雨が多くなる季節…
　男がひとり、山へと分け入っていた。
　理由は…
　理由は、幸せを捜し求めているからだ。
　幸せ？
　幸せとは何なのか…
　男は、人に聞いた。だが…話を聞くだけでは、要領を得ることはできなかった。
　旅の途中で出会った、互いに手を繋ぎ見つめ合いながら微笑む夫婦。
　恋人を目の前に語る男女…
　彼らは微笑み“幸せ”を語るが…
　それが何かを、いまひとつ理解できない男には…どんなものなのか、いまいち想像が及ばない。きっといいものなのだろうということは分かるが…
　一体…幸せとはなんなのか…

　ある噂を聞いた。だから、“ソレ”を捜している。
　どこまで行けば"ソレ”は、現れるのだろう…

　ここは山の中…一心に空を見上げながら歩く。
　山の上には、黒い雲が…。山の中は、天候の悪化を示すようにだんだんと白いもやなのか、遠くの木々の様子が見えなくなってきた。
　そんな中、近く…頭上。空を覆うように茂る木々の向こう…天をどこまでも覆う雲を見上げながら歩いていると…

「ねぇ、そこの人？どこ行くの？」

　誰かに話しかけられた。
　声のした方に顔を向けると、木の枝の上に女がいた。
　それは、人…ではなかった。その女の腕は鳥の茶色い羽が付いていて、鋭い爪のある鳥の足が見てとれた。
　鳥女…
　くりくりっとした瞳で、何してるの？といった興味顔で、こちらを見つめていた。

「ん？ああ？探してんだ」
「何を？」
「…なんだっていいじゃねぇか」
「探し物だったら、空飛べる私の方があなたよりも探し出せるよ？」
「いいんだよ。いいから、ほっといてくれ」
「なによ〜」
　
　男は来る日も来る日も…探していた。

　雲を…

　雨の降りそうな雨雲を…

　霧の出そうな深い山を…


　空から目を離して女と話していると、もう黒い雲は空を覆い、辺りは暗くなっていた。

「ねぇ。そこの人？雨が降ってくるよ？」
「こいつは間違いなく雨雲なんだな？」
「そうよ？結構降りそうよ？」
「そうかい！なら万々歳よ！」
「？」

　話しているうちに、ぽつり……ぽつり……と雨音が聞こえてきた。

「ねぇ？そこだと濡れちゃうわよ？こちらに来なさいよ」
「…いや、ここでいい。ここで雨の様子を見る」

　男は、荷を下ろして空を仰ぎ見た。

「…風邪ひいても知らないんだから！」
「馬鹿は風邪ひかねぇんだよ！」

　ぽつぽつと聞こえていた音は、すぐにサァァァと音を響かせる。
　雨脚はどんどん強くなり、バシバシと雨が木の葉を…草木を…山肌を…叩く。
　ザァァァァァ っと大粒の雨が土砂降りに流れていく。
　男は、顔を伝い流れていく雨にも目をくれず目を凝らして空を見上げる。と、霧のような靄と黒い雲が足早に流れていく…
　そんな中…向こうの方から、光の筋…雲からは階段のように光る筋が…
　白い靄を突き抜けて、木々の間をゆっくりと照らしていく。
　だんだんと明るく、すこしずつ晴れていく空…
　だが、まだ雨はまばらに降り続いていた…

「…ああ！で、でた！でたぞ！こうしちゃいられねぇ！！」

　急いで荷を背負うと、走り出そうとする男。

「どこいくのよ！」
「出たんだよ！虹が！」

　疾風に煽られるように、足早に通り過ぎていく雲雲。
　地の様子を心待ちにしていたかのように明るい青空が、雲の間から覗いている。
　明るくなった空を背に、今だ降り続いている方を見るとそこには三重の虹が浮かんでいた。
　太くはっきりとした虹…淡く小さな虹…いまにも消えそうな虹が…

「虹？」
「おめぇ、知らねぇのか？虹の足元掘ればお宝があるって！幸せになれんだとよ！」
「ええ？！そんなこと聞いたこともないよぉ！」
「そうかい？なら、あの虹は俺のもんだ！」

　嬉々とした顔で、勢いよく走り出した男。
　女は男を追うように羽ばたくと、その後を追い始めた。
　陽を背に男は走る。

「待ってろよ！俺の虹！！」

　空にはまだ雨雲があり、時々霧雨を吹き付ける。
　そんな男の後ろを、ぴったりと女がついて行く。

「あなたにとっての幸せって何？」
「…わかんねぇ。だからよ、探してんだ」
「ねぇ。もしわかんないんだったら…」
「ああ！重てぇ！くそ！後もう少しだっていうのに！！」

