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ココロのこころ
僕のクラスには、変わった女の子がいる。

彼女の名前は、加賀見 心(かがみ こころ)。

色白な肌に細身の身体、すらっとした腕や脚、茶色がかったショートヘアに、凛とした顔立ち。

はっきり言って、凄く可愛い。

だけど、彼女はいつも無口で無表情。

もし彼女が笑ったら、きっともっと可愛くなると思うのに。

噂によると、彼女に交際を申し込んだ男子が沢山いたらしいけど、全員結果は同じで、

「ごめんなさい」

と無表情で即座にばっさり。

それどころか、例えば女子が一緒に昼食を食べようと誘っても、

「ごめんなさい」

と無表情で即座にばっさり。

なので、今ではこれらの噂を聞いて彼女に話しかけようとする人はほとんどいなくなった。

中には「『心』なんて名前のくせに心が無いんじゃないのか」なんていう人もいる。

だから、彼女はいつも一人で本を読んだり、ぼーっとしたりしている。

僕は、そんな彼女のことがずっと気になっていた。



「加賀見さん」

昼休み、本を読んでいる彼女に、僕は思い切って声をかけてみた。

「…おい、西谷の奴、加賀見に話しかけてるぞ」
「勇者だ」
「いや、バカだろ」

…何か色々聞こえるが気にしない。

「……何」

加賀見さんは、本を読んだまま1ミリも動くことなく、ぽつりとそう言った。

勿論、いつもの無表情で。

…既にもうくじけそうだけど、まだ勝負は始まったばかりだ。

「いや、その、もし加賀見さんがよければ、お昼一緒にどうかなー、と、思って…」

「…おいおい西谷の奴、加賀見を昼飯に誘うつもりだぞ」
「無理だろ」
「やっぱりバカだ」

…外野、うるさいぞ。

心臓がバクバク鳴っているのを自覚しながら僕が言い終えると、加賀見さんは本のページをめくる手を止めた。

そして、

「……何故?」

と、わずかに視線を僕に向けながらそう言った。

「…い、いや、その、何となく、だけど…」

上手い言葉が出てこない。何か背中に嫌な汗をかいている気がする。

「……一人がいいの。ごめんなさい」

撃☆沈。

加賀見さんは既に視線を本に戻しており、もはや僕のことは眼中にないようだった。

「そ、そっか。ごめんね、読書の邪魔して。それじゃ」

僕は気まずさ全開のままとぼとぼと自分の席に戻った。

「西谷の奴、撃沈だったな」
「結果は見えてたから賭けにもならんかったな」
「バカな奴だ」

…畜生、外野(特に3人目)め…。



その後も僕は、何度も加賀見さんに話しかけてみた。

本が好きなの?とか、どんな本を読んでるの?とか。

家の方角が同じだということも判明したから、途中まで一緒に帰ろうと誘ってみたこともあった。

…我ながらしつこい奴だと思う。普通だったら嫌われかねない。

正直、ムキになってやっている部分もあったかもしれない。

それでも、やっぱり僕は彼女のことが気になるし、彼女の笑顔を見たかった。

…が、今のところ全戦全敗。

単に嫌われただけなのかとも思ったが、別に無視されているわけではなく、話しかければ一応答えてはくれる。

なので嫌われているわけではない、と思いたい。

…でも、最初から嫌われているだけかもしれない。

…いや、他の人にも同じ態度だから、僕だけが嫌われているわけではないんじゃないだろうか。

…いやどうなんだろう。ストーカー扱いされる前に諦めた方がいいんじゃないだろうか?

悶々と考えながら歩いていると、前方で何やら声が聞こえた。

「ねぇそこの君、ちょっと一緒に遊びに行かない?」
「大丈夫大丈夫、変なことしないからさぁ」

どうやら男2人で女の子をナンパしているらしい。

だが全く相手にされておらず、女の子はすたすたと歩き続け、男二人はその両サイドを挟むように話しかけながら歩いている。

それにしても、度胸のある女の子だ。

…いやちょっと待て。あの女の子、加賀見さんじゃないか。

「ねぇ君、そんなに無視することないんじゃないかなぁ」
「流石のお兄さんたちでも怒っちゃうよ? ん?」

いや、口元こそ笑っているが、目が笑っていない。明らかにもう既に怒っている。

加賀見さんもぴたりと足を止めた。

…これはマズいんじゃないか!?

