誰にも見つからない場所
それはある青年が気分転換と運動不足の解消を兼ねて海水浴に行った時の事だった。
その日は太陽がぎらぎらと照りつけていて、青年は生温い海で肌を湿らせていた。
青年の周りでは若いカップルや家族連れが浮き輪やボートを使って楽しそうに泳いでいる。
流れてきた海藻が足に絡みつき、気持ち悪さを多少感じながら特に何をするわけでもなく漂っていた。
「またか……」
足に何度も絡みつく海藻。
試しに掴んで拾い上げてみると幾重にも絡まった薄茶色の海藻が姿を現した。
それを見てすぐ捨てたが、また違う海藻が足に絡みつく。
この海はあまり綺麗ではないのだろう。
その辺りのコンビニでもらったであろうビニール袋の切れ端が体に貼りつく事もある。
泳ごうと思っても海水は口に入ると異様にしょっぱく、辺りのゴミと相まって不快でしかなかった。
良いイメージに釣られて来てみたが、失敗だったみたいだ。
とりあえず砂浜に戻ろうと思った矢先にまた足に何かが絡みついた。
また海藻か、あるいはゴミか。
青年は少しイラつきながら足を上下に激しく振った。
しかし、それでもその何かは剥がれ落ちない。
仕方ないので掴んでみるが、驚くことに、びくともしなかった。
それに、なんだかぬるぬるしている……
「え……」
さすがに不審に思い足を水面にあげてみると、そこにはタコの吸盤のような触手が青年の右足を絡め取っていた。
その触手は異様な大きさで、普段食べているタコの足とは比較にならなかった。
青年は身の危険を感じて、すぐに砂浜へ向かおうとしたが、気付けば強い水流に巻き込まれて沖の方まで流されていた。
「だ、だれか助けてくれ!」
声を荒げても波の音にかき消され、ただ、青年は触手にぐいぐいと引っ張られていく。
手をバタバタ動かしてみても、足から引き剥がそうとしても、全くの無意味。
そのままひたすら流され、砂浜が見えなくなった途端、なぜか触手の力が緩んだ。
そしてその本体がざばあと水中から顔を出し、その正体を晒した。
少女……というよりは妖艶な女性がにやつきながらこちらを見ている。
豊かな胸と、綺麗にウェーブがかかった紫の髪はまるでアメジストのように高級感たっぷりに輝いている。
あまり綺麗とは言えないこの海にはふさわしくない光景だ。
「初めまして……私はセシア。この海で生活しているの」
どうやら彼女は人間の言葉を喋れるようだった。
見た目も人間に近い……というより人間にしか見えないが、こんな沖で平然と構えていられる人間を青年は知らなかった。
「人間からはクラーケンと呼ばれているらしいけどご存知かしら?」
「し、知らない……」
神話だったり、怪談話、はたまたパニック映画なんかで、イカやタコの化物として知られている名前ではあるが、目の前の女性がそのクラーケンにはとても見えなかった。
映画のクラーケンはもっと大きくて、ずぶとい触手で船や潜水艇を巻きつけてぐしゃぐしゃにしてしまうほどのパワーの持ち主だ。
それに比べて目の前の女性は化け物とはとても形容しがたく、何より華奢であった。
下手すれば奇抜なコスプレと間違わられてもおかしくない出で立ちだ。
きっとクラーケンはあだ名か何かだろう。
そんなあだ名が付けられる経緯なんて想像も出来ないけど、そうに違いない。
そうであってくれないと、パニック映画の犠牲者のようにいつ殺されてもおかしくない。
「ふふ、まあいいわ。私がなんで貴方をここまで連れてきたか、大方予想はつくでしょう?」
「いえ……まったく」
笑顔のセシアは突然目を大きく見開き、光を失った目で青年を見つめる。
「なら教えてあげようか? ここまで海を汚した人間に対する当然の報いを受けてもらうの。よかったわね、記念すべき最初の犠牲者は貴方よ」
「……え、え! そんな!」
「恨むなら自分の行いを呪いなさい。散々海を舐めて汚した罪を償うには死でも軽いくらいだから」
半ば理不尽とも言える理由。
確かに海を汚したのは人間かもしれないが、青年はこの海に初めて来た人間であり、海にゴミを捨てたことは一度もない。
それでも、セシアからは憎悪の念がどす黒く渦巻いている。
ここは絶対に彼女の誤解を解かなければいけない。
セシアは目を細め、触手をぎゅっと締め付ける。
今にも沈ませてやろうという意志を存分に感じられる。
説得しなければ本気で海底まで沈められてしまいそうだ。
「ま、待って! 確かに一部そういう人間もいるかもしれないけど……僕は良い人間だから! その悪い人間とは違うから!」
「そう。私の仲間が同じことを言われたらしいんだけどね。仲間が人間を解放した途端に罵声を浴びせてゴミなんてもっと捨ててやるって言ったのよ。その人間を信じて解放した仲間はひどく傷つけられてね、人間を見ると怯えてがたがた震えるようになってしまったの」
「……」
「それ以来人間を見たら殺そうと思ったわ。海を汚すだけでなく、仲間も傷つけるから。ね? 貴方が海に沈められても文句は言えないでしょ?」
暗い感情を纏いながら、徐々に高圧的になるセシア。
現在の状況は圧倒的に悪い。
反論しなければ、セシアの言うとおり海の藻屑にされてしまうだろう。
「いや違うね!僕は海が大好きだし、君たちも大好きなんだ!」
「沈めるわ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なによ……新鮮な水を吸いたいから早くしてよ」
そんな理由でさっさと連れて行かれたら困ると青年は言いたかったが、これ以上刺激したくなかった。
なんとかセシアを説得しないといけないが、考えがまとまらない。
どうすれば功を奏するのか。
今はただ、マナーの悪い人間を恨んでおくことしかできなかった。
「……時間切れ。ふふ、水圧で死ぬか、窒息で死ぬか……どっちが早いかしらね」
「……セシアさん」
「なにかしら」
「高価な宝石とかけてクラーケンと解きます」
「その心は」
「どちらも触手が伸びるでしょう」
ざばあ!!
