ああっ・・・カリスマっ・・・!
とある街の中で、奇妙な事件が起こっていた。それは、『夜眠っている間に家族内の女性が忽然と姿を消す』というもの、犯人の目撃談なども一切無いため、自然と郊外の方にポツリと佇む一軒家が怪しいんじゃあないか、だとか、あそこには魔物が住んでいて、うっかり入ってしまえば魂を食われてしまうんじゃあないかとか言われていた。
「いってきます・・・」
彼の名は夜霧想、彼は、誰もいない家に向かってそう告げると、目的地を目指し駆け出した。元々彼の家は母子家庭だった。幼いころに父親を事故で無くしてしまったが、二人で細々とではあるが幸せに生活していたのだ。だが、その幸せは理不尽な形で壊されてしまう。夜寝ている間に、母親が忽然と姿を消していたのだ。もちろん想もこの事件のことは知っていたし、母を懸命に守ろうと人一倍努力していたつもりだったが、子供の力では如何せん限界があったのだ。想はその日朝から夜まで一日中泣いて泣いて泣き腫らして、自暴自棄になっていた。だから郊外の危険な一軒家に無意識に足を運んでしまったのだろう。彼は『魔物がいて殺されても別にいいや・・・どうせ生きていてもしんどいだけだし』程度のことしか考えていなかった。
「・・・・・」
ギギギギギ、という重苦しい音と共に、扉を開け中に入る。あたりは薄暗く、一面が漆黒の闇に覆われているようで、想は息が詰まる心地だった。その時、
「・・・・・ほう、ここにヒトが来るとはな、迷い子か?」
「・・・ッ!」
虚空から、声。その声は、艶やかで、妖しく、かつ人間を見下している高圧的な物、想は、その声に物怖じすることなく、声の聞こえてきた方向に一心に歩き出した。そして、音の発生源である部屋に着いたとき、声の大本がわかった。その声は、『ヴァンパイア』のものであった。
「・・・なんだ。魔物の其れかと思えば、下等な人間の童ではないか・・・迷子か? それとも、この私と交わりにでも来たのか? フフフフ・・・・」
「・・・・・終わらせてもらいに来たんだ」
「「終わらせる」? 私が、貴様を? 笑わせる童だな、訳を話せ、興味が湧いた」
想はこれまでの顛末を語ったが、其れを聞いたとたん、ヴァンパイアは呵呵大笑した。
「フハハハハハハハハッ! なんだ、貴様はあ奴の子だった訳か、知っているぞ、その女、私が最後に攫った女だったからな!」
「――・・・母さんは、何処にいるの?」
「居場所なぞ私は知らん。奴は勝手に出て行ってしまったからな」
それを聞いたとたん、先ほどまで絶望に打ちひしがれていた彼の表情が憤怒のそれに変わった。
「お前の所為で、母さんは・・・・許さない・・・絶対にッ!」
「フン。沈んだり怒ったりと気性のわからん童だな。お前の欲しいものはなんだ?」
「お前を一発殴ることだ!」
駆け出し、襲いかかろうとするが、指一本で押さえつけられ、動きを封じられてしまう。彼と彼女との距離は眼と鼻の先、彼は死を覚悟したが、彼女は彼を生かしていた。
「お前、気に入ったぞ。・・・私と相対した男はみな色事ばかりを考える下種な獣ばかりだった。お前だけだ。「私を殴る」とのたまった不届きものはな」
そういった後、首筋から強烈な快感が迸るのを感じた想は、ゆっくりと首筋に眼をやった。ヴァンパイアの牙が、深く肉を抉り、そこから吸血されていたのだ。あまりの快楽に痺れに似た感覚を覚え、立っていられずに彼女のほうに倒れこんでしまう。
「おっと、フフフ・・・・しかし貴様の血は中々の馳走だな・・・身体が熱く疼いて参る・・・」
想は、もうここに来た目的など頭の中から消し飛んでいた。それほど彼女の色香と、圧倒的なカリスマに、すべてを支配されてしまった。
「あ・・・・あ・・・・」
「あまりの快楽に言葉も出んか、童、もう一度訊くぞ、お前の欲しいものはなんだ?」
「貴方の傍に居るだけでいい。貴方に永遠に仕えていたい・・・・」
「いい心がけだ。童、名は?」
「想・・・・夜霧想・・・・」
