第三節『ブルート』
「……う」
私は目を覚ました。そして、ベッドの上の自分を見てみると、どうやら昨日はいつもの夜会服のまま寝たらしい
「優……」
私は愛おしい異性の名前を呟いた。私は昨日、彼に酷いことをしてしまったのだ。あの時の私は嫉妬と疑惑に駆られて彼を侮辱し、乱暴に扱ったのだ。もし、性別が逆ならば婦女暴行と何ら変わりがない
優に嫌われたら……私……
今さらになって、私は昨日、自分がしてしまったことを理解してしまった。私がしばらく自己嫌悪に陥っていると
―――コンコン―――
「……！？」
ドアを静かにしっかりとノックする音が聞こえてきた。そして、
「ベルン様、お目覚めですか？」
少し暗いが昨日と変わり映えのない私の想い人であり、大切な従者であり、大切な異性の声が聞こえてきた
優……
その声を聞いて、私はすぐに冷静さを装って、主としての仮面をつけて彼に向かって
「ああ、先ほど起きたばかりだ。少し、ひどい恰好をしているので書斎の前で待っていてくれ」
気丈に自らの弱い姿を見せまいと思って、彼にそう命じた。すると、彼は
「わかりました。では、お待ちします」
何の戸惑いもなく、扉の前から去って行った
「………………」
私は皺ができてしまった服を魔法で整えて、自室にある鏡台へと向かい鏡を使って自らの姿を見た
「ふふふ……この世界の吸血鬼の伝承には吸血鬼は鏡に映らないと言うのにね……」
私はこの世界に来てから、この世界の多くの文学を暇つぶしに読んできた。その中で私は吸血鬼を題材にしたものもよく読んできたがこの世界の吸血鬼は私達とよく似た弱点を持っているが明らかに致命的な弱点が多いのと同時に多くの個性があるのも大きな違いだ。その中で大きな違いのある特徴の一つには『鏡にその姿が映らないこと』だった
「もしも、そうだったら良かったのに……」
私は鏡に映った自分の姿を見てそう思った。今の私は髪はボサボサであり、目許は昨日流した涙によって腫れており、とても優の前に出せたものではなかった。鏡は容赦なく私に弱い自分を見せつけてきた。もしも、私が鏡に映らなかったら、優にこの姿を見せていただろう。あるいは本当の自分の気持ちを伝えることができたかもしれない
この姿を見た優は私のことを慰めてくれるかしら……？
私は本当は貴族の掟やプライドなんて捨てて、彼に自分の気持ちを伝えたい。だけど、それは彼にとっては『裏切り』になってしまう。私は彼に『死』を与えることを条件に彼を従者にした。もし、彼が自分が『生きたい』と願えるようになったのならば、私は貴族の掟やプライドなんて捨てて、なりふりかまわず彼に自分の想いを伝えたい。彼がたった２日間で私に見せた『輝き』はそんなものと比べることすらおこがましいほどのものだった。だからこそ、私は見合った対価を彼に捧げたい
優……あなた、卑怯よ……あなたのことを理解するたびに私は……ただのベルンになっていってしまうわ……
私にとって、彼の存在は大きくなっていった
「今日は月が綺麗ね……」
私は気を紛らわすために窓から夜空を見上げた。今夜出ている月は美しい白銀の光を放っており、魔界の紅い月も美しいがこのような月も私からすれば悪いものではない。しばらく、その月を見ていた私は
「そうだ！！」
あることを思いつき、すぐに自分の身支度を整えて部屋をでた。そして、廊下を早足で移動して優の元に向かった。そして、私の愛おしい人の姿が見えた
「優！」
私が声をかけると彼はすぐに振り向き
「はい、なんでしょうか？」
「あのその……」
何の戸惑いもなく返事をした。私は昨日のことが気が咎めてしまい、謝ろうとするが中々言い出せなかった
「昨日は……すまなかった……」
なんとか、勇気を振り絞って謝罪の言葉を告げるが彼の反応は悲しいものだった
「いえ……大丈夫ですよ……僕にはそれぐらいしか価値がありませんから……」
彼は私に気遣うようにそう言った。そして、自分には謝罪してもらう価値すらないと言ったのだ
違うのよ……優、あなたは怒っていいの……お願いだから、そんなこと言わないで……あなたがいるだけで私は幸せなの……
私は優の言葉が悲しかった。彼は自分の存在理由を失い、そして、未だに見つけることができないのだ。私が昨日、彼にしたことは彼によって糾弾されるべきなのに、彼はそれを怒るのではなく、恐れるのでもなく、苦しむのでもなく、ただそれだけを告げた
「ベルン様……？」
彼は悲しみを隠そうと必死になっている私のことを気遣ってきた。私はその声を聞くとすぐに我に返った。そして、
「ありがとう、優……今日は散歩をする。君にもついてきてもらう」
私はその気遣いに感謝して、今日の予定を彼に伝えた
