パピヨン・ドゥ・ヌイ
「ここは...どこなんだろうか?」
そう言いながら、僕ことエーミール・パークライナーはカンテラを右手に持ち、月明かりがなければ一寸先も見えない真夜中の森を彷徨っていた。
周りを見てみても、どれだけ動いてみても、同じ光景しか見えてこず、人影や小屋らしき明かりは見えてこなかった。誰でもいい...誰かいないのか?
そう思い、僕は必死に助けを呼んだ。
「誰か!誰かいませんか!?」
だが、返ってくるのは風で巻き上げられた木の葉の音と、その後の静寂だけだった。
「はぁ...。誰もいないか...。」
それもそうだ。僕がいるこの場所は森の奥深くであり、村人がここまで来ることは殆どないからだ。
その事実を知った僕は、近くにある適当な木を背にし、ランタンを地面に置き、項垂れるように座り込む。
「はぁ...。これからどうしようか...。」
そう弱々しく言いながら、僕は空を見上げる。こんなに暗い森でも星は明るく光っていた。
しかし、僕はなんて愚かしいことをしてしまったのだろう...。行ってはいけない森に行き、挙げ句の果てに迷ってしまうなんて...。
しかも、僕がこの場所に来た理由は、とてもばかげた理由だった。
それは、父さんが子供の頃から言っていた、「守り神」と呼ばれる存在を見つけたいからだった。
この森の奥は、昔から「守り神」と呼ばれる存在がおり、近づくと災いが起こってしまうとして、村人から恐れられていた。
父さんも、その存在を恐れており、この森に薪を取りに来たときは、いつも僕に森の奥に行かないように注意していた。
しかし、僕はどうしても見たかった。その誰も見たことがない不可思議で奇妙な存在が僕の好奇心をくすぐったのだ。
そして、18才になったばかりの今日の晩、父さんが寝た後、僕はベッドから抜け出し、物置小屋で父さんがいつも使っているランタンを取りだし、火を付けて、真夜中の森に行った。
最初はすぐ見つけられると高を括っていた。しかし、森の奥に近づくにつれ、周りを見ても同じ光景しか広がらなくなり、最終的にこの様に迷ってしまったのだ。
「守り神」といういやしない存在を探し出すために森に入り、何も見つけられずにそのまま迷うとは。まったく、馬鹿げた話である。だが、そんな事を今更悔やんでも仕方ない。
そう考えている時、僕のお腹の辺りから「グー」という音が鳴った。
「そういや、腹減ったな...。」
夕飯を食べて何時間が経っているのだろうか?2時間?3時間?いや、それ以上かもしれない。
そう思うと、急に食欲が増してきて、何かを食べたいと欲求が僕の頭の中を駆け巡った。
何か食べたい。何でも良い。食べられるものなら何でも良い!そんな乞食のような思考になっていった。
そういや、今晩の父さんの料理はとても美味かったなぁ...。何でも亡くなった母さんから教えて貰った自信の料理だったとか...。
母さんは僕を生んでまもない頃に亡くなってしまったらしい。そのため、僕は母親の顔を見たことがなく、ずっと父さんの手で育てられたのだ。
父さんはとても優しかった。いつも僕の側で話していて、色々な事を教えて貰った。この森に生息する生物とか、狩りの仕方とか。
そういや、子供の頃、僕が父さんと一緒に食器を洗っているとき時、僕が誤って皿を床に落とし、割れてしまったことがあった。
僕は父さんに怒られるかと思い、涙目になりながら俯いた。
だが、父さんは怒ることなく、僕の頭に手をやり、「誰だってこういうことはあるさ」と言って励ましてくれた。
そんな父さんが大好きだった。とても楽しい日々だった。けど、そんな日々はもう来ないだろう。
だって、もう二度とこの森から出ることが出来ないからだ。
出られないということになると、父さんはどうなってしまうのだろうか?