そう思った次の瞬間、僕は気がつくと飛び出していた。

「加賀見さん!」

声を上げ、加賀見さんの手を取って逃げようとする。

しかし、あっさりと男2人に回りこまれてしまった。

「…何だてめぇ。邪魔すんじゃねぇよ」
「痛い目あわすぞコラ」

怖い。身体が震える。

でも、加賀見さんは守らないと。

僕は自分の身体で加賀見さんを庇うように男2人の前に立ちはだかった。

「……っ…!」

何かを言おうと思ったが、声が出ない。

だから、精一杯2人の男をにらみつけた。

「…何ガン飛ばしてんだ、あぁ!?」
「やろうってのか? だったら容赦しねぇぞオラァ!」

今更だが、僕はケンカなんてさっぱりできない。

まともにやりあって勝てるわけが無い。

かといってまともじゃない方法も思いつかない。

こうなったら自分が殴られている間にでも加賀見さんが逃げてくれれば…。

そんなことを思っていたその時。

「おい、そこの君たち! 何をやってるんだ!」

遠くから聞こえてきたのは、自転車に乗ったお巡りさんの声。

「チッ、ついてねぇ」
「いいから逃げようぜ」

男2人は慌てて逃げていった。

まさに救いの声だった。

「君たち、大丈夫かい?」

「…はい、大丈夫です。ありがとうございます」

お巡りさんが去っていくのを見届け、僕はようやくたまっていた息を吐き出した。

加賀見さんの方を見ると、彼女は無表情のままじっと僕のことを見ていた。

「…はぁっ。加賀見さん、大丈夫だった?」

加賀見さんは黙って頷いた。

「それなら良かった。…かっこ悪いところ見せちゃったなぁ」

「……別に、助けてくれなくても良かったのに」

彼女の言葉がグサッと僕の心にクリティカルヒット。

…そうだよね、僕なんか頼りにならないし、助けてもらってもかえって迷惑だよね。

「…ごめんなさい。助けてくれて、ありがとう。…今のは、そういう意味じゃないの」

「え?」

そういう意味じゃない、とはどういう事なのだろう。

加賀見さんは近くの小さな公園を指差し、

「ついて来て」

と言って、すたすたと歩いていく。

僕は、慌ててその後を追った。

公園は本当に小さく、小さな遊具がいくつかあるだけで、人気もない。

こんな所で何をしようというのだろうか。何だか緊張してきた。

カラスの声だけがやけに大きく聞こえる中、彼女はくるりと僕に向き直った。

「……見てて」

彼女がそう言った次の瞬間。

服の袖を切り裂く音と共に、彼女の腕から鎌のような大きな刃が現れる。

さらには、彼女の頭には複眼や触角のようなものが現れ、腰の後ろにはまさしく昆虫の腹部を思わせるものが出現している。

驚きのあまり言葉も出ない僕に、加賀見さんは改めて驚愕の事実を告げる。

「…私は、人間じゃないの。マンティスという、魔物」

マンティス…つまりはカマキリだ。なるほど、確かにカマキリを思わせる姿だった。

「私は、ただ生きるためだけに生きている。生きるのに必要ないことに興味はない。あなた達が言う、『心』もそう」

加賀見さんはそこまで言うと、一度言葉を切り、小さく息を吐いた。

「…だから、私には関わらない方がいい。あなたが傷つくだけだから」

そう言って、加賀見さんは元の姿に戻り、話は終わりと言わんばかりにその場を去ろうとする。

僕は黙って彼女の話を聞いていたが、彼女が僕の横を通り過ぎようとした時、僕は彼女を呼び止めていた。

「待って、加賀見さん」

「…何? 私には関わらない方がいいって、言ったはず」

「…そんな話を聞いちゃったら、なおさらそれはできないよ」

「何故?」

「だって、加賀見さんは、損してるから」

「…損?」

加賀見さんは無表情のまま首をかしげる。

「うん。人間、心や感情がただ生きる上で必要がないことだとしても、それによって生きることに色々なことを見出せるんだよ。そのことを知らずに生きているのは、もったいないよ。だから、加賀見さんは損してると思う」