「え？あ、はい」
彼はそれを聞くと少し反応に困ったがすぐに返事をした
「では、ついてきたまえ」
私はそう言って、廊下を歩きだしてエントラスホールに向かった。彼も私の後をついて来た。しばらくして、エントラスホールまでつき、私は階段の前まで着て玄関とは別の方向を向いた
「ベルン様？どうしたんですか？玄関はあちらでは？」
優は私の行動に疑問を抱いたらしく、私に聞いてきた。もちろん、私は行き先を間違えていない
「いや、こっちであっているよ」
「え、でも……そちらはバルコニーでは？」
彼が疑問に思うのは当然だ。なぜなら、私が振り向いたのは玄関とは真逆のエントランスホールの二階部分にあるバルコニーに通じているガラスのドアの方だからだ
―――キィ―――
私はバルコニーの扉を開けた。すると、バルコニーから夜風が流れてきた、私はそれを感じながらバルコニーに出た
やっぱり、今日の月は綺麗ね……
私は彼の方を振り向いた
―――バサ―――
「優」
私は自らの翼をはためかせて宙に浮かんで彼に手を伸ばした
「………………」
彼は一瞬、それに驚いて戸惑うがすぐに私のやろうとしていることを理解したようで
―――ガシ―――
私の手を取った。そして、私はその手をしっかりと強く握り彼の手を引いて
「うわ！？」
「ふふふ……」
夜空に向かって飛んだ。彼はそれに驚き私は微笑みながらある場所へと向かった
「どうだい優？空を飛んでいる気分は？」
主は僕の手を引きながら、僕の方に顔を向けてそう聞いてきた
「え……その……」
僕は反応に困った。なぜなら、空を飛ぶ経験なんて、僕はこの人生で一度たりともしたことがなかった。よく、スカイダイビングやスカイグライダーなどの感想を言う人がいるが絶対に今、僕が感じている感覚とは違うだろう。そう、今、僕は比喩や疑似体験ではなく、ベルン様に手を引かれているとは言え、紛れもなく空を飛んでいるのだ。しかし、一つだけ言えることが言えるとすれば
「不思議な感覚です……」
それだけしか言えない。なぜなら、今、僕が感じているのは浮遊感による違和感と彼女に手を宙吊りになっている不安感もあるのだ。しかし、次第にこの状況に慣れていくと僕はあることを感じることができた。それは
風が気持ちいい……
心地よい『風』だった。今の季節は肌寒いがそれでも僕が感じる風は心地よいものだった。地上においても風は感じられるであろうが、この風は地上では決して感じることのできないものだった。この風は非常に優しくて長く続くものであった。地上において、この風と同じ優しいものはそよ風ぐらいだろう。だが、そよ風は長くは続かないし、たまにしか訪れない。また、長さにおいても地上でも走り続ければ風を長く感じることができるだろう。しかし、その風はそよ風とこの風と比べると心地よさはかなり劣るし、風を感じ続けるためには走り続けるしかないので、風を楽しむ余裕がないだろう。だが、この風はその両方の良い所を兼ね備えており、そよ風のような心地よさが絶え間なく僕を包んでいる。そして、僕が主の顔を見上げると彼女は嬉しそうに微笑んでいた
本当に不思議な気分だ……
実際にそれしかこの気持ちを表現することができなかった。今の僕は空を飛んでいる未知なる感覚に加え、もし、このまま地上に落ちたらと言う恐怖感と子どもの子に誰もが感じたであろう幻想を自らの身体で体験している高揚感、そして、実際に飛んでみて初めて知ることのできた風の心地よさを言ったものを感じているのだ。それを全部含めた言葉なんて、経済学部出身の僕にはできない
「ふふふ……そうかい」
彼女は僕がこれ以上、感想を言えないことを知ると満足そうにニッコリと笑った。そして、
「目的の場所についたよ」
彼女はそう言うと突然、止まった。僕はここがどこか気になり地上を見た。そこは
「ここは……」
彼女と僕が初めてであった湖の上空だった。その湖面には２日前と同じように数えきれないほどの多くの星々の輝きが映し出され、湖面が映している実物もまた僕らがいる空よりも遥か上に輝いていた。しかし、２日前と今、僕が目にしているこの情景とは明らかに異なるものがあった
「今日は満月だからね……素晴らしい光景だろう？」
湖にその姿を映し、夜空に白銀に輝き、夜を照らすのは満月であったことだ。その光景は美しかった。たった、２日の違いで世界はこうまで違ったのだ。その時、僕は
もし死んでいたら……この光景を見ることができなかったのか……
自分が今、生きていることによくわからない感動を覚えた。そして、その光景はあの時、初めて目にした僕の主である夜の貴族の姿をさらに引き立てた
「優……」