父さんは母さんが亡くなってしまった後、明るい性格の父さんが一気に暗くなってしまい、元の明るさを取り戻すしたのは、3年後だと聞く。今でも母さんの話題を出すと、父さんの顔は曇ってしまう程である。
そんな父さんが僕を失ってしまうとどうなってしまうのか?自殺でもするのではないか?そんな不穏な考えが僕の頭の中を過ぎる。
すると、僕の目尻から何か生暖かい液体が垂れてきた。
それに僕は驚き、目尻を指で拭う。それは無意識の内に僕が流していた涙だった。
「涙...?」
何故流したのは分からなかった。ここに来てしまったことの後悔からなのか、それともここで飢え死にしていくことが怖いのか、はたまたもう二度と父さんには会えないからなのか。
いずれの理由にしても、僕が涙を流していたことは明確な事実だった。
その事実を確認すると、急に堰を切ったように、僕の目から涙が溢れ出してきた。
「な、なんで...?なんでこんなに涙が溢れ出してくるんだ...?」
理由は分からなかった。けど、涙がどんどん溢れ出してきたのだ。
「うぅ、なんでぇ...?うぐぅ、ひぐ!うううぅぅ....!」
僕は寝る事を放棄し、うずくまるように体を丸め、涙を拭くことも忘れ、流し続けた。もうこのまま流し続けてしまおう。そうすればいずれ涙は止まるのだから。
そう考えた時だった。
「どうしたの?泣いているの?」
不意に、僕の目の前から女性らしき声が聞こえてきた。
その事に驚いた僕は、泣くのをやめ、面を上げる。そこには、信じられない光景が広がっていた。
なんと、柔らかそうな毛を体に生やし、頭に奇妙な眼と触覚を持ち、背中に付いている奇妙な模様が付いた羽を動かしながら、女性が宙を飛んでいるのだ。
僕はその光景に呆気にとられていた。なぜなら、得体の知れないものに出会ったことと、目の前に現れた女性があまりにも美しかったからだ。
「?どうしたの?」
首をかしげながらそう訊いてきた。
そう訊かれた僕は我に返り、流した涙を手で拭き、彼女の質問に答える。
「あ、ああ。何でもないよ!ただあくびをしただけだから。」
「でも...体を丸めて、嗚咽を出していたから...。」
どうやら見られていたらしい。何とも恥ずかしい光景を見られてしまったものだ。
「あー....見られてたか...。」
「うん、見てた。」
子供のように素直にそう言う彼女。そう直球に言われると、ますます恥ずかしい。
気まずくなった僕は、話題を変えようと彼女について訊くことにした。
「君は、ここで何をしているんだい?」
「わたし?わたしは、ここに住んでいるの。」
どうやらここに住む者らしい。もしかすると、彼女が村人に恐れられている「守り神」と呼ばれる存在なのかもしれない。
「じゃあ、君がこの森の「守り神」なのかい?」
「「守り神」?私はただ、この森に住んでいるだけ。」
違うのか。この不思議な感じからして、そうだと思ったんだけどなぁ...。
もしかすると、村人が勝手に名付けただけなのかもしれない。
「で、あなたはなんで泣いていたの?」
彼女が真顔になって訊いてきた。話をずらしたつもりだったのだが、そう上手くはいかなかったらしい。
仕方なく、僕はこうなる前の経緯を省略して話した。
「ふーん...。この森の「守り神」と呼ばれる存在を見つけにいこうとして森に行ったんだけど、結局迷ってしまったのね。」
「ああ、そうなんだ。この森に住んでいる君なら、帰り道が分かるんじゃあないかい?」
わずかな望みを掛けて、そう訊く。この森に住んでいるのなら、村人よりかは大分知っているだろう。
「うん、知ってる。」
彼女がそう行った瞬間、僕は安堵する。よかった、これで森から出られる...。
「けど、今は真っ暗だから、今日はここに留まった方が良い。」
彼女の言うとおりだ。いくら帰る方法が見つかったからといって、焦りは禁物だ。
そういや彼女の名前を聞くのを忘れていた。
「そういえば、君、名前は?」
「名前?名前は...ない。」
僕は彼女の言葉に一瞬驚いた。名前がないなんて、生活で困る事は無いのだろうか?
けど、彼女はこの森に一人で生活してきたのだ。名前を訊かれることも、言う必要もないのでさほど困らないだろう。
顎に手をやり、眉をひそめ、彼女から視線を外して真剣に考える。
「そういえば、あなたの名前は?」
彼女にそう指摘され、僕は考える事を中断し、彼女の方に視線を戻す。そういや、彼女に僕の名前を名乗っていなかったな。
「ああ、ごめん。僕の名前は、エーミール・パークライナー。近くの村に住む村人さ。」
「エーミール....いい名前。」
そう言って、微笑む彼女。そんな顔をされると、少し照れてしまう。
「あ、ああ...ありがとう。」
礼を言い、僕は彼女から顔を逸らす。多分僕は、彼女に一目惚れしてしまったのだろう。心臓が普段より早く鼓動している。
そう逸らしていると、彼女がこう切り出してきた。
「ねぇ、エーミール?あなたを村に戻る道を教える代わりに、私の頼み事を聞いてくれない?」
頼み事?頼み事って何だろうか?