　男はそういうと、背負っていた荷をそこに放り捨てて走り出した。
　足元に伸びる影には、女の影もぴったりとついているのが見える。男の肩のすぐ後ろにぴったりと女の厳つい足が。
　下に伸びる影は、女を肩にとまらせているように見える。
　女は、男に待つように言う。何故、そんなにも追い求めているのだろうか？と。
　だが…そんな女のことなどお構いなしと、男は走り続ける。

「消えるな！消えんじゃねぇぞ！俺の虹ー！！」

　飛ばした竹とんぼを追う、子供のように喜々と走る男。

「待ってよ〜」

　それに遅れまいと、虹と男を見比べながら飛ぶ女

「ああっ！消えてく！」

　ゆっくりと消えていく虹。がむしゃらに走る男。
　女は、そんな様子を見て手助けをしてやろうと、鳥足で男の肩を掴むとそのまま羽ばたいた。

「うわぁぁぁぁ！！こいつ！なにしやがる!!」
「手助けよ。はやくあそこに行きたいんでしょ？」
「そうだ。俺の幸せを逃しちまうワケにはいかねぇしなぁ！」
「…幸せ。わたしのしあわせは…」

　走るよりもずっとはやく、そこへとたどり着いたふたり。だがそれは、近づけば近づくほど消えていった。
　女が周囲を旋回しながら虹があったと思われるところに来ると、虹はもう見えなくなっていた。

「…くそっ！どっかに行っちまった！」
「虹なんてそんなものじゃない」
「でもよぉ…“幸せ”って言うものがなんなのか知りたいじゃねぇか」
「…簡単よ」
「おめぇは…どんなのか知ってんのか？」
「うん。知りたい？」

　肩を落した男に女は問う。

「ああ」
「どうしても？」

　見上げると、女はにこやかに男を見ている。そんな女に頷いた。

「ああ！知りてぇ！それを求めて今までずっと探してたんだからよ！俺には、いまいちわからねぇんだ。だから、知っているんだったら…おめぇの“幸せ”って言うモンを教えてくれ」

　ゆっくりと地面に下りていきながら、女は…

「それはねぇ…？」

　！

　一気に男を地に下ろすと、その勢いのまま押し倒す。
　そして、翼を広げて男の顔をやさしく包み込むと…
　やわらかいもので男の口を覆った。

「？！」
「ちゅっ…♪ えへへ♪ やっちゃった…♪ 」

　抱きついて唇を奪った女…

「おめぇ…くちびるを…」
「…わからない？」
「…？…こんなんが幸せなのか？」
「こんなののわけないじゃない」
「え？じゃぁ…」

　すぐ目の前に女の顔がある。
　大事なものをみつめるように、目を大きく見開いて男を見つめている。

「……」
「……」

　まっすぐに、目を見つめる女
　男は、気まずくなって目を逸らすが…ん？とでも言うかのように、その視線は追いかけてくる。
　その大きな瞳いっぱいに開いてじっと見つめている。そんな女の目を逸らせられない。
　だんだんと近づいてきて…
　目を瞑ったと思ったら、唇の感触…
　飛んでいたからなのか冷たかったけれど、やわらかでぷっくりとした小さな唇で口づけされていた。
　抱きしめている腕でしっかりと身体を抱えると、女は男の唇を開かせるように小さな舌を伸ばして、ぺろぺろと舐めはじめた。そのうちに、舌先でこじ開けるように、唇を開かせて口の中へと入ってきた…

「うんん？」
「ふうん…うん…ちゅ…」

　ちゅ…ちゅ…と、口の中を探るような音が響く。熱を求めるようにぴちゃぴちゃと、舌が絡みつく。
　小さな舌は…ちろちろとつつくように口内を舐める。
　おずおずと舌を絡めて見ると、女の瞑っていた瞳がこちらを見た。
　笑っているのか…うれしそうなその瞳…
　その笑みを浮かべた瞳は、“どう？”と言っているように思えた。
　唾がどんどん溢れ出すように滴ってくる。
　ちゅっ…ちゅ…ちゅぅ…と音がして、互いの唾がまじりあう。