彼女は僕の手を引いている手とは逆の手を差し出してきた
―――ガシ―――
僕はその手をもう片方の手で誘われるままに掴んだ。すると、
―――グイ―――
「うわ！？」
彼女は突然、僕の手を強く引いてきた
「ベルン様？」
僕は彼女の真意が理解できず、彼女の顔を窺った。すると、彼女は微笑んで
「優……昨日はすまなかったね、これは昨日のお詫びと君の高潔さに対する賛辞だと思ってくれ」
そう言って、彼女は僕の手を引き寄せるかのように引いてきた。それはまるで
「付き合ってくれるかな？」
彼女はその微笑みのまま、僕を誘ってきた。僕はそれに
「僕でよろしければ」
控えめに応じた。すると、彼女のは微笑みはさらにも増して素晴らしいものになり
「ありがとう……じゃあ、よろしく」
「はい」
僕はその言葉に返事をした。その返事を聞くと彼女は本来なら僕がリードすべきなのに彼女が僕をリードするかのように自らを軸にして、その場で回った。彼女が僕としようとしているのは彼女と僕だけの『舞踏会』だった。ギャラリーは夜空に輝く星々と月、湖面に映し出される星空と月夜だけだった。演出は夜空の星の輝きと満月のスポットライト、湖面の星々ろ満月のステージだけだった。しかし、そんなものでも、今、僕が目にしているものと比べたら劣って見えた
「優」
今、僕の目の前にいる女性は今まで見たことのない笑顔をしていた。その笑顔はとても吸血鬼とは思えないほど純粋で無垢で、そして、美しいものであった。彼女は一度もダンスをしたことのない僕のためにわざわざゆっくりと動き、自らのマントでもある翼を着ように使ってまるで地上でステップを踏むかのように優雅に僕たちの身体を回した
「ふふふ」
主はいつもと同じ声で笑った。しかし、それはいつもの主の声じゃなかった。その声はまるで『乙女』のような声だった
綺麗だ……
満月を背後にした彼女は満月の優しい光に照らされたこともあり、以前から知っていたが彼女は美しかった。いや、今はその美しさは崇高なものに加えて可憐さが加わり、僕の知っているどの彼女よりも美しかった。そして、僕は嬉しかった。彼女と共にこの夜空で踊れたことが。でも、
「優……？」
僕はその喜びの中で涙を流してしまった。なぜか、胸が締め付けられるかのように苦しくなり、辛かった
どうして……
僕の涙を見た彼女は突然、演奏が止まったかのようにダンスを止めた
どうして……
彼は私とのダンスの最中に突然、涙を流し始めた。その表情は非常に辛そうだった
「優、どうしたんだい？」
私は彼の涙と表情を見て辛くなり、ダンスを止めた。私は少しでも彼にこの世界で生きることに対する『喜び』を知ってもらおうと彼にこの綺麗な夜空と湖に見せるためと私と踊ってもらいたいがために彼を連れてきたのだ。それなのに彼は辛そうな表情をして涙を流している。私は恐る恐る彼に涙の理由を尋ねた、すると、彼は
「どうして……なんですか……」
彼は辛そうに声が掠れながらも口を開いて私に何かを聞こうとしてきた
「どうして……僕にここまで、してくれるんですか……？」
彼は今まで溜めていたものを流すかのように涙を流しながら私に聞いてきた。そして、
「どうして……あなたは僕を苦しめるんですか！？」
「え……」
彼は初めて私に向かって、激しい感情を向けて叫んだ。私はその質問の意味が理解できず戸惑ってしまった。だが、彼は言葉を止めず
「僕はもう生きるのが辛いんです！！愛していた……いや、今でも愛している息子に憎まれるのが恐くて、嫌だから死にたかったんです……それなのに……どうして、あなたは……」
私に向かって自分の心の内をぶつけてきた。そして、彼は
「僕に……『生きたい』と思わせようとするんですか！？」
「……！？優……！！」
自分が『生きたい』と願い始めたことを私に伝えてきたのだ。私は望んだ言葉が彼からもたらされたことに嬉しく感じ始めた。だが、それは早計だった
「ごめんなさい……ベルン様……」
彼は突然、私に暗い顔をして謝罪してきた
「……優？」
私はその謝罪の意味がわからなかった。だが、次の瞬間ある光景を思い出してしまった
『君……どうせ死ぬのなら……私のために死なないかい？』
「……！？まさか……優！？」
それは２日前に私が彼と結んだ『契約』であった。私は彼の『死』を先延ばしにするために彼を『殺す』契約を結んでしまったのである。そして、高潔であり誠実な彼がその契約をどうするかなど簡単に想像できてしまったのだ
「待っ―――！！」
『待って！！』
と私は彼に静止の言葉を投げかけようとした。私は彼が何に対して謝罪したのか理解できてしまった。私は慌てて、彼のしようとしていることを止めようとするが、彼はこの２日間で一度も見せなかった『笑顔』で