「別にいいよ。で、何を頼みたいんだい?」
そう僕が言った瞬間、彼女の羽が勢いよく動き、羽から鱗粉が舞い、周りに広がる。
「うわ!?何を...!?」
そう言い掛けた瞬間、僕の思考が緩やかになり、「彼女を孕ませたい」ということしか考えることが出来なくなってしまった。
「頼みたいことは...私と一緒に子供を作って欲しいの♥」
子供...?ああ、子供...。君と僕の子供...。とても可愛らしいんだろうなぁ...。
「ああ....いいよ....。」
そう言うと、彼女はおもむろに僕のズボンに手を掛け、一気にズリ落とす。
すると、いつの間にか大きくなった僕の愚息が解放され、大きく震える。
「ふふ...もうこんなに大きくなってる...♥」
微笑みながら僕の愚息をいじる彼女。彼女の手に生えた柔らかい毛並みがくすぐってくて、僕の愚息はビクビクと震える。
「は、早く...してくれないか...?」
「ふふふ...♥分かった♥」
そう懇願すると、彼女は笑い、僕の愚息の角度を調整し、ゆっくりと腰を下ろす。
「んん!」
「ああっ!」
僕の愚息の先端と彼女の秘所が当たる。とても熱くて、溶けてしまうのではないかという錯覚を起こす。この中に全部入ったら...。
だが、僕はそんな恐怖よりも、この後の行為を望んでいた。多分彼女もそう望んでいるだろう。
すると、彼女は僕の考えを読んだかのように、ゆっくりと腰を下げ、自らの秘所に僕の愚息を向かい入れる。
「んんんんん!」
「うああぁぁ...!」
彼女の中を進んでいく感覚は、女性を知らない僕にとっては全身が壊れそうになりそうな快感であり、もはや喘ぐことしかできなかった。
「ああっ!」
「うああああ!!」
遂に彼女の秘所の奥まで入る。その瞬間、僕達は同時に喘ぐ。なんて強い快感なんだ...!
その快感に耐えつつ、眉をひそめながら彼女の顔を見る。
彼女は恍惚な表情をしており、開きっぱなし口からはよだれが垂れていた。
しばらく僕達は快感を享受し、体の痙攣がおさまった後、彼女はゆっくりと腰を上げる。
「んはぁ...♥」
「ああぁ...。」
中のひだが僕の愚息を逆撫でしてきてとても気持ちが良い。しかし、彼女孕ませたい僕は、そんな事では満足出来なかった。
僕は不意に腰を突き上げ、一気に彼女の奥に突き刺す。
「あああぁ!?」
そうした瞬間、彼女は甲高い嬌声を上げる。どうやら彼女自身も予測してなかったらしい。
そのまま、腰を突き上げる動作をする。
「アン!アン!アン!ああああぁ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ!」
一心不乱に腰を突き動かす。今の僕達はまさに獣のような交わりをしているだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ!ごめん、もう出そうだ!」
「アァン!いいよ!私を孕まして!!」
そう言われた瞬間、僕は、僕愚息に溜めていた精液を一気に放出した。
「あああああああああぁぁぁーーーー!!」
「うああああああぁぁぁ!!!」
出した瞬間、彼女と同時に快感の叫び声を上げる。
出している間、彼女の膣が僕の愚息を一滴も出さないように締め付けてきて、それがとても気持ちが良かった。
「ああああぁぁ....。」
「うああぁ....。」
1分くらい続いただろうか。僕達はあまりにも快感を全身で受け止めたため、疲れ果てていた。
彼女も息を切らし、僕の胸に体を預けてきた。
「はぁ、はぁ...とても....気持ち良かったよ。」
「ハァ、ハァ....もっと、気持ち良くなろう...?♥そして、私達の子供を作ろう...?♥」
「ああ....そうだな....。」
そのまま、僕達は子供が出来る事を願い、朝になるまで交わり続けた。
その後、朝になり、僕は彼女から帰り道を教えて貰った。
けど、彼女は涙目になりながら僕の服の裾を掴み、「行かないで...」と甘えるような声で囁いてきた。実際、僕も彼女から離れたくなかった。
そこで、僕は「考えがあるから僕に任せて」と言い残し、別れを惜しみながら村に帰っていった。