その瞬間青年は海に引きずり込まれた。
胴体に絡みついた触手は全く離れる事がなく、青年の腹部をギチギチとしめつけている。
太陽が差す日の光はどんどん遠くなり、暗闇がどんどん近づいてくる。
心底楽しそうに微笑むセシアの顔を見ながら青年はこのまま息絶えると感じていた。
……しかし、そうはならなかった。
「あれ……」
喋れる。息が吸える。視界がクリア。
自分はもうすでに死んで、幽霊にでもなったのかと思ったが、そうではないらしい。
戸惑う青年を見ながらセシアは、くすくすと嘲笑する。
「本気で殺すとでも思った? そんなことしないわよ。私は殺生嫌いなの」
「え……えええ!! じゃ、じゃあさっきのは」
「演技よ演技。人間一人に罪をかぶせて殺すなんて、どうかと思うわ。実際に現場を見たならともかくね……」
「……」
「それと、これは私の力でね、人間でも海で生活出来るようになるの……それにしても怖がる貴方の顔……はあ、結構ゾクゾクしたわよ……ふふ」
荒い息遣い、紅潮する頬。
とりあえず命は助かったようだが、目の前のクラーケンは先程よりもある意味恐ろしかった。
目を離そうとしても、顔を近づけてきて逃してはくれない。
どこまでも沈んでいきそうな、深い深い瞳に魅入られながら、セシアは言葉を紡ぐ。
「貴方……おいしそうよね……ふふ、ふふふふふふふふふふ」
不気味に笑うセシア。
ぎちぎちと触手の締め付けがひどくなり、首からつま先までがんじがらめにされている。
逃してください、と言ってもまかり通るとはとても思えなかった。
そんな体勢で豊かな胸が青年の胸板に押し付けられ、潰れていく。
その柔らかい感触は青年を興奮させるのにも十分だった。
よく見なくても性的なその体がねっとりと青年にまとわりついているのだ。
淫らな気分になっても全くおかしくなかった。
「ずっと狙いを定めていたの……海……オトコ……ひとり……そしたら見事に君が現れて……」
「な……はうっ!」
「無事捕まえましたとさ♪めでたしめでたし」
火照った体を青年の体で冷ますように体をぐりんぐりんと擦り付けてくる。
何故か息が出来る海中での情事。
鼻も使えるため、普段では嗅いだことのない海の匂いと、セシアの高貴な香りが重なりあう。
「ん……ちゅぱぁっ……んんぅ……」
そして水分100%の唇とキスをされる。
貪るように青年の口内を陵辱し、唾液をとくとくと流し込まれる。
青年は、自分でもこの状況がよく理解出来ていなかった。
強引に連れ込まれた海中で、かのクラーケンとキスをしている。
異様だった。
肌に絡みつく触手が快感を促し、思わず力が抜けてしまう。
まるで吸盤から力でも吸われているかのようで、どうにもならない。
ましてやここは水中であり、息が吸えるとは言え、海中での動きはセシアに分があるのは明白だった。
もはや青年の生殺与奪は、セシアに委ねられたようなものだった。
「怯えなくていいからね。貴方は私の責めに屈して悶えてくれればそれでいいから」
「そ、そんな……うああああ!」
うねうねと体に巻き付いていた触手の一部がトランクスの水着の隙間に入り込む。
そしてペニスを見つけると喜んでぎゅるるると巻きつき、硬くなったペニスをさらに興奮に追いやった。
吸盤が先端からカリに張り付き、心地良い圧迫感を与えてくれて、たまらない気持よさだった。
「いいでしょうコレ……吸盤でちゅぱちゅぱ吸い付かれながらぐるぐる巻きにされちゃう感触……乳首もたくさんいじめてあげるからね」
ペニスが喜びの涙を流し始めると、セシアは豊満な胸を青年の乳首の先に当たるようにして思い切り押し潰してきた。
ぎゅううううう……ぎゅうううううううううぅううう……
「こ、こんなことしてどうする気なんだ……」
「もちろん……骨抜きにして深海で一緒に性活するのが目的。ずっと深海にひきこもらせてあげる、よかったわね?」
何にも良くないが、艶やかで魅力的な体を存分に擦り付けられては青年の抵抗の意志も徐々に弱まってくる。
狂おしいほどに密着させられ、セシアの体を思う存分堪能させられる。
ねっとりと触手が全身を締め付け、まさぐり、青年をどんどん脱力させていった。
ペニスに張り付いている触手も、ただ締め付けるだけではなく、青年が感じるポイントを的確に突いているように感じた。
我慢汁が漏れ始め、周りの海水に飲まれては消えていく。
「はぁ〜〜〜」
生暖かい吐息を顔一杯に吐きかけられる。
