気づいた気持ち、縮まる距離
困ったことになった。というのも、あれから如月が部活に来ないのだ。俺がクラスに訪問しに行っても彼女に逃げられるばかりか逆に後輩の女子生徒が群がる始末。まったく俺は蜜じゃねーんだぞ。・・・話を戻すが、彼女はどうやら櫛を部室に忘れたまま帰ってしまったらしいのだ。まあアレだけ気が動転していれば無理もないだろう。彼女はあの櫛をとても大切に扱っていた。相当大切な思い出の品なのだろう。部長でもあり先輩でもある俺は一刻も早く返してやりたいんだが・・・本人が会ってくれないんじゃ話にならない。・・・俺なにかしたっけ?
「・・・このまま部室にずっといるのもアレだし、行ってみるかね」
俺は鞄の中に櫛を厳重に仕舞うと学校を出た。こうなれば如月の家に直接出向いて渡すしかあるまい。場所は同じクラスの女子生徒に聞いたら簡単に教えてくれた。俺の家のすぐ近くらしい(ちなみにお礼になにかくれと言われたので小型の鉛筆削りを渡したら泣いて喜ばれた)。俺は走る速度を速めた。
◆
予想より大分早く如月の家に着いた。インターホンを鳴らすと若干の色気を含んだ女性の声が。
『どなたですか?』
「・・・如月さんの所属している部活の部長です。彼女が忘れ物をしていたので届けに来たのですが・・・」
『そうでしたか! お入りください!』
がちゃり、と鍵が開く音がしたので家の中に入ると、長い黒髪を束ねているエプロン姿の女性が出迎えてくれた。彼女も毛娼妓なのだろう。
「お邪魔します・・・・部長の神埼瞬です」
「あらあらご丁寧にありがとう。私は如月梅香(きさらぎ うめか)あの子の母親よ。よろしくね瞬くん」
「はい」
◆
今俺はリビングで梅香さんと少し話をしていた。如月の学校での様子だとか部活動の様子だとか、といった具合だ。
「あ・・・・薄々気付いてるとは思うけど・・・」
「・・・・毛娼妓なんですよね?」
「・・・驚かないの?」
「うちの高校人間と魔物娘の共学制ですし慣れてるんです。ただ綺麗な子だなとしか思いませんでしたよ」
「そう・・・ありがとう。あの子のこと気にかけてくれて・・・あの子今部屋にいるから、一緒に行きましょうか」
「はい」
俺は梅香さんに連れられて彼女の部屋の前まで案内された。
「菊ちゃ〜ん! 部活の部長さん来てくれたから部屋に入れてくれる?」
それを聞いて部屋の中から講義の言葉が殺到しだす。何でいないことにしてくれなかったのだとか、先輩に会うの恥ずかしいとか、心の準備できてないだとか。だがそんなことは何処吹く風で梅香さんはドアを開けると俺を入れ素早くドアを閉めた。鬼だ。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・部活。無断欠席だぞ」
「無理矢理女の子の部屋に侵入してきて第一声がそれなんですか!? ・・・・・部活、行ける訳ないじゃないですか・・・」
「・・・なんで」
「だって・・・先輩にあんなことしちゃって・・・」
俺は隅っこに蹲る如月に近づくと言葉を発し続ける。
「・・別に俺は痛くなかったぞ。・・・気持ちよかった」
「っ!? だだだだから、それが恥ずかしいんですよ! 私の髪で・・・・気持ちよくなった・・・なんて・・・」
真っ赤になった如月を尻目に、追い討ちとばかりに言葉を続ける。
「・・・・手触りがな? 別にお前が考えているようなことは思ってないからな」
「なに言ってるんですか先輩のバカぁ!」
「・・・そんなことより、ほら」
俺は如月に櫛を渡した。彼女はハッとした後それを愛おしそうに抱きしめた。
「・・・よほど大事なものだったんだな」
「はい。これ、お母さんが高校入学の記念に買ってくれたんです・・・肌身離さず持ってたんですけど・・・よかった・・・先輩。ありがとうございます!」
