女王陛下の高貴なる愛の蜜事〜浴場編〜
一途な恋に生きる女と言うのは、えてして怖い物知らずである。自分の愛する相手の事を何よりも優先して考え、自分やそれ以外の物は全て棚の上に置いて全く注意を向けなくなる。周囲の視線や自身の羞恥さえも無視して、ただひたすらに己の愛情をその相手に注ぐのである。
「ふう……」
そして今、こうしてレスカティエ城内に設えられた大浴場にて一人湯船に浸かり、汗を流していた魔物娘――フランツィスカ・ミステル・レスカティエもその一人であった。
彼女の頭の中は朝起きてから夜寝るまで――それこそ二十四時間三百六十五日、常に愛する夫の事でいっぱいだった。夫の事を考えない事など一度も無く、彼女の思考は夫である一人の青年の事を第一にして回っていたのだった。
もちろん、彼女は自分の属しているハーレムの他の魔物娘達の事も大切に思っていたし、彼女達を邪険に扱ったりはしなかった。だがそれでも、フランツィスカの世界の中心にいるのはその青年であり、それに比べれば――同じ男を愛する妻達には非常に申し訳ないのだが――自分やその他の面々はどうしても二の次となってしまっていた。もっとも、その考えは伴侶を持つ魔物娘としては当然の思考であり、負い目を感じる必要は無かったのだが。
「……」
どうすれば彼をより喜ばせられるのだろう? どうすれば彼をより気持ちよくさせてあげられるのだろう? フランツィスカは一日の大半をそれを考える事に費やし、そしてこうして湯船に浸かっている間も、彼女はその思考を止めようとはしなかった。この時彼女はとても難しい表情を浮かべていたが、彼女にとってそれを考える事は別に苦痛では無かった。寧ろそれは新たな快楽のあり方を模索し提供する事を可能とする、とても有意義な事であった。
「ううん……とは言いましても……」
しかし、どれだけ頭を捻っても出ない時は出ない物である。両手を湯船の中から出して顔を拭うが、何の閃きも浮かばない。背中から触手を何本も現出させ、同じように湯船から顔を出させても、何も思いつかない。
「アイデアを練るというのは、とても難しいものなのですわね……リャナンシー達が羨ましいですわ」
顔を出した触手の一本を手に取り、それに愛しげに頬ずりしながらフランツィスカが呟く。クイーンローパーとしての自らの魔力とテクニックを持ってすれば、夫である青年を悦ばせる事自体はさして難しい事では無い。だが彼女は、それに安心しきってそこにあぐらをかくつもりは毛頭無かった。より夫を愛し、より夫に愛され、共に愛のより深みへと堕ちていく――魔物娘の妻としての彼女の矜持が、停滞という安易な考えを許さなかったのだ。
より素晴らしい快楽を。より素晴らしい幸せを。互いの愛を互いの身と心に刻みつける。より深みに沈み、貪りあうような愛を――。
「――沈む?」
その時、フランツィスカの脳に電流が走る。
「そうですわっ!」
思わず立ち上がり、発見の喜びのままに声を張り上げる。背中の触手を生やしたまま、そして前を隠そうともせずに、彼女は直立のままでその頭の中で閃いた考えを一心不乱に形にしていく。パズルのピースがどんどんと組み合わさっていき、その全体像が段々と精細になって行く計画を俯瞰するフランツィスカの喜びと自信を更に加速させていく。
「これはいい。これは良い考えですわ。これならば、あの人を悦ばせる事も出来るはず……!」
やがて頭の中で完成したプランを前に握り拳を作り、自信満々に言い放つ。その顔は歓喜と興奮で激しく紅潮しており、かつての病弱な王女の姿はそこには微塵も存在していなかった。
「さて、そうと決まれば早速行動開始ですわ。まずはあの人に手紙を書いて……」
まるで悪戯を考えついた子供の様にウキウキした様子でそんな事を言いながら、フランツィスカは軽い足取りで湯船から上がり、そして背中から生やした触手を全身に絡み付けて大事な部分を隠しながら浴場を後にした。
件の青年に一通の手紙が届くのは、それから数十分後のことだった。
「確か、ここだったか……」
そして数十分後、『浴場にて待っています』とだけ書かれたフランツィスカからの手紙を受け取った青年は、その手紙の要求の通りに浴場へと向かっていた。そこは先ほどまでフランツィスカが使っていた場所であった。
「フランから誘ってくるなんて珍しいな。ちょっとドキドキしてきた」
ここで自分の妻は何をしてくれるのだろうか? 未知のイベントを前にして期待と興奮に胸を高鳴らせながら――魔物娘の妻のする事を嫌がる夫など居ない――青年が脱衣所で服を脱いで全裸になる。そしてゆっくりと風呂場に繋がる戸を開けてその中を目の当たりにした時、青年は思わずその身を硬直させた。
「あら――お待ちしておりましたわ♪」
大浴場の真ん中にある石畳で出来た広大な湯船の中心には、彼と同じく全裸のフランツィスカがその腰から上を水面の上に露出させ、満面の笑みを浮かべて立っていた。その穢れの無い裸体は酷く魅惑的で、胸の中に潜む愛欲を滾らせるに十分な威力を持っていたが、彼の身を石にさせた原因はそれでは無かった。