「…よく、わからない」

加賀見さんはなおも首をかしげる。

だが、相変わらずの無表情でも、確かに何か深く考え、悩んでいるように思えた。

「…大丈夫、加賀見さんならわかるよ。さっきだって、僕が傷つくから、って気遣ってくれたじゃないか」

「……よく、わからない」

「わからないなら、これから学んでいけばいいと思うよ。その方が、きっといいと思う」

加賀見さんは無表情のまま深く考え込んでしまった。

いくらなんでもあまりに偉そうな物言いだったかもしれない。

慌てて僕が謝ろうとすると、彼女はふと顔を上げ、

「…具体的に、どうすればいいの?」

と、僕に問いかけた。

「…えっ?」

確かにそうだ。

学べと言っても、具体的にどうすればいいのだろうか。

考えなしに偉そうなことを言った自分を殴ってやりたい。

「…ねぇ、私は、何をすればいいの?」

夕日によって赤く照らされた加賀見さんの顔が、すっ、と僕に近づく。

僕の心拍数が跳ね上がる。

そして。

「…そ、その、恋、とか、してみると、いいんじゃないかな…?」

…ちょっと待て。

何言ってんだ自分。

状況に流されて、下心が漏れ出しただけじゃないのか今の。

「あ、いや、その、今のは…」

僕がパニクっているのと対照的に、加賀見さんはいたく真面目な顔をしていた(ような気がする)。

「…恋…わからない。どうやって学べばいいの?」

「えっ…と、その、そうだ、少女マンガとか読んでみればいいんじゃないかな、うん」

とっさの返しとは言え、えらく適当なことを言ったんじゃなかろうか。

ともかく早いところ軌道修正をしないと。

「いや、まぁ、そういうのも方法の一つとしていいかもー、なんt」
「…わかった、やってみる。ありがとう」

そう言って、加賀見さんは足早に去っていった。

軌道修正、失☆敗。

何をやらかしてるんだ自分。

嗚呼、穴があったら入りたい…。

気がつくとひたすら砂場に穴を掘っていた僕は近所の人に通報され、さっき助けてくれたお巡りさんに事情聴取(?)される羽目になったのだった。



翌日。

僕は昨日の失敗から立ち直れていないまま登校した。

加賀見さんと顔を合わせるのが心底気まずいというか恥ずかしいというか。

正直仮病で休もうかと思ったくらいだった。

教室に入ると、まだ加賀見さんは登校してきていないようだった。

ちょっとほっとすると同時に、この後彼女が登校してきたら僕はどんな態度でどんな行動をとるべきなのか、本気で考える。

が、それも一瞬のこと。

考える間もなく、加賀見さんが教室に入ってきた。

…そして、僕の方へと真っ直ぐに歩いてきた。

もちろん、いつもの無表情で。

彼女の言動次第では、僕のスクールライフはここで終わるような気がする。

…いや、自業自得なんだけど。

思考がカオスになっている僕だったが、加賀見さんはそんな僕の前に立ち、一言、

「…放課後、校門で待ってるから」

とだけ言って、自分の席に着いた。

…え?

放課後、校門で待ってる?

誰が、誰を?

…加賀見さんが、僕を?

「西谷あああぁ!! お前、あの加賀見に何をしたんだ!?」
「あの、加賀見が、西谷と、待ち合わせ、だと…?」
「よりにもよって、西谷と…!?」

当然のごとく悪友たちは大騒ぎである。

…そして3人目、「よりにもよって」とはどういう意味だ。

僕自身もわけがわからないまま、朝のホームルームを告げるチャイムが鳴った。



気がつくと放課後になっていた。

…あれ、おかしいな。授業を受けていた記憶がないぞ?

「お前、ずっと超☆上の空だったぞ。英語の時間に当てられた時なんか急によくわからん数式を唱え始めて、しかも先生が投げたチョークがデコに直撃してもずっと唱えてたんだぜ。先生、恐怖で顔が引き攣ってたぞ」

