愛色猫娘。
………。
一体いつからそこに居たのか…『貴方』は、不思議に思いました。
仕事で疲れた身体を休ませようと、布団に入ったはずでしたが…。
気が付くと貴方は、少し古い…大きな館の前に佇んでいます。
明晰夢…ではないか…?
貴方は、そう思います。
明晰夢。夢の中で、意志を持って行動出来る夢…。
貴方はそうやって、館の前で数ある疑問を浮かべていました。
すると、いつの間にか開いた大きな扉から、まだ年端もいかない少女が顔を覗かせました。
少女は貴方に向かって微笑むと。
「…こんばんは、『 』様…。お久しぶり、ですね…」
少し頬を赤らめて、貴方にそう言いました。
そこで貴方は思い出します。
あー、そう言えばここ、よく来るなぁ、と。
辺りを見渡すと、貴方には見慣れた暗闇が広がっています。
最初は怖かったのですが、何回、何十回と訪れていたので貴方はもう、慣れてしまっています。
そんな貴方に、少女が告げました。
「…『 』様…今日も、準備…できて、ますので…、いきま、す…?」
もじもじと、しどろもどろにそう告げる少女も見慣れていた貴方は。
『 』
と、告げてから少女の手を握ってあげました。
そうすると少女は小さく微笑み、いつも通りに小さく礼を述べてから、貴方を部屋へ誘います。
長い長い、奥が見えない廊下を進む事は無く、貴方が入るのは最初から二番目の部屋。
赤い火を灯す蝋燭の下…銅で出来た名札には、貴方の名前が刻まれています。
「…えと、では…『 』様…。もっといっぱいお話したいですが、どうぞ…お入りくださいませ…」
少し残念そうに呟いて、貴方の手から温もりのある少女の手が離れました。
貴方は何故、少女が部屋に入らないのか疑問がありましたが、何故か訊くことが出来ません。
なので、いつも通りに部屋に入ろうとして…立ち止まります。
「…えと、どうされ、ました…?」
一瞬だけ、ぱぁ…と明るい笑顔を浮かべた少女でしたが、それは本当に一瞬だけ。
そんな少女に貴方は、ポケットの中にあったそれを…手渡します。
『 』
それは貴方が、居酒屋によった時に貰った飴玉です。
「…ぁ…えと…貰っても、良いのですか…?」
もじもじ。
いつもより赤面した少女に貴方は『 』と、肯定します。
すると少女は、包装袋に包まれた飴玉をぎゅっと握り締め、貴方に向かって御礼を言いました。
「あの、ありがとぅ…で、す…」
すっかり真っ赤に染まった頬を隠すように俯いた少女の頭を、貴方は撫でてから部屋に入ります。
「…ぁ……。…『 』様…、お楽しみ、くださいね…?」
やっぱり少し残念そうに呟いて、少女は部屋の扉を閉めました。
すると、す…っと消える扉。
貴方はもう、それも飽きるほど見ているので別に気にもとめませんでした。
ただ、貴方が向かうのはその先にある少しだけ広い部屋。
貴方は、その部屋が好きでした。
仕事で疲れた貴方を癒やしてくれる存在が、いつもそこに待っているのです。
少し歩いて、部屋の扉を開けると―――。
…みー。
その小さな声を聞いて、貴方は思わず顔がにやけてしまいました。
貴方の足元にスリスリと体をすり付けている黒猫…。
貴方はいつも、この館のこの部屋で、その子猫と遊びます。
部屋にはふかふかの絨毯があり、貴方はいつもそこに転がって子猫と戯れるのです。
部屋の隅に置いてある玩具箱の中にある猫じゃらしや転がすと鈴の音がなるボールも使って目一杯遊びます。
貴方にとってそれは、とても魅惑的な遊びです。
猫じゃらしに一生懸命猫パンチを繰り出す子猫を見ていると貴方は和みます。
鈴の音がなるボールを全力で追いかけている子猫を見ていると、自然と笑みがこぼれます。
だって貴方は、白い首輪のついた…『ユメ』という名の黒猫が大好きなのですから。