村に帰り、僕は自宅の扉を開ける。
開けると、テーブルに父さんが俯いて座っており、僕を見かけるやいなや、こちらに向かって来て、僕を抱きしめ、「ずっと心配してたんだぞ!」と泣きながら叫んだ。
そんな父さんに僕はまた涙を流し、親子揃って叱られた子供の様に泣いた。
しばらくして泣き止んだ後、僕は父さんに「「守り神」と出会った」と言った。すると、父さんは驚いたように僕を見つめ、一段と強く抱きしめ、「何かされなかったか!?」と訊いてきた。
そこで、僕はこれまでの経緯を父さんに話した。もちろん、彼女と性交をしたことは言っていないが
すると、父さんはにこやかに笑い、僕の頭を撫でながら、「よかったな」と言ってきた。久しぶりに撫でられて、少し嬉しかった。
その後、父さんは村の大工を呼び、森の奥に小屋を作るよう言った。
最初は大工も嫌がっていたが、父さんの威圧感と、「「守り神」は襲ってこない」と、一点張りに言われ、しぶしぶ作り始めた。
小屋ができるまでは自宅で過ごしていたが、毎日彼女と会いに行っていた。時折、彼女との性交で2、3日帰らないことがあったが、父さんはその事を黙認しているかのように、何も言ってこなかった。
そして、3ヶ月経った現在。僕は立派に仕上がった小屋で、彼女と共に愛しながら過ごしている。
ちなみに、彼女の名前は「パピヨン・ドゥ・ヌイ」と名付けた。確か、どこかの言葉で「夜の蝶」という意味らしい。
彼女は僕を毎日求めてきて、正直、体が保たないと感じることもあるけど、それ以上の幸せがあるのであまり気にはならなかった。
彼女は村人が言うように森を守ってはいなかったが、これから僕を守ってくれるだろう。
そして、死ぬまで永遠に守り続けるだろう。
僕だけの「守り神」として...。
そう言いながら、僕ことエーミール・パークライナーはカンテラを右手に持ち、月明かりがなければ一寸先も見えない真夜中の森を彷徨っていた。
周りを見てみても、どれだけ動いてみても、同じ光景しか見えてこず、人影や小屋らしき明かりは見えてこなかった。誰でもいい...誰かいないのか?
そう思い、僕は必死に助けを呼んだ。
「誰か!誰かいませんか!?」
だが、返ってくるのは風で巻き上げられた木の葉の音と、その後の静寂だけだった。
「はぁ...。誰もいないか...。」
それもそうだ。僕がいるこの場所は森の奥深くであり、村人がここまで来ることは殆どないからだ。
その事実を知った僕は、近くにある適当な木を背にし、ランタンを地面に置き、項垂れるように座り込む。
「はぁ...。これからどうしようか...。」
そう弱々しく言いながら、僕は空を見上げる。こんなに暗い森でも星は明るく光っていた。
しかし、僕はなんて愚かしいことをしてしまったのだろう...。行ってはいけない森に行き、挙げ句の果てに迷ってしまうなんて...。
しかも、僕がこの場所に来た理由は、とてもばかげた理由だった。
それは、父さんが子供の頃から言っていた、「守り神」と呼ばれる存在を見つけたいからだった。
この森の奥は、昔から「守り神」と呼ばれる存在がおり、近づくと災いが起こってしまうとして、村人から恐れられていた。
父さんも、その存在を恐れており、この森に薪を取りに来たときは、いつも僕に森の奥に行かないように注意していた。
しかし、僕はどうしても見たかった。その誰も見たことがない不可思議で奇妙な存在が僕の好奇心をくすぐったのだ。
そして、18才になったばかりの今日の晩、父さんが寝た後、僕はベッドから抜け出し、物置小屋で父さんがいつも使っているランタンを取りだし、火を付けて、真夜中の森に行った。
最初はすぐ見つけられると高を括っていた。しかし、森の奥に近づくにつれ、周りを見ても同じ光景しか広がらなくなり、最終的にこの様に迷ってしまったのだ。
「守り神」といういやしない存在を探し出すために森に入り、何も見つけられずにそのまま迷うとは。まったく、馬鹿げた話である。だが、そんな事を今更悔やんでも仕方ない。
そう考えている時、僕のお腹の辺りから「グー」という音が鳴った。