初めて見た如月の心からの笑顔。それを見た瞬間、俺は「こいつだけは絶対に守ってやりたい」と思った。それは表には出さずに、きびすを返し部屋を出ようとする。
「じゃあな。あまり乙女の部屋にいるってのも・・・な」
「あ! 先輩待ってください!」
「っ・・・!?」
いきなり後ろから立ち上がった如月に手を引かれたせいで俺はバランスを崩して、彼女を壁に押し倒す形・・・・ようは『壁ドン』状態になっていた。・・・・・・自分がやるとは思ってなかったが。
「・・・先輩。顔、近いです・・・っ」
「お前が俺の手ぇ引っ張るからだろ・・・・」
目と鼻の距離で会話しているせいで俺の息が耳やら首にかかるのだろうか、如月は擽ったそうに息を漏らしていた。
「・・・・帰るぞ」
今度は動く前に彼女に抱きしめられてしまった。心臓の鼓動を感じる。自慢の髪の香りが鼻腔を擽る。俺はなんとも言えない笑みを浮かべながら如月に問いかける。
「おい。今日はなんか大胆だな如月」
「・・・・なんか、先輩といるとドキドキしちゃって・・・変なんです。ずっとこうしていたいって思っちゃうんです。この気持ち、何なんでしょうか?」
「さあな。・・・・お前がその気持ちに気付いたら、また教えてくれるか?」
「ええ。是非!」
◆
・・・・あれから一週間が経過した。しかし困ったことがまた一つ。「神崎と如月は付き合っているのかもしれない」という噂が流れ出したのだ。どうやら俺が如月の家に行っているのを学校のヤツが見たらしいのだ。女子からは噂の真相を問いただされるし、男子からは恨みの篭った呪詛を呟かれる始末。・・・正直凄い面倒くさい。
「やっぱりお前、人気あるよなあ」
「え?」
ここはいつもの部室。椅子に座ってコーヒーを飲んでいる俺が呟いた一言に、如月がきょとんとした顔で反応した。・・・・その仕草の一つ一つが男子(あいつら)を魅了してやまないんだろうな、と思った。
「いや・・・男子どもが俺に恨みつらみを呟くもんだから・・・やっぱり人気あるんだな、と」
「はあ・・・って私に人気ですか!? あるわけないでしょ!?」
「・・・・お前がそう思ってるだけで、あるんだよ。俺が恨み言を言われるくらいには・・・まあお前美人だしさ、家事も出来るし性格も良い」
「だからなんでそういう言葉を息を吐くようにいえるんですか!? 先輩は!」
「?」
「「なに言ってるんだこいつ?」って顔で見ないで下さいよ!」
やっぱり変なヤツだ。しかも、彼女を見ていると・・・何故だかわからんがからかいたくなる。・・・お、もう完全下校時刻だ。今日は夕立があるっぽいし、早めに帰るとするかね。
「よし。もう時間だし、夕立もあるみたいだから帰るぞ」
「はぐらかさないで下さいよ! ・・・っていうかそんなに急がなくても傘差せばいいじゃないですか」
「・・・忘れた」
「なんで天気予報まで見たのに忘れるんですか!?」
◆
結局俺は如月の傘で下校していた。所謂『相合傘』という形だ。・・・俺は別になんとも思わんが、彼女は心ここにあらずといった感じでそわそわしていた。・・・ちょっとかわいい。
「おい。そんな離れたらお前が濡れるだろ、もっと寄れって」
「っ!?!?!? ちちちちち近いです! 先輩、離してくださいっ!」
「・・・濡れるだろ?」
「先輩って、イジワルです」
言葉はけなすものだがその実彼女は本当にそんなことを思っている訳ではないことは口ぶりで分かる。・・・俺はそれを聞き流すと家に向かって歩き続けた。・・・その時だ。
「っ!」
「きゃあっ!」
急な突風で如月の傘が攫われてしまった。彼女の傘は空に舞い上がると、虚空へと消えてしまった。・・・あっけにとられぽかんとしている彼女に上着を被せ手を掴むと走り出した。
「へ?! 先ぱ・・・・「走るぞ」・・ちょ・・・速いです!」