だけど貴方は今日、とっても疲れていたので…、ユメを撫でるだけです。
一応玩具も出したのですが、貴方は横に転がってユメを愛でるだけ。
なでなでなでなで、と頭や顎、体を撫でる貴方。
ユメはみー、と、小さく鳴いて貴方から離れようとしますが、貴方は離してあげません。
それどころか、ジタバタともがく所も可愛いなぁ、なんて思うくらいです。
しかしやはり、ユメも生き物なので。
やっぱり、怒る時は怒るのです。
ふー、ふーっ、とユメが貴方に向かって荒い息を吐いています。
ふにゃふにゃと言う鳴き声はまるで、貴方に文句を言っているようで。
貴方がそんなユメを未だに離さないのがいけなかったのか、事件は起こりました。
…ぱしっ。
『 』
貴方は痛、と声をあげました。
それは一瞬でしたが、貴方はユメに猫パンチされたのです。
ユメはまだ荒い息のままですが、少し…申し訳無さそうな顔をしています。
そんなユメを見て、貴方は全く怒る気にはなりませんでした。
全ては、嫌がっていたのに束縛した自分のせい。
そう思った貴方は、ユメに『 』と小さく謝罪してから部屋を出ました。
マンションのような構造のこの場所には、他にも部屋があるのです。
貴方が向かったのは、洗面所。
とりあえず、ユメに猫パンチされた指を洗いたいのです。
思ったより鋭いユメの爪は、貴方の指先を少し深く切り裂きました。
ですから、まずは水で洗いたいのです。
ジャー、と水で指先を濡らすと、冷水が傷口に突き刺さるような痛みがありました。
貴方は、ちょっと深くやっちまったなぁ、と思いながら痛みに耐えます。
そんなこんなで、指先に冷水を当てていると…。
…リリ…。
貴方の耳に、小さな鈴の音が聞こえました。
きっとユメが追いかけてきたんだな、と貴方は思いましたが、自分の後ろ…鏡に映る姿を見て―――。
バッ! と、振り返ります。
貴方の視線の先…そこには。
「…ぁ……」
小さく声をもらす、見たことのない少女が居ます。
漆黒と言えばしっくりくる程に黒く、結構跳ねた短髪。
その頭にはピコピコとした漆黒の耳と、ゆらゆら揺れる一本のアホ毛。
コバルトブルーの瞳が特徴的な、色白で小柄…150前後ぐらいの身長の少女。
『 』
誰だ、と貴方が質問をします。
…が。
「ぁ…指……っ」
貴方の質問に少女は答えません。
ただ、さっ、っと貴方の手を取り、ユメに猫パンチされたその指を…。
…れろ。
ザラッとした舌が、貴方の指に絡みつきます。
瞬間、ぞくりとした感覚と鋭い痛覚が指先に走り思わず手を引こうとしますが、出来ません。
ぷにぷにとした肉球のついたふさふさの手で、しっかりと貴方の手が押さえられているので仕方がありません。
…れろ。
また、痛みが貴方の指先に走ります。
ですが、その一舐めで少女は貴方の指先を解放しました。
「かあさまが、怪我したら唾液をつけろって教えて下さいましたので…」
ジンジンする指先を抑えた貴方に向かって、少女はそう告げました。
ですがそんな事よりもまず、貴方は少女に再度問い掛けます。
すると。
「…? ユメは、ユメですよ?」
と、告げてから、更に疑問が増えた貴方にすり寄る少女。
「…引っ掻いて、ごめんなさい……御主人様…」
ふにぁあぁぁ…、と小さく鳴いた少女は、貴方の胸板に顔を埋めながらスリスリと頬ずりを繰り返します。
…何なんだこの子。
貴方はそう思いましたが、少女の首についた首輪を見て…困惑しました。
少女の首輪は、デザインからしてユメの物と同じでした。
違うのは、サイズだけ。
さらに貴方は、もう一つだけ…気付きました。
ピコピコと動く、少女の猫耳。それは紛れもなく、本物。
そして貴方の腕に、くすぐったい感覚を残して巻きついた二本の尻尾も、本物。
つまり、この子は…。
思い、頭の中で否定する貴方。
だけど、ユメは猫で、猫だから、え?