「良い名だ。私の名はシヴァという・・・さあ、共に来るといい、続きを楽しもうじゃないか」
彼の意識は、そこでまどろみの中に飲み込まれてしまった。
「いってきます・・・」
彼の名は夜霧想、彼は、誰もいない家に向かってそう告げると、目的地を目指し駆け出した。元々彼の家は母子家庭だった。幼いころに父親を事故で無くしてしまったが、二人で細々とではあるが幸せに生活していたのだ。だが、その幸せは理不尽な形で壊されてしまう。夜寝ている間に、母親が忽然と姿を消していたのだ。もちろん想もこの事件のことは知っていたし、母を懸命に守ろうと人一倍努力していたつもりだったが、子供の力では如何せん限界があったのだ。想はその日朝から夜まで一日中泣いて泣いて泣き腫らして、自暴自棄になっていた。だから郊外の危険な一軒家に無意識に足を運んでしまったのだろう。彼は『魔物がいて殺されても別にいいや・・・どうせ生きていてもしんどいだけだし』程度のことしか考えていなかった。
「・・・・・」
ギギギギギ、という重苦しい音と共に、扉を開け中に入る。あたりは薄暗く、一面が漆黒の闇に覆われているようで、想は息が詰まる心地だった。その時、
「・・・・・ほう、ここにヒトが来るとはな、迷い子か?」
「・・・ッ!」
虚空から、声。その声は、艶やかで、妖しく、かつ人間を見下している高圧的な物、想は、その声に物怖じすることなく、声の聞こえてきた方向に一心に歩き出した。そして、音の発生源である部屋に着いたとき、声の大本がわかった。その声は、『ヴァンパイア』のものであった。
「・・・なんだ。魔物の其れかと思えば、下等な人間の童ではないか・・・迷子か? それとも、この私と交わりにでも来たのか? フフフフ・・・・」
「・・・・・終わらせてもらいに来たんだ」
「「終わらせる」? 私が、貴様を? 笑わせる童だな、訳を話せ、興味が湧いた」
想はこれまでの顛末を語ったが、其れを聞いたとたん、ヴァンパイアは呵呵大笑した。
「フハハハハハハハハッ! なんだ、貴様はあ奴の子だった訳か、知っているぞ、その女、私が最後に攫った女だったからな!」
「――・・・母さんは、何処にいるの?」
「居場所なぞ私は知らん。奴は勝手に出て行ってしまったからな」
それを聞いたとたん、先ほどまで絶望に打ちひしがれていた彼の表情が憤怒のそれに変わった。
「お前の所為で、母さんは・・・・許さない・・・絶対にッ!」
「フン。沈んだり怒ったりと気性のわからん童だな。お前の欲しいものはなんだ?」
「お前を一発殴ることだ!」
駆け出し、襲いかかろうとするが、指一本で押さえつけられ、動きを封じられてしまう。彼と彼女との距離は眼と鼻の先、彼は死を覚悟したが、彼女は彼を生かしていた。
「お前、気に入ったぞ。・・・私と相対した男はみな色事ばかりを考える下種な獣ばかりだった。お前だけだ。「私を殴る」とのたまった不届きものはな」
そういった後、首筋から強烈な快感が迸るのを感じた想は、ゆっくりと首筋に眼をやった。ヴァンパイアの牙が、深く肉を抉り、そこから吸血されていたのだ。あまりの快楽に痺れに似た感覚を覚え、立っていられずに彼女のほうに倒れこんでしまう。
「おっと、フフフ・・・・しかし貴様の血は中々の馳走だな・・・身体が熱く疼いて参る・・・」
想は、もうここに来た目的など頭の中から消し飛んでいた。それほど彼女の色香と、圧倒的なカリスマに、すべてを支配されてしまった。
「あ・・・・あ・・・・」
「あまりの快楽に言葉も出んか、童、もう一度訊くぞ、お前の欲しいものはなんだ?」
「貴方の傍に居るだけでいい。貴方に永遠に仕えていたい・・・・」
「いい心がけだ。童、名は?」
「想・・・・夜霧想・・・・」
「良い名だ。私の名はシヴァという・・・さあ、共に来るといい、続きを楽しもうじゃないか」
彼の意識は、そこでまどろみの中に飲み込まれてしまった。
15/02/28 21:40更新 / クロゴマ