如月の悲鳴など何処吹く風、俺は久しぶりに走ったななどと思いながら俺の家に急いだ。俺の家のほうが、あいつの家より若干近いからだ。
◆
家には何とか着いた。風呂を沸かす準備を終えると、俺は壁にへたり込んでしまった。・・・なんだか身体が熱い・・・久しぶりに走ったからだろうな・・・。頭痛もする。
「先輩・・・大丈夫ですか? 顔色も悪いし、苦しそうですよ?」
「・・・・・ああ・・大丈夫・・・風呂に入ってこいよ・・・・」
如月を風呂に入らせると、俺はぼうっとした頭で考えた。・・・・俺はアイツのことを好きになったんだろうか? アイツはただの後輩で、俺の部活の部員のはずだ・・・だのになんだこの気持ちは? アイツと一緒にいると心が休まる気がする。アイツをからかってるとなんだか凄く楽しい気持ちになる・・・・これが『恋』なんだろう。・・・そうこうしていると如月が風呂から上がってきた。少し赤みを帯びた温かそうな肢体。一時的な着替えのために渡した俺の服は少し大きくぶかぶかだったみたいだが、それでもアイツの豊満な肢体を隠すことは出来ず(男物だったことも手伝ってか)むしろより胸や尻を強調していた。
・・・それを見た俺は――
「先輩、服ありがとうございます。お風呂あきましたよ? 次は先輩が――ひゃあっ!?」
「――悪い」
思わず火照った身体で、俺は如月を押し倒していた。
◆
「先輩・・なにを・・・」
「さァな・・・俺にもわからん。・・・頭ん中ぼうっとしてるからかもな・・・お前が悪いんだぜ・・・? そんなカッコしてっから・・・」
「・・・先輩、近い・・・ひゃあん?! 息、吹きかけないでくださいっ・・・」
「俺、全然彼女やらなんやらに興味なかったんだがな・・・お前が部活に入部して、お前と色んなことをくっちゃべって・・・段々お前のことが気になりだして・・・それからずっと、この気持ちがなんなのか考えてたんだが・・・今なら言える」
いまだに顔を赤らめている目の前の後輩に向けて、彼女の目を真っ直ぐ見据えて、俺はこう告げた。
「・・・如月菊野――俺は、お前が好きだ」
人生で初めての、愛の告白を。
「・・・このまま部室にずっといるのもアレだし、行ってみるかね」
俺は鞄の中に櫛を厳重に仕舞うと学校を出た。こうなれば如月の家に直接出向いて渡すしかあるまい。場所は同じクラスの女子生徒に聞いたら簡単に教えてくれた。俺の家のすぐ近くらしい(ちなみにお礼になにかくれと言われたので小型の鉛筆削りを渡したら泣いて喜ばれた)。俺は走る速度を速めた。
◆
予想より大分早く如月の家に着いた。インターホンを鳴らすと若干の色気を含んだ女性の声が。
『どなたですか?』
「・・・如月さんの所属している部活の部長です。彼女が忘れ物をしていたので届けに来たのですが・・・」
『そうでしたか! お入りください!』
がちゃり、と鍵が開く音がしたので家の中に入ると、長い黒髪を束ねているエプロン姿の女性が出迎えてくれた。彼女も毛娼妓なのだろう。
「お邪魔します・・・・部長の神埼瞬です」
「あらあらご丁寧にありがとう。私は如月梅香(きさらぎ うめか)あの子の母親よ。よろしくね瞬くん」
「はい」
◆
今俺はリビングで梅香さんと少し話をしていた。如月の学校での様子だとか部活動の様子だとか、といった具合だ。
「あ・・・・薄々気付いてるとは思うけど・・・」
「・・・・毛娼妓なんですよね?」
「・・・驚かないの?」
「うちの高校人間と魔物娘の共学制ですし慣れてるんです。ただ綺麗な子だなとしか思いませんでしたよ」
「そう・・・ありがとう。あの子のこと気にかけてくれて・・・あの子今部屋にいるから、一緒に行きましょうか」
「はい」
俺は梅香さんに連れられて彼女の部屋の前まで案内された。