「そういや、腹減ったな...。」
夕飯を食べて何時間が経っているのだろうか?2時間?3時間?いや、それ以上かもしれない。
そう思うと、急に食欲が増してきて、何かを食べたいと欲求が僕の頭の中を駆け巡った。
何か食べたい。何でも良い。食べられるものなら何でも良い!そんな乞食のような思考になっていった。
そういや、今晩の父さんの料理はとても美味かったなぁ...。何でも亡くなった母さんから教えて貰った自信の料理だったとか...。
母さんは僕を生んでまもない頃に亡くなってしまったらしい。そのため、僕は母親の顔を見たことがなく、ずっと父さんの手で育てられたのだ。
父さんはとても優しかった。いつも僕の側で話していて、色々な事を教えて貰った。この森に生息する生物とか、狩りの仕方とか。
そういや、子供の頃、僕が父さんと一緒に食器を洗っているとき時、僕が誤って皿を床に落とし、割れてしまったことがあった。
僕は父さんに怒られるかと思い、涙目になりながら俯いた。
だが、父さんは怒ることなく、僕の頭に手をやり、「誰だってこういうことはあるさ」と言って励ましてくれた。
そんな父さんが大好きだった。とても楽しい日々だった。けど、そんな日々はもう来ないだろう。
だって、もう二度とこの森から出ることが出来ないからだ。
出られないということになると、父さんはどうなってしまうのだろうか?
父さんは母さんが亡くなってしまった後、明るい性格の父さんが一気に暗くなってしまい、元の明るさを取り戻すしたのは、3年後だと聞く。今でも母さんの話題を出すと、父さんの顔は曇ってしまう程である。
そんな父さんが僕を失ってしまうとどうなってしまうのか?自殺でもするのではないか?そんな不穏な考えが僕の頭の中を過ぎる。
すると、僕の目尻から何か生暖かい液体が垂れてきた。
それに僕は驚き、目尻を指で拭う。それは無意識の内に僕が流していた涙だった。
「涙...?」
何故流したのは分からなかった。ここに来てしまったことの後悔からなのか、それともここで飢え死にしていくことが怖いのか、はたまたもう二度と父さんには会えないからなのか。
いずれの理由にしても、僕が涙を流していたことは明確な事実だった。
その事実を確認すると、急に堰を切ったように、僕の目から涙が溢れ出してきた。
「な、なんで...?なんでこんなに涙が溢れ出してくるんだ...?」
理由は分からなかった。けど、涙がどんどん溢れ出してきたのだ。
「うぅ、なんでぇ...?うぐぅ、ひぐ!うううぅぅ....!」
僕は寝る事を放棄し、うずくまるように体を丸め、涙を拭くことも忘れ、流し続けた。もうこのまま流し続けてしまおう。そうすればいずれ涙は止まるのだから。
そう考えた時だった。
「どうしたの?泣いているの?」
不意に、僕の目の前から女性らしき声が聞こえてきた。
その事に驚いた僕は、泣くのをやめ、面を上げる。そこには、信じられない光景が広がっていた。
なんと、柔らかそうな毛を体に生やし、頭に奇妙な眼と触覚を持ち、背中に付いている奇妙な模様が付いた羽を動かしながら、女性が宙を飛んでいるのだ。
僕はその光景に呆気にとられていた。なぜなら、得体の知れないものに出会ったことと、目の前に現れた女性があまりにも美しかったからだ。
「?どうしたの?」
首をかしげながらそう訊いてきた。
そう訊かれた僕は我に返り、流した涙を手で拭き、彼女の質問に答える。
「あ、ああ。何でもないよ!ただあくびをしただけだから。」
「でも...体を丸めて、嗚咽を出していたから...。」
どうやら見られていたらしい。何とも恥ずかしい光景を見られてしまったものだ。
「あー....見られてたか...。」
「うん、見てた。」
子供のように素直にそう言う彼女。そう直球に言われると、ますます恥ずかしい。
気まずくなった僕は、話題を変えようと彼女について訊くことにした。
「君は、ここで何をしているんだい?」
「わたし?わたしは、ここに住んでいるの。」
どうやらここに住む者らしい。もしかすると、彼女が村人に恐れられている「守り神」と呼ばれる存在なのかもしれない。