マジで? だからおでこが痛いのか。

というか、それは流石にヤバくないか、自分。

それはさておき、教室を見回す。

加賀見さんの姿はない。となると、もう校門で待っているのだろうか。

僕は急いで教室を後にした。

…校門まで走っていくと、やはり加賀見さんは既に待っていた。

「待たせちゃってごめん」

僕が謝ると、彼女はふるふると首を振った。

「それで、一体どうしたの?」

「ついて来て」

加賀見さんはそう言ってすたすたと歩き出す。

僕も彼女に並ぶようにしてついていく。

彼女の横顔も凛としていて綺麗だな、とか思いながら。

「昨日、あの後」

「はいいっ!?」

加賀見さんが唐突にぽつりと呟いた言葉に、僕の心臓は跳ね上がり、変な声が出てしまった。

しかし、彼女は全く動じることなく、言葉を続けた。

「本屋さんに、行ったの」

「ほ、本屋さん?」

「そこで、少女マンガを買って、読んで、勉強した」

本気で実践したのか、加賀見さん。

「へ、へぇ」

「…知識としてはある程度理解した、と思う。でも、やっぱり完全には理解できなかった」

ですよねー…。

…というか、これ、実は怒ってるんじゃ…。

そして、加賀見さんはどこに向かっているのだろうか。

「だから、実践してみたいと思った。あなたに、協力して欲しい」

「…実践…?」

どういうことだろう。

やがて、加賀見さんはとあるマンションの前で足を止めた。

「ここ。ついて来て」

そう言うや否や、加賀見さんはマンションの中へと入っていく。

僕も彼女についていくが…。

「…ねぇ加賀見さん。ここってもしかして」

「私の家」

「」

何なの、どういう展開なのこれ!?

わけがわからないまま彼女についていき、エレベーターに乗り、とある一室のドアを彼女が開け、一緒に中に入る。

加賀見さんの家は、実にシンプルかつ簡素で、飾り気のないものだった。

彼女らしいという気はする。

しかし、我が家とは違う、独特の空気に僕はドギマギしていた。

「こっち」

加賀見さんは奥の部屋へと僕を誘導する。

奥の部屋には、ベッドがあった。

すなわち寝室。

いよいよもってこの展開がわからなくなってきた。

「ここに立って」

呆然としたまま、加賀見さんの指示に従う。

…この場所に何の意味があるのだろうか?

すると、加賀見さんは僕の前に立ち、じっと僕の目を見つめ…。


「んっ」


いきなり唇を奪われた。

…いやちょっと待て、どういう事だ、これ。

何が何だかわからない。

加賀見さんは僕にキスをしたまま腕を僕の首に絡めた。

そしてそのまま僕を引っ張るようにベッドの方へと後ずさっていき、そして僕をベッドに引き込むように背中からベッドに自ら倒れこんだ。

そしてようやくぷはっ、と唇を離し、


「いいよ。私をあなたのものにしてぇ」


…と言った。

いつもの無表情で、しかも超棒読み。

そして僕の顔をじっと見つめる。いつもの無表情で。

「……あの、加賀見さん?」

「何?……違う、間違えた。『駄目、名前で呼んでぇ』」

「……いやいやいや、加賀見さん、どういうことなの、これ」

僕が尋ねると、加賀見さんは無表情のまま首をかしげた。

「……やっぱり、わからない」

僕もこの状況が全然わからないです、加賀見さん。

「…これの通りにしたはず、なのに」

そう言って加賀見さんは一冊の本を取り出した。

見てみると、タイトルくらいは聞いたことのある少女マンガだった。

そして中身を見てみると。

一言で言うと、エロい。

普通にエッチだの何だのが出てきて、そういう描写もある。

表紙などを改めて見てみても、どこにも18禁とは書かれていなかった。

最近の少女マンガ、恐るべし。

…いや、そういうことじゃなくて。

駄目だ、超展開過ぎて頭の回転が追いつかない。

「…じゃあ、次のを試してみる」

「…つ、次?」

「…えい」

今までは僕が加賀見さんの上に覆いかぶさる形になっていたが、加賀見さんは身体にぐいっと力を込めて僕ごと転がり、今度は加賀見さんが僕の上に覆いかぶさる形となる。

そして彼女は自分の服の胸元をはだけさせ、パンツを脱ぎ、そして僕のズボンに手をかけた。

「ちょ、ちょっと待って! 何しようとしてるの加賀見さん!?」

「エッチ」

ド直球な返答。

「いやいやいや落ち着いて! 順番とか色々とおかしいから!」

僕が大慌てでそう言うと、彼女は首をかしげ、先程の少女マンガをパラパラとめくり、僕にあるページを見せた。


『――エッチから始まる恋も、あるよね』(※少女マンガのヒロインのモノローグ)


