天の道を行き、総てを司る以下略。
…今日は、晴天だ。
分厚く空を覆う雲からは、雷鳴。
降り止まない、雨。
それは一般的に悪天候と言われるのかもしれないけれど。
だけれど今日は、晴天だ。
理由は至極当然で、この村に住んでいる人間なら誰だって知っている話だ。
“地竜”。
名前は有名で、だけれど姿を見た者はあまり居ない。
その理由は、色んな説がある。
まず、地竜はその名の通り…翼のない、蛇のような竜。
災害のように岩山をも砕き、尚、止まることのない竜。
そんな地竜は、見たもの全てを薙払うと言われていて。
現に昔、地竜に遭遇したまま、帰らぬ人となった村人も居たらしい。
…かれこれ、数十年前の話らしいのだけれど。
だけれど村人は…僕も含めて、そんな地竜が怖かった。
見たこともなく、いつ遭遇するやも分からないような、魔物。
だからこそ恐れられ、災害とも言われるようになった。
だけれど地竜は、実はとある特定の日には、姿を現さないと僕の村には伝わっている。
…雨。
今日のような、土砂降りの雨が降る日には、決まって姿を現さないのだと言う。
それ故に、晴天。
…嗚呼、だけれど。
どうやら、その考えも改めなくてはいけないのかも知れない。
「……う、そ……だろ…?」
不意に口からもれた声は、小さくも、驚愕に震えている。
まるで、自分の声に聞こえない僕の声は、虚空に溶けて…消えた。
辺りには、耳にまとわりつくような雨音が響き渡り、髪を、頬を、服を、濡らす。
足は、震えて動かない。
瞳は、目の前にいるソレを見つめたまま、瞬きすら…出来やしない。
大地には、ソレが進んだ跡があり、まるでそこが…濁流のような川になっていた。
目に映るソレは、僕の方へと手を伸ばし…。
時間が、止まったように…意識が、朦朧とする。
地竜なんて、見たことはない。
ないけれど、解る。これは、地竜だ…、と。
伸ばされた手は、人のそれではない。
灰黒色の、まるで、爬虫類を連想させる…鱗の、手甲。
その手には鋭利そうでいて、太く、頑丈な爪が備わっていた。
…僕は、どうなってしまうのだろう。
今あるのは、恐怖だけ。
その腕は、手は、指は…何故僕に伸ばされているのだろうか。
まるで、他人事のように考え…頭が、朦朧とする。
真っ白に、なっていく。
そこで時間は再開した。
耳に届く、雑音ともとれる雨の音。
伸ばされた手に、僕は悲鳴を上げようとするが、声が、出ない……!
目を、見開く。
口が、声を上げる事はないまま、何かを叫ぶ。
膝が、震えて。
見開かれた瞳が、ソレを…見据える。
長く、しなやかなその髪を。
切れ長の、まるで人には思えないような、見惚れそうになる琥珀色の瞳を。
そして、僕の体にその腕が触れる。
堅く大きなその腕に抱き寄せられ…、そして…。
「……♪」
地竜は、笑顔を向ける。
僕に、まるで花が咲いたかのようなそれを。
その笑顔の裏には、一体どんな感情があるのだろうか。
まるで、他人事のように“僕はどうなるのか”と考えて、そして…。
また、怖くなる。
もしかして自分は、この魔物に食べられてしまうのではないだろうか、と。
だけれどその恐怖のもう一方で。
その花が咲いたかのような笑顔に、僕に向けられた何か別の意思があるのではと…思わせて来る。
恐怖は、薄れてきていた。
だけれどやはり、その得体の知れない恐怖は、消える事はなく。
気が付けば、眼前に迫る地竜の身体。
まるで人間の女性のような身体に、僕の頬が押し付けられる。
そこで、思い出した事がある。
昔、村に来た反魔物派の騎士が、言っていた。
“魔物は皆女性の型をとっては居るが、あれは戦える男を惑わし墜とし、喰らうためであり”。
そして。
“惑わされるな。奴らには、我らのような温もりはない”、と。
僕は、そう教えられていた。
非道で、残虐で、非情で無情。
愛のない穢らわしいモノには、体温すら、ないと。
そう、教わっていた。
…だけれど。
今現在、降り止まない土砂降りの雨は冷たく地竜を濡らし…。
だけれどその冷たさに負けないくらい、その身体は温かくて…。
(…やわら、か…い…)
女性にあたるところ、胸に押し付けられた僕の頭が…顔が、瞳がまた盗み見た地竜の顔は…。
艶のある笑みのまま、小さく舌なめずりしていて…。
ぎゅっと、抱きしめられる。
やっぱり、温かくて。
緊張状態から解かれたような安心感に、全身の力が抜けていく。
(……ぁ………)
そして、思いの外簡単に、あっさりと。
意識は、暗転した。
温もりに…抱かれながら。
※※※※※※※※
…ぴちゃ…れろ……ん、ふぅ…
朦朧とする意識の中で感じるむず痒さ…それと、何かの音に目を覚ます。
(……なん、だ…?)
