動き続ける時
「どうぞ、お入りください」
彼女は扉を開けるとそう言って、僕を教会の中に招いた。外観は小さい規模の教会で中は彼女と僕以外は誰もおらず静かであった。しかし、教会は静かな荘厳さに満ちていた
「立派な教会ですね」
「ありがとうございます。教会を預かる身としては嬉しい限りです」
彼女は屈託のない笑顔でお礼を言った。彼女の言葉であることに気付いた。なぜこの教会には自分たち以外の人間がいないのだろうか?仮に彼女だけしかいないとなると小さい教会とは言え基本的に教会は建築物としては規模は大きい。しかし、この教会は非常に整備されている。と言うことは他に人はいるのだろうか?
「あの、他に人はいますか?お邪魔して挨拶しないのはちょっと……」
と僕が言うと彼女は
「あ、大丈夫ですよ。この町にこの教会の人間は私以外いませんので」
と答えた
はい?今なんて言った?この町には?いやいや……ちょっと待て、『この町に』の前に『今は』とか言う言葉が抜けてる気がしたんだけど?聞き間違えかな?それとも、僕の耳が悪くて『この町に』と言うのが余分に聞こえたのかな?今朝から吐き気や動悸、胸の痛みが続いてるからその影響かな?もう一度聞いてみよう……
「すいません、もう一度お聞きしたいのですが……他に人はいないんですか?」
「はい、いませんよ。」
「それは『今』この町にいないんですよね?」
僕はあえて『今』と言う言葉を強調して言った。すると彼女は
「いえ、違います。私はこの教会の管理人で基本的にこの教会には他に人はいません」
「……冗談ですか?」
「冗談じゃありませんよ?」
「いや、おかしいでしょ?ここまで整備されてて1人しかいないって……あなたはどこぞの両親に借金押し付けられてお嬢様に拾われた執事ですか?」
「いえ、修道女です」
彼女はきっぱりと自分の職業?を答えた
聖職者てそんなに優秀なのか……初めて知った……きっと、「AMEN!!」とか言って吸血鬼と繰り広げる神父や八極拳を極めた神父や「お別れです!!」と言ってみんなのトラウマレベルの強さを持つ牧師もいるんだろうな……んな訳あるか!?これだけの規模の建物1人で維持できるものなのか!?さっき、外も見たけど庭園もしっかり手入れされてるし、ガラスは全く曇ってないし、床や椅子にゴミどころか塵1つみえないんですけど!?
混乱している僕に彼女は
「友人が掃除が上手くて、毎日手伝いに来てくれるんですよ」
と笑いながら言った……これって答えになるのかな?
「その友人何者なんですか?」
「天使みたいな方ですよ」
聖職者が軽々しく天使て言っていいのか?
「ところで……本題に入りませんか?」
その言葉を聞いて僕は我に返った
そうだった……僕はよく分からないまま彼女に誘われるままに『悩み』を打ち明けることになったんだ……あれ?ちょっと待て?よく考えればこれって結構危なくないかな?見ず知らずの人にいきなり自分の悩み明かすって……しかも、宗教関係者に……そういえば父さんが
『家の外では宗教や政治の話はするな』
て子どもの頃に言ってたな……だから、僕は基本的に宗教とかに関わるのが苦手だ……それに僕の悩みって……
「うっ……」
「大丈夫ですか?」
マズイ……あの事を思い出そうとする度にまた症状が……こんなんじゃ悩みを相談する以前の問題だ……
「すいません……大丈夫ですから……」
やっぱり……無理に決まってる……この人は恐らく善意で僕の相談に乗ってくれようとしているが肝心の僕が話せる状況じゃない……やっぱり断ろう……失望される前に……
と僕が彼女に相談を断ろうした瞬間
「ん〜そうですね……やはり、いきなり悩みを打ち明けるなんて無茶ですよね……」
「え?」
彼女はまるで僕の心を読んだかのように先に言葉を発した。彼女の申し訳なさそうな顔を見てなぜか罪悪感が湧いてきた
「いや、あの……すいません……」
「いえ、普通はそう言うものですよ……」
僕が謝罪の言葉を述べると彼女は即座にフォローを入れてきた
あれ?でも教会て懺悔室があったような?確か、どこかで懺悔室は密室だからそれが作用して安心感を与えて秘密を話しやすくするって聞いたような?