「ん…うんん…ん…ちゅ…」
「ちゅ…んん…はぁぁぁ…んちゅ」

　いつしか、息を吸うことも忘れて互いにその舌の感触だけを味わっていた。
　小さな苺のようなその舌…ざらざらとつるつるが舌の上で踊っているように動き回る。
　時々、舌が止まってはチュルチュルと吸い込んでは、こくんこくんと唾を飲み込んでいるのがわかる。
　すると、しだいに可愛らしいその顔が、どこか呆けたような顔に変わっていくのだ…
　男も夢中になっていた。口を求めて吸い付く女がかわいらしくなってきたのだ。目の前には、うっとりとするように潤んだ目つきで唇を求める女がいる。
　小さな体に回した腕に力を入れ、赤く上気していく女の顔を見つめる。
　女の冷たかった身体は、火照ったように熱くなっていた。
　やわらかな羽があったかく包み込んでくれて、雨に濡れて冷たくなっていた男の身体に心地よい。心まであったかくなってくる。
　舌を絡ませあっていて、すぐ鼻の先にいるのにもっと見たい…もっと感じたい。
　息を吸うのも忘れて、ただ互いに酔ったように…口づけをしていた。

「ちゅ…はぁぁぁ…」
「ん…あぁぁ…はぁ…はぁ…はぁ」

　どのくらいそうしていたか…
　息が続かなくなり唇を離す…
　名残惜しさが形になったかのように、口と口とで糸が引いた…
　名残惜しかった…もっとその顔を見ていたかった。
　女は、頬を赤らめていて今まで求めていた小さな口は、艶っぽい朱色に輝いていた。

「いっぱい見てたね…？もっとしてたい？それとも…今度は違うことしてみたい？」
「…もっと見てしてたい…だめか？」
「…んふ…ちゅ♪」

　そんな言葉に、パァァっとした笑顔を見せる女。
　答える代わりに唇を押し付けられた。

　ちゅ…んちゅ…じゅる…ちゅ…ちゅぅ…

　女の唇、それがなんとも面白くて舌を絡める。
　舌先で…舌の腹で…舌の裏を…
　あふれ出す唾を飲み込み…時に夢中で互いの唾を飲み込んだ。

　ふぅ…ちゅっぢゅっ……ぁふぁ……はぁ……ちゅ…

　離れそうになる唇を追いかけて口づけすると、微笑を浮かべる女。
　それに満足したように目を細めると、少しずつ着物を脱がしに掛かった。
　羽と足を器用に使って着ていたものを取り払うと、女はすりすりと体を寄せる。
　相手の身体をもっと知ろうとするように…
　男は、そんな女がなんだか大切に思えてきた。
　すりすりと動く女を抱きかかえながら、その唇を求める。
　潤んだ瞳には…男しか映っておらず、男もまた彼女の赤く情気した顔をもっと見たくて見つめていた。
　そんな中…男は擦り寄る女の胸になんだか硬くなっているものがあるのに気が付いた。すべすべの肌に硬いもの…
　胸にあたる硬いもの…それがどうしても気になって、口づけをしながら顔を傾けてそちらを見やると…
　きれいな桃色をした豆のようなものが見えた。
　それは、彼女が動くたびにこりこりと胸板を刺激する。
　女のやわらかいからだ…その胸にあるふたつの豆。
　どうしても触りたくなった男は…片腕を放して抓んでみた。

「ふわっ！！」

　びくりと身体を震わせた女
　胸の膨らみもほどほどのものだけれど、そこには桃色のかわいいお豆…
　手のひらにすっぽりと収まるふくらみにちょこんとあるお豆…

「あふっ…ちゅ…あっ……ちゅちゅ…」

　さするように揉みながら女の様子を見つめる。
　胸をさするたびに口を開けてあまい吐息をあげる女。
　それでも、口づけを続けようとその口からは舌を覗かせる。
　ちいさな舌が放れないように、男も口で吸い込みつなぎとめる。
　うれしそうに微笑む女を愛しく思いながらも、さするとあまい吐息をあげるその胸を口で味わってみたくなってきた。

「ちゅ…えっ？…やめちゃうの？」

　突然口を放した男に、女は不満そうに声を上げた。
　そんな女に軽く口づけしてから、女を舐めつつ乳房を目指す。
　顎を…首を…鎖骨を…
　女が放ついい匂いを嗅ぎつつ、その汗でしっりとしていてすべすべとした肌を舐めていく。
　肌から滲む汗…やわらかくすべすべの肌…
　乳首にたどり着いたとき…それがどんなものなのか味わってみたくて、舌で歯でいじくってみたくなった。