と、頭の中で考えても答えは出てこない。
うっすらと瞼をあけ、様子を伺うが…だが、目に映るのは土の壁だけ。
どうやら自分はそこに倒れているようで、それ以外は分からな…
「あっ!?」
そこまで考えて、思わず声を上げる。
太ももに、内股に、そして何より…自身の一部に走った電流のような感覚に、痺れるような快楽を覚え…下半身を見やる。
するとそこには…。
「…んっ、ふぅ……れろ…れろっ、ん、んん…っ♥」
唾液で光る肉棒を舐め上げる、魔物…!
(…ひっ…)
恐怖が、せり上がってくる。
だけれどその魔物はチラリとこちらを一瞥すると。
「…ぁ……」
小さく声を上げ、ソレを舐めるのを中断し…その身体を僕に密着させるように移動する。
這うように進み、その柔らかい胸やお腹、ヘソに唾液で濡れた肉棒がすり合わされ、何とも言えない快楽が走った。
そして、魔物の動きは止まり、肉棒はどこか…柔らかくて湿っている、窪みのような場所へ固定される。
「……ん、おきた…♪」
魔物の顔が眼前に迫り、僕に笑顔を向けた所で…思い出す。
そう言えばさっき僕は気を失って…、それで。
どういう経緯なのかは分からないが、どこか…この天井を見るに、洞窟のような場所へと連れ込まれてしまったようだ。
そこまで理解すると、先程感じた恐怖は消え去っていった。
何故なら、何となく…本当に、何となく…。
この魔物…、地竜は、魔物だけれど、悪い魔物ではないのではないだろうか、と。
あの笑顔を見せられて、体温も感じて、どうしても、思えなくなっていた。
次第に早鐘を打つ心臓も落ち着きを取り戻し、まるでお気に入りの人形に抱きつくように、僕を抱き締めている…
そんな地竜に、問い掛ける。
「…お、お前は……僕、を……食べない、のか…?」
その問い掛けに耳を傾けたのか、少しだけ身体を離し…小首を傾げる地竜。
…よければ、そうでないように祈りたい。
そんな気持ちを胸に抱え、問い掛けの答えを待つ。
すると、ハッと何かに気付いたように地竜は笑顔を僕に向けると、
「…そういえば、まだ……たべてない…♪」
嬉しそうに、呟いた。
(…ぇ…?)
その答えに呆気に取られて、その先に自身が食べられてしまうという事に気付くまでに時間が掛かり…
気付けば、蛇のような下半身に全身を巻き取られ、寝そべっていた姿勢が胡座をかいたような姿勢に変わっていた。
抵抗は、出来ない。
それどころか下半身はもう動かせず、まるで胡座の上に座るようにして地竜が居座り…
そして、その桜色の唇を小さく開く。
(………っ!)
駄目だ。やっぱりこの子は地竜…魔物で、人を食べるような化物なんだ…!
と、抵抗しようにも動けない身体を強ばらせ…瞼を強く閉じる。
…が。
次の瞬間に訪れたモノは、痛みでも、死でもなく。
「…ん…ちゅっ♥ んんっ♥」
唇に触れる、温かくて柔らかな、感触。
(……ぇ…?)