「……ここ、お風呂場、だよな……?」
「ええ、その通りですわ」
不思議そうに尋ねる青年に、さらりとフランツィスカが返す。そしてその答えを聞いてなおも呆然とした顔で湯船を見渡す青年を見て、クスクス笑いながらフランツィスカが言った。
「ほんの少し改装したのですけれど、いかがでしょうか?」
壁や天井、そして石畳の床は僅かに湿り、清潔に保たれていた。ジパング製の風呂桶やシャワーも綺麗に片付けられ整頓されていた。そこはそれまで彼らが使用している浴場と何ら変わらない、憩いの場としての姿を保っていたのだった――フランツィスカが腰まで浸かっている湯船の中が、お湯の代わりに触手で溢れかえっていた以外は。
「フランツィスカ特製、触手風呂ですわ」
上体を反らしてたわわに実った胸を揺らし、フランツィスカが得意げに言ってのける。青年はその姿を見て「凄い事したな」と困惑気味に苦笑した後、躊躇うこと無く――前を隠すこともせずにフランツィスカの元へと歩み寄った。そして湯船の縁で立ち止まり、そこで片膝をついて腰を下ろしてから穏やかな顔でフランツィスカに尋ねた。
「ところで、そのお風呂、どんな効用があるのかな?」
触手を掻き分け、フランツィスカが青年の元に近づく。そして彼の眼前で顔を真っ赤にして、口の近くで指をこね合わせながらフランツィスカが答える。
「それはもちろん、あなたを幸せにする効果がありますわ……❤」
フランツィスカが満面の笑みを浮かべる。その我が妻ながら美しすぎる笑顔を見て息をのんだ青年に向けて、フランツィスカが右手を差し出す。
「わたくしと一緒に、楽しみましょう?」
その手を取った青年の手を、湯船から這い上がってきた触手が絡め取る。
「入っていいかい?」
「はい❤ どうぞいらっしゃってください」
フランツィスカに引かれるままに、青年はその肉が蠢く只中へと足を踏み入れた。
「ああ……すごい……」
その中は言語を絶する気持ちよさだった。
「触手が……フランが全身に絡みついて、全身を抱きしめてくれてる……凄い。凄い気持ちいいよ……」
浴槽の中を埋め尽くす何十本もの触手が青年の体に絡みつく。力任せに締め上げるのでは無く、その体を労るようにやんわりと包み込んでいく。それらの触手達によって自分の体は勝手に浮き上がり、力を抜いてそれらに身を任せれば更に多くの触手が全身に絡みつく。
その触手の一本一本がにゅるにゅる肌をこすり、くすぐったさにも似た快楽を全身にもたらす。そしてそれと同時に触手達は、まるで自分が赤子に戻って、その全身を母親の胸の中に抱き留められているかのような暖かさをも青年に与えていた。
ただ絶頂を味わうだけでは無い、快感と同時に安堵を覚えるその暖かな触手の海の中に首から下を完全に沈め、青年は半ば無意識のうちに満ち足りた笑みを浮かべていた。そしてその満足しきった表情を間近で見つめていたフランツィスカも、とても嬉しそうに笑みを浮かべた。
「どうですか? 気持ちいいですか?」
「うん。凄い気持ちいい。フランを全身で感じられて、とっても幸せな気分だよ」
「まあ、本当ですの?」
顔をぱあっと輝かせて、フランツィスカが青年に詰め寄る。その頬を優しく撫でながら、青年が微笑んで言った。
「フランに愛されてるっていうのが凄い伝わってくる。最高だよ」
「お礼などいりませんわ。あなたが喜んでくれれば、わたくしはそれだけで満足なのですから」
新たな触手の一本が青年の額にかかった前髪をそっと掻き分け、露出した額をフランツィスカが優しく撫でる。
「もっともっと、わたくしで喜んでくださいまし。あなたの幸せそうなお顔を見るのが、わたくしにとって何よりの幸せなのですから」
「なんか悪いな。フランに面倒かけっぱなしで」
「いいえ、お気になさらず。わたくしなりの『ご奉仕』、どうか存分に受け取ってくださいな♪」
「……そうか。じゃあお言葉に甘えて、全部もらっちゃおうかな」
「はい❤ お腹いっぱい味わってくださいね❤」
全身に巻き付く触手を通して青年の体温を感じつつ、フランツィスカが優しく微笑む。その優しくも王族としての気高さも滲ませた気高い笑みと触手達の柔らかく暖かい肌触りを前にして、青年が更に体の力を抜いてリラックスした表情を浮かべる。フランツィスカはそんな夫の満ち足りた表情を見て、思わず熱っぽい吐息を漏らした。
「ねえ、フラン」
その吐息を頬で受けた青年が、フランツィスカの眼を見ながら優しく言った。
「ひょっとして、もう我慢出来ない?」
突然の言葉にフランツィスカが息をのむ。だがすぐにその強張った表情を淫らに蕩けさせ、口の端から涎を垂らしながらそれに答えた。
「は、はい。その、あなたの嬉しそうなお顔を見ていたら、わたくし……もう我慢が」
フランツィスカがそこまで言いかけた所で青年がそれまで彼女の頬に当てていた手をその後頭部に回し、彼女の頭を強引に引き寄せる。
