に叱られたのか?」
「違いますよ朱里さん……」
「そうかいそうかい……あはははッ!!」

お腹を抱えながら笑っている彼女の名前は西岡朱里(しゅり)と言う。
俺がここで就職を探していると最初に声をかけてきたのも彼女である。
朱里さんは小雪さんの知り合いで同じ母校の卒業生と言っていた。

「しかし、儂が紹介したアルバイトは長く続いているみたいじゃないか?」
「はい、何だか楽しくて辞められないんです」
「そうかい、あいつも喜ぶぞ?」
「そうですか……それは、良かったです」

俺と朱里さんが楽しく話していると魔女がベルを二回叩く。
これは、面会の終わりを表している。

「おや?もう終わりか……すまんな?」
「いえ、有難う御座いました」
「それじゃあ、明後日にでも顔を出せ。儂が色々と探しておく」
「はい、わかりました。有難う御座いました」

俺は席を立ってから朱里さんに頭を下げてから職安所を出てからバイクに跨りヘルメットをつけようとした時であった。

『……い』
「……んッ??」

俺は何処からか聞こえた声に当たりを見渡して首を傾げる。
しかし、上から何か音がしたので見上げると…水色と白の縞模様の下着が見えた。
だが、しかし…―――

「どいてどいてッ!?」
「なんだッ!?……うごッ!?」

上を見上げた瞬間に顔に何か柔らかい何かが降ってきた。
そのまま俺は後ろ向きに倒れる。

「いつつッ、助かった……って、あれ?」
「んががッ……」

彼女は体を起こして頭を擦りながら何か違和感を感じたのだろう。
彼女の下敷きになっている俺を見て目を見開きながら驚いていた。

「だ、大丈夫ですかッ!?」

俺から飛び降りてから彼女は俺の体を揺さぶる。
まさか、空から女の子が降ってくるなんて思わなかった。

〜暫くお待ちください…〜

「本当に申し訳ありませんでした」
「いやいや、大丈夫だから……」

俺とエンジェルの女の子は近くの公園に向かい、ベンチに座っている。
俺を心配そうに見る彼女に俺は苦笑いを浮かべながら両手を振った。
彼女の名前はメイスと言うエンジェルだ。
彼女が言うには散歩をしていたらうっかり足を滑らせて日本に落ちてきたのだと言う。

「本当に大丈夫なんですか?」
「あぁ、俺もそんなに体は弱くないから」
「すみません……ぐすッ……」

彼女は鼻を鳴らしながら目じりに涙を溜めていた。
気まずくなってしまった。
どうする、とりあぜず俺は彼女を慰める。

「あぁ、泣くなよ……」
「だって……だってッ……」

俺は彼女にポケットティッシュを泣いている彼女に差し出す。

「これで涙を拭いてくれ」
「……うんッ……」

彼女はポケットティッシュを数枚取ってから涙を拭う。

「すみません、有難う御座います」
「いやいや、元気出して……ねッ?」
「……はい」

俺は彼女を見てからバイクに跨りエンジンをかける。

「それじゃあ、俺行くから。天界まで帰れるだろ?」

「それじゃあ」とメイスに言ってからバイクのアクセルを握り走りだそうとした時だった。

「ま、待ってくださいッ!!」
「んッ??まだ何かあるの?」
「いえ、その……」

彼女はワンピースの裾を握りながら俯く。
そして、彼女はこう言った。

「私……天界に帰る方法が分からないんです」
「……えッ??」

俯いたまま涙を流しながらメイスは言う。

「天界に帰る方法を知らないんです……だから……ご迷惑ではなければ……」

彼女は顔を上げてから俺を一回見て頭を深く下げる。

「御願いしますッ!!私を貴方の家に泊めてくださいッ!!」
「……。」

俺は少し考えてから大きくため息をつく。
そして、俺は携帯で脩也さんに連絡を入れるのであった。

〜暫くお待ちください〜

俺とメイスは現在、脩也さんが働いている大学に居る。
俺は大学の入り口にいる警備員のワーウルフに事情を説明した。

「あぁ、緒形教授から聞いてるよ?バイクは社員駐車場に止めてから入ってください」
「ありがとうございます」

俺とメイスは頭を下げてから門を通り社員駐車場へと向かう。
社員駐車場にある駐輪所にバイクを止めてから大学の中へと足を運ぶ。
入り口付近には事務所があり、俺とメイスに気づいた御婆さんが窓口前で座る。

「お待ちしておりました。こちらをつけてから奥にある応接室に向かわれてください」

御婆さんに渡された「来校者」と書かれた名札を貰い、それを胸に付けてから応接室に向かう。
扉の前に立ってから扉を二回ノックする。

『雄介だろ?入りなさい』
「はい、失礼します」

扉を開けるとソファに腰かけながら微笑んでいる脩也さんが居た。

「君がメイスちゃんだね?」
「はい、宜しくお願いします」
「うん、礼儀がなってって良い子だ」

脩也さんが指さすソファに俺とメイスは座ろうとするが…―――

「うきゃッ!?」
『……。』

テーブルの脚に足を引かけ思い切ってこけて床とキスをするメイスを俺と脩也さんは黙って見ていた。
そして、メイスは立ち上がり俺の隣に座る。

「うぅん……それじゃあ、メイスちゃん?」
「はい、何でしょうか?」
「君は天界への帰り道が分からないんだね?」
「……はい」
「それで、雄介に泊めてくれと言った訳か……」

脩也さんは深く腰を落としながら微笑む。

「良いだろう。君を私の家で泊めてあげよう」
「本当ですかッ!?」
「しかし……ただで泊めるわけにはいかないよ?」

脩也さんは隣に置いていた黒い鞄から何かの書類を取り出してテーブルにペンと一緒にメイスに差し出す。
俺はその書類を見て驚き立ち上がる。

「脩也さん……まさか……」
「あぁ、そのまさかだ。メイスちゃんを君と同様……家族として迎える」
「……良いんですか?」
「あぁ、もちろんだ」

脩也さんは微笑んでからメイスを見つめる。

「ただでは暮らせはさせないからそのつもりでね?」
「……はいッ!!」

メイスは満面の笑顔で脩也さんを見ている。
脩也さんは携帯を取り出してから何処かに連絡を入れながら応接室を出る。

「良かったなメイス?」
「はい、宜しくお願いします雄介さん」

俺たちは見つめ合いながら笑い始める。
それも、心から高らかに笑っているのである。
13/01/25 16:50更新 / オガちゃん
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■作者メッセージ
はい、オガちゃんです。
今回は六話構成となっております。
誤字、脱字があったら感想でお知らせください。

誤字があったので訂正しました。

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