連載小説
[TOP][目次]
前編
薄暗い地下室
埃の匂いと様々な薬品のにおいに包まれた石造りの部屋

そこは決して小さい部屋ではなかったが
小瓶や薬品漬けの触媒が大量に入った棚がいくつも並べられ
それらが蝋燭の揺らめく焔に彩られることで
妙な威圧感と圧迫感を醸し出していた

そして石の壁に映る2つの影
否、重なり合っている故の1つの影が
大きな動きを見せることなく揺らめいていた

その影の主の片割れは机に向かって書き物をしている少女
カリカリというペンを走らせる小さな音が石室に響く

しかし、その少女は全裸にぼろぼろのマントという
エロティシズムを感じる格好で、秘所から水音を発し
頬を赤く染め、荒い吐息を吐きながら大きな椅子に腰かけていた

もう一人の影の主は男
ちょうど青年と少年の中間程度の年齢に見える

彼は少女を背後から抱くように椅子に腰かけ
少女の秘所を手で激しく弄り回していた

ふと、少女の手が止まる
口の端からは唾液が滴り落ち、しかしそれを気にした様子はない
否、気にする余裕が無いのか
普段眠そうに半開きになっている大きな瞳を瞑り
眉間にしわを作り、頬をさらに赤く染め上げ荒い吐息を吐く

「・・・・・ィクッ」

そして小さな声とともに机の下で
秘所から潮を噴水のように噴き出した

全身をガクガクと痙攣させ、耐えるように歯を食いしばる
絶頂によって目尻から流れ出た涙が、宝石のように煌めき頬を濡らす
だが、背後の彼は少女が絶頂を迎え、激しく痙攣していても手を休めることはない
結果として絶頂は長引かされ、痙攣が収まるまで5分ほどの時を必要とした

「・・・・・ほふぅ・・・・・♥」

長い絶頂を終えた少女は、まるで何も無かったかのように書き物を再開する

それはそうだろう、何せ2人がこの石室に入ってからの少女の絶頂は1回や2回ではない
もはや数えるのが億劫なほどに繰り返されているのだから

その証拠に机の下の石床はバケツの水を何度もぶちまけたような惨状になっていた
水ではないと断言できる証拠としては淫臭がする、ということか
恐らく背後の彼以外の男がいれば、たちまち勃起してしまうほどの濃い、少女の匂いが立ち昇っていた

再び石室の中にペンを走らせる音が響く
背後の彼もまた少女の秘所を弄り回す

他人が見れば奇怪に見えるだろうこの光景は彼らにとって日常であり
「彼」にとっては師匠たる「少女」から命じられた仕事であった








数か月前

彼は光も届かない深い森、通称「黒の森」の奥地にある廃墟へやって来ていた
彼自身は黒の森にも廃墟そのものにも用は無い
ただ、そこに住むと言われている魔法使いに用があった

曰く、偉大なる魔法使い
曰く、伝説の魔導士
曰く、大地を崩壊させ海を割る者

伝説と呼ばれる魔法使いの童話を昔から読んで育った彼は
魔法使いそのものに憧れた
「大きくなったら凄い魔法使いになる」というのは幼い彼の口癖でもあった

大人たちは慈しみの目で彼を見た
大抵は大きくなるにつれて現実を見せられ、諦める者が多かったから

彼らもまた、子供のうちに夢を見せてやろう、と上辺だけの言葉で応援した
いずれ打ちのめされて現実を知り、無難な職に就くだろうと、そう思った

だが、彼には魔法の才能があった
それもエリートと呼ばれる魔法使いよりも上の才能が

彼は憧れた偉大な魔法使いのようになるべく魔法学院にて研鑽を積んだ
無論、才能ある彼が平穏無事に過ごせるわけではない
才能を妬んだ自称エリートに妨害され、難癖をつけられることも多々あった

幸いだったのが彼の才能を惜しんだ講師が数名、彼の味方になって
支援、援護をしてくれたことだろうか

彼らとしても完全に善意だったものは少ない
なぜなら優秀な魔法使いが学院から出てば「箔」が付くからだ
それは巡って自分たちへの評価にも繋がる

だが、彼にはそんなものは関係なかった
なにせ彼にとっては支援してくれたことには変わりなく
味方となってくれた講師たちがいなければ、どこかで折れてしまっていただろうから
現在でもそれは変わりなく、足を向けて寝られないとすら思っている