「え、なに」
そして驚きで半開きになったその口を、自分の唇で強引に塞ぐ。突然の事に眼を白黒させているフランツィスカを差し置いて無防備な口内に舌をねじ込み、その中を思う存分荒らしまくる。
「ん……ふぅっ、んむ……」
「ん……ちゅ、くちゅ、ちゅっ……」
やがて口への奇襲を終えて青年が顔を離すと、彼の目の前には完全に『出来上がっていた』一人の魔物娘の姿があった。顔は茹で蛸のように真っ赤になり、両目は快楽に蕩けきってその涙の溜まった目尻をトロンと垂れ下げ、半開きになった口からはそれまでよりもずっと大量の涎を垂れ流していた。彼女そのものである触手達もまた、青年の不意打ちを受けて激しくざわめいていた。
「ひ、ひひょう……ふいうちなんて、ひきょうれすわ……っ」
まったく呂律の回らない口調でフランツィスカが青年を糾弾する。だが彼の体に絡みつく触手達は青年を締め上げるどころか、それまでよりも一層激しく彼の体を愛撫し、より一層彼を喜ばせようとしていた。そんな触手の感触を――愛する妻からの愛撫を受けて心地よさそうに笑みをこぼしながら、青年がフランツィスカに言った。
「本当言うと、俺もしたいんだ」
「あ――」
思考が止まる。
「いいよね?」
「……ッ」
ああ、この人は卑怯だ。卑怯で強引な、イケナイ人。
「は、はい……わたくしに、あなたの」
でも好き。強引でも優しい、あなたが大好き。
「あなたの愛を……精を……」
大好きなあなたを、わたくしにください。
「……うん」
フランツィスカの告白を受け止め、青年が頷く。その優しい眼差しを全身に感じて軽く身を震わせながら、フランツィスカが今度は自分から唇を近づけていく。
二つの体が重なり合い、互いに両手を回して相手の体を抱きしめ合う。更に周囲から立ち上がった触手達がその二人の体に巻き付き、二人を更に密着させる。何本もの触手に包み込まれ、やがてそこには一つの卵のような物体が姿を表した。
その表面のてらてらとした、どす黒く不気味な卵は、やがて何の抵抗も無しに触手の底なし沼の中へと沈んでいった。そしてそれが完全に飲み込まれ、後には小刻みに蠢く『触手溜まり』だけがそこに残った。
「もう、フラン。くすぐったいよ」
「うふふ、先程の不意打ちの仕返しですわ❤」
その触手の海の中、真っ黒な卵の中で、青年とフランツィスカは存分に愛を交わし合っていた。この時フランツィスカは己の四肢と周囲の触手を存分に操って彼の体へ愛撫を続け、容赦なく快楽を与えて続けていたのだ。青年も負けじとフランツィスカの体に触れるが、完全アウェーのこの場では彼に勝ち目は無かった。
「ほら、ここが良いのでしょう? 観念なさって❤」
「そ、そんな、同時に……!」
背中や四肢、そして頬や腹に至るまで、あらゆる所に触手を巻き付けその体を蜜まみれにする。その白く美味しそうにデコレートされた体を時に激しく締め付け、時に柔らかく包み込む。緩急をつけて相手の余裕を崩し、その脳を快楽でドロドロに溶かす。さらには手足でその蜜を更に広く塗りたくり、それを舐め取るように肌に舌を這わせていく。
そこには今まで青年が受けていたような慈しみの色は無く、ただ相手を犯し尽くし、身も心も快楽でドロドロに溶かす魔物娘としての本性が露わになっていた。フランツィスカ本人が胸の内に秘めていたサド気質もそこに混じっていた。
「フラン、も、もうやめてくれ。これ以上されたら俺、もう抑え……!」
「言ったでしょう? これは先程の仕返しだと。どうぞ存分によがり狂って、はしたないお顔をわたくしに見せてくださいませ❤」
「そ、そんな、だけど」
「それに、こちらの方もこんなに堅くして……これは救済が必要ですわ……ねっ❤」
そして無防備になった頃合いを見計らい、雄々しくそそり立つ彼の肉棒に触手の一本を巻き付ける。
「う、うああ――っ!」
大成功。それまでの予測不能な責めに心の平衡を崩していた青年にとって、それはまさに大打撃であった。爆発寸前の肉棒を必死に抑えつけようとする青年の姿を見てフランツィスカが愉快そうに笑みをこぼし、青年はそんな彼女の姿を視界に映しながら息も絶え絶えに彼女に言った。
「あ、あう、フラン、そんなされたら……!」
「いいんですのよ、出してしまわれても? さあ、お出しになって。あなたの精液、『わたくし』に存分にかけてくださいな❤」
クスクス。クスクス。フランツィスカが小悪魔の如き嗜虐的な笑みを浮かべ、触手達の動きをより活発にさせていく。そして青年もまた、それに釣られるようにして自分から腰を小刻みに上下に振り、自ら得られる快楽を少しでも多くしようと無駄な足掻きを始めた。
「フラン、フラン……!」
「ああ、可愛いですわっ。一心不乱に射精しようと無様に腰を振るあなたのお姿、とっても可愛らしいですわ!」
「フラン、そ、そんなにいじめないでくれ……っ!」
「ふ、ふふっ。何を今更。あなたは虐められて喜ぶ変態なのですよ? 触手に巻き付かれて、触手に虐められて、よがってしまう変態なのですわよ? もうお認めになられたらどうです?」