瞼を、開ける。
するとそこには、ゼロ距離で瞼を閉じ、唇に吸いつく地竜の姿があって。
ドキリ、と心臓が跳ねる。
だけれど頭は現状を理解できず、ぐるぐると回り…。
「…ん、んん、んっ♥ ふぁ、れろ、んちゅっ、んんっ♥」
唇から割り込んでくる、熱い何か…いや、解っている。
これは、舌。
熱くて、柔らかくて、頭の中を真っ白にするような快楽を招く、舌。
それが歯茎を、舌を、頬肉を…なめ上げていく。
(…一体、何…を…!?)
そう思っている内にも、地竜は僕の口内を蹂躙し…そして。
「…ん、んぁ…ちゅっ、れろ…♥ ん…ぷはぁあっ♥♥」
やっと、解放してくれる。
が。
熱の籠もった瞳で地竜は僕を見つめると、今度は背中に手を回し…。
「…んんぅ…♥ ちゅっ、んっ♥」
耳に、舌を這わせてくる。
窪みを、耳たぶを、そして、首筋から…うなじを。
舐め上げられる度に走る快楽に、身をよじる事も出来ない。
そして何やら先程から、下半身…つまり、肉棒を包み込んでいた張りのある温かな感触が、上下に動いていた。
そしてそれに比例するように、胸板に押し付けられた柔らかな胸も、形を変えながら上下する。
(…ぇ、え…!? もしか、して…!?)
驚愕と、期待。
その2つの感情が入り混じり、心臓が早鐘を打ち始める。
「んぁあっ♥ ん、ちゅっ♥ んん、ふぁぁあ、あっ!!」
いきなり、少し大きな声を上げる地竜。
そしてそれとほぼ同時に、人間の女性でいう太ももと恥丘…その間をすり抜けた肉棒の先端が、胎内に呑まれていく。
(あ、ぁぁ…く、ぅ…)
我慢が、出来ない。
熱く、キツい地竜の胎内に先端が呑まれ、まとわりつくような…絡み付くような肉の壺が、亀頭を刺激する。
狭くキツい肉壺の中を掻き分けながら、ゆっくりと進み…。
「ん……く、ぅ…ん…」
何かに、進行を阻まれていた。
だが、それを突き破らんと地竜は体重を掛け…。
肉棒を伝い、太ももやらを濡らす大量の蜜。
その潤滑油のおかげで、遂に。
「んぁぁあっ!? くぅ、ん……あっ、あっ…んっ…」
ぶちっ、と小さな感覚が亀頭に伝わり、そのまま僕も、果てる。
「くっ、ああ、あ…っ」
だが、進行は止まらず…腰が砕けるような快楽が…肉棒から全身に伝わっていった。
地竜は、そんな僕を強く抱き締め、身を震わせる。
(…っ!?)
いつの間にかまた奪われていた唇…それを、思いっきり噛みながら。
とてつもなく、痛い。
「…ぁ……あ、…」
だけれどそれに気付いた地竜は、申し訳なさそうに俯いて…。
また、今度はそっと唇を合わせてくる。
そして…噛みつかれた下唇…それに、舌を這わせ、舐める。
申し訳なさそうに。ガラにもなく、しよらしく。
(………っ)
それに、少しだけ心が痛んだ。
ちゃんとこの子は僕を気遣ってくれて、なのに僕はさっき…この子が人を食う化物だと思っていた。
それに、どうしてか…急に。
本当に、急に。
地竜の、彼女が…愛らしく思えてきて…。
下唇を舐める彼女の舌を、更に…僕が舐める。
それから…。
「……ありがとう、もう大丈夫だから」
礼を言う。
別に唇に穴があいた訳でもないので、怒る必要だってないと思う。
あまり拘束されていない右手で、彼女の頭を撫でてみた。
そこには硬質な角があって、鱗もあって。
やっぱり魔物なんだな、と再認識する。…下半身、蛇みたいだし。
だけれど、少なくとも悪い奴じゃない。…と、思う。
そう思い、彼女の顔を見ると…。
「…♪」
笑って、いる。
さっきのしおらしい顔は何処へやら。