「どういうことなの!?」

「…エッチというのは、性行為、つまりは生殖行動のこと」

「いやそういうことじゃなくて!」

「生殖行動なら私もやり方は知ってる。生殖行動をすれば、恋についてわかるかもしれない」

「ちょっと待って、こういうのはちゃんと好きな人と…ってわあぁぁぁ!?」

加賀見さんは何のためらいもなく僕のズボンを下ろす。

そこには、思いっきり自己主張する僕のモノが。

…正直、キスされた後僕がベッドの上で加賀見さんに覆いかぶさる形になったあたりでもうこんなになってたんですよ。僕を責めないでください。

「…好きかどうかはわからないけど、私は、西谷君のことは、嫌いじゃない」

「…へっ?」

突然の告白。

「私のために、色々と考えてくれた。…西谷君は、私のこと、好きじゃないの?」

「い、いや、その…好き、です、はい」

思わず告白してしまった形になったが、いいのだろうか。

「…それなら、問題ない」

そう言って加賀見さんは腰を上げ、そっと僕のモノを彼女の秘所にあてがった。

「いや、加賀見さん、やっぱりこんなのまず…」

時既に遅し。

加賀見さんは、一気に腰を下ろした。

僕のモノが、彼女の中に一気に飲み込まれる。

「ん、くううううぅぅぅっ!?」

加賀見さんの口から、今まで聞いたことのないような悲鳴が漏れる。

「加賀見、さんっ…! 初めてで、そんないきなりだと、痛いんじゃ…っ!?」

加賀見さんはふるふると身体を震わせながら僕の顔を見た。

明らかに今までの加賀見さんとは違う。

表情がとろんとしていて、凄く色っぽい。

「違う、のぉっ…! 凄く、気持ちよくて、何か、胸の中に、あったかいものが、広がってぇ…っ!」

そう言いながら加賀見さんは自ら腰を動かし始めた。

リズミカルに腰を動かす彼女は、やはり明らかに今までとは違う。

艶っぽい声を上げながら、僕の上で腰を振っている。

情けないことに、僕はもはや限界に達しようとしていた。

「だ、駄目だっ…! 加賀見さんっ、出ちゃうっ…!!」

それでも加賀見さんは動くのをやめない。

そしてとうとう僕は我慢の限界に達し、彼女の中に思い切り精液を吐き出した。

「く、うああぁぁっ…!!」
「あああああああぁぁぁっ!!」

加賀見さんも声をあげてそれを受け止めた。

加賀見さんは荒い呼吸をしながら、自分の胸やおなかのあたりを手で撫でていた。

「…凄い、中に、たくさん出たのがわかる…っ」

「ご、ごめん、加賀見さん…」

「西谷君、私、何か変なの。胸が、今まで感じたことないくらい暖かくなって、西谷君の顔を見ると、心臓の鼓動が早くなって、頭の中が滅茶苦茶になりそうなの…っ!」

そう言って加賀見さんは僕と繋がったまま僕に顔を寄せ、再び唇を奪った。

「んっ…んちゅっ…んぅっ…れろっ…ちゅ…」

今度は、口の中を舐め尽くすような、濃厚なキス。

僕ももう自分の欲望を抑えることができず、負けじと彼女の舌を舐め返す。

「ちゅっ…ん、んぅ…ん…じゅ、んぅっ…」

長いキスが終わり、加賀見さんはゆっくりと顔を離す。

僕の口と彼女の口の間に一瞬銀色の唾液のアーチができて、消えた。

「…西谷君、もう一度、しよぉ…♪」

そう言って加賀見さんは再び僕の上で腰を振り始める。

僕のモノも、先程の濃厚なキスと、見違えるように色っぽくなった加賀見さんによって既に臨戦態勢にまで回復していた。

「んっ、あっ、はぁっ、凄いっ、気持ちよくてっ、変な感じがしてっ、おかしくっ、なっちゃいそぉっ…♪」

「くっ、はぁ、僕もっ、気持ちいいよっ…!!」

「どうしよぉっ、私っ、壊れちゃうっ! おかしく、なっちゃうっ!!」

「僕も、もう、そろそろ、イきそうっ…!」

互いに絶頂に近づいているのを感じ、僕も加賀見さんも自分から激しく腰を振っていた。

「駄目っ、駄目っ! あああああああぁぁぁ!!」
「く、う、ぁああああぁぁっ!!」

そして、僕たちは同時に絶頂に達し、僕は彼女の中に再び大量の精液を吐き出したのだった。