頬を真っ赤にし、サディスティックな笑い声を上げながらフランツィスカが青年の頬をぺちぺちと軽く叩く。
「ほらほら、変態さん❤ 遠慮無く射精してしまいなさい❤ 我慢なさらずに、わたくしにかけてしまいなさい❤」
「フラン、フラン、フラ――!」
そこまで苦しげに言葉を漏らした次の瞬間、青年の体が腰を浮かせた体勢のまま一瞬硬直する。そしてその直後、限界に達した肉棒から大量の白濁液が鉄砲水の如き勢いで噴き出された。
「あ――ああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ❤」
愛しい人の精液が自分そのものである触手にびちゃびちゃとぶち当たる。その感触はフランツィスカの脳に途方も無い量の電流を迸らせ、まともな思考も取れないままに桃色の靄が彼女の頭をいっぱいにする。
「あはああぁぁ……あなたの、いっぱい、いっぱいぃぃぃ……」
夫が射精してくれた。自分の体で喜んでくれた。もはやそれまでの威勢の良さは完全に消え去っていた。フランツィスカはその精液のかかった触手を自分の元に呼び寄せてそれを咥え込み、口の中で激しくストロークさせながら青年に見せつけるようにしてそこにこびりついた精液を残さず舐め取っていく。
「じゅぷ、くちゅ、ぴちゅ……はあ、あなたの、せーえき、せーえきぃ……くちゅ……」
そんなフランツィスカの痴態を目にして、荒々しく肩で息をしていた青年は、一つ深呼吸をした後でニヤリと昏い笑みを浮かべた。
「フラン」
「え――きゃあ!」
そして彼女の名前を呼び注意が逸れた一瞬の隙を突いて、青年はその腕を掴んで引っ張り寄せ、力任せに抱きしめた。柔らかく暖かなフランツィスカの体の感触と体温、そして彼女の体から漂ってくる芳香と魔力によって自分の分身が再び力を取り戻していくのを認識しながら、青年はフランツィスカの耳元に口を寄せて小さく呟いた。
「やってくれたな」
「あ、あの、それは」
「今度は、俺の番だからな」
「あ――」
攻守が逆転した。拒絶を許さぬ青年の宣言に、周囲の触手も完全に沈黙していた。
「フラン、いいな?」
「……はい。おねがい、しますわ――❤」
青年の言葉に応えるように、フランツィスカが自分から両足を開いてしとどに濡れたその秘裂を露わにする。フランツィスカの下についていた青年が位置を調整するように身をよじらせる。
すっかり堅さを取り戻した肉棒の先と、すっかり濡れそぼって美味しそうに蜜を垂らしていた秘裂の先が擦れ合う。それだけで、フランツィスカの頭はますます快楽に蕩けていった。
「ああん❤ ふあああああんっ❤」
「なんだ、もうイったのか? フランは気が早いな」
「だ、だって、あなたのおちんぽ、とっても美味しいから❤ とっても、とってもおいしいからぁぁっ❤」
「そうか。そんなにいいのか。だったら」
相手の腰を両手でがっしり掴んで固定したまま、体を下に動かして肉棒を秘裂から離す。一気に悲しげな表情を浮かべたフランツィスカに向けて青年が言った。
「もっと味わってくれるか?」
もう余裕なんて無かった。フランツィスカはただ感情のままに、己の思いの丈をぶちまけた。
「はい❤ はいっ❤ ください、あなたのおちんぽ、おちんぽ欲しいっ❤ おちんぽたべさせてくださいぃぃぃぃっ❤」
「よし、じゃあ――行くぞッ!」
相手の調子も待たずに、青年が一息に秘裂の奥へと肉棒をぶち込む。
「ひぎいぃぃっ!?」
亀頭の先が子宮口に激突し、フランツィスカが一瞬白目を剥く。
「あぎっ、が、うあっ」
大口を開けてアヘ顔を晒し、息もままならぬほどに呻き声を上げる。
「ぎっ、あっ、ひいぃん❤」
「――お、おい、フラン?」
「あっ❤ ああっ❤ ひぃいっ❤」
やばい。やり過ぎた。その壮絶なイキ様を前にして青年が我に返り、とてもバツの悪い表情を浮かべる。だがそんな気まずい顔をしていた青年の頬を、不意に伸ばされたフランツィスカの手が優しく撫でた。
「フラン――?」
「ひっ、ひぃ……わ、わたくしはっ、だいじょぶ、ですからぁ……っ❤」
「大丈夫って……」
なおも苦しそうな顔をしていた青年の頬を再度撫でる。その時のフランツィスカはなおも大きく肩で息をしていたが、その表情は既に穏やかな物へと変わっていた。
「動かして、くださいっ❤ あなたのおちんぽ、もっと、もっと激しく動かしてくださいっ❤」
フランツィスカが甘く囁く。それと同時に自分から腰を左右に揺らし、大丈夫だというアピールを彼に見せた。だがそれ以上の激しい動きはせず、その主導権は青年に握らせたままであった。
「わたくしをめちゃくちゃにしてください❤ あなたのことを、もっと感じさせてください❤」
「――いいんだな?」
青年が確認する。フランツィスカはキスでそれに応えた。
「ぷちゅ、くちゅ、ちゅ……ぷはっ」
「あ――」
「こ、これが、答えですわ❤ さあ、あなた。わたくしを……」
食べてくださいませ❤