「じゃあ、君がこの森の「守り神」なのかい?」
「「守り神」?私はただ、この森に住んでいるだけ。」
違うのか。この不思議な感じからして、そうだと思ったんだけどなぁ...。
もしかすると、村人が勝手に名付けただけなのかもしれない。
「で、あなたはなんで泣いていたの?」
彼女が真顔になって訊いてきた。話をずらしたつもりだったのだが、そう上手くはいかなかったらしい。
仕方なく、僕はこうなる前の経緯を省略して話した。
「ふーん...。この森の「守り神」と呼ばれる存在を見つけにいこうとして森に行ったんだけど、結局迷ってしまったのね。」
「ああ、そうなんだ。この森に住んでいる君なら、帰り道が分かるんじゃあないかい?」
わずかな望みを掛けて、そう訊く。この森に住んでいるのなら、村人よりかは大分知っているだろう。
「うん、知ってる。」
彼女がそう行った瞬間、僕は安堵する。よかった、これで森から出られる...。
「けど、今は真っ暗だから、今日はここに留まった方が良い。」
彼女の言うとおりだ。いくら帰る方法が見つかったからといって、焦りは禁物だ。
そういや彼女の名前を聞くのを忘れていた。
「そういえば、君、名前は?」
「名前?名前は...ない。」
僕は彼女の言葉に一瞬驚いた。名前がないなんて、生活で困る事は無いのだろうか?
けど、彼女はこの森に一人で生活してきたのだ。名前を訊かれることも、言う必要もないのでさほど困らないだろう。
顎に手をやり、眉をひそめ、彼女から視線を外して真剣に考える。
「そういえば、あなたの名前は?」
彼女にそう指摘され、僕は考える事を中断し、彼女の方に視線を戻す。そういや、彼女に僕の名前を名乗っていなかったな。
「ああ、ごめん。僕の名前は、エーミール・パークライナー。近くの村に住む村人さ。」
「エーミール....いい名前。」
そう言って、微笑む彼女。そんな顔をされると、少し照れてしまう。
「あ、ああ...ありがとう。」
礼を言い、僕は彼女から顔を逸らす。多分僕は、彼女に一目惚れしてしまったのだろう。心臓が普段より早く鼓動している。
そう逸らしていると、彼女がこう切り出してきた。
「ねぇ、エーミール?あなたを村に戻る道を教える代わりに、私の頼み事を聞いてくれない?」
頼み事?頼み事って何だろうか?
「別にいいよ。で、何を頼みたいんだい?」
そう僕が言った瞬間、彼女の羽が勢いよく動き、羽から鱗粉が舞い、周りに広がる。
「うわ!?何を...!?」
そう言い掛けた瞬間、僕の思考が緩やかになり、「彼女を孕ませたい」ということしか考えることが出来なくなってしまった。
「頼みたいことは...私と一緒に子供を作って欲しいの♥」
子供...?ああ、子供...。君と僕の子供...。とても可愛らしいんだろうなぁ...。
「ああ....いいよ....。」
そう言うと、彼女はおもむろに僕のズボンに手を掛け、一気にズリ落とす。
すると、いつの間にか大きくなった僕の愚息が解放され、大きく震える。
「ふふ...もうこんなに大きくなってる...♥」
微笑みながら僕の愚息をいじる彼女。彼女の手に生えた柔らかい毛並みがくすぐってくて、僕の愚息はビクビクと震える。
「は、早く...してくれないか...?」
「ふふふ...♥分かった♥」
そう懇願すると、彼女は笑い、僕の愚息の角度を調整し、ゆっくりと腰を下ろす。
「んん!」
「ああっ!」
僕の愚息の先端と彼女の秘所が当たる。とても熱くて、溶けてしまうのではないかという錯覚を起こす。この中に全部入ったら...。
だが、僕はそんな恐怖よりも、この後の行為を望んでいた。多分彼女もそう望んでいるだろう。
すると、彼女は僕の考えを読んだかのように、ゆっくりと腰を下げ、自らの秘所に僕の愚息を向かい入れる。
「んんんんん!」
「うああぁぁ...!」
彼女の中を進んでいく感覚は、女性を知らない僕にとっては全身が壊れそうになりそうな快感であり、もはや喘ぐことしかできなかった。
「ああっ!」
「うああああ!!」
遂に彼女の秘所の奥まで入る。その瞬間、僕達は同時に喘ぐ。なんて強い快感なんだ...!