思わず吸ってしまったピンク色の淫気は、青年の心臓の鼓動を確実に早くさせ、そして目の前のセシアがさらに魅力的に見えた。
整った顔立ち、むちむちした体……肌を重ねるだけで自然と幸福感で満たされていく。
「精液もう出したくて仕方ないわよねえ? 海中でたっくさんどっぴゅんしたい?」
「はぁ、はぁ……そ、そんなことは……」
「そう? こんなに硬くしてるのに……」
抵抗したお仕置きとばかりにぐりっとペニスに張り付いた触手を捻られる。
強烈な刺激に、強がりを言うのが限界に近づいてきた。
「で、でる!」
「ふぅん……」
突然触手の責めがぴたりと止まり、絶妙なイキ殺しを味わうことになった。
あとひとこすり強烈なのをかまされれば間違いなくイかされただろう。
しかし、セシアは楽しんでいる。
青年が快楽に歪み、切なく射精したがっている情けない様を……
「射精シたい時はちゃんとお願いしないとね……わかる?」
「そ、そんな……」
「しないならいいのよ。させないから……ふふ」
ようやく射精欲が弱まったところにまた容赦のない捻りが加えられる。
そして限界まで追い詰められたところで、強い刺激は遠のいていく。
これを何セットもやられては、ひとたまりもなかった。
青年のなけなしのプライドは徐々に壊れていき、そして、頭の中はもう射精することしか考えられなかった。
「お、お願いします……」
「ちゃんとお願いしないとダメよ」
「射精させてください……お願いします……」
「ふふふ、ダーメ。どぴゅどぴゅするにはまだ……入れてないもんねえ……」
舌で人差し指を舐めまわすセシア。
入れる。
嫌な予感しかなかった。
海中を漂うきれいな模様の魚が青年を哀れむように青年の目の前を通りすぎていく。
じっくりねっとり舐められた人差し指を青年に存分に見せつけると、セシアは青年の臀部をまさぐりはじめる。
包み込まれるような触手の暖かさを感じさせながら、青年にトドメをさすべく、弱点を探し当てているのだ。
もしもセシアがその入口を見つけてしまったなら、青年はなすすべもなくなる。
ごぼっ、ごぼっと空気が口から漏れるが、息苦しくなることは全くなかった。
これもセシアの魔法のおかげなのか、彼女を怒らせない限り窒息死するということはなさそうだった。
「んーこの辺りだったと思うんだけど……」
「な、なにが……」
「さあてねえ……あ、これかしら♪」
つつっ……
セシアの細い指先が青年の肛門をなぞるようにして滑らせている。
普段触られる事もない部位を突かれて、思わず青年は声が出てしまう。
「はうっ!」
「……みーつけた。ほら、力を抜いて。今からこの指で貴方の前立腺グリグリいじめて思い切り射精させてあげるから」
確かに青年のペニスは膨張を極め、真っ赤に腫れあがり、射精したくてたまらない状態になっていた。
けれど、前立腺という未知の世界に異性の指を侵入させるほど恐ろしい事はなかった。
ましてやこんな綺麗な人にイジられたらどうなってしまうのだろう……
目の前のクラーケンが同じ人間に見え始めて、限界はとうに越えていた。
「最後の抵抗かしら? 無駄なのにね……」
セシアは体をまた強く密着させ、顔をずいっと青年に近づかせてまた唇を奪った。
先ほどよりも熱い唾液をんぐんぐと咀嚼し、青年に流し込ませる。
絶対に逃げられないように左手で青年の頭を抱えて、無理やり自分のエキスを吸わせる。
魔物が生成した体液が人間の中に入れば何かしらの作用がある。
血液の流れが良くなったり、解毒させるものも存在する。
反対に、毒を持ったものももちろん存在しており、うかつに体液を流し込まれるのは危険とされている。
セシアは体中を弛緩させる作用の液をとくとくと流しこむ。
「ん、んんんぅ!!」
「……さあ、たっぷり飲んでくれたわね。後はお姉さんに任せて、リラックスして触手に揉まれててね……ふふふ」
即効性の効き目がすぐさま現れ、青年の体中から力がすーっと抜けていった。
セシアの触手をさらにストレートに感じられて、身を悶える幸福感に包まれた。
そしてセシアがずっと狙いを定めていた青年の肛門も開く。
「お尻をいじめられて、精液どぴゅどぴゅする準備は出来たみたいね……最後くらいは貴方がイきたいタイミングでイかせてあげる。どう? もうイきたい?」
「や……やめて……まだ……」
「そう。じゃあトドメさしてあげる♪ くすくす……ほら、イきなさい」
じゅぷぅうううううう!!!!