この後、触手風呂の中で散々犯し合った後、湯船の縁に座り合ってピロートークをしていた所をミミルに発見され、ちょっとした騒動に発展するのだが、それはまた別のお話。
「ふう……」
そして今、こうしてレスカティエ城内に設えられた大浴場にて一人湯船に浸かり、汗を流していた魔物娘――フランツィスカ・ミステル・レスカティエもその一人であった。
彼女の頭の中は朝起きてから夜寝るまで――それこそ二十四時間三百六十五日、常に愛する夫の事でいっぱいだった。夫の事を考えない事など一度も無く、彼女の思考は夫である一人の青年の事を第一にして回っていたのだった。
もちろん、彼女は自分の属しているハーレムの他の魔物娘達の事も大切に思っていたし、彼女達を邪険に扱ったりはしなかった。だがそれでも、フランツィスカの世界の中心にいるのはその青年であり、それに比べれば――同じ男を愛する妻達には非常に申し訳ないのだが――自分やその他の面々はどうしても二の次となってしまっていた。もっとも、その考えは伴侶を持つ魔物娘としては当然の思考であり、負い目を感じる必要は無かったのだが。
「……」
どうすれば彼をより喜ばせられるのだろう? どうすれば彼をより気持ちよくさせてあげられるのだろう? フランツィスカは一日の大半をそれを考える事に費やし、そしてこうして湯船に浸かっている間も、彼女はその思考を止めようとはしなかった。この時彼女はとても難しい表情を浮かべていたが、彼女にとってそれを考える事は別に苦痛では無かった。寧ろそれは新たな快楽のあり方を模索し提供する事を可能とする、とても有意義な事であった。
「ううん……とは言いましても……」
しかし、どれだけ頭を捻っても出ない時は出ない物である。両手を湯船の中から出して顔を拭うが、何の閃きも浮かばない。背中から触手を何本も現出させ、同じように湯船から顔を出させても、何も思いつかない。
「アイデアを練るというのは、とても難しいものなのですわね……リャナンシー達が羨ましいですわ」
顔を出した触手の一本を手に取り、それに愛しげに頬ずりしながらフランツィスカが呟く。クイーンローパーとしての自らの魔力とテクニックを持ってすれば、夫である青年を悦ばせる事自体はさして難しい事では無い。だが彼女は、それに安心しきってそこにあぐらをかくつもりは毛頭無かった。より夫を愛し、より夫に愛され、共に愛のより深みへと堕ちていく――魔物娘の妻としての彼女の矜持が、停滞という安易な考えを許さなかったのだ。
より素晴らしい快楽を。より素晴らしい幸せを。互いの愛を互いの身と心に刻みつける。より深みに沈み、貪りあうような愛を――。
「――沈む?」
その時、フランツィスカの脳に電流が走る。
「そうですわっ!」
思わず立ち上がり、発見の喜びのままに声を張り上げる。背中の触手を生やしたまま、そして前を隠そうともせずに、彼女は直立のままでその頭の中で閃いた考えを一心不乱に形にしていく。パズルのピースがどんどんと組み合わさっていき、その全体像が段々と精細になって行く計画を俯瞰するフランツィスカの喜びと自信を更に加速させていく。
「これはいい。これは良い考えですわ。これならば、あの人を悦ばせる事も出来るはず……!」
やがて頭の中で完成したプランを前に握り拳を作り、自信満々に言い放つ。その顔は歓喜と興奮で激しく紅潮しており、かつての病弱な王女の姿はそこには微塵も存在していなかった。
「さて、そうと決まれば早速行動開始ですわ。まずはあの人に手紙を書いて……」
まるで悪戯を考えついた子供の様にウキウキした様子でそんな事を言いながら、フランツィスカは軽い足取りで湯船から上がり、そして背中から生やした触手を全身に絡み付けて大事な部分を隠しながら浴場を後にした。
件の青年に一通の手紙が届くのは、それから数十分後のことだった。
「確か、ここだったか……」
そして数十分後、『浴場にて待っています』とだけ書かれたフランツィスカからの手紙を受け取った青年は、その手紙の要求の通りに浴場へと向かっていた。そこは先ほどまでフランツィスカが使っていた場所であった。
「フランから誘ってくるなんて珍しいな。ちょっとドキドキしてきた」
ここで自分の妻は何をしてくれるのだろうか? 未知のイベントを前にして期待と興奮に胸を高鳴らせながら――魔物娘の妻のする事を嫌がる夫など居ない――青年が脱衣所で服を脱いで全裸になる。そしてゆっくりと風呂場に繋がる戸を開けてその中を目の当たりにした時、青年は思わずその身を硬直させた。
「あら――お待ちしておりましたわ♪」
大浴場の真ん中にある石畳で出来た広大な湯船の中心には、彼と同じく全裸のフランツィスカがその腰から上を水面の上に露出させ、満面の笑みを浮かべて立っていた。その穢れの無い裸体は酷く魅惑的で、胸の中に潜む愛欲を滾らせるに十分な威力を持っていたが、彼の身を石にさせた原因はそれでは無かった。
「……ここ、お風呂場、だよな……?」