「ありがとうございます……ベルン様……僕は幸せでした……」
―――バッ―――
「さようなら」
それだけを告げて彼は自らを宙に浮かせている私との繋がりとも言える両手を私の両手から離した。そして、飛ぶ力を持たないただの人間である彼の身体は重力に引き寄せられて、湖面に映る星空と満月に向かって落下していった
僕は落ちている。奇しくもそこは２日前に僕が身を沈めようとした湖だった。どうやら、僕は結局はここで死ぬのがお似合いらしい。主が僕に対して、与えようとしてくれた『死』は非常に甘美で慈愛に溢れていた。だが同時に、僕には彼女とのたった３日間の『生』によってもたらされた『喜び』も嬉しくも辛かった
ごめんなさい、ベルン様……僕はもう、耐えられないんです……今まであなたが与えてくれたものを……そして、これからも与えてくれるであろうものを失うことが……
一度、偽りとは言えども手に入れた大切な『幸せ』を失った僕にとっては『喪失』など二度と味わいたくないものだった。僕と彼女の契約は僕の『死』を以って、完成される。それなのに彼女は僕に『幸せ』を与え続けてくれた。最初にこの湖で出会った時に手を差し伸べてくれたこと、僕の『血』を初めて吸ったこと、僕の執事服姿を褒めてくれたこと、僕のことを評価してくれたこと、僕のことを信頼して大任を任せてくれたこと、僕が復讐との葛藤によってストレスが溜まり体調を崩した時に怒鳴ってでも僕を休ませようとしてくれたこと、その後に復讐をしなかったことに対する理由を聞いてくれたこと、今日僕に謝ってくれたこと、僕の手を引いて僕に空を飛ぶことの素晴らしさを教えてくれたこと、僕にこの情景を見せてくれたこと、そして、僕をダンスのパートナーにして一緒に踊ってくれたこと。彼女はたった３日間でこんなにも多くのことを与えてくれた。だから、これ以上、彼女から何かを与えられたら僕は
『死にたくない……』
と思ってしまう。いや、本当は
もっと、生きたい……
と既に思っている。だけど、彼女は優しくて残酷だった。既に失われることが確定しているものを僕に与えて、僕の『生』への『渇望』を高めようとする
あぁ……僕は最低だ……
自らが結んだ『契約』を一方的に破棄したことに、いや、彼女を『裏切った』ことに僕は自分のことが許せなかった。僕は最愛の息子に憎まれることを恐れて、一度は『死』を望みながら、主に多くを与えられたことで『生』を望んでしまった。そして、彼女に捧げる筈であった僕の『総て』を彼女に渡さないまま自らで選んだ『死』で『生』を終えようとしている
士郎、幸せにね……ベルン様、ありがとうございました……
僕は実際には短いであろう落下時間の中で大切な２人である息子と主に対して、息子には彼の『幸福』を、主には『感謝』を心の中で告げた。僕は今のところ、頭の重さで身体の上半身が下に傾いており、このまま、湖面に叩きつけれられたら、その衝撃で僕の首は折れるだろう。たとえ、それを回避したとしても冷たい湖水による凍死か僕の落下地点から岸まではかなり離れており、一気に削られた体力では岸には辿りつくことはできず溺死するだろう。そんな中、僕が思い浮かべたのは『悲しみ』でも『恨み』でも『憎しみ』でもなかった。僕が思い浮かべたのは
さようなら……ベルン様……
その時
「優うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう！！！」
突然、僕の名前を大声で呼ぶ声が聞こえてきた。僕が上空を見下ろすと
ベルン様……！？
ベルン様が自らの翼を折りたたみ、まるで海中に急降下する海鳥のように僕に迫ってきていた。その顔は今まで、僕が見たことのないものだった
どうして……そんな顔を……
彼女は涙を流しながら必死になって、余裕がなさそうだった
「優……！！」
彼女は僕の腹の辺りまで辿りつくと僕に手を伸ばしてきた。僕はそれを
―――ガシ―――
なぜか知らないが掴んだ。そして、彼女はそれを強く握るが
「……！？くっ！！」
―――バサ！！―――
突然、顔を歪めて、自らの翼を広げて一度僕より上になり
「くぅ！！」
「！？」
僕の身体を引き上げるかのように引っ張り、自らを下にして僕を空中に投げた。僕がその浮遊感を感じ始めた直後に
―――ザパーン！！―――
僕の耳に何かが水に飛び込む音が聞こえた
「ベ―――！！」
僕は主の名前を叫ぼうとするが
―――ザパーン！！―――
それは湖面にぶつかったことで叶えられなかった
私は目を覚ました。そして、ベッドの上の自分を見てみると、どうやら昨日はいつもの夜会服のまま寝たらしい
