天之宮今宵渾身の一発ギャグ
そのハーレムの中において、天之宮今宵の立ち位置はやや特殊な物であった。
他の女性達が皆レスカティエ出身で、自分達の夫である青年とは人間だった時から何らかの繋がりを持っていたのに対し、彼女はその青年との直接的な接点を何も持っていなかったのだ。それどころか彼女は本来そのハーレムを叩き壊す側の存在――退魔師としてレスカティエにやって来ていたのである。青年達と今宵は敵同士だったのだ。
だが青年はそんな事を全く気にする事無く、今宵を他の妻達と同じように強く愛していた。そして女性達もまた、今宵を邪険にせず全幅の信頼と親愛を置いていた。
今宵は幸せだった。夫と愛し愛され、他の女性達と愛し愛される。淫らな欲望を思う存分解き放つ事が出来るこの世界に頭まで浸かり、堕ちて正解だったと心から思っていた。
「……それでも」
それでも時々、不安になる事がある。馬鹿馬鹿しいと鼻で笑っても、どうしても不安を拭い去る事が出来ない時がある。快楽漬けになってない僅かな時間の合間に、嫌なイメージが頭をよぎる。
しょせん余所者。
旦那様はいつかウチの事、忘れてしまうんじゃないか？
「……イヤや」
忘れられる。最悪の展開を想像して、この日も今宵は背筋を寒くさせた。
忘れられる。それだけは嫌だ。
「旦那様にだけは、忘れて欲しくない。旦那様に忘れられるのだけは御免や」
今宵は肉に溺れる雌であり、そして同時に恋に焦がれ恋に縛られる、一人の魔物娘であったのだ。
いつもならこのまま愛する旦那様の胸に飛び込んで心情を吐露し、心の穴を埋めるために平時よりもずっと激しい交わりを繰り広げる――そして途中から他の妻達も混ざって大乱交になる――のだが、この時の今宵は違っていた。
今、彼女は自分に宛てがわれた部屋の中で一人、快楽と戦っていたのだ。
「ふうぅぅ……っ♥ だ、駄目や……今日は、そのまま犯し合うのはナシや……」
愛し合いたく無い訳ではない。寧ろ今すぐにでも旦那様と始めたいくらいに息は荒く顔は紅潮し、秘所はぐちょぐちょに濡れそぼっていた。今宵の全てが男を、旦那様を求めていた。
だが、我慢だ。
「うっ、ふふふっ……今日はちょいと、一工夫……♥」
いつものように告白する→胸の中で泣く→愛しあうと言う流れではなく、今日はちょっと趣向を変えてみよう。今宵はそう考えていた。
全ては今までよりもより強く、より鮮烈に自分の姿を旦那様に刻みつけるためだ。そしてそれを実行するため、はだけた着物から見える胸の谷間の中に手を突っ込む。
全身に電流が走る。
「あっ……はあああぁぁぁぁぁぁぁぁん♥」
愛撫したわけでも無いのに、触れただけで軽く絶頂してしまった。今宵の体は既に出来上がっていたのだ。
でも、我慢。
「旦那様……待っててな、旦那様♥ 今、ウチのとっても可愛い姿、旦那様に見せてあげますから……♥」
息も絶え絶えに呟きながら今宵が谷間から手を引っこ抜く。そこにはビーズ大の赤い丸薬が指の間に挟まれていた。
「これぇっ……♥ これを、一飲みすればぁ……っ♥」
今宵はもはやガタガタだ。全身から汗を流し、快楽を待ち望む顔はドロドロに蕩け、股は自身の愛液でグチャグチャだった。
それでも旦那様に自分の姿をより深く刻み付けるため、今宵は気力を振り絞ってそれを堪えながら、そのお手製の特殊丸薬を口の中に放り込んだ。
腹の中で丸薬が溶け出し、凝縮された魔力が一斉に開放される。
その甘美で熱い魔の奔流が、我慢続きだった今宵の精神にトドメを刺した。