「ええ、その通りですわ」
不思議そうに尋ねる青年に、さらりとフランツィスカが返す。そしてその答えを聞いてなおも呆然とした顔で湯船を見渡す青年を見て、クスクス笑いながらフランツィスカが言った。
「ほんの少し改装したのですけれど、いかがでしょうか?」
壁や天井、そして石畳の床は僅かに湿り、清潔に保たれていた。ジパング製の風呂桶やシャワーも綺麗に片付けられ整頓されていた。そこはそれまで彼らが使用している浴場と何ら変わらない、憩いの場としての姿を保っていたのだった――フランツィスカが腰まで浸かっている湯船の中が、お湯の代わりに触手で溢れかえっていた以外は。
「フランツィスカ特製、触手風呂ですわ」
上体を反らしてたわわに実った胸を揺らし、フランツィスカが得意げに言ってのける。青年はその姿を見て「凄い事したな」と困惑気味に苦笑した後、躊躇うこと無く――前を隠すこともせずにフランツィスカの元へと歩み寄った。そして湯船の縁で立ち止まり、そこで片膝をついて腰を下ろしてから穏やかな顔でフランツィスカに尋ねた。
「ところで、そのお風呂、どんな効用があるのかな?」
触手を掻き分け、フランツィスカが青年の元に近づく。そして彼の眼前で顔を真っ赤にして、口の近くで指をこね合わせながらフランツィスカが答える。
「それはもちろん、あなたを幸せにする効果がありますわ……❤」
フランツィスカが満面の笑みを浮かべる。その我が妻ながら美しすぎる笑顔を見て息をのんだ青年に向けて、フランツィスカが右手を差し出す。
「わたくしと一緒に、楽しみましょう?」
その手を取った青年の手を、湯船から這い上がってきた触手が絡め取る。
「入っていいかい?」
「はい❤ どうぞいらっしゃってください」
フランツィスカに引かれるままに、青年はその肉が蠢く只中へと足を踏み入れた。
「ああ……すごい……」
その中は言語を絶する気持ちよさだった。
「触手が……フランが全身に絡みついて、全身を抱きしめてくれてる……凄い。凄い気持ちいいよ……」
浴槽の中を埋め尽くす何十本もの触手が青年の体に絡みつく。力任せに締め上げるのでは無く、その体を労るようにやんわりと包み込んでいく。それらの触手達によって自分の体は勝手に浮き上がり、力を抜いてそれらに身を任せれば更に多くの触手が全身に絡みつく。
その触手の一本一本がにゅるにゅる肌をこすり、くすぐったさにも似た快楽を全身にもたらす。そしてそれと同時に触手達は、まるで自分が赤子に戻って、その全身を母親の胸の中に抱き留められているかのような暖かさをも青年に与えていた。
ただ絶頂を味わうだけでは無い、快感と同時に安堵を覚えるその暖かな触手の海の中に首から下を完全に沈め、青年は半ば無意識のうちに満ち足りた笑みを浮かべていた。そしてその満足しきった表情を間近で見つめていたフランツィスカも、とても嬉しそうに笑みを浮かべた。
「どうですか? 気持ちいいですか?」
「うん。凄い気持ちいい。フランを全身で感じられて、とっても幸せな気分だよ」
「まあ、本当ですの?」
顔をぱあっと輝かせて、フランツィスカが青年に詰め寄る。その頬を優しく撫でながら、青年が微笑んで言った。
「フランに愛されてるっていうのが凄い伝わってくる。最高だよ」
「お礼などいりませんわ。あなたが喜んでくれれば、わたくしはそれだけで満足なのですから」
新たな触手の一本が青年の額にかかった前髪をそっと掻き分け、露出した額をフランツィスカが優しく撫でる。
「もっともっと、わたくしで喜んでくださいまし。あなたの幸せそうなお顔を見るのが、わたくしにとって何よりの幸せなのですから」
「なんか悪いな。フランに面倒かけっぱなしで」
「いいえ、お気になさらず。わたくしなりの『ご奉仕』、どうか存分に受け取ってくださいな♪」
「……そうか。じゃあお言葉に甘えて、全部もらっちゃおうかな」
「はい❤ お腹いっぱい味わってくださいね❤」
全身に巻き付く触手を通して青年の体温を感じつつ、フランツィスカが優しく微笑む。その優しくも王族としての気高さも滲ませた気高い笑みと触手達の柔らかく暖かい肌触りを前にして、青年が更に体の力を抜いてリラックスした表情を浮かべる。フランツィスカはそんな夫の満ち足りた表情を見て、思わず熱っぽい吐息を漏らした。
「ねえ、フラン」
その吐息を頬で受けた青年が、フランツィスカの眼を見ながら優しく言った。
「ひょっとして、もう我慢出来ない?」
突然の言葉にフランツィスカが息をのむ。だがすぐにその強張った表情を淫らに蕩けさせ、口の端から涎を垂らしながらそれに答えた。
「は、はい。その、あなたの嬉しそうなお顔を見ていたら、わたくし……もう我慢が」
フランツィスカがそこまで言いかけた所で青年がそれまで彼女の頬に当てていた手をその後頭部に回し、彼女の頭を強引に引き寄せる。
「え、なに」
そして驚きで半開きになったその口を、自分の唇で強引に塞ぐ。突然の事に眼を白黒させているフランツィスカを差し置いて無防備な口内に舌をねじ込み、その中を思う存分荒らしまくる。