そして彼は魔法学院を卒業後、国の研究機関へ所属した
そこでも彼は多大な功績を残す

作業でよく使われる魔法群の詠唱効率化、強力な触媒の入手の簡易化
10メートルもの巨大な魔方陣を3メートル程度に縮小したのも彼の功績である

それらの歴史に残りかねない功績を出した彼は、王直々に褒美を賜ることになった

彼が王に謁見した際、謁見の間では好奇心が場を支配していた

これだけの功績を遺した魔法使いはどのような褒美を望むのか
金か、栄誉か、はたまた貴族の地位か
彼の出した功績なら大抵の無茶は通るだろうとされていた

そして王は彼に問う
「お前は何を望むのか」

彼は答えた
しかしそれは貴族たちや他の魔法使いたちの予想とは大きく外れていた

「はい、私はかの偉大な魔法使いの住居を知りたいのです」

謁見の場は騒然とした
かの偉大な魔法使いはその強大な魔力にて寿命を克服し
世界のどこかで静かに暮らしていると言われていた
だが、半ばお伽噺のようなものだと思われていた

王族を除いて

王は問う
「それを聞いて何とする」

場は再び騒然とする
何故なら王がかの偉大な魔法使いの生存を認めるような発言をしたからだ

それを気にせず彼は答える
「私が魔法使いになったのは、かの魔法使いに憧れたゆえ
 私は、かの方の弟子になりたいのです 今までの事は全てその布石です」

王は笑った
「あれだけの功績が、ただの布石と申すか」

王はかの魔法使いは魔力の研究のために魔界へ渡り
今も研究を続けていると言った
詳しい場所までは知らぬ、とも
そのうえでお前は国を出て、全ての栄光を捨てるのか、と言った

彼は答えた
「それが私の夢なので」

王は笑った







「国の皆には悪いことしたなあ」
彼は廃墟の前で呟いた
自分が国を出るといった時の研究機関の皆の顔が忘れられない

「お前がいなくなったら書類整理どうすんだよ!?」
「触媒の入手法わかんなくなる!!」
「5人分の働きができるやつがいなくなるだと!?」
「暗黒時代に逆戻り・・・・だと・・・・?」

・・・・なんか思い出したら殴りたくなってきた
実は便利屋みたいに思われていたんじゃないだろうか

「まあ、いいや」
廃墟の扉の前で深呼吸をする

ここまで長かった
国を出て少ない情報から軌跡を辿り
魔界の奥地に住んでいるという情報を得るまで約3年
実に長い探索だった

「でも、ついに会える」

緊張とともにドアに付いているベルを鳴らす
耳触りのいい音が周囲に響いた

しかし、誰も出てこない

「あれ?」

もしかしたら聞こえなかったのか
もう一度ベルを鳴らし、待つ

だが、誰も出てこない

「・・・・・・」

もう一度鳴らす
更にもう一度、もう一回

だがしかし、誰も出てこない

彼の脳裏に焦燥感がよぎる
もしかしたらここじゃないのか
ここはただの廃墟なのか
もう一度鳴らしたら一度帰って出直すか
いや、情報を集めて・・・・

そう思ったとき、扉が薄く開いた

「あ・・・・・!」

喜びとともに彼は目を扉へ向ける
だが、喜びは一瞬だった

「・・・・・何、誰」

何故なら顔を覗かせた偉大なる魔法使いたる少女は
物凄く不機嫌そうな怒りの表情だったから

眠そうな半開きの瞳は心なしかこちらを睨んでいるように見える
白に近い銀髪は彼女から発する魔力で波打っている

周囲の魔力がびりびりと震える
魔力濃度が濃くなっている
彼は悟った

(極大魔法の準備してるっ!?)

極大魔法、それは滅びを呼ぶ魔法
大地を砕く魔法、最強の魔法
それが、客人のはずの自分に向けられている

やばい、やばい


死ぬ

「・・・・・用、無いの?」

彼女の魔力が爆発的に膨れ上がる
つまり彼女はこう言っている

用が無いなら、死ね

彼はとっさに叫んだ

「弟子にしてもらいたくて来ましたァ!!、弟子にしてくださいィ!!」

土下座と共に

彼は自分が死んだと思った
最強の魔導士の最強の魔法とか自分に防げるわけない
お父さんお母さんごめんなさい自分は死にます
あ、ちょっと漏らした

・・・・・1分

自分が死んでないことに疑問を感じた彼は恐る恐る顔を上げる
気が付けば魔力濃度は元に戻っており、威圧感は既に感じない
そして偉大なる魔法使いたる少女は無表情でこちらを見下ろしていた

そしてぽつりと
「・・・・・根性は合格」
と小さな声で呟き、引っ込んだ

扉を更に少しだけ開けて

「え、あの・・・・?」

疑問の声を上げる彼に平坦な声が届く

「・・・・・早く、入って」
「は、はい!」

これが、彼と彼女の邂逅だった





廃墟の内部は小奇麗にされていた
否、小奇麗というよりもちょっとした屋敷であり
王都の貴族の屋敷を思わせる建築だった
最も、彼は貴族の屋敷にはほとんど出入りしたことは無いのだが