「きゃぁ……や、やさしく…ね？」

　突然の悲鳴。
　男は加減がわからずに前歯で噛んでしまったのだ。
　女の胸…どこか懐かしいような気がした男は、夢中になって吸い付いた。

「あっ…はぁ……ん……うん……ちゅ…いいよぉ……いいのぉ……そこのぉ……」

　吐息の混ざった催促が一層、夢中にさせた。

「はぁ…ふ……ぃぃ…でもぉ………もう…片方もぉ……」

　横を見れば、赤く充血した乳首が目のすぐ横でﾋｸﾋｸと揺れていた。

「ふぁ……！」

　そんな様子がかわいらしくて今度はそっちにしゃぶりつく。
　いままでしゃぶっていた乳首を手で弄くりながら上目で女の様子を見ると、羽をしゃぶりながら目を瞑って与えられる快感をじっくりと味わっているように見えた。さっきまで絡めていた舌がチロチロと羽を舐めている。
　真っ赤でちいさな舌…それを見ていたくて、今度は音をたてて乳首を吸う。
　胸を揉み、乳首を吸って噛んで弄くると喘ぎ声を上げながら、あの可愛らしい舌が見えるのだ。

「見て？あたしの気持ちよさそうな顔…いっぱい見て？そして、いっぱい気持ちよくして！」

　見上げているのがわかったのか、切なそうに目を細めて潤む瞳で催促する女。
　そんな女にますます興奮をする男…

「見られてるぅ…。興奮してくれてるぅ…。おちんちんが…かったいおちんちんが…おまたに当たってるよう♪ 」

　男の逸物はもう猛々しく勃起していた。

「そんなに押し付けられたら我慢できなくなっちゃう！ね、ねぇ…？あなたのおちんちんちょうだい？」

　ちょうだいといわれても…どうしたらいいのかわからない男…

「大丈夫。あたしの言うとおりにして？」

　そういうと、素直に頷く男…
　女は男に座るよう促すと、股を広げてゆっくりと腰を入れていく。
　朱に染まったその顔が待ち遠しいような期待に満ちたような顔をして、逸物だけを見ながら腰を下ろした。
　先端が触れたと思ったら、一気に腰を下ろした女
　けれど、ぎゅっと顔をしかめてしばらく動かなかった。
　貫くことに痛みがあるのだろう…そう思った男は、ぎゅっと女をきつく抱きしめてその気を紛らわせられるようにいつまでも抱きしめていた。

「ありがとう…」

　ようやく、顔を上げた女の顔は…涙にぬれていた。けれど…よわよわしい笑顔を湛えていた。
　男が心底ほっとしたようにそのまま口づけすると、涙を浮かべながらも痛みに慣れてきたのかだんだんと腰を動かし始めた。
　どうすればいいのか…分かっていない男にそのままでいるようにいうと…

「ちゅっ……ちゅっ……んふ…いいのぉ……おまたにぃ…おなかにぃ……あなたが…いてくれてるって……」

　熱い…逸物が熱い。湯よりも熱い…。しかもそれは、中に入ってきたものを確かめようとするようにきゅうきゅうと締め付けてくる。
　しめつけて中は引っ張られるような気がした。
　うねるように動いて、ぎゅっと捕まえられるような…放さないとでもいうような…
　クセになってしまいそうだ。自身ですることはあったが…どこか満足のいくものではなかった。
　熱くやわらかできゅっと締まったりして、それがどうしょうもなくいい。
　獣のようにぜひぜひと口で息をして舌をだしていると、女の舌がまたもぺろぺろとなめてくるのだ。
　茶目っ気たっぷりに片目を閉じて、微笑みかける。
　次第に下腹がきゅぅっとしてきた。下腹ではなく逸物か？せり上がってくる。

「うわっ…なんだ…なんか…？！このままじゃっ！」
「ああっ…いいの！ちょうだい…はふ……あなたのその感じているの……ちょうだい！」
「はっ…はぁ…くれる？でもこのままじゃ！うわっ…」
　押し倒して小刻みに腰を振り始めた女…
「はっ…あん…いい…いい…んっ……はっ……ああっ…いいょぅ…ん……」
「だめだっ…も、もう…!!」
「あっ…ちょうだいっ！あなたのっ！ちょうだいいっっ!!」