その変化に小さく笑い、また頭を撫でてやりながら…思う。
(ちょっとだけ、頭緩いなぁ)
と。
それは少し失礼な事かも知れないけれど、でも。
悪い事をした、と思うとしんみりとして、しおらしくなって。
誉められたりすると、喜ぶ。
この子はなんだか…犬、みたいだな、と。
いや、竜…少なくともドラゴンを犬に例えるのもどうかと思うけど。
そこまで考えて。
「くっ、あっ!?」
苦悶の声を、上げる。
いつの間にか腰を動かし始めた地竜に、不意打ちを食らったのだ。
「ふぅ、あ…ぁぁあっ♥ あぁ、んっ♥」
ぐにぐにと動きながら、少し速めに上下運動する地竜。
その顔は、もう僕以外見えていないと言える程に僕を見つめ、
小さく開いた口からは唾液が垂れ、惚けた瞳は僕の顔を覗き込む。
「ふぁ、あっ、あつ、ぃっ♥ んぁ、あっ♥」
言葉を発する余裕があるのか、地竜は嬌声に紛れて色々と喋る。
その一言一言が、
「ん、ふぁぁあっ、イイ、のっ♥ も、…ぁっ、とっ♥」
だとか、
「あなた、のっ♥ たね、がっ、ぁっ♥ 欲し、ぃっ♥」
他にも、
「しゅきっ♥♥♥ だい、しゅきぃっ♥♥」
と、耳元で言ったり、キスしながら呟いたりで…色々と、半端ない。
対して僕は、彼女が僕に与えてくる快楽に身をよじるばかりで、言葉なんて発する余裕はない。
絡みつき、吸い付いて、離さない肉壺。
愛液は溢れて…既に辺りにはむせかえるような彼女の匂いが散漫している。
そして…。
「ふぁ、あっ、あっ♥ ふぁあぁ、ぁっ、あぁっ♥♥♥」
キュッとまた抱きついてきた地竜は、そのまま身を震わせ…また、唇にキスをする。
と、同時に肉壺の中が蠢き、うねり…大量の愛液が溢れ、肉棒をつたう。
その肉壺の中を、より一層掻き分けた肉棒が最奥に当たり…爆ぜる。
「く、あ……ぁ…」
搾り取られるような快楽に、背を反らそうとするが…抱きつき…離してくれないであろう彼女がそれを許すはずもなく。
「んぁ、ちゅっ♥ んんん、あ……ぁぁ…♥」
だけれど、幸せそうに目を瞑る彼女を見ていると、それでも良い気がして…
僕も、彼女を抱きしめる。
するとまた、
「ふぁ、ぁ……す、き…ぃ…♥」
そんな呟きと共に、唇を合わせ…………。
「…にかい、せん」
「……はい!?」
「おなか、ふくれる…まで、やる」
…僕はどうやら、甘かったようだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
今日は晴天だ。
洞窟の入り口から見える空は、分厚い雲に覆われ、稲光も見える。
勿論、外は土砂降りだけど。
でも、今日は晴天だ。
「…ん…つぎ、は…♥」
そんな考えをしていると、後ろから声が上がる。
背中に抱きついてきた声の主は、僕の耳元に息を吹きかけてから、呟く。
「わたしが、うえになる♥」
それに僕は、「…了解」と答える。
そして………。
〜それから、数年後〜
雨が降る外。
薄暗い、洞窟。
僕がここに居るのは、あの日…雨の日に、地竜の彼女と出会ったからで。
雨の日は、僕にとっては、ある種の記念日みたいなモノで。
それに…。
「リアスに搾り取られた後、水分あると助かるし…ね」
その名を、呼ぶと。
少しお腹の膨れた僕の嫁が、すりよってくる。
何だかんだ言って幸せで、充実した、僕の生活。
そんな生活に巡り合わせてくれた天候が、悪天候なんて事があるわけなくて。
「…♪」
彼女が、リアスが笑う。
小さく舌なめずりしながら、あの日のように。
変わらない、笑顔で。
だからほら。
今日も…
晴天、だろう?
