二人の出会い
俺は神崎瞬(かんざき しゅん)高校三年生。昼休み、適当に廊下を散歩して時間を潰していると、一年生に声を掛けられた。
「あの・・・神崎先輩ですよね?」
「ん・・・そうだけど」
振り返ると、長い黒髪でまさに「大和撫子」という言葉が似合う後輩が居た。確か彼女は毛娼妓という種族の魔物娘だったはず。確かこの四月に入学してきた一年生だ。しかし名前はなんだったかな・・・ああそうだ。如月菊野(きさらぎ きくの)だったっけか。
「あの・・・私、まだ入る部活決めてなくて・・・その先輩が部長の『余暇部』っていうのに興味があるんです
けど、放課後お伺いしてもよろしいですか?」
「ああいいよ」
後輩の要望に、俺は二つ返事で了承したのだった。
◆
放課後。人気のまるでない一階の休憩室。ここが『余暇部』の活動場所だった。活動場所といっても、部員はたった俺一人なのでもてあましているのだが、この休憩室は意外に広く、畳に休憩用のベッド、本棚には暇つぶしの漫画本やボードゲームが置かれ、流し台にはコーヒーメーカーが置かれている。もっとも部員は俺一人なので、漫画本しか使ったことがないのだが。・・・っと、そうこうしているとノックの後如月が入ってきた。そわそわしながら辺りを見回している。
「お邪魔しますね。先輩! ・・・・へぇ〜・・・なんか和やかな空間ですね・・・」
「そうだろ? あ、ここ座れよ。コーヒー淹れてやるから」
「あ、ありがとうございます。・・・ところで、この部ってどんな活動してるんですか?」
「ああ、毎回部室でだべったり基本自由で完全下校時間までのんびりするってのがコンセプト。ほら、基本学校っていろいろ忙しいだろ? だから放課後くらいのんびりしようかなって思って作ったんだが、部費は出せないって言われちまって・・・だから、この部屋の中におかれてるのは、ほぼ自前のモンだ。だからお前も持って来たいモンがあれば持ってきてもらって構わんぞ」
「・・・・・ありがとうございます。フフ、先輩って結構喋るんですね」
「・・・結構喋る? どういうことだ?」
如月に理由を聞いてみると、どうやら同級生が広めた根も葉もない噂が原因のようだった。やれ低血圧だの、やれ俺が居ると部屋の気温が3℃下がるだの、やれ女っ気がないのに女子からモテる羨ましいくたばれだの、やれ天然ジゴロ女たらしだの・・・アホらしい。低血圧って事しかあってないじゃないか。
「・・・・・・どうした?」
「いえ・・・・あ、また明日来ますね。今日はありがとうございました!」
「・・・・ああ、また明日」
◆
翌日。また如月はやってきた。どうやら入部を決めたらしく。担任に入部届けを出してきたらしい。
「先輩、私入部することになりました! これからよろしくお願いしますね!」
「よろしく。ところで、その荷物は?」
それを聞かれると如月は嬉しそうに中身を出して説明し始めた。中に入っていたのは櫛と化粧品等、鏡だった。ワックスやらなんやらは持ってこなくてよかったのか聞くと、「化学物質で出来たものは髪の大敵です!」と怒っていた。『髪は女の命』とはよく言うが、毛娼妓(かのじょ)はその思いが人一倍強いのかもな、と思った。
「・・・・なあ」
「なんですか? 先輩」
「お前さ、彼氏とかいねーの?」
それを聞いた途端彼女は飲んでいた緑茶を勢いよく噴出した。その後めちゃくちゃ慌てながら言う。
「なななななに言ってるんですか先輩!? 私に彼氏なんているわけないでしょそんなのぉ! なんでいきなりそんなこと聞いてるんですか?!」
「いやー・・・興味本位でさ。お前普通に綺麗だし、彼氏くらいいても不思議じゃねーな、と」
「も、もうやめてくださいよっ!」
余程動揺していたんだろう。彼女は持ち前の髪を操って、俺を縛り上げてしまった。おお、これが噂に名高い髪か・・・やべえ、さらさらしてて気持ちいい・・・。
「っ!? す・・・すみません先輩! つい気が動転しちゃって・・・大丈夫ですか!?」
さっきの赤い顔とは一変して青い顔になってオロオロしだした。まったく紅くなったり蒼くなったり忙しいやつだな。
「ぜんぜん平気。・・・それより、お前の髪綺麗だし、凄い手触り気持ちよかったよ・・・」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!? ・・・・き・・・今日はこれで失礼します!」
如月はそういうと転がり出るように部室から出て走り去っていった。当然、部室には俺一人が残される。
俺はため息を一つ吐くと、思わずこう呟いていた。