恐らく、廃墟の中を魔術で再構築、外観だけ廃墟のままにして
他者からの関心を買わない配慮がされているのだろう、とあたりを付けた
だが、言うだけなら容易いが実際は違う
空間系上位魔法を行使しなければこれだけの真似はできないだろうと理解していた

(やはり、この子が・・・・いや、この方が)

広い応接間の中央のソファにて主のごとく振る舞う目の前の少女が
偉大なる魔法使いであるのは間違いないだろう、と確信した
だが

「一つ、いいでしょうか」
どうしても聞きたいことがあった

「ん、なに? 弟子」

もう弟子認定されてるのかよ、と突っ込みたかったがとりあえず置いておく
聞きたいのは・・・・・

「なんで、裸マントなんでしょうか」

そう、彼女は全裸にマントというフェチシズムな恰好をしていた
正直、目の保養・・・・じゃない目の毒である

「理由はいくつかある」
「・・・・お聞きしても?」

少女・・・・否、師匠と呼ぼうか・・・・は、こう答えた

「楽」
「そんだけ!?」

思わず突っ込んだ
突っ込まざるを得ないだろうこれは

「あと、服着ると汚れる 洗うの面倒」
「そりゃそうでしょ!」

どうやらこの師匠は面倒くさがりやなようだ

「むらむらする?」
「ええ、まあ・・・・・目の毒というかなんというか・・・・」

ソファに腰かけている師匠は脚を軽く開いて
奥をわざと見せつけるように座る
思わずそれを凝視してしまい、師匠は呟いた

「よし」
「何が!?」

あかん
この人、変人だ
てか痴女だ

「と、ところでいきなり弟子認定とか早くないですかねえ?」
「話題そらした」
「うるさいですよ!?」

師匠はだるそうに膝を抱えるように座り直す
いわゆる体育座りである
もちろん、完全に丸見えである
くっ・・・・どうしてもチラ見してしまう・・・・!!

「そっちも理由はいくつかある」

そう言って彼女は誘うように軽く太ももを開く
誘っているのか? 誘っているのか!?

「まず、魔法の準備に気付いた で、危機感を持った」
「そりゃまあ、あれだけの魔法なら・・・・」
「平和ボケした馬鹿はそうでもない 魔法も何なのかわからない」

本気の殺気に気付けたかどうかってことか・・・・?

「危機管理はばっちり合格」
「そりゃどーも・・・・」

こっちは死ぬかと思ったわけだが

「あと、あの殺気の中で動けた 度胸合格」
「土下座しましたけどね・・・・」

「それとここまで辿り着けたこと」
「?」

「妨害魔法を大量に張ってた 方向感覚狂うやつとか」
「ああ、そういうのありましたねえ 解くの時間かかったけど」
「・・・・渾身の作品だったのに 普通は解けない」

まじか
確かに妙に難解だったけど

「ちょっと自信無くす」
「えっと・・・・すいません?」
「いい、あなたの資質が高かったことにする」
「アッハイ」

なるほど、諸々の判断で一応弟子にすることにしたのか

その思考に至ったとき、頬に何かの滴が付着した
「・・・・?」

疑問に思いながらその滴を指で拭う
近づけて見ても少量過ぎてその滴が何なのかわからない
しばらく指で弄んでいると、目の前の少女に声をかけられた

「・・・・・どうしたの?」
「あ、いや、なんでもないです」

いきなり顔に水が掛かった、と言っても仕方ないだろう
そう思い、再び質問する

「で、もう一つ聞きたいんですが・・・・なんで不機嫌だったんですかね」
「それについては後で話す」

そう言って彼女は席を立つ

「あなたに早速やってもらいたいことがある」






彼女を先頭にして質素だが気品ある廊下を歩く
軽い素材なのか目の前のマントがひらひらと宙を舞う

・・・・・はい、白くてぷりぷりしたお尻が
ちらちらと見えてます
こちらには気づいていないので遠慮なくガン見しています
うーむ、指でなぞったらさぞ触り心地良さそうなお尻だ
鷲掴みしたいぺろぺろしたいちゅーしたい

・・・・・あれ、変だな
自分ってこんなやつだっけ
なんか違和感を感じる

そういえば魔界には意識を変革させる魔法があったような
なんたっけ? 確かチャー・・・・

「着いた」

意識を思考の海から引き上げる
もう少しで違和感の正体に辿り着いた気がしたんだが・・・・

「ここは?」

気付けば何やら大きな扉の前に立っていた

「私の部屋 入って」

言われるままに扉を開けて中に入る
その際にまた別の、魔法的な違和感があった

そこは石造りのそこそこ広い部屋だった
床には大きな絨毯が敷いてある
だが、サイズが少々足りないらしく外側まで届いていない
恐らく、外側にある薬品棚の薬品が絨毯にかからないように、ということだろう
机の下も絨毯は無く、石の床が露出している
だが、ひとつだけ
中央に鎮座している妙に大きな天蓋付ベッドが周囲から浮いていた