「はぁ……っ、ウチ、ウチ、もうイッ……ああああぁぁぁぁぁぁぁっ♥♥♥」
一際強い快楽の叫びを上げた直後、今宵を取り巻くように爆発するような勢いで桃色の煙が辺りに噴出される。
その煙が晴れた時、そこに今宵の姿は無かった。
「今宵から？」
「はい。今宵様からご主人様へ、お届け物でございます」
それから数十分後、何も知らない青年――ハーレムの主であるインキュバスは、自室の扉の前でローパーに寄生されたメイドから一つの木箱を受け取っていた。
それは両手で抱えるくらいの大きさで、上には蓋が被せられており、その蓋の上に『取扱注意』と書かれた札が貼り付けられていた。
「中身が何かとか、聞いてないよね？」
「申し訳ございません。私も詳しい事までは……」
「ああ……そうだよね。ごめん、引き止めて」
「いえ、構いませんよ。それでは、ごゆっくり」
そう言って一歩下がって深くお辞儀をし、しっかりした足取りで立ち去っていくメイドを見送りながら、青年は自室の扉を閉めた。閉めた直後に扉の向こうから、それまで耐えていた物を一気に解き放つような嬌声が聞こえてきたような気がしたが、気にしない事にした。
「しかし、今宵からか……」
ベッドの上に腰掛けながら、青年はその木箱をまじまじと見つめていた。今宵、と言う名を受けて、青年が怪訝そうに首をひねる。
「あいつ、いつもならもう来てる時間なんだよなあ……」
今宵の寂しさを埋めてやったのは一回や二回ではない。青年はもはや、いつ頃今宵がやってくるのかを大体ながらも把握していたのだ。
理屈抜きに青年は今宵を愛していた。そしてそんな今宵が苦しむ姿を、青年は見たくなかった。だから今宵がこうしてやって来る事に対して青年は悪感情を抱いてはおらず、寧ろ遠慮無く来て欲しいとさえ思っていた。
「まあ、多分何か用事で遅れてるんだろう」
多分そうだ。青年はとりあえずそう思い、目の前の木箱に意識をやった。
蓋に鍵は掛かっていない。何らかの術が掛かっている形跡もない。
「……とりあえず、開けてみるか」
慎重に、ゆっくりと蓋を持ち上げていく。
ぽっかり開いた四角い穴の中に、恐る恐る顔を近づけていく。
箱の中身が視界に収まる。
「え？」
視界に収めた瞬間、青年はその場で硬直した。
「……」
魔物。
一人の魔物が、此方に背を見せる格好で体を丸めていた。
頭には一対の獣耳。腰からは黒いふさふさの尻尾。
そしてその魔物の隣には、魔物と同じ大きさのぷっくらと膨らんだ物体が鎮座していた。その物体は中にある物を黄金色の皮で包み込んでいるように見えた。
あの皮のような物は確か、油揚げだったか？
青年はかつて今宵から聞いたジパングの話を思い出しながら、その食べ物らしき物体と魔物を交互に見比べていた。
今宵――
「お前、なにしてるんだ……？」
その魔物――普段と比べて異常なほどにちっちゃくなった今宵の姿を見下ろしながら、青年が呟いた。
その声に反応して、耳がピクリと動く。尻尾を嬉しそうに左右に揺らしながら、今宵が顔を上げて青年の顔をじっと見つめる。
「い――」
顔を真っ赤にして、今宵がか細い声で言った。
「いなりずし」
フェアリーもかくやと言わんばかりに縮小した今宵を見て、青年は脳天をハンマーでぶん殴られたような感覚を味わった。
可愛すぎる。気絶しそうな程に、目眩を覚える程に、ただひたすら可愛すぎた。
その姿は青年の脳裏にしっかりと焼き付けられた。焼きつかないほうがおかしかった。
数分後、計画通りに事が運んだ事で尻尾を更に激しく左右に振りながら、目尻に喜びの涙を溜めて今宵が言った。