「うあああああああああああ!!!!」
どぴゅうううううう……ぴゅっ……ぴゅっ……
セシアは青年の頼みに耳を傾けず、自らトドメを差すべく、前立腺を思い切り刺激した。
直後に触手によりもみくちゃにされてはたまったものではなかった。
未知の快感を引き出されて、何の抵抗も出来ずにその証を垂れ流すことになった。
長い長い射精がようやく落ち着いてくる。
精液は海中に放たれて、白濁液となり漂っていた。
「出しちゃったわねえ……こんなにいっぱい」
「はあう……ひ、ひどいよぉ……」
「不意を突かれた方が気持ち良かったでしょう?」
水面にいたときとは対照的に天使のような笑顔を浮かべて、青年を優しく抱きしめるセシア。
一切隙を見せず、触手を青年から離さそうとはしなかった。
何がなんでも深海まで来てもらう……
セシアの深い愛情は行動を伴って表された。
もちもちとした体に擦り付けられると、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がっていく。
それほどまでにセシアの体は青年にとってたまらなく魅力的な物になっていた。
「いい子いい子……さて、私達が永遠に暮らす深海まで連れて行ってあげるわ。心配しなくても、貴方を殺したりなんかしないからね。私の体に巻きつかれながらずっと養ってあげる」
セシアは有無を言わさず、すぐさま青年を深海へと引きずり込む。
水圧で死ぬ事も、窒息することもない。
ましてや他の人間に見つかることもない安息の地へ誘われる。
頭がおかしくなりそうな快楽の間で、青年はセシアの嗜虐的な笑みを垣間見る。
セシアはペニスをさわさわと軽く握り、自らの秘所へと導こうとしていた。
「さあ……私の中へようこそ……」
ずむ……ずぷぷぷぅ……
「うあっ! ああああああああ!!」
海中の中での挿入は非常にスムーズだった。
何の障害もなく、ペニスを膣内に落とし込められてしまった。
青年は童貞であったため、その中の感触が人間とどう違うのかはわからなかったが、ただ気持ちいいと思わず口走ってしまう程度には相当の威力があった。
中のヒダが青年の侵入をもてなすようにじゅくじゅくと刺激する。
カリから裏筋まで丹念に嫐られ、正気を保てるわけもなかった。
「あああああ!!……っあ……」
気づけばすでに精を漏らしていた。
クラーケンという異種の膣内でも、侵入者を一瞬で喜ばせ、精を吐き出させるその中は極上の名器であった。
「もうでちゃったの……? 早漏だねえ……くすくす」
「ううっ……」
「少し訓練してあげようか……そんなに早いと濃厚な精液出せないものね……」
ずぷっ! ずぷぷっ!!
セシアは密着したまま何度も腰をグラインドさせ、触手に巻かれ逃げ場のない青年はその反動を抵抗も出来ずに受けることになる。
その快感は凄まじく、並の男ならもう二発目を出しているところだろう。
だが青年にも意地があった。
体は抵抗出来ないとはいえ、心までは全部折れていなかったのだ。
「はぁ……はぁ……」
「よしよし……我慢出来たね……その方が後でたくさんきもちよくなれるんだから……」
ぼやけた頭の中で、フラフラとした視界をなんとか固定される。
今までは胸板で潰れていた大きなおっぱいが目の前に差し出される。
その谷間はどんな薬物よりも危険で、中毒に囚われる気しかしなかった。
けれども乳首を口にねじ込まれた瞬間にそんな警鐘もどこへやら。
ただひたすら送り出される母乳を啜る赤子と化していた。
「おっぱい飲みながらおちんちんバッキバキにして交尾して……贅沢な子ね……ふふふふ」
甘い蜜のような味に舌鼓を打ち、身を侵される事にもはや怯えるようなことはなくなった。
夢なら夢であって欲しい……現実逃避をはさみながら、セシアの責めを享受する。
地獄……というよりは天国に近い感覚だった。
「さて、私が今から3つ数えるから……ゼロって言った時にちゃんと我慢出来たら訓練成功ね。出来なかったら失敗。海底に着くまでずっと繋がっていようね」
暗い海中で、爛々と輝くセシアの体。暗い海の底とは思えない明るさだ。
これもセシアの魔法。
自らをより映えるように細工することなど当然の事だった。
膣内でさんざんいじめられたペニスはびくんびくんと震えて、また腰を突き出されたら一巻の終わりだった。
それなのにカウントダウン後の衝撃に耐えろという。
青年は絶望を感じながらも、わずかな希望にしがみついた。
我慢できたからといって逃げられるとは思えないが、自分のわずかなプライドは保持される。
そう思ったのだ。
「3……2……1 馬鹿みたいに素直だね君は……可愛いよ」
ずぷうううううううう!!!!