貴方の頭の中では疑問が渦を巻いています。
そこで、貴方の脳裏に絨毯の上でゴロゴロするユメの姿が浮かびあがります。
嗚呼、そうだ。ユメは、あの部屋に居る――。
貴方は少女を押しのけて絨毯のある部屋に急ぎました。
そして、ドアを開けて。
『 』
ユメの名前を呼ぶ。
ユメは猫のくせに、名前を呼ぶと「にー」と返事をするのだ。
だが。
貴方に、可愛らしい子猫の鳴き声は聞こえません。
代わりに…。
「御主人様っっ♪ お呼びですかっ♪」
やけに嬉しそうな、漆黒の猫娘に後ろから抱きつかれる貴方。
そのまま勢い余って、貴方は絨毯の上に倒れこみました。
前のめりになる貴方の背中に張り付いた猫娘。
「ふにゃー、んにゃー♪」
と、鼻歌みたいに歌いながら貴方はスリスリと頬ずりされています。
貴方の背中に感じる、程良い重みと女の子特有の柔らかい身体。
少し変な気分になりそうな貴方は、少女をふりほどこうとしましたが、出来ません。
もし、本当にこの子がユメなら。
そんな思いが少なからずある貴方には、ユメが好きな事をやらせてあげたいという貴方には、ふりほどけないのです。
貴方の脳裏に浮かぶ、ユメとの思い出。
初めて会った時は、よく噛まれたなぁ、とか。
にゃー、ってまともに鳴けなくて、にー、にーと鳴くユメの姿とか。
ボールを追い掛けて、盛大に転けた時のユメとか。
色々な思い出が、貴方の中に渦巻きます。
だからこそ貴方は困惑します。
だって今のユメは、貴方の知っているユメではないのですから。
「…ん…御主人様の、におい……♪」
むぎゅうぅぅ。
貴方の背中から、しっかりと抱き付いて離れようとしない少女。
やっぱり、この子は…。
そう思った時、貴方は、貴方の目の前に落ちているそれを見つけました。
…猫じゃらし。
ユメは、これが大好きで。
貴方の記憶の中のユメは、猫じゃらしが大好きでした。
だから貴方は、その猫じゃらしを取って…。
…わしゃわしゃ。
動かしました。自分の背中にいる、少女に向かって。
すると。
「…っ。…っ、っ!」
ぱし、ぱしぱし。
頬ずりを中断して、荒い息になった少女が猫じゃらしにパンチを繰り出します。
それが分かって、貴方は小さく笑いました。
『 』
貴方は、少女の名を呼び、仰向けになって少女を抱き寄せます。
「…ん。御主人様…」
少女…ユメも、同じ様に。
昔からよく貴方の上で寝ていたユメの、貴方の胸板というベストポジションに抱き付きました。
やっぱり、この子はユメなのだ。
姿形が変わっても、この子はユメ。
なら、今までみたいに普通に接して―――。
貴方はそう思って、ユメの頭を撫でました。
…が。
今まで通りの、猫と人間の生活を続ける気なんて、ユメにはありませんでした。
ユメにとって貴方は、家族であり、主であり、想い人であり、そして。
一匹の、“雄”なのですから。
ちゅ…ちゅぅ…。
気を抜いた貴方の唇に当たる、温かく、熱く、柔らかい唇。
一体何をされたのか、貴方にはまだ、分かりません。
「んっ…御主人様…御主人様…んんぅ…御主人、さま…っ」
貴方に対して、長い間隠してきた自分自身を。
貴方に対して、一番魅力的だと思わせたい自分自身を。
貴方に対して、ユメという雌を。貴方に刻みつける為に、唇を吸い上げるユメ。
ただ、一心不乱に。
貴方は、そんなユメの想いも分かりません。
分からないから、自分が何をされているのかすら気付けない。
貴方は無意識の内に、ユメの唇を堪能します。
貴方の上唇をくわえるように、ユメの唇が挟み込み、吸い上げる。
微力な快楽が貴方の唇に走って、気持ち良い。
…れろ。
貴方の唇と歯茎の間。そこに、ユメの舌が滑り込みました。
貴方の唾液をからめ取るざらつきのある舌。
そしてそのざらつきは、貴方の口内に絶妙な快楽を残して…外に出る。
つー、と唾液が糸を引き、艶めかしく光る。
「…あまい、です……」
紅潮した顔が、またしても貴方に近付きます。
はぁ、はぁと喘ぐユメの呼吸が唇に触れて、くすぐったい。
そんな貴方の唇に、またしても重なるユメの唇。
今度は、吸わない。
だけど、貴方の唇をかき分けて侵入してくる、舌。
甘い味のするユメの唾液はさながら、貴方に対する媚薬のようで。
ユメの唾液は、絡み合う舌を伝って貴方の口内に滴り落ちた。
…んくっ。
貴方が、ユメに何をされているのか。
口内に出来たユメの唾液の池を飲み干した今、気付いたところでもう遅い。
かぁぁ、と熱くなる喉には、既に媚薬の池が流れ込んだ。
ユメの唾液は、貴方の思考を溶かす。
或いは既に…溶けていた。
ならば今いる『貴方』は、もう既に『ヒト』ではなく。
ユメという“雌”を蹂躙するが為の、“『 』という名の獣”である。
もう、意識は、意志は必要ない。
貴方は、一匹の雄。