「バフォメット――ミミルちゃんのお師匠様に頼んでな、ちょっと魔法を教えてもらったんです」
「魔法？」
「体がちっちゃくなる魔法です」
「でも、いくらなんでもそこまで小さくは……」
「これはその魔法とウチの術を合体させて、更に効果を倍増させた結果です。ウチ特製の、妖精大縮小魔丸薬です……♪」
「そんな凄いもの作ったのか……やっぱり、今宵は凄いな」
素直に感心しながら、青年が今宵の頭を人差し指で優しく撫でる。今宵は目を細めてその感触を受け入れ、同時に愛する人から受ける愛撫に体を震わせる。
「でも、どうしてこんな事したんだ？」
と、撫でるのを止めて青年が尋ねた。若干名残惜しそうにしながらも、脛を抱いていた手を離して目の前で指をこね合わせて今宵がそれに答えた。
「それは、その……ウチの事、忘れてもらいたくなかったから」
「忘れるって、俺がそんな事する訳ないだろ？」
「それはわかっとります！ 旦那様は優しい人や！ 優しくてあったかい、いいお人や！ それでも！……それでも不安になるんです」
「今宵……」
「ウチのことを愛してくれるんは、旦那様だけ。ウチをウチとして見てくれるんは、旦那様だけ。その旦那様から忘れられたら、ウチ、ウチ……ひっ、ひっく……」
「それで、忘れてもらいたくなくて、こんな事を？」
「ぐすっ、うっ……はい。キョーレツですやろ？」
涙の溜まった両目を腕でゴシゴシ拭い、紅潮しながらも満面の笑みで今宵が言った。
「だから旦那様、ウチの事、食べてもええんよ……？」
「今宵……」
「だってウチは、旦那様のモノだから……♥ ウチを食べてええのんは、旦那様だけだから……♥」
「今宵……ッ！」
隣にあるおいなりさんを片手でそっと押しのけ、両手で優しく包みこむように今宵の体を持ち上げる。
今宵の体は既に肌も着物もぐしょぐしょで、顔は涙と涎と快楽でグチャグチャだった。今宵を載せた青年の掌は、彼女の体液でびちゃびちゃだった。
そんな今宵の姿は、青年の理性を秒単位で容赦なくそぎ落としていった。今宵の全身から放出される魔力が、インキュバス化によってただでさえ希薄になっていた貞操観念を粉々にしていく。
恥じらいの色を濃く残した表情で、それでもじっと青年を見つめながら、妖精大のサイズになった今宵が愛の言葉を囁いた。
「だから、だからウチに、精を……♥ 体中白く塗り潰すくらい、ウチに旦那様の愛を……♥」
おくれやす……♥
とびきり淫蕩な笑顔を青年に向ける。
二人は我慢するのをやめた。
「こよいッ！ こよいッ！ こよいッ！」
「あぁん♥ ああぁぁん♥ だんなさまぁっ♥ だんなさまぁぁぁっ♥」
「こよい、今宵……ッ！ お前は、お前は俺のモノだ！ んッ、く……！ ちっちゃくなっても、お前は俺のモノだ……！」
「ああ、嬉しい♥ ウチ、旦那様のモノになってる♥ 旦那様の分身でお腹がぼってり膨らんで……ぱっちゅんぱっちゅん割れ目が叩きつけられて……！ オナホっ♥ ウチ、旦那様専用のオナホールになってるううぅぅぅぅっ♥」
「違う……！ お前は、はあ、オナホじゃない！ お前は、俺の、ぐぅっ！ ……俺の嫁だ！ 俺の妻だ！」
「――あはあああぁぁぁぁぁぁぁッ♥♥♥ 嬉しい♥ 嬉しいぃぃぃッ♥ 旦那様ぁぁっ♥ ウチ、幸せ♥ 幸せですぅぅぅぅっ♥」
「そ、そんなに、締め付け……っ！」
「出るんやね♥ 出してまうんですねっ♥ いいですよ♥ ウチの膣内に♥ ナカに白いの、いっぱい出してぇぇぇぇぇぇぇっ♥♥♥」
いなりずしは、青年によって美味しくいただかれましたとさ。