「あの……大変ぶしつけがましいんですが、懺悔室は?」
僕は意を決して聞くと
「そんなもの使いません」
「え!?」
僕の提案は一蹴された。僕はその理由を尋ねようとするが
「あなたを追い詰めるものは懺悔と言うよりは後悔や感傷と言った類のものだと私は思います……なぜあなたが悔い改める必要があります?」
「……」
僕は黙るしかなかった。彼女はなぜか僕の『苦しみ』の一部を理解している気がした
「茉莉(まり)です……」
「え?」
「私の名前は進藤(しんどう)茉莉です。悩みを聞く前に信頼関係を築きましょう?そうすれば、いつかあなたが話せる時が来ると思います……どうですか?」
彼女は突然、自分の名前を名乗り、提案してきた。僕は呆気にとられながらも彼女の瞳を見るとなぜか
「九条明です……」
名乗ってしまった
だが……気のせいだろうか?一瞬、彼女の瞳が光ったような気が……
「では、九条さん……もう、日が暮れますのでお帰りになっては?」
「え、あ、はい」
彼女に言われて僕は教会から出ることにした
あれ?おかしいな?朝に教会の前に来たのにいつの間にかそんなに時間が経ったのかな?……あ、そうだ
「進藤さん」
「なんでしょうか?」
僕は教会に出る前に
「今日は色々とありがとうございました」
お礼を言った。彼女は突然のことで驚いたけど親身になって相談に乗ろうとしてくれた……それはたとえ信仰上のことでも嬉しいことだ……あれ?嬉しい?こんな感情……いつ以来だっけ?
「どういたしまして。では、また明日……」
「はい」
そうして、僕は教会を出た。しかし、教会から一歩出た瞬間、あることに気づいた。進藤さん以外の誰かに見られている気がした。僕は周囲を確認するが進藤さん以外誰もいないことを確認して、そのまま帰路についた
彼女は扉を開けるとそう言って、僕を教会の中に招いた。外観は小さい規模の教会で中は彼女と僕以外は誰もおらず静かであった。しかし、教会は静かな荘厳さに満ちていた
「立派な教会ですね」
「ありがとうございます。教会を預かる身としては嬉しい限りです」
彼女は屈託のない笑顔でお礼を言った。彼女の言葉であることに気付いた。なぜこの教会には自分たち以外の人間がいないのだろうか?仮に彼女だけしかいないとなると小さい教会とは言え基本的に教会は建築物としては規模は大きい。しかし、この教会は非常に整備されている。と言うことは他に人はいるのだろうか?
「あの、他に人はいますか?お邪魔して挨拶しないのはちょっと……」
と僕が言うと彼女は
「あ、大丈夫ですよ。この町にこの教会の人間は私以外いませんので」
と答えた
はい?今なんて言った?この町には?いやいや……ちょっと待て、『この町に』の前に『今は』とか言う言葉が抜けてる気がしたんだけど?聞き間違えかな?それとも、僕の耳が悪くて『この町に』と言うのが余分に聞こえたのかな?今朝から吐き気や動悸、胸の痛みが続いてるからその影響かな?もう一度聞いてみよう……
「すいません、もう一度お聞きしたいのですが……他に人はいないんですか?」
「はい、いませんよ。」
「それは『今』この町にいないんですよね?」
僕はあえて『今』と言う言葉を強調して言った。すると彼女は
「いえ、違います。私はこの教会の管理人で基本的にこの教会には他に人はいません」
「……冗談ですか?」
「冗談じゃありませんよ?」
「いや、おかしいでしょ?ここまで整備されてて1人しかいないって……あなたはどこぞの両親に借金押し付けられてお嬢様に拾われた執事ですか?」
「いえ、修道女です」
彼女はきっぱりと自分の職業?を答えた
聖職者てそんなに優秀なのか……初めて知った……きっと、「AMEN!!」とか言って吸血鬼と繰り広げる神父や八極拳を極めた神父や「お別れです!!」と言ってみんなのトラウマレベルの強さを持つ牧師もいるんだろうな……んな訳あるか!?これだけの規模の建物1人で維持できるものなのか!?さっき、外も見たけど庭園もしっかり手入れされてるし、ガラスは全く曇ってないし、床や椅子にゴミどころか塵1つみえないんですけど!?