・・・・・・・・・・・・。

僕も加賀見さんも無言で服を着る。

加賀見さんが無言なのはいつものことのような気もするが、僕としては恥ずかしさやら気まずさやらで言葉が出ない。

「…あの、ごめんね、加賀見さん。成り行きとは言え、こんなことになって…」

恐る恐る加賀見さんの方を見ると、彼女は黙って自分の胸に手を当てていた。

「…あの、加賀見さん…?」

「……凄い…」

「へ?」

「…世界が、変わって見える。これまでと、全然違う。胸の中が、暖かい…」

そして、加賀見さんは、すっと僕に抱きついた。

「え、ちょ、加賀見、さん…!?」

「…ありがとう。全部、西谷君の、おかげ…」

そう言って頬をすり寄せてから、加賀見さんは僕からゆっくりと離れた。

彼女の口元には、わずかだが笑みが浮かんでいた。

「これからも、西谷君に色々なことを教えて欲しい。お願い、できる?」

「…その、僕で、いいの?」

「西谷君じゃないと、駄目。西谷君以外は、考えられない」

加賀見さんはこくこくと頷いてそう言った。

こんなこと言われて、嬉しくないわけがない。

「ありがとう。僕でよければ、喜んで」

僕がそう言うと、加賀見さんはさっきよりもはっきりと、嬉しそうに微笑んだのだった。



翌日は大変だった。

昼休み、加賀見さんが僕の所にやってきた。

「西谷君」

「ん、何?」

「お昼、一緒に食べよ」

「あ、うん。今行く」

このやり取りで、辺りは騒然となった。

そして僕はすぐさま悪友たちに取り囲まれることになる。

「西谷あああぁぁぁ!! お前、一体、何がどうなって、あの、加賀見と…!?」
「西谷が、加賀見を、落とした、だと…!?」
「そんな馬鹿な、よりにもよって、あの西谷が…!?」

だから3人目、よりにもよって、とはどういう意味だおい。

一発チョップでもかましてやろうかと思ったとき、僕を囲んでいた悪友3人のベルトが突然切れ、ズボンが落ちた。

「きゃあああああああぁぁ!! 女子の目の前で何やってんのよ!?」
「汚いもの見せんなボケぇ!!」
「違う、誤解だ、これは事故だあああぁぁ!!」
「ちょっ、広○苑は死ねるからやめてええぇぇ!?」

大・惨・事。

クラス内が大騒ぎになっているのをよそに、加賀見さんだけが冷静に僕にそっと歩み寄る。

「…今のうち。行こ」

「う、うん。いいのかな、これ」

「大丈夫。…多分」

「多分って…」

何となく加賀見さんの手に視線を移すと、わずかに袖口が切れていた。

「…まさかとは思ったけど、ベルト切ったの、加賀見さん?」

「…西谷君が困ってたみたいだから。…ごめんなさい」

ちょっとしゅんとした表情になる彼女に、僕は思わず笑ってしまった。

「…いや、全然気にしなくていいよ。あいつらはほっといて、昼ごはん食べに行こうか」

「…うん」

僕は加賀見さんと並んで、大騒ぎになっている教室をそっと後にする。

並んで歩く加賀見さんの横顔をちらりと見ると、同じように僕を見ていたらしい彼女と目が合った。

「…どうか、したの?」

「いや、なんでもないよ」

「…そう」

周りから見れば素っ気無いやり取りに思えるかもしれない。

でも、僕の目には、彼女が口元に幸せそうな笑みを浮かべているのがはっきりと映っていた。

それは、加賀見さんが手に入れた、加賀見さんだけの、大切な「心」。

ココロの、こころ。
13/03/17 19:32更新 / クニヒコ

■作者メッセージ
西谷「何か長い上にまとまりがなくて読みにくいよね」
加賀見「…死刑」ズバッ
クニヒコ「ギャアー」

…すみません、精進します(泣
ちなみに、ヒロインの名前「加賀見 心」は、鎖鎌術の流派「心鏡流」からとっています。そのまんまですね。西谷君は適当です。

最近の少女マンガはエロかったりカオスだったりと色々と凄いですよね。
私もいつか可愛い魔物娘とチムドンドンしたいです。

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