その快感に耐えつつ、眉をひそめながら彼女の顔を見る。
彼女は恍惚な表情をしており、開きっぱなし口からはよだれが垂れていた。
しばらく僕達は快感を享受し、体の痙攣がおさまった後、彼女はゆっくりと腰を上げる。
「んはぁ...♥」
「ああぁ...。」
中のひだが僕の愚息を逆撫でしてきてとても気持ちが良い。しかし、彼女孕ませたい僕は、そんな事では満足出来なかった。
僕は不意に腰を突き上げ、一気に彼女の奥に突き刺す。
「あああぁ!?」
そうした瞬間、彼女は甲高い嬌声を上げる。どうやら彼女自身も予測してなかったらしい。
そのまま、腰を突き上げる動作をする。
「アン!アン!アン!ああああぁ!!」
「はぁ、はぁ、はぁ!」
一心不乱に腰を突き動かす。今の僕達はまさに獣のような交わりをしているだろう。
「はぁ、はぁ、はぁ!ごめん、もう出そうだ!」
「アァン!いいよ!私を孕まして!!」
そう言われた瞬間、僕は、僕愚息に溜めていた精液を一気に放出した。
「あああああああああぁぁぁーーーー!!」
「うああああああぁぁぁ!!!」
出した瞬間、彼女と同時に快感の叫び声を上げる。
出している間、彼女の膣が僕の愚息を一滴も出さないように締め付けてきて、それがとても気持ちが良かった。
「ああああぁぁ....。」
「うああぁ....。」
1分くらい続いただろうか。僕達はあまりにも快感を全身で受け止めたため、疲れ果てていた。
彼女も息を切らし、僕の胸に体を預けてきた。
「はぁ、はぁ...とても....気持ち良かったよ。」
「ハァ、ハァ....もっと、気持ち良くなろう...?♥そして、私達の子供を作ろう...?♥」
「ああ....そうだな....。」
そのまま、僕達は子供が出来る事を願い、朝になるまで交わり続けた。
その後、朝になり、僕は彼女から帰り道を教えて貰った。
けど、彼女は涙目になりながら僕の服の裾を掴み、「行かないで...」と甘えるような声で囁いてきた。実際、僕も彼女から離れたくなかった。
そこで、僕は「考えがあるから僕に任せて」と言い残し、別れを惜しみながら村に帰っていった。
村に帰り、僕は自宅の扉を開ける。
開けると、テーブルに父さんが俯いて座っており、僕を見かけるやいなや、こちらに向かって来て、僕を抱きしめ、「ずっと心配してたんだぞ!」と泣きながら叫んだ。
そんな父さんに僕はまた涙を流し、親子揃って叱られた子供の様に泣いた。
しばらくして泣き止んだ後、僕は父さんに「「守り神」と出会った」と言った。すると、父さんは驚いたように僕を見つめ、一段と強く抱きしめ、「何かされなかったか!?」と訊いてきた。
そこで、僕はこれまでの経緯を父さんに話した。もちろん、彼女と性交をしたことは言っていないが
すると、父さんはにこやかに笑い、僕の頭を撫でながら、「よかったな」と言ってきた。久しぶりに撫でられて、少し嬉しかった。
その後、父さんは村の大工を呼び、森の奥に小屋を作るよう言った。
最初は大工も嫌がっていたが、父さんの威圧感と、「「守り神」は襲ってこない」と、一点張りに言われ、しぶしぶ作り始めた。
小屋ができるまでは自宅で過ごしていたが、毎日彼女と会いに行っていた。時折、彼女との性交で2、3日帰らないことがあったが、父さんはその事を黙認しているかのように、何も言ってこなかった。
そして、3ヶ月経った現在。僕は立派に仕上がった小屋で、彼女と共に愛しながら過ごしている。
ちなみに、彼女の名前は「パピヨン・ドゥ・ヌイ」と名付けた。確か、どこかの言葉で「夜の蝶」という意味らしい。
彼女は僕を毎日求めてきて、正直、体が保たないと感じることもあるけど、それ以上の幸せがあるのであまり気にはならなかった。
彼女は村人が言うように森を守ってはいなかったが、これから僕を守ってくれるだろう。
そして、死ぬまで永遠に守り続けるだろう。
僕だけの「守り神」として...。
13/12/15 23:36更新 / こりき