そしてユメが、貴方が孕ませるべき雌なのだ。
故に貴方は今、無意識だった。
唇が、舌が与える快楽では、満足できない。
ならば。
貴方は、ユメを自分の体から引き剥がした。
少しだけ、乱暴に。
だけど少しだけ、優しく。
絨毯の上へうつ伏せに転がったユメに覆い被さり、襲いかかる。
それを引き起こしたのは、興奮か、背徳感を得たからか。
貴方は自身の愚息を取り出し、もとより和服以外…下着すら身につけていないユメに、押し当てた。
「にぁぁぁっ ♥ ふぁっ♪」
肉棒で肉のヒダをかき回し、ユメの胎内から溢れ出す愛液を亀頭に塗りたくる。
滑りながらも温かい肉の与える快楽が亀頭に伝わり、直ぐにでも射精してしかねない貴方。
だが、どうだって良い。
どうだって良いと思う自分の思考すら、貴方は今、第三者視点で考える。
貴方が今、求めているモノは。
ぬちゅっ。
勢いに任せて、貴方はユメの胎内へペニスを押し入れる。
「ん゛やぁぁっ ♥ ごしゅじんしゃまっ ♥ ごしゅじんしゃ、まぁっ ♥ ♥」
貴方は、キツく押し返してくる肉壺を押し広げ、ペニスに絡みつく柔らかな肉の感触と共にそれを突き上げた。
「ふぁんっ ♥ やぁ ♥ ごしゅじっ ♥ ♥ んにゃぁぁぁぁ〜〜〜っっ ♥ ♥」
貴方はユメの最奥へ到達すると共に、白濁の快楽を解き放つ。
膣内を振動させ、溢れかえり、尚も終わらない射精に腰を震わせる貴方。
だが、まだ終わらない。
圧倒的なまでの快楽を巻き起こす射精中に、貴方は何度も何度も腰を打ち付ける。
「にゃっ ♥ あっ、んんっ ♥ にゃあぁっ、あっ ♥ ごしゅじん、ぁっ ♥ しゃまっ ♥ ♥ 」
野生動物の交尾のようにユメを押さえつけ、快楽を与え、与えられ。
ドクッ、ビュッ、デュルルルルルルッッ!
そして、またしても射精。
「にゃあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっっっ ♥ ♥ ♥」
貴方の絶頂に合わせて、既に何度目かすら分からない絶頂に至るユメ。
それと同時に、貴方に帰ってくる“ヒトとしての理性”。
『 』
とっさにユメから離れ、謝罪する。
が。
「…ごしゅじんしゃ、ま……すき… っ♥」
子宮を塞いでいたペニスが膣内から抜けた事で、精液が股から溢れ出すユメ。
そのユメが、貴方に迫り…。
…ちゅ。
触れるだけのキス。
そしてそのまま肩を押され、抱き付く形で貴方はユメと倒れ込む。
ユメの腰に回した貴方の腕には二股の尾が絡みついた。
そして貴方自身に、ぎゅぅっと抱き付いたユメが、二度目のキスを行う。
…ちゅ ♥
熱い唇が、貴方の唇を塞ぎ、離れた。
と、同時に、再び貴方のペニスに快楽が走る。
貴方の胸板へ顔を埋めたユメが、自分から貴方を受け入れる。
にゅぷ…ぬぬ…ぐっ。
ユメの子宮口を、貴方の愚息が押し上げる。
「んっ、んんんっ ♥」
貴方の服に、肩に、胸板にしがみつきながらも、腰を振るユメ。
ぐっ、ぐっ、ぐっ。
子宮口を押し上げ、腰が引ける程の快楽を得た貴方のペニスがビクビクと震える。
「んっ、ふぁあっ ♥ んんっ♪」
そして、一際強く押し上げて。抱き寄せて、抱きつかれて、射精。
「んっ、ふぁ ♥ ひゃあぁっっ ♥ ごしゅじっ、んっ ♥ ♥ さまぁっ ♥ ♥」
急激な疲労感に、一端目を閉じると―――。
※
「…『 』様、御時間、です…」
貴方の目の前に、あの少女がいた。
自分のした行為に恥ずかしさを感じていた貴方をよそに、少女は告げる。
「…あの、楽しめました、か…?」
少女はそれだけ告げて、少し…黙った。
そして…。
「…『 』様…また、来てください、ね…? わたし、ずっと、まってます、から…」
…ころ。
飴玉を口内で転がす音がしたかと思うと、少女の姿が霞んでいく。
気付けば、自分自身も霞んでいる気がして。
前を見ると、既に少女は消えていた。
そして、貴方も…薄れていって―――。
―――ピピピピピピ。
鳴り響いた目覚ましの音に、貴方はゆっくりと重たいまぶたを持ち上げました。
そこには、いつもと変わらない天井。
いつもと変わらない布団。
いつもと変わらない日差しや、いつもと変わらない目覚ましが鳴り響く。
一つ、いつもと違うものがあるとするならば。
「…んにゃ…『 』様…ゆめ、の…ごしゅじんしゃ…ま…」
自分の胸板に顔を埋めた、この少女くらいだ。
…さて、ここから先は、『貴方』達しか知り得ません。
ですから、『貴方』とユメのその後の物語は―――。
『貴方』達の、御想像という事で♪
愛色猫娘…おわり。
一体いつからそこに居たのか…『貴方』は、不思議に思いました。
仕事で疲れた身体を休ませようと、布団に入ったはずでしたが…。
気が付くと貴方は、少し古い…大きな館の前に佇んでいます。
明晰夢…ではないか…?