「ん……ふぅっ、んむ……」
「ん……ちゅ、くちゅ、ちゅっ……」
やがて口への奇襲を終えて青年が顔を離すと、彼の目の前には完全に『出来上がっていた』一人の魔物娘の姿があった。顔は茹で蛸のように真っ赤になり、両目は快楽に蕩けきってその涙の溜まった目尻をトロンと垂れ下げ、半開きになった口からはそれまでよりもずっと大量の涎を垂れ流していた。彼女そのものである触手達もまた、青年の不意打ちを受けて激しくざわめいていた。
「ひ、ひひょう……ふいうちなんて、ひきょうれすわ……っ」
まったく呂律の回らない口調でフランツィスカが青年を糾弾する。だが彼の体に絡みつく触手達は青年を締め上げるどころか、それまでよりも一層激しく彼の体を愛撫し、より一層彼を喜ばせようとしていた。そんな触手の感触を――愛する妻からの愛撫を受けて心地よさそうに笑みをこぼしながら、青年がフランツィスカに言った。
「本当言うと、俺もしたいんだ」
「あ――」
思考が止まる。
「いいよね?」
「……ッ」
ああ、この人は卑怯だ。卑怯で強引な、イケナイ人。
「は、はい……わたくしに、あなたの」
でも好き。強引でも優しい、あなたが大好き。
「あなたの愛を……精を……」
大好きなあなたを、わたくしにください。
「……うん」
フランツィスカの告白を受け止め、青年が頷く。その優しい眼差しを全身に感じて軽く身を震わせながら、フランツィスカが今度は自分から唇を近づけていく。
二つの体が重なり合い、互いに両手を回して相手の体を抱きしめ合う。更に周囲から立ち上がった触手達がその二人の体に巻き付き、二人を更に密着させる。何本もの触手に包み込まれ、やがてそこには一つの卵のような物体が姿を表した。
その表面のてらてらとした、どす黒く不気味な卵は、やがて何の抵抗も無しに触手の底なし沼の中へと沈んでいった。そしてそれが完全に飲み込まれ、後には小刻みに蠢く『触手溜まり』だけがそこに残った。
「もう、フラン。くすぐったいよ」
「うふふ、先程の不意打ちの仕返しですわ❤」
その触手の海の中、真っ黒な卵の中で、青年とフランツィスカは存分に愛を交わし合っていた。この時フランツィスカは己の四肢と周囲の触手を存分に操って彼の体へ愛撫を続け、容赦なく快楽を与えて続けていたのだ。青年も負けじとフランツィスカの体に触れるが、完全アウェーのこの場では彼に勝ち目は無かった。
「ほら、ここが良いのでしょう? 観念なさって❤」
「そ、そんな、同時に……!」
背中や四肢、そして頬や腹に至るまで、あらゆる所に触手を巻き付けその体を蜜まみれにする。その白く美味しそうにデコレートされた体を時に激しく締め付け、時に柔らかく包み込む。緩急をつけて相手の余裕を崩し、その脳を快楽でドロドロに溶かす。さらには手足でその蜜を更に広く塗りたくり、それを舐め取るように肌に舌を這わせていく。
そこには今まで青年が受けていたような慈しみの色は無く、ただ相手を犯し尽くし、身も心も快楽でドロドロに溶かす魔物娘としての本性が露わになっていた。フランツィスカ本人が胸の内に秘めていたサド気質もそこに混じっていた。
「フラン、も、もうやめてくれ。これ以上されたら俺、もう抑え……!」
「言ったでしょう? これは先程の仕返しだと。どうぞ存分によがり狂って、はしたないお顔をわたくしに見せてくださいませ❤」
「そ、そんな、だけど」
「それに、こちらの方もこんなに堅くして……これは救済が必要ですわ……ねっ❤」
そして無防備になった頃合いを見計らい、雄々しくそそり立つ彼の肉棒に触手の一本を巻き付ける。
「う、うああ――っ!」
大成功。それまでの予測不能な責めに心の平衡を崩していた青年にとって、それはまさに大打撃であった。爆発寸前の肉棒を必死に抑えつけようとする青年の姿を見てフランツィスカが愉快そうに笑みをこぼし、青年はそんな彼女の姿を視界に映しながら息も絶え絶えに彼女に言った。
「あ、あう、フラン、そんなされたら……!」
「いいんですのよ、出してしまわれても? さあ、お出しになって。あなたの精液、『わたくし』に存分にかけてくださいな❤」
クスクス。クスクス。フランツィスカが小悪魔の如き嗜虐的な笑みを浮かべ、触手達の動きをより活発にさせていく。そして青年もまた、それに釣られるようにして自分から腰を小刻みに上下に振り、自ら得られる快楽を少しでも多くしようと無駄な足掻きを始めた。
「フラン、フラン……!」
「ああ、可愛いですわっ。一心不乱に射精しようと無様に腰を振るあなたのお姿、とっても可愛らしいですわ!」
「フラン、そ、そんなにいじめないでくれ……っ!」
「ふ、ふふっ。何を今更。あなたは虐められて喜ぶ変態なのですよ? 触手に巻き付かれて、触手に虐められて、よがってしまう変態なのですわよ? もうお認めになられたらどうです?」
頬を真っ赤にし、サディスティックな笑い声を上げながらフランツィスカが青年の頬をぺちぺちと軽く叩く。