混乱している僕に彼女は
「友人が掃除が上手くて、毎日手伝いに来てくれるんですよ」
と笑いながら言った……これって答えになるのかな?
「その友人何者なんですか?」
「天使みたいな方ですよ」
聖職者が軽々しく天使て言っていいのか?
「ところで……本題に入りませんか?」
その言葉を聞いて僕は我に返った
そうだった……僕はよく分からないまま彼女に誘われるままに『悩み』を打ち明けることになったんだ……あれ?ちょっと待て?よく考えればこれって結構危なくないかな?見ず知らずの人にいきなり自分の悩み明かすって……しかも、宗教関係者に……そういえば父さんが
『家の外では宗教や政治の話はするな』
て子どもの頃に言ってたな……だから、僕は基本的に宗教とかに関わるのが苦手だ……それに僕の悩みって……
「うっ……」
「大丈夫ですか?」
マズイ……あの事を思い出そうとする度にまた症状が……こんなんじゃ悩みを相談する以前の問題だ……
「すいません……大丈夫ですから……」
やっぱり……無理に決まってる……この人は恐らく善意で僕の相談に乗ってくれようとしているが肝心の僕が話せる状況じゃない……やっぱり断ろう……失望される前に……
と僕が彼女に相談を断ろうした瞬間
「ん〜そうですね……やはり、いきなり悩みを打ち明けるなんて無茶ですよね……」
「え?」
彼女はまるで僕の心を読んだかのように先に言葉を発した。彼女の申し訳なさそうな顔を見てなぜか罪悪感が湧いてきた
「いや、あの……すいません……」
「いえ、普通はそう言うものですよ……」
僕が謝罪の言葉を述べると彼女は即座にフォローを入れてきた
あれ?でも教会て懺悔室があったような?確か、どこかで懺悔室は密室だからそれが作用して安心感を与えて秘密を話しやすくするって聞いたような?
「あの……大変ぶしつけがましいんですが、懺悔室は?」
僕は意を決して聞くと
「そんなもの使いません」
「え!?」
僕の提案は一蹴された。僕はその理由を尋ねようとするが
「あなたを追い詰めるものは懺悔と言うよりは後悔や感傷と言った類のものだと私は思います……なぜあなたが悔い改める必要があります?」
「……」
僕は黙るしかなかった。彼女はなぜか僕の『苦しみ』の一部を理解している気がした
「茉莉(まり)です……」
「え?」
「私の名前は進藤(しんどう)茉莉です。悩みを聞く前に信頼関係を築きましょう?そうすれば、いつかあなたが話せる時が来ると思います……どうですか?」
彼女は突然、自分の名前を名乗り、提案してきた。僕は呆気にとられながらも彼女の瞳を見るとなぜか
「九条明です……」
名乗ってしまった
だが……気のせいだろうか?一瞬、彼女の瞳が光ったような気が……
「では、九条さん……もう、日が暮れますのでお帰りになっては?」
「え、あ、はい」
彼女に言われて僕は教会から出ることにした
あれ?おかしいな?朝に教会の前に来たのにいつの間にかそんなに時間が経ったのかな?……あ、そうだ
「進藤さん」
「なんでしょうか?」
僕は教会に出る前に
「今日は色々とありがとうございました」
お礼を言った。彼女は突然のことで驚いたけど親身になって相談に乗ろうとしてくれた……それはたとえ信仰上のことでも嬉しいことだ……あれ?嬉しい?こんな感情……いつ以来だっけ?
「どういたしまして。では、また明日……」
「はい」
そうして、僕は教会を出た。しかし、教会から一歩出た瞬間、あることに気づいた。進藤さん以外の誰かに見られている気がした。僕は周囲を確認するが進藤さん以外誰もいないことを確認して、そのまま帰路についた
13/09/19 12:16更新 / 秩序ある混沌
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