「そ、そんな! で、出ちゃうよお……」
どぷ……とぷっ……
セシアはそんな僅かなプライドも壊しにかかった。
徹底的に体に負けを体に染み込ませ、快楽地獄で地上のことなど考えさせなくする……
そんな暗い愛情が突き抜けた結果であった。
青年はそんなセシアの不意打ちに我慢出来るわけもなく、勢い良くセシアの中に注ぎ込んでしまう。
「ゼロ……はい、我慢できなかったね」
「ひどいよ……セシアひどい……」
「嘘はついてないわ……ゼロって言った時に射精してなければいいんだもの……ふふっ」
優しく頬を撫でられ、軽くキスされると、青年の絶望もどこへやら、体は確実に喜んでいた。
幾度と無く強制射精させられた疲れからか、青年の意識は飛んでしまう。
そんな青年の顔を見て、セシアはすぐさま耳を青年の胸元に近づけて心臓の鼓動を確認する。
とくんとくんと命を紡ぐ音を聞きながらほっと息をつくと、セシアは静かに微笑んだ。
「誰にも見つからない深海で、永遠を共にしましょうね……」
海水浴へ行き、そのまま行方不明になった青年が地上へと戻ることはなかった。
地上の生活と引き換えに、深海の楽園の暮らしを余儀なくされる。
青年とクラーケンにとっては何者にも代えがたい結末だったのかもしれない。
その日は太陽がぎらぎらと照りつけていて、青年は生温い海で肌を湿らせていた。
青年の周りでは若いカップルや家族連れが浮き輪やボートを使って楽しそうに泳いでいる。
流れてきた海藻が足に絡みつき、気持ち悪さを多少感じながら特に何をするわけでもなく漂っていた。
「またか……」
足に何度も絡みつく海藻。
試しに掴んで拾い上げてみると幾重にも絡まった薄茶色の海藻が姿を現した。
それを見てすぐ捨てたが、また違う海藻が足に絡みつく。
この海はあまり綺麗ではないのだろう。
その辺りのコンビニでもらったであろうビニール袋の切れ端が体に貼りつく事もある。
泳ごうと思っても海水は口に入ると異様にしょっぱく、辺りのゴミと相まって不快でしかなかった。
良いイメージに釣られて来てみたが、失敗だったみたいだ。
とりあえず砂浜に戻ろうと思った矢先にまた足に何かが絡みついた。
また海藻か、あるいはゴミか。
青年は少しイラつきながら足を上下に激しく振った。
しかし、それでもその何かは剥がれ落ちない。
仕方ないので掴んでみるが、驚くことに、びくともしなかった。
それに、なんだかぬるぬるしている……
「え……」
さすがに不審に思い足を水面にあげてみると、そこにはタコの吸盤のような触手が青年の右足を絡め取っていた。
その触手は異様な大きさで、普段食べているタコの足とは比較にならなかった。
青年は身の危険を感じて、すぐに砂浜へ向かおうとしたが、気付けば強い水流に巻き込まれて沖の方まで流されていた。
「だ、だれか助けてくれ!」
声を荒げても波の音にかき消され、ただ、青年は触手にぐいぐいと引っ張られていく。
手をバタバタ動かしてみても、足から引き剥がそうとしても、全くの無意味。
そのままひたすら流され、砂浜が見えなくなった途端、なぜか触手の力が緩んだ。
そしてその本体がざばあと水中から顔を出し、その正体を晒した。
少女……というよりは妖艶な女性がにやつきながらこちらを見ている。
豊かな胸と、綺麗にウェーブがかかった紫の髪はまるでアメジストのように高級感たっぷりに輝いている。
あまり綺麗とは言えないこの海にはふさわしくない光景だ。
「初めまして……私はセシア。この海で生活しているの」
どうやら彼女は人間の言葉を喋れるようだった。
見た目も人間に近い……というより人間にしか見えないが、こんな沖で平然と構えていられる人間を青年は知らなかった。
「人間からはクラーケンと呼ばれているらしいけどご存知かしら?」
「し、知らない……」
神話だったり、怪談話、はたまたパニック映画なんかで、イカやタコの化物として知られている名前ではあるが、目の前の女性がそのクラーケンにはとても見えなかった。
映画のクラーケンはもっと大きくて、ずぶとい触手で船や潜水艇を巻きつけてぐしゃぐしゃにしてしまうほどのパワーの持ち主だ。
それに比べて目の前の女性は化け物とはとても形容しがたく、何より華奢であった。
下手すれば奇抜なコスプレと間違わられてもおかしくない出で立ちだ。
きっとクラーケンはあだ名か何かだろう。
そんなあだ名が付けられる経緯なんて想像も出来ないけど、そうに違いない。
そうであってくれないと、パニック映画の犠牲者のようにいつ殺されてもおかしくない。
「ふふ、まあいいわ。私がなんで貴方をここまで連れてきたか、大方予想はつくでしょう?」
「いえ……まったく」
笑顔のセシアは突然目を大きく見開き、光を失った目で青年を見つめる。
「なら教えてあげようか? ここまで海を汚した人間に対する当然の報いを受けてもらうの。よかったわね、記念すべき最初の犠牲者は貴方よ」
「……え、え! そんな!」
「恨むなら自分の行いを呪いなさい。散々海を舐めて汚した罪を償うには死でも軽いくらいだから」
半ば理不尽とも言える理由。
確かに海を汚したのは人間かもしれないが、青年はこの海に初めて来た人間であり、海にゴミを捨てたことは一度もない。
それでも、セシアからは憎悪の念がどす黒く渦巻いている。
ここは絶対に彼女の誤解を解かなければいけない。
セシアは目を細め、触手をぎゅっと締め付ける。
今にも沈ませてやろうという意志を存分に感じられる。
説得しなければ本気で海底まで沈められてしまいそうだ。
「ま、待って! 確かに一部そういう人間もいるかもしれないけど……僕は良い人間だから! その悪い人間とは違うから!」
「そう。私の仲間が同じことを言われたらしいんだけどね。仲間が人間を解放した途端に罵声を浴びせてゴミなんてもっと捨ててやるって言ったのよ。その人間を信じて解放した仲間はひどく傷つけられてね、人間を見ると怯えてがたがた震えるようになってしまったの」
「……」
「それ以来人間を見たら殺そうと思ったわ。海を汚すだけでなく、仲間も傷つけるから。ね? 貴方が海に沈められても文句は言えないでしょ?」
暗い感情を纏いながら、徐々に高圧的になるセシア。
現在の状況は圧倒的に悪い。
反論しなければ、セシアの言うとおり海の藻屑にされてしまうだろう。
「いや違うね!僕は海が大好きだし、君たちも大好きなんだ!」
「沈めるわ」
「ちょ、ちょっと待って!」
「なによ……新鮮な水を吸いたいから早くしてよ」
そんな理由でさっさと連れて行かれたら困ると青年は言いたかったが、これ以上刺激したくなかった。
なんとかセシアを説得しないといけないが、考えがまとまらない。
どうすれば功を奏するのか。
今はただ、マナーの悪い人間を恨んでおくことしかできなかった。
「……時間切れ。ふふ、水圧で死ぬか、窒息で死ぬか……どっちが早いかしらね」
「……セシアさん」
「なにかしら」
「高価な宝石とかけてクラーケンと解きます」
「その心は」
「どちらも触手が伸びるでしょう」
ざばあ!!