めでたしめでたし。
他の女性達が皆レスカティエ出身で、自分達の夫である青年とは人間だった時から何らかの繋がりを持っていたのに対し、彼女はその青年との直接的な接点を何も持っていなかったのだ。それどころか彼女は本来そのハーレムを叩き壊す側の存在――退魔師としてレスカティエにやって来ていたのである。青年達と今宵は敵同士だったのだ。
だが青年はそんな事を全く気にする事無く、今宵を他の妻達と同じように強く愛していた。そして女性達もまた、今宵を邪険にせず全幅の信頼と親愛を置いていた。
今宵は幸せだった。夫と愛し愛され、他の女性達と愛し愛される。淫らな欲望を思う存分解き放つ事が出来るこの世界に頭まで浸かり、堕ちて正解だったと心から思っていた。
「……それでも」
それでも時々、不安になる事がある。馬鹿馬鹿しいと鼻で笑っても、どうしても不安を拭い去る事が出来ない時がある。快楽漬けになってない僅かな時間の合間に、嫌なイメージが頭をよぎる。
しょせん余所者。
旦那様はいつかウチの事、忘れてしまうんじゃないか？
「……イヤや」
忘れられる。最悪の展開を想像して、この日も今宵は背筋を寒くさせた。
忘れられる。それだけは嫌だ。
「旦那様にだけは、忘れて欲しくない。旦那様に忘れられるのだけは御免や」
今宵は肉に溺れる雌であり、そして同時に恋に焦がれ恋に縛られる、一人の魔物娘であったのだ。
いつもならこのまま愛する旦那様の胸に飛び込んで心情を吐露し、心の穴を埋めるために平時よりもずっと激しい交わりを繰り広げる――そして途中から他の妻達も混ざって大乱交になる――のだが、この時の今宵は違っていた。
今、彼女は自分に宛てがわれた部屋の中で一人、快楽と戦っていたのだ。
「ふうぅぅ……っ♥ だ、駄目や……今日は、そのまま犯し合うのはナシや……」
愛し合いたく無い訳ではない。寧ろ今すぐにでも旦那様と始めたいくらいに息は荒く顔は紅潮し、秘所はぐちょぐちょに濡れそぼっていた。今宵の全てが男を、旦那様を求めていた。
だが、我慢だ。
「うっ、ふふふっ……今日はちょいと、一工夫……♥」
いつものように告白する→胸の中で泣く→愛しあうと言う流れではなく、今日はちょっと趣向を変えてみよう。今宵はそう考えていた。
全ては今までよりもより強く、より鮮烈に自分の姿を旦那様に刻みつけるためだ。そしてそれを実行するため、はだけた着物から見える胸の谷間の中に手を突っ込む。
全身に電流が走る。
「あっ……はあああぁぁぁぁぁぁぁぁん♥」
愛撫したわけでも無いのに、触れただけで軽く絶頂してしまった。今宵の体は既に出来上がっていたのだ。
でも、我慢。
「旦那様……待っててな、旦那様♥ 今、ウチのとっても可愛い姿、旦那様に見せてあげますから……♥」
息も絶え絶えに呟きながら今宵が谷間から手を引っこ抜く。そこにはビーズ大の赤い丸薬が指の間に挟まれていた。
「これぇっ……♥ これを、一飲みすればぁ……っ♥」
今宵はもはやガタガタだ。全身から汗を流し、快楽を待ち望む顔はドロドロに蕩け、股は自身の愛液でグチャグチャだった。
それでも旦那様に自分の姿をより深く刻み付けるため、今宵は気力を振り絞ってそれを堪えながら、そのお手製の特殊丸薬を口の中に放り込んだ。
腹の中で丸薬が溶け出し、凝縮された魔力が一斉に開放される。
その甘美で熱い魔の奔流が、我慢続きだった今宵の精神にトドメを刺した。
「はぁ……っ、ウチ、ウチ、もうイッ……ああああぁぁぁぁぁぁぁっ♥♥♥」