「・・・・如月菊野か・・・・変なヤツ」
「あの・・・神崎先輩ですよね?」
「ん・・・そうだけど」
振り返ると、長い黒髪でまさに「大和撫子」という言葉が似合う後輩が居た。確か彼女は毛娼妓という種族の魔物娘だったはず。確かこの四月に入学してきた一年生だ。しかし名前はなんだったかな・・・ああそうだ。如月菊野(きさらぎ きくの)だったっけか。
「あの・・・私、まだ入る部活決めてなくて・・・その先輩が部長の『余暇部』っていうのに興味があるんです
けど、放課後お伺いしてもよろしいですか?」
「ああいいよ」
後輩の要望に、俺は二つ返事で了承したのだった。
◆
放課後。人気のまるでない一階の休憩室。ここが『余暇部』の活動場所だった。活動場所といっても、部員はたった俺一人なのでもてあましているのだが、この休憩室は意外に広く、畳に休憩用のベッド、本棚には暇つぶしの漫画本やボードゲームが置かれ、流し台にはコーヒーメーカーが置かれている。もっとも部員は俺一人なので、漫画本しか使ったことがないのだが。・・・っと、そうこうしているとノックの後如月が入ってきた。そわそわしながら辺りを見回している。
「お邪魔しますね。先輩! ・・・・へぇ〜・・・なんか和やかな空間ですね・・・」
「そうだろ? あ、ここ座れよ。コーヒー淹れてやるから」
「あ、ありがとうございます。・・・ところで、この部ってどんな活動してるんですか?」
「ああ、毎回部室でだべったり基本自由で完全下校時間までのんびりするってのがコンセプト。ほら、基本学校っていろいろ忙しいだろ? だから放課後くらいのんびりしようかなって思って作ったんだが、部費は出せないって言われちまって・・・だから、この部屋の中におかれてるのは、ほぼ自前のモンだ。だからお前も持って来たいモンがあれば持ってきてもらって構わんぞ」
「・・・・・ありがとうございます。フフ、先輩って結構喋るんですね」
「・・・結構喋る? どういうことだ?」
如月に理由を聞いてみると、どうやら同級生が広めた根も葉もない噂が原因のようだった。やれ低血圧だの、やれ俺が居ると部屋の気温が3℃下がるだの、やれ女っ気がないのに女子からモテる羨ましいくたばれだの、やれ天然ジゴロ女たらしだの・・・アホらしい。低血圧って事しかあってないじゃないか。
「・・・・・・どうした?」
「いえ・・・・あ、また明日来ますね。今日はありがとうございました!」
「・・・・ああ、また明日」
◆
翌日。また如月はやってきた。どうやら入部を決めたらしく。担任に入部届けを出してきたらしい。
「先輩、私入部することになりました! これからよろしくお願いしますね!」
「よろしく。ところで、その荷物は?」
それを聞かれると如月は嬉しそうに中身を出して説明し始めた。中に入っていたのは櫛と化粧品等、鏡だった。ワックスやらなんやらは持ってこなくてよかったのか聞くと、「化学物質で出来たものは髪の大敵です!」と怒っていた。『髪は女の命』とはよく言うが、毛娼妓(かのじょ)はその思いが人一倍強いのかもな、と思った。
「・・・・なあ」
「なんですか? 先輩」
「お前さ、彼氏とかいねーの?」
それを聞いた途端彼女は飲んでいた緑茶を勢いよく噴出した。その後めちゃくちゃ慌てながら言う。
「なななななに言ってるんですか先輩!? 私に彼氏なんているわけないでしょそんなのぉ! なんでいきなりそんなこと聞いてるんですか?!」
「いやー・・・興味本位でさ。お前普通に綺麗だし、彼氏くらいいても不思議じゃねーな、と」
「も、もうやめてくださいよっ!」
余程動揺していたんだろう。彼女は持ち前の髪を操って、俺を縛り上げてしまった。おお、これが噂に名高い髪か・・・やべえ、さらさらしてて気持ちいい・・・。
「っ!? す・・・すみません先輩! つい気が動転しちゃって・・・大丈夫ですか!?」
さっきの赤い顔とは一変して青い顔になってオロオロしだした。まったく紅くなったり蒼くなったり忙しいやつだな。
「ぜんぜん平気。・・・それより、お前の髪綺麗だし、凄い手触り気持ちよかったよ・・・」
「〜〜〜〜〜〜〜〜〜ッ!? ・・・・き・・・今日はこれで失礼します!」
如月はそういうと転がり出るように部室から出て走り去っていった。当然、部室には俺一人が残される。
俺はため息を一つ吐くと、思わずこう呟いていた。
「・・・・如月菊野か・・・・変なヤツ」
15/05/16 21:46更新 / クロゴマ
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