その瞬間青年は海に引きずり込まれた。
胴体に絡みついた触手は全く離れる事がなく、青年の腹部をギチギチとしめつけている。
太陽が差す日の光はどんどん遠くなり、暗闇がどんどん近づいてくる。
心底楽しそうに微笑むセシアの顔を見ながら青年はこのまま息絶えると感じていた。
……しかし、そうはならなかった。
「あれ……」
喋れる。息が吸える。視界がクリア。
自分はもうすでに死んで、幽霊にでもなったのかと思ったが、そうではないらしい。
戸惑う青年を見ながらセシアは、くすくすと嘲笑する。
「本気で殺すとでも思った? そんなことしないわよ。私は殺生嫌いなの」
「え……えええ!! じゃ、じゃあさっきのは」
「演技よ演技。人間一人に罪をかぶせて殺すなんて、どうかと思うわ。実際に現場を見たならともかくね……」
「……」
「それと、これは私の力でね、人間でも海で生活出来るようになるの……それにしても怖がる貴方の顔……はあ、結構ゾクゾクしたわよ……ふふ」
荒い息遣い、紅潮する頬。
とりあえず命は助かったようだが、目の前のクラーケンは先程よりもある意味恐ろしかった。
目を離そうとしても、顔を近づけてきて逃してはくれない。
どこまでも沈んでいきそうな、深い深い瞳に魅入られながら、セシアは言葉を紡ぐ。
「貴方……おいしそうよね……ふふ、ふふふふふふふふふふ」
不気味に笑うセシア。
ぎちぎちと触手の締め付けがひどくなり、首からつま先までがんじがらめにされている。
逃してください、と言ってもまかり通るとはとても思えなかった。
そんな体勢で豊かな胸が青年の胸板に押し付けられ、潰れていく。
その柔らかい感触は青年を興奮させるのにも十分だった。
よく見なくても性的なその体がねっとりと青年にまとわりついているのだ。
淫らな気分になっても全くおかしくなかった。
「ずっと狙いを定めていたの……海……オトコ……ひとり……そしたら見事に君が現れて……」
「な……はうっ!」
「無事捕まえましたとさ♪めでたしめでたし」
火照った体を青年の体で冷ますように体をぐりんぐりんと擦り付けてくる。
何故か息が出来る海中での情事。
鼻も使えるため、普段では嗅いだことのない海の匂いと、セシアの高貴な香りが重なりあう。
「ん……ちゅぱぁっ……んんぅ……」
そして水分100%の唇とキスをされる。
貪るように青年の口内を陵辱し、唾液をとくとくと流し込まれる。
青年は、自分でもこの状況がよく理解出来ていなかった。
強引に連れ込まれた海中で、かのクラーケンとキスをしている。
異様だった。
肌に絡みつく触手が快感を促し、思わず力が抜けてしまう。
まるで吸盤から力でも吸われているかのようで、どうにもならない。
ましてやここは水中であり、息が吸えるとは言え、海中での動きはセシアに分があるのは明白だった。
もはや青年の生殺与奪は、セシアに委ねられたようなものだった。
「怯えなくていいからね。貴方は私の責めに屈して悶えてくれればそれでいいから」
「そ、そんな……うああああ!」
うねうねと体に巻き付いていた触手の一部がトランクスの水着の隙間に入り込む。
そしてペニスを見つけると喜んでぎゅるるると巻きつき、硬くなったペニスをさらに興奮に追いやった。
吸盤が先端からカリに張り付き、心地良い圧迫感を与えてくれて、たまらない気持よさだった。
「いいでしょうコレ……吸盤でちゅぱちゅぱ吸い付かれながらぐるぐる巻きにされちゃう感触……乳首もたくさんいじめてあげるからね」
ペニスが喜びの涙を流し始めると、セシアは豊満な胸を青年の乳首の先に当たるようにして思い切り押し潰してきた。
ぎゅううううう……ぎゅうううううううううぅううう……
「こ、こんなことしてどうする気なんだ……」
「もちろん……骨抜きにして深海で一緒に性活するのが目的。ずっと深海にひきこもらせてあげる、よかったわね?」
何にも良くないが、艶やかで魅力的な体を存分に擦り付けられては青年の抵抗の意志も徐々に弱まってくる。
狂おしいほどに密着させられ、セシアの体を思う存分堪能させられる。
ねっとりと触手が全身を締め付け、まさぐり、青年をどんどん脱力させていった。
ペニスに張り付いている触手も、ただ締め付けるだけではなく、青年が感じるポイントを的確に突いているように感じた。
我慢汁が漏れ始め、周りの海水に飲まれては消えていく。
「はぁ〜〜〜」
生暖かい吐息を顔一杯に吐きかけられる。