貴方は、そう思います。
明晰夢。夢の中で、意志を持って行動出来る夢…。
貴方はそうやって、館の前で数ある疑問を浮かべていました。
すると、いつの間にか開いた大きな扉から、まだ年端もいかない少女が顔を覗かせました。
少女は貴方に向かって微笑むと。
「…こんばんは、『 』様…。お久しぶり、ですね…」
少し頬を赤らめて、貴方にそう言いました。
そこで貴方は思い出します。
あー、そう言えばここ、よく来るなぁ、と。
辺りを見渡すと、貴方には見慣れた暗闇が広がっています。
最初は怖かったのですが、何回、何十回と訪れていたので貴方はもう、慣れてしまっています。
そんな貴方に、少女が告げました。
「…『 』様…今日も、準備…できて、ますので…、いきま、す…?」
もじもじと、しどろもどろにそう告げる少女も見慣れていた貴方は。
『 』
と、告げてから少女の手を握ってあげました。
そうすると少女は小さく微笑み、いつも通りに小さく礼を述べてから、貴方を部屋へ誘います。
長い長い、奥が見えない廊下を進む事は無く、貴方が入るのは最初から二番目の部屋。
赤い火を灯す蝋燭の下…銅で出来た名札には、貴方の名前が刻まれています。
「…えと、では…『 』様…。もっといっぱいお話したいですが、どうぞ…お入りくださいませ…」
少し残念そうに呟いて、貴方の手から温もりのある少女の手が離れました。
貴方は何故、少女が部屋に入らないのか疑問がありましたが、何故か訊くことが出来ません。
なので、いつも通りに部屋に入ろうとして…立ち止まります。
「…えと、どうされ、ました…?」
一瞬だけ、ぱぁ…と明るい笑顔を浮かべた少女でしたが、それは本当に一瞬だけ。
そんな少女に貴方は、ポケットの中にあったそれを…手渡します。
『 』
それは貴方が、居酒屋によった時に貰った飴玉です。
「…ぁ…えと…貰っても、良いのですか…?」
もじもじ。
いつもより赤面した少女に貴方は『 』と、肯定します。
すると少女は、包装袋に包まれた飴玉をぎゅっと握り締め、貴方に向かって御礼を言いました。
「あの、ありがとぅ…で、す…」
すっかり真っ赤に染まった頬を隠すように俯いた少女の頭を、貴方は撫でてから部屋に入ります。
「…ぁ……。…『 』様…、お楽しみ、くださいね…?」
やっぱり少し残念そうに呟いて、少女は部屋の扉を閉めました。
すると、す…っと消える扉。
貴方はもう、それも飽きるほど見ているので別に気にもとめませんでした。
ただ、貴方が向かうのはその先にある少しだけ広い部屋。
貴方は、その部屋が好きでした。
仕事で疲れた貴方を癒やしてくれる存在が、いつもそこに待っているのです。
少し歩いて、部屋の扉を開けると―――。
…みー。
その小さな声を聞いて、貴方は思わず顔がにやけてしまいました。
貴方の足元にスリスリと体をすり付けている黒猫…。
貴方はいつも、この館のこの部屋で、その子猫と遊びます。
部屋にはふかふかの絨毯があり、貴方はいつもそこに転がって子猫と戯れるのです。
部屋の隅に置いてある玩具箱の中にある猫じゃらしや転がすと鈴の音がなるボールも使って目一杯遊びます。
貴方にとってそれは、とても魅惑的な遊びです。
猫じゃらしに一生懸命猫パンチを繰り出す子猫を見ていると貴方は和みます。
鈴の音がなるボールを全力で追いかけている子猫を見ていると、自然と笑みがこぼれます。
だって貴方は、白い首輪のついた…『ユメ』という名の黒猫が大好きなのですから。
だけど貴方は今日、とっても疲れていたので…、ユメを撫でるだけです。
一応玩具も出したのですが、貴方は横に転がってユメを愛でるだけ。