「優……」
私は愛おしい異性の名前を呟いた。私は昨日、彼に酷いことをしてしまったのだ。あの時の私は嫉妬と疑惑に駆られて彼を侮辱し、乱暴に扱ったのだ。もし、性別が逆ならば婦女暴行と何ら変わりがない
優に嫌われたら……私……
今さらになって、私は昨日、自分がしてしまったことを理解してしまった。私がしばらく自己嫌悪に陥っていると
―――コンコン―――
「……！？」
ドアを静かにしっかりとノックする音が聞こえてきた。そして、
「ベルン様、お目覚めですか？」
少し暗いが昨日と変わり映えのない私の想い人であり、大切な従者であり、大切な異性の声が聞こえてきた
優……
その声を聞いて、私はすぐに冷静さを装って、主としての仮面をつけて彼に向かって
「ああ、先ほど起きたばかりだ。少し、ひどい恰好をしているので書斎の前で待っていてくれ」
気丈に自らの弱い姿を見せまいと思って、彼にそう命じた。すると、彼は
「わかりました。では、お待ちします」
何の戸惑いもなく、扉の前から去って行った
「………………」
私は皺ができてしまった服を魔法で整えて、自室にある鏡台へと向かい鏡を使って自らの姿を見た
「ふふふ……この世界の吸血鬼の伝承には吸血鬼は鏡に映らないと言うのにね……」
私はこの世界に来てから、この世界の多くの文学を暇つぶしに読んできた。その中で私は吸血鬼を題材にしたものもよく読んできたがこの世界の吸血鬼は私達とよく似た弱点を持っているが明らかに致命的な弱点が多いのと同時に多くの個性があるのも大きな違いだ。その中で大きな違いのある特徴の一つには『鏡にその姿が映らないこと』だった
「もしも、そうだったら良かったのに……」
私は鏡に映った自分の姿を見てそう思った。今の私は髪はボサボサであり、目許は昨日流した涙によって腫れており、とても優の前に出せたものではなかった。鏡は容赦なく私に弱い自分を見せつけてきた。もしも、私が鏡に映らなかったら、優にこの姿を見せていただろう。あるいは本当の自分の気持ちを伝えることができたかもしれない
この姿を見た優は私のことを慰めてくれるかしら……？
私は本当は貴族の掟やプライドなんて捨てて、彼に自分の気持ちを伝えたい。だけど、それは彼にとっては『裏切り』になってしまう。私は彼に『死』を与えることを条件に彼を従者にした。もし、彼が自分が『生きたい』と願えるようになったのならば、私は貴族の掟やプライドなんて捨てて、なりふりかまわず彼に自分の想いを伝えたい。彼がたった２日間で私に見せた『輝き』はそんなものと比べることすらおこがましいほどのものだった。だからこそ、私は見合った対価を彼に捧げたい
優……あなた、卑怯よ……あなたのことを理解するたびに私は……ただのベルンになっていってしまうわ……
私にとって、彼の存在は大きくなっていった
「今日は月が綺麗ね……」
私は気を紛らわすために窓から夜空を見上げた。今夜出ている月は美しい白銀の光を放っており、魔界の紅い月も美しいがこのような月も私からすれば悪いものではない。しばらく、その月を見ていた私は
「そうだ！！」
あることを思いつき、すぐに自分の身支度を整えて部屋をでた。そして、廊下を早足で移動して優の元に向かった。そして、私の愛おしい人の姿が見えた
「優！」
私が声をかけると彼はすぐに振り向き
「はい、なんでしょうか？」
「あのその……」
何の戸惑いもなく返事をした。私は昨日のことが気が咎めてしまい、謝ろうとするが中々言い出せなかった
「昨日は……すまなかった……」
なんとか、勇気を振り絞って謝罪の言葉を告げるが彼の反応は悲しいものだった
「いえ……大丈夫ですよ……僕にはそれぐらいしか価値がありませんから……」
彼は私に気遣うようにそう言った。そして、自分には謝罪してもらう価値すらないと言ったのだ
違うのよ……優、あなたは怒っていいの……お願いだから、そんなこと言わないで……あなたがいるだけで私は幸せなの……
私は優の言葉が悲しかった。彼は自分の存在理由を失い、そして、未だに見つけることができないのだ。私が昨日、彼にしたことは彼によって糾弾されるべきなのに、彼はそれを怒るのではなく、恐れるのでもなく、苦しむのでもなく、ただそれだけを告げた
「ベルン様……？」
彼は悲しみを隠そうと必死になっている私のことを気遣ってきた。私はその声を聞くとすぐに我に返った。そして、
「ありがとう、優……今日は散歩をする。君にもついてきてもらう」
私はその気遣いに感謝して、今日の予定を彼に伝えた
「え？あ、はい」
彼はそれを聞くと少し反応に困ったがすぐに返事をした