「ほらほら、変態さん❤ 遠慮無く射精してしまいなさい❤ 我慢なさらずに、わたくしにかけてしまいなさい❤」
「フラン、フラン、フラ――!」
そこまで苦しげに言葉を漏らした次の瞬間、青年の体が腰を浮かせた体勢のまま一瞬硬直する。そしてその直後、限界に達した肉棒から大量の白濁液が鉄砲水の如き勢いで噴き出された。
「あ――ああああぁあぁぁぁぁぁぁぁぁっ❤」
愛しい人の精液が自分そのものである触手にびちゃびちゃとぶち当たる。その感触はフランツィスカの脳に途方も無い量の電流を迸らせ、まともな思考も取れないままに桃色の靄が彼女の頭をいっぱいにする。
「あはああぁぁ……あなたの、いっぱい、いっぱいぃぃぃ……」
夫が射精してくれた。自分の体で喜んでくれた。もはやそれまでの威勢の良さは完全に消え去っていた。フランツィスカはその精液のかかった触手を自分の元に呼び寄せてそれを咥え込み、口の中で激しくストロークさせながら青年に見せつけるようにしてそこにこびりついた精液を残さず舐め取っていく。
「じゅぷ、くちゅ、ぴちゅ……はあ、あなたの、せーえき、せーえきぃ……くちゅ……」
そんなフランツィスカの痴態を目にして、荒々しく肩で息をしていた青年は、一つ深呼吸をした後でニヤリと昏い笑みを浮かべた。
「フラン」
「え――きゃあ!」
そして彼女の名前を呼び注意が逸れた一瞬の隙を突いて、青年はその腕を掴んで引っ張り寄せ、力任せに抱きしめた。柔らかく暖かなフランツィスカの体の感触と体温、そして彼女の体から漂ってくる芳香と魔力によって自分の分身が再び力を取り戻していくのを認識しながら、青年はフランツィスカの耳元に口を寄せて小さく呟いた。
「やってくれたな」
「あ、あの、それは」
「今度は、俺の番だからな」
「あ――」
攻守が逆転した。拒絶を許さぬ青年の宣言に、周囲の触手も完全に沈黙していた。
「フラン、いいな?」
「……はい。おねがい、しますわ――❤」
青年の言葉に応えるように、フランツィスカが自分から両足を開いてしとどに濡れたその秘裂を露わにする。フランツィスカの下についていた青年が位置を調整するように身をよじらせる。
すっかり堅さを取り戻した肉棒の先と、すっかり濡れそぼって美味しそうに蜜を垂らしていた秘裂の先が擦れ合う。それだけで、フランツィスカの頭はますます快楽に蕩けていった。
「ああん❤ ふあああああんっ❤」
「なんだ、もうイったのか? フランは気が早いな」
「だ、だって、あなたのおちんぽ、とっても美味しいから❤ とっても、とってもおいしいからぁぁっ❤」
「そうか。そんなにいいのか。だったら」
相手の腰を両手でがっしり掴んで固定したまま、体を下に動かして肉棒を秘裂から離す。一気に悲しげな表情を浮かべたフランツィスカに向けて青年が言った。
「もっと味わってくれるか?」
もう余裕なんて無かった。フランツィスカはただ感情のままに、己の思いの丈をぶちまけた。
「はい❤ はいっ❤ ください、あなたのおちんぽ、おちんぽ欲しいっ❤ おちんぽたべさせてくださいぃぃぃぃっ❤」
「よし、じゃあ――行くぞッ!」
相手の調子も待たずに、青年が一息に秘裂の奥へと肉棒をぶち込む。
「ひぎいぃぃっ!?」
亀頭の先が子宮口に激突し、フランツィスカが一瞬白目を剥く。
「あぎっ、が、うあっ」
大口を開けてアヘ顔を晒し、息もままならぬほどに呻き声を上げる。
「ぎっ、あっ、ひいぃん❤」
「――お、おい、フラン?」
「あっ❤ ああっ❤ ひぃいっ❤」
やばい。やり過ぎた。その壮絶なイキ様を前にして青年が我に返り、とてもバツの悪い表情を浮かべる。だがそんな気まずい顔をしていた青年の頬を、不意に伸ばされたフランツィスカの手が優しく撫でた。
「フラン――?」
「ひっ、ひぃ……わ、わたくしはっ、だいじょぶ、ですからぁ……っ❤」
「大丈夫って……」
なおも苦しそうな顔をしていた青年の頬を再度撫でる。その時のフランツィスカはなおも大きく肩で息をしていたが、その表情は既に穏やかな物へと変わっていた。
「動かして、くださいっ❤ あなたのおちんぽ、もっと、もっと激しく動かしてくださいっ❤」
フランツィスカが甘く囁く。それと同時に自分から腰を左右に揺らし、大丈夫だというアピールを彼に見せた。だがそれ以上の激しい動きはせず、その主導権は青年に握らせたままであった。
「わたくしをめちゃくちゃにしてください❤ あなたのことを、もっと感じさせてください❤」
「――いいんだな?」
青年が確認する。フランツィスカはキスでそれに応えた。
「ぷちゅ、くちゅ、ちゅ……ぷはっ」
「あ――」
「こ、これが、答えですわ❤ さあ、あなた。わたくしを……」
食べてくださいませ❤
この後、触手風呂の中で散々犯し合った後、湯船の縁に座り合ってピロートークをしていた所をミミルに発見され、ちょっとした騒動に発展するのだが、それはまた別のお話。
13/04/21 14:41更新 / 蒲焼