なでなでなでなで、と頭や顎、体を撫でる貴方。
ユメはみー、と、小さく鳴いて貴方から離れようとしますが、貴方は離してあげません。
それどころか、ジタバタともがく所も可愛いなぁ、なんて思うくらいです。
しかしやはり、ユメも生き物なので。
やっぱり、怒る時は怒るのです。
ふー、ふーっ、とユメが貴方に向かって荒い息を吐いています。
ふにゃふにゃと言う鳴き声はまるで、貴方に文句を言っているようで。
貴方がそんなユメを未だに離さないのがいけなかったのか、事件は起こりました。
…ぱしっ。
『 』
貴方は痛、と声をあげました。
それは一瞬でしたが、貴方はユメに猫パンチされたのです。
ユメはまだ荒い息のままですが、少し…申し訳無さそうな顔をしています。
そんなユメを見て、貴方は全く怒る気にはなりませんでした。
全ては、嫌がっていたのに束縛した自分のせい。
そう思った貴方は、ユメに『 』と小さく謝罪してから部屋を出ました。
マンションのような構造のこの場所には、他にも部屋があるのです。
貴方が向かったのは、洗面所。
とりあえず、ユメに猫パンチされた指を洗いたいのです。
思ったより鋭いユメの爪は、貴方の指先を少し深く切り裂きました。
ですから、まずは水で洗いたいのです。
ジャー、と水で指先を濡らすと、冷水が傷口に突き刺さるような痛みがありました。
貴方は、ちょっと深くやっちまったなぁ、と思いながら痛みに耐えます。
そんなこんなで、指先に冷水を当てていると…。
…リリ…。
貴方の耳に、小さな鈴の音が聞こえました。
きっとユメが追いかけてきたんだな、と貴方は思いましたが、自分の後ろ…鏡に映る姿を見て―――。
バッ! と、振り返ります。
貴方の視線の先…そこには。
「…ぁ……」
小さく声をもらす、見たことのない少女が居ます。
漆黒と言えばしっくりくる程に黒く、結構跳ねた短髪。
その頭にはピコピコとした漆黒の耳と、ゆらゆら揺れる一本のアホ毛。
コバルトブルーの瞳が特徴的な、色白で小柄…150前後ぐらいの身長の少女。
『 』
誰だ、と貴方が質問をします。
…が。
「ぁ…指……っ」
貴方の質問に少女は答えません。
ただ、さっ、っと貴方の手を取り、ユメに猫パンチされたその指を…。
…れろ。
ザラッとした舌が、貴方の指に絡みつきます。
瞬間、ぞくりとした感覚と鋭い痛覚が指先に走り思わず手を引こうとしますが、出来ません。
ぷにぷにとした肉球のついたふさふさの手で、しっかりと貴方の手が押さえられているので仕方がありません。
…れろ。
また、痛みが貴方の指先に走ります。
ですが、その一舐めで少女は貴方の指先を解放しました。
「かあさまが、怪我したら唾液をつけろって教えて下さいましたので…」
ジンジンする指先を抑えた貴方に向かって、少女はそう告げました。
ですがそんな事よりもまず、貴方は少女に再度問い掛けます。
すると。
「…? ユメは、ユメですよ?」
と、告げてから、更に疑問が増えた貴方にすり寄る少女。
「…引っ掻いて、ごめんなさい……御主人様…」
ふにぁあぁぁ…、と小さく鳴いた少女は、貴方の胸板に顔を埋めながらスリスリと頬ずりを繰り返します。
…何なんだこの子。
貴方はそう思いましたが、少女の首についた首輪を見て…困惑しました。
少女の首輪は、デザインからしてユメの物と同じでした。
違うのは、サイズだけ。
さらに貴方は、もう一つだけ…気付きました。
ピコピコと動く、少女の猫耳。それは紛れもなく、本物。
そして貴方の腕に、くすぐったい感覚を残して巻きついた二本の尻尾も、本物。
つまり、この子は…。
思い、頭の中で否定する貴方。
だけど、ユメは猫で、猫だから、え?
