ヘタレ男は静かに暮らしたい
「はぁ…まったくなんで私が砂漠の遺跡の調査なんかに行かなきゃならないんですかねぇ…」
彼の名はジオ、彼は今知り合いの依頼で砂漠地帯の遺跡の調査に出ていた。ジオはもともと面倒くさがりで、独りで細々と暮らすのが至上の喜びであると日ごろから公言しているヘタレた性格の青年であった。
そんな彼が何故こんなところまで足を運んでいるのかといえば、『マミー』という魔物が常日頃巻いている包帯を手に入れるためである。文献で調べてみると、その魔物が体に巻いている包帯は快楽を抑える働きがあるという。ほうたいの ちからって すげー! これがあれば平穏な生活ができるじゃあないか! これは手に入れるっきゃねーぜ! というわけで、彼はここまで足を運んでいるのだ。因みに、面倒くさがりな性格が幸いして、遺跡の調査はもう済ませてしまっているので、後は彼女(?)の包帯を手に入れて帰るだけなのだが…。
「なんでこうも『マミー』さん。来ないんですかねぇ…はぁ…もう帰ろうかな…」
そういいながら、彼が踵を帰し家に帰ろうとしたその時、ガサリと布が擦れるような独特な物音が聞こえた。振り向いてみると、褐色な肌に紺の長髪、ターコイズブルーの瞳、何よりも素肌に直接巻かれている白い包帯が、彼女をマミーだと証明していた。
「……」
「…アンタ、マミーさんでしょう?」
「……!」
「あぶねッ!」
急に襲い掛かってきたマミーに内心冷や汗をかきながらも、ジオは彼女の仕掛けてきた押し倒しを転がって避ける。
「私の精を吸っても美味くないですよ。ヘタレなんで中身スッカスカですよ。絶対そうですよ・・・ていうか私アンタの包帯ちょっと貰いに来ただけなんで、ホントちょっぴりでいいんで、先っちょでいいんでくれません?」
「…ぅぅう!」
「やっぱ無理か・・・・ってか動き速くないっすか?!」
ジオの包帯を取るという明確な意思を感じ取ったのかマミーはさっきの三倍ほどの動きで彼を押し倒しにかかった。ジオは急に速度を上げたマミーに対応し切れなかったのか、成すがまま押し倒されてしまう。
「へへへ・・・」
「やべ・・・ん?」
よく見ると、慌しそうに動き回った所為だろう。彼女の巻かれていた包帯が一部剥がれていた。彼はそれをすっと鞄に仕舞いこむとニヤニヤ笑みを浮かべながら
「マミーさーん、アンタ普通に肌出しちゃってますけど、いいんですか?」
興味本位で外気にさらけ出されていた腹部にすっと指を這わせてみた。
「ひゃあっ?!」
すると先ほどのしてやったりな表情が一変、顔を真っ赤にして目尻に涙を浮かべて悶え始めた。その隙にジオはさっと抜け出して立ち上がってマミーを見下ろしていた。
「あれ〜? さっきまでしてやったり、って顔してたのどこの誰でしたっけ?」
「返せ・・・私の包帯返せ・・・・っ」ビクンビクン
ジオは少しう〜んと考える素振りを見せた後、マミーの包帯をひらひらさせながら、
「アンタの名前、教えてくださいよ。そしたら返します。それにずっと『マミー』っていう種族名で呼び続けるのもなんか味気ないでしょう?」
「し、シロ・・・・ほら、言ったんだから包帯かえ・・・・「ジオです」ふぇ?」
「いや・・・私の名前、アンタ名乗ったんだから、私も名乗るのが筋かな、って思って」
「いや・・・・それはいいから・・・んぁっ! 包帯返して・・」
「いやです」
「は?」
「いや、これもう私のなんで、アンタのじゃないんで、ほしけりゃ私の後追って奪い返せばいいじゃないですか、じゃ、そういうことなんで私帰りますわ」
そもそも腹部の地肌を晒された時点でシロにジオの後を追いかけて包帯を奪い返せ、なんてことはどう考えても無理な話であるが、シロは彼が冗談でこのようなことを言っていないと確信していた。なにより、目が笑っていない。
「や、やめて・・・・私それが無いと生きていけないの・・・お願い・・・」
「いやです」
最高にいい笑顔で言い切った後、全速力で家に向かい駆け出すジオ、それを後ろから、やたら艶かしい声を響かせながら追い掛けるシロ、旗から見ればものすごいシュールな光景である。
<ジオ宅>
「ふう・・・流石にここまでは追って来れないでしょ・・・――へ?」
ジオはそういいながら玄関を振り返ってぎょっとした。そこにはシロが、目つきやら表情やら色んな所をトロンとさせながら、ジオに抱きついてきたのである。しかし肌を露出させた状態でここまで追いかけてきたシロ、すさまじい執念である。
「あんなに、・・・小バカにされて・・・はぁあん・・・泣き寝入りできない・・・」
「わかったわかりました。返すんで命だけは・・・「責任」・・・はい?」
「こんなにグチャグチャにされたの・・・初めて、責任、取って」
「・・・・・・ないわー」