「では、ついてきたまえ」
私はそう言って、廊下を歩きだしてエントラスホールに向かった。彼も私の後をついて来た。しばらくして、エントラスホールまでつき、私は階段の前まで着て玄関とは別の方向を向いた
「ベルン様？どうしたんですか？玄関はあちらでは？」
優は私の行動に疑問を抱いたらしく、私に聞いてきた。もちろん、私は行き先を間違えていない
「いや、こっちであっているよ」
「え、でも……そちらはバルコニーでは？」
彼が疑問に思うのは当然だ。なぜなら、私が振り向いたのは玄関とは真逆のエントランスホールの二階部分にあるバルコニーに通じているガラスのドアの方だからだ
―――キィ―――
私はバルコニーの扉を開けた。すると、バルコニーから夜風が流れてきた、私はそれを感じながらバルコニーに出た
やっぱり、今日の月は綺麗ね……
私は彼の方を振り向いた
―――バサ―――
「優」
私は自らの翼をはためかせて宙に浮かんで彼に手を伸ばした
「………………」
彼は一瞬、それに驚いて戸惑うがすぐに私のやろうとしていることを理解したようで
―――ガシ―――
私の手を取った。そして、私はその手をしっかりと強く握り彼の手を引いて
「うわ！？」
「ふふふ……」
夜空に向かって飛んだ。彼はそれに驚き私は微笑みながらある場所へと向かった
「どうだい優？空を飛んでいる気分は？」
主は僕の手を引きながら、僕の方に顔を向けてそう聞いてきた
「え……その……」
僕は反応に困った。なぜなら、空を飛ぶ経験なんて、僕はこの人生で一度たりともしたことがなかった。よく、スカイダイビングやスカイグライダーなどの感想を言う人がいるが絶対に今、僕が感じている感覚とは違うだろう。そう、今、僕は比喩や疑似体験ではなく、ベルン様に手を引かれているとは言え、紛れもなく空を飛んでいるのだ。しかし、一つだけ言えることが言えるとすれば
「不思議な感覚です……」
それだけしか言えない。なぜなら、今、僕が感じているのは浮遊感による違和感と彼女に手を宙吊りになっている不安感もあるのだ。しかし、次第にこの状況に慣れていくと僕はあることを感じることができた。それは
風が気持ちいい……
心地よい『風』だった。今の季節は肌寒いがそれでも僕が感じる風は心地よいものだった。地上においても風は感じられるであろうが、この風は地上では決して感じることのできないものだった。この風は非常に優しくて長く続くものであった。地上において、この風と同じ優しいものはそよ風ぐらいだろう。だが、そよ風は長くは続かないし、たまにしか訪れない。また、長さにおいても地上でも走り続ければ風を長く感じることができるだろう。しかし、その風はそよ風とこの風と比べると心地よさはかなり劣るし、風を感じ続けるためには走り続けるしかないので、風を楽しむ余裕がないだろう。だが、この風はその両方の良い所を兼ね備えており、そよ風のような心地よさが絶え間なく僕を包んでいる。そして、僕が主の顔を見上げると彼女は嬉しそうに微笑んでいた
本当に不思議な気分だ……
実際にそれしかこの気持ちを表現することができなかった。今の僕は空を飛んでいる未知なる感覚に加え、もし、このまま地上に落ちたらと言う恐怖感と子どもの子に誰もが感じたであろう幻想を自らの身体で体験している高揚感、そして、実際に飛んでみて初めて知ることのできた風の心地よさを言ったものを感じているのだ。それを全部含めた言葉なんて、経済学部出身の僕にはできない
「ふふふ……そうかい」
彼女は僕がこれ以上、感想を言えないことを知ると満足そうにニッコリと笑った。そして、
「目的の場所についたよ」
彼女はそう言うと突然、止まった。僕はここがどこか気になり地上を見た。そこは
「ここは……」
彼女と僕が初めてであった湖の上空だった。その湖面には２日前と同じように数えきれないほどの多くの星々の輝きが映し出され、湖面が映している実物もまた僕らがいる空よりも遥か上に輝いていた。しかし、２日前と今、僕が目にしているこの情景とは明らかに異なるものがあった
「今日は満月だからね……素晴らしい光景だろう？」
湖にその姿を映し、夜空に白銀に輝き、夜を照らすのは満月であったことだ。その光景は美しかった。たった、２日の違いで世界はこうまで違ったのだ。その時、僕は
もし死んでいたら……この光景を見ることができなかったのか……
自分が今、生きていることによくわからない感動を覚えた。そして、その光景はあの時、初めて目にした僕の主である夜の貴族の姿をさらに引き立てた
「優……」
彼女は僕の手を引いている手とは逆の手を差し出してきた
―――ガシ―――
