連載小説
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動きだした時の舞台裏
私は九条さん。いや、明さんが教会から帰宅するのを確認すると私は教会の扉を閉めてその場に背中を預け目を瞑り、胸に手を当て
「はあ〜危ないところでした……」
 安堵の息を吐きました。そして
「ステラ!いるんでしょ!?」
 と友人の名前を呼びました。すると
「は〜い、いますよ〜」
 と件の友人が呼びかけに間の抜けた声で答えて教会の天井から現れました
「「は〜い」、じゃありません!!まったく……危うく、明さんにばれるところだったじゃないですか!!なんでそういうことを配慮しないんですか!?」
 私はステラを叱りました。確実に明さんはあの時に彼女の存在に気付いていました。私が表情を崩さずに笑顔で見送ったのでなんとかばれずにすみましたけど
「え〜だって、あなたの『初恋の人』を見られるんですよ?誰だって気になりますよ〜」
「っ……!!」
 この人は……!!いつまでそのことをネタに私をからかうつもりなんですか!!……そう言えば彼女と出会ってから13年か……考えてみると長い年月が経ちましたね……
 私は彼女の言葉に羞恥心を刺激され声を出せませんでした。すると
「ところで茉莉?あなたひどくありませんか?」
「……え?」
 突然の彼女の言葉に私は唖然としますが彼女は続けました
「もう!!『天使みたいな友人』て……私は正真正銘の天使ですよ!?」
 どうやら彼女は先ほど私が明さんにした自分の『紹介』に不満を持っているようです
 そう、彼女はある意味天使です。翼を生やし顔には幼さが残るが逆にそれが無垢らしさと無邪気さを引き立てており、そのままならば世間一般に知られる天使そのものと言いたいところですが
「『元』天使でしょ……あなたの場合は……」
 彼女の肌は青白く、天使の象徴である翼は漆黒に染まり、服装は布地は少なく露出が激しく胸と秘部以外は隠しておらず彼女の幼い身体の魅力を伝え、いや、むしろ引き立てていると言った方が的確だと思います。そして目は紅く同時に淫らな輝きを秘めており、そう彼女は正確には天使ではない『元』天使です。彼女は堕落し、快楽を求め、与える事を美徳とした教義を持つ教団・・・『堕落神教』に仕える魔物……ダークエンジェルです……
 私の一言に彼女は反論できず言葉がつまっているようで
「う……それはそうですけど……」
「それに「友人は天使です」と言ってみなさい。一瞬にして私が明さんに残念な人扱いされるでしょ」
「それもそうですね。ところで茉莉?」
「なんですか?」
「あなたはいつまでその恰好でいるんですか?」
「そう言えばそうですね……ん!!」
 私は彼女に指摘されて服をかつて私が所属していた教会の貞潔な露出の少ない修道服から、胸に十字が入り腰から足にかけてスリットが入った非常に蠱惑的な『堕落神教』に仕える者としての修道服に着替えました。そして、私は人間ではありえないものを解放しました。それは悪魔のような尻尾です。そう、私は人間ではありません。ステラと種は違いますが同じく『堕落神様』にお仕えする魔物……ダークプリーストです……元々は人間でしたが私が12歳の時に突然教会に現れ、私の父代わりであった神父さまや母代りだったシスター、私の兄弟ともいえる他の孤児院の孤児たちを堕落させて魔物化させたのと同時に私も堕落して魔物化しました。当時の私は『あること』がきっかけで一生独身でいようと思ったんですが
 はあ〜あの頃のことを思い出すと少し胸が痛みます……
「しかし、あなたも変わっていますね〜どうして彼を押し倒さなかったんですか?あんなに彼のことが好きなのに?」
 ステラは私に不思議そうに尋ねてきた。確かに普通の魔物娘なら人間の男性のことを積極的に誘惑するか性的に襲ってそのまま夫にするでしょう。ですが私は
「まあ、その質問は正しいと思いますよ?ですけど、私は彼の『心』が癒されてもいないのに手を出すつもりはありません」
 そう、私は知っている……彼の『悲しみ』を……あんなに優しくも笑顔に溢れていた彼が苦しむ『理由』を……だから、彼の意思を無視したことなど絶対にしないと堕落神様に誓った……まあ、堕落神様はきっと
『YOU〜!!もっと積極的にいきなよ〜』
 みたいなことを言いそうですが……いえ、絶対に言ってると思います……
 私がそう考えていますと
「その割には魅了の力を使っていたような?」
 ステラはイジワルそうに事実を言いました。そう、私は魔物娘としての力を今日初めて使いました。ですが私はそれを堂々と
「ええ、使いましたよ?」
 と肯定しました。すると、彼女はまたイジワルそうに
「あら?誘惑するつもり?手を出さないんじゃないのかしら?」
 と笑顔で追求してきましたが私はそれを
「私は彼の心を『癒す』ために多少、魔物娘の力を使っただけですよ?カウンセラーだって精神治療の際に『催眠術』を使うことがありますよ?アニマルセラピーで有名なイルカだって彼らの『超音波』が作用していると言いますし」
「むむむ……あなたって本当出会った頃から口が上手いですね……」
「ええ……これも明さんのおかげです……」
 彼と出会った頃を思い出しながら私は
 明さん……騙しているようで卑怯かもしれません……ですが、私はあなたが苦しんでいる姿なんか見たくありません……どうか、あなたの心を癒す手伝いだけでもいいからさせてください……そして、あなたの心が癒えた時こそ私の想いを告げます……
 と自分勝手な願いを祈りました
13/09/19 12:17更新 / 秩序ある混沌
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■作者メッセージ
 少女の彼女は彼に初めての恋を感じていました……しかし、彼はそれを知らず、彼女の初恋は最初から叶うものではありませんでした……だが、今は違います……けれども彼女は彼を愛したがゆえに自らの想いを伝えることを優先するのではなく、彼の『癒し』を優先します……たとえ下心があろうとも彼女は彼を救おうとしています……きっと、報われない『想い』でも彼女は満足でしょう……彼女が人魚姫のような結末を迎えるか……そして、彼女はなぜ彼の『苦しみ』を知っているか?……どうか皆様でお考えください……

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