一際強い快楽の叫びを上げた直後、今宵を取り巻くように爆発するような勢いで桃色の煙が辺りに噴出される。
その煙が晴れた時、そこに今宵の姿は無かった。
「今宵から？」
「はい。今宵様からご主人様へ、お届け物でございます」
それから数十分後、何も知らない青年――ハーレムの主であるインキュバスは、自室の扉の前でローパーに寄生されたメイドから一つの木箱を受け取っていた。
それは両手で抱えるくらいの大きさで、上には蓋が被せられており、その蓋の上に『取扱注意』と書かれた札が貼り付けられていた。
「中身が何かとか、聞いてないよね？」
「申し訳ございません。私も詳しい事までは……」
「ああ……そうだよね。ごめん、引き止めて」
「いえ、構いませんよ。それでは、ごゆっくり」
そう言って一歩下がって深くお辞儀をし、しっかりした足取りで立ち去っていくメイドを見送りながら、青年は自室の扉を閉めた。閉めた直後に扉の向こうから、それまで耐えていた物を一気に解き放つような嬌声が聞こえてきたような気がしたが、気にしない事にした。
「しかし、今宵からか……」
ベッドの上に腰掛けながら、青年はその木箱をまじまじと見つめていた。今宵、と言う名を受けて、青年が怪訝そうに首をひねる。
「あいつ、いつもならもう来てる時間なんだよなあ……」
今宵の寂しさを埋めてやったのは一回や二回ではない。青年はもはや、いつ頃今宵がやってくるのかを大体ながらも把握していたのだ。
理屈抜きに青年は今宵を愛していた。そしてそんな今宵が苦しむ姿を、青年は見たくなかった。だから今宵がこうしてやって来る事に対して青年は悪感情を抱いてはおらず、寧ろ遠慮無く来て欲しいとさえ思っていた。
「まあ、多分何か用事で遅れてるんだろう」
多分そうだ。青年はとりあえずそう思い、目の前の木箱に意識をやった。
蓋に鍵は掛かっていない。何らかの術が掛かっている形跡もない。
「……とりあえず、開けてみるか」
慎重に、ゆっくりと蓋を持ち上げていく。
ぽっかり開いた四角い穴の中に、恐る恐る顔を近づけていく。
箱の中身が視界に収まる。
「え？」
視界に収めた瞬間、青年はその場で硬直した。
「……」
魔物。
一人の魔物が、此方に背を見せる格好で体を丸めていた。
頭には一対の獣耳。腰からは黒いふさふさの尻尾。
そしてその魔物の隣には、魔物と同じ大きさのぷっくらと膨らんだ物体が鎮座していた。その物体は中にある物を黄金色の皮で包み込んでいるように見えた。
あの皮のような物は確か、油揚げだったか？
青年はかつて今宵から聞いたジパングの話を思い出しながら、その食べ物らしき物体と魔物を交互に見比べていた。
今宵――
「お前、なにしてるんだ……？」
その魔物――普段と比べて異常なほどにちっちゃくなった今宵の姿を見下ろしながら、青年が呟いた。
その声に反応して、耳がピクリと動く。尻尾を嬉しそうに左右に揺らしながら、今宵が顔を上げて青年の顔をじっと見つめる。
「い――」
顔を真っ赤にして、今宵がか細い声で言った。
「いなりずし」
フェアリーもかくやと言わんばかりに縮小した今宵を見て、青年は脳天をハンマーでぶん殴られたような感覚を味わった。
可愛すぎる。気絶しそうな程に、目眩を覚える程に、ただひたすら可愛すぎた。
その姿は青年の脳裏にしっかりと焼き付けられた。焼きつかないほうがおかしかった。
数分後、計画通りに事が運んだ事で尻尾を更に激しく左右に振りながら、目尻に喜びの涙を溜めて今宵が言った。
「バフォメット――ミミルちゃんのお師匠様に頼んでな、ちょっと魔法を教えてもらったんです」