分厚く空を覆う雲からは、雷鳴。
降り止まない、雨。
それは一般的に悪天候と言われるのかもしれないけれど。
だけれど今日は、晴天だ。
理由は至極当然で、この村に住んでいる人間なら誰だって知っている話だ。
“地竜”。
名前は有名で、だけれど姿を見た者はあまり居ない。
その理由は、色んな説がある。
まず、地竜はその名の通り…翼のない、蛇のような竜。
災害のように岩山をも砕き、尚、止まることのない竜。
そんな地竜は、見たもの全てを薙払うと言われていて。
現に昔、地竜に遭遇したまま、帰らぬ人となった村人も居たらしい。
…かれこれ、数十年前の話らしいのだけれど。
だけれど村人は…僕も含めて、そんな地竜が怖かった。
見たこともなく、いつ遭遇するやも分からないような、魔物。
だからこそ恐れられ、災害とも言われるようになった。
だけれど地竜は、実はとある特定の日には、姿を現さないと僕の村には伝わっている。
…雨。
今日のような、土砂降りの雨が降る日には、決まって姿を現さないのだと言う。
それ故に、晴天。
…嗚呼、だけれど。
どうやら、その考えも改めなくてはいけないのかも知れない。
「……う、そ……だろ…?」
不意に口からもれた声は、小さくも、驚愕に震えている。
まるで、自分の声に聞こえない僕の声は、虚空に溶けて…消えた。
辺りには、耳にまとわりつくような雨音が響き渡り、髪を、頬を、服を、濡らす。
足は、震えて動かない。
瞳は、目の前にいるソレを見つめたまま、瞬きすら…出来やしない。
大地には、ソレが進んだ跡があり、まるでそこが…濁流のような川になっていた。
目に映るソレは、僕の方へと手を伸ばし…。
時間が、止まったように…意識が、朦朧とする。
地竜なんて、見たことはない。
ないけれど、解る。これは、地竜だ…、と。
伸ばされた手は、人のそれではない。
灰黒色の、まるで、爬虫類を連想させる…鱗の、手甲。
その手には鋭利そうでいて、太く、頑丈な爪が備わっていた。
…僕は、どうなってしまうのだろう。
今あるのは、恐怖だけ。
その腕は、手は、指は…何故僕に伸ばされているのだろうか。
まるで、他人事のように考え…頭が、朦朧とする。
真っ白に、なっていく。
そこで時間は再開した。
耳に届く、雑音ともとれる雨の音。
伸ばされた手に、僕は悲鳴を上げようとするが、声が、出ない……!
目を、見開く。
口が、声を上げる事はないまま、何かを叫ぶ。
膝が、震えて。
見開かれた瞳が、ソレを…見据える。
長く、しなやかなその髪を。
切れ長の、まるで人には思えないような、見惚れそうになる琥珀色の瞳を。
そして、僕の体にその腕が触れる。
堅く大きなその腕に抱き寄せられ…、そして…。
「……♪」
地竜は、笑顔を向ける。
僕に、まるで花が咲いたかのようなそれを。
その笑顔の裏には、一体どんな感情があるのだろうか。
まるで、他人事のように“僕はどうなるのか”と考えて、そして…。
また、怖くなる。
もしかして自分は、この魔物に食べられてしまうのではないだろうか、と。
だけれどその恐怖のもう一方で。
その花が咲いたかのような笑顔に、僕に向けられた何か別の意思があるのではと…思わせて来る。
恐怖は、薄れてきていた。
だけれどやはり、その得体の知れない恐怖は、消える事はなく。
気が付けば、眼前に迫る地竜の身体。
まるで人間の女性のような身体に、僕の頬が押し付けられる。
そこで、思い出した事がある。
昔、村に来た反魔物派の騎士が、言っていた。
“魔物は皆女性の型をとっては居るが、あれは戦える男を惑わし墜とし、喰らうためであり”。
そして。
“惑わされるな。奴らには、我らのような温もりはない”、と。
僕は、そう教えられていた。
非道で、残虐で、非情で無情。
愛のない穢らわしいモノには、体温すら、ないと。
そう、教わっていた。
…だけれど。
今現在、降り止まない土砂降りの雨は冷たく地竜を濡らし…。
だけれどその冷たさに負けないくらい、その身体は温かくて…。
(…やわら、か…い…)
女性にあたるところ、胸に押し付けられた僕の頭が…顔が、瞳がまた盗み見た地竜の顔は…。
艶のある笑みのまま、小さく舌なめずりしていて…。
ぎゅっと、抱きしめられる。
やっぱり、温かくて。
緊張状態から解かれたような安心感に、全身の力が抜けていく。
(……ぁ………)
そして、思いの外簡単に、あっさりと。
意識は、暗転した。
温もりに…抱かれながら。
※※※※※※※※
…ぴちゃ…れろ……ん、ふぅ…
朦朧とする意識の中で感じるむず痒さ…それと、何かの音に目を覚ます。
(……なん、だ…?)