僕はその手をもう片方の手で誘われるままに掴んだ。すると、
―――グイ―――
「うわ！？」
彼女は突然、僕の手を強く引いてきた
「ベルン様？」
僕は彼女の真意が理解できず、彼女の顔を窺った。すると、彼女は微笑んで
「優……昨日はすまなかったね、これは昨日のお詫びと君の高潔さに対する賛辞だと思ってくれ」
そう言って、彼女は僕の手を引き寄せるかのように引いてきた。それはまるで
「付き合ってくれるかな？」
彼女はその微笑みのまま、僕を誘ってきた。僕はそれに
「僕でよろしければ」
控えめに応じた。すると、彼女のは微笑みはさらにも増して素晴らしいものになり
「ありがとう……じゃあ、よろしく」
「はい」
僕はその言葉に返事をした。その返事を聞くと彼女は本来なら僕がリードすべきなのに彼女が僕をリードするかのように自らを軸にして、その場で回った。彼女が僕としようとしているのは彼女と僕だけの『舞踏会』だった。ギャラリーは夜空に輝く星々と月、湖面に映し出される星空と月夜だけだった。演出は夜空の星の輝きと満月のスポットライト、湖面の星々ろ満月のステージだけだった。しかし、そんなものでも、今、僕が目にしているものと比べたら劣って見えた
「優」
今、僕の目の前にいる女性は今まで見たことのない笑顔をしていた。その笑顔はとても吸血鬼とは思えないほど純粋で無垢で、そして、美しいものであった。彼女は一度もダンスをしたことのない僕のためにわざわざゆっくりと動き、自らのマントでもある翼を着ように使ってまるで地上でステップを踏むかのように優雅に僕たちの身体を回した
「ふふふ」
主はいつもと同じ声で笑った。しかし、それはいつもの主の声じゃなかった。その声はまるで『乙女』のような声だった
綺麗だ……
満月を背後にした彼女は満月の優しい光に照らされたこともあり、以前から知っていたが彼女は美しかった。いや、今はその美しさは崇高なものに加えて可憐さが加わり、僕の知っているどの彼女よりも美しかった。そして、僕は嬉しかった。彼女と共にこの夜空で踊れたことが。でも、
「優……？」
僕はその喜びの中で涙を流してしまった。なぜか、胸が締め付けられるかのように苦しくなり、辛かった
どうして……
僕の涙を見た彼女は突然、演奏が止まったかのようにダンスを止めた
どうして……
彼は私とのダンスの最中に突然、涙を流し始めた。その表情は非常に辛そうだった
「優、どうしたんだい？」
私は彼の涙と表情を見て辛くなり、ダンスを止めた。私は少しでも彼にこの世界で生きることに対する『喜び』を知ってもらおうと彼にこの綺麗な夜空と湖に見せるためと私と踊ってもらいたいがために彼を連れてきたのだ。それなのに彼は辛そうな表情をして涙を流している。私は恐る恐る彼に涙の理由を尋ねた、すると、彼は
「どうして……なんですか……」
彼は辛そうに声が掠れながらも口を開いて私に何かを聞こうとしてきた
「どうして……僕にここまで、してくれるんですか……？」
彼は今まで溜めていたものを流すかのように涙を流しながら私に聞いてきた。そして、
「どうして……あなたは僕を苦しめるんですか！？」
「え……」
彼は初めて私に向かって、激しい感情を向けて叫んだ。私はその質問の意味が理解できず戸惑ってしまった。だが、彼は言葉を止めず
「僕はもう生きるのが辛いんです！！愛していた……いや、今でも愛している息子に憎まれるのが恐くて、嫌だから死にたかったんです……それなのに……どうして、あなたは……」
私に向かって自分の心の内をぶつけてきた。そして、彼は
「僕に……『生きたい』と思わせようとするんですか！？」
「……！？優……！！」
自分が『生きたい』と願い始めたことを私に伝えてきたのだ。私は望んだ言葉が彼からもたらされたことに嬉しく感じ始めた。だが、それは早計だった
「ごめんなさい……ベルン様……」
彼は突然、私に暗い顔をして謝罪してきた
「……優？」
私はその謝罪の意味がわからなかった。だが、次の瞬間ある光景を思い出してしまった
『君……どうせ死ぬのなら……私のために死なないかい？』
「……！？まさか……優！？」
それは２日前に私が彼と結んだ『契約』であった。私は彼の『死』を先延ばしにするために彼を『殺す』契約を結んでしまったのである。そして、高潔であり誠実な彼がその契約をどうするかなど簡単に想像できてしまったのだ
「待っ―――！！」
『待って！！』
と私は彼に静止の言葉を投げかけようとした。私は彼が何に対して謝罪したのか理解できてしまった。私は慌てて、彼のしようとしていることを止めようとするが、彼はこの２日間で一度も見せなかった『笑顔』で