思わず吸ってしまったピンク色の淫気は、青年の心臓の鼓動を確実に早くさせ、そして目の前のセシアがさらに魅力的に見えた。
整った顔立ち、むちむちした体……肌を重ねるだけで自然と幸福感で満たされていく。
「精液もう出したくて仕方ないわよねえ? 海中でたっくさんどっぴゅんしたい?」
「はぁ、はぁ……そ、そんなことは……」
「そう? こんなに硬くしてるのに……」
抵抗したお仕置きとばかりにぐりっとペニスに張り付いた触手を捻られる。
強烈な刺激に、強がりを言うのが限界に近づいてきた。
「で、でる!」
「ふぅん……」
突然触手の責めがぴたりと止まり、絶妙なイキ殺しを味わうことになった。
あとひとこすり強烈なのをかまされれば間違いなくイかされただろう。
しかし、セシアは楽しんでいる。
青年が快楽に歪み、切なく射精したがっている情けない様を……
「射精シたい時はちゃんとお願いしないとね……わかる?」
「そ、そんな……」
「しないならいいのよ。させないから……ふふ」
ようやく射精欲が弱まったところにまた容赦のない捻りが加えられる。
そして限界まで追い詰められたところで、強い刺激は遠のいていく。
これを何セットもやられては、ひとたまりもなかった。
青年のなけなしのプライドは徐々に壊れていき、そして、頭の中はもう射精することしか考えられなかった。
「お、お願いします……」
「ちゃんとお願いしないとダメよ」
「射精させてください……お願いします……」
「ふふふ、ダーメ。どぴゅどぴゅするにはまだ……入れてないもんねえ……」
舌で人差し指を舐めまわすセシア。
入れる。
嫌な予感しかなかった。
海中を漂うきれいな模様の魚が青年を哀れむように青年の目の前を通りすぎていく。
じっくりねっとり舐められた人差し指を青年に存分に見せつけると、セシアは青年の臀部をまさぐりはじめる。
包み込まれるような触手の暖かさを感じさせながら、青年にトドメをさすべく、弱点を探し当てているのだ。
もしもセシアがその入口を見つけてしまったなら、青年はなすすべもなくなる。
ごぼっ、ごぼっと空気が口から漏れるが、息苦しくなることは全くなかった。
これもセシアの魔法のおかげなのか、彼女を怒らせない限り窒息死するということはなさそうだった。
「んーこの辺りだったと思うんだけど……」
「な、なにが……」
「さあてねえ……あ、これかしら♪」
つつっ……
セシアの細い指先が青年の肛門をなぞるようにして滑らせている。
普段触られる事もない部位を突かれて、思わず青年は声が出てしまう。
「はうっ!」
「……みーつけた。ほら、力を抜いて。今からこの指で貴方の前立腺グリグリいじめて思い切り射精させてあげるから」
確かに青年のペニスは膨張を極め、真っ赤に腫れあがり、射精したくてたまらない状態になっていた。
けれど、前立腺という未知の世界に異性の指を侵入させるほど恐ろしい事はなかった。
ましてやこんな綺麗な人にイジられたらどうなってしまうのだろう……
目の前のクラーケンが同じ人間に見え始めて、限界はとうに越えていた。
「最後の抵抗かしら? 無駄なのにね……」
セシアは体をまた強く密着させ、顔をずいっと青年に近づかせてまた唇を奪った。
先ほどよりも熱い唾液をんぐんぐと咀嚼し、青年に流し込ませる。
絶対に逃げられないように左手で青年の頭を抱えて、無理やり自分のエキスを吸わせる。
魔物が生成した体液が人間の中に入れば何かしらの作用がある。
血液の流れが良くなったり、解毒させるものも存在する。
反対に、毒を持ったものももちろん存在しており、うかつに体液を流し込まれるのは危険とされている。
セシアは体中を弛緩させる作用の液をとくとくと流しこむ。
「ん、んんんぅ!!」
「……さあ、たっぷり飲んでくれたわね。後はお姉さんに任せて、リラックスして触手に揉まれててね……ふふふ」
即効性の効き目がすぐさま現れ、青年の体中から力がすーっと抜けていった。
セシアの触手をさらにストレートに感じられて、身を悶える幸福感に包まれた。
そしてセシアがずっと狙いを定めていた青年の肛門も開く。
「お尻をいじめられて、精液どぴゅどぴゅする準備は出来たみたいね……最後くらいは貴方がイきたいタイミングでイかせてあげる。どう? もうイきたい?」
「や……やめて……まだ……」
「そう。じゃあトドメさしてあげる♪ くすくす……ほら、イきなさい」
じゅぷぅうううううう!!!!