と、頭の中で考えても答えは出てこない。
うっすらと瞼をあけ、様子を伺うが…だが、目に映るのは土の壁だけ。
どうやら自分はそこに倒れているようで、それ以外は分からな…
「あっ!?」
そこまで考えて、思わず声を上げる。
太ももに、内股に、そして何より…自身の一部に走った電流のような感覚に、痺れるような快楽を覚え…下半身を見やる。
するとそこには…。
「…んっ、ふぅ……れろ…れろっ、ん、んん…っ♥」
唾液で光る肉棒を舐め上げる、魔物…!
(…ひっ…)
恐怖が、せり上がってくる。
だけれどその魔物はチラリとこちらを一瞥すると。
「…ぁ……」
小さく声を上げ、ソレを舐めるのを中断し…その身体を僕に密着させるように移動する。
這うように進み、その柔らかい胸やお腹、ヘソに唾液で濡れた肉棒がすり合わされ、何とも言えない快楽が走った。
そして、魔物の動きは止まり、肉棒はどこか…柔らかくて湿っている、窪みのような場所へ固定される。
「……ん、おきた…♪」
魔物の顔が眼前に迫り、僕に笑顔を向けた所で…思い出す。
そう言えばさっき僕は気を失って…、それで。
どういう経緯なのかは分からないが、どこか…この天井を見るに、洞窟のような場所へと連れ込まれてしまったようだ。
そこまで理解すると、先程感じた恐怖は消え去っていった。
何故なら、何となく…本当に、何となく…。
この魔物…、地竜は、魔物だけれど、悪い魔物ではないのではないだろうか、と。
あの笑顔を見せられて、体温も感じて、どうしても、思えなくなっていた。
次第に早鐘を打つ心臓も落ち着きを取り戻し、まるでお気に入りの人形に抱きつくように、僕を抱き締めている…
そんな地竜に、問い掛ける。
「…お、お前は……僕、を……食べない、のか…?」
その問い掛けに耳を傾けたのか、少しだけ身体を離し…小首を傾げる地竜。
…よければ、そうでないように祈りたい。
そんな気持ちを胸に抱え、問い掛けの答えを待つ。
すると、ハッと何かに気付いたように地竜は笑顔を僕に向けると、
「…そういえば、まだ……たべてない…♪」
嬉しそうに、呟いた。
(…ぇ…?)
その答えに呆気に取られて、その先に自身が食べられてしまうという事に気付くまでに時間が掛かり…
気付けば、蛇のような下半身に全身を巻き取られ、寝そべっていた姿勢が胡座をかいたような姿勢に変わっていた。
抵抗は、出来ない。
それどころか下半身はもう動かせず、まるで胡座の上に座るようにして地竜が居座り…
そして、その桜色の唇を小さく開く。
(………っ!)
駄目だ。やっぱりこの子は地竜…魔物で、人を食べるような化物なんだ…!
と、抵抗しようにも動けない身体を強ばらせ…瞼を強く閉じる。
…が。
次の瞬間に訪れたモノは、痛みでも、死でもなく。
「…ん…ちゅっ♥ んんっ♥」
唇に触れる、温かくて柔らかな、感触。
(……ぇ…?)