「魔法？」
「体がちっちゃくなる魔法です」
「でも、いくらなんでもそこまで小さくは……」
「これはその魔法とウチの術を合体させて、更に効果を倍増させた結果です。ウチ特製の、妖精大縮小魔丸薬です……♪」
「そんな凄いもの作ったのか……やっぱり、今宵は凄いな」
素直に感心しながら、青年が今宵の頭を人差し指で優しく撫でる。今宵は目を細めてその感触を受け入れ、同時に愛する人から受ける愛撫に体を震わせる。
「でも、どうしてこんな事したんだ？」
と、撫でるのを止めて青年が尋ねた。若干名残惜しそうにしながらも、脛を抱いていた手を離して目の前で指をこね合わせて今宵がそれに答えた。
「それは、その……ウチの事、忘れてもらいたくなかったから」
「忘れるって、俺がそんな事する訳ないだろ？」
「それはわかっとります！ 旦那様は優しい人や！ 優しくてあったかい、いいお人や！ それでも！……それでも不安になるんです」
「今宵……」
「ウチのことを愛してくれるんは、旦那様だけ。ウチをウチとして見てくれるんは、旦那様だけ。その旦那様から忘れられたら、ウチ、ウチ……ひっ、ひっく……」
「それで、忘れてもらいたくなくて、こんな事を？」
「ぐすっ、うっ……はい。キョーレツですやろ？」
涙の溜まった両目を腕でゴシゴシ拭い、紅潮しながらも満面の笑みで今宵が言った。
「だから旦那様、ウチの事、食べてもええんよ……？」
「今宵……」
「だってウチは、旦那様のモノだから……♥ ウチを食べてええのんは、旦那様だけだから……♥」
「今宵……ッ！」
隣にあるおいなりさんを片手でそっと押しのけ、両手で優しく包みこむように今宵の体を持ち上げる。
今宵の体は既に肌も着物もぐしょぐしょで、顔は涙と涎と快楽でグチャグチャだった。今宵を載せた青年の掌は、彼女の体液でびちゃびちゃだった。
そんな今宵の姿は、青年の理性を秒単位で容赦なくそぎ落としていった。今宵の全身から放出される魔力が、インキュバス化によってただでさえ希薄になっていた貞操観念を粉々にしていく。
恥じらいの色を濃く残した表情で、それでもじっと青年を見つめながら、妖精大のサイズになった今宵が愛の言葉を囁いた。
「だから、だからウチに、精を……♥ 体中白く塗り潰すくらい、ウチに旦那様の愛を……♥」
おくれやす……♥
とびきり淫蕩な笑顔を青年に向ける。
二人は我慢するのをやめた。
「こよいッ！ こよいッ！ こよいッ！」
「あぁん♥ ああぁぁん♥ だんなさまぁっ♥ だんなさまぁぁぁっ♥」
「こよい、今宵……ッ！ お前は、お前は俺のモノだ！ んッ、く……！ ちっちゃくなっても、お前は俺のモノだ……！」
「ああ、嬉しい♥ ウチ、旦那様のモノになってる♥ 旦那様の分身でお腹がぼってり膨らんで……ぱっちゅんぱっちゅん割れ目が叩きつけられて……！ オナホっ♥ ウチ、旦那様専用のオナホールになってるううぅぅぅぅっ♥」
「違う……！ お前は、はあ、オナホじゃない！ お前は、俺の、ぐぅっ！ ……俺の嫁だ！ 俺の妻だ！」
「――あはあああぁぁぁぁぁぁぁッ♥♥♥ 嬉しい♥ 嬉しいぃぃぃッ♥ 旦那様ぁぁっ♥ ウチ、幸せ♥ 幸せですぅぅぅぅっ♥」
「そ、そんなに、締め付け……っ！」
「出るんやね♥ 出してまうんですねっ♥ いいですよ♥ ウチの膣内に♥ ナカに白いの、いっぱい出してぇぇぇぇぇぇぇっ♥♥♥」
いなりずしは、青年によって美味しくいただかれましたとさ。
めでたしめでたし。
12/08/20 11:42更新 / 蒲焼