「ありがとうございます……ベルン様……僕は幸せでした……」
―――バッ―――
「さようなら」
それだけを告げて彼は自らを宙に浮かせている私との繋がりとも言える両手を私の両手から離した。そして、飛ぶ力を持たないただの人間である彼の身体は重力に引き寄せられて、湖面に映る星空と満月に向かって落下していった
僕は落ちている。奇しくもそこは２日前に僕が身を沈めようとした湖だった。どうやら、僕は結局はここで死ぬのがお似合いらしい。主が僕に対して、与えようとしてくれた『死』は非常に甘美で慈愛に溢れていた。だが同時に、僕には彼女とのたった３日間の『生』によってもたらされた『喜び』も嬉しくも辛かった
ごめんなさい、ベルン様……僕はもう、耐えられないんです……今まであなたが与えてくれたものを……そして、これからも与えてくれるであろうものを失うことが……
一度、偽りとは言えども手に入れた大切な『幸せ』を失った僕にとっては『喪失』など二度と味わいたくないものだった。僕と彼女の契約は僕の『死』を以って、完成される。それなのに彼女は僕に『幸せ』を与え続けてくれた。最初にこの湖で出会った時に手を差し伸べてくれたこと、僕の『血』を初めて吸ったこと、僕の執事服姿を褒めてくれたこと、僕のことを評価してくれたこと、僕のことを信頼して大任を任せてくれたこと、僕が復讐との葛藤によってストレスが溜まり体調を崩した時に怒鳴ってでも僕を休ませようとしてくれたこと、その後に復讐をしなかったことに対する理由を聞いてくれたこと、今日僕に謝ってくれたこと、僕の手を引いて僕に空を飛ぶことの素晴らしさを教えてくれたこと、僕にこの情景を見せてくれたこと、そして、僕をダンスのパートナーにして一緒に踊ってくれたこと。彼女はたった３日間でこんなにも多くのことを与えてくれた。だから、これ以上、彼女から何かを与えられたら僕は
『死にたくない……』
と思ってしまう。いや、本当は
もっと、生きたい……
と既に思っている。だけど、彼女は優しくて残酷だった。既に失われることが確定しているものを僕に与えて、僕の『生』への『渇望』を高めようとする
あぁ……僕は最低だ……
自らが結んだ『契約』を一方的に破棄したことに、いや、彼女を『裏切った』ことに僕は自分のことが許せなかった。僕は最愛の息子に憎まれることを恐れて、一度は『死』を望みながら、主に多くを与えられたことで『生』を望んでしまった。そして、彼女に捧げる筈であった僕の『総て』を彼女に渡さないまま自らで選んだ『死』で『生』を終えようとしている
士郎、幸せにね……ベルン様、ありがとうございました……
僕は実際には短いであろう落下時間の中で大切な２人である息子と主に対して、息子には彼の『幸福』を、主には『感謝』を心の中で告げた。僕は今のところ、頭の重さで身体の上半身が下に傾いており、このまま、湖面に叩きつけれられたら、その衝撃で僕の首は折れるだろう。たとえ、それを回避したとしても冷たい湖水による凍死か僕の落下地点から岸まではかなり離れており、一気に削られた体力では岸には辿りつくことはできず溺死するだろう。そんな中、僕が思い浮かべたのは『悲しみ』でも『恨み』でも『憎しみ』でもなかった。僕が思い浮かべたのは
さようなら……ベルン様……
その時
「優うううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううううう！！！」
突然、僕の名前を大声で呼ぶ声が聞こえてきた。僕が上空を見下ろすと
ベルン様……！？
ベルン様が自らの翼を折りたたみ、まるで海中に急降下する海鳥のように僕に迫ってきていた。その顔は今まで、僕が見たことのないものだった
どうして……そんな顔を……
彼女は涙を流しながら必死になって、余裕がなさそうだった
「優……！！」
彼女は僕の腹の辺りまで辿りつくと僕に手を伸ばしてきた。僕はそれを
―――ガシ―――
なぜか知らないが掴んだ。そして、彼女はそれを強く握るが
「……！？くっ！！」
―――バサ！！―――
突然、顔を歪めて、自らの翼を広げて一度僕より上になり
「くぅ！！」
「！？」
僕の身体を引き上げるかのように引っ張り、自らを下にして僕を空中に投げた。僕がその浮遊感を感じ始めた直後に
―――ザパーン！！―――
僕の耳に何かが水に飛び込む音が聞こえた
「ベ―――！！」
僕は主の名前を叫ぼうとするが
―――ザパーン！！―――
それは湖面にぶつかったことで叶えられなかった
13/11/17 20:13更新 / 秩序ある混沌
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