貴方の頭の中では疑問が渦を巻いています。
そこで、貴方の脳裏に絨毯の上でゴロゴロするユメの姿が浮かびあがります。
嗚呼、そうだ。ユメは、あの部屋に居る――。
貴方は少女を押しのけて絨毯のある部屋に急ぎました。
そして、ドアを開けて。
『 』
ユメの名前を呼ぶ。
ユメは猫のくせに、名前を呼ぶと「にー」と返事をするのだ。
だが。
貴方に、可愛らしい子猫の鳴き声は聞こえません。
代わりに…。
「御主人様っっ♪ お呼びですかっ♪」
やけに嬉しそうな、漆黒の猫娘に後ろから抱きつかれる貴方。
そのまま勢い余って、貴方は絨毯の上に倒れこみました。
前のめりになる貴方の背中に張り付いた猫娘。
「ふにゃー、んにゃー♪」
と、鼻歌みたいに歌いながら貴方はスリスリと頬ずりされています。
貴方の背中に感じる、程良い重みと女の子特有の柔らかい身体。
少し変な気分になりそうな貴方は、少女をふりほどこうとしましたが、出来ません。
もし、本当にこの子がユメなら。
そんな思いが少なからずある貴方には、ユメが好きな事をやらせてあげたいという貴方には、ふりほどけないのです。
貴方の脳裏に浮かぶ、ユメとの思い出。
初めて会った時は、よく噛まれたなぁ、とか。
にゃー、ってまともに鳴けなくて、にー、にーと鳴くユメの姿とか。
ボールを追い掛けて、盛大に転けた時のユメとか。
色々な思い出が、貴方の中に渦巻きます。
だからこそ貴方は困惑します。
だって今のユメは、貴方の知っているユメではないのですから。
「…ん…御主人様の、におい……♪」
むぎゅうぅぅ。
貴方の背中から、しっかりと抱き付いて離れようとしない少女。
やっぱり、この子は…。
そう思った時、貴方は、貴方の目の前に落ちているそれを見つけました。
…猫じゃらし。
ユメは、これが大好きで。
貴方の記憶の中のユメは、猫じゃらしが大好きでした。
だから貴方は、その猫じゃらしを取って…。
…わしゃわしゃ。
動かしました。自分の背中にいる、少女に向かって。
すると。
「…っ。…っ、っ!」
ぱし、ぱしぱし。
頬ずりを中断して、荒い息になった少女が猫じゃらしにパンチを繰り出します。
それが分かって、貴方は小さく笑いました。
『 』
貴方は、少女の名を呼び、仰向けになって少女を抱き寄せます。
「…ん。御主人様…」
少女…ユメも、同じ様に。
昔からよく貴方の上で寝ていたユメの、貴方の胸板というベストポジションに抱き付きました。
やっぱり、この子はユメなのだ。
姿形が変わっても、この子はユメ。
なら、今までみたいに普通に接して―――。
貴方はそう思って、ユメの頭を撫でました。
…が。
今まで通りの、猫と人間の生活を続ける気なんて、ユメにはありませんでした。
ユメにとって貴方は、家族であり、主であり、想い人であり、そして。
一匹の、“雄”なのですから。
ちゅ…ちゅぅ…。
気を抜いた貴方の唇に当たる、温かく、熱く、柔らかい唇。
一体何をされたのか、貴方にはまだ、分かりません。
「んっ…御主人様…御主人様…んんぅ…御主人、さま…っ」
貴方に対して、長い間隠してきた自分自身を。
貴方に対して、一番魅力的だと思わせたい自分自身を。
貴方に対して、ユメという雌を。貴方に刻みつける為に、唇を吸い上げるユメ。
ただ、一心不乱に。
貴方は、そんなユメの想いも分かりません。
分からないから、自分が何をされているのかすら気付けない。
貴方は無意識の内に、ユメの唇を堪能します。
貴方の上唇をくわえるように、ユメの唇が挟み込み、吸い上げる。
微力な快楽が貴方の唇に走って、気持ち良い。
…れろ。
貴方の唇と歯茎の間。そこに、ユメの舌が滑り込みました。
貴方の唾液をからめ取るざらつきのある舌。
そしてそのざらつきは、貴方の口内に絶妙な快楽を残して…外に出る。
つー、と唾液が糸を引き、艶めかしく光る。
「…あまい、です……」
紅潮した顔が、またしても貴方に近付きます。
はぁ、はぁと喘ぐユメの呼吸が唇に触れて、くすぐったい。
そんな貴方の唇に、またしても重なるユメの唇。
今度は、吸わない。
だけど、貴方の唇をかき分けて侵入してくる、舌。
甘い味のするユメの唾液はさながら、貴方に対する媚薬のようで。
ユメの唾液は、絡み合う舌を伝って貴方の口内に滴り落ちた。
…んくっ。
貴方が、ユメに何をされているのか。
口内に出来たユメの唾液の池を飲み干した今、気付いたところでもう遅い。
かぁぁ、と熱くなる喉には、既に媚薬の池が流れ込んだ。
ユメの唾液は、貴方の思考を溶かす。
或いは既に…溶けていた。
ならば今いる『貴方』は、もう既に『ヒト』ではなく。
ユメという“雌”を蹂躙するが為の、“『 』という名の獣”である。