「菊ちゃ〜ん! 部活の部長さん来てくれたから部屋に入れてくれる?」
それを聞いて部屋の中から講義の言葉が殺到しだす。何でいないことにしてくれなかったのだとか、先輩に会うの恥ずかしいとか、心の準備できてないだとか。だがそんなことは何処吹く風で梅香さんはドアを開けると俺を入れ素早くドアを閉めた。鬼だ。
「・・・・・」
「・・・・・」
「・・・・・・・部活。無断欠席だぞ」
「無理矢理女の子の部屋に侵入してきて第一声がそれなんですか!? ・・・・・部活、行ける訳ないじゃないですか・・・」
「・・・なんで」
「だって・・・先輩にあんなことしちゃって・・・」
俺は隅っこに蹲る如月に近づくと言葉を発し続ける。
「・・別に俺は痛くなかったぞ。・・・気持ちよかった」
「っ!? だだだだから、それが恥ずかしいんですよ! 私の髪で・・・・気持ちよくなった・・・なんて・・・」
真っ赤になった如月を尻目に、追い討ちとばかりに言葉を続ける。
「・・・・手触りがな? 別にお前が考えているようなことは思ってないからな」
「なに言ってるんですか先輩のバカぁ!」
「・・・そんなことより、ほら」
俺は如月に櫛を渡した。彼女はハッとした後それを愛おしそうに抱きしめた。
「・・・よほど大事なものだったんだな」
「はい。これ、お母さんが高校入学の記念に買ってくれたんです・・・肌身離さず持ってたんですけど・・・よかった・・・先輩。ありがとうございます!」
初めて見た如月の心からの笑顔。それを見た瞬間、俺は「こいつだけは絶対に守ってやりたい」と思った。それは表には出さずに、きびすを返し部屋を出ようとする。
「じゃあな。あまり乙女の部屋にいるってのも・・・な」
「あ! 先輩待ってください!」
「っ・・・!?」
いきなり後ろから立ち上がった如月に手を引かれたせいで俺はバランスを崩して、彼女を壁に押し倒す形・・・・ようは『壁ドン』状態になっていた。・・・・・・自分がやるとは思ってなかったが。
「・・・先輩。顔、近いです・・・っ」
「お前が俺の手ぇ引っ張るからだろ・・・・」
目と鼻の距離で会話しているせいで俺の息が耳やら首にかかるのだろうか、如月は擽ったそうに息を漏らしていた。
「・・・・帰るぞ」
今度は動く前に彼女に抱きしめられてしまった。心臓の鼓動を感じる。自慢の髪の香りが鼻腔を擽る。俺はなんとも言えない笑みを浮かべながら如月に問いかける。
「おい。今日はなんか大胆だな如月」
「・・・・なんか、先輩といるとドキドキしちゃって・・・変なんです。ずっとこうしていたいって思っちゃうんです。この気持ち、何なんでしょうか?」
「さあな。・・・・お前がその気持ちに気付いたら、また教えてくれるか?」
「ええ。是非!」
◆
・・・・あれから一週間が経過した。しかし困ったことがまた一つ。「神崎と如月は付き合っているのかもしれない」という噂が流れ出したのだ。どうやら俺が如月の家に行っているのを学校のヤツが見たらしいのだ。女子からは噂の真相を問いただされるし、男子からは恨みの篭った呪詛を呟かれる始末。・・・正直凄い面倒くさい。
「やっぱりお前、人気あるよなあ」
「え?」
ここはいつもの部室。椅子に座ってコーヒーを飲んでいる俺が呟いた一言に、如月がきょとんとした顔で反応した。・・・・その仕草の一つ一つが男子(あいつら)を魅了してやまないんだろうな、と思った。
「いや・・・男子どもが俺に恨みつらみを呟くもんだから・・・やっぱり人気あるんだな、と」
「はあ・・・って私に人気ですか!? あるわけないでしょ!?」
「・・・・お前がそう思ってるだけで、あるんだよ。俺が恨み言を言われるくらいには・・・まあお前美人だしさ、家事も出来るし性格も良い」
「だからなんでそういう言葉を息を吐くようにいえるんですか!? 先輩は!」