「そこのベッドに横になって」

魔法使いの少女はそう言って天蓋付のベッドを指さす
そしてそちらに足を向けた瞬間

『バインド』
「!?」

両足を魔法で束縛された

彼は突然行われた暴挙に激しく抗議した

「な、なにをするんです!?」
「無理だから」

いったい何が、と言おうとして
少女の身体がゆらり、とブレた
そして、まるで透明なヴェールを剥ぐかのように
彼女自身にかけられた"認識阻害魔法"が解除された

「・・・・・は?」

認識阻害魔法?
いつから・・・・いや、まさか最初から?
これでも自分はかなり高位の魔法使いだと自負している
その自分が全く気付かなかった?
いや、その前に・・・・

目の前の少女は頬どころか耳まで真っ赤に染まり
額には汗が滲み、目尻は興奮のあまり涙が溜まっている
浮き出た鎖骨から胸の間にかけて玉のような汗が流れ、胸は荒い呼吸によって上下している
右手は下腹部に軽く当てられ、左手は秘所に挿入されている極太のバイブを奥まで押し込んでいる
無論、バイブはモーター音がうるさいほどに響き、滴る愛液を撒き散らしている
そして両脚はまるで生まれたての小鹿のように快感に震えていた

彼は、叫んだ

「痴女だああああああああああっっっ!!!???」

「痴女じゃない、仮にそうだとしても変態という名の淑女」
「いや、痴女だよ!? どう見ても変態という名の痴女だよ!!」

彼女は問答しながらじりじりとにじり寄ってくる

怖い

「あと、こうしてるのはあなたのせい」
「はい?」

「私はここに来て魔物の魔力の研究を始めた、そして実験体確保のために自分を魔物に変えた
 ただ、そこで問題が起こった」
「問題・・・・?」
「そう、性欲が信じられないほどに増大した」

魔物になったのだから性欲は増えるだろうと予測していたらしい
だが、どうやら彼女の予測以上に性欲が爆発的に膨らんだという

「結果として1日12時間以上自慰をしなければ性欲が治まらなくなった」

睡眠を取ることを考えると、ほぼ1日中である
それによって研究が全く進まなくなったのだとか

「で、あなたが訪れた時、オナニーしてた」
「は、はあ・・・・」
「久々に気合を入れて、何度も何度も何度も寸止めオナニーしてる最中だった」

そう、つまり
彼女が不機嫌だった理由は・・・・・!

「オナニー中断されてむかついてた」
「そんな理由で殺されかけたの自分!?」

なんという裏事情
自分の中の英雄像が音を立てて崩れていく気がした

「で、あなたとの会話中にムラムラきたから目の前で再開してた 気付いてなかったみたいだけど」
「そんなことのために認識阻害すんな!!!」
「もちろん寸止めしてた」
「聞いてないよ!?」
「あなたの顔に愛液かかった時は興奮しすぎて危うくイクところだった」
「あの時の滴はあんただったのか!!」

突っ込みしすぎて喉が疲れてきた
尊敬してた英雄が変態だった・・・・どうしよう

「じゃあ弟子として師匠の性欲処理を手伝ってほしい」
「断固としてお断りします!!」
「本当に?」

いや、だってこんな痴女・・・・
あれ、よく見なくてもこの人可愛いような
体型も小さめで可愛らしいし顔も整ってるし
よく考えたらドスケベってポイント高いような・・・・・






・・・・・・・はっ!?

「あんた自分に"チャーム"かけたなっ!?」
「ちっ 気づいたか」

いつ掛けたのかわからないが、自覚すればチャームの魔法は無効化される
この隙に逃げ出せば・・・・・!!

「無駄 この部屋は全力を込めた結界を張ってる 外の妨害魔法とは格が違う」
「そこまで逃がしたくないのか・・・・!?」

部屋に入った時の違和感これかよ!!
こいつどこまで周到なんだ・・・・!!

「大丈夫、私にも解けないから邪魔は入らない 1ヶ月で自然消滅するからじっくり楽しもう」



こうして、自分は1ヶ月かけて師匠の性欲処理係になったのだった
13/07/29 00:26更新 / くびなし
戻る 次へ

■作者メッセージ
お久しぶりです

前後編で分けるつもりはなかったけど
久々に書くと体力消費凄いので分ける

あんまりエロくないけど本番は後編なので許してください

ロードオブワルキューレ始めました
コミュニティによく出没します
テレサはわしの嫁

TOP | 感想 | RSS | メール登録

まろやか投稿小説ぐれーと Ver2.33