瞼を、開ける。
するとそこには、ゼロ距離で瞼を閉じ、唇に吸いつく地竜の姿があって。
ドキリ、と心臓が跳ねる。
だけれど頭は現状を理解できず、ぐるぐると回り…。
「…ん、んん、んっ♥ ふぁ、れろ、んちゅっ、んんっ♥」
唇から割り込んでくる、熱い何か…いや、解っている。
これは、舌。
熱くて、柔らかくて、頭の中を真っ白にするような快楽を招く、舌。
それが歯茎を、舌を、頬肉を…なめ上げていく。
(…一体、何…を…!?)
そう思っている内にも、地竜は僕の口内を蹂躙し…そして。
「…ん、んぁ…ちゅっ、れろ…♥ ん…ぷはぁあっ♥♥」
やっと、解放してくれる。
が。
熱の籠もった瞳で地竜は僕を見つめると、今度は背中に手を回し…。
「…んんぅ…♥ ちゅっ、んっ♥」
耳に、舌を這わせてくる。
窪みを、耳たぶを、そして、首筋から…うなじを。
舐め上げられる度に走る快楽に、身をよじる事も出来ない。
そして何やら先程から、下半身…つまり、肉棒を包み込んでいた張りのある温かな感触が、上下に動いていた。
そしてそれに比例するように、胸板に押し付けられた柔らかな胸も、形を変えながら上下する。
(…ぇ、え…!? もしか、して…!?)
驚愕と、期待。
その2つの感情が入り混じり、心臓が早鐘を打ち始める。
「んぁあっ♥ ん、ちゅっ♥ んん、ふぁぁあ、あっ!!」
いきなり、少し大きな声を上げる地竜。
そしてそれとほぼ同時に、人間の女性でいう太ももと恥丘…その間をすり抜けた肉棒の先端が、胎内に呑まれていく。
(あ、ぁぁ…く、ぅ…)
我慢が、出来ない。
熱く、キツい地竜の胎内に先端が呑まれ、まとわりつくような…絡み付くような肉の壺が、亀頭を刺激する。
狭くキツい肉壺の中を掻き分けながら、ゆっくりと進み…。
「ん……く、ぅ…ん…」
何かに、進行を阻まれていた。
だが、それを突き破らんと地竜は体重を掛け…。
肉棒を伝い、太ももやらを濡らす大量の蜜。
その潤滑油のおかげで、遂に。
「んぁぁあっ!? くぅ、ん……あっ、あっ…んっ…」
ぶちっ、と小さな感覚が亀頭に伝わり、そのまま僕も、果てる。
「くっ、ああ、あ…っ」
だが、進行は止まらず…腰が砕けるような快楽が…肉棒から全身に伝わっていった。
地竜は、そんな僕を強く抱き締め、身を震わせる。
(…っ!?)
いつの間にかまた奪われていた唇…それを、思いっきり噛みながら。
とてつもなく、痛い。
「…ぁ……あ、…」
だけれどそれに気付いた地竜は、申し訳なさそうに俯いて…。
また、今度はそっと唇を合わせてくる。
そして…噛みつかれた下唇…それに、舌を這わせ、舐める。
申し訳なさそうに。ガラにもなく、しよらしく。
(………っ)
それに、少しだけ心が痛んだ。
ちゃんとこの子は僕を気遣ってくれて、なのに僕はさっき…この子が人を食う化物だと思っていた。
それに、どうしてか…急に。
本当に、急に。
地竜の、彼女が…愛らしく思えてきて…。
下唇を舐める彼女の舌を、更に…僕が舐める。
それから…。
「……ありがとう、もう大丈夫だから」
礼を言う。
別に唇に穴があいた訳でもないので、怒る必要だってないと思う。
あまり拘束されていない右手で、彼女の頭を撫でてみた。
そこには硬質な角があって、鱗もあって。
やっぱり魔物なんだな、と再認識する。…下半身、蛇みたいだし。
だけれど、少なくとも悪い奴じゃない。…と、思う。
そう思い、彼女の顔を見ると…。
「…♪」
笑って、いる。
さっきのしおらしい顔は何処へやら。