「うっああぁぁぁーーー」
「ひゅっああああぁぁぁぁぁぁぁーーーーきてゆ…あっついの……きてぇっっっ」

　獣のような声が辺りに響き渡った。
　ぐったりとした男の胸に、おなじように倒れ掛かる女…その満足そうな幸せな顔を浮かべていた…

「どう・・・だった？」

　そう聞かれても、息が乱れてうまくしゃべれない男。
　ぜいぜいと呼吸を繰り返している。
　そんな相手に女はにやりと微笑むと言った。

「ねぇ…？しあわせってね？もっともーーーっとすごいものなんだよ？あったかいものなんだよ？…だから、もっと…いっしょにあったまろう？しあわせになろう？」

　しあわせに…そんな言葉を聞いて、荒い息をしながらこくこくと首を振る。
　これが幸せならば…と。大事な女といっしょにしあわせになる…それはすごくいいことなのだと思えてきた男。
　男の手が女を求めて伸びる。
　男の心が自分を求めてくれたとうれしくなった彼女は、やさしく口づけしてから身体を起こして跨ったまま腰を振り始めた。
　愛液と精でどろどろになった秘所からにちゃにちゃとした音が響き渡る。
　それがなんとも卑猥で、互いの洩らす吐息とに混ざり合ってふたりで交わっているんだと、うれしさがこみ上げてくる。
　赤い顔をしてうれしそうに見下ろす女。
　アソコから漏れ出す汁を羽で拭うと、口元に運んではあの苺のような舌でなめとっている。
　目を瞑って口の中にやってきたその味を確かめるように…そうすると口の中いっぱいで味わおうとするように、頬が膨らんで喉が揺れる。そして、うっとりとするように顔が緩んでいった…
　大切なものを抱えるように翼でお腹を抱えて腰をふる。
　ぬるぬるとすっかりと滑りのよくなったそのナカは、逸物を放さないとでもいうかのように絶妙な力加減で締め付ける。
　きつく…それでいてふわっとしたように、ゆるくなるときがあるような…そんな感触が逸物を追い詰めていく。

「あっ…あっ…ああっ……はっ…はっ……あんっ……んっ……いい……いいよぅ……もっと…あっ…あん……」

　朱に染まった身体を震えさせながら、腰に逸物を刻むように振る。
　一度放った直後なのに、容赦なく逸物を感じ取ろうと腰を使う女に男もはやくも限界に来てしまっていた。
　汗と愛液と精でぐちょぐちょになった腰と腰…そこから響き渡る音と互いの吐息。
　一つの楽を奏でているような、そんな心地よさにいつまでも続けたかったが…
　もう限界はそこまできていた。

　男は、手を差し出して女の腕をとるとそのままぐいっとひき寄せて抱きしめた。
　それと同時に残る力を込めて腰を突き上げた。

「ひゃっ…あっああっぃっあああああぁぁぁぁぁぁっっっ!!!」

　互いの嬌声があたりに響き渡る。
　逸物の根元から搾り取ろうとするようにキュゥッと締め付けられた男はそのまま果てた。
　止められていたものが一気に飛び出していく快感に頭の中が溶けていくようだった。
　力なくうわごとのようにくったりと…

「あっ…あつ……あついの…が……また…」

　そして、そのまま力尽きたというかのようにぐったりとしてしまった二人…
　荒い息づかいの中…女は言った。

「はっ……どうだった？…はぁ……はっ……わたしね？……はっ…いつか…だいじなひとと…はぁぁ…こうして…抱き合ってみたかったの…はぁ…」
「はっ…不思議な…気分だ……はぁっ……いや…悪い気分じゃねぇ……むしろ…はっ……こういうのを……なんていうんだい？…はっぁぁぁ…」
「気持ちいいっていうの…はぁ…ふぅ…」
「そうか…気持ちいい…これが、気持ちいい…。ああ…気持ちよかった…」
「うん。わたしも…あなたと…きもちよかった…。あなたの精でおなかもいっぱいだよう…。これが…わたしのしあわせの第一歩…。あなたとわたしでいっしょに気持ちよくなるの…」

　女は、ゆっくりと入れっぱなしになっていた逸物を腰を浮かして抜いていった。
　くちゃっと音が響いてぬるっとした感触で、たまらず声を上げる男…
　それを見て女は微笑み口づけをした。

　女は甘えるように胸板に頬擦りしながら言った。

「ねぇ？…虹の下に幸せはあった？」
「これが…幸せか…悪くはねぇな」

　女の頭を撫でてやりながらそう言った。

「そう…よかった！…ねぇ？これからどこか行くあてはあるの？」
「いや…ねぇな…故郷を出たのは大分前だったしな。帰るつもりもねえ…」

　男の胸に、旅のいろいろな思いが心を抜けていく…こんなに胸が温かくなることがあっただろうか…

「私のところに一緒に来て？…いいところなの♪ 」
「そうか？一緒に…それもいいかもな」
「本当！？…んふふ…よろしくね♪」

　彼女は、晴れ上がったお日様のような笑顔で口づけしてくれた。

　あれほどの雨を降らせた雨雲は、もうどこかへと去り真っ青に晴れ上がった空が見える。
　久しぶりの青空だ。雨の香りを伴った暖かい風が二人を撫で、どこかへと吹いていく。

　虹の下の幸せ…
　それは…案外すぐそばにあるものなのかもしれない…