「うあああああああああああ!!!!」
どぴゅうううううう……ぴゅっ……ぴゅっ……
セシアは青年の頼みに耳を傾けず、自らトドメを差すべく、前立腺を思い切り刺激した。
直後に触手によりもみくちゃにされてはたまったものではなかった。
未知の快感を引き出されて、何の抵抗も出来ずにその証を垂れ流すことになった。
長い長い射精がようやく落ち着いてくる。
精液は海中に放たれて、白濁液となり漂っていた。
「出しちゃったわねえ……こんなにいっぱい」
「はあう……ひ、ひどいよぉ……」
「不意を突かれた方が気持ち良かったでしょう?」
水面にいたときとは対照的に天使のような笑顔を浮かべて、青年を優しく抱きしめるセシア。
一切隙を見せず、触手を青年から離さそうとはしなかった。
何がなんでも深海まで来てもらう……
セシアの深い愛情は行動を伴って表された。
もちもちとした体に擦り付けられると、幸せな気持ちが胸いっぱいに広がっていく。
それほどまでにセシアの体は青年にとってたまらなく魅力的な物になっていた。
「いい子いい子……さて、私達が永遠に暮らす深海まで連れて行ってあげるわ。心配しなくても、貴方を殺したりなんかしないからね。私の体に巻きつかれながらずっと養ってあげる」
セシアは有無を言わさず、すぐさま青年を深海へと引きずり込む。
水圧で死ぬ事も、窒息することもない。
ましてや他の人間に見つかることもない安息の地へ誘われる。
頭がおかしくなりそうな快楽の間で、青年はセシアの嗜虐的な笑みを垣間見る。
セシアはペニスをさわさわと軽く握り、自らの秘所へと導こうとしていた。
「さあ……私の中へようこそ……」
ずむ……ずぷぷぷぅ……
「うあっ! ああああああああ!!」
海中の中での挿入は非常にスムーズだった。
何の障害もなく、ペニスを膣内に落とし込められてしまった。
青年は童貞であったため、その中の感触が人間とどう違うのかはわからなかったが、ただ気持ちいいと思わず口走ってしまう程度には相当の威力があった。
中のヒダが青年の侵入をもてなすようにじゅくじゅくと刺激する。
カリから裏筋まで丹念に嫐られ、正気を保てるわけもなかった。
「あああああ!!……っあ……」
気づけばすでに精を漏らしていた。
クラーケンという異種の膣内でも、侵入者を一瞬で喜ばせ、精を吐き出させるその中は極上の名器であった。
「もうでちゃったの……? 早漏だねえ……くすくす」
「ううっ……」
「少し訓練してあげようか……そんなに早いと濃厚な精液出せないものね……」
ずぷっ! ずぷぷっ!!
セシアは密着したまま何度も腰をグラインドさせ、触手に巻かれ逃げ場のない青年はその反動を抵抗も出来ずに受けることになる。
その快感は凄まじく、並の男ならもう二発目を出しているところだろう。
だが青年にも意地があった。
体は抵抗出来ないとはいえ、心までは全部折れていなかったのだ。
「はぁ……はぁ……」
「よしよし……我慢出来たね……その方が後でたくさんきもちよくなれるんだから……」
ぼやけた頭の中で、フラフラとした視界をなんとか固定される。
今までは胸板で潰れていた大きなおっぱいが目の前に差し出される。
その谷間はどんな薬物よりも危険で、中毒に囚われる気しかしなかった。
けれども乳首を口にねじ込まれた瞬間にそんな警鐘もどこへやら。
ただひたすら送り出される母乳を啜る赤子と化していた。
「おっぱい飲みながらおちんちんバッキバキにして交尾して……贅沢な子ね……ふふふふ」
甘い蜜のような味に舌鼓を打ち、身を侵される事にもはや怯えるようなことはなくなった。
夢なら夢であって欲しい……現実逃避をはさみながら、セシアの責めを享受する。
地獄……というよりは天国に近い感覚だった。
「さて、私が今から3つ数えるから……ゼロって言った時にちゃんと我慢出来たら訓練成功ね。出来なかったら失敗。海底に着くまでずっと繋がっていようね」
暗い海中で、爛々と輝くセシアの体。暗い海の底とは思えない明るさだ。
これもセシアの魔法。
自らをより映えるように細工することなど当然の事だった。
膣内でさんざんいじめられたペニスはびくんびくんと震えて、また腰を突き出されたら一巻の終わりだった。
それなのにカウントダウン後の衝撃に耐えろという。
青年は絶望を感じながらも、わずかな希望にしがみついた。
我慢できたからといって逃げられるとは思えないが、自分のわずかなプライドは保持される。
そう思ったのだ。
「3……2……1 馬鹿みたいに素直だね君は……可愛いよ」
ずぷうううううううう!!!!
「そ、そんな! で、出ちゃうよお……」
どぷ……とぷっ……
セシアはそんな僅かなプライドも壊しにかかった。
徹底的に体に負けを体に染み込ませ、快楽地獄で地上のことなど考えさせなくする……
そんな暗い愛情が突き抜けた結果であった。
青年はそんなセシアの不意打ちに我慢出来るわけもなく、勢い良くセシアの中に注ぎ込んでしまう。
「ゼロ……はい、我慢できなかったね」
「ひどいよ……セシアひどい……」
「嘘はついてないわ……ゼロって言った時に射精してなければいいんだもの……ふふっ」
優しく頬を撫でられ、軽くキスされると、青年の絶望もどこへやら、体は確実に喜んでいた。
幾度と無く強制射精させられた疲れからか、青年の意識は飛んでしまう。
そんな青年の顔を見て、セシアはすぐさま耳を青年の胸元に近づけて心臓の鼓動を確認する。
とくんとくんと命を紡ぐ音を聞きながらほっと息をつくと、セシアは静かに微笑んだ。
「誰にも見つからない深海で、永遠を共にしましょうね……」
海水浴へ行き、そのまま行方不明になった青年が地上へと戻ることはなかった。
地上の生活と引き換えに、深海の楽園の暮らしを余儀なくされる。
青年とクラーケンにとっては何者にも代えがたい結末だったのかもしれない。
16/01/22 04:00更新 / コロメ