その変化に小さく笑い、また頭を撫でてやりながら…思う。
(ちょっとだけ、頭緩いなぁ)
と。
それは少し失礼な事かも知れないけれど、でも。
悪い事をした、と思うとしんみりとして、しおらしくなって。
誉められたりすると、喜ぶ。
この子はなんだか…犬、みたいだな、と。
いや、竜…少なくともドラゴンを犬に例えるのもどうかと思うけど。
そこまで考えて。
「くっ、あっ!?」
苦悶の声を、上げる。
いつの間にか腰を動かし始めた地竜に、不意打ちを食らったのだ。
「ふぅ、あ…ぁぁあっ♥ あぁ、んっ♥」
ぐにぐにと動きながら、少し速めに上下運動する地竜。
その顔は、もう僕以外見えていないと言える程に僕を見つめ、
小さく開いた口からは唾液が垂れ、惚けた瞳は僕の顔を覗き込む。
「ふぁ、あっ、あつ、ぃっ♥ んぁ、あっ♥」
言葉を発する余裕があるのか、地竜は嬌声に紛れて色々と喋る。
その一言一言が、
「ん、ふぁぁあっ、イイ、のっ♥ も、…ぁっ、とっ♥」
だとか、
「あなた、のっ♥ たね、がっ、ぁっ♥ 欲し、ぃっ♥」
他にも、
「しゅきっ♥♥♥ だい、しゅきぃっ♥♥」
と、耳元で言ったり、キスしながら呟いたりで…色々と、半端ない。
対して僕は、彼女が僕に与えてくる快楽に身をよじるばかりで、言葉なんて発する余裕はない。
絡みつき、吸い付いて、離さない肉壺。
愛液は溢れて…既に辺りにはむせかえるような彼女の匂いが散漫している。
そして…。
「ふぁ、あっ、あっ♥ ふぁあぁ、ぁっ、あぁっ♥♥♥」
キュッとまた抱きついてきた地竜は、そのまま身を震わせ…また、唇にキスをする。
と、同時に肉壺の中が蠢き、うねり…大量の愛液が溢れ、肉棒をつたう。
その肉壺の中を、より一層掻き分けた肉棒が最奥に当たり…爆ぜる。
「く、あ……ぁ…」
搾り取られるような快楽に、背を反らそうとするが…抱きつき…離してくれないであろう彼女がそれを許すはずもなく。
「んぁ、ちゅっ♥ んんん、あ……ぁぁ…♥」
だけれど、幸せそうに目を瞑る彼女を見ていると、それでも良い気がして…
僕も、彼女を抱きしめる。
するとまた、
「ふぁ、ぁ……す、き…ぃ…♥」
そんな呟きと共に、唇を合わせ…………。
「…にかい、せん」
「……はい!?」
「おなか、ふくれる…まで、やる」
…僕はどうやら、甘かったようだ。
※※※※※※※※※※※※※※※
今日は晴天だ。
洞窟の入り口から見える空は、分厚い雲に覆われ、稲光も見える。
勿論、外は土砂降りだけど。
でも、今日は晴天だ。
「…ん…つぎ、は…♥」
そんな考えをしていると、後ろから声が上がる。
背中に抱きついてきた声の主は、僕の耳元に息を吹きかけてから、呟く。
「わたしが、うえになる♥」
それに僕は、「…了解」と答える。
そして………。
〜それから、数年後〜
雨が降る外。
薄暗い、洞窟。
僕がここに居るのは、あの日…雨の日に、地竜の彼女と出会ったからで。
雨の日は、僕にとっては、ある種の記念日みたいなモノで。
それに…。
「リアスに搾り取られた後、水分あると助かるし…ね」
その名を、呼ぶと。
少しお腹の膨れた僕の嫁が、すりよってくる。
何だかんだ言って幸せで、充実した、僕の生活。
そんな生活に巡り合わせてくれた天候が、悪天候なんて事があるわけなくて。
「…♪」
彼女が、リアスが笑う。
小さく舌なめずりしながら、あの日のように。
変わらない、笑顔で。
だからほら。
今日も…
晴天、だろう?
12/11/04 19:49更新 / 紅柳 紅葉