「?」
「「なに言ってるんだこいつ?」って顔で見ないで下さいよ!」
やっぱり変なヤツだ。しかも、彼女を見ていると・・・何故だかわからんがからかいたくなる。・・・お、もう完全下校時刻だ。今日は夕立があるっぽいし、早めに帰るとするかね。
「よし。もう時間だし、夕立もあるみたいだから帰るぞ」
「はぐらかさないで下さいよ! ・・・っていうかそんなに急がなくても傘差せばいいじゃないですか」
「・・・忘れた」
「なんで天気予報まで見たのに忘れるんですか!?」
◆
結局俺は如月の傘で下校していた。所謂『相合傘』という形だ。・・・俺は別になんとも思わんが、彼女は心ここにあらずといった感じでそわそわしていた。・・・ちょっとかわいい。
「おい。そんな離れたらお前が濡れるだろ、もっと寄れって」
「っ!?!?!? ちちちちち近いです! 先輩、離してくださいっ!」
「・・・濡れるだろ?」
「先輩って、イジワルです」
言葉はけなすものだがその実彼女は本当にそんなことを思っている訳ではないことは口ぶりで分かる。・・・俺はそれを聞き流すと家に向かって歩き続けた。・・・その時だ。
「っ!」
「きゃあっ!」
急な突風で如月の傘が攫われてしまった。彼女の傘は空に舞い上がると、虚空へと消えてしまった。・・・あっけにとられぽかんとしている彼女に上着を被せ手を掴むと走り出した。
「へ?! 先ぱ・・・・「走るぞ」・・ちょ・・・速いです!」
如月の悲鳴など何処吹く風、俺は久しぶりに走ったななどと思いながら俺の家に急いだ。俺の家のほうが、あいつの家より若干近いからだ。
◆
家には何とか着いた。風呂を沸かす準備を終えると、俺は壁にへたり込んでしまった。・・・なんだか身体が熱い・・・久しぶりに走ったからだろうな・・・。頭痛もする。
「先輩・・・大丈夫ですか? 顔色も悪いし、苦しそうですよ?」
「・・・・・ああ・・大丈夫・・・風呂に入ってこいよ・・・・」
如月を風呂に入らせると、俺はぼうっとした頭で考えた。・・・・俺はアイツのことを好きになったんだろうか? アイツはただの後輩で、俺の部活の部員のはずだ・・・だのになんだこの気持ちは? アイツと一緒にいると心が休まる気がする。アイツをからかってるとなんだか凄く楽しい気持ちになる・・・・これが『恋』なんだろう。・・・そうこうしていると如月が風呂から上がってきた。少し赤みを帯びた温かそうな肢体。一時的な着替えのために渡した俺の服は少し大きくぶかぶかだったみたいだが、それでもアイツの豊満な肢体を隠すことは出来ず(男物だったことも手伝ってか)むしろより胸や尻を強調していた。
・・・それを見た俺は――
「先輩、服ありがとうございます。お風呂あきましたよ? 次は先輩が――ひゃあっ!?」
「――悪い」
思わず火照った身体で、俺は如月を押し倒していた。
◆
「先輩・・なにを・・・」
「さァな・・・俺にもわからん。・・・頭ん中ぼうっとしてるからかもな・・・お前が悪いんだぜ・・・? そんなカッコしてっから・・・」
「・・・先輩、近い・・・ひゃあん?! 息、吹きかけないでくださいっ・・・」
「俺、全然彼女やらなんやらに興味なかったんだがな・・・お前が部活に入部して、お前と色んなことをくっちゃべって・・・段々お前のことが気になりだして・・・それからずっと、この気持ちがなんなのか考えてたんだが・・・今なら言える」
いまだに顔を赤らめている目の前の後輩に向けて、彼女の目を真っ直ぐ見据えて、俺はこう告げた。
「・・・如月菊野――俺は、お前が好きだ」
人生で初めての、愛の告白を。
15/05/17 13:24更新 / クロゴマ
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