もう、意識は、意志は必要ない。
貴方は、一匹の雄。
そしてユメが、貴方が孕ませるべき雌なのだ。
故に貴方は今、無意識だった。
唇が、舌が与える快楽では、満足できない。
ならば。
貴方は、ユメを自分の体から引き剥がした。
少しだけ、乱暴に。
だけど少しだけ、優しく。
絨毯の上へうつ伏せに転がったユメに覆い被さり、襲いかかる。
それを引き起こしたのは、興奮か、背徳感を得たからか。
貴方は自身の愚息を取り出し、もとより和服以外…下着すら身につけていないユメに、押し当てた。
「にぁぁぁっ ♥ ふぁっ♪」
肉棒で肉のヒダをかき回し、ユメの胎内から溢れ出す愛液を亀頭に塗りたくる。
滑りながらも温かい肉の与える快楽が亀頭に伝わり、直ぐにでも射精してしかねない貴方。
だが、どうだって良い。
どうだって良いと思う自分の思考すら、貴方は今、第三者視点で考える。
貴方が今、求めているモノは。
ぬちゅっ。
勢いに任せて、貴方はユメの胎内へペニスを押し入れる。
「ん゛やぁぁっ ♥ ごしゅじんしゃまっ ♥ ごしゅじんしゃ、まぁっ ♥ ♥」
貴方は、キツく押し返してくる肉壺を押し広げ、ペニスに絡みつく柔らかな肉の感触と共にそれを突き上げた。
「ふぁんっ ♥ やぁ ♥ ごしゅじっ ♥ ♥ んにゃぁぁぁぁ〜〜〜っっ ♥ ♥」
貴方はユメの最奥へ到達すると共に、白濁の快楽を解き放つ。
膣内を振動させ、溢れかえり、尚も終わらない射精に腰を震わせる貴方。
だが、まだ終わらない。
圧倒的なまでの快楽を巻き起こす射精中に、貴方は何度も何度も腰を打ち付ける。
「にゃっ ♥ あっ、んんっ ♥ にゃあぁっ、あっ ♥ ごしゅじん、ぁっ ♥ しゃまっ ♥ ♥ 」
野生動物の交尾のようにユメを押さえつけ、快楽を与え、与えられ。
ドクッ、ビュッ、デュルルルルルルッッ!
そして、またしても射精。
「にゃあぁぁぁあぁぁぁぁぁぁっっっ ♥ ♥ ♥」
貴方の絶頂に合わせて、既に何度目かすら分からない絶頂に至るユメ。
それと同時に、貴方に帰ってくる“ヒトとしての理性”。
『 』
とっさにユメから離れ、謝罪する。
が。
「…ごしゅじんしゃ、ま……すき… っ♥」
子宮を塞いでいたペニスが膣内から抜けた事で、精液が股から溢れ出すユメ。
そのユメが、貴方に迫り…。
…ちゅ。
触れるだけのキス。
そしてそのまま肩を押され、抱き付く形で貴方はユメと倒れ込む。
ユメの腰に回した貴方の腕には二股の尾が絡みついた。
そして貴方自身に、ぎゅぅっと抱き付いたユメが、二度目のキスを行う。
…ちゅ ♥
熱い唇が、貴方の唇を塞ぎ、離れた。
と、同時に、再び貴方のペニスに快楽が走る。
貴方の胸板へ顔を埋めたユメが、自分から貴方を受け入れる。
にゅぷ…ぬぬ…ぐっ。
ユメの子宮口を、貴方の愚息が押し上げる。
「んっ、んんんっ ♥」
貴方の服に、肩に、胸板にしがみつきながらも、腰を振るユメ。
ぐっ、ぐっ、ぐっ。
子宮口を押し上げ、腰が引ける程の快楽を得た貴方のペニスがビクビクと震える。
「んっ、ふぁあっ ♥ んんっ♪」
そして、一際強く押し上げて。抱き寄せて、抱きつかれて、射精。
「んっ、ふぁ ♥ ひゃあぁっっ ♥ ごしゅじっ、んっ ♥ ♥ さまぁっ ♥ ♥」
急激な疲労感に、一端目を閉じると―――。
※
「…『 』様、御時間、です…」
貴方の目の前に、あの少女がいた。
自分のした行為に恥ずかしさを感じていた貴方をよそに、少女は告げる。
「…あの、楽しめました、か…?」
少女はそれだけ告げて、少し…黙った。
そして…。
「…『 』様…また、来てください、ね…? わたし、ずっと、まってます、から…」
…ころ。
飴玉を口内で転がす音がしたかと思うと、少女の姿が霞んでいく。
気付けば、自分自身も霞んでいる気がして。
前を見ると、既に少女は消えていた。
そして、貴方も…薄れていって―――。
―――ピピピピピピ。
鳴り響いた目覚ましの音に、貴方はゆっくりと重たいまぶたを持ち上げました。
そこには、いつもと変わらない天井。
いつもと変わらない布団。
いつもと変わらない日差しや、いつもと変わらない目覚ましが鳴り響く。
一つ、いつもと違うものがあるとするならば。
「…んにゃ…『 』様…ゆめ、の…ごしゅじんしゃ…ま…」
自分の胸板に顔を埋めた、この少女くらいだ。
…さて、ここから先は、『貴方』達しか知り得ません。
ですから、『貴方』とユメのその後の物語は―――。
『貴方』達の、御想像という事で♪
愛色猫娘…おわり。
12/07/12 09:39更新 / 紅柳 紅葉
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