独りで暮らすが至上、と考えるジオの家に、住人が一人増えました。
彼の名はジオ、彼は今知り合いの依頼で砂漠地帯の遺跡の調査に出ていた。ジオはもともと面倒くさがりで、独りで細々と暮らすのが至上の喜びであると日ごろから公言しているヘタレた性格の青年であった。
そんな彼が何故こんなところまで足を運んでいるのかといえば、『マミー』という魔物が常日頃巻いている包帯を手に入れるためである。文献で調べてみると、その魔物が体に巻いている包帯は快楽を抑える働きがあるという。ほうたいの ちからって すげー! これがあれば平穏な生活ができるじゃあないか! これは手に入れるっきゃねーぜ! というわけで、彼はここまで足を運んでいるのだ。因みに、面倒くさがりな性格が幸いして、遺跡の調査はもう済ませてしまっているので、後は彼女(?)の包帯を手に入れて帰るだけなのだが…。
「なんでこうも『マミー』さん。来ないんですかねぇ…はぁ…もう帰ろうかな…」
そういいながら、彼が踵を帰し家に帰ろうとしたその時、ガサリと布が擦れるような独特な物音が聞こえた。振り向いてみると、褐色な肌に紺の長髪、ターコイズブルーの瞳、何よりも素肌に直接巻かれている白い包帯が、彼女をマミーだと証明していた。
「……」
「…アンタ、マミーさんでしょう?」
「……!」
「あぶねッ!」
急に襲い掛かってきたマミーに内心冷や汗をかきながらも、ジオは彼女の仕掛けてきた押し倒しを転がって避ける。
「私の精を吸っても美味くないですよ。ヘタレなんで中身スッカスカですよ。絶対そうですよ・・・ていうか私アンタの包帯ちょっと貰いに来ただけなんで、ホントちょっぴりでいいんで、先っちょでいいんでくれません?」
「…ぅぅう!」
「やっぱ無理か・・・・ってか動き速くないっすか?!」
ジオの包帯を取るという明確な意思を感じ取ったのかマミーはさっきの三倍ほどの動きで彼を押し倒しにかかった。ジオは急に速度を上げたマミーに対応し切れなかったのか、成すがまま押し倒されてしまう。
「へへへ・・・」
「やべ・・・ん?」
よく見ると、慌しそうに動き回った所為だろう。彼女の巻かれていた包帯が一部剥がれていた。彼はそれをすっと鞄に仕舞いこむとニヤニヤ笑みを浮かべながら
「マミーさーん、アンタ普通に肌出しちゃってますけど、いいんですか?」
興味本位で外気にさらけ出されていた腹部にすっと指を這わせてみた。
「ひゃあっ?!」
すると先ほどのしてやったりな表情が一変、顔を真っ赤にして目尻に涙を浮かべて悶え始めた。その隙にジオはさっと抜け出して立ち上がってマミーを見下ろしていた。
「あれ〜? さっきまでしてやったり、って顔してたのどこの誰でしたっけ?」
「返せ・・・私の包帯返せ・・・・っ」ビクンビクン
ジオは少しう〜んと考える素振りを見せた後、マミーの包帯をひらひらさせながら、
「アンタの名前、教えてくださいよ。そしたら返します。それにずっと『マミー』っていう種族名で呼び続けるのもなんか味気ないでしょう?」
「し、シロ・・・・ほら、言ったんだから包帯かえ・・・・「ジオです」ふぇ?」
「いや・・・私の名前、アンタ名乗ったんだから、私も名乗るのが筋かな、って思って」
「いや・・・・それはいいから・・・んぁっ! 包帯返して・・」
「いやです」
「は?」
「いや、これもう私のなんで、アンタのじゃないんで、ほしけりゃ私の後追って奪い返せばいいじゃないですか、じゃ、そういうことなんで私帰りますわ」
そもそも腹部の地肌を晒された時点でシロにジオの後を追いかけて包帯を奪い返せ、なんてことはどう考えても無理な話であるが、シロは彼が冗談でこのようなことを言っていないと確信していた。なにより、目が笑っていない。
「や、やめて・・・・私それが無いと生きていけないの・・・お願い・・・」
「いやです」
最高にいい笑顔で言い切った後、全速力で家に向かい駆け出すジオ、それを後ろから、やたら艶かしい声を響かせながら追い掛けるシロ、旗から見ればものすごいシュールな光景である。
<ジオ宅>
「ふう・・・流石にここまでは追って来れないでしょ・・・――へ?」
ジオはそういいながら玄関を振り返ってぎょっとした。そこにはシロが、目つきやら表情やら色んな所をトロンとさせながら、ジオに抱きついてきたのである。しかし肌を露出させた状態でここまで追いかけてきたシロ、すさまじい執念である。
「あんなに、・・・小バカにされて・・・はぁあん・・・泣き寝入りできない・・・」
「わかったわかりました。返すんで命だけは・・・「責任」・・・はい?」
「こんなにグチャグチャにされたの・・・初めて、責任、取って」
「・・・・・・ないわー」
独りで暮らすが至上、と考えるジオの家に、住人が一人増えました。
15/02/